(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1厚み領域が前記積層体の一方の主面に近い側に形成され、前記第2厚み領域が前記積層体の内部側に形成された、請求項1または2に記載された積層型LCフィルタ。
前記第2厚み領域が前記積層体の一方の主面に近い側に形成され、前記第1厚み領域が前記積層体の内部側に形成された、請求項1または2に記載された積層型LCフィルタ。
【背景技術】
【0002】
複数の誘電体層が積層された積層体の内部に、インダクタとキャパシタとからなるLC並列共振器が形成された積層型LCフィルタが、種々の電子機器に使用されている。
【0003】
そのような積層型LCフィルタが、特許文献1(特開2014-57277号公報)に開示されている。
【0004】
図9に、特許文献1に開示された積層型LCフィルタ(高周波フィルタ)1000を示す。
【0005】
積層型LCフィルタ1000は、8層の誘電体層(絶縁体層)101a〜101hが積層された積層体101を備える。
【0006】
誘電体層101aの下側主面に、第1入出力端子(外部電極)102aと、第2入出力端子(外部電極)102bと、グランド端子(外部電極)103とが形成されている。
【0007】
誘電体層101bの上側主面に、2つのキャパシタ導体パターン(共振容量導体)104a、104bが形成されている。
【0008】
また、誘電体層101bに、6つのビア導体105a〜105fが形成されている。
【0009】
誘電体層101cの上側主面に、グランド導体パターン(接地導体)106が形成されている。
【0010】
また、誘電体層101cに、前出の4つのビア導体105c〜105fが形成されている。また、誘電体層101cに、新たに2つのビア導体105g、105hが形成されている。なお、異なる誘電体層に形成された符号が同一のビア導体同士は相互に接続されている。たとえば、誘電体層101bに形成されたビア導体105cと、誘電体層101cに形成された105cとは相互に接続されており、説明の便宜上、同一の符号を付与している(以下、本明細書において同じ)。
【0011】
誘電体層101dの上側主面に、2つのキャパシタ導体パターン104c、104dが形成されている。
【0012】
また、誘電体層101dに、前出の2つのビア導体105g、105hが形成されている。また、誘電体層101dには、新たに4つのビア導体105i〜105lが形成されている。
【0013】
誘電体層101eの上側主面に、浮き導体107が形成されている。なお、浮き導体107は、後述する第1LC並列共振器LC1と第4LC並列共振器LC4とを容量結合させるためのものである。
【0014】
また、誘電体層101eに、前出の6つのビア導体105g〜105lが形成されている。また、誘電体層101eには、新たに2つのビア導体105m、105nが形成されている。
【0015】
誘電体層101fの上側主面に、4つのインダクタ導体パターン108a〜108dが形成されている。
【0016】
また、誘電体層101fに、前出の8つのビア導体105g〜105nが形成されている。
【0017】
誘電体層101gの上側主面に、4つのインダクタ導体パターン108e〜108hが形成されている。
【0018】
また、誘電体層101gには、前出の8つのビア導体105g〜105nが形成されている。
【0019】
誘電体層101hは、保護層であり、導体パターン、ビア導体は形成されていない。
【0020】
第1入出力端子102aとキャパシタ導体パターン104aとが、ビア導体105aによって接続されている。また、第2入出力端子102bとキャパシタ導体パターン104bとが、ビア導体105bによって接続されている。さらに、グランド端子103とグランド導体パターン106とが、4つのビア導体105c〜105fによって接続されている。
【0021】
積層型LCフィルタ1000は、積層体101の内部に、第1LC並列共振器LC1、第2LC並列共振器LC2、第3LC並列共振器LC3、第4LC並列共振器LC4が形成されている。以下、各LC並列共振器の構成について説明する。
【0022】
ビア導体105g、インダクタ導体パターン108a、108e、ビア導体105iが接続されて、キャパシタ導体パターン104aとグランド導体パターン106との間に、ループ状の第1インダクタが構成されている。また、キャパシタ導体パターン104aとグランド導体パターン106とで第1キャパシタが構成されている。そして、第1インダクタと第1キャパシタとが並列に接続されて、第1LC並列共振器LC1が構成されている。なお、第1インダクタにおいては、2つのインダクタ導体パターン108a、108eを1組として接続することにより、内部抵抗を低くしてQ値の向上をはかっている(後述する第2インダクタ〜第4インダクタにおいて同じ)。
【0023】
ビア導体105m、インダクタ導体パターン108b、108f、ビア導体105jが接続されて、キャパシタ導体パターン104cとグランド導体パターン106との間に、ループ状の第2インダクタが構成されている。また、キャパシタ導体パターン104cとグランド導体パターン106とで第2キャパシタが構成されている。そして、第2インダクタと第2キャパシタとが並列に接続されて、第2LC並列共振器LC2が構成されている。
【0024】
ビア導体105n、インダクタ導体パターン108c、108g、ビア導体105kが接続されて、キャパシタ導体パターン104dとグランド導体パターン106との間に、ループ状の第3インダクタが構成されている。また、キャパシタ導体パターン104dとグランド導体パターン106とで第3キャパシタが構成されている。そして、第3インダクタと第3キャパシタとが並列に接続されて、第3LC並列共振器LC3が構成されている。
【0025】
ビア導体105h、インダクタ導体パターン108d、108h、ビア導体105lが接続されて、キャパシタ導体パターン104bとグランド導体パターン106との間に、ループ状の第4インダクタが構成されている。また、キャパシタ導体パターン104bとグランド導体パターン106とで第4キャパシタが構成されている。そして、第4インダクタと第4キャパシタとが並列に接続されて、第4LC並列共振器LC4が構成されている。
【0026】
積層型LCフィルタ1000は、積層体
