(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に記載する実施の形態は、本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明は、これらよって限定されるものではない。
【0037】
(電子写真感光体)
まず、本発明の電子写真感光体について説明する。
【0038】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る電子写真感光体の構成を模式的に示す断面図である。
【0039】
図1に示す電子写真感光体1(以下、単に「感光体1」と言う。)は、円筒状の導電性基体11と、導電性基体11上に順に設けられた下引き層15及び感光層14とを有している。また、感光層14は、下引き層15側に設けられた電荷発生層12と、電荷発生層12の下引き層15と反対側に設けられた電荷輸送層(表面層)13とを備えている。即ち、本実施の形態の感光層14は、電荷発生層12と電荷輸送層13とで構成された積層型感光層である。
【0040】
(導電性基体)
導電性基体11は、導電性支持体とも称され、感光体1の電極としての役割を果たす。また、導電性基体11は、その上に配置される層、即ち下引き層15及び感光層14の支持部材としても機能する。なお、導電性基体11の形状は、本実施の形態では、円筒状であるが、これに限定されず、例えば、円柱状、シート状、無端ベルト状等であってもよい。
【0041】
導電性基体11は、導電性材料で構成されている。この導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金のような導電性金属、アルミニウム合金のような導電性合金、酸化錫、酸化インジウムのような導電性金属酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、導電性基体11は、その全体が導電性材料で構成されていなくてもよく、例えば、導電性を有さない基部の表面に導電性層を形成することにより構成してもよい。この場合、基部は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンのような高分子材料、硬質の紙材料、ガラス材料等で構成することができる。
【0043】
一方、導電性層は、前記導電性金属、導電性合金及び導電性金属酸化物の他、各種導電性高分子材料等で構成することができる。この導電性層は、基部の表面に、例えば、導電性材料で構成される箔(シート材)をラミネートすること、導電性材料を蒸着又は塗布すること等により形成することができる。なお、導電性層は、所定の形状に加工されて使用される。
【0044】
導電性基体11の表面には、必要に応じて、画像の品質に影響のない範囲で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水等による表面処理、着色処理、又は粗面化処理のような乱反射処理を施すようにしてもよい。
【0045】
ここで、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているため、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となる場合がある。しかしながら、導電性基体11の表面に前記処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥の発生を防止することができる。
【0046】
(下引き層)
下引き層15は、中間層とも称され、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入を防止する機能を有している。従って、仮に、導電性基体11又は感光層14に欠陥が存在する場合であっても、この欠陥に起因して感光層14の微小領域での帯電性の低下を阻止することができる。その結果、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑制して、画像のかぶり等による画像欠陥の発生を好適に防止することができる。
【0047】
更に、下引き層15を設けることによって、導電性基体11の表面に存在する凸凹を被覆して均一な表面を形成することができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また、導電性基体11と感光層14との接着性を向上させ、感光層14の導電性基体11からの剥離を防止又は抑制することができる。この下引き層15には、例えば、樹脂材料で構成される樹脂層又はアルマイト層等を用いることができる。
【0048】
下引き層15を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂のような樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等を挙げることができる。また、下引き層15を構成する他の樹脂材料としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース等を挙げることもできる。なお、以上のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特に、アルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。アルコール可溶性ナイロン樹脂の好ましい例としては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロン、12−ナイロンのような所謂ナイロン、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのような化学的に変性させたナイロン等を挙げることができる。
【0050】
なお、下引き層15に電荷調整機能を付与する場合、下引き層15には、フィラー微粒子として、金属酸化物微粒子が添加される。このような金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、酸化錫微粒子等を挙げることができる。このようなフィラー微粒子の平均粒径は、0.01〜0.3μm程度であることが好ましく、0.02〜0.1μm程度であることがより好ましい。
【0051】
下引き層15は、例えば、前記樹脂を適当な溶剤に溶解又は分散させて、下引き層用塗布液(下引き層用樹脂液)を調製し、この塗布液を導電性基体11の表面に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。なお、下引き層15に前記金属酸化物微粒子のようなフィラー微粒子を添加する場合、下引き層用塗布液中にフィラー微粒子を分散させればよい。
【0052】
下引き層用塗布液の溶剤には、水、各種有機溶剤、又はこれらの混合溶剤が用いられる。かかる溶剤の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールのようなアルコール類のみからなる単独溶剤、水とアルコール類との混合溶剤、2種以上のアルコール類を含む混合溶剤、アセトン又はジオキソラン等とアルコール類との混合溶剤、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタンのようなハロゲン系有機溶剤類とアルコール類等との混合溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0053】
フィラー微粒子を塗布液中に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機、ペイントシェーカー等を利用する分散方法を用いることができる。また、フィラー微粒子を含有する塗布液を超高圧で微小空隙中に通過させるメディアレスタイプの分散装置を利用する分散方法も用いることができる。かかる分散方法では、塗布液を微小空隙中に通過させる際に発生する非常に強いせん断力によって、フィラー微粒子を塗布液中に分散させる。このため、フィラー微粒子をより安定的に塗布液中に分散させることができる。
