(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フラップは、前記立設位置から前記倒伏位置に移動する際に、前記フラップを構成する面における一定の範囲で前記バックルに当接することを特徴とする請求項1に記載の乗物用フラップ装置。
前記フラップは、前記乗物用シートの左右方向において、前記乗物用シートにおける一人分のシート長さよりも前記左右方向に長く形成されていることを特徴とする請求項5に記載の乗物用フラップ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシートベルト構造は、リンク機構を設ける分だけ部品点数、加工工数、重量が増加し、コストがかかり、また、リンク機構を取り付ける手間がかかっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数等の大幅な増加を抑制しつつ、シートバックとバックルとが干渉することを避けることが可能な乗物用フラップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗物用フラップ装置によれば、使用位置と収納位置とに回動可能に設けられて、シートベルトのタングを保持するためのバックルと、
乗物の車体に固定されて前記乗物の荷室の一部を構成する固定板を有し、前
記荷室の一部を形成するフラップと、を備え、前記フラップは、
立設位置と倒伏位置とに移動可能に前記乗物の内部に取り付けられるとともに、前記乗物の車体に固定されて前記荷室の一部を構成する固定板を有するとともに、前記立設位置から前記倒伏位置に移動する際に、前記バックルに当接して前記バックルを前記収納位置に回動させる位置に形成されていることにより解決される。
上記構成によれば、フラップをバックルに当接させることによってバックルを収納位置に回動させることにより、シートバックとバックルが干渉することを回避でき、バックルを倒すためにシート側に追加部品を設けたり、シート側を特殊形状に形成する必要がなく、部品点数、重量、加工工数及びコストの増加を抑制できる。
【0008】
また、前記フラップは、前記立設位置から前記倒伏位置に移動する際に、前記フラップを構成する面における一定の範囲で前記バックルに当接すると好ましい。
上記構成によれば、フラップが、フラップを立設位置から倒伏位置に移動させる際に、フラップを構成する面における一定の範囲でバックルに当接することで、フラップの局部にバックルから加わる荷重が集中することを抑制することができる。このため、バックルからの反力によってフラップに外観上の不具合(摩耗やキズ、表皮倒れ、凹み等)が生じることを抑制できる。さらに、フラップを構成する面の一定の範囲で連続的にバックルに当接するため、バックルをスムースに収納位置に移動させることができる。
【0009】
また、前記フラップは、
前記固定板に回動可能に取り付けられた回動板を有して回動可能に前記乗物の内部に取り付けられており、前記バックルにおける前記フラップとの当接部は、R面取り形状に形成されており、前記立設位置から前記倒伏位置に回動する際に前記バックルに当接する前記フラップの当接面は、前記バックルの回動
軌跡に沿って湾曲していると好ましい。
上記構成によれば、バックルにR面取りが施され、フラップの当接面がバックルの回動
軌跡に沿って湾曲していることで、フラップは、バックルに線接触ではなく面接触で当接することとなる。このため、フラップにバックルが当接する際に、バックルの局部に応力が集中することを抑制して、バックルをソフトに押圧することができる。バックルからの反力によってフラップに外観上の不具合が生じることを抑制することができる。
【0010】
また、前記フラップは、
前記固定板に回動可能に取り付けられた回動板を有して回動可能に前記乗物の内部に取り付けられており、前記フラップの回動中心位置は、前記バックルの回動中心位置よりも、前記バックルにおける前記フラップに当接する位置から離れていると好ましい。
上記構成によれば、バックルを回転させる際に、フラップの回動中心位置が、バックルの回動中心位置よりもフラップに当接する位置から離れていることで、小さな力でバックルをソフトに押し倒すことができ、バックルをスムースに収納できる。このため、バックルに当接する当接部位にバックルの反力が加わることによって当該部位に外観上の不具合が発生することを抑制できる。
