(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記排水トラップ管路の上昇管路の水平に対する傾斜角度と、上記ゼット吐水口部の水平に対する傾斜角度との比率は、26:1〜6.5:1の範囲の比率とされている、請求項1に記載の水洗大便器。
上記ゼット吐水口部の上記出口部底面と、この出口部底面の先端から下方に延びる上記ボウル部の上記底面の接線との間の角度は、140度〜165度の範囲の角度に形成されている、請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、より強力なサイホンを起動させるため、ゼット吐水部132から排水トラップ管路122の入口部122aの中央に向かうゼット吐水流の水勢を強くすると、ゼット吐水流が、ゼット吐水部132内からボウル部底面120a近傍のボウル部120内の比較的広い領域に流出することにより拡散しやすく、水勢が一気に落ち(水流が分岐されるほどの水勢がなくなり)、ボウル部底面120aに沿って直進されるような流れを形成してしまう。よって、上記構成では排水トラップ管路122のトラップ上昇管にゼット吐水流がぶつかり、洗浄水の流れにロスが生じてしまい、汚物を排水トラップ管路122に押し込むことができず、汚物の排出能力が低下するという問題があった。また、排水トラップ管路122のトラップ上昇管にゼット吐水流がぶつかってしまうため、流れが阻害され、サイホン作用の起動のタイミングを早めることができないという問題があった。
例えば、
図6に示すように、従来の排水トラップ管路122の入口部122aの中央に向かって直線的に延びているゼット吐水部132を備えた水洗大便器において、ゼット吐水部132から吐水された洗浄水のゼット吐水流が、対向する正面の排水トラップ管路122の底面の領域Eに衝突し、洗浄水の流れにロスが生じる様子が解析により示されている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、ボウル部の底面に沿って比較的早期に排水トラップ管路に到達することによりサイホン作用の起動のタイミングを早めるゼット吐水流と、ゼット吐水口部から排水トラップ管路に向けて汚物を押込む流れを形成するゼット吐水流と、を形成することができ、サイホン作用により汚物を排出させる水洗大便器において、より少ない洗浄水量であっても、排水トラップ管路内からの汚物の排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下部に接続される排水トラップ管路と、ボウル部の下部に接続され且つ排水トラップ管路に向けて開口されるゼット吐水口部であって、その出口部の出口部底面とボウル部の底面とが接続されるゼット吐水口部と、を有し、ボウル部の底面は、ゼット吐水口部の出口部底面の先端から出口部底面よりも下方に斜めに傾斜する曲面を形成し、ゼット吐水口部の出口部は、排水トラップ管路の入口内の中央部より下方側に向けて開口され、出口部の出口流路天井面は、ほぼ平坦な平面を形成し、出口流路天井面は、出口部の出口に向かって直線的に延び且つ排水トラップ管路の入口部の中央部より下方側且つ入口部の底面より上方側に向かうような傾斜を有する平面を形成し
、上記汚物受け面は、上記ゼット吐水口部の上方における凹部分であって、上記排水トラップ管路の底面の頂部によって規定される水位より下方且つ近傍の上記汚物受け面の前側底面よりもさらに下方に傾斜された上記凹部分と、上記凹部分の下端部から上記ゼット吐水口部の上記出口部に向かって下方向きに傾斜する傾斜面とを備え、上記凹部分は、上記前側底面の傾斜よりも大きい傾斜を形成する凹部分傾斜面を備え、上記傾斜面の傾斜は、上記凹部分傾斜面の傾斜よりも小さいことを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水口部の出口部の出口部底面に沿って吐出されるゼット吐水流の一部が、コアンダ効果により、出口部底面の先端から出口部底面よりも下方に斜めに傾斜する曲面を形成するボウル部の底面に沿った流れを形成するので、ボウル部の底面に沿って比較的早期に排水トラップ管路に到達することによりサイホン作用の起動のタイミングを早めるゼット吐水流と、ゼット吐水口部から排水トラップ管路に向けて汚物を押込む流れを形成するゼット吐水流と、を形成することができ、サイホン作用により汚物を排出させる水洗大便器において、より少ない洗浄水量であっても、排水トラップ管路内からの汚物の排出性能を向上させることができる。