101の内部に第1LC並列共振器LC1〜第4LC並列共振器LC4が形成され、LC並列共振器のインダクタ同士を次に説明するように磁気結合させ、さらに必要に応じて容量結合(浮き導体107による第1LC並列共振器LC1と第4LC並列共振器LC4との容量結合)を付加することにより、所望の周波数特性を備えた4段のLCバンドパスフィルタを構成している。
【0027】
積層型LCフィルタ1000においては、隣接するLC並列共振器のインダクタ同士が磁気結合されている。すなわち、第1インダクタと第2インダクタとが磁気結合されている。第2インダクタと第3インダクタとが磁気結合されている。第3インダクタと第4インダクタとが磁気結合されている。
【0028】
さらに、積層型LCフィルタ1000においては、離れたLC並列共振器のインダクタ同士も磁気結合されている。すなわち、第1インダクタと第3インダクタとが磁気結合されている。第1インダクタと第4インダクタとが磁気結合されている。第2インダクタと第4インダクタとが磁気結合されている。
【0029】
積層型LCフィルタ1000においては、第1インダクタ〜第4インダクタが、それぞれ、ビア導体とインダクタ導体パターンとビア導体とを順番にループ状に接続した、ループビア構造のインダクタによって構成され、さらに積層体
101を端面方向に透視した場合に、第1インダクタ〜第4インダクタのそれぞれの空芯部分が重なるように配置されているため、離れたLC並列共振器のインダクタ同士であっても容易に磁気結合させることが可能になっている。
【0030】
離れたLC並列共振器のインダクタ同士を磁気結合させることは、所望の周波数特性を形成するうえで非常に重要である。第1インダクタと第3インダクタとを磁気結合させることによって、また第2インダクタと第4インダクタとを磁気結合させることによって、周波数特性に所望の極を形成することができ、かつ、入出力インピーダンスを調整することができる。また、第1インダクタと第4インダクタとを磁気結合させることによって、周波数特性に所望の極を形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
近年、スマートホン、タブレットコンピュータ、携帯電話、携帯型音楽プレーヤーなどの電子機器においては、市場において薄型化が望まれ、急速に薄型化が進んでいる。電子機器の薄型化にともない、電子機器に使用される電子部品においても、低背化(薄型化)が強く望まれ、積層型LCフィルタも例外ではない。
【0033】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された積層型LCフィルタ1000は、第1インダクタ〜第4インダクタが、それぞれ、ビア導体とインダクタ導体パターンとビア導体とが順番にループ状に接続されたループビア構造のインダクタによって構成されているため、低背化が難しいという問題があった。以下、簡単に説明する。
【0034】
ビア導体とインダクタ導体パターンとビア導体とが順番にループ状に接続されたループビア構造のインダクタにおいては、ビア導体の長さがインダクタンス値の形成に大きく寄与しており、ビア導体を短くすると、インダクタの径が小さくなり、インダクタンス値が低下してしまう。積層型LCフィルタ1000を低背化しようとした場合、積層体
101を構成する誘電体層101a〜101hの層数を減らしたり、それぞれの厚みを小さくしたりしなければならず、それにともなって、ビア導体105g〜105nを短くしなければならなくなる。しかしながら、上述したとおり、ビア導体105g〜105nを短くすると、ループビア構造のインダクタからなる第1インダクタ〜第4インダクタは、インダクタンス値が低下してしまうため、積層型LCフィルタ1000は、所望の周波数特性を得ることできなくなってしまう。すなわち、積層型LCフィルタ1000は、第1インダクタ〜第4インダクタがループビア構造のインダクタによって構成されており、低背化すると所望の周波数特性を得ることできなくなってしまうため、低背化することが難しかった。
【0035】
積層型LCフィルタを低背化するためには、各LC並列共振器のインダクタを、ビア導体の長さに依存しない(大きく依存しない)構造のインダクタで構成することが必要になる。たとえば、各LC並列共振器のインダクタを、平面方向に、複数ターン、巻回させたインダクタ導体パターンからなるインダクタによって構成すれば、必要なインダクタンス値を得ることができ、かつ、積層型LCフィルタを低背化させてもインダクタンス値が低下することがない。あるいは、各LC並列共振器のインダクタを、複数のC字状のインダクタ導体パターンを誘電体層の隣接する層間に形成し、ビア導体で接続した構造のインダクタによって構成すれば、必要なインダクタンス値を得ることができ、かつ、積層型LCフィルタを低背化させてもインダクタンス値がほとんど低下することがない。
【0036】
しかしながら、各LC並列共振器のインダクタを、平面方向に、複数ターン、巻回させたインダクタ導体パターンからなるインダクタや、複数のC字状のインダクタ導体パターンをビア導体で接続した構造のインダクタで構成した場合には、離れたLC並列共振器のインダクタ同士を所望の強さで磁気結合させることが難しくなるという、別の問題が発生する。たとえば、誘電体層の1つの層間に、第1LC並列共振器〜第4LC並列共振器のそれぞれインダクタを、平面方向に、複数ターン、巻回させたインダクタ導体パターンからなるインダクタで構成し、平面方向に並べて配置した場合、隣接するインダクタ同士を磁気結合させることはできても、離れたインダクタ同士を所望の強さで磁気結合させることができなくなってしまうという問題があった。また、第1LC並列共振器〜第4LC並列共振器のそれぞれインダクタを複数のC字状のインダクタ導体パターンをビア導体で接続した構造のインダクタで構成し、平面方向に並べて配置した場合、隣接するインダクタ同士を磁気結合させることはできても、離れたインダクタ同士を所望の強さで磁気結合させることができなくなってしまうという問題があった。すなわち、たとえば、特許文献1に記載された積層型LCフィルタ1000において、離れたLC並列共振器のインダクタ同士を磁気結合させることができたのは、積層体