【0054】
下引き層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等が挙げられる。これら塗布方法の中でも、特に、浸漬塗布法が好ましい。ここで、浸漬塗布法は、基体を塗布液で満たした塗工槽に浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で塗工槽から引上げることによって、基体の表面に層を形成する方法である。かかる方法は、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているため、感光体を製造する場合に広く利用されている。
【0055】
下引き層15の膜厚は、0.01〜20μm程度であることが好ましく、0.05〜10μm程度であることがより好ましい。下引き層15の膜厚を前記下限値以上とすることにより、導電性基体11の凸凹を確実に被覆することができ、均一かつ平坦性の高い表面を有する下引き層15を形成することができる。このため、下引き層15は、その機能を十分に発揮することができる。その結果、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入をより確実に阻止して、感光層14の帯電性の低下を防止することがきる。一方、下引き層15の膜厚を前記上限値以下とすることにより、例えば、浸漬塗布法によって下引き層15を精度よく形成することができる。このため、下引き層15上に感光層14を均一に形成することができるので、十分な感度を有する感光体1を得ることができる。
【0056】
(電荷発生層)
下引き層15上には、電荷発生層12が設けられている。この電荷発生層12は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。なお、電荷発生層12中に含まれる電荷発生物質の量は、特に限定されないが、40〜80質量%程度であることが好ましい。
【0057】
電荷発生物質としては、各種有機光導電性材料及び各種無機光導電性材料のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機光導電性材料としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料のようなアゾ系顔料、インジゴ、チオインジゴのようなインジゴ系顔料、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物のようなペリレン系顔料、アントラキノン、ピレンキノンのような多環キノン系顔料、金属フタロシアニン(例えば、オキソチタニウムフタロシアニン化合物)、無金属フタロシアニンのようなフタロシアニン系化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素等が挙げられる。一方、無機光導電性材料としては、例えば、セレン、非晶質シリコン等が挙げられる。
【0058】
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系化合物が好ましく、オキソチタニウムフタロシアニン化合物がより好ましい。ここで、「オキソチタニウムフタロシアニン化合物」とは、オキソチタニウムフタロシアニン及びその誘導体を意味する。オキソチタニウムフタロシアニン誘導体としては、例えば、フタロシアニン基に含まれる芳香環の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子)、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基のような置換基で置換されたオキソチタニウムフタロシアニン、中心金属であるチタン原子に塩素原子のような配位子が配位したオキソチタニウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0059】
また、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、特定の結晶構造を有することが好ましい。具体的には、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、Cu−Kα特性X線(波長1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有することが好ましい。ここで、ブラッグ角2θとは、入射X線と回折X線とのなす角度であり、所謂回折角を表す。
【0060】
このようなオキソチタニウムフタロシアニン化合物を電荷発生物質として用いることによって、更に優れた感度及び解像度を有する感光体1を得ることができる。また、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、電荷発生能力及び電荷注入能力に優れている。このため、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、光を吸収することによって多量の電荷を発生すると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送層13に効率よく注入することができる。
【0061】
オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、例えば、Moser及びThomasによるPhthalocyanine Compounds,Reinhold Publishing Corp.,New York,1963に記載される製造方法に従って製造することができる。
【0062】
例えば、オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを加熱融解させることによって、又はこれらをα−クロロナフタレンのような適当な溶媒中で加熱反応させることによって、ジクロロチタニウムフタロシアニンを合成し、次いで、塩基又は水で加水分解することによって製造することができる。
【0063】
また、オキソチタニウムフタロシアニンは、イソインドリンとテトラブトキシチタンのようなチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンのような適当な溶媒中で加熱反応させることによっても製造することができる。
【0064】
電荷発生層12の形成方法としては、例えば、電荷発生物質を導電性基体11の表面に真空蒸着する方法、又は電荷発生物質を適当な溶剤中に溶解又は分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法等が用いられる。これらの中でも、結着剤である結着樹脂を溶剤中に混合(溶解又は分散)して得られる結着樹脂液中に、電荷発生物質を分散して電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。
【0065】
電荷発生層12に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルホルマール樹脂のような樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等が挙げられる。
【0066】
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂のような絶縁性樹脂等が挙げられる。なお、結着樹脂は、これらの樹脂に限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂であってもよい。なお、以上のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0067】
電荷発生層用塗布液の溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、1,2−ジメトキシエタンのようなエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのような非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤類が好適に用いられる。なお、以上のような溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0068】
