(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動部は、前記前後一方側の左右一対の車輪を個別に回転駆動する2つの電動モータと、前記2つの電動モータに電力を供給するバッテリとを有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の移動車両。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の移動車両は、走行可能なスキッドステア方式の電動車台部と、この電動車台部上に設けられた光学センサとを備え、
前記電動車台部は、車台本体と、この車台本体の前後に左右一対で設けられた複数の車輪と、左右一対の車輪を個別に回転駆動する駆動部とを備え、
前記光学センサは、平面的に視て、前後一方側の左右一対の車輪の車軸線近傍位置に配置されており、
前後他方側の左右一対の車輪は、車輪本体と、この車輪本体の外周部に設けられた複数のローラーとを有するローラー付きホイールにて構成されている。
本発明の移動車両は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0011】
(1)前記前後一方側の左右一対の車輪は、車輪本体と、車輪本体の外周部に取り付けられて空気を充填されたタイヤとを有してもよい。
この構成によれば、前後一方側の左右一対の車輪から光学センサに伝わる振動をゴムタイヤにて吸収して光学センサの揺れを抑えることができ、この結果、光学センサにて得られる画像情報や距離情報の精度を向上することができる。
【0012】
(2)前後一方側の左右一対の車輪の外面と前後他方側の左右一対の車輪の外面とが、同一面上に揃っていてもよい。
前後一方側の左右一対の車輪が四輪車用のゴムタイヤを有する場合、通常、ローラー付きホイールの横幅はゴムタイヤの横幅よりも小さいことが多いため、上記構成とすることにより、左右のローラー付きホイールの間隔を広くとることができ、この結果、走行中の車台本体の振動を抑え、光学センサの揺れを抑えることができる。
【0013】
(3)前記駆動部は、前記前後一方側の左右一対の車輪を個別に回転駆動する2つの電動モータと、前記2つの電動モータに電力を供給するバッテリとを有してもよい。
この構成によれば、前後一方側の左右一対の車輪の車軸線中央部を定置旋回中心とする場合に、定置旋回中心付近に重量物である2つの電動モータを配置することができるため、定置旋回時の車台本体の振動を抑え、光学センサの揺れを抑えることができる。
【0014】
(4)前記車台本体は、前記複数の車輪および前記駆動部を有する下フレーム部と、前記下フレーム部の上方に設けられる上フレーム部と、前記下フレーム部と前記上フレーム部との間に設けられてこれらを連結する第1振動吸収部材とを有し、
前記光学センサは、前記上フレーム部上に設けられてもよい。
すなわち、走行中の振動を起こす要因である駆動部を搭載した下フレーム部と、光学センサを搭載した上フレーム部とを個別に構成してそれらの間に隙間を設け、上下フレーム部間に第1振動吸収部材を配置した構成としてもよい。このように構成することにより、駆動部自体の振動、段差を有する路面の走行時および旋回時の下フレーム部の振動を上フレーム部に伝わりにくくすることができ、この結果、光学センサの揺れを抑えることができる。
【0015】
(5)前記上フレーム部と前記光学センサとの間に配置されてこれらを連結する第2振動吸収部材をさらに備えてもよい。
この構成によれば、さらに光学センサの揺れを抑えることができる。
【0016】
(6)前記光学センサが、第1光学センサと第2光学センサとを有してなり、
前記第2光学センサは、前記上フレーム上に設けられ、
前記上フレーム上に設けられて前記第1光学センサを昇降させる昇降機構部と、前記昇降機構部と前記第1光学センサとの間に配置されてこれらを連結する第2振動吸収部材とをさらに備えてもよい。
この構成によれば、第1光学センサを上昇させ、光学センサの揺れを抑えながら高所から周囲の情報を高精度に得ることができる。この場合、例えば、第1光学センサを移動車両の進行方向の前方を撮影する撮像部として構成し、第2光学センサを移動車両の進行方向の前方の測点までの距離を検出する距離検出部として構成することができる。
【0017】
(7)前記第1振動吸収部材が、螺旋状に巻かれたワイヤを有するヘリカル防振器であり、
前記第2振動吸収部材が、上下左右前後方向に巻かれたワイヤを有する小型ロープ防振器であってもよい。
この構成によれば、第1振動吸収部材は上下方向の振動を主に吸収し、第2振動吸収部材は3次元方向(前後左右上下方向)の振動を均一に吸収することができる。
【0018】
(8)左側の前後輪を接続する左側動力伝達機構および右側の前後輪を接続する右側動力伝達機構をさらに備えてもよい。
この構成によれば、左側動力伝達機構によって左側の前後の車輪を回転駆動し、右側動力伝達機構によって右側の前後の車輪を回転駆動する四輪駆動車両を得ることができる。この結果、例えば、路面の段差を乗り上げる場合や、でこぼこ道を旋回する際に駆動されたローラ付きホイールの乗り上げる力が増すため、車台本体の振動が抑えられ、光学センサの揺れを抑えることができる。