101を端面方向に透視した場合に、第1インダクタ〜第4インダクタのそれぞれの空芯部分が重なるように配置されていたからである。これに対し、各LC並列共振器のインダクタを、平面方向に、複数ターン、巻回させたインダクタ導体パターンからなるインダクタや、複数のC字状のインダクタ導体パターンをビア導体で接続した構造のインダクタで構成し、平面方向に並べて配置した場合、各インダクタの空芯部分が重ならないため、隣接するLC並列共振器のインダクタ同士は距離が近いため磁気結合させることができても、離れたLC並列共振器のインダクタ同士を所望の強さで磁気結合させることができなくなってしまうという問題があった。すなわち、離れたLC並列共振器のインダクタ同士を磁気結合させることができても、望む強さよりも弱くしか磁気結合させることができないという問題があった。
【0037】
上述したように、離れたLC並列共振器のインダクタ同士を磁気結合させることは、所望の周波数特性を形成するうえで非常に重要である。
【0038】
各LC並列共振器のインダクタを、平面方向に、複数ターン、巻回させたインダクタ導体パターンからなるインダクタや、複数のC字状のインダクタ導体パターンをビア導体で接続した構造のインダクタで構成した場合には、積層型LCフィルタを低背化させてもインダクタンス値が低下しないという利点があるが、離れたLC並列共振器のインダクタ同士を所望の強さで磁気結合させることができず、所望の周波数特性を形成することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の積層型LCフィルタは、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の積層型LCフィルタは、複数の誘電体層が積層された直方体状の積層体と、積層体の外表面に形成された第1入出力端子および第2入出力端子と、積層体の外表面に形成された少なくとも1つのグランド端子と、誘電体層の層間に形成された複数のインダクタ導体パターンと、誘電体層の層間に形成された複数のキャパシタ導体パターンと、誘電体層の層間に形成された少なくとも1つのグランド導体パターンと、を備え、インダクタ導体パターンにより第1インダクタ、第2インダクタ、第3インダクタ、第4インダクタがそれぞれ形成され、キャパシタ導体パターンとグランド導体パターンとの間に形成された容量により第1キャパシタ、第2キャパシタ、第3キャパシタ、第4キャパシタがそれぞれ形成され、第1インダクタと第1キャパシタとが並列に接続されて第1LC並列共振器が形成され、第2インダクタと第2キャパシタとが並列に接続されて第2LC並列共振器が形成され、第3インダクタと第3キャパシタとが並列に接続されて第3LC並列共振器が形成され、第4インダクタと第4キャパシタとが並列に接続されて第4LC並列共振器が形成され、
第1LC並列共振器〜第4LC並列共振器のグランド端子側とは反対側の一端同士は導体路で直接には接続されず、第1インダクタと第2インダクタとが、第2インダクタと第3インダクタとが、第3インダクタと第4インダクタとが、それぞれ、磁気結合した4段の積層型LCフィルタであって、積層体は、誘電体層の積層方向に見た場合に、第1平面領域と第2平面領域とを含み、積層体は、誘電体層の積層方向と垂直な方向に見た場合に、それぞれ誘電体層の積層方向に所定の厚みを備えた、第1厚み領域と第2厚み領域とを含み、積層体を誘電体層の積層方向に透視した場合に、第1インダクタと第2インダクタとが第1平面領域に形成されるとともに、第3インダクタと第4インダクタとが第2平面領域に形成され、積層体を誘電体層の積層方向と垂直な方向に透視した場合に、第1インダクタと第4インダクタとが第1厚み領域に形成されるとともに、第2インダクタと第3インダクタとが第2厚み領域に形成され、誘電体層の積層方向に透視したとき、第1インダクタと第3インダクタとが重ならず、かつ、第2インダクタと第4インダクタとが重ならず、積層体は、誘電体層の積層方向と垂直な方向に見た場合に、第1厚み領域と第2厚み領域に加えて、さらに第3厚み領域を含み、第1厚み領域、第2厚み領域、第3厚み領域は、誘電体層の積層方向に、この順番で配置され、積層体を誘電体層の積層方向と垂直な方向に透視した場合に、第1キャパシタと第2キャパシタと第3キャパシタと第4キャパシタとが第3厚み領域に形成され、第1LC並列共振器の第1インダクタの一端と第1キャパシタの一端とが、積層体の外表面に形成された第1入出力端子を経由して接続されるとともに、第1インダクタの他端と第1キャパシタの他端とが、積層体の外表面に形成されたグランド端子を経由して接続され、第4LC並列共振器の第4インダクタの一端と第4キャパシタの一端とが、積層体の外表面に形成された第2入出力端子を経由して接続されるとともに、第4インダクタの他端と第4キャパシタの他端とが、積層体の外表面に形成されたグランド端子を経由して接続されるものとした。
【0040】
第1インダクタと第4インダクタとが第1厚み領域に形成されるとともに、第2インダクタと第3インダクタとが第2厚み領域に形成され、第2インダクタを構成する
インダクタ導体パターンの一端と第3インダクタを構成するインダクタ導体パターンの一端とが、相互に接続されたうえで、グランド端子に接続されたものとすることが好ましい。この場合には、第2インダクタと第3インダクタとの磁気的結合を強めることができ、通過帯域の広帯域化をはかることができる。
【0041】
第1厚み領域を積層体の一方の主面に近い側に形成し、第2厚み領域を積層体の内部側に形成しても良い。あるいは、逆に、第2厚み領域を積層体の一方の主面に近い側に形成し、第1厚み領域を積層体の内部側に形成しても良い。
【0042】
積層体は、誘電体層の積層方向と垂直な方向に見た場合に、第1厚み領域と第2厚み領域に加えて、さらに第3厚み領域を含み、第1厚み領域、第2厚み領域、第3厚み領域は、誘電体層の積層方向に、この順番で配置され、積層体を誘電体層の積層方向と垂直な方向に透視した場合に、第1インダクタと第4インダクタとが第1厚み領域に形成され、第2インダクタと第3インダクタとが第2厚み領域に形成され、第1キャパシタと第2キャパシタと第3キャパシタと第4キャパシタとが第3厚み領域に形成され、第1LC並列共振器の第1インダクタの一端と第1キャパシタの一端とが、積層体の外表面に形成された第1入出力端子を経由して接続されるとともに、第1インダクタの他端と第1キャパシタの他端とが、積層体の外表面に形成されたグランド端子を経由して接続され、第4LC並列共振器の第4インダクタの一端と第4キャパシタの一端とが、積層体の外表面に形成された第2入出力端子を経由して接続されるとともに、第4インダクタの他端と第4キャパシタの他端とが、積層体の外表面に形成されたグランド端子を経由して接続されたもの