【0011】
また、前記フラップは、
前記固定板に回動可能に取り付けられた回動板を有して回動可能に前記乗物の内部に取り付けられており、前記バックルは、シートクッションと、該シートクッションに対して回動可能に接続されたシートバックと、を備える乗物用シートの近傍に設けられており、前記フラップの回動中心位置は、前記シートバックの回動中心位置よりも、前記バックルにおける前記フラップとの当接部位から離れた位置にあると好ましい。
上記構成によれば、フラップの回動中心位置がシートバックの回動中心よりもバックルから離れた位置にあることで、バックルを使用位置から収納位置に回動させるためにシートバックをバックルに当接させる場合と比較して、フラップをバックルに当接させる場合には、小さな力でバックルを押し倒し、バックルをスムースに収納できる。このため、バックルをシートバックに当接させる場合よりも、バックルに当接するフラップに外観上の不具合が発生することを抑制できる。
【0012】
また、前記フラップは、前記乗物用シートの左右方向において、前記乗物用シートにおける一人分のシート長さよりも前記左右方向に長く形成されていると好ましい。
上記構成によれば、乗物用シートの左右方向におけるフラップの長さが一人分の乗物用シートの長さよりも長く形成されていることで、フラップをバックルに当接する位置に形成しつつ、作業者がフラップに触れることが可能な長さを確保するようにして、フラップを回動させやすくなる。
【0013】
また、前記バックルは、前記フラップに当接可能な当接部を有し、該当接部は、緩衝材から成り、前記フラップが前記立設位置から前記倒伏位置に移動する際に当接すると好ましい。
上記構成によれば、フラップが立設位置から倒伏位置に移動する際に当接するバックルの当接部が、緩衝材から成るものであることで、フラップとバックルが当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0014】
また、前記バックルは、バックル本体と、該バックル本体を支持する支持アームと、を備え、該支持アームは、前記バックルの前記使用位置と前記収納位置とに回動可能となるように前記乗物のフロア側に取り付けられており、前記バックル本体と前記支持アームとは、前記バックルの前記使用位置と前記収納位置との回動方向に沿う方向に、回動軸によって回動可能に接続されていると好ましい。
上記構成によれば、バックル本体と支持アームとが、バックルの使用位置と収納位置との回動方向に沿う方向に、回動軸によって回動可能に接続されていることで、フラップがバックル本体に当接したときに、バックル本体が支持アームに対して回動するため、バックル本体に加わる応力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シートバックとバックルが干渉することを回避でき、バックルを倒すためにシート側に追加部品を設けたり、シート側を特殊形状に形成する必要がなく、部品点数、重量、加工工数及びコストの増加を抑制できる。
また、本発明によれば、フラップの局部に荷重が集中することを抑制することができる。そして、バックルからの反力によってフラップに外観上の不具合が生じることを抑制し、バックルをスムースに収納位置に移動させることができる。
また、本発明によれば、小さな力でバックルをソフトに押し倒すことができ、バックルをスムースに収納できる。このため、バックルに当接する当接部位にバックルの反力が加わることによって当該部位に外観上の不具合が発生することを抑制できる。
また、本発明によれば、フラップをバックルに当接する位置に形成しつつ、作業者がフラップに触れることが可能な長さを確保するようにして、フラップを回動させやすくなる。
また、本発明によれば、フラップとバックルが当接する際の衝撃を緩和することができる。
また、本発明によれば、バックル本体に加わる応力を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0018】
また、以下では、本実施形態に係る乗物用フラップ装置を取り付ける対象である乗物として、車両を例に挙げて説明することとする。ただし、本発明は、車両以外の乗物にも適用可能であり、例えば、船舶や航空機、産業用機械等にも適用可能である。
【0019】