また、このように構成された本発明においては、ゼット吐水口部は、排水トラップ管路の入口内の中央部より下方側に向けてゼット吐水流を吐水するので、ゼット吐水流が、コアンダ効果によるボウル部の底面に沿った流れと、ボウル部の底面に沿った流れが比較的強い水勢を保っている状態で合流され、両者の流れが相俟ってスムーズに排水トラップ管路内を流れる流れを形成でき、ゼット吐水流が排水トラップ管路の内面に衝突するようにして排水トラップ管路内の流れを妨げる流れを生じさせることを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、排水トラップ管路の上昇管路の水平に対する傾斜角度と、ゼット吐水口部の水平に対する傾斜角度との比率は、26:1〜6.5:1の範囲の比率とされている。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水口部は、排水トラップ管路の入口内の中央部より下方側に向けてゼット吐水流を吐水するので、ゼット吐水流が、コアンダ効果によるボウル部の底面に沿った流れと、ボウル部の底面に沿った流れが比較的強い水勢の状態で合流され、両者の流れが相俟ってスムーズに排水トラップ管路内を流れる流れを形成でき、ゼット吐水流が排水トラップ管路の内面に衝突するようにして排水トラップ管路内の流れを妨げる流れを生じさせることを抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、ゼット吐水口部の出口部底面と、この出口部底面の先端から下方に延びるボウル部の底面の接線との間の角度は、140度〜165度の範囲の角度に形成されている。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水口部の出口部底面と、この出口部底面の先端から下方に延びるボウル部の底面の接線との間の角度は、140度〜165度の範囲の角度に形成されているので、ゼット吐水口部の出口部底面に沿って流出されるゼット吐水流のうちの一部が、コアンダ効果により、ボウル部底面に引き寄せられ且つボウル部底面に沿って流れることができる。よって、ボウル部の底面に沿って比較的早期に排水トラップ管路に到達することによりサイホン作用の起動のタイミングを早めるゼット吐水流と、ゼット吐水口部から排水トラップ管路に向けて汚物を押込む流れを形成するゼット吐水流と、を形成することができ、サイホン作用により汚物を排出させる水洗大便器において、より少ない洗浄水量であっても、排水トラップ管路内からの汚物の排出性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水洗大便器によれば、サイホン作用により汚物を排出させる水洗大便器において、より少ない洗浄水量であっても、排水トラップ管路内からの汚物の排出性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、
図1〜
図4を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、
図1は本発明の一実施形態による水洗大便器を示す斜視図であり、便蓋及び便座を上方位置まで回動させた状態を示し、
図2は
図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体部分を示す平面図であり、
図3は本発明の一実施形態による水洗大便器における左右方向の中央断面を左側から見た断面図であり、便蓋及び便座を下方位置まで回動させた状態を示し、
図3bは
図3の領域Cを拡大して示す部分拡大断面図であり、
図4は
図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器のゼット導水路のゼット吐水部を排水トラップ管路側から見た状態を示す部分拡大図である。
【0013】
図1〜
図3に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2の上面に上下方向に回動可能に配置された便座4と、この便座4を覆うように上下方向に回動可能に配置された便蓋6と、便器本体2の後方に配置された機能部8とを備えている。
また、
図3に示すように、機能部8は、便器本体2の後方上部に配置されて、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部として機能する衛生洗浄系機能部10と、この衛生洗浄系機能部10に近接して配置されて、便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部12とを備えている。
【0014】
つぎに、
図1〜
図3に示すように、便器本体2は、ボウル形状の汚物受け面14と、この汚物受け面14の上縁の棚面16から立ち上がるように形成されたリム部18とを備えたボウル部20を備えている。
また、
図3に示すように、便器本体2は、ボウル部20の下方に入口部22aが接続されて、ボウル部20内の汚物を排出する排水路である排水トラップ管路22を備えている。
【0015】
つぎに、
図2に示すように、ボウル部20は、便器本体2の前方から見てボウル部20の前方側領域内の右側のリム部18の内部には、リム吐水部の一部であるリム通水路24が形成されている。また、このリム通水路24の下流端には、リム吐水部の一部であるリム吐水口26が形成されている。
さらに、
図2に示すように、リム通水路24の上流側は、洗浄水源である水道(図示せず)から供給される洗浄水をリム通水路24に供給する導水路である導水管28に接続されている。この導水管28の上流側は、洗浄水源である水道(図示せず)に直結されており、この水道の給水圧力を利用して、導水管28からリム通水路24内に供給された洗浄水は、リム通水路24内で前方へ導かれ、その後、内側且つ後方側に屈曲し、下流側のリム吐水口26まで導かれるようになっている。
