特許第6908900号(P6908900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908900
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】衣類のセット台用カバー
(51)【国際特許分類】
   D06F 83/00 20060101AFI20210715BHJP
   D06F 71/29 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   D06F83/00
   D06F71/29 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-164393(P2017-164393)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-41779(P2019-41779A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504435818
【氏名又は名称】株式会社三幸社
(74)【代理人】
【識別番号】100084571
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 玄陽
(72)【発明者】
【氏名】打越 裕介
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−194898(JP,A)
【文献】 特開2016−198190(JP,A)
【文献】 実開平04−049099(JP,U)
【文献】 特開昭59−022700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 83/00
D06F 71/00 − 71/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が排気されて衣類が吸着可能に形成されているセット台に使用するカバーであって、衣類の特定部位を配置する箇所が上面に形成され、この箇所以外の上面箇所の通気性が制限され、衣類の特定部位を配置する箇所の通気性が最良に形成されていることを特徴とする衣類のセット台用カバー。
【請求項2】
請求項1記載の衣類のセット台用カバーであって、衣類の特定部位を配置する箇所が、横長状の上面の長手方向の一方側に、上面の奥行きの全体にわたって形成されていることを特徴とする衣類のセット台用カバー。
【請求項3】
請求項2記載の衣類のセット台用カバーであって、衣類の特定部位を配置する箇所以外の上面箇所が、非通気性に形成されていることを特徴とする衣類のセット台用カバー。
【請求項4】
請求項2記載の衣類のセット台用カバーであって、衣類の特定部位を配置する箇所以外の上面箇所が、衣類の特定部位を配置する箇所に隣接する部分と、この隣接する部分に連なる残りの部分とに形成され、上記の隣接する部分が、衣類の特定部位を配置する箇所より通気性が劣る状態に形成され、上記の残りの部分が、非通気性に形成されていることを特徴とする衣類のセット台用カバー。
【請求項5】
請求項4記載の衣類のセット台用カバーであって、通気性の生地で上面が形成され、衣類の特定部位を配置する箇所以外の上面箇所の裏側が、上面の生地より通気性が劣る生地で覆われ、残りの部分の裏側が、この通気性が劣る生地を介して非通気性の面状材で覆われて形成されていることを特徴とする衣類のセット台用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類のセット台用カバーに関し、更に詳しくは内部が排気されて衣類が上面に吸着可能に形成されているセット台に使用するカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のセット台としては、例えばズボン仕上げ機の下鏝がある。この下鏝は、ズボンが位置ずれしないよう、内部が排気され、上面にズボンが吸着可能に形成されている。
この場合、下鏝は、ズボンをセット台の上面に、セット台の長手方向の全長にわたって同じ力で吸着するよう形成されている。
【0003】
ところで、ズボンは、例えば裾の折り返し箇所など、厚みの違う部位がある。またズボン以外の衣類も、例えば上着のラペルのように、生地が重ねられている部位を有していることが多い。
【0004】
従って、従来、この種の部位は、プレス圧が均等に加わり難かったから、一度のプレスでは、綺麗に仕上げることができないことがあった。
そのため従来は、クリーニングの際に、作業者は、このような部位だけをセット台に配置し、再仕上げすることがあった。
【0005】
しかしながら、セット台は、従来、上記の通り、長手方向の上面の全体が同じ状態で、ズボン等を吸引する構造であった。
従って、この種の部位をセット台に配置すると、例えばズボンの脚は、腰周りの重みで、またラペルは、上着の肩や腕の重みでセット台から位置ずれし易く、その結果、従来は、セット台に、この種の部位を、しっかりと確実に吸着させることができない、という問題があった。
【0006】
而して、このような問題を解決するため、この種の部位を仕上げるためだけの専用の機械を導入すると、クリーニング工場内のスペースを狭小化させ、設備コストの増加を招くことになる。
【0007】
また特許文献1に記載されているように、セット台を改造して吸引力(吸着力)を大きくするのでは、セット台のコストが高くなり、ひいてはこの種のセット台を備えたズボン仕上げ機等の価格が高くなるのを避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−113299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、提案されたものである。
従って、本発明の解決しようとする技術的課題は、ズボン仕上げ機等の、衣類の吸着機能を備えたセット台を利用し、このセット台に衣類の特定部位を、しっかりと確実に吸着できるよう形成し、専用機械を設置したり、セット台を改造することなく、簡便に、且つ低コストで衣類の特定部位を仕上げることが可能になるよう形成した衣類のセット台用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち、本発明は、図1等に示されるように、内部2aが排気されて衣類3が吸着可能に形成されているセット台2に使用するカバー1であって、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aが上面に形成され、この箇所1a以外の上面箇所1bの通気性が制限され、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aの通気性が最良に形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