【0019】
(9)前後の車輪の車軸間の距離が、前記電動車台部の左右方向の車体幅よりも短く設定されてもよい。
この構成によれば、車台本体の前後方向の長さを短くできるため、旋回時(特に、定置旋回時)の車両本体にかかる遠心力等の影響が小さくなり、光学センサの揺れを抑えることができる。また、ホイールベースに対して左右の車輪の間隔を広くすることができるため、移動車両の斜面走行時の転倒が抑制される。
【0020】
(10)前記光学センサは、平面的に視て、前記前後一方側の左右一対の車輪の車軸線とこの車軸線側の前記電動車台部の前後方向の端部との間に配置されてもよい。
この構成によれば、定置旋回時の光学センサの揺れを抑えることができることに加えて、光学センサ前方の水平および垂直方向の視界を遮るもの(車両本体を含む)を最小限にすることができ、光学センサの視界を広く確保することができる。
【0021】
(11)前記駆動部は、前記前後一方側の左右一対の車輪と前記2つの電動モータとの間に設けられた2つのギアボックスをさらに備え、
前記2つの電動モータは、平面的に視て、前記2つのギアボックスよりも左右方向中央側に配置されてもよい。
この構成によれば、定置旋回中心付近に重量物である2つの電動モータを配置することができるため、定置旋回時の車台本体の振動を抑え、光学センサの揺れを抑えることができる。
【0022】
(実施形態1)
図1は本発明の移動車両の実施形態1における電動車台部の概略構成を説明する図であって、(A)は左側面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視断面図である。また、
図2は実施形態1の移動車両を示す左側面図であり、
図3は
図2の移動車両を上方から視た平面図である。また、
図4は実施形態1の移動車両における第1振動吸収部材を示す斜視図であり、
図5は実施形態1の移動車両における第2振動吸収部材を示す斜視図である。
【0023】
実施形態1の移動車両1Aは、主として、走行可能なスキッドステア方式の電動車台部10Aと、この電動車台部10A上に設けられた第1光学センサS1および第2光学センサS2と、電動車台部10A内に設けられた図示しない制御ユニットとを備える。また、電動車台部10Aには、第1および第2光学センサS1、S2の揺れを抑えるための第1振動吸収部材61および第2振動吸収部材62が設けられている。
【0024】
実施形態1において、第1光学センサS1は移動車両1Aの進行方向の前方を撮影する撮像部S1aであり、第2光学センサS2は移動車両1Aの進行方向の前方の測点までの距離を検出する距離検出部S2aである。
実施形態1では、撮像部S1aおよび距離検出部S2aを備えた自律走行型監視車両の場合を例示する。
【0025】
さらに詳しくは、電動車台部10Aの後端部上にはWi−Fiアンテナ71および警告灯72が設けられ、電動車台部10Aの左右側面および後端面にはCCDカメラ73が設けられ、光学センサ60の後方位置にはGPSアンテナ74が設けられている。
【0026】
撮像部S1aは、特に限定されるものではなく、例えば、ドーム型カメラ(パンチルトズーム(PTZ)カメラを含む)、ボックス型カメラ、ハウジングカメラ、赤外線暗視カメラ、望遠カメラ等の監視カメラを用いることができ、電動車台部10Aの前方および左右の空間領域を撮影できるよう電動車台部1A上に設置されている。なお、移動車両1Aを屋外で使用する場合は撮像部S1aに防水機能が付加される。
【0027】
さらにドーム型カメラとしては、水平および垂直方向のレンズ画角が広いタイプ(例えば、水平180°程度、垂直90°程度)、高解像度タイプ(例えば、3840×2160ピクセル)、カラー撮影可能なタイプ、人を検知した場合にのみ撮影するタイプ、人を検知し顔をクローズアップして追跡するタイプ、暗闇での撮影が可能な赤外線暗視タイプ等を使用してもよい。
【0028】
距離検出部S2aは、移動する前方領域や路面の状態を確認する機能を有し、光を出射する発光部と、光を受光する受光部と、前記前方空間の所定の複数の測点に向けて前記光が出射されるように、光の出射方向を走査させる走査制御部とを備える。
距離検出部S2aとしては、所定の距離測定領域内の2次元空間または3次元空間に、レーザーを出射し、前記距離測定領域内の複数の測点における距離を測定するLIDARを用いることができる。
【0029】
図示しない制御ユニットは、この移動車両1Aの有する走行機能や監視機能などを実行する部分であり、例えば制御部、人検知部、指示認識部、通信部、指示実行部、記憶部などから構成される。
【0030】
この移動車両1Aは、走行すべき領域の地図情報と移動経路情報とを予め記憶し、撮像部S1a、距離検出部S2aおよびGPS(Global Positioning System)から取得した情報を利用して、障害物を避けながら、所定の経路を走行するよう構成されている。
【0031】