そして、リム吐水口26に導かれた洗浄水は、後方に向けて吐水(リム吐水)され、リム吐水口26の下流側近傍に形成される通水路30(詳細は後述する)を経てボウル部20内を旋回することにより、ボウル部20内に旋回流が形成されるようになっている。
【0016】
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、リム吐水部であるリム通水路24及びリム吐水口26について、便器本体2の前方から見てボウル部20の前方側領域内の右側のリム部18の内部に配置した形態について説明するが、このような形態に限定されず、リム吐水口を便器本体2の前方から見てボウル部20の前方側領域内の左側、又はボウル部20の後方側領域内の右側、又はボウル部20の後方側領域内の左側のリム部18に配置してもよい。
また、本実施形態の水洗大便器1においては、リム吐水部であるリム通水路24及びリム吐水口26は、陶器を加工することで便器本体2に一体に形成されているが、例えば、樹脂等で便器本体2とは別体として形成し、樹脂等の通水路を便器本体2内に取り付ける構成としてもよい。
【0017】
さらに、
図2に示すように、ボウル部20の下部において、排水トラップ管路22の入口部22aに向けて差し向けられるように開口されたゼット吐水部32(ゼット吐水口部)が形成されている。ゼット吐水部32は、ゼット噴流を吐水する吐水口部を形成している。ゼット吐水部32は、貯水タンク34(或いは給水源)とボウル部20の下部の流路とを接続するゼット導水路31の下流端部に形成されている。ゼット導水路31の上流側が加圧ポンプ36を介して貯水タンク34に接続されている。このゼット吐水部32による吐水(ゼット吐水)に関しては、給水系機能部12に設けられている貯水タンク34に貯水された洗浄水が、給水系機能部12の加圧ポンプ36によって加圧されて、ゼット吐水部32から吐出されるようになっている。
また、ゼット吐水部32から吐出された洗浄水は、排水トラップ管路22の入口部22aから、この入口部22aの後方側の上昇管路22b内に流入した後、この上昇管路22b内を排水トラップ管路22の頂部22cから下降管路22dに流出するようになっている。
なお、ゼット導水路31に洗浄水を給水する給水源としては、貯水タンク34の他に、水道又は設備の給水圧力を利用する水道等であってもよい。給水系機能部12の加圧ポンプ36は省略されてもよい。例えば、水道直圧式の給水方式を採用する場合には、水道の給水圧力により加圧された水が供給されるため、加圧ポンプ36は省略されてもよい。
【0018】
図2に示すように、ゼット導水路31は、加圧ポンプ36から延びる配管の下流端に接続される。ゼット導水路31は、上面視で、便器本体2の左側後方から前方に向かって下降しながら延び、汚物受け面14の裏面の外側に沿うような流路を形成している。ゼット導水路31は、ボウル部20のほぼ中央の最深部を形成する溜水部の側方を前方側に向かって延びた後、溜水部の前方側且つ便器本体2の中央に向かって延び、溜水部の前方側において、後ろ向きに向きを変えて汚物受け面14の後述する下降平坦面15の下方且つ溜水部17に向かって延びる。後述するゼット吐水部32は、上面視においては、ゼット導水路31のうち、便器本体2の前方から後方に向かって直線的に延びる流路を形成している。ゼット導水路31は、このような流路形状が陶器により形成されている。
【0019】
ここで、衛生洗浄系機能部10及び給水系機能部12のそれぞれの具体的な構造については、従来のものと同様であるため、詳細な説明については省略するが、衛生洗浄系機能部10には、ボウル部20の上方の使用者に向けて洗浄水を噴射するノズル装置(図示せず)を含む局部洗浄装置(図示せず)が設けられている。
その他、衛生洗浄系機能部10には、局部洗浄装置(図示せず)に供給される洗浄水を貯水する貯水部(図示せず)、この貯水部(図示せず)内の洗浄水を適温に温めて温水にする加熱器(図示せず)、換気ファン(図示せず)、脱臭ファン(図示せず)、温風ファン(図示せず)、及び、これらの機器の作動を制御するコントローラ(図示せず)等が設けられている。
一方、給水系機能部12の給水路(図示せず)は、その上流側が給水源である水道(図示せず)に接続されており、貯水タンク(図示せず)の上流側の給水路には、定流量弁(図示せず)、電磁弁(図示せず)、貯水タンク(図示せず)への給水とリム吐水口26への吐水とを切り替える切替弁(図示せず)等が設けられている。また、給水系機能部12には、これら以外にも、電磁弁(図示せず)の開閉操作、切替弁(図示せず)の切替操作、及び、加圧ポンプ(図示せず)の回転数や作動時間等を制御するコントローラ(図示せず)等が設けられている。
【0020】
なお、本実施形態による水洗大便器1においては、リム吐水口26によるリム吐水について水道の給水圧力を利用して行い、ゼット吐水部32によるゼット吐水について加圧ポンプ(図示せず)を制御することにより貯水タンク(図示せず)内の洗浄水を供給する、いわゆる、ハイブリッド式の水洗大便器の形態について説明するが、このような形態に限られず、他の形態についても適用可能である。すなわち、他の形態として、水道のみから直接的に供給される洗浄水について、バルブを切り替えることによってリム吐水口26によるリム吐水とゼット吐水部32によるゼット吐水とを切り替えるような形態であってもよいし、貯水タンク内の洗浄水について、ポンプのみを切り替えることによって、リム吐水口26によるリム吐水とゼット吐水部32によるゼット吐水とを切り替えるような形態であってもよい。
