(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908941
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】インク組成物、光電デバイスおよび光電デバイスの機能層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/02 20140101AFI20210715BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20210715BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20210715BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20210715BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20210715BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
C09D11/02
H05B33/14 Z
H05B33/14 B
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/10
【請求項の数】28
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-541318(P2019-541318)
(86)(22)【出願日】2018年2月2日
(65)【公表番号】特表2020-508362(P2020-508362A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】CN2018075010
(87)【国際公開番号】WO2018149305
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】201710088547.5
(32)【優先日】2017年2月17日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201710233555.4
(32)【優先日】2017年4月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519271746
【氏名又は名称】ナージン テクノロジー コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NAJING TECHNOLOGY CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ハイタオ
(72)【発明者】
【氏名】ペン,ジュンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,チャングア
【審査官】
山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−266824(JP,A)
【文献】
特表2004−532096(JP,A)
【文献】
特開2010−161070(JP,A)
【文献】
特開2004−014172(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/018082(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第107400414(CN,A)
【文献】
特開2014−077046(JP,A)
【文献】
特表2007−527624(JP,A)
【文献】
特開2010−209141(JP,A)
【文献】
有機溶剤系同時重層塗布技術の開発,KONICA TECHNICAL REPORT,1998年,Vol.11,p.105-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
H05B 33/10−33/14
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物であって、前記インク組成物は、A成分及びB成分を含み、前記A成分は、第1液体を含み、前記B成分は、第2液体および前記第2液体に分散された機能性材料を含み、前記第1液体の沸点は前記第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高く、前記第1液体と前記第2液体が互いに非相溶であり、前記機能性材料は、前記第2液体に対する溶解度が1g以上であり、前記第1液体に対する溶解度が0.05g以下であり、前記第1液体の密度は前記第2液体の密度よりも大きく、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は、0.8〜1.2であることを特徴とするインク組成物。
【請求項2】
前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は0.9〜1.1であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力との比が1であることを特徴とする請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記機能性材料は、前記第2液体に対する溶解度が2g以上であり、前記第1液体に対する溶解度が0.01g以下である請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記第1液体の沸点は、前記第2液体の沸点よりも少なくとも20℃高いことを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記第1液体の沸点は、前記第2液体の沸点よりも少なくとも30℃高いことを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記機能性材料は、電子注入材料、電子輸送材料、正孔注入材料、正孔輸送材料および発光材料のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記第1液体または第2液体は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、一価アルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、エーテル、アルコールエーテルおよび水からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記B成分において、前記機能性材料の固形分が1mg/mL〜200mg/mLであることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記機能性材料は、発光材料であり、前記発光材料は発光ナノクリスタルであり、前記第1液体は、アルコールおよびエステルのうちのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記アルコールとしては、炭素数18未満の一価アルコールまたは多価アルコールが用いられることを特徴とする請求項10に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記アルコールとしては、炭素数6以上18未満の一価アルコールまたは炭素数2以上18未満の多価アルコールが用いられることを特徴とする請求項11に記載のインク組成物。