この際、移動車両1Aは、特に、撮像部S1aや距離検出部S2a等を利用して、指示者の姿勢を認識して、その姿勢に予め対応づけられた指示に基づいて、電動車台部10Aの進行方向前方の状態を確認しながら自走する。例えば、前方に、障害物や段差等が存在することを検出した場合には、障害物に衝突することなどを防止するために、静止、回転、後退、前進等の動作を行って進路を変更し、指示に対応する機能を実行する。
【0032】
次に、主として
図1(A)および(B)を参照しながら移動車両1Aの走行に関係する構成を説明する。なお、
図1(A)において左側の前輪31および後輪32を2点差線で示している。
【0033】
<電動車台部の説明>
電動車台部10Aは、車台本体11と、車台本体11の前後に左右一対で設けられた複数の車輪と、左右一対の車輪を個別に回転駆動する駆動部とを備える。なお、実施形態1では、車輪が4つの場合を例示している。
【0034】
車台本体11は、前記複数の車輪および前記駆動部を有する下フレーム部11aと、下フレーム部11aの上方に設けられる上フレーム部11bと、下フレーム部11aと上フレーム部11bとの間に設けられてこれらを連結する前記第1振動吸収部材61とを有する。なお、第1振動吸収部材61について、詳しくは後述する。
【0035】
駆動部は、4つの車輪のうち少なくとも前後一方側の左右一対の車輪を個別に回転駆動する2つの電動モータ41R、41Lと、2つの電動モータ41R、41Lに電力を供給するバッテリ40とを備える。
【0036】
実施形態1の場合、
図1(A)および(B)に示すように、電動車台部10Aは矢印A方向に前進するため、矢印A側の左右の車輪が前輪21、31であり、残りの左右の車輪が後輪22、32であり、左右の前輪21、31が2つの電動モータ4RL、43Lにて個別に駆動制御される。
なお、
図1(A)および(B)では単に電動車台部を構成する各構成部およびそれらの配置を説明するものであるため、
図1(A)および(B)で示された電動車台部の各構成部の大きさや間隔等は
図2および
図3に示された電動車台部と必ずしも一致するものではない。
【0037】
車台本体11において、下フレーム部11aの前面13と後面14にはバンパー17f、17rが取り付けられている。
また、上フレーム部11bの右側面と左側面には帯状のカバー18が設置され、上フレーム部11bの前後方向に沿って延びている。
また、カバー18の下側において、下フレーム部11aには前輪21、31および後輪22、32をそれぞれ回転支持する車軸21a、31aおよび車軸22a、32aが設けられている。
【0038】
駆動輪である前輪21、31の車軸21a、31aは同一の第1軸心(前輪の車軸線)P
1上に配置されると共に、従動輪である後輪22、32の車軸22a、32aは同一の第2軸心(後輪の車軸線)P
2上に配置されている。
なお、各車軸21a、31a、22a、32aは、独立して回転可能となっている。
【0039】
上フレーム部11aの底面15の前輪側には、右側の前輪21を駆動するための電動モータ41Rと左側の前輪31を駆動するための電動モータ41Lとの2つのモータが設けられている。右側の電動モータ41Rのモータ軸42Rと右側の前輪21の車軸21aとの間には、動力伝達機構としてギアボックス43Rが設けられている。同様に、左側の電動モータ41Lのモータ軸42Lと左側の前輪31の車軸31aとの間には、動力伝達機構としてギアボックス43Lが設けられている。
【0040】
ここでは、2つの電動モータ41R、41Lは車台本体11の進行方向(矢印A方向)の中心線CLに対して左右対称となるように並列配置されており、ギアボックス43R、43Lもそれぞれ電動モータ41R、41Lの左右外側に配設されている。すなわち、2つの電動モータ41R、41Lは、平面的に視て、2つのギアボックス43R、43Lよりも左右方向中央側(中心線CL寄り)に配置されている。
【0041】
また、前輪21、31の車軸線(第1軸心P
1)と後輪22、32の車軸線(第2軸心P
2)との間の距離であるホイールベースWBが、電動車台部10Aの左右方向の車体幅Wよりも短く設定されている。この構成によれば、車台本体の前後方向の長さを短くできるため、旋回時(特に、定置旋回時)の車両本体11にかかる遠心力等の影響が小さくなり、第1および第2光学センサS1、S2の揺れを抑えることができる。
【0042】
ギアボックス43R、43Lは、複数の歯車や軸などから構成され、電動モータからの動力をトルクや回転数、回転方向を変えて出力軸である車軸に伝達する組立部品であり、動力の伝達と遮断を切替えるクラッチを含んでいてもよい。なお、一対の後輪22、32はそれぞれ軸受44R、44Lによって軸支されており、軸受44R、44Lはそれぞれ下フレーム部11aの底面15の右側面と左側面に近接させて配設されている。
【0043】
以上の構成により、進行方向右側の前輪21と左側の前輪31とは、独立して駆動することが可能となる。すなわち、右側の電動モータ41Rの動力はモータ軸42Rを介してギアボックス43Rに伝わり、ギアボックス43Rによって回転数、トルクあるいは回転方向が変更されて車軸21aに伝達される。そして、車軸21aの回転によって前輪21が回転する。左側の電動モータ41Lからの前輪31への動力の伝達については上記した右側の動作と同様である。
【0044】