としている。第1LC並列共振器の第1インダクタと第1キャパシタを、第1入出力端子とグランド端子とで接続するのではなく、第2厚み領域に別途形成したビア導体で接続し、第4LC並列共振器の第4インダクタと第4キャパシタを、第2入出力端子とグランド端子とで接続するのではなく、第2厚み領域に別途形成したビア導体で接続した場合、第2厚み領域に別途形成するビア導体にスペースを取られるため、第2厚み領域に形成される第2インダクタと第3インダクタとを小型化せざるを得ず、第2インダクタと第3インダクタとのインダクタンス値が低下してしまうという問題があった。これに対し、上記のように、第1LC並列共振器の第1インダクタと第1キャパシタとを積層体の外表面に形成された第1入出力端子とグランド端子とで接続し、第4LC並列共振器の第4インダクタと第4キャパシタを積層体の外表面に形成された第2入出力端子とグランド端子とで接続すれば、第2厚み領域に形成される第2インダクタと第3インダクタの小型化を回避することができる。
【0043】
積層体を誘電体層の積層方向に透視した場合に、第1インダクタの空芯部分と第2インダクタの空芯部分とが、少なくとも部分的に重なり、第1インダクタの空芯部分と第2インダクタの空芯部分とが重なった部分が、キャパシタ導体パターンおよびグランド導体パターンと重なっていない、または、キャパシタ導体パターンもしくはグランド導体パターンと部分的に重なっているが完全には重なっておらず、第3インダクタの空芯部分と第4インダクタの空芯部分とが、少なくとも部分的に重なり、第3インダクタの空芯部分と第4インダクタの空芯部分とが重なった部分が、キャパシタ導体パターンおよびグランド導体パターンと重なっていない、または、キャパシタ導体パターンもしくはグランド導体パターンと部分的に重なっているが完全には重なっていないことが好ましい。この場合には、第1インダクタ〜第4インダクタのそれぞれの磁束形成は、キャパシタ導体パターン、グランド導体パターンによって阻害されず、第1インダクタ〜第4インダクタのQ値は大きく、積層型LCフィルタの挿入損失は小さい。
【発明の効果】
【0044】
本発明の積層型LCフィルタは、第1インダクタと第2インダクタとの磁気結合、第2インダクタと第3インダクタとの磁気結合、第3インダクタと第4インダクタとの磁気結合に加えて、第1インダクタと第3インダクタ、第1インダクタと第4インダクタ、第2インダクタと第4インダクタとが、それぞれ磁気結合しているため、必要な極を備え、入出力インピーダンスが整合された、所望の周波数特性を備えている。また、本発明の積層型LCフィルタは、低背化をはかっても、第1インダクタ、第2インダクタ、第3インダクタ、第4インダクタのインダクタンス値が低下しない(ほとんど低下しない)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0047】
[第1実施形態]
図1〜
図3に、第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100を示す。ただし、
図1は積層型LCフィルタ100の斜視図である。
図2は積層型LCフィルタ100の分解斜視図である。
図3は積層型LCフィルタ100の等価回路図である。
【0048】
積層型LCフィルタ100は、積層体1を備える。
【0049】
積層体1の外表面に、第1入出力端子2aと、第2入出力端子2bと、4つのグランド端子3a、3b、3c、3dが形成されている。より具体的には、第1入出力端子2a、グランド端子3a、第2入出力端子2bが、積層体1の
図1における手前側の側面に形成されている。グランド端子3b、グランド端子3c、グランド端子3dが、積層体1の
図1における奥側の側面に形成されている。
【0050】
第1入出力端子2a、第2入出力端子2b、グランド端子3a、3b、3c、3dは、それぞれ、一端が積層体1の下側主面に延長して形成され、他端が積層体1の上側主面に延長して形成されている。
【0051】
また、積層体1の上側主面に、積層体1の方向性を示すマーク4が形成されている。
【0052】
積層体1は、
図2に示すように、たとえばセラミックなどからなる14層の誘電体層1a〜1nが下から順に積層されたものからなる。
【0053】
誘電体層1aの下側主面および側面に、第1入出力端子2a、第2入出力端子2b、グランド端子3a、3b、3c、3dが形成されている。なお、以下に説明する誘電体層1b〜1nにおいても、側面に第1入出力端子2a、第2入出力端子2b、グランド端子3a、3b、3c、3dが形成されているが、特に必要がない場合には、説明および図面への符号の付与を省略する場合がある。
【0054】
また、誘電体層1aの上側主面に、キャパシタ導体パターン5aが形成されている。
【0055】
誘電体層1bの上側主面に、2つのキャパシタ導体パターン5b、5cが形成されている。キャパシタ導体パターン5bは、誘電体層1bの側面に形成された第1入出力端子2aに接続されている。キャパシタ導体パターン5cは、誘電体層1bの側面に形成された第2入出力端子2bに接続されている。
【0056】
誘電体層1cの上側主面に、グランド導体パターン6が形成されている。グランド導体パターン6は、誘電体層1cの側面に形成されたグランド端子3aおよびグランド端子3cに接続されている。
【0057】
誘電体層1dの上側主面に、4つのキャパシタ導体パターン5d、5e、5f、5gが形成されている。キャパシタ導体パターン5dとキャパシタ導体パターン5eとが相互に接続されている。キャパシタ導体パターン5fとキャパシタ導体パターン5gとが相互に接続されている。
【0058】
誘電体層1eに、2つのビア導体7a、7bが形成されている。ビア導体7aは、キャパシタ導体パターン5dおよびキャパシタ導体パターン5eに接続されている。ビア導体7bは、キャパシタ導体パターン5fおよびキャパシタ導体パターン5gに接続されている。
【0059】
また、誘電体層1eの上側主面に、2つのキャパシタ導体パターン5h、5iが形成されている。キャパシタ導体パターン5hは、誘電体層1eの側面に形成された第1入出力端子2aに接続されている。キャパシタ導体パターン5iは、誘電体層1eの側面に形成された第2入出力端子2bに接続されている。