なお、以下の説明中、「左右」とは、乗員が乗物用シートの着座したときに、前方を見た際の左右方向を意味しており、左右方向をシート幅方向ともいう。また、「前後方向」とは、乗員が乗物用シートの着座したときの前後方向を意味している。
【0020】
(フラップ装置Fの構成について)
まず、乗物用フラップ装置としての本実施形態に係るフラップ装置Fについて、
図1〜
図3を参照して概説する。なお、
図1は、本発明の一実施形態に係るリヤシートセットRSを示す後方側斜視図、
図2は、フラップ4が立設した状態のフラップ装置Fを示す側面図である。また、
図3は、バックル3が取り付けられている部位を拡大して示す側面図であり、ベースフレーム2のうち後述するカバー部2bを取り払ってアンカーブラケット2aを露出させた状態を示す図である。
フラップ装置Fは、フラップ4を倒伏させる際に、リヤシートセットRSに取り付けられた
図2に示すバックル3にフラップ4を当接させて、バックル3を収納状態に回動させる装置である。
【0021】
具体的には、フラップ装置Fは、リヤシートセットRSを構成する車両用シートSA,SBのそれぞれの車両の幅方向内側に取り付けられたバックル3と、リヤシートセットRSの後方にあり、車両の荷室の一部を形成するフラップ4と、から主に構成されている。
【0022】
本実施形態に係るリヤシートセットRSは、車両の後部座席のセットであり、
図1に示すように、隣接する乗物用シートとしての車両用シートSA,SBとから構成されている。
本実施形態に係る車両用シートSAと車両用シートSBとは、左右対称に構成されているため、車両内部において右側に設けられた車両用シートSAについて、
図2を参照して説明する。
【0023】
車両用シートSAは、スライドレール1と、スライドレール1上に取り付けられたベースフレーム2と、バックル3と、シートクッションS1と、シートクッションS1に回動可能に連結されたシートバックS2と、を主に備える。
【0024】
スライドレール1は、図示せぬフロアに対して、ベースフレーム2、シートクッションS1及びシートバックS2から構成される部位を前後方向にスライド可能とするものである。スライドレール1は、フラップ4を貫通して荷室側に突出するストラップ5を引くことによって、前後方向にスライド可能となるように、公知のスライド機構を構成している。
【0025】
ベースフレーム2は、
図2及び
図3に示すように、アンカーブラケット2aと、アンカーブラケット2aを覆うカバー部2bと、を備え、スライドレール1のアッパレールに沿って延在して、アッパレールに取り付けられている。
アンカーブラケット2aは、バックル3、厳密にはバックル3における後述する支持アーム3aを回動可能に支持してスライドレール1に取り付けられる部材である。アンカーブラケット2aは、ベースフレーム2の前後方向おける中央よりも後側にあり、前後方向視において、略L字状に形成されている。
【0026】
アンカーブラケット2aの側面部には、バックル3(後述する支持アーム3a)の下端部に設けられた回動中心としてのアンカー3cが回動可能に取り付けられている。また、ベースフレーム2のアンカー3cが取り付けられている部位よりも後側である上端近傍には、シートバックS2の回動軸12が設けられている。
アンカーブラケット2aは、その底面部(つまり、側面部よりも下方)において、スライドレール1のアッパレールにボルト・ナットによって固定されている。
【0027】
バックル3は、シートベルト10のタング10aを保持するためのものであり、上記のアンカー3cを介してアンカーブラケット2aに接続されていることで、使用位置と収納位置とに回動可能に設けられている。ここで、使用位置とは、
図2〜
図4に示すように、バックル3が立設したときの位置であり、収納位置とは、
図5に示すように、バックル3が倒伏したときの位置である。
【0028】
バックル3は、回動中心となるアンカー3cと、アンカー3cによって支持される支持アーム3aと、支持アーム3aに接続され、シートベルト10のタング10aを係止するバックル本体3bと、から構成されている。
アンカー3cは、上記のようにベースフレーム2のアンカーブラケット2aに取り付けられている。アンカー3cには図示せぬコイルスプリングが取り付けられており、バックル3は、このコイルスプリングにより立設する方向に付勢されている。このコイルスプリングによる付勢によって、バックル3は自然状態において起立した状態となる。