右と左の電動モータ41R、41Lの回転数が同じである場合、各ギアボックス43R、43Lのギア比(減速比)を同じにすれば、移動車両1Aは前進あるいは後進を行うことになる。移動車両1Aの速度を変更する場合は、各ギアボックス43R、43Lのギア比を同じ値に維持しつつ変化させればよい。
【0045】
また、進行方向を変える場合は、各ギアボックス43R、43Lのギア比を変更して、右側の前輪21の回転数と左側の前輪31の回転数とに、回転差を持たせればよい。さらに、各ギアボックス43R、43Lからの出力の回転方向を変えることにより、右と左の車輪の回転方向を反対にかつ回転速度を同じにすることで、一対の前輪21、31の車軸線P1の中間点MPを定置旋回中心点とした定置旋回が可能になる。
【0046】
移動車両1Aを定置旋回させる場合は、前後の車輪の角度を可変にするステアリング機構が設けられていないため、ホイールベースWBが大きいほど、車輪にかかる抵抗が大きくなり、旋回のために大きな駆動トルクが必要となる。しかし、各ギアボックス43R、43L内のギア比は可変にしているので、旋回時の前輪21、31の回転数を下げるだけで車輪に大きなトルクを与えることができる。
【0047】
例えば、ギアボックス43R内のギア比として、モータ軸42R側のギアの歯数を10、中間ギアの歯数を20、車軸21b側のギアの歯数を40とした場合、車軸21bの回転数はモータ軸42Rの1/4の回転数となるが、4倍のトルクが得られる。そして、更に回転数が小さくなるようなギア比を選択することによって、より大きなトルクを得ることができるため、不整地や砂地などの車輪に係る抵抗が大きな路面であっても旋回が可能となる。
【0048】
ここで、本発明に係る移動車両の車輪について説明すると、前輪21、31と後輪22、32とは別の車輪が使用される。
図2に示すように、左側の前輪31は、車輪本体31Waと、車輪本体31Waの外周部に取り付けられて空気を充填されたタイヤ31Wbとを有してなる。右側の前輪21も同様である。
また、左側の後輪32は、車輪本体32Waと、この車輪本体32Waの外周部に設けられた複数のローラー32Wbとを有するローラー付きホイールにて構成されている。右側の後輪22も同様である。なお、ここで言う「ローラー付きホイール」とは、オムニホイール(登録商標)およびメカナムホイールが含まれる。
【0049】
なお、本発明は、図面で示された実施形態に限定されず、左右の前輪21、31がローラー付きホイールで構成され、左右の後輪22、32が空気を充填されたタイヤで構成された実施形態(図示省略)を包含するものであるが、左右の前輪21、31が空気を充填されたタイヤで構成され、左右の後輪22、32がローラー付きホイールで構成された本実施形態は、次の理由により好ましい。
【0050】
図6は実施形態1の移動車両の走行状態であって、(A)は路面上の段差を乗り越える様子、(B)は路面上の凸部を乗り越える様子、(C)は凹凸路面を走行する様子を説明する図である。
図6(A)に示した段差Rdとしては、例えば、工場の敷地内における車道とそれより少し高くなった歩道との間の段差や高低差が小さい緩やかな階段などが想定される。
図6(B)に示した凸部Rtとしては、例えば、工場の敷地内における駐車場の車止めや放置されたレンガ、コンクリートブロックなどが想定される。
図6(C)に示した凹凸路面Rcとしては、例えば、工場の敷地内における舗装されていない砂利、土砂等の部分などが想定される。
【0051】
実施形態1の移動車両1Aは、駆動輪である右と左の前輪21、31が空気を充填されたタイヤを備えるものであることにより、
図6(A)〜(C)に示すような路面上の段差Rd、凸部Rtあるいは凹凸路面Rcを走行するとき、前輪21、31のタイヤによって第1および第2光学センサS1、S2の振動を吸収することができる。
【0052】
特に、
図6(A)および(B)に示すような段差Rdや凸部Rtを移動車両1Aが乗り越える際、前輪が段差Rdや凸部Rtと衝突すると大きな衝撃力を電動車台部10Aが受けることになるが、前輪21、31が空気を充填されたタイヤで構成されることによって大きな衝撃力でも吸収することができるため、電動車台部10Aへの衝撃力を緩和することができる。
さらに、移動車両1Aが
図6(C)に示すような凹凸路面Rcを走行しているときに、例えば、大きな窪地に前輪21、31が落ち込んだとしても、前輪21、31(空気充填タイヤ)によって上下方向の衝撃力を吸収することができる。
なお、衝撃力を緩和するために、空気を充填されたタイヤは適切な空気圧に維持されることが望ましいことは言うまでもない。
【0053】
一方、
図6(A)〜(C)のような段差Rd、凸部Rt、凹凸路面Rcに対して、例えば、移動車両がゴムソリッドタイヤや無限軌道により走行するものである場合、ゴムソリッドタイヤや無限軌道では段差Rdや凸部Rtと衝突したときの衝撃力および凹凸路面Rcの大きな窪地に落ち込んだときの衝撃力をほとんど吸収することができず、衝撃力が緩和されずに電動車台部へダイレクトに伝わってしまう。