【請求項13】
前記第2液体は、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素のうちのいずれか1種以上を含み、前記第2液体の沸点は、170〜300℃であることを特徴とする請求項10に記載のインク組成物。
【請求項14】
前記第2液体は、炭素数9〜18の芳香族炭化水素および/または炭素数10〜18のアルカンを含むことを特徴とする請求項13に記載のインク組成物。
【請求項15】
前記第2液体は、炭素数10〜18の芳香族炭化水素を含むことを特徴とする請求項14に記載のインク組成物。
【請求項16】
前記第2液体は、さらに機能調節剤を含み、前記機能調節剤は、アルコール、ケトンまたはエステルから選ばれることを特徴とする請求項13に記載のインク組成物。
【請求項17】
前記機能調節剤は、前記第2液体における体積分率が10%〜50%であることを特徴とする請求項16に記載のインク組成物。
【請求項18】
前記アルカンは、前記第2液体における体積百分率が30%以上であることを特徴とする請求項14に記載のインク組成物。
【請求項19】
前記アルカンは、前記第2液体における体積百分率が50%以上であることを特徴とする請求項18に記載のインク組成物。
【請求項20】
前記B成分において、前記発光ナノクリスタルの濃度が20mg/mL〜200mg/mLであることを特徴とする請求項10に記載のインク組成物。
【請求項21】
前記発光ナノクリスタルは、表面リガンドを備え、前記表面リガンドは、カルボン酸、アルキルメルカプタン、アミン、アルキルホスフィンおよびアルキルホスフィンオキシドからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項10に記載のインク組成物。
【請求項22】
前記A成分の表面張力は、30〜45dyn/cmであることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項23】
前記B成分の表面張力は、25〜40dyn/cmであることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項24】
前記A成分とB成分との体積比は、1:1〜10:1であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項25】
光電デバイスの機能層の製造方法であって、前記製造方法は下記を含む:
A成分を第1予備層として用いる工程と、
B成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成し、プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、前記光電デバイスの機能層に形成する工程、
ここで、前記A成分および前記B成分は、請求項1〜24のいずれか1項に記載のインク組成物の中のA成分およびB成分であることを特徴とする光電デバイスの機能層の製造方法。
【請求項26】
前記第1予備層および/または第2予備層の設置方式としては、インクジェットプリンティング、スリットコートまたはスプレーコーティングが用いられることを特徴とする請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
光電デバイスの製造方法であって、前記光電デバイスの製造方法は、機能層の製造ステップを含む。前記機能層の製造ステップは下記を含む:
A成分を第1予備層として用いる工程と、
B成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成する工程と、
C成分を前記第2予備層上に設け、第3予備層に形成し、プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、隣接している2層の機能層に形成する工程、
ここで、乾燥後の前記第1予備層および前記第2予備層は、1層の機能層に形成し、乾燥後の前記第3予備層は、別の機能層に形成し、
前記A成分および前記B成分は、請求項1〜24のいずれか1項に記載のインク組成物のA成分およびB成分であり、前記C成分の液体密度は前記B成分の液体密度よりも小さく、前記C成分の液体と前記B成分の液体が互いに非相溶であり、前記C成分における機能性材料は、前記B成分の液体に対する溶解度が0.05g以下であり、かつ、前記C成分の液体の表面張力と前記B成分の液体の表面張力との比は、0.8〜1.2であることを特徴とする光電デバイスの製造方法。
【請求項28】
光電デバイスの製造方法であって、前記光電デバイスの製造方法は、機能層の製造ステップを含む。前記機能層の製造ステップは下記を含む:
A1成分を第1予備層として用いる工程と、
B1成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成する工程と、
A2成分を前記第2予備層上に設け、第3予備層に形成し、前記第2予備層上と前記第3予備層が隣接されている工程と、
B2成分を前記第3予備層上に設け、第4予備層に形成し、プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、2層の機能層に形成する工程、
乾燥後の前記第1予備層および前記第2予備層は、1層の機能層に形成し、乾燥後の前記第3予備層および前記第4予備層が別の機能層に形成し、A1成分およびB1成分は、請求項1〜24のいずれかに記載のインク組成物のA成分およびB成分であり、A2成分およびB2成分も、請求項1〜24のいずれか1項に記載のインク組成物の中のA成分およびB成分であり、かつ、前記A2成分の液体密度は前記B1成分の液体密度よりも小さく、かつ、前記A2成分の液体と前記B1成分の液体が互いに非相溶であり、前記B1成分における機能性材料は、前記A2成分の液体に対する溶解度が0.05g以下であり、かつ、前記A2成分の液体の表面張力と前記B1成分の液体の表面張力との比は、0.8〜1.2であることを特徴とする光電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料溶液の分野に関し、具体的に、インク組成物、光電デバイスおよび光電デバイスの機能層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液法を用いて発光デバイスを製造すると、コーヒーリング現象またはインクの中間積層現象が発生され、従って、膜層および発光が不均一になる。
【0003】
従来技術においては、対流による薄膜の均一性が改善される有機発光材料溶液のインクジェットプリンティング方法が提供され、そのうち、2つの溶媒を含み、第1溶媒がクロロベンゼンであり、第2溶媒がクメンであり、2つの溶媒の沸点は、いずれも160℃以下であり、粘度は、いずれも1cps以下であり、ノズルのインク噴出品質が影響を受けるだけでなく、溶媒の乾燥速度も比較的速く、膜層の均一性に影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