【0060】
誘電体層1fに、前出の2つのビア導体7a、7bが形成されている。なお、上述したとおり、異なる誘電体層に形成された符号が同一のビア導体同士は、相互に接続されている。
【0061】
また、誘電体層1fの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8a、8bが形成されている。インダクタ導体パターン8aは、一端がビア導体7aに接続されている。インダクタ導体パターン8bは、一端がビア導体7bに接続されている。
【0062】
誘電体層1gに、前出の2つのビア導体7a、7bが形成されている。また、誘電体層1gに、新たに2つのビア導体7c、7dが形成されている。ビア導体7cは、インダクタ導体パターン8aの他端に接続されている。ビア導体7dは、インダクタ導体パターン8bの他端に接続されている。
【0063】
また、誘電体層1gの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8c、8dが形成されている。インダクタ導体パターン8cは、一端がビア導体7aに接続され、他端がビア導体7cに接続されている。インダクタ導体パターン8dは、一端がビア導体7bに接続され、他端がビア導体7dに接続されている。
【0064】
誘電体層1hに、前出の2つのビア導体7c、7dが形成されている。
【0065】
また、誘電体層1hの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8e、8fが形成されている。インダクタ導体パターン8eの一端は、ビア導体7cに接続されている。インダクタ導体パターン8fの一端は、ビア導体7dに接続されている。インダクタ導体パターン8eの他端とインダクタ導体パターン8fの他端とは、点Pで相互に接続されたうえ、誘電体層1hの側面に形成されたグランド端子3aに接続されている。
【0066】
誘電体層1iに、前出の2つのビア導体7c、7dが形成されている。
【0067】
また、誘電体層1iの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8g、8hが形成されている。インダクタ導体パターン8gの一端は、ビア導体7cに接続されている。インダクタ導体パターン8hの一端は、ビア導体7dに接続されている。インダクタ導体パターン8gの他端とインダクタ導体パターン8hの他端とは、点Qで相互に接続されたうえ、誘電体層1iの側面に形成されたグランド端子3aに接続されている。
【0068】
誘電体層1jの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8i、8jが形成されている。インダクタ導体パターン8iの一端は、誘電体層1jの側面に形成されたグランド端子3bに接続されている。インダクタ導体パターン8jの一端は、誘電体層1jの側面に形成されたグランド端子3dに接続されている。
【0069】
誘電体層1kに、新たに2つのビア導体7e、7fが形成されている。ビア導体7eは、インダクタ導体パターン8iの他端に接続されている。ビア導体7fは、インダクタ導体パターン8jの他端に接続されている。
【0070】
誘電体層1kの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8k、8lが形成されている。インダクタ導体パターン8kの一端は、誘電体層1kの側面に形成されたグランド端子3bに接続されている。インダクタ導体パターン8kの他端は、ビア導体7eに接続されている。インダクタ導体パターン8lの一端は、誘電体層1kの側面に形成されたグランド端子3dに接続されている。インダクタ導体パターン8lの他端は、ビア導体7fに接続されている。
【0071】
誘電体層1lに、前出の2つのビア導体7e、7fが形成されている。
【0072】
誘電体層1lの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8m、8nが形成されている。インダクタ導体パターン8mの一端は、誘電体層1lの側面に形成された第1入出力端子2aに接続されている。インダクタ導体パターン8mの他端は、ビア導体7eに接続されている。インダクタ導体パターン8nの一端は、誘電体層1lの側面に形成された第2入出力端子2bに接続されている。インダクタ導体パターン8nの他端は、ビア導体7fに接続されている。
【0073】
誘電体層1mに、前出の2つのビア導体7e、7fが形成されている。
【0074】
誘電体層1mの上側主面に、2つのインダクタ導体パターン8o、8pが形成されている。インダクタ導体パターン8oの一端は、誘電体層1mの側面に形成された第1入出力端子2aに接続されている。インダクタ導体パターン8oの他端は、ビア導体7eに接続されている。インダクタ導体パターン8pの一端は、誘電体層1mの側面に形成された第2入出力端子2bに接続されている。インダクタ導体パターン8pの他端は、ビア導体7fに接続されている。
【0075】
誘電体層1nの上側主面および側面に、第1入出力端子2a、第2入出力端子2b、グランド端子3a、3b、3c、3dが形成されている。また、誘電体層1nの上側主面に、マーク4が形成されている。
【0076】
以上の構造からなる積層型LCフィルタ100は、従来から積層型LCフィルタにおいて広く使用されている材料および製造方法を使用して、作製することができる。
【0077】
積層型LCフィルタ100は、
図3に示す等価回路を備えている。
【0078】
積層型LCフィルタ100は、第1入出力端子2aと第2入出力端子2bとの間に、第1インダクタL1と第1キャパシタC1とが並列に接続された第1LC並列共振器LC1と、第2インダクタL2と第2キャパシタC2とが並列に接続された第2LC並列共振器LC2と、第3インダクタL3と第3キャパシタC3とが並列に接続された第3LC並列共振器LC3と、第4インダクタL4と第4キャパシタC4とが並列に接続された第4LC並列共振器LC4とが、この順番に形成されている。そして、第1インダクタL1と第2インダクタL2とが、第2インダクタL2と第3インダクタL3とが、第3インダクタL3と第4インダクタL4とが、それぞれ、磁気結合している。また、第1LC並列共振器LC1と第2LC並列共振器LC2とが、キャパシタC12によって容量結合している。第3LC並列共振器LC3と第4LC並列共振器LC4とが、キャパシタC34によって容量結合している。第1LC並列共振器LC1と第4LC並列共振器LC4とが、キャパシタC14によって、容量結合している。