このようなことから、実施形態1によれば、前輪21、31に近い上方位置に配置された第1および第2光学センサS1、S2の振動が緩和され、それによって画像ブレや軸ずれ等が低減し、画像情報および距離情報の精度が向上する。なお、第1および第2光学センサS1、S2の取り付け位置について詳しくは後述する。
【0054】
また、左右の後輪22、32をローラー付きホイールとすることにより、電動車台部10Aの旋回時に、左右の後輪22、32は左右方向へスムーズに移動することができる。そのため、実施形態1の移動車両1Aは、左右の前輪21、31(空気を充填されたタイヤ)を相互に逆方向に同じ回転数で回転させると、前輪21、31の第1車軸線P
1の中間点MPを中心にして低トルクでもスムーズに定置旋回することができる。
なお、左右の前輪をローラー付きホイールで構成すると、例えば、左右の前輪の片側のみに段差がある場合、段差を乗り上げる側のローラー付きホイールのローラーによってホイールが滑り、その結果、移動車両の走行する軌道が想定よりもずれ易くなる。したがって、衝撃緩和に加えて、軌道安定性の面でも、空気を充填されたタイヤ(特に、トレッドパターンを有するゴムタイヤ)を前輪側に配置することが好ましい。
【0055】
また、
図1(B)に示すように、左右の前輪21、31の外面と左右の後輪122、132の外面が同一面上に揃っている。
前輪21、31が四輪車用のゴムタイヤ(空気を充填されたタイヤ)を有する場合、通常、ローラー付きホイールの横幅はゴムタイヤの横幅よりも小さいことが多いため、上記構成とすることにより、左右のローラー付きホイールの間隔を広くとることができる。この結果、走行中の車台本体11の振動を抑え、第1および第2光学センサS1、S2の揺れを抑えることができる。
【0056】
また、この移動車両1Aは、モータ軸42R、42Lと車軸21a、31aとの間にギアボックス43R、43Lを設けているため、前輪21、31からの振動が直接モータ軸に伝わることがない。さらに、ギアボックス43R、43Lに動力の伝達と切り離し(遮断)を行うクラッチを設けておき、電動モータ41R、41Lの非通電時には、電動モータ41R、41L側と駆動軸となる車軸21a、31aとの間の動力伝達を遮断しておくことが望ましい。これにより、仮に停止時に車台本体11に力が加わり車輪が回転しても、電動モータ41R、41Lには回転が伝わらないため、電動モータ41R、41Lに逆起電力が発生することはなく、電動モータ41R、41Lの回路を損傷するおそれもない。
【0057】
上記したように、車台本体11の底面15の前輪21、31側には2つの電動モータ41R、41Lを進行方向右側と左側に配置し、さらに各電動モータ41R、41Lのそれぞれの右側と左側にギアボックス43R、43Lを配置しているが、底面15の後輪22、32側には軸受44R、44Lを配置しているだけであるため、車台本体11の底面15には、その中央位置から例えば車体の後端までに亘って、広い収容スペース16を確保できる。
【0058】
各電動モータ41R、41Lは、例えばリチウムイオン電池などのバッテリ(充電池)40を動力源とし、バッテリ40を収容スペース16に設置する。具体的には、バッテリ40は、例えば直方体の外形をなし、
図1(B)に示すように、底面15の略中央位置に載置することが可能である。また、車台本体11の下フレーム部11aの後面14は、例えば上面あるいは底面15に対して開閉可能に構成し、収容スペース16へのバッテリ40の出し入れを容易にすることが望ましい。これにより、長時間走行を実現させるための大容量のバッテリ40を車台本体11の収容スペース16に搭載可能になり、また、バッテリ40の交換、充電、点検などの作業は、後面14から容易に実施可能になる。さらに、バッテリ40を底面15に配置することができるため、車台本体11の重心が低く、安定した走行が可能な電動車両を得ることができる。
【0059】
<第1振動吸収部材について>
図4は実施形態1の移動車両における第1振動吸収部材を示す斜視図である。
実施形態1の移動車両1Aにおいて、第1振動吸収部材61としては、
図4に示すヘリカル防振器61Aが用いられる。なお、ヘリカル防振器は、
図2で示すタイプを含めて複数種類のものが市販されており、実施形態1の移動車両1Aにおいてはそれら市販品の中から選択的に使用可能である。
【0060】
実施形態1では、第1振動吸収部材61として、
図2に示すタイプの市販のヘリカル防振器61Aが用いられる。
このヘリカル防振器61Aは、1本のワイヤ61A
1と、このワイヤ61A
1を挿通させる複数の挿通孔61A
221を有する一対の支持プレート61A
2とを有してなる。
詳しく説明すると、支持プレート61A
2は、両端部に取付用孔部61A
211を有する長方形の基板部61A
21と、基板部61A
21の一対の長辺に沿って垂直状に設けられた折曲片部61A
22とを有し、折曲片部61A
22に前記複数の挿通孔61A
221が一列に並んで形成されている。
【0061】
このヘリカル防振器61Aは、螺旋状に巻かれるようにワイヤ61A
1を一対の支持プレート61A
2の複数の挿通孔61A
221に挿通し、ワイヤ61A
1の両端部を挿通孔61A
221から抜け止めすることによって構成されている。なお、ワイヤ61A
1の螺旋の方向は、ワイヤ61A