ある報道により、量子ドットのインク組成物が開示され、組成物としては、アルカンと小分子アルコールの混合溶媒体系が選ばれ、そのうち、アルコールよりも、アルカンの沸点が高く。また、小分子アルコールの溶媒を加えても、インクジェットプリンティング技術に用いるようにインクの組成物を調節するのみを目的とし、実際にコーヒーリングの問題を解決することができない。
【0005】
従って、従来の溶液法による成膜時に不均一な膜層が形成しやすいという問題を解決するには、従来技術をさらに改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インクの組成物、光電デバイスおよび光電デバイスの機能層の製造方法を提供し、従来技術における溶液法による成膜時に不均一な膜層が形成しやすいという問題を解決することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、インク組成物が提供され、前記インク組成物は、A成分及びB成分を含み、前記A成分は、第1液体を含み、前記B成分は、第2液体および前記第2液体に分散された機能性材料を含み、前記第1液体の沸点は前記第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高く、前記第1液体と前記第2液体が互いに非相溶であり、前記機能性材料は、前記第2液体に対する溶解度が1g以上であり、前記第1液体に対する溶解度が0.05g以下であり、前記第1液体の密度は前記第2液体の密度よりも大きく、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は、0.8〜1.2である。
【0008】
さらに、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は0.9〜1.1であり、好ましくは、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力との比が1である。
【0009】
さらに、前記機能性材料は、前記第2液体に対する溶解度が2g以上であり、前記第1液体に対する溶解度が0.01g以下である。
【0010】
さらに、前記第1液体の沸点は前記第2液体の沸点よりも少なくとも20℃高く、好ましくは、少なくとも30℃高い。
【0011】
さらに、前記機能性材料は、電子注入材料、電子輸送材料、正孔注入材料、正孔輸送材料および発光材料のいずれかから選ばれる。
【0012】
さらに、前記第1液体または第2液体は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、一価アルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、エーテル、アルコールエーテルおよび水からなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0013】
さらに、前記B成分において、前記機能性材料の固形分が1mg/mL〜200mg/mLである。
【0014】
さらに、前記機能性材料は、発光材料であり、前記発光材料は発光ナノクリスタルであり、前記第1液体は、アルコールおよびエステルのうちのいずれか1種以上を含む、前記アルコールとしては、好ましくは、炭素数18未満の一価アルコールまたは多価アルコールが用いられる、さらに好ましくは、炭素数6〜18の一価アルコールまたは炭素数2〜18の多価アルコールが用いられる。
【0015】
さらに、前記第2液体は、脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素のうちのいずれか1種以上を含み、前記第2液体の沸点は、170〜300℃であり、好ましくは、前記第2液体は、炭素数9〜18の芳香族炭化水素および/または炭素数10〜18のアルカンを含み、さらに好ましくは、炭素数10〜18の芳香族炭化水素を含む。
【0016】
さらに、前記第2液体は、さらに機能調節剤を含む、前記機能調節剤は、アルコール、ケトンまたはエステルから選ばれ、機能調節剤は、前記第2液体における体積分率が10%〜50%である。
【0017】
さらに、アルカンは、前記第2液体における体積百分率30%以上であり、50%以上であることが好ましい。
【0018】
さらに、前記B成分において、前記発光ナノクリスタルの濃度が20mg/mL〜200mg/mLである。
【0019】
さらに、前記発光ナノクリスタルは、表面リガンドを備え、前記表面リガンドは、カルボン酸、アルキルメルカプタン、アミン、アルキルホスフィンおよびアルキルホスフィンオキシドからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0020】
さらに、前記A成分の表面張力は、30〜45dyn/cmである。
【0021】
さらに、前記B成分の表面張力は、25〜40dyn/cmである。
【0022】
さらに、前記A成分とB成分との体積比は、1:1〜10:1である。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、光電デバイスの機能層の製造方法が提供され、前記光電デバイスの機能層の製造方法であって、前記製造方法は下記を含む:
A成分を第1予備層として用いる工程と、
B成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成し、プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、前記光電デバイスの機能層に形成する工程。
【0024】
ここで、前記A成分および前記B成分は、上記のいずれかのインク組成物におけるA成分およびB成分である。
【0025】
さらに、前記第1予備層および/または第2予備層の設置方式としては、インクジェットプリンティング、スリットコートまたはスプレーコーティングが用いられる。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、光電デバイスの製造方法が提供され、前記光電デバイスの製造方法であって、前記光電デバイスの製造方法は、機能層の製造ステップを含む。前記機能層の製造ステップは下記を含む:
A成分を第1予備層として用いる工程と、
B成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成する工程と、
C成分を前記第2予備層上に設け、第3予備層に形成し、前記プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、隣接している2層の機能層に形成する工程。
【0027】
ここで、乾燥後の前記第1予備層および前記第2予備層は、1層の機能層に形成し、乾燥後の前記第3予備層は、別の機能層形成する、
前記A成分および前記B成分は、上記のいずれかのインク組成物のA成分およびB成分であり、前記C成分の液体密度は前記B成分の液体密度よりも小さく、前記C成分の液体と前記B成分の液体が互いに非相溶であり、前記C成分における機能性材料は、前記B成分の液体に対する溶解度が0.05g以下であり、かつ、前記C成分の液体の表面張力と前記B成分の液体の表面張力との比は、0.8〜1.2である。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、光電デバイスの製造方法が提供され、前記光電デバイスの製造方法は、機能層の製造ステップを含む。前記機能層の製造ステップは下記を含む:
A1成分を第1予備層として用いる工程と、
B1成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成する工程と、
前記A2成分を前記第2予備層上に設け、第3予備層に形成し、前記第2予備層上と前記第3予備層が隣接されている工程と、
B2成分を前記第3予備層上に設け、第4備層に形成し、前記プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、2層の機能層に形成する工程。
【0029】
乾燥後の前記第1予備層および前記第2予備層は、1層の機能層に形成し、乾燥後の前記第3予備層および前記第4予備層が別のひとつ機能層に形成し、A1成分およびB1成分は、上記のいずれかのインク組成物のA成分およびB成分であり、A2成分およびB2成分も、上記のいずれかのインク組成物の中のA成分およびB成分であり、かつ、前記A2成分の液体密度は前記B1成分の液体密度よりも小さく、かつ、前記A2成分の液体と前記B1成分の液体が互いに非相溶である、前記B1成分における機能性材料は、前記A2成分の液体に対する溶解度が0.05g以下であり、かつ、前記A2成分の液体の表面張力と前記B1成分の液体の表面張力との比は、0.8〜1.2である。
【0030】
本発明の第5の態様によれば、光電デバイスが提供され、前記光電デバイスであって、基板と順に前記基板に設けられている第1電極層及び第2電極層を備え、前記第1電極層と前記第2電極層との間に、機能層が設けられ、前記機能層は、上記のいずれかの製造方法を用いて製造される、または、前記光電デバイスは、上記のいずれかの製造方法を用いて製造されることを特徴とする光電デバイス。
【0031】
さらに、前記光電デバイスは、エレクトロルミネセントデバイスであり、前記基板は、画素分離構造を備える導電基板である請求項21に記載の光電デバイス。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、B成分の第2液体の沸点はA成分の第1液体よりも低いため、第2液体が優先に揮発し、第2液体の揮発に伴い、B成分と外界雰囲気との間に、第1界面が形成され、さらに、B成分とA成分との間に、第2界面が形成される。第1液体の表面張力と第2液体の表面張力がほぼ近く、このため、第1界面と第2界面がほぼ平行または完全に平行の状態にある。第2液体の揮発に伴い、機能性材料は、徐々に析出して沈降し、さらに、第2界面に均一に分布する。沈降された機能性材料は第1液体に対する溶解性が極めて低いため、揮発の過程中、第1液体は機能性材料を辺縁に向かって移動させにくくなり、さらに、第1液体の揮発に伴い、界面に均一に分布する機能性材料が基底に均一な薄膜を形成し、従って不均一な成膜問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明において提供された一例のインクの組成物を用いて膜層を製造する時に、第1液体および第2液体が揮発していない状態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明において提供された一例のインクの組成物を用いて膜層を製造する時に、第1液体および第2液体が大量揮発されている状態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明において提供された一例のインクの組成物を用いて膜層を製造する時に、第1液体および第2液体が完全に揮発された状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明においては、「機能性材料」は、OLED発光デバイスまたはQLED発光デバイスの製造に用いる機能性材料を指す。「機能性材料の液体に対する溶解度」は、20℃状態下、100g液体におけるある固体物質が飽和状態時に溶解可能な溶質の質量(g)を指す。また、前記液体は、混合液であってもよい。また、本発明における粘度および表面張力は、いずれも30℃状態下に測定されたものである。
【0035】
本発明においては、「第1液体と第2液体が互いに非相溶である」は、第1液体及び第2液体は、ある程度の温度範囲内、一定の割合で混合した後に明らかな分層が生じるということを指す。本発明においては、「沸点」は、通常の大気圧条件下で測定されたものである。本発明における「密度」とは、一般に、単一物質の密度または混合物質の平均密度のことを指す。本発明においては、「密度」は、一般に、単一物質の密度または混合物質の平均密度を指す。
【0036】
背景技術において、従来の溶液法による成膜時に不均一な膜層が形成しやすいという問題が記載され、その状況を改善するために、本出願の典型的な実施形態では、インク組成物が提供され、前記インク組成物は、A成分及びB成分を含み、前記A成分は、第1液体を含み、前記B成分は、第2液体および前記第2液体に分散された機能性材料を含み、前記第1液体の沸点は前記第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高く、前記第1液体と前記第2液体が互いに非相溶である、前記機能性材料は前記第2液体に対する溶解度が1g以上であり、前記第1液体に対する溶解度が0.05g以下であり、前記第1液体の密度は前記第2液体の密度よりも大きく、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は、0.8〜1.2である。
【0037】
本出願である上記インク組成物の中、2つの互いに不溶な液体を2つの異なる成分として、機能性材料が溶けにくい第1液体の沸点は機能性材料が溶けやすい第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高くし、第2液体の沸点は第1液体よりも低いため、第2液体が優先に揮発し、第2液体の揮発に伴い、B成分と外界雰囲気との間に、第1界面が形成され、また、第1液体と第2液体が互いに不溶なため、B成分とA成分との間に、第2界面が形成される。さらに、インク組成物が成膜時に、第1界面および第2界面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。第1の液体の表面張力と第2の液体の表面張力がほぼ近いため、第1界面および第2界面は、ほぼ平行または完全に平行の状態にある。前記の「平行」は、重力方向における第1界面の全ての点から第2界面までの距離が等しいことを指す。第2液体の揮発に伴い、機能性材料は、徐々に析出して沈降し、さらに、第2界面に均一に分布する。沈降された機能性材料は第1液体に対する溶解性が極めて低いため、揮発の過程中、第1液体は機能性材料を辺縁に向かって移動させにくくなり、さらに、第1液体の揮発に伴い、界面に均一に分布する機能性材料が基底に均一な薄膜を形成し、従って不均一な成膜問題を解決する。
【0038】
図1から
図3までに示すように、画素分離構造4で形成される任意の画素凹部においては、上記インク組成物を用いるインクは、画素凹部における湿式法による成膜中、第1液体と第2液体互いに非相溶である、かつ、第1液体の密度は第2液体よりも大きいため、インクを画素凹部に設けると、分層され、2つの「平行」な第1界面および第2界面を形成する。
図1に示したように、第1界面は、第2液体2と上方の気体との間の界面であり、第2界面は、第1液体1と第2液体2によって形成される界面である。機能性材料3は、第2液体2により溶解されやすいため、