ここで、衣類3の特定部位3aとしては、例えば上着のラペルやポケットの箇所、或いはズボンの裾の折り返し箇所などがある。本発明の場合、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aの形状、大きさ、位置等は、任意である。
【0012】
而して、本発明は、図1等に示されるように、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aが、横長状の上面の長手方向の一方側に、上面の奥行きの全体にわたって形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0013】
セット台2は、その側方が開放されているため、これによると、衣類3の特定部位3aとしてのラペル等をセットし易くなるからである。またこの場合は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aが、上面の奥行きの全体にわたって形成され、その面積が大きいため、衣類3の特定部位3aが大きい場合でも対応し易く、使い勝手が良くなるからである。
【0014】
また本発明は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1a以外の上面箇所1bが、非通気性に形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0015】
なぜなら、これによると、吸引力を衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aに集中でき、大きな吸引力(吸着力)を得ることができるからである。この場合、非通気性は、例えば上面箇所1bを非通気性の面状材8で形成したり、上面箇所1bの裏側を非通気性の面状材8で覆ったり、或いは上面箇所1bを非通気質にコーティング処理することで実現される。
【0016】
また本発明は、図1A等に示されるように、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1a以外の上面箇所1bが、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aに隣接する部分1b1と、この隣接する部分1b1に連なる残りの部分1b2とに形成され、上記の隣接する部分1b1が、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aより通気性が劣る状態に形成され、上記の残りの部分1b2が、非通気性に形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0017】
本発明のカバー1は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aの面積を大きくすれば、衣類3の特定部位3aが大きい場合でも対応し易くなる。しかし、このように形成すると、その分、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aの吸着力が弱められ、衣類3の特定部位3aを、しっかりと確実に、セット台2に固定できなくなる。
【0018】
而して、この請求項4記載の本発明のカバー1によれば、衣類3の特定部位3aは、特定部位3aを配置する箇所でしっかりと、また食み出る部分は隣接する部分1b1で捲れや位置ずれを防止できる。従って、これによると、吸着力の低下を抑えながら、衣類3の特定部位3aが大きい場合でも対応できる、という利点がある。
【0019】
而して、この本発明のカバー1は、図3図4に示されるように、通気性の生地6で上面が形成され、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1a以外の上面箇所1bの裏側が、上面の生地6より通気性が劣る生地7で覆われ、残りの部分1b2の裏側が、この通気性が劣る生地7を介して非通気性の面状材8で覆われて形成されているのが好ましい(請求項5)。
【0020】
なぜなら、これによると、カバー1の上面から、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1a、隣接する部分1b1、残りの部分1b2を区画する縫い目等の境界線を一掃でき、カバー1の体裁を良くできるからである。
またこれによると、通気性の生地6の裏側に、この生地6より通気性が劣る生地7と、非通気性の面状材8を重ね合わせ、周囲を縫い付けることで、簡単、迅速、低コストで本発明のカバー1を製造できるからである。
更にこの場合は、生地7の種類を適宜選定するだけで、隣接する部分1b1の通気性を、簡単、容易に、且つ低コストで調節できるからである。
【0021】
なお、本発明の場合、生地6、7は織られているものには限られず、不織布でも良い。また非通気性の面状材8としては、例えば樹脂シート等がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、このように形成されているから、衣類の特定部位を配置する箇所の吸引力(吸着力)を大きくすることができる。
従って、この箇所に、例えば上着のラペル等の特定部位を配置すれば、上着の肩部分等の重さの影響を受けることなく、セット台にしっかりと確実にラペル等を固定でき、その結果、上鏝や手持ちアイロンで、ラペル等を楽に且つ綺麗に仕上げることができる。
【0023】
また本発明は、専用の機械を設置したり、セット台を改造することなく、ラペル等の仕上げが可能になる。
従って、これによれば、簡単、低コストで、衣類の特定部位を仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のカバーの好適な一実施形態を示し、Aは平面図、Bは底面図、Cはセット台を示す要部正面図である。
図2】ズボン仕上げ機の斜視図である。
図3】Aは同上カバーの平面図、BはAのB―B線の要部断面図である。
図4】Aは同上カバーの底面図、BはAのB―B線の要部断面図である。
図5】同上カバーの他の実施形態を示し、Aは平面図、BはAのB―B線の要部断面図である。
図6】Aは図5のカバーの底面図、BはAのB―B線の要部断面図である。
図7】同上カバーの更に他の実施形態を示し、Aは平面図、BはAのB―B線の要部断面図である。
図8】Aは図7のカバーの底面図、BはAのB―B線の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な一実施形態を、添付図面に従って説明する。