1の一端側と他端側では逆向きとなっている。
【0062】
実施形態1の移動車両1Aにおいて、第1振動吸収部材61としてのヘリカル防振器61Aは、矩形の下フレーム部11aの上面の四隅と矩形の上フレーム部11bの下面の四隅とを連結するよう4個設けられている。このとき、各ヘリカル防振器61Aにおいて、下方の支持プレート61A
2の一対の取付用孔部61A
211と下フレーム部11Aの取付用孔部(図示省略)とにボルトを通しナットにて締め付けて固定する。なお、上方の支持プレート61A
2と上フレーム部11bとの連結も同様である。
【0063】
第1振動吸収部材61は、上下方向の振動を主に吸収することを目的として下フレーム部11aと上フレーム部11bとの間に設けられており、この目的を達成するために効果的なものとしてヘリカル防振器61Aが用いられる。すなわち、下フレーム部11aの振動を、第1および第2光学センサS1、S2が設けられた上フレーム部11bへ伝えにくくするためにヘリカル防振器61Aが用いられる。
【0064】
<第2振動吸収部材について>
図5は実施形態1の移動車両における第2振動吸収部材を示す斜視図である。
実施形態1の移動車両1Aにおいて、第2振動吸収部材62としては、
図5に示す小型ロープ防振器62Aが用いられる。なお、小型ロープ防振器は、
図5で示すタイプを含めて複数種類のものが市販されており、実施形態1の移動車両1Aにおいてはそれら市販品の中から選択的に使用可能である。
【0065】
実施形態1では、第2振動吸収部材62として、
図5に示すタイプの市販の小型ロープ防振器62Aが用いられる。
この小型ロープ防振器62Aは、1本のワイヤ62A
1と、このワイヤ62A
1を挿通させる複数の挿通孔62A
221を有する一対の支持プレート62A
2とを有してなる。
詳しく説明すると、支持プレート62A
2は、中央部に取付用孔部62A
211を有する矩形の基板部62A
21と、基板部62A
21の一対の対向辺に沿って筒形に設けられた膨出部62A
22とを有し、一対の膨出部62A
22の内部空洞が前記挿通孔62A
221となっている。
【0066】
この小型ロープ防振器62Aは、相互に対向する一対の支持プレート62A
2の各挿通孔62A
221にワイヤ62A
1を挿通し、ワイヤ62A
1の両端部を同じ挿通孔62A
221内で抜け出ないよう固定することによって構成されている。この際、両方の支持プレート62A
2の膨出部62A
22が対向し、かつ一方の支持プレート62A
2の挿通孔62A
221の長手方向と他方の支持プレート62A
2の挿通孔62A
221の長手方向とが直交した状態に保持し、この状態でワイヤ62A
1にて一対の支持プレート62A
2を連結している。
【0067】
実施形態1の移動車両1Aにおいて、第2振動吸収部材62としての小型ロープ防振器62Aは、上フレーム部11bの上面の前端部と、第1光学センサS1を上フレーム部11bに取り付けるための矩形取付プレート75の下面とを連結するよう4個設けられている。このとき、各小型ロープ防振器62Aにおいて、下方の支持プレート62A
2の取付用孔部62A
211と上フレーム部11bの取付用孔部(図示省略)とにボルトを通しナットにて締め付けて固定する。なお、上方の支持プレート62A
2と取付プレート75との連結も同様である。
【0068】
第2振動吸収部材62は、前後左右上下方向にワイヤ62A
1が巻かれることにより3次元方向(全方向)の振動を均一に吸収することを目的として上フレーム部11bと第1光学センサS1との間に設けられており、この目的を達成するために効果的なものとして小型ロープ防振器62Aが用いられる。すなわち、上フレーム部11bの振動を第1光学センサS1へ伝えにくくするために小型ロープ防振器62Aが用いられる。
【0069】
<第1および第2光学センサの位置について>
図1(A)、
図2および
図3に示すように、車台本体11の上フレーム部11bにおける前端部には、第2光学センサS2としての距離検出部S2aが配置されている。
【0070】
また、上フレーム部11bには、第2光学センサS2の上方を覆う庇部11b
1が設けられており、この庇部11b
1上に4つの第2振動吸収部材62および取付プレート75を介して第1光学センサS1としての撮像部S1aが配置されている。
【0071】
さらに詳しく説明すると、第1および第2光学センサS1、S2は、平面的に視て、中心線CL上における前輪21、31の車軸線(第1軸心P
1)の近傍位置、具体的には、第1軸心P
1と上フレーム部11bの前端部との間に配置されている。この構成によれば、定置旋回時の第1および第2光学センサS1、S2の揺れを抑えることができることに加えて、第1および第2光学センサS1、S2の前方の水平および垂直方向の視界を遮るものを最小限にすることができ、第1および第2光学センサS1、S2の視界を広く確保することができる。
【0072】
<移動車両の走行時の揺れについて>
第1振動吸収部材61を下フレーム部11aと上フレーム部11bとの間に設けたことにより、移動車両1Aの凹凸路面の走行時または旋回時(特に、定置旋回時)に生じる下フレーム部11aの振動が上フレーム部11bを介して第2光学センサS2に伝わりにくくなる。これにより、第2光学センサS2としての距離検出部S2aによる測点までの距離の測定を高精度に行うことができる。