図1に示したように、機能性材料3は、ほとんど第2液体2に分布し、その極めて少ない部分(ほぼ無視できる程度)は、第1液体1に分布される。
図2に示したように、第2液体の沸点は第1液体よりも低く、第1液体よりも優先に揮発するため、第2液体の揮発に伴い、第2液体における機能性材料が徐々に析出して沈降され、さらに、第2液体の界面に均一に分布される。
図3に示したように、第2液体の揮発した後、第1液体1も大量に揮発し、かつ、機能性材料3は、第1液体によりほとんど溶解されないため、第1液体は、揮発過程中に機能性材料を辺縁に向かって移動させず、従って、第1液体1と第2液体2が全て揮発された後に、機能性材料3は画素分離構造4に囲まれた画素凹部の底に均一に分布され、膜層を形成する。
【0039】
好ましくは、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は0.9〜1.1であり、前記第1液体の表面張力と第2液体の表面張力との比が1であることはさらに好ましい。第1液体の表面張力と第2液体の表面張力との比は、1に近ければ近いほど、形成される第1界面と第2界面がより平行になり、機能性材料がより均一に界面に分布されやすく、さらに、均一な薄膜を形成する。第1液体の表面張力と第2液体の表面張力との比は、1からずれればずれるほど、第1界面の全ての点から第2界面までの重力方向における距離の違いがより大きくなり、さらに、第1液体の揮発に伴い、第2界面に沈降された機能性材料の量も異なる。
【0040】
好ましくは、前記機能性材料は、前記第2液体に対する溶解度が2g以上であり、前記第1液体に対する溶解度が0.01g以下である。機能性材料は、2つの液体中に対する溶解度の差が大きければ大きいほど、第1液体の揮発過程中に、機能性材料の界面における分布の均一性への影響をより避けることができ、形成される薄膜がより均一になる。
【0041】
上記の実施例では、第1液体の沸点は第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高く、機能性材料が溶けやすい第2液体は機能性材料が溶けにくい第1液体よりも優先に揮発させ、第2液体が完全に揮発された前に、第1液体および第2液体との間に形成される第2界面の形態が変化しない、またはわずかに変化することを目的とする。本発明の好ましい実施例においては、前記第1液体の沸点は前記第2液体の沸点よりも少なくとも20℃高いことが好ましく、少なくとも30℃高いことがより好ましい。第1液体の沸点と第2液体の沸点の差は、高ければ高いほど、第2液体が完全に揮発された前に、第2界面の形態が不変となる確率が大きくなる。
【0042】
本出願における上記インク組成物は、従来の複数種類の機能性材料の成膜に適し、電子注入材料、電子輸送材料、正孔輸送材料及び発光材料を含むが、これらに限定されない。ここに挙げられる例は、光電デバイスの製造中に一般的に使用される機能性材料である。
【0043】
上記インク組成物において、前記第1液体または第2液体は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、一価アルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、エーテル、アルコールエーテルおよび水からなる群より選ばれる1種または2種以上である。機能性材料の種類に合せ、第1液体及び第2液体は上記成分から合理的に選ばれる、上記沸点、密度および非相溶性の要件を満たすだけでよい。上記第1液体または第2液体は、単一種類の溶媒であってもよい、複数種類の溶媒であってもよい。第1液体または第2液体が複数の溶媒を含む場合、第1液体の沸点は、通常、第1液体の溶媒全体の沸点を指し、同様に、第2液体も、通常、混合後の液体全体の沸点を指す。
【0044】
上記脂肪族炭化水素は、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロウンデカンなど、およびそれらの異性体を含むが、これらに限定されない。
【0045】
上記芳香族炭化水素は、o−キシレン(o−)、m−キシレン(m−)、p−キシレン(p−)、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、m−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン(o−)、m−ジエチルベンゼン(m−)、p−ジエチルベンゼン(p−)、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリペンチルベンゼン、フェニルシクロヘキサン、ペンチルトルエン、1−メチルナフタレン、ジヘキシルベンゼン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、ジブチルベンゼン、クメン、p−メチルイソプロピルベンゼン、p−ジイソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼンシクロヘキシルベンゼン、1−クロロナフタレン、1−テトラヒドロナフタレンケトン、3−フェノキシトルエン、1−メトキシナフタレン、ジメチルナフタレン、3−イソプロピルビフェニル、1,2,4−トリメチルベンゼンビフェニル、ベンジルベンゾエート、ジベンジルエーテル、インデン、ベンジルベンゼン、ジビニルベンゼン、インダン、スチレンオキシドなど、またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0046】
上記一価アルコールは、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノールおよびそれらの異性体を含むことができるが、これらに限定されない。
【0047】
多価アルコールは、好ましくはプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロパントリオール、2−ブテン−1,4−ジオールを含むが、これらに限定されない。これらの溶媒は、単独か2種以上の混合物として用いることができる。
【0048】
ケトンは、ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン3−ヘキサノンブタンジオン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、2,5−ヘキサンジオンを含むが、これらに限定されない。
【0049】
エステルは、3−エチルエトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、o−ジメチルフタレート、プロピレングリコールカーボネート、オクチルアセテートを含むが、これらに限定されない。
【0050】
エーテルは、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、o−トロアニソールエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ビス(2−クロロエチル)エーテル、m−ジメトキシベンゼン、ベンジルベンゾエートを含むが、これらに限定されない。
【0051】