電荷発生物質と結着樹脂とを含有する電荷発生層12において、電荷発生物質の質量M1と結着樹脂の質量M2との比(M1/M2)は、10/100〜400/100であることが好ましい。比(M1/M2)が10/100以上であることにより、感光体1の感度の低下を防止又は抑制することができる。一方、比(M1/M2)が400/100以下であることにより、電荷発生層12は、十分な膜強度を維持することができる。また、この場合、電荷発生層12中に電荷発生物質が十分に分散するので、粗大粒子の形成が阻止される。このため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が高く維持され、白地にトナーが付着して微小な黒点が形成されることに起因する画像のかぶり等の画像欠陥の発生を好適に防止することができる。
【0069】
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等を挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、下引き層用塗布液の塗布方法において説明したような浸漬塗布法が特に好ましい。また、塗布によって電荷発生層12を形成する場合、電荷発生層用塗布液中に酸化防止剤又は紫外線吸収剤等を添加することにより、塗布液の安定性を高めることができる。
【0070】
電荷発生層12の膜厚は、0.05〜5μm程度であることが好ましく、0.1〜1μm程度であることがより好ましい。電荷発生層12の膜厚を前記下限値以上とすることにより、電荷発生層12の光吸収による電荷発生効率が向上し、感光体1の感度を高めることができる。一方、電荷発生層12の膜厚を前記上限値以下とすることにより、電荷発生層12内部での電荷移動が感光層14の表面電荷を消去する過程の律速とならず、感光体1の感度を高めることができる。
【0071】
(電荷輸送層)
電荷発生層12上には、電荷輸送層13が設けられている。この電荷輸送層13は、電荷発生層12中に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れ、これを輸送する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させる結着樹脂とを含有する。なお、電荷輸送層13には、耐摩耗性等を向上させる目的として、フィラー微粒子を添加することができる。この点については、後に詳述する。
【0072】
更に、電荷輸送層13には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、可塑剤、レベリング剤のような各種添加剤を添加するようにしてもよい。例えば、電荷輸送層13のオゾン、窒素酸化物のような酸化性ガスに対する劣化を低減させることを目的として、電荷輸送層13中に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体、又はこれらの混合物が好適に用いられる。
【0073】
また、例えば、電荷輸送層13の成膜性、表面平滑性を向上させることを目的として、電荷輸送層13中に可塑剤又はレベリング剤等を添加することができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルのような二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤等が挙げられる。また、レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤等が挙げられる。
【0074】
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
電荷輸送層13を構成する結着樹脂は、透明性や耐刷性に優れる等の理由から、例えば、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂を主成分(第1成分)として含有することが好ましい。
【0076】
なお、結着樹脂が含有する前記樹脂以外の副成分(第2成分)の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂のようなビニル重合体樹脂、これらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート骨格とポリジメチルシロキサン骨格とを有する共重合体樹脂等が挙げられる。
【0077】
以上のような樹脂のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。また、これらの樹脂は、電荷輸送層13中で部分的に架橋されていてもよい。
【0078】
なお、主成分の樹脂とは、電荷輸送層13を構成する結着樹脂中に占める割合が最も多い樹脂であり、好ましくは占める割合が50〜90重量%程度である樹脂を意味する。また、副成分の樹脂とは、電荷輸送層13を構成する結着樹脂中に占める割合が主成分の樹脂より少ない樹脂であり、好ましく占める割合が10〜50重量%程度である樹脂を意味する。また、電荷輸送層13中において電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、重量比で10/18〜10/10程度であることが好ましい。
【0079】
電荷輸送層13は、電荷発生層12を塗布によって形成する場合と同様に、例えば、適当な溶剤中に、電荷輸送物質及び結着樹脂、必要に応じてフィラー微粒子や添加剤を溶解又は分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を電荷発生層12上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0080】
電荷輸送層用塗布液の溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼンのような芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドのような非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。なお、以上のような溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
また、前記溶剤に、必要に応じて、アルコール類、アセトニトリル、メチルエチルケトン等を混合して用いることもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0082】
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、特に、浸漬塗布法は、前記のように種々の点で優れているので、電荷輸送層13を形成する場合にも好適に使用することができる。また、塗布によって電荷輸送層13を形成する場合、電荷輸送層用塗布液中に酸化防止剤又は紫外線吸収剤などを添加することにより、塗布液の安定性を高めることもできる。
【0083】
電荷輸送層13の膜厚は、5〜40μm程度であることが好ましく、10〜30μm程度であることがより好ましい。電荷輸送層13の膜厚を前記下限値以上とすることにより、電荷輸送層13の帯電保持能が向上し、鮮明な画像が得られる。一方、電荷輸送層13の膜厚を前記上限値以下とすることにより、感光体1の解像度を増大することができる。
【0084】
以上説明したような感光体1において、電荷輸送層13(感光層14)は、
図2A〜
図2Dに示すように、通紙部Pと非通紙部Nとを備えている。ここで、「通紙部P」とは、記録紙、シール材、写真用紙、OHPシートのような転写材のうちの最大サイズの転写材が接触可能な電荷輸送層13(感光層14)の領域を言い、「非通紙部N」とは、いずれのサイズの転写材も接触しない電荷輸送層13(感光層14)の領域を言う。
【0085】