【0021】
つぎに、
図2乃至
図4を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1のゼット導水路31のゼット吐水部32及びゼット吐水部32が接続されるボウル部20のボウル部底面20aの詳細について説明する。
【0022】
まず、
図3bに示すように、ゼット吐水部32は、ボウル部20の下部に接続され且つ排水トラップ管路22に向けて開口される。また、ゼット吐水部32は、ボウル部20の汚物受け面14において溜水部17の前方に形成された下降平坦面15の下方側に形成されている。下降平坦面15は、汚物受け面14の前方側から後方側の溜水部17に向かって下降する下り傾斜の平坦面を形成している。下降平坦面15は、滑り台のように汚物及び洗浄水を下降させる流路を形成している。汚物受け面14においてゼット吐水部32の上方に下降平坦面15を形成することにより、矢印F6に示すように、下降平坦面15に沿って流下する洗浄水の流れが、スロープ状の斜面に沿って流れ下り、溜水部17中に排水トラップ管路22の入口に向かう比較的整流された流れを形成するので、排水トラップ管路22内に汚物を押し込み且つ汚物を排出させる能力を向上させることができる。
【0023】
ゼット吐水部32は、ゼット吐水部32の出口32aまで延びる出口流路部60を備えている。出口流路部60には、ゼット吐水部32の下端部の出口32aに向かって斜め下方に延びる下端部底面60a(出口部底面)と、下端部底面60aの両側から上方に立ち上がる出口流路側壁60bと、出口32aに向かって延び且つ下端部底面60aとほぼ平行に延びる出口流路天井面60c(天井面)と、が形成されている。ゼット吐水部32の下端部の下端部底面60aと後述するボウル部20のボウル部底面20aとが、ゼット吐水部32の下端部の出口32aにおいて接続される。なお、ゼット吐水部32は、その内部の流路に出口32aよりも低い部分を有していてもよい。
【0024】
ゼット吐水部32の出口流路部60は、前後方向に延びる流路を形成している。この出口流路部60は、
図4に示すように、左右方向の断面において概ね四角形状の流路を形成している。なお、左右方向の断面において下端部底面60a及び/又は出口流路天井面60cが湾曲した形状、例えば管形状を形成していてもよい。
【0025】
ゼット吐水部32の出口流路部60は、下端部底面60aと、出口流路側壁60bと、出口流路天井面60cとにより、ゼット導水路31の流路(流路の通水断面積)を絞るように形成されている。絞り部は、ゼット導水路31内のいずれの位置に配置されていてもよく、且ついかなる形状に形成されていてもよい。本実施形態においては、出口流路部60の所定長さの領域にわたって、流路が狭められている形状(例えばほぼ同じ流路断面積が維持されている形状)が連続することにより、絞り部が一定の長さにわたって形成されている。変形例としては、例えば、いずれかの部分の左右の側壁の幅がゼット導水路31内のさらに上流側部分よりも狭められていてもよく、又はいずれかの部分の床面から天井面までの高さが上記上流側部分の床面から天井面までの高さよりも小さくなるように狭められていてもよい。また、絞り部は、壁面から突出した突出部形状、丘形状、円弧形状、又は半球形状等により形成されていてもよい。
【0026】
出口流路部60の下端部底面60aは、ほぼ平坦な平面を形成している。出口流路部60の下端部底面60aは、便器本体2の前方側から後方側に向かって斜め下方に延びている。すなわち、下端部底面60aは、ボウル部20の前部側の下方から、ボウル部20の後部側の下方に向かう下り傾斜の斜面として形成されている。
【0027】
図3に示すように、出口流路部60の中心線C1(又は出口流路部60の下端部底面60a)の水平面L(すなわち水平)に対する傾斜の角度α1が、5度〜20度の範囲の角度に形成されている。出口32a近傍領域において、出口流路部60の中心線C1と出口流路部60の下端部底面60aとはほぼ同じ傾斜角度を有するように形成されている。なお、出口流路部60の下端部底面60aは、ほぼ水平に形成されていてもよい。
【0028】
排水トラップ管路22の上昇管路22b(又は上昇管路22bの上昇管路底面22e)の水平面L(すなわち水平)に対する傾斜の角度α2は、120度〜140度の範囲の角度に形成されている。よって、排水トラップ管路22の上昇管路22bの上昇管路底面22eの水平面L(すなわち水平)に対する傾斜の角度α2と、出口流路部60の水平面L(すなわち水平)に対する傾斜の角度α1との比率は、26:1〜6.5:1の範囲の比率とされている。別の言い方によれば、排水トラップ管路22の上昇管路22bの水平面Lに対する傾斜の角度α2の値を、出口流路部60の水平面Lに対する傾斜の角度α1の値で除した(割った)値が、26〜6.5の範囲の値となっている。
なお、下端部底面60aが出口32a近傍においてほぼ水平に形成されている。そのほぼ水平に形成されている出口32aの下端部底面60aを、排水トラップ管路22の入口部22aに向けて延ばした位置(すなわち、水平面Lを入口部22aへ向けて延ばした位置)は、入口部22aの中央部近傍の位置となっている。なお、出口32aが、下端部底面60aの下り傾斜(出口流路部60の下り傾斜、すなわち、中心線C1の傾き)とほぼ同じ下り傾斜を有するように形成されていてもよい。