アルコールエーテルは、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの1種または複数種を含むが、これらに限定されない。例えば、小分子エーテル系有機溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジベンジルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルジエチレングリコールエチルエーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリジエチレングリコールエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルが用いられてもよい。
【0052】
異なる機能性材料にとって、成膜後の機能性材料の含有量は、応用時に異なる要求がある。好ましくは、前記B成分において、前記機能性材料の固形分が1mg/mL〜200mg/mLである。
【0053】
本出願の好ましい実施形態においては、前記機能性材料は、発光材料であり、前記発光材料は発光ナノクリスタルであり、前記第1液体は、アルコールおよびエステルのうちのいずれか1種以上を含む、前記アルコールとしては、好ましくは、炭素数18未満の一価アルコールまたは多価アルコールが用いられ、さらに好ましくは、炭素数6〜18の一価アルコールまたは炭素数2〜18の多価アルコールが用いられる。アルコール液体またはエステル液体を選ぶときに、具体的な発光ナノクリスタル合わせて合理的に調整を行うことができる。炭素数18以下の一価アルコールまたは多価アルコールの第1液体は、比較的に低い凝固点を備え、室温で固体を形成しにくい特性を持つため、湿式法の実施に都合がよい。
【0054】
上記炭素数6〜18の一価アルコールは、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール及びそれらの異性体を含むが、これらに限定されない。好ましい炭素数2〜18の多価アルコールは、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロパントリオール、2−ブテン−1,4−ジオールを含む。
【0055】
上記好ましい実施形態においては、前記第2液体は、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素のうちのいずれか1種以上を含み、前記第2液体としては、炭素数9〜18の芳香族炭化水素および/または炭素数10〜18のアルカンが用いられることが好ましく、炭素数10〜18、かつ沸点が170〜300℃である芳香族炭化水素が用いられることがより好ましい。170℃〜300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素を第2液体として用いる場合、発光ナノクリスタルを比較的よく溶解でき、かつ、適度な揮発速度という利点を有するだけでなく、さらに、例えば、プリントプリンティング、スリットコートまたはスプレーコーティングなどの各種湿式法技術に適する。
【0056】
好ましい上記炭素数10〜18のアルカンは、n−デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンおよびそれらの異性体を含むが、上記炭素数9〜18の芳香族炭化水素は、ペンチルトルエン、1−メチルナフタレンジヘキシルベンゼン、ジヘキシルベンゼン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、ジブチルベンゼン、p−メチルイソプロピルベンゼン、p−ジイソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1−クロロナフタレンジ、メチルナフタレン、3−イソプロピルビフェニル、1,2,4−トリメチルベンゼンビフェニル、ベンジルベンゼン、インダンを含むが、これらに限定されない。
【0057】
上記好ましい実施例においては、第1液体及び第2液体は、上記の性能要件を満たすと、発光ナノクリスタル材料の成膜中に発生したコーヒーリング現象を避けることができる。本出願の好ましい実施形態においては、上記第2液体の中には、さらに、システムの粘度または表面張力の調節または発光材料のシステムにおける分散性の改善に役に立つ様々な機能調節剤を含む。前記機能調節剤は、アルコール、ケトンまたはエステルから選ばれ、機能調節剤は、前記第2液体における体積分率が10%〜50%であることが好ましい。第2液体に上記機能調節剤を加えると、システムの粘度、表面張力の調整、全体の揮発速度の制御に役に立つ。機能調節剤の使用量は、発光ナノクリスタルの成膜へ比較的大きな影響を与え、従って、10%〜50%の体積分率は、発光ナノクリスタルの第2液体における固形分含有量をよく調整し、同時に第2液体の揮発速度も調整され、ある程度のコーヒーリング現象が抑制される。
【0058】
上記好ましい実施形態においては、炭素数10〜18のアルカンおよび/または芳香族炭化水素をインク組成物の第2液体として用いるのは、前記アルカンおよび/または芳香族炭化水素は、発光ナノクリスタルをよく溶解でき、適度な揮発速度という利点を有し、たとえば、プリンティング、スリットコートなどの各種湿式法技術に適するからである。アルカンの、前記第2液体における体積百分率が30%以上であり、50%以上であることが好ましい。第2液体の中のアルカンの体積分率を上記範囲内に制御するのは、主液体として、アルカンが発光ナノクリスタルをよく溶解する能力を備えるからである。
【0059】
上記インク組成物において、B成分が機能性材料を溶解可能な成分であり、従って、異なる機能性材料の第2液体における含有量もある程度異なる。好ましくは、前記B成分において、前記発光ナノクリスタルの濃度が20mg/mL〜200mg/mLである。B成分における発光ナノクリスタルの固形分を上記範囲内に制御すると、発光ナノクリスタル膜層の厚さを広い範囲に形成することができる。
【0060】
上記好ましい実施例においては、前記発光ナノクリスタルは、表面リガンドを備え、前記表面リガンドは、カルボン酸、アルキルメルカプタン、アミン、アルキルホスフィンおよびアルキルホスフィンオキシドからなる群から選ばれる1種または2種以上である。表面リガンドは発光ナノクリスタルの相応しい液体における分散性を向上し、インク組成物の安定性を高めることができる。
【0061】
本出願における上記インク組成物のうち、第1液体の表面張力を、膜層の基底表面能によって適宜に調整することが可能である、その理由は後工程において、A成分を膜層の基底に接するかつ平積する必要がある。1つ好ましい実施例において、前記A成分の表面張力は、30〜45dyn/cmである。
【0062】
類似に、本出願における上記インク組成物のうち、第2液体の粘度及び表面張力は既存の表面張力をもとにして合理的に調整することができ、インクジェットプリンティング、スリットコートまたはスプレーコーティングなどの異なるプロセスのニーズを満たせる。本出願の好ましい実施例においては、第2液体の表面張力を、第1液体の表面張力にほぼ等しいまたは接近しように調整し、25〜40dyn/cmに調整することが好ましく、厚さの均一度が良好な膜層に形成することができる。
【0063】