本発明では、非通紙部Nの少なくとも一部の領域の表面粗さR1が通紙部Pの表面粗さR2より大きくなっている点に特徴を有している。
図2Aは、電荷輸送層13(感光層14)の非通紙部Nの構成例を示す平面図である。
図2Aに示す構成例では、非通紙部Nの全領域(
図2A中、斜線で示す領域)の表面粗さR1が通紙部Pの表面粗さR2より大きくなっている。
【0086】
ここで、「表面粗さ」を示す指標には、例えば、十点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、凹凸の平均間隔(Sm)等がある。ただし、本明細書中において、「表面粗さ」とは、特に言及しない限り、十点平均粗さ(Rz)のことを言う。
【0087】
かかる構成により、クリーニングブレード、帯電部材、転写ローラ等の接触部材の非通紙部Nとの接触面積を小さくすることができる。このため、接触部材の非通紙部Nに対する摩擦力が小さくなり、電荷輸送層13の端部(非通紙部N)での偏った膜べりを抑制して、電荷輸送層13(感光層14)の膜べり量をその長手方向に沿って均一にすることができる。
【0088】
従って、感光体1を長期間使用しても、感光層14を適正(均一)に帯電させることができる。このため、トナー消費量の増加や紙端汚れという画像の品質不良等の問題が生じ難い。また、感光層14の端部の膜べり(削れ)の進行に起因するリークの発生も好適に防止することができる。更に、感光層14の端部での偏った膜べりを抑制することができるため、クリーニングブレード全体を感光層14の表面に対して均一な押圧力で接触させることができる。その結果、感光層14の表面に対する高いクリーニング能力が維持される。
【0089】
表面粗さR1と表面粗さR2との差(R1−R2)は、特に限定されないが、0.15以上であることが好ましく、0.4〜2程度であるのがより好ましく、0.9〜1.8程度であることが更に好ましい。また、表面粗さR1と表面粗さR2との比(R1/R2)も、特に限定されないが、1.1〜5程度であることが好ましく、1.5〜4.5程度であることがより好ましく、2〜4程度であることが更に好ましい。
【0090】
差(R1−R2)及び比(R1/R2)のそれぞれを前記範囲とすることにより、非通紙部Nの表面粗さR1を十分に高めることができ、前記効果をより向上させることができる。また、感光体1が搭載される画像形成装置の種類によらず、非通紙部Nの偏った膜べりを確実に低減することもできる。なお、差(R1−R2)及び比(R1/R2)の少なくとも一方が前記範囲であることが好ましく、双方が前記範囲であることがより好ましい。
【0091】
また、表面粗さR1の具体的な値は、1.5μm以上であることが好ましく、1.5〜3.4μm程度であることがより好ましく、2〜3μm程度であることが更に好ましい。特に、表面粗さR1を前記上限値以下とすることにより、例えば、クリーニングブレードの構成材料、クリーニングブレードの感光体1に対する押圧力等によらず、クリーニングブレードが非通紙部Nの表面の凹凸に引っ掛かり易くなることを防止しつつ、クリーニングブレードの非通紙部Nに対する低い摩擦力(摺動抵抗)を維持することができる。
【0092】
一方、表面粗さR2の具体的な値は、1.35μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。従って、表面粗さR2は、限りなく0(ゼロ)に近い値であってもよい。即ち、電荷輸送層13の通紙部Pの表面は、平滑面(鏡面)であってもよい。
【0093】
本実施の形態では、
図3に示すように、電荷輸送層13がフィラー微粒子を含有し、このフィラー微粒子の存在により、電荷輸送層13の表面に凹凸が形成されている。フィラー微粒子は、電荷輸送層13の厚さ方向において、表面側に偏在してもよいが、ほぼ均一に分散していることが好ましい。これにより、電荷輸送層13が接触部材と接触することによって経時的に削られた場合でも、電荷輸送層13の表面に常にフィラー微粒子が露出するようになる。このため、電荷輸送層13の表面が平滑面となることなく、非通紙部N及び通紙部Pは、それぞれ前記表面粗さR1、R2を維持することができる。
【0094】
また、電荷輸送層13中において、フィラー微粒子の一部は、
図3に示すように、1〜3μmの定方向接線径を有する凝集体(以下、「所定径の凝集体」とも言う。)を形成していることが好ましい。ここで、「定方向接線径」とは、凝集体に接する2本の平行線間の最大距離を意味する。本実施の形態では、形成される凝集体の個数を非通紙部Nと通紙部Pとで異ならせることにより、前記表面粗さR1、R2をそれぞれ調整している。
【0095】
ここで、凝集体を形成していないフィラー微粒子と凝集体との合計の個数を100としたとき、通紙部Pにおける凝集体の個数は、10未満であることが好ましく、3〜5程度であることがより好ましい。一方、非通紙部Nにおける凝集体の個数は、10〜40程度であることが好ましく、15〜38程度であることがより好ましい。これにより、表面粗さR1、R2を、それぞれ前記範囲により確実に調整することができる。
【0096】
なお、凝集体の個数及びフィラー微粒子の個数は、例えば、以下の方法により計数される。まず、導電性基体11から感光層14を剥離した後、感光層14をイオンミリング装置(E−3500:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、その厚さ方向に沿って切断して切片を調製する。次に、切片(測定用サンプル)の断面を、走査型電子顕微鏡(S−4800:株式会社日立製作所社製)を用いて、加速電圧:1keV無常着で観察する。その後、その断面画像における電荷輸送層13中の1〜3μmの定方向接線径を有する凝集体の個数及びフィラー微粒子の個数を計数する。
【0097】
フィラー微粒子の平均一次粒径は、0.1〜0.5μm程度であることが好ましく、0.2〜0.4μm程度であることがより好ましい。フィラー微粒子の平均一次粒径を前記範囲とすることにより、フィラー微粒子同士が激しく凝集することを防止又は抑制することができる。このため、フィラー微粒子を電荷輸送層13中でより均一に分散させることができると共に、所定径の凝集体をより確実に形成することができるので、表面粗さR1、R2を、それぞれ前記範囲に容易かつ確実に調整することができる。その結果、電荷輸送層13の端部の偏った膜べりを防止しつつ、電荷輸送層13全体の耐摩耗性ひいては耐刷性を十分に高めることができる。また、このように平均一次粒径の小さいフィラー微粒子を用いることにより、電荷輸送層13において光の透過率が低下することを防止することもできる。
【0098】
なお、本明細書中において、平均一次粒径とは、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分析計(型式:マイクロトラックMT3000II:日機装株式会社製)を用いて、フィラー微粒子が分散された分散液と同じ溶剤で希釈した測定液において測定した値のことを言う。
【0099】
このようなフィラー微粒子には、無機微粒子及び/又は有機微粒子を用いることができる。無機微粒子は、硬度が高いため、電荷輸送層13(特に、非通紙部N)の耐摩耗性をより向上させることができる。有機微粒子は、結着樹脂との密着性(親和性)が高いため、電荷輸送層13が接触部材との接触によって削られても、電荷輸送層13から脱落し難い。無機微粒子及び有機微粒子の双方を用いることにより、これらが一緒に凝集体を形成することにより、無機微粒子により得られる効果と有機微粒子により得られる効果の双方が発揮される。
【0100】
無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、高い耐摩耗性を有し、且つ比較的安価に入手可能であることから、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を含む無機微粒子を用いることが好ましい。
【0101】