また、アンカー3cは、シートベルト10が使用されるときにバックル3が立設する位置と、シートバックS2が倒伏してシートベルト10が使用されていないときにバックル3が前側下方に収納される位置とに、バックル3の位置が変位する際の回動中心となる。
【0029】
支持アーム3aは、アンカー3cによって一端を支持され、他端にバックル本体3bが接続されている。上記のコイルスプリングによってバックル3は付勢されており、支持アーム3aは、コイルスプリングからの付勢力以外の外力がバックル3に加わっていない状態において、上方向に向かうに連れて若干前方向に向かうように斜めに延在している。
【0030】
バックル本体3bは、フラップ4の当接面4baに当接可能な位置であり、上端、かつ、後端にある当接部3baに、フラップ4に当接する際の衝撃を緩和して、フラップ4に傷が生じるのを防止するため、また異音発生防止のための緩衝材3bcを有する。ここで、緩衝材3bcは、例えば、ゴム材、エラストマー等の樹脂材、ウレタンパッド等の発泡樹脂材やニードルパンチ等の不織布等から成る部材である。
【0031】
なお、緩衝材3bcは、バックル本体3bの上端、かつ、後端のみに設けられていれば、上記の衝撃緩和及び異音の発生を抑制できるため好適である。しかしながら、本発明に係る緩衝材は、このような構成に限定されず、少なくとも当接面4baに当接可能な位置に設けられていればよい。例えば、緩衝材は、組付作業性、及び成形容易性を考慮して、バックル本体3bの後ろ側、バックル本体3bの上側、或いはバックル本体3b全体に設けられていてもよい。
【0032】
シートバックS2は、シートクッションS1の後端部に連結アーム11によって回動可能に連結されている。シートバックS2のシート幅方向両側の下部には、シート幅方向内側に切り欠かれた切欠き6が形成されている。この切欠き6により、バックル3のバックル本体3bは、シートバックS2を越えてフラップ4側に露出している。このため、後述するように、フラップ4を構成する回動板4bは、立設位置から倒伏位置に回動する際にバックル本体3bに当接し、バックル3を収納位置に回動させることとなる。
【0033】
本実施形態においては、シートバックS2に切欠き6が形成されていることによって、シートバックS2を倒伏させる際に、バックル3は、シートバックS2に干渉せずに回動板4bによって使用位置から収納位置に回動する。しかしながら、切欠き6は必ずしも必要な構成ではない。例えば、車両用シートSAと車両用シートSBとの間に隙間があり、バックル3を、シートバックS2を越えて回動板4bのある後方に露出する構成であればよい。このような構成であれば、シートバックS2に干渉せずに、回動板4bによってバックル3を使用位置から収納位置に回動させることができる。
【0034】
フラップ4は、車体に固定され荷室の一部を構成する固定板4aと、固定板4aの前端部にあり回動中心である折れ起点4cによって回動可能に取り付けられた回動板4bと、から構成されている。
固定板4aは、荷室の下面の一部を形成するフロアボードである。
回動板4bは、薄肉ヒンジから成る折れ起点4cによって、立設位置と倒伏位置とに折り曲げられるようにして回動可能に固定板4aの前端部に接続されている。回動板4bにおける立設状態において前側には、バックル本体3bに当接する当接面4baがある。当接面4baは、中央部がシートバックS2から離間して湾曲する、換言すると、バックル3の回動方向に沿ってバックル3に上下に覆い被さるように湾曲して形成された断面円弧状の曲面形状を有する。
【0035】
車両幅方向(左右方向)において、回動板4bの幅w2は、車両用シートSA,SBの一人分のシート長さ、つまり
図1に示すシートの幅w1よりも車両幅方向に長く形成されている。このように回動板4bが形成されていることで、回動板4bを倒伏させたときに、回動板4bがバックル3のバックル本体3bに当接する位置に回動板4bを配設しつつ、シートバックS2を倒しやすくできる。具体的には、作業者が回動板4bに触れることが可能な長さを確保できることで、作業者が回動板4bに触れて直接回動板4bを倒しやすくなり、間接的にシートバックS2を倒しやすくなる。
【0036】