【0029】
ゼット吐水部32の出口流路部60の出口32aは、ボウル部20の下部のボウル部底面20aの最下端よりもわずかに上方に位置している。この出口流路部60の出口32a近傍の後方側におけるボウル部20のボウル部底面20aは、後方側、すなわち排水トラップ管路22の入口部22a側に向かう比較的緩やかな下り傾斜を形成している。このボウル部底面20aは、ゼット吐水部32の出口32aから斜め下方に延びる面を形成している。
【0030】
ボウル部20のボウル部底面20aは、ゼット吐水部32の下端部底面60aの先端(下端)から下端部底面60a(又は出口流路部60の中心線C1)よりも下方に斜めに傾斜する曲面を形成する。すなわち、ゼット吐水部32の出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aの下り傾斜は、ゼット吐水部32の出口32aの下端部底面60aの下り傾斜よりも急な下り傾斜となっている。また、ゼット吐水部32の出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aの下り傾斜は、ゼット吐水部32の出口流路部60の下り傾斜(出口流路部60の中心線C1の傾き)よりも急な下り傾斜となっている。
【0031】
ボウル部20の出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aの水平面L(すなわち水平)に対する傾斜の角度α3が、15度〜40度の範囲の角度に形成されている。例えば、出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aの接線C2が、水平面Lに対して形成する角度が、15度〜40度の範囲の角度に形成されている。ボウル部底面20aは、ゼット吐水部32の延長方向に対してやや下方に開くような流路を形成することにより、ゼット吐水流のうちの一部をボウル部底面20aに沿わせるように引き寄せるコアンダ効果を生じさせるコアンダ効果機能面を形成している。
【0032】
ボウル部底面20aは、出口流路部60の出口32aの近傍から直ちに下方に延びるように接続されている。このようなボウル部底面20aは、ゼット吐水部32の出口流路部60の出口32aの目前、すなわち直後に配置されていることにより、コアンダ効果を効率的に生じさせることができる。出口流路部60の出口32aから流出されるゼット吐水流は、ボウル部20内の比較的広い領域に流出することから、流出直後から水勢及び流速が落ちることとなる。そこで、ゼット吐水流の水勢が比較的強く且つ流速が高い領域である出口32aの近傍の領域においてボウル部底面20aが所定の曲面を形成することにより、水勢が比較的強く且つ流速が高い流れがコアンダ効果を効率的に生じさせることができる。仮に水勢が比較的弱く且つ流速が低い流れの領域においては、コアンダ効果により所定の面に引き寄せられるよりも、元の流れの向き及び流速を維持しようとする傾向が強くなるため、コアンダ効果の作用が弱くなる(例えば、従来技術の
図6参照)。
【0033】
出口流路部60の下端部底面60aと、出口流路部60の出口32a近傍のボウル部底面20aとの間には、緩やかな曲りを形成するコーナー部62が形成されている。コーナー部62は、例えば曲率半径が10mm〜30mmの範囲内の円弧状に形成され、例えば曲率半径が15mmの円弧状に形成されている。コーナー部62の角度は、鈍角に形成されている。後述するように、洗浄水の一部は、コアンダ効果により、下端部底面60aからコーナー部62に沿ってボウル部底面20aに沿う向きに滑らかに流下することができる。コーナー部62の湾曲が緩やかに形成されることにより、下端部底面60aからボウル部底面20aに沿って流れる洗浄水を剥離しにくくすることができる。
【0034】
出口流路部60の下端部底面60aと、出口32a近傍領域におけるボウル部底面20a(ボウル部底面20aの接線C2)との間の角度α4は、140度〜165度の範囲の角度に形成されている。よって、下端部底面60aとボウル部底面20aとの間の角度が所定の範囲に形成されているので、出口流路部60の下端部底面60aに沿って流出されるゼット吐水流のうちの一部が、コアンダ効果により、出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aに沿って流れることができる。
【0035】
下端部底面60aとボウル部底面20aとの間の角度α4は、コーナー部62の角度となっている。従って、コーナー部62の角度α4も、概ね140度〜165度の範囲の角度に形成されている。このコーナー部62の角度α4は、出口流路部60の下端部底面60aに沿って流出されるゼット吐水流の一部が、コーナー部62から剥離しにくく、コアンダ効果により、出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aに沿って流れることができるような角度とされている。