また、無機微粒子(特に、シリカ微粒子)は、分散性向上や表面改質等を目的として、無機物又は有機物で表面処理されていてもよい。有機物による表面処理としては、例えば、フッ素系シランカップリング剤を用いた表面処理、高級脂肪酸を用いた表面処理、高分子材料の共重合による表面処理のような撥水処理等が挙げられる。一方、無機物による表面処理としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカによる表面処理等が挙げられる。
【0102】
ここで、シリカ微粒子の市販品としては、例えば、R972、R974、NY50及びRX50(いずれも日本アエロジル株式会社製)、TS610、TS612、TS620及びTS630(いずれもキャボットジャパン株式会社製)、X−24−9163A(信越化学工業株式会社製)、SO−E1、SO−E2、SE100−GDT及びSE100−SPT(いずれも株式会社アドマテックス製)等が挙げられる。
【0103】
有機微粒子としては、例えば、フッ素系樹脂微粒子、ポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子、ポリアミドイミド樹脂微粒子、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粒子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、高い耐摩耗性を有し、且つ比較的安価に入手可能であることから、フッ素系樹脂微粒子を含む有機微粒子を用いることが好ましい。また、フッ素系樹脂微粒子を用いることにより、接触部材の非通紙部Nに対する摩擦力をより低減させることもできる。
【0104】
フッ素樹脂微粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)微粒子、3フッ化塩化エチレン樹脂微粒子、6フッ化プロピレン樹脂微粒子、フッ化ビニル樹脂微粒子、フッ化ビニリデン樹脂微粒子、2フッ化2塩化エチレン樹脂微粒子、これらの微粒子の樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂微粒子、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂微粒子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂微粒子等が挙げられる。特に、分散性及び分散安定性の観点から、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)微粒子が好ましい。
【0105】
ここで、4フッ化エチレン樹脂の市販品としては、例えば、ルブロンL−2、L−5及びL−5F(いずれもダイキン工業株式会社製)、KTL−500F、KTL−1N及びKTL−2N(いずれも株式会社喜多村製)、FLUON PTFE L173J(旭硝子株式会社製)、microdispers−200(テクノケミカル株式会社製)、MP−300(綜研化学株式会社製)、TLP−10F−1(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0106】
また、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂微粒子の市販品としては、例えば、MP−101(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂微粒子の市販品としては、例えば、120−JR(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0107】
電荷輸送層13中に含まれるフィラー微粒子の量は、特に限定されないが、3〜10重量%程度であることが好ましく、5〜10重量%程度であることがより好ましい。フィラー微粒子の量を前記範囲とすることにより、優れた耐刷性と安定した電気特性とを有し、画像形成装置における実使用に耐え得る感光体1を得ることができる。
【0108】
電荷輸送層13は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、電荷輸送層13中でのフィラー微粒子の分散性を高めると共に、所定径の凝集体をより確実に形成することができる。分散剤としては、例えば、フッ素系分散剤、アクリル酸系分散剤等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にフッ素系樹脂微粒子との親和性が高いことから、フッ素系分散剤が好適に用いられる。
【0109】
電荷輸送層13中に含まれる分散剤の量は、特に限定されないが、フィラー微粒子に対して1〜10重量%程度であることが好ましく、3〜7重量%程度であることがより好ましい。分散剤の量を前記範囲とすることにより、電荷輸送層13中におけるフィラー微粒子の分散性及び分散安定性を十分に高めることができる。
【0110】
前述したように、電荷輸送層13は、フィラー微粒子を含有する電荷輸送層用塗布液を電荷発生層12上に塗布し、乾燥することによって形成される。ここで、前記範囲の平均一次粒径を有するフィラー微粒子を用いることにより、フィラー微粒子を電荷輸送層用塗布液中に高い分散性で分散させることができ、電荷輸送層用塗布液の安定性を高めることができる。
【0111】
なお、フィラー微粒子の電荷輸送層用塗布液中への分散には、例えば、ホモジナイザーや高圧衝突タイプ等の公知の分散機を用いることができる。特に、高圧衝突タイプの分散機は、フィラー微粒子へ与えるダメージが少ないことから好適に用いられる。
【0112】
高圧衝突タイプの分散機としては、例えば、高圧噴射式乳化分散機が挙げられる。この高圧噴射式乳化分散機とは、高圧プランジャポンプ等により処理液(スラリー、乳化液又は分散液等)を微細な流路に圧入し、排出部の特殊バルブの調整で吐出口から高圧で噴射・衝突させることで、被分散物にダメージを与えることなく、乳化・分散・表面処理を行う湿式微粒化装置である。
【0113】
従って、高圧噴射式分散機は、吐出口からの噴射時に圧力を調節して高圧噴射液同士の衝突、及び高圧噴射液と装置の壁面との衝突による被分散物の乳化・分散又は粉砕に使用される。よって、前記高圧噴射式分散機としては、高圧ポンプと、これに配管により接続された複数の小径のオリフィスを有する治具と、オリフィスより液が吐出される際に液同士が衝突すべく加工された治具とを備える装置を用いることができる。
【0114】
このような装置としては、例えば、スターバースト(スギノマシン株式会社製)、ナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等を使用することができる。なお、衝突パス回数が増えると、液衝突時の発熱が蓄積し易いことから、分散回路に冷却装置を追加することが好ましい。
【0115】
ここで、高圧とは、高圧ポンプの吐出量及び吐出圧、オリフィス径及び長さ、更には溶剤及び被分散物の粘度等により概ね決定される10〜300MPa程度(好ましくは、50〜150MPa程度)の値を意味する。処理圧力を前記範囲とすることにより、液同士の衝突に必要且つ十分なエネルギーが得られ、被分散物の劣化及び処理液(分散液)の爆発等が生じることなく、被分散物を処理液中に極めて高い分散性で分散させることができる。
【0116】
前述したように、電荷輸送層13は、好ましくは、下引き層15及び電荷発生層12が形成された導電性基体11を電荷輸送層用塗布液で満たした塗工槽に浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で塗工槽から引上げる浸漬塗布法によって形成される。このとき、塗工槽へ供給する塗布液の流量(送液速度)を適宜変更することにより、塗布液中のフィラー微粒子の凝集状態を変化させることができる。これにより、非通紙部N及び通紙部Pそれぞれの表面粗さR1、R2を前記範囲に調整することができる。
【0117】
なお、引き層15及び電荷発生層12が形成された導電性基体11の端部のみを電荷輸送層用塗布液に出し入れすることによっても、非通紙部N及び通紙部Pそれぞれの表面粗さR1、R2を前記範囲に調整することができる。
【0118】