また、折れ起点4cには、コイルスプリング等の図示せぬ付勢部材が取り付けられており、当該付勢部材によって、回動板4bは、シートバックS2側に付勢されている。この付勢部材の付勢力によって、作業者がシートバックS2を倒伏させると、シートバックS2が倒伏するのに伴って、回動板4bも倒伏することとなる。そして、回動板4bは、倒伏状態となったときにフロアボードとして機能することとなる。
【0037】
(フラップ装置Fを用いたバックル収納方法について)
次に、上記の構成からなるフラップ装置Fを用いたバックル3の収納方法について、
図2に加えて、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、
図4は、フラップ4がバックル3に当接した状態のフラップ装置Fを示す側面図、
図5は、フラップ4が倒伏した状態のフラップ装置Fを示す側面図である。
【0038】
まず、回動工程において、図示せぬレバーを操作することによって、シートバックS2を
図2に示す着座可能な位置である起立位置から、
図5に示す着座不能な位置である倒伏位置に向かって回動させる。そうすると、シートバックS2の倒伏に伴って、フラップ4の折れ起点4cに取り付けられた図示せぬコイルスプリングの付勢によって、フラップ4の回動板4bも立設位置から倒伏位置に向かって回動する。
【0039】
このシートバックS2の回動の際に、シートクッションS1は、シートバックS2に連結アーム11によって接続されていることにより、シートバックS2の回動軸12を中心とする倒伏に応じて、下方、かつ、前方に移動することとなる。具体的には、シートクッションS1は、連結アーム11とシートバックS2との回動支持軸を中心として相対的に回動することによって、上記のように移動することとなる。
【0040】
シートバックS2が倒伏するときに、シートバックS2におけるバックル3に交差する部分には、上記のように切欠き6が形成されている。この切欠き6によって、バックル3のバックル本体3bは、シートバックS2を越えてシートバックS2の後方及び上方に露出している。そして、回動板4bが倒伏位置に向かって回動していくと、
図4に示すように、回動板4bの当接面4baが、バックル本体3bの当接部3baに当接することとなる。
【0041】
上記のように、バックル3は、斜め前方に傾斜してベースフレーム2に取り付けられている。このため、収納工程において、回動板4bが当接部3baに当接した状態で回動板4bが更に下方に回動すると、回動板4bに当接するバックル3は、アンカー3cを中心に、前方、かつ、下方に向けて回動する。そして、
図5に示すように、バックル3は、収納位置まで回動することとなる。なお、当接面4baの自重と折れ起点4cに取り付けられたコイルスプリングの付勢力との合力は、アンカー3cに取り付けられたコイルスプリングの付勢力よりも大きく設定されている。このため、バックル3は、アンカー3cから加わるコイルスプリングの付勢力に抗してフラップ4から押圧されることで、起立位置から収納位置に回動することとなる。
【0042】
上記のように、バックル3がアンカー3cによって回動支持されるアンカーブラケット2aの側面部は、アンカーブラケット2aのスライドレール1に固定される底面部よりも上方に設けられている。このため、フラップ4がバックル3に当接して、バックル3にフラップ4から荷重が加わると、バックル3が前方かつ下方に回動することで、バックル3に加わる荷重が緩和される。このため、バックル3の当接部3baが、特に樹脂材料から成るものであるときに、傷が生じること等の不具合が生じることを抑制できる。
【0043】
また、フラップ4をバックル3に当接させて、バックル3を収納位置に回動させることにより、シートバックS2にバックル3を倒すための追加部品を設けたり、シートバックS2を特殊形状に形成する必要がなくなる。このため、部品点数、重量、加工工数及びコストの増加を抑制できる。また、フラップ4を倒伏状態にするとともにバックル3を収納位置に回動させることが可能となるため、フラップ4を倒して荷室を確保する際の作業性が良好となる。
【0044】
(バックル3とフラップ4との大きさ、配置の関係性について)
シートバックS2の回動中心である回動軸12の回動中心位置と、バックル3における回動板4bに当接する当接部3baとの距離を距離d1とする。そして、フラップ4の折れ起点4cの回動中心位置と、当接部3baとの距離を距離d2とすると、距離d2は、距離d1よりも大きい。つまり、フラップ4の回動中心である折れ起点4cの位置は、回動軸12よりも当接部3baから離れた位置にある。