なお、出口32aに接続されるボウル部底面20aが、出口32aからほぼ鉛直方向下方に(ほぼ真下に)延びる場合は、下端部底面60aに沿って流出されるゼット吐水流のうちの一部を、コアンダ効果により、ボウル部底面20aに沿って流すことが難しいため、出口32aからほぼ鉛直方向下方に延びるボウル部底面20aは、本発明には含まれない。
【0036】
図4に示すように、出口流路部60の出口流路側壁60bは、縦方向に立ち上がるように形成されている。左右の各出口流路側壁60bは、ほぼ平坦な平面を形成している。各出口流路側壁60bは、出口流路部60の左右方向の断面視において、その上部がその下部よりも左右方向外側にわずかに開くように形成されている。
【0037】
出口流路部60の出口流路天井面60cは、ほぼ平坦な平面を形成している。その出口流路天井面60cは、出口32aに向かって直線的に延び且つ排水トラップ管路22の入口部22aの中央部22fより下方側且つ底面22gより上方側に向かうような傾斜を有する平面を形成している。
【0038】
上述のような出口流路部60は、ゼット吐水部32の出口部としての出口32aまで延びている。ゼット吐水部32の出口32aは、排水トラップ管路22の入口部22a内の中央部22fより下方側且つ底面22gより上方側の下部側領域Bに向けて開口されている。
図3bに示すように、出口流路部60の出口32aにおける流路を、仮想的に開口向きに延伸させた仮想線Xは、排水トラップ管路22の入口部22aにおいて中央部22fと底面22gとの間に到達する。ゼット吐水部32の出口32aから横向きに吐水される洗浄水は、矢印F2に示すように、排水トラップ管路22の下部側領域Bに向けてゼット吐水流を形成する。排水トラップ管路22の下部側領域Bに向かうゼット吐水流は、排水トラップ管路22に向けて汚物を押込む流れを形成する。より具体的には、排水トラップ管路22の下部側領域Bに向かうゼット吐水流は、ボウル部20の底面22g近傍に向かって落ちてくる汚物(大便、トイレットペーパー等)を排水トラップ管路22に向けて比較的強力に押込む。また、このようなゼット吐水流が、後述する排水トラップ管路22の底面に沿う流れと合流することにより、排水トラップ管路22内に向けて押し込んだ汚物を、排水トラップ管路22の底面22gに沿って比較的強力に排出させることも可能になる。
【0039】
また、出口32aにおける流路を、仮想的に開口向きに延伸させた仮想線Xは、中央部22fの高さより低い位置Aにおいて排水トラップ管路22の底面22gと交差する。よって、ゼット吐水部32の出口32aから吐水される洗浄水は、吐水された向きに進み、中央部22fの高さより低い位置Aにおいて、排水トラップ管路22の底面22gに沿う流れ(矢印F3参照)と合流する。従って、矢印F3に示す底面22gに沿う流れが排水トラップ管路22に沿って上昇することにより水勢が減少される前の高さ位置Aにおいて出口32aから吐水される洗浄水の流れF2と合流される。排水トラップ管路22の底面22gに沿う流れの水勢が比較的強く維持されている状態で、出口32aから吐水される洗浄水の流れが合流されるので、両者の流れが相俟ってスムーズに排水トラップ管路22内を流れる流れ(矢印F5参照)が形成される。
【0040】
つぎに、
図1〜
図5を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器の動作(作用)について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったとき、ゼット吐水部から吐水されるゼット吐水流と、このゼット吐水流の一部がゼット吐水部の出口からさらに下方に斜めに傾斜するボウル部底面に沿って流れる流れとの排水トラップ管路の入口部近傍における流速分布を解析した結果の一例を示している。
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのゼット吐水部から吐水される洗浄水の排水トラップ管路の入口部近傍における流速分布の状態を、コンピュータシミュレーションにより数値解析した結果の一例を示している。この数値解析結果において、洗浄水の流れの向きを矢印により示し、さらに、濃淡が濃い色(濃いグレー及び黒に近い色)であり且つ長い矢印が、洗浄水の流速が速く且つ水勢が強い領域を示し、濃淡が淡い色(薄いグレー及びほぼ白に近い色)であり且つ短い矢印が、洗浄水の流速が遅く且つ水勢が弱い領域を示している。
【0041】
使用者が、便器使用後に、例えば、大洗浄用の操作ボタン(図示せず)を押すと、この操作ボタン(図示せず)からの信号がコントローラ(図示せず)に送信され、水洗大便器1の大洗浄用の洗浄動作が開始される。
使用者が操作ボタン(図示せず)を操作すると、コントローラは洗浄水を水道等の給水源から導水管28、リム通水路24を通過させ、リム吐水口26から吐出させる。
リム吐水口26から吐出された洗浄水は、ボウル部20内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部20の内壁面が洗浄される。
【0042】
その後、ゼット吐水(ゼット吐水)が開始される。
先ず、コントローラは、加圧ポンプ36に信号を送ってこれを起動させる。貯水タンク34内に貯水されていた洗浄水は、加圧ポンプ36に流入し、加圧される。加圧ポンプ36によって加圧された洗浄水は、ゼット導水路31を通って、ボウル部20の下部(底部)に開口したゼット吐水部32から吐出される。