【0079】
また、積層型LCフィルタ100においては、さらに、第1インダクタL1と第3インダクタL3、第1インダクタL1と第4インダクタL4、第2インダクタL2と第4インダクタL4も、それぞれ、磁気結合している。
【0080】
上記の等価回路を備えた積層型LCフィルタ100は、所望の周波数特性を備えた4段のバンドパスフィルタを構成している。
【0081】
次に、積層型LCフィルタ100の構造と等価回路との関係について説明する。
【0082】
第1LC並列共振器LC1の第1インダクタL1は、インダクタ導体パターン8m、8oと、ビア導体7eと、インダクタ導体パターン8i、8kとを繋ぐ導体線路により構成されている。なお、インダクタ導体パターン8m、8oは、第1入出力端子2aに接続されている。また、インダクタ導体パターン8i、8kは、グランド端子3bに接続されている。
【0083】
なお、第1インダクタL1は、インダクタ導体パターン8mとインダクタ導体パターン8oとを1組として接続し、インダクタ導体パターン8iとインダクタ導体パターン8kとを1組として接続することにより、内部抵抗を低くしてQ値の向上をはかっている。
【0084】
第1LC並列共振器LC1の第1キャパシタC1は、キャパシタ導体パターン5bと、グランド導体パターン6との間に発生する容量により構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5bは、第1入出力端子2aに接続されている。
【0085】
第1LC並列共振器LC1と第2LC並列共振器LC2とを容量結合するキャパシタC12は、キャパシタ導体パターン5hと、キャパシタ導体パターン5dとの間に発生する容量により構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5hは、第1入出力端子2aに接続されている。
【0086】
第2LC並列共振器LC2の第2インダクタL2は、ビア導体7aと、インダクタ導体パターン8a、8cと、ビア導体7cと、インダクタ導体パターン8e、8gとを繋ぐ導体線路により構成されている。なお、ビア導体7aは、第1LC並列共振器LC1と第2LC並列共振器LC2とを容量結合するキャパシタC12の一方の電極であるキャパシタ導体パターン5dに接続されている。インダクタ導体パターン8e、8gは、点P、Qを経由したうえで、グランド端子3aに接続されている。
【0087】
なお、第2インダクタL2は、インダクタ導体パターン8aとインダクタ導体パターン8cとを1組として接続し、インダクタ導体パターン8eとインダクタ導体パターン8gとを1組として接続することにより、内部抵抗を低くしてQ値の向上をはかっている。
【0088】
第2LC並列共振器LC2の第2キャパシタC2は、キャパシタ導体パターン5eと、グランド導体パターン6との間に発生する容量により構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5eは、第1LC並列共振器LC1と第2LC並列共振器LC2とを容量結合するキャパシタC12の一方の電極であるキャパシタ導体パターン5dに接続されている。
【0089】
第3LC並列共振器LC3の第3インダクタL3は、ビア導体7bと、インダクタ導体パターン8b、8dと、ビア導体7dと、インダクタ導体パターン8f、8hとを繋ぐ導体線路により構成されている。なお、ビア導体7bは、後述する、第3LC並列共振器LC3と第4LC並列共振器LC4とを容量結合するキャパシタC34の一方の電極であるキャパシタ導体パターン5gに接続されている。インダクタ導体パターン8f、8hは、点P、Qを経由したうえで、グランド端子3aに接続されている。
【0090】
なお、第3インダクタL3は、インダクタ導体パターン8bとインダクタ導体パターン8dとを1組として接続し、インダクタ導体パターン8fとインダクタ導体パターン8hとを1組として接続することにより、内部抵抗を低くしてQ値の向上をはかっている。
【0091】
第3LC並列共振器LC3の第3キャパシタC3は、キャパシタ導体パターン5fと、グランド導体パターン6との間に発生する容量により構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5fは、後述する、第3LC並列共振器LC3と第4LC並列共振器LC4とを容量結合するキャパシタC34の一方の電極であるキャパシタ導体パターン5gに接続されている。
【0092】
第3LC並列共振器LC3と第4LC並列共振器LC4とを容量結合するキャパシタC34は、キャパシタ導体パターン5iと、キャパシタ導体パターン5gとの間に発生する容量により構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5iは、第1入出力端子2aに接続されている。キャパシタ導体パターン5gは、上述したように、ビア導体7bおよびキャパシタ導体パターン5fに接続されている。
【0093】
第4LC並列共振器LC4の第4インダクタL4は、インダクタ導体パターン8n、8pと、ビア導体7fと、インダクタ導体パターン8j、8lとを繋ぐ導体線路により構成されている。なお、インダクタ導体パターン8n、8pは、第2入出力端子2bに接続されている。また、インダクタ導体パターン8j、8lは、グランド端子3dに接続されている。
【0094】
なお、第4インダクタL4は、インダクタ導体パターン8nとインダクタ導体パターン8pとを1組として接続し、インダクタ導体パターン8jとインダクタ導体パターン8lとを1組として接続することにより、内部抵抗を低くしてQ値の向上をはかっている。
【0095】
第4LC並列共振器LC4の第4キャパシタC4は、キャパシタ導体パターン5cと、グランド導体パターン6との間に発生する容量により構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5cは、第2入出力端子2bに接続されている。
【0096】
第1LC並列共振器LC1と第4LC並列共振器LC4とを容量結合するキャパシタC14は、キャパシタ導体パターン5aを介在させて、キャパシタ導体パターン5bとキャパシタ導体パターン5cとの間に発生する容量により構成されている。なお、上述したとおり、キャパシタ導体パターン5bは第1入出力端子2aに接続され、キャパシタ導体パターン5cは第2入出力端子2bに接続されている。