本出願である上記インク組成物は、機能性材料の種類および湿式法による成膜技術に応じ、A成分とB成分の利用量を適宜に調整してもよい。本出願の好ましい実施例においては、A成分とB成分の利用量との体積比は、1:1〜10:1であり、両方の利用量を上記範囲内に制御する理由は、第2液体が完全に揮発された後に第1液体が残存されることを確保する。B成分よりも、A成分が先に利用されるため、A成分の利用量は少し多いが、実際的な操作性を考えると、入れすぎるのは適さない。
【0064】
本出願における別の典型的な実施形態では、光電デバイスの機能層を製造するための方法が提供され、前記製造方法は下記を含む:
A成分を第1予備層として用いる工程と、
B成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成し、プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、前記光電デバイスの機能層に形成する工程。
【0065】
ここで、前記A成分および前記B成分は、上記のいずれかのインク組成物の中のA成分およびB成分である。光電デバイスは、エレクトロルミネセントデバイスであってもよいし、太陽能源電池または光起電力電池であってもよい。前記乾燥工程は、たとえば、真空乾燥、赤外線乾燥またはオーブン乾燥などのいずれかの乾燥処理であってもよいが、乾燥時、機能層に不良影響を与えない乾燥方式が好ましい。前記乾燥処理のタイミングは、1つの機能層の予備層を製造した後のタイミングであってもよいし、複数の機能層がすべて製造した後のタイミングであってもよい。
【0066】
本出願である光電デバイスの機能層の製造方法は、2つの互いに不溶な液体を用い、かつ、第1液体の沸点は第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高く、第1液体を含むA成分を先に第1予備層に形成し、さらに、機能性材料と第2液体を含むB成分を第1予備層上に設けて第2予備層に形成し、このようにそれぞれの層を設ける方式を用いると、コーヒーリングの形成が抑制される。最終に、A成分とB成分を乾燥し、液体を揮発させると、光電デバイスのターゲット機能層に形成する。ターゲット機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層および発光層を含むが、これらに限定されない。
【0067】
上記製造方法のうち、2つの互いに不溶な液体を2つの異なる成分になることを通じて、機能性材料が溶けにくい第1液体の沸点は機能性材料が溶けやすい第2液体の沸点よりも少なくとも10℃高くし、第2液体の沸点は第1液体よりも低いため、第2液体が優先に揮発し、第2液体の揮発に伴い、B成分と外界雰囲気との間に、第1界面が形成され、また、第1液体と第2液体が非相溶性のため、B成分とA成分との間に、第2界面が形成される。さらに、インク組成物が成膜時に、第1界面および第2界面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。第1の液体の表面張力と第2の液体の表面張力がほぼ近いため、第1界面および第2界面は、ほぼ平行または完全に平行の状態にある。前記の「平行」は、第1界面の全ての点から第2界面まで重力方向における距離が等しいことを指す。第2液体の揮発に伴い、機能性材料は、徐々に析出して沈降し、さらに、第2界面に均一に分布する。沈降された機能性材料は第1液体に対する溶解性が極めて低いため、揮発の過程中、第1液体は機能性材料を辺縁に向かって移動させにくくなり、さらに、第1液体の揮発に伴い、界面に均一に分布する機能性材料が基底に均一な薄膜を形成し、従って不均一な成膜問題を解決する。上記製造方法のうち、第1予備層および/または第2予備層の設置方法として、従来の方法を用いるだけでよい。本出願における設置方法は、インクジェットプリンティング、スリットコートまたはスプレーコーティングを含むがこれらに限定されない。
【0068】
1つまたは複数の実施例において、光電デバイスの製造方法が提供され、前記光電デバイスの製造方法は、機能層の製造ステップを含む。前記機能層の製造ステップは下記を含む:
A成分を第1予備層として用いる工程と、
B成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成する工程と、
C成分を前記第2予備層上に設け、第3予備層に形成し、前記プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、隣接している2層の機能層に形成する工程。
【0069】
ここで、乾燥後の前記第1予備層および前記第2予備層は、1層の機能層に形成し、乾燥後の前記第3予備層は、別の機能層に形成する、前記A成分および前記B成分は、上記インク組成物のA成分およびB成分であり、前記C成分の液体密度は前記B成分の液体密度よりも小さく、前記C成分の液体と前記B成分の液体が非相溶である、前記C成分における機能性材料は、前記B成分の液体に対する溶解度が0.05g以下であり、かつ、前記C成分の液体の表面張力と前記B成分の液体の表面張力との比は、0.8〜1.2である、好ましくは、前記第1液体の表面張力と前記第2液体の表面張力の比は0.9〜1.1であり、さらに好ましくは、前記第1液体の表面張力と第2液体の表面張力との比が1である。
【0070】
上記実施例においては、隣接している2層の機能層のインク組成物を制御した結果、上層の機能層の乾燥を待つことなく、下層の機能層のインクを設けることができ、複数の機能層が連続的に製造することができるようになり、従って生産効率を高める。もちろん、光電デバイスにおける機能層の層数は、2層よりも大きい場合に、上記隣接している2層機能層以外の機能層のインク組成物は、従来インク組成物であってもよい。しかしながら、隣接している2層機能層以外の機能層を形成するには、形成するごとに1回の乾燥を必要とし、生産効率が比較的低い。
【0071】
いくつかの実施例においては、もう1つの光電デバイスの製造方法が提供され、前記光電デバイスの製造方法は、機能層の製造ステップを含む。前記機能層の製造ステップは下記を含む:
A1成分を第1予備層として用いる工程と、
B1成分を前記第1予備層上に設け、第2予備層に形成する工程と、
前記A2成分を前記第2予備層上に設け、第3予備層に形成し、前記第2予備層上と前記第3予備層が隣接されている工程と、
B2成分を前記第3予備層に設け、第4備層に形成し、前記プリフォームに製造する工程と、
前記プリフォームを乾燥し、2層の機能層に形成する工程、
乾燥後の前記第1予備層および前記第2予備層は、1層の機能層に形成し、乾燥後の前記第3予備層および前記第4予備層が別のひとつ機能層に形成し、A1成分およびB1成分は、上記のインク組成物のA成分およびB成分であり、A2成分およびB2成分も、上記のインク組成物の中のA成分およびB成分であり、かつ、前記A2成分の液体密度は前記B1成分の液体密度よりも小さく、かつ、前記A2成分の液体と前記B1成分の液体が非相溶である、前記B1成分における機能性材料は、前記A2成分の液体に対する溶解度が0.05g以下であり、かつ、前記A2成分の液体の表面張力と前記B1成分の液体の表面張力との比は、0.8〜1.2である。
【0072】
上記実施例においては、隣接している2層の機能層のインク組成物を制御した結果、上層の機能層の乾燥を待つことなく、下層の機能層のインクを設けることができ、複数の機能層が連続的に製造することができるようになり、従って生産効率を高める。もちろん、光電デバイスにおける機能層の層数は、2層よりも大きい場合に、上記隣接している2層機能層以外の機能層のインク組成物は、従来インク組成物であってもよい。しかしながら、隣接している2層機能層以外の機能層を形成するには、形成するごとに1回の乾燥を必要とし、生産効率が比較的低い。