【0043】
ゼット導水路31内を流下する洗浄水は、ゼット吐水部32内の出口流路部60(出口部)の絞り部により、流路断面積がその上流側よりも狭められているので、洗浄水の流速が加速される。出口流路部60において洗浄水の流速が加速されるので、出口流路部60内を通過する洗浄水の流速が加速され、ゼット吐水部32から吐水されるゼット吐水流の一部がボウル部底面20aに沿うように引き寄せられるコアンダ効果を生じさせやすくなる。また、ゼット吐水部32から吐水される洗浄水の流速が加速されるので、比較的早期に排水トラップ管路22を満水にさせることができ、汚物を排出させるサイホン作用の起動のタイミングを早めることができる。
【0044】
図3b及び
図5に示すように、出口流路部60内を流れる洗浄水の主流は、
図3bにおいて矢印F1に示すように、出口流路部60の中心線C1の向きに沿って流れ、出口流路部60の出口32aから出口流路部60の中心線C1の向きに流出する。矢印F2に示すように、出口流路部60の出口32aから流出するゼット吐水流は、仮想線Xの向きに沿って比較的強い水勢の主流を形成し、下部側領域Bを通過して、排水トラップ管路22の底面22gの位置Aに至る。このとき、中央部22fより下方側且つ底面22gより上方側の下部側領域Bに向かう流れは、汚物を排水トラップ管路22の入口部22a内に押し込むように排出させることができる。ゼット吐水部32から流出するゼット吐水流の主流が、入口部22a内の中央部22fに比較的近い領域に向かって汚物を押し込む流れを形成する。すなわち、ゼット吐水流の主流が、入口部22aの中心近傍においてゼット吐水部32から見て放射状に拡がりながら汚物を効率よく下流側に向けて押し流すことができる。また、汚物を排水トラップ管路22の下部側を流れる比較的強い水勢のコアンダ効果により生じた流れに向けて合流させ、汚物をこの比較的強い水勢の流れとともに比較的効率よく排出させることもできる。
【0045】
図5の矢印F3により示すように、ゼット吐水部32から吐水されるゼット吐水流の一部は、ゼット吐水流の主流から分かれ、下端部底面60a(又は出口流路部60の中心線C1)よりも下方に斜めに傾斜するボウル部底面20aに沿うように引き寄せられるコアンダ効果を生じる。出口流路部60の水平面に対する傾斜角度と、ボウル部底面20aの水平面に対する傾斜角度とが、一定の関係を有するように形成されているので、ゼット吐水部32から流出するゼット吐水流の一部は、コーナー部62の底面の屈曲後の領域においても、コアンダ効果により、出口32a近傍領域におけるボウル部底面20aに沿って流れることができる。このとき、コーナー部62の湾曲が緩やかに形成されるので、下端部底面60aからボウル部底面20aに沿って流れる洗浄水を剥離しにくくすることができ、コアンダ効果により、下端部底面60aからボウル部底面20aに沿って流れる流れを形成しやすくすることができる。
【0046】
コアンダ効果により、ゼット吐水部32から流出されたゼット吐水流の主流からボウル部底面20aに沿って分かれた一部の流れは、ボウル部底面20aに沿って流れ、排水トラップ管路22の入口部22aの底面22gから、排水トラップ管路22の上昇管路22bに沿って上昇する流れを形成する。ボウル部底面20aに沿って分かれた一部の流れは、ボウル部底面20aに沿った水勢及び流速を維持しながら、ボウル部底面20a及び排水トラップ管路22の入口部22aに流入することができる。従って、比較的早期に排水トラップ管路22を満水にすることにより、汚物を排出させるサイホン作用の起動のタイミングを早めることができる。また、比較的早期に排水トラップ管路22を満水にさせることができるので、少ない洗浄水量でサイホンを効率よく起動させることができる。さらに、ボウル部底面20aに沿って分かれた一部の流れは、比較的水勢(流速)が高い状態を維持している位置Aにおいて、ゼット吐水部32から横向きに流出されたゼット吐水流の主流と合流することにより、汚物を排水トラップ管路22の上昇管路底面22eから押し流す比較的強い流れを形成する。
【0047】
図5に示す解析結果において、ゼット吐水部32から流出されたゼット吐水流の主流は、矢印F2に示すように、排水トラップ管路22の中央部22fより下方側且つ底面22gより上方側の下部側領域Bを通り、底面22gの位置Aに向かう流れを形成する。
図5において、ゼット吐水部32から下部側領域Bに向かう洗浄水の流れが比較的大きな流速及び水勢を有することが示されている。このようにゼット吐水部32から流出されたゼット吐水流の主流は、汚物を排水トラップ管路22の入口部22aから上昇管路22b内に押し込み効果的に排出させることができる。また、ゼット吐水部32から流出されたゼット吐水流の主流は、中央部22f近傍の比較的多くの洗浄水及び汚物を巻き込んで押し込む効果を奏することができ、汚物を効率的に排出させることができる。
【0048】
図5に示す解析結果において、矢印F3に示すように、このゼット吐水流の主流から、コアンダ効果により、ボウル部底面20aに沿って分かれる一部の流れが、形成されている。