本発明のカバー1は、図1等に示されるように、内部2aが排気されて衣類3が吸着可能に形成されているセット台2に被せて使用するものである。
【0026】
この実施形態の場合、セット台2は、図2に示されるように、ズボン仕上げ機4の横長状の下鏝である。ズボン仕上げ機4は、セット台2としての下鏝を押圧する上鏝5を備えて形成されている。
【0027】
また本発明のカバー1は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aが、上面に形成されている。この実施形態の場合、衣類3は背広の上着であり、衣類3の特定部位3aは、ラペルである。
【0028】
衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aは、この実施形態では、図1A等に示されるように、横長状の上面の長手方向の一方側に、上面の奥行きの全体にわたって形成されている。
【0029】
また本発明のカバー1は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1a以外の上面箇所1b(図1A等参照)は、通気性が制限され、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aの通気性が最良に形成されている。
【0030】
上記の上面箇所1bは、具体的には、図1A図3A等に示されるように、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aに隣接する部分1b1と、この隣接する部分1b1に連なる残りの部分1b2とで形成されている。そして、本発明のカバー1は、上記の隣接する部分1b1が、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aより通気性が劣る状態に形成され、上記の残りの部分1b2が、非通気性に形成されている。
【0031】
具体的には、図3B等に示されるように、カバー1の横長状の上面が、通気性の生地6で形成されている。そして、上記の隣接する部分1b1の裏側が、上面の生地6より通気性が劣る生地7で覆われている。この生地7は、上記の残りの部分1b2の裏側まで覆うことができるよう長く形成されている。
【0032】
また上記の残りの部分1b2の裏側は、通気性が劣る生地7を介して非通気性の面状材8で覆われている。通気性の生地6と、これより通気性が劣る生地7と、残りの部分1b2を覆う非通気性の面状材8は重ね合わされ、周囲が縫い合わされている。
【0033】
本発明のカバー1は、セット台2の側面と共に、セット台2の下側を覆う周辺部分1c(図1B図4A等参照)に、間隔をあけて、セット台2への固定用の帯紐9が設けられている。この帯紐9は、伸縮性を有し、裏面9aが雌型の面状ファスナーで形成されている。
【0034】
10(図1B等参照)は、雄型の面状ファスナーである。この雄型の面状ファスナー10は、帯紐9の開放端と対応する周辺部分1cの位置に設けられている。カバー1は、上記の雌型の面状ファスナーが、雄型の面状ファスナー10に鉤着されることにより、上記のセット台2に緊張状に被せられるものである。
【0035】
なお、図1B図4Aに示されるように、周辺部分1cは、長手方向の他方側において開放されている。そして、この開放部分が雌雄一対の面状ファスナー11で連結可能に形成されている。
【0036】
次に本発明の作用を説明する。
先ず、作業者は、図1A図2等に示されるように、衣類3の特定部位3aとしてのラペルを、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aに、拡げて配置する。この場合、作業者は、左右一対のラペルを一度でプレス仕上げできるよう、左右のラペルを一緒に拡げてセットするのが良い。
【0037】
ラペルは、サイズが大きいと、隣接する部分1b1に食み出て配置される。また上着の前身頃や裾は、隣接する部分1b1や残りの部分1b2に配置される。
【0038】
而して、この実施形態の本発明のカバー1は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aの通気性が最も良く、隣接する部分1b1も多少の通気性を備え、残りの部分1b2は、非通気性に形成されている。
【0039】
従って、本発明のカバー1によると、ラペルは、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aで強くしっかりと吸着され、隣接する部分1b1に食み出る箇所も弱くではあるが吸着され、捲れなどが防止される。作業者は、この状態で上鏝5を下ろし、或いは手持ちアイロンをかけてラペルを仕上げる。
【0040】
以上の処において、本発明のカバー1の構造は、上例には限られない。即ち、本発明は、例えば衣類3の特定部位3aを配置する箇所1a以外の上面箇所1bの全体が、非通気性に形成されているのでも良い。
【0041】
また本発明のカバー1は、上例のように、上面箇所1bが、吸着力の弱い部分と非通気性の部分とに形成される場合でも、その実現の仕方は、上例に限定されるものではない。
【0042】
即ち、本発明のカバー1は、図5図6に示されるように、上面の全体が通気性の生地6で形成され、上記の隣接する部分1b1の裏側に、通気性が劣る生地7が重ね合わされて縫い付けられ、残りの部分1b2の裏側に、非通気性の面状材8が重ね合わされて縫い付けられているのでも良い。
【0043】
また本発明のカバー1は、図7図8に示されるように、隣接する部分1b1の裏側に、通気性が劣る生地7が生地6に重ね合わされて縫い付けられ、残りの部分1b2が非通気性の面状材8で形成されているのでも良い。
【0044】
なお、本発明のカバー1は、衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aが、この部分以外の上面箇所1bと明確に区別が付くよう、例えば着色されたり、或いは柄が付されているのでも良い。この場合は、不慣れな作業者でも衣類3の特定部位3aを配置する箇所1aを、楽に且つ明確に、判別、特定でき、その分、使い勝手が良くなる、という利点がある。
【符号の説明】
【0045】
1 カバー
1a 衣類の特定部位を配置する箇所
1b 衣類の特定部位を配置する箇所以外の上面箇所
1b1 衣類の特定部位を配置する箇所に隣接する部分
1b2 隣接する部分に連なる残りの部分
1c 周辺部分
2 セット台
2a 内部
3 衣類
3a 特定部位
6 通気性の生地
7 通気性が劣る生地
8 非通気性の面状材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8