図2Aに示す構成例では、非通紙部Nの全領域の表面粗さR1が通紙部Pの表面粗さR2より大きくなっているが、本発明では、非通紙部Nの一部の領域のみの表面粗さR1が通紙部Pの表面粗さR2より大きくなっていてもよい。
図2B〜
図2Dは、電荷輸送層13(感光層14)の非通紙部Nの他の構成例を示す平面図である。以下、
図2B〜
図2Dに示す構成例について説明する。
【0119】
図2Bに示す構成例では、非通紙部Nに、表面粗さR1の複数の領域131が設けられている。各領域131は、感光体1の周方向に沿って設けられたリング状の領域であり、複数の領域131は、感光体1の長手方向に沿ってほぼ等間隔で設けられている。非通紙部Nにおいて複数の領域131が占める割合は、好ましくは20〜80%程度、より好ましくは30〜60%程度とされる。
【0120】
各領域131の幅は、0.1〜10mm程度であるのが好ましく、1〜5mm程度であるのがより好ましい。また、隣り合う領域131同士のピッチは、0.001〜1mm程度であるのが好ましく、0.01〜0.05mm程度であるのがより好ましい。
【0121】
なお、感光体1の平面視において、各領域131は、ほぼ一定の幅を有する真っ直ぐな帯状であるが、周方向の途中で幅が拡大した拡幅部を有していてもよく、波状に蛇行していてもよく、破線状であってもよい。また、複数の領域131は、互いに交差してもよい。
【0122】
図2Cに示す構成例では、各領域131は、その長手方向が感光体1の長手方向とほぼ一致するように設けられた真っ直ぐな帯状の領域であり、複数の領域131は、感光体1の周方向に沿ってほぼ等間隔で設けられている。なお、各領域131は、
図2Dに示すように、その長手方向が感光体1の長手方向に対して傾斜していてもよい。
【0123】
図2B〜
図2Dに示す構成例においても、
図2Aに示す構成例と同様の作用・効果が得られる。
【0124】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係る感光体の構成を模式的に示す断面図である。
【0125】
前記第1の実施の形態では、感光層14が電荷発生層12と電荷輸送層13とで構成される積層型感光層であったが、本実施の形態では、感光層14は、電荷発生物質及び電荷輸送物質の双方を含有する単一層、即ち単層型感光層である。なお、本実施の形態では、下引き層15が省略されている。
【0126】
図4に示す感光体1は、円筒状の導電性基体11と、導電性基体11上に設けられ、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層14とを有している。この場合、前記第1の実施の形態の電荷輸送層形成用塗布液に、更に電荷発生物質を分散させて、単層型感光層用塗布液とすることができる。
【0127】
従って、本実施の形態では、感光層14全体が感光体1の表面層を構成し、感光層14がフィラー微粒子を含有している。このような構成により、感光層14が、表面粗さR2の通紙部Pと、少なくとも一部に表面粗さR2より大きい表面粗さR1の領域を有する非通紙部Nとを備えている。
【0128】
[第3の実施の形態]
図5は、第3の実施の形態に係る感光体の構成を模式的に示す断面図である。
【0129】
前記第1の実施の形態では、感光層14が単一の電荷輸送層13を有していたが、本実施の形態では、感光層14は、複数の電荷輸送層13A、13Bを有している。なお、本実施の形態では、下引き層15が省略されている。
【0130】
図5に示す感光体1は、円筒状の導電性基体11と、導電性基体11上に設けられた感光層14とを有している。感光層14は、導電性基体11側から順に、電荷発生層12と、第1電荷輸送層13Aと、第2電荷輸送層13Bとを備えている。この場合、第1電荷輸送層13A中に含まれる電荷輸送物質の量及び/又は種類と、第2電荷輸送層13B中に含まれる電荷輸送物質の量及び/又は種類とを異なるようにすることができる。
【0131】
また、本実施の形態では、感光層14を構成する2つの電荷輸送層のうちの第2電荷輸送層13Bが表面層を構成し、第2電荷輸送層13Bがフィラー微粒子を含有している。このような構成により、第2電荷輸送層13Bが、表面粗さR2の通紙部Pと、少なくとも一部に表面粗さR2より大きい表面粗さR1の領域を有する非通紙部Nとを備えている。
【0132】
前記第1〜第3の実施の形態の感光層14は、更に電荷輸送層13又は第2電荷輸送層13B上に設けられた保護層を有してもよい。この場合、保護層が表面層を構成し、保護層がフィラー微粒子を含有する。従って、このような構成では、保護層が、表面粗さR2の通紙部Pと、少なくとも一部に表面粗さR2より大きい表面粗さR1の領域を有する非通紙部Nとを備えることになる。
【0133】
また、前記第1〜第3の実施の形態の感光層14では、フィラー微粒子の凝集体の数の違いにより、非通紙部Nの少なくとも一部の領域の表面粗さR1が通紙部Pの表面粗さR2より大きくなるようにしている。しかしながら、表面粗さR1を表面粗さR2より大きくするためには、例えば、通紙部P及び非通紙部Nそれぞれの中に含まれる微粒子の平均一次粒径及び/または数を変更するようにしてもよい。
【0134】
更に、前記実施の形態の感光層14では、フィラー微粒子の存在により、感光層14の表面に凹凸が形成している。しかしながら、感光層14の表面に凹凸を形成するためには、例えば感光体14の表面に対して粗面化処理を行うようにしてもよい。粗面化処理としては、例えば、型押し、溶剤処理、エッチング処理、ブラスト処理等が挙げられる。
【0135】
(画像形成装置)
次に、以上説明したような感光体1を備える電子写真方式の画像形成装置について説明する。
【0136】
図6は、一実施の形態に係る画像形成装置の内部を模式的に示す断面図である。
【0137】
図6に示す画像形成装置30は、レーザプリンタである。この画像形成装置30は、感光体1、半導体レーザ31、回転多面鏡32、結像レンズ34、ミラー35、コロナ帯電器36、現像器37、転写紙カセット38、給紙ローラ39、レジストローラ40、転写帯電器41、分離帯電器42、搬送ベルト43、定着器44、排紙トレイ45及びクリーナ46を備えている。
【0138】
感光体1は、図示しない駆動手段によって矢符47の方向に回転可能に画像形成装置30に搭載されている。半導体レーザ31から出射されるレーザビーム33は、回転多面鏡32によって走査される。結像レンズ34は、f−θ特性を有し、レーザビーム33をミラー35で反射させて感光体1の表面に結像させる。感光体1を回転させながらレーザビーム33を走査して結像させ、感光体1の表面に画像情報に対応する静電潜像が形成される。これらの半導体レーザ31、回転多面鏡32、結像レンズ34及びミラー35によって、露光部49が構成されている。
【0139】
コロナ帯電器(帯電部)36、現像器(現像部)37、転写帯電器41、分離帯電器42及びクリーナ46は、矢符47で示す感光体1の回転方向の上流側から下流側に向かって、この順序で設けられている。コロナ帯電器36は、レーザビーム33の結像点よりも感光体1の回転方向の上流側に設けられ、感光体1の表面を均一に帯電させる。均一に帯電された感光体1の表面にレーザビーム33が照射(露光)されることより、照射部位とそれ以外の部位とで帯電量に差異が生じて前記静電潜像が形成される。
【0140】
現像器37は、レーザビーム33の結像点よりも感光体1の回転方向の下流側に設けられ、感光体1の表面に形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。転写紙カセット38に収容される転写紙48は、給紙ローラ39によって1枚ずつ取り出され、レジストローラ40によって、転写帯電器41に供給される。転写帯電器41によってトナー像が転写紙(転写材)48に転写される。分離帯電器42は、トナー像が転写された転写紙を除電して感光体1から分離する。これらの転写帯電器41及び分離帯電器42によって、転写部が構成されている。
【0141】