【0097】
以上のような構造および等価回路からなる第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100は、次のような特長を備えている。
【0098】
図4(A)、(B)に、積層型LCフィルタ100における、積層体1内における第1インダクタL1、第2インダクタL2、第3インダクタL3、第4インダクタL4の形成位置を示す。ただし、
図4(A)は積層型LCフィルタ100の透視平面図、
図4(B)は積層型LCフィルタ100の透視側面図である。
【0099】
積層型LCフィルタ100の積層体1は、
図4(A)に示すように、誘電体層1a〜1nの積層方向に見た場合に、第1平面領域FD1と、第2平面領域FD2とを含んでいる。そして、第1平面領域FD1に、第1インダクタL1と第2インダクタL2とが形成されている。また、第2平面領域FD2に、第3インダクタL3と第4インダクタL4とが形成されている。
【0100】
積層型LCフィルタ100の積層体1は、
図4(B)に示すように、誘電体層1a〜1nの積層方向と垂直な方向に見た場合に、上から順番に、第1厚み領域TD1と、第2厚み領域TD2と、第3厚み領域TD3とを含んでいる。そして、第1厚み領域TD1に、第1インダクタL1と第4インダクタL4とが形成されている。また、第2厚み領域TD2に、第2インダクタL2と第3インダクタL3とが形成されている。なお、第3厚み領域TD3には、図示していないが、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、第3キャパシタC3、第4キャパシタC4、キャパシタC12、キャパシタC34、キャパシタC14が形成されている。
【0101】
第1インダクタL1と第2インダクタL2とは、上下に配置され、それぞれの空芯部分が重なっているため、磁気結合している。
【0102】
また、第2インダクタL2と第3インダクタL3とは、平面方向に並べて配置され、かつ、第2インダクタL2のインダクタ導体パターン8eと第3インダクタL3のインダクタ導体パターン8fとが点Pで接続されたうえでグランド端子3aに接続され、かつ、第2インダクタL2のインダクタ導体パターン8gと第3インダクタL3のインダクタ導体パターン8hとが点Qで接続されたうえでグランド端子3aに接続されているため、磁気結合している。なお、積層型LCフィルタ100は、第2インダクタL2のインダクタ導体パターン8eと第3インダクタL3のインダクタ導体パターン8fとを相互に接続し、第2インダクタL2のインダクタ導体パターン8gと第3インダクタL3のインダクタ導体パターン8hとを相互に接続したうえで、グランド端子3aに接続する手法を採用したことにより、第2インダクタL2と第3インダクタL3との磁気結合が強められて、通過帯域の広帯域化がはかられている。
【0103】
また、第3インダクタL3と第4インダクタL4とは、上下に配置され、それぞれの空芯部分が重なっているため、磁気結合している。
【0104】
さらに、第1インダクタL1と第4インダクタL4とは、平面方向に並べて近接して配置されているため、磁気結合している。
【0105】
さらに、第1インダクタL1と第3インダクタL3とは、層は異なるが平面方向に並べて近接して配置されているため、磁気結合している。
【0106】
さらに、第2インダクタL2と第4インダクタL4とは、層は異なるが平面方向に並べて近接して配置されているため、磁気結合している。
【0107】
以上のように、積層型LCフィルタ100は、第1インダクタL1と第2インダクタL2、第2インダクタL2と第3インダクタL3、第3インダクタL3と第4インダクタL4を、それぞれ、磁気結合させることにより、バンドパスフィルタとしての基本的な周波数特性を形成している。
【0108】
さらに、積層型LCフィルタ100は、第1インダクタL1と第3インダクタL3とを磁気結合させること、また、第2インダクタL2と第4インダクタL4とを磁気結合させることによって、周波数特性に所望の極を形成し、かつ、入出力インピーダンスの整合をはかっている。また、積層型LCフィルタ100においては、第1インダクタL1と第4インダクタL4とを磁気結合させることによって、周波数特性に所望の極を形成している。
【0109】
また、積層型LCフィルタ100は、第1LC並列共振器LC1の、第1厚み領域TD1に形成された第1インダクタL1と、第3厚み領域に形成された第1キャパシタC1との接続を、積層体1の外表面に形成された第1入出力端子2aとグランド端子3bを経由させておこなっている。仮に、第1インダクタL1と第1キャパシタC1とを、第2厚み領域TD2の内部に別途形成したビア導体によって接続した場合、別途形成するビア導体にスペースを取られるため、第2インダクタL2を小型化せざるを得ず、第2インダクタL2のインダクタンス値が低下してしまうという問題が発生する。しかしながら、積層型LCフィルタ100は、第1インダクタL1と第1キャパシタC1とを、積層体1の外表面に形成された第1入出力端子2aとグランド端子3bによって接続することにより、この問題を回避している。
【0110】
同様に、積層型LCフィルタ100は、第4LC並列共振器LC4の、第1厚み領域TD1に形成された第4インダクタL4と、第3厚み領域に形成された第4キャパシタC4との接続を、積層体1の外表面に形成された第2入出力端子2bとグランド端子3dを経由させておこなっている。仮に、第4インダクタL4と第4キャパシタC4とを、第2厚み領域TD2の内部に別途形成したビア導体によって接続した場合、別途形成するビア導体にスペースを取られるため、第2厚み領域TD2に形成される第3インダクタL3を小型化せざるを得ず、第3インダクタL3のインダクタンス値が低下してしまうという問題が発生する。しかしながら、積層型LCフィルタ100は、
第4インダクタ
L4と
第4キャパシタ
C4とを、積層体1の外表面に形成された第2入出力端子2bとグランド端子3dによって接続することにより、この問題を回避している。
【0111】