【0073】
なお、光電デバイスを製造するときに、複数の機能層を設ける必要があり、A成分を既製の膜層基底に設けてもよい。A成分の第1液体は、膜層基底を溶解できないものであり、逆に、膜層基底の正常な機能が影響を受け、さらに、光電デバイスの性能も影響される。なお、前記の「溶解できない」は、絶対的に溶解できないことを意味するわけでなく、ただ溶解性が比較的低いということを意味し、膜層基底の正常な機能に明らかな影響を与えないことを基準にする。
【0074】
本出願における別の典型的な実施形態では、さらに、光電デバイスも提供される。光電デバイスであって、基板と順に前記基板に設けられている第1電極層及び第2電極層を備え、前記第1電極層と前記第2電極層との間に、機能層が設けられ、前記機能層は、上記のいずれかの製造方法を用いて製造される。上記の方法を用いて製造された光電デバイスは、機能層にコーヒーリング現象が発生しないため、発光効率が高く、発光は均一である。
【0075】
上記光電デバイスの基板としては、実際の製品ニーズに応じて適宜な基板が用いられてもよい。好ましい実施形例においては、光電デバイスは、エレクトロルミネセントデバイスであり、前記基板は、画素分離構造を備える導電基板である。複数の画素領域は、画素分離構造に囲まれて、各エレクトロルミネセントデバイスは、各画素領域内に配置される。画素分離構造を有する導電性基板は、液体流動を制限でき、さらに、異なる発光波長範囲の発光材料を異なる画素に設置するという特性を持つため、したがって、カラーディスプレイに適用する。
【0076】
以下に、具体的な実施形態と併せて、本出願の有益な効果をさらに説明する。
【実施例】
【0077】
実施例1〜8の機能性材料は、いずれも発光ナノクリスタル(赤色量子ドット、オイルアミンリガンドつきCdSe/ZnS)であり、様々な実施例におけるインク組成物の成分と利用量が下記のとおりである:
【0078】
【表1】
【0079】
上記各実施例のインク組成物をインクジェットプリンター(プリンターモデルDMP2831)を用いて透明ガラス基板にプリンティングアウトし、Filmetrics F40モデル機械を用いて膜厚を測定し、均一な9箇所を選定し測定し、さらに、膜厚の均一度(Max−Min)/(2Ave)を算出し、前記のAve=(d1+d2+d3+……+d8+d9)/9であり、前記のMaxは、9データの中の最も厚い値を表し、Minは、最も薄い値を表し、Aveが各点の厚さ均一値を表し、d1、d2……d9が各点の厚さを表す。厚さ均一値が小さいほど、膜層の厚さがより均一である。各実施例の厚さ均一値の結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
上記各実施例のインク組成物を用い、下記方法を介して発光層を製造し、具体的に、量子ドット層を製造する方法を例にし、本出願の機能層の製造方法について説明する。
【0082】
画素分離構造かつアノード層を備える基板において、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)の水溶液を用い、インクジェットプリンティングにより正孔注入層を作製し、さらに真空乾燥させた。ポリ(9−ビニル)カルバゾール(PVK)溶液を用い、インクジェットプリンティングにより正孔注入層において正孔輸送層を作製し、さらに真空乾燥させた。さらに、インクジェットプリンティングによりA成分を正孔輸送層に設け、第1予備層に形成する。インクジェットプリンティングによりB成分を前記第1予備層に設け、第2予備層に形成し、さらに真空乾燥すると、エレクトロルミネセントデバイスの量子ドット発光層に作製した。酸化亜鉛ナノクリスタルのブタノール溶液を用い、インクジェットプリンティングにより量子ドット発光層の上に電子輸送層を作製し、さらに真空乾燥させた。最終的に、電子輸送層の上に、真空蒸着法により銀のカソードに形成した。
【0083】
比較例1:
CN105820663Aに紹介した方法を用い、比較例用量子ドットインクを製造し、組成物の具体的な製造方法は下記のとおりである:10wt%のオイルアミンリガンドつき赤色CdSe/ZnS量子ドットと、54wt%の3,3,5トリメチルヘプタンと、36wt%の2−メチルペンタノールを30分間攪拌し、量子ドットインクに製造する。単回インクジェットプリンティング法を介して量子ドット発光層を製造した。
【0084】
そのほかの機能層の構造は、いずれも同じであり、かつ、実施例における製造方法を介して製造し、上記実施例で製造した量子ドット発光層を用いてエレクトロルミネセントデバイスに製造し、各実施例と比較例1のエレクトロルミネセントデバイスの発光均一性を測定し、測定方法および結果は下記の通りである:
PHOTO RESEARCH社製のPR670分光光度/比色/放射線測定器を用い、2mA/cm
2の電流密度で実施例の発光デバイスの中の均一に分布される21点の輝度(Cd/m
2)を測定し、輝度均一度の算出公式=(Max−Min)/(2Ave)を算出し、かつ、前記Ave=(L1+L2+L3+……+L20+L21)/21であり、そのうちのMaxは、21データの中の最も明るい値を表し、Minは最も暗い値を表し、Aveが各点の輝度均一値を表し、L1、L2……L21が各点の輝度を表す。輝度均一度の値が小さいほど、発光がより均一で、膜層の厚さの均一度がよりよく、結果を下表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
上記からわかるように、上記実施例1〜8の量子ドット発光層のインク組成物を用い、量子ドット発光層を製造すると、コーヒーリング現象が大幅に抑制され、比較例1に比べて、輝度均一度が6.5%〜18.2%ほど低減され、従って、発光均一性が高められた。
【0087】
また、上記の説明からわかるように、本発明の上記実施例によれば、下記の技術的な効果が得られる:本出願のインク組成物および製造方法の中、2つの互いに不溶な液体を2つの異なる成分に形成し、機能性材料を溶解できる第2液体の沸点よりも、機能性材料を溶けにくい第1液体の沸点を少なくとも10℃高くし、さらに、インク組成物が成膜時に、第1液体よりも、第2液体の沸点が低いため、優先に揮発させ、第2液体の揮発に伴い、B成分と外界雰囲気との間に、第1界面が形成され、B成分とA成分との間に、第2界面が形成される。第1液体の表面張力と第2液体の表面張力がほぼ近く、このため、第1界面と第2界面がほぼ平行または完全に平行の状態にある。第2液体の揮発に伴い、機能性材料は、徐々に析出して沈降し、さらに、第2界面に均一に分布する。沈降された機能性材料の第1液体に対する溶解性が極めて低いため、揮発中に機能性材料を辺縁に向かって移動させにくく、さらに、第1液体の揮発に伴い、界面に均一に分布する機能性材料が基底に均一な薄膜を形成し、従って不均一な成膜問題を解決する。
【0088】
本出願は、前記で記述され、図面で図示した特定の構成に限定されず、その範囲を離脱しない状況で、様々な修正や変更を実施してもよい。本出願の範囲は、添付される特許請求の範囲のみにより限定される。
【符号の説明】
【0089】
1、第1液体
2、第2液体
3、機能性材料
4、画素分離構造