感光体1から分離された転写紙48は、搬送ベルト43によって定着器(定着部)44に搬送され、定着器44によってトナー像が定着されることで画像が形成され、排紙トレイ45に排出される。なお、分離帯電器42によって転写紙48が分離された後、更に回転を続ける感光体1は、その表面に残留するトナー及び紙粉などの異物がクリーナ46によって清掃される。感光体1のうち清掃された箇所は、除電器50によって除電される。このような一連の画像形成プロセスが、感光体1の回転によって繰り返される。
【0142】
なお、画像形成装置30は、
図6に示す構成に限定されるものではなく、感光体1を使用する装置であれば、モノクロプリンタ及びカラープリンタのいずれであってもよい。また、画像形成装置30は、電子写真プロセスを利用する種々のプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等であってもよい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0144】
1.感光体の製造
まず、以下の各実施例、各比較例及び各参考例で使用するために、下引き層及び電荷発生層が形成された基体を用意した。
【0145】
(下引き層の作製)
まず、酸化チタン(タイベークTTO−D−1:石原産業株式会社製)3重量部と、ポリアミド樹脂(アミランCM8000:東レ株式会社製)2重量部とを、メチルアルコール25重量部に添加し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。これにより、下引き層用塗布液3kgを調製した。得られた下引き層用塗布液を塗布槽に満たし、導電性基体として直径30mm、長さ357mmのアルミニウム製の円筒状の基体を浸漬した。その後、基体を下引き層用塗布液から引き上げ、自然乾燥した。これにより、基体上に膜厚1μmの下引き層を形成した。
【0146】
(電荷発生層の作製)
次に、電荷発生物質として、CuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニン1重量部と、結着樹脂としてブチラール樹脂(エスレックBM−2:積水化学工業株式会社製)1重量部とを、メチルエチルケトン98重量部に混合し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。これにより、電荷発生層用塗布液3kgを調製した。
【0147】
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層を形成する場合と同様の方法で、先に設けた下引き層の表面に塗布し、自然乾燥した。これにより、下引き層上に、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0148】
(実施例1)
まず、電荷輸送物質として下記式(1)で表される化合物(D2448:東京化成工業株式会社製)100重量部と、結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(TS2050:帝人化成社株式会社製)140重量部と、フィラー微粒子として約0.2μmの平均一次粒径を有する4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(ルブロンL−2:ダイキン工業株式会社製)27重量部と、分散剤としてフッ素系分散剤(GF−400:東亞合成株式会社製)1.4重量部とを混合した。これにより、混合物を得た。
【0149】
【化1】
【0150】
次に、この混合物をテトラヒドロフランに添加して、固形分21質量%の懸濁液を作製した。その後、懸濁液を湿式乳化分散装置(M−110P:マイクロフルイダイザー社製)を用いて、設定圧力:100MPaの条件で、装置を5回通過させる操作を行った。これにより、電荷輸送層用塗布液3kgを調製した。
【0151】
次に、電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により電荷発生層の表面に塗布した。具体的には、得られた電荷輸送層用塗布液を塗布槽に満たし、予め用意された下引き層及び電荷発生層が形成された基体を塗布液に浸漬した後、引き上げた。その後、電荷輸送層用塗布液を130℃で90分間乾燥した。これにより、電荷発生層上に、膜厚28μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、
図1、
図2A及び
図3に示す構造の感光体を得た。
【0152】
ここで、基体の引き上げは、塗工槽へ供給する電荷輸送層用塗布液の流量(送液速度)を変更することにより、塗布液中の微粒子の凝集状態を変化させつつ行った。これにより、電荷輸送層(感光体)の表面粗さ、即ち、非通紙部及び通紙部それぞれの表面粗さR1、R2を調整した。なお、流量は、5〜25L/minの範囲で調整した。
【0153】
(実施例2)
表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0154】
(実施例3)
表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0155】
(実施例4)
表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0156】
(実施例5)
分散剤の量を0.5重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0157】
(実施例6)
分散剤の量を2.7重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0158】
(実施例7)
フィラー微粒子の量を19重量部に、分散剤の量を1.0重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0159】
(実施例8)
フィラー微粒子の量を19重量部に、分散剤の量を1.0重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0160】
(実施例9)
フィラー微粒子の量を19重量部に、分散剤の量を1.0重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0161】
(実施例10)
フィラー微粒子の量を19重量部に、分散剤の量を1.0重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0162】
(実施例11)
フィラー微粒子の量を11重量部に、分散剤の量を0.6重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0163】
(実施例12)
フィラー微粒子の量を11重量部に、分散剤の量を0.6重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0164】
(実施例13)
フィラー微粒子の量を11重量部に、分散剤の量を0.6重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0165】
(実施例14)
フィラー微粒子の量を11重量部に、分散剤の量を0.6重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0166】
(実施例15)
フィラー微粒子をPFA微粒子(MP−101:三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0167】
(実施例16)
フィラー微粒子をシリカ微粒子(SO−E2:株式会社アドマテックス製)に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0168】
(実施例17)
分散剤を異なるフッ素系分散剤(サーフロンS−385:AGCセイケミカル株式会社製)に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0169】
(比較例1)
表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0170】
(比較例2)
表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0171】