図5において、ゼット吐水部32から直進するゼット吐水流の主流に対し、矢印F3に示すように、ボウル部底面20a側に引き寄せられるように下方に分かれる洗浄水の流れについても比較的大きな流速及び水勢を有することが示されている。
【0049】
このように、ボウル部底面20aに沿って分かれた一部の流れは、比較的速い流速及び水勢を維持した状態で、ボウル部底面20aに沿って流れ、上昇管路底面22eに沿って上昇管路22b内を上昇する流れを形成する。よって、主流が汚物を押し込む間に、矢印F4に示すように、分岐された流れが上昇管路22b内を早期に満水にさせるような流れを形成している。従って、このように分岐した流れが比較的早期に排水トラップ管路22を満水にすることができるので、汚物を排出させるサイホン作用の起動のタイミングを早めることができる。
さらに、ボウル部底面20aに沿って分かれた一部の流れは、比較的水勢(流速)が高い状態を維持している位置Aにおいて、ゼット吐水部32から横向きに流出されたゼット吐水流の主流と合流することにより、矢印F4に示すように、汚物を排水トラップ管路22の上昇管路底面22eから押し流す比較的強い流れを形成する。
【0050】
上述のようにゼット吐水部32から吐出された洗浄水は排水トラップ管路22内に流入し、排水トラップ管路22を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部20内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路22に吸引され、下流側の排水管(図示せず)から排出される。
便器本体2に洗浄水が供給されてから所定時間経過後、コントローラ(図示せず)は、リム吐水口26からの吐水を終了させ、加圧ポンプ36の作動を停止させ、一連の洗浄動作が終了する。
【0051】
つぎに、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1における作用について説明する。
まず、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、ゼット吐水部32の出口部の下端部底面60aに沿って吐出されるゼット吐水流の一部が、コアンダ効果により、下端部底面60aの先端から下端部底面60aよりも下方に斜めに傾斜する曲面を形成するボウル部20のボウル部底面20aに沿った流れを形成するので、ボウル部20のボウル部底面20aに沿って比較的早期に排水トラップ管路22に到達することによりサイホン作用の起動のタイミングを早めるゼット吐水流と、ゼット吐水部32から排水トラップ管路22に向けて汚物を押込む流れを形成するゼット吐水流と、を形成することができ、サイホン作用により汚物を排出させる水洗大便器1において、より少ない洗浄水量であっても、排水トラップ管路22内からの汚物の排出性能を向上させることができる。
【0052】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、ゼット吐水部32は、排水トラップ管路22の入口部22a内の中央部22fより下方側に向けてゼット吐水流を吐水するので、ゼット吐水流が、コアンダ効果によるボウル部20のボウル部底面20aに沿った流れと、ボウル部20のボウル部底面20aに沿った流れが比較的強い水勢を保っている状態で合流され、両者の流れが相俟ってスムーズに排水トラップ管路22内を流れる流れを形成でき、ゼット吐水流が排水トラップ管路22の内面に衝突するようにして排水トラップ管路22内の流れを妨げる流れを生じさせることを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、ゼット吐水部32は、排水トラップ管路22の入口部22a内の中央部22fより下方側に向けてゼット吐水流を吐水するので、ゼット吐水流が、コアンダ効果によるボウル部20のボウル部底面20aに沿った流れと、ボウル部20のボウル部底面20aに沿った流れが比較的強い水勢の状態で合流され、両者の流れが相俟ってスムーズに排水トラップ管路22内を流れる流れを形成でき、ゼット吐水流が排水トラップ管路22の内面に衝突するようにして排水トラップ管路22内の流れを妨げる流れを生じさせることを抑制することができる。
【0054】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、ゼット吐水部32の下端部底面60aと、この下端部底面60aの先端から下方に延びるボウル部20のボウル部底面20aの接線C2との間の角度は、140度〜165度の範囲の角度に形成されているので、ゼット吐水部32の下端部底面60aに沿って流出されるゼット吐水流のうちの一部が、コアンダ効果により、ボウル部底面20aに引き寄せられ且つボウル部底面20aに沿って流れることができる。よって、ボウル部20のボウル部底面20aに沿って比較的早期に排水トラップ管路22に到達することによりサイホン作用の起動のタイミングを早めるゼット吐水流と、ゼット吐水部32から排水トラップ管路22に向けて汚物を押込む流れを形成するゼット吐水流と、を形成することができ、サイホン作用により汚物を排出させる水洗大便器1において、より少ない洗浄水量であっても、排水トラップ管路22内からの汚物の排出性能を向上させることができる。