また、積層型LCフィルタ100は、積層体1を誘電体層1a〜1nの積層方向に透視した場合に、第1インダクタL1の空芯部分と第2インダクタL2の空芯部分とが重なり、かつ、第1インダクタL1の空芯部分と第2インダクタL2の空芯部分とが重なった部分が、キャパシタ導体パターン5a〜5i、グランド導体パターン6によって、塞がれていない。また、第3インダクタL3の空芯部分と第4インダクタL4の空芯部分とが重なり、かつ、第3インダクタL3の空芯部分と第4インダクタL4の空芯部分とが重なった部分が、キャパシタ導体パターン5a〜5i、グランド導体パターン6によって、塞がれていない。
図5に、積層体1を誘電体層1a〜1nの積層方向に透視した透視平面図を示す。
図5において、キャパシタ導体パターン5a〜5i、グランド導体パターン6、インダクタ導体パターン8a〜8pの少なくともいずれかが形成されている領域を、導体パターン形成領域CDとして示す。
図5から分かるように、導体パターン形成領域CDには、2つの導体パターンン非形成部分N1、N2を含んでいる。そして、導体パターンン非形成部分N1と、第1インダクタL1の空芯部分、第2インダクタL2の空芯部分とが重なり、導体パターンン非形成部分N2と、第3インダクタL3の空芯部分、第4インダクタL4の空芯部分とが重なっている。この結果、第1インダクタL1〜第4インダクタL4の磁束形成は、キャパシタ導体パターン5a〜5i、グランド導体パターン6によって阻害されておらず、第1インダクタL1〜第4インダクタL4のQ値は大きく、積層型LCフィルタ100の挿入損失は小さい。
【0112】
以上のような構造、等価回路および特長を備えた積層型LCフィルタ100は、必要な極が形成され、入出力インピーダンスが整合された、所望の周波数特性を備えている。
図6に、積層型LCフィルタ100の周波数特性を示す。
図6から分かるように、積層型LCフィルタ100の周波数特性は、複数箇所に極が形成され、かつ、入出力インピーダンスの整合がはかられている。
【0113】
また、積層型LCフィルタ100は、第1インダクタL1〜第4インダクタL4を、ビア導体とインダクタ導体パターンとビア導体とを順番にループ状に接続したループビア構造のインダクタによって構成したものではないため、低背化をはかっても、第1インダクタL1〜第4インダクタL4のインダクタンス値が低下してしまうことがない。
【0114】
[第2実施形態]
図7(A)、(B)に、第2実施形態にかかる積層型LCフィルタ200を示す。ただし、
図7(A)は積層型LCフィルタ200の透視平面図、
図7(B)は積層型LCフィルタ200の透視側面図である。
【0115】
積層型LCフィルタ200は、第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100に変更を加えた。具体的には、積層型LCフィルタ100では、第3インダクタL3を第2厚み領域TD2に形成し、第4インダクタL4を第1厚み領域TD1に形成していたが、積層型LCフィルタ200では、これを入れ替え、
図7(B)に示すように、第3インダクタL3を第1厚み領域TD1に形成し、第4インダクタL4を第2厚み領域TD2に形成した。そして、この変更にともない、積層型LCフィルタ200は、キャパシタ導体パターン5a〜5i、グランド導体パターン6、インダクタ導体パターン8a〜8pの一部のものの形状や、形成位置を変更した。また、これらの導体パターンの、第1入出力端子2a、第2入出力端子2b、グランド端子3a〜3dに対する接続関係の一部を変更した。
【0116】
なお、積層型LCフィルタ100では、第2インダクタL2のインダクタ導体パターン8eと第3インダクタL3のインダクタ導体パターン8fとを点Pにおいて接続し、第2インダクタL2のインダクタ導体パターン8gと第3インダクタL3のインダクタ導体パターン8hとを点Qにおいて接続したうえで、グランド端子3aに接続し、通過帯域の広帯域化をはかる手法を採用していたが、積層型LCフィルタ200では、この手法は採用していない。すなわち、インダクタ導体パターン8e、インダクタ導体パターン8f、インダクタ導体パターン8g、インダクタ導体パターン8hは、それぞれ個別に、グランド端子3aに接続されている。
【0117】
積層型LCフィルタ200も、積層型LCフィルタ100と同様に、第1インダクタL1と第2インダクタL2、第2インダクタL2と第3インダクタL3、第3インダクタL3と第4インダクタL4が、それぞれ磁気結合しているのに加えて、第1インダクタL1と第3インダクタL3、第1インダクタL1と第4インダクタL4、第2インダクタL2と第4インダクタL4が、それぞれ磁気結合しており、必要な極が形成され、入出力インピーダンスが整合された、所望の周波数特性を備えている。
【0118】
[第3実施形態]
図8(A)、(B)に、第3実施形態にかかる積層型LCフィルタ300を示す。ただし、
図8(A)は積層型LCフィルタ300の透視平面図、
図8(B)は積層型LCフィルタ300の透視側面図である。
【0119】
積層型LCフィルタ300も、第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100に変更を加えた。具体的には、積層型LCフィルタ100では、第1厚み領域TD1を積層体1の一方の主面(図における上側の主面)に近い側に形成し、第2厚み領域TD2を積層体1の内部側に形成していたが、積層型LCフィルタ300では、これを入れ替え、第2厚み領域TD2を積層体1の一方の主面(図における上側の主面)に近い側に形成し、第1厚み領域TD1を積層体1の内部側に形成した。
【0120】
積層型LCフィルタ300も、積層型LCフィルタ100と同様に、第1インダクタL1と第2インダクタL2、第2インダクタL2と第3インダクタL3、第3インダクタL3と第4インダクタL4が、それぞれ磁気結合しているのに加えて、第1インダクタL1と第3インダクタL3、第1インダクタL1と第4インダクタL4、第2インダクタL2と第4インダクタL4が、それぞれ磁気結合しており、必要な極が形成され、入出力インピーダンスが整合された、所望の周波数特性を備えている。
【0121】
以上、第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100、第2実施形態にかかる積層型LCフィルタ200
、第3実施形態にかかる積層型LCフィルタ300について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。