【0073】
また、第2振動吸収部材62を上フレーム部11bと第1光学センサS1との間に設けたことにより、下フレーム部11aから減衰して伝わる上フレーム部11bの振動が第1光学センサS2に伝わりにくくなる。これにより、第1光学センサS1としての撮像部S1aによって撮影された画像のブレが抑制される。
【0074】
さらに、定置旋回中心点となる前輪21、31の第1軸心P
1の中間点MP付近に第1光学センサS1を配置したことにより、定置旋回時の第1光学センサS1の回転半径が小さくなって遠心力の影響を受けにくくなり、これによって画像ブレが相乗的に抑制される。
【0075】
(実施形態2)
図6は本発明の移動車両の実施形態2における電動車台部の概略構成を説明する図であって、(A)は左側面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視断面図である。なお、
図6(A)および(B)において、
図1〜
図5中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
以下、実施形態2における実施形態1とは異なる点を主に説明する。
【0076】
実施形態2の移動車両1Bは、実施形態1の移動車両1Aにおける電動車台部10Aに右側の前後輪21、22を接続する右側動力伝達機構45Rと左側の前後輪31、32を接続する左側動力伝達機構45Lとが設けられてなる電動車台部10Bを備える。
すなわち、実施形態2の移動車両1Bは、右および左のそれぞれ一対の前輪21、31と後輪22、32は、動力伝達部材であるベルト23、33によって連動するように構成されており、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0077】
右側動力伝達機構45Rは具体的に次のように構成されている。
右側の前輪21の車軸21aにはプーリ21bが設けられ、後輪22の車軸22aにはプーリ22bが設けられる。また、前輪21のプーリ21bと後輪22のプーリ22bとの間には、例えばプーリ21b、22bの外周面に設けられた複数の溝と歯合する突起を内面側に設けたベルト23が巻架されている。
左側動力伝達機構45LもR同様に、左側の前輪31の車軸31aにはプーリ31bが設けられると共に、後輪32の車軸32aにはプーリ32bが設けられており、前輪31のプーリ31bと後輪32のプーリ32bとの間には、ベルト23と同様の構造を持つベルト33が巻架されている。
【0078】
したがって、右と左の前輪と後輪(21と22、31と32)は、ベルト(23、33)によって連結駆動されるので、一方の車輪を駆動すればよい。実施形態2では、前輪21、31を駆動する場合を例示している。一方の車輪を駆動輪とした場合に、他方の車輪は、動力伝達部材であるベルトによってスリップすることなく駆動される従動輪として機能する。
前輪と後輪とを連結駆動する動力伝達部材としては、プーリとこのプーリの外周面の複数の溝に歯合する突起を設けたベルトを用いるほか、例えば、スプロケットとこのスプロケットに歯合するチェーンを用いてもよい。さらに、スリップが許容できる場合は、摩擦の大きなプーリとベルトを動力伝達部材として用いてもよい。ただし、駆動輪と従動輪の回転数が同じとなるように動力伝達部材を構成する。
図6(A)と(B)では、前輪(21、31)が駆動輪に相当し、後輪(22、32)が従動輪に相当する。
【0079】
以上の構成により、進行方向右側の前後輪21、22と、左側の前後輪31、32とは、独立して駆動することが可能となる。すなわち、右側の電動モータ41Rの動力はモータ軸42Rを介してギアボックス43Rに伝わり、ギアボックス43Rによって回転数、トルクあるいは回転方向が変更されて車軸21aに伝達される。そして、車軸21aの回転によって前輪21が回転するとともに、車軸21aの回転は、プーリ21b、ベルト23、および、プーリ22bを介して後軸22bに伝わり、後輪22を回転させることになる。左側の電動モータ41Lからの前輪31および後輪32への動力の伝達については上記した右側の動作と同様である。
【0080】
右と左の電動モータ41R、41Lの回転数が同じである場合、各ギアボックス43R、43Lのギア比(減速比)を同じにすれば、移動車両1は前進あるいは後進を行うことになる。移動車両1の速度を変更する場合は、各ギアボックス43R、43Lのギア比を同じ値に維持しつつ変化させればよい。
【0081】
また、進行方向を変える場合は、各ギアボックス43R、43Lのギア比を変更して、右側の前輪21および後輪22の回転数と左側の前輪31および後輪32の回転数とに、回転差を持たせればよい。さらに、各ギアボックス43R、43Lからの出力の回転方向を変えることにより、右と左の車輪の回転方向を反対にかつ回転速度を同じにすることで、一対の前輪21、31および一対の後輪22、32の4つの接地中心点G
21、G
31、G
22、G