【0045】
このため、バックル3を使用位置から収納位置に回動させるためにフラップ4をバックル3に当接させる場合には、シートバックS2をバックル3に当接させる場合と比較して、バックル3を小さな力でソフトに押し倒すことができる。よって、バックル3をスムースに収納位置に回動させることができることとなる。
【0046】
その詳細な理由は、シートバックS2に切欠き6がない場合にシートバックS2がバックル3の当接部3baに当接する部位の回動軸12を中心とする回動軌跡に比して、回動板4bの当接面4baがバックル3の当接部3baに当接する部位の折れ起点4cを中心とする回動軌跡が大きくなるためである。
このため、バックル3をシートバックS2に当接させる場合にバックル3からの反力によってシートバックS2に生じる外観上の不具合の程度と比較して、バックル3をフラップ4に当接させる場合には、外観上の不具合の程度を低減させることができる。
【0047】
さらに、バックル3の回動中心であるアンカー3cの位置と当接部3baとの距離を距離d3とすると、距離d2は、距離d3よりも大きい。つまり、回動板4bの折れ起点4cの位置は、アンカー3cの位置よりも当接部3baから離れている。
【0048】
このように、バックル3の回動中心から離れた当接部3baに当接面4baが当接することで、バックル3に回動に必要なトルクを生じさせる荷重を回動板4bからバックル3に効果的に付与することができる。このため、アンカー3cを中心に回動するバックル3を小さな力でソフトに押し倒すことができ、バックル3をスムースに収納位置に回動させることができる。
さらに、バックル3に当接する当接面4baにバックル3からの反力が加わったとしても、その反力を小さく抑えることができるため、当接面4baに外観上の不具合が発生することを抑制できる。
【0049】
また、回動板4bが、立設位置から倒伏位置に回動する際に、フラップ4を構成する当接面4baにおける一定の範囲でバックル3に当接することで、回動板4bがバックル3に当接しながら回動する際に、回動位置に応じて当接箇所が変わることとなる。よって、バックル3から回動板4b加わる荷重が局所的に集中することを抑制することができる。このため、バックル3からの反力によって回動板4bに局所的に外観上の不具合が生じることを抑制できる。
さらに、回動板4bが、立設位置から倒伏位置に回動する際に、当接面4baにおいて断続的ではなく連続的にバックル3に当接することとなるため、バックル3をスムースに収納位置に移動させることができる。
【0050】
また、上記のように、回動板4bの当接面4baは、バックル3の回動方向の沿うように断面円弧状に湾曲して形成されている。このため、
図6に示すように、バックル本体3bの当接部3bbがR面取り形状に形成されている場合には、当接面4baは、バックル本体3bに対して線接触ではなく面接触で当接することとなる。このため、当接面4baにバックル3が当接する際に、バックル3の局部に応力が集中することを抑制して、バックル3をソフトに押圧することができる。このため、バックル3からの反力によってフラップ4の当接面4baに外観上の不具合が生じることを抑制することができる。
【0051】
バックル3は、上記のように、スライドレール1によって前後方向にベースフレーム2とともに移動する。このようにバックル3が前後のいずれの位置に移動したとしても、フラップ4の回動板4bが、倒伏位置に回動する際にバックル3のバックル本体3bの上端、かつ、後端の部位に当接可能なように、回動板4bの大きさ、フラップ4の位置が設定されている。
【0052】
<他の実施形態>
上記実施形態に係るリヤシートセットRSにおいては、1個のフラップ装置Fが、隣接する車両用シートSA,SBに跨るように配設されている例を説明したが、本発明に係るリヤシートセットはこのような構成に限定されない。
例えば、
図7に示すように、車両用シートSA,SB毎に分離して設けられて、独立して回動可能に設けられたフラップ4R,4Lを備えるフラップ装置F1であってもよい。ここで、
図7は、他の実施形態に係るフラップ装置F1を備えるリヤシートセットRS1を示す後方側斜視図である。
【0053】