(比較例3)
フィラー微粒子をPFA微粒子(MP−101:三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0172】
(比較例4)
フィラー微粒子をシリカ微粒子(SO−E2:株式会社アドマテックス製)に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0173】
(参考例1)
フィラー微粒子の量を5重量部に、分散剤の量を0.3重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0174】
(参考例2)
分散剤の添加を省略すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0175】
(参考例3)
分散剤の量を8.4重量部に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0176】
(参考例4)
分散剤をアクリル酸系分散剤(SD−10:東亞合成株式会社製)に変更すると共に、表面粗さR1、R2がそれぞれ表1に示す値となるように、電荷輸送層用塗布液の流速を5〜25L/minの範囲で調整した以外は、実施例1と同様にして感光体を得た。
【0177】
2.計数及び評価
2−1.フィラー微粒子及び凝集体の個数の計数
まず、各実施例、各比較例及び各参考例で得られた感光体の感光層を基体から剥離した後、感光層をイオンミリング装置(E−3500:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、その厚さ方向に沿って切断して切片を調製した。次に、切片(測定用サンプル)の断面を、走査型電子顕微鏡(S−4800:株式会社日立製作所社製)を用いて、加速電圧:1keV無常着で観察した。その後、その断面画像における電荷輸送層中の1〜3μmの凝集体の個数及び微粒子の個数を計数した。ここで、実施例1で得られた感光体の電荷輸送層における通紙部の断面画像を
図7A及び
図7Bに、また、実施例1で得られた感光体の電荷輸送層における非通紙部の断面画像を
図8A及び
図8Bに示す。
【0178】
2−2、実写膜べり量の評価
各実施例、各比較例及び各参考例で得られた感光体をデジタル複写機(MX−2600:シャープ株式会社製)を改造した試験用複写機に搭載した。次に、画像形成工程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(mode1344:トレック・ジャパン株式会社製)を試験用複写機に取り付けた。なお、感光体を露光するための光源として、波長780mmのレーザ光源を用いた。
【0179】
各感光体の電荷輸送層(感光層)について、25℃(常温)/50%(常湿)の一定環境下で、実写前と100k枚実写後との膜厚変化を、渦電流式膜厚計(フィッシャー社製)を用いて測定した。この測定値を、複写機上の感光体100k回転あたりの膜べり量(μm)に換算して、以下の基準に従って評価した。なお、膜厚変化の測定は、通紙部及び非通紙部のそれぞれについて行った。この膜べり量が小さい程、耐刷性に優れると判断することができる。
【0180】
VG:非常に良好である(膜べり量<0.8μm)。
【0181】
G :良好である(0.8μm≦膜べり量<1.0μm)。
【0182】
NB:やや良好である(1.0≦膜べり量<2.0μm)。
【0183】
B :良好でない(2.0μm<膜べり量)。
【0184】
2−3.通紙部に対する非通紙部の膜べり率の評価
前記「2−2」で測定された通紙部及び非通紙部の膜べり量の値から、非通紙部の膜べり量/通紙部の膜べり量の式に基づいて、通紙部に対する非通紙部の膜べり率を算出した。なお、通紙部及び非通紙部の膜べり量の絶対値が大きくない場合でも、これらの差が大きくなると、残膜量の差が広がる。残膜量の差が広がると、感光体を適正(均一)に帯電させることができず、トナー消費量の増加や紙端汚れのような画像の品質不良等の問題が誘発される。そこで、通紙部に対する非通紙部の膜べり率を算出し、以下の基準に従って評価した。
【0185】
VG:非常に良好である(0.9<膜べり率<1.1)。
【0186】
G :良好である(1.1≦膜べり率<1.4)。
【0187】
NB:やや良好である(1.4≦膜べり率<1.7)。
【0188】
B :良好でない(1.7≦膜べり率)。
【0189】
2−4.総合評価
実写膜べり量及び通紙部に対する非通紙部の膜べり率の評価結果を考慮して、以下の基準に従って総合的に評価した。
【0190】
VG:非常に良好である(3つの評価のうちに、2つ以上のVGを含み、且つNB及
びBを含まない)。
【0191】
G :良好である(3つの評価のうちに、Bを含まない)。
【0192】
B :実使用不可である(3つの評価のうちに、1つ以上Bを含む)。
【0193】
実施例1〜17及び比較例1〜4について、フィラー微粒子の種類及びその電荷輸送層中に含まれる量(含有量)、分散剤の種類及びそのフィラー微粒子に対する量、凝集体の個数、非通紙部及び通紙部の表面粗さ、その差及び比を、評価結果と共に、下記表1に示す。
【0194】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜17で得られた感光体では、いずれも非通紙部の表面粗さR1を通紙部の表面粗さR2より大きくすることによって、通紙部に対する非通紙部の膜べり率を1.6未満に抑えることができる。即ち、電荷輸送層(感光層)の端部の偏った膜べりを抑制することができる。特に、この効果は、非通紙部及び通紙部の表面粗さR1、R2をより好ましい範囲に調整することによって向上する傾向がある。
【0195】
また、フィラー微粒子として無機微粒子及び有機微粒子のいずれも有用であり、フッ素系分散剤は、フィラー微粒子を適切な分散状態で電荷輸送層中に分散させ得るため有用であることが判る。
【0196】
これに対して、比較例1〜4で得られた感光体では、非通紙部の表面粗さR1が通紙部の表面粗さR2より小さいため、通紙部に対する非通紙部の膜べり率が大きくなる。即ち、電荷輸送層(感光層)の端部の偏った膜べりが顕著である。かかる現象は、フィラー微粒子の種類に関係なく認められる。
【0197】
次に、表1と同様にして、実施例4、実施例10、実施例13及び参考例1について、表2に示す。
【0198】
【表2】
表2に示すように、実施例4、実施例10、実施例13及び参考例1で得られた感光体は、いずれも非通紙部の表面粗さR1が通紙部の表面粗さR2より大きいため、通紙部に対する非通紙部の膜べり率の結果に大きな差はない。ただし、電荷輸送層中に含まれるフィラー微粒子の量が多くなるにつれて、電荷輸送層全体の膜べり量が減少する傾向がある。特に、電荷輸送層中に含まれるフィラー微粒子の量が3重量%以上であると、膜べり量の減少効果が良好であり、耐刷性に優れた感光体であると言える。
【0199】
次に、表1と同様にして、実施例1及び参考例2〜4について、表3に示す。
【0200】
【表3】
表3に示すように、実施例1、参考例2及び参考例4で得られた感光体は、いずれも非通紙部の表面粗さR1が通紙部の表面粗さR2より大きいため、通紙部に対する非通紙部の膜べり率の結果に大きな差はない。ただし、参考例2の電荷輸送層では、分散剤を用いていないため、フィラー微粒子の分散性が若干低いようであり、電荷輸送層全体の膜べり量が増大している。また、参考例4の電荷輸送層は、フッ素系分散剤以外のアクリル酸系分散剤を用いることで、実施例1と同様の方法では、微粒子の分散性及び凝集体の形成量の制御が難しく、やはり電荷輸送層全体の膜べり量が増大している。
【0201】
参考例3の感光体では、分散剤を多量に用いることによって、フィラー微粒子の分散性が極端に高まり、実施例1と同様の方法では、凝集体の形成量の制御が難しい。このため、参考例3の感光体でも、非通紙部の表面粗さR1を通紙部の表面粗さR2より大きくすることはできるが、その差(R1−R2)を十分に確保することができていない。これが原因で、通紙部に対する非通紙部の膜べり率が大きくなっている