このような構成のフラップ装置F1であれば、フラップ4Rのみを倒伏させつつ車両用シートSAのみを倒伏させたときには、車両用シートSAの脇に設けられたバックル3のみをフラップ4Rにて倒伏させることができる。当然、フラップ4Lのみを倒伏させつつ車両用シートSBのみを倒伏させたときには、車両用シートSBの脇に設けられたバックル3のみをフラップ4Lにて倒伏させることができる。
つまり、車両用シートSA,SBの倒伏状態に応じて、個別にバックル3を倒伏させつつフラップ4R,4Lを倒伏させることができるので、倒伏したフラップ4R,4Lにて、効果的にフロア面を形成することができる。
【0054】
<変形例>
次に、
図8を参照して、変形例に係るバックル13について説明する。
図8は、バックル13における、フラップ4に当接したときの挙動を示す模式図である。
バックル13におけるバックル本体3bと支持アーム3aとは、回動軸13aによって回動可能に接続されている。
【0055】
具体的には、支持アーム3aに対して回動可能に接続されたバックル本体3bは、回動軸13aによって、バックル13の使用位置と収納位置との回動方向に沿う方向に回動可能となっている。換言すれば、バックル本体3bは、支持アーム3aに対して、アンカー3cを基準とした支持アーム3aの回動方向と同じ方向に回動可能となっている。
【0056】
このようにバックル13が構成されていることで、フラップ4がバックル本体3bに当接したときに、バックル本体3bが支持アーム3aに対して回動するため、バックル本体3bに加わる応力を低減させることができる。
具体的には、フラップ4がバックル本体3bに当接してバックル本体3bが回動する段階において、支持アーム3aごとバックル13を回動させる荷重と、バックル本体3bを支持アーム3aに対して回動させるための荷重とに分けられることとなる。このため、バックル本体3bに加わる応力が低減し、バックル13に、フラップ4が当接することによる傷の発生等の不具合を抑制できる。
【0057】
さらに、回動軸13aと当接部3bbとの距離が、アンカー3cと当接部3bbとの距離よりも短い。このため、フラップ4がバックル本体3bの当接部3bbに当接して倒伏位置側に回動する際に、変形例に係るバックル13のバックル本体3bの収納位置側に傾く早さは、上記実施形態に係るバックル3のバックル本体3bに傾く早さよりも早い。
したがって、フラップ4からバックル本体3bに加わる荷重の向きが、アンカー3cを中心とするバックル13の回動の向きに対して早いタイミングで近い向きとなるため、バックル13を収納位置にスムースに移動させることができる。
【0058】
また、フラップ4がバックル本体3bに当接する際には、バックル本体3bに大きな衝突荷重が加わる。このため、バックル本体3bの回動が止まった後の段階と比較して、初期段階においてバックル本体3bを支持アーム3aに対して回動するようにバックル13を配置すると、バックル本体3bに加わる応力を低減するのに効果的である。
【0059】
また、支持アーム3aとバックル本体3bの間には、バックル本体3bをバックル13の使用位置側に付勢する図示せぬコイルスプリングが設けられている。このため、バックル本体3bは、フラップ4がバックル本体3bから離間する側(フラップ4の立設位置側)に移動すると、コイルスプリングの付勢によって、回動軸13aを中心としてバックル13の使用位置側に回動するように構成されている。
【0060】
上記実施形態においては、バックル3,13は、車両用シートSAの一部であるベースフレーム2に取り付けられているものとして説明したが、車両用シートSAの一部に取り付けられているものに限定されない。例えば、バックル3,13は、車両内のフロアに取り付けられていてもよい。このベースフレーム2及び車両内のフロアは、使用位置にあるバックル3,13の上下方向の中央部分よりもフロア側にあるものであり、本発明に係る乗物のフロア側に相当する。
【0061】
また、上記実施形態に係るフラップ4においては、折れ起点4cを中心に当接面4baが立設位置から倒伏位置に回動して、バックル3を使用位置から収納位置に回動させるものとして説明した。しかし、本発明はこのような構成に限定されず、フラップ4は、例えばスライド機構と回動機構を備えるものであれば、立設位置からスライド移動した後に倒伏位置に回動するように、移動可能に構成されていてもよい。