32で囲まれた矩形エリアの中心点CPを中心とした定置旋回が可能になる。なお、実施形態2の場合、車台本体11の中央部が前記中心点CPとほぼ一致するように設定される。
【0082】
このように、右と左それぞれの前輪と後輪を動力伝達部材で連結し、前輪側に配置した2つの電動モータで駆動可能するようにして4輪を駆動しているので、後輪専用の電動モータ、さらに、この電動モータと後輪との間に必要な後輪専用のギアボックスを設ける必要がなく、後輪専用の電動モータやギアボックスのための設置スペースを削減することができる。
【0083】
実施形態2の移動車両1Bによれば、左側動力伝達機構45Lによって左側の前後の車輪31、32を回転駆動し、右側動力伝達機構45Rによって右側の前後の車輪21、22を回転駆動する四輪駆動車両を得ることができる。この結果、例えば、路面の段差を乗り上げる場合や、でこぼこ道を旋回する際に駆動されたローラ付きホイール(後輪22、32)の乗り上げる力が増すため、車台本体11の振動が抑えられ、第1および第2光学センサS1、S2の揺れを抑えることができる。
【0084】
(実施形態3)
図8は実施形態3の移動車両を示す左側面図であり、
図9は
図8の移動車両における撮像部上昇状態を示す左側面図である。なお、
図8と9において、
図2中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態3の移動車両1Cは、撮像部S1aを昇降させる昇降機構部50を備えること以外は、概ね実施形態1の移動車両1Aと同様である。
以下、実施形態3における実施形態1とは異なる部分を主に説明する。
【0085】
図8と9に示すように、実施形態3において、昇降機構部50としては、上下および前後方向に揺動するブーム52を有するリンク機構、具体的には、平行リンク機構が用いられている。
すなわち、この昇降機構部50は、車台本体11上に固定される前後方向に延びる台枠51と、台枠51の後端部に左右軸心廻りに揺動可能に設けられた前記ブーム52と、ブーム52の先端に設けられた平衡部53と、台枠51内に設けられてブーム52を上下に揺動させる図示しない伸縮シリンダとを備える。そして、平衡部53の上に、第2振動吸収部材62としての小型ロープ防振器62Aおよび取付プレート75を介して第1光学センサS1としての撮像部S1aが設けられている。なお、GPSアンテナ74も平衡部53の上に設けられている。
【0086】
台枠51は、前端部上に下降したブーム52を支持する支持部51aを有すると共に、後端部にブーム52の基端部を枢支する枢着部51bを有している。
ブーム52は、主枠52aと、主枠52aに沿って設けられた平衡部支持ロッド52bとを有する。
【0087】
主枠52aの基端部は、台枠51の枢着部51bに回転可能に枢着された第1基端軸f
11に固定されると共に、主枠52aの先端部は平衡部53に第1先端軸f
12を介して枢着されている。
平衡部支持ロッド52bの基端部は、台枠51の枢着部51bに枢着された第2基端軸f
21に固定されると共に、平衡部支持ロッド52bの先端部は平衡部53に第2先端軸f
22を介して枢着されている。
【0088】
図示しない伸縮シリンダとしては、電動式、油圧式あるいは空気圧式シリンダを用いることができる。
伸縮シリンダの基端部は台枠51または車台本体11に上下揺動可能に枢着され、伸縮シリンダの先端部は図示しないアームを介して第1基端軸f
11に連結されている。このとき、伸縮シリンダの先端部はアームの一端に枢着され、アームの他端は第1基端軸f
11に固定されている。
【0089】
平衡部53は、ブーム52が上下方向に揺動しても撮像部S1aおよびGPSアンテナ74の正常な姿勢を安定的に保つ平衡装置である。
【0090】
次に、昇降機後部50の動作について説明する。
図8では昇降機構部50が下降した状態が示されており、このとき、伸縮シリンダは伸長している。昇降機構部50を上昇させる場合、伸縮シリンダを短縮させる。これにより、伸縮シリンダの先端部と枢着したアームが前方へ引き寄せられると共に、アームと第1基端軸f
11と主枠52aとが上方(矢印E方向)へ一体的に揺動する。また、
図9に示すように、主枠52aが上方へ揺動することにより、平衡部53を介して主枠52aの先端部と連結した平衡部支持ロッド52bが上方(矢印E方向)へ持ち上げられる。
【0091】
このとき、主枠52aに対して平衡部支持ロッド52bが平行のまま位置ずれすることによって平衡部53の第2先端軸f
22が平衡部支持ロッド52bの方へ引き寄せられるため、平衡部53およびその上に設置された撮像部S1aおよびGPSアンテナ74の正常姿勢が下降位置から上昇位置まで保たれる。
また、伸縮シリンダを伸長していくと、ブーム52は前記と逆に動作して
図9の上昇状態から
図8の下降状態となる。
このように、昇降機構部50によって撮像部S1aは第1車軸線P
1を跨いで前後に移動する。
【0092】
実施形態3の移動車両1Cによれば、昇降機構部50のブーム52が上下方向に揺動することにより、撮像部S1aは正常で安定した姿勢を保ちながら昇降することができるため、上昇した撮像部S1aによって高所から前方の広い範囲を撮影することができる。この際、上昇した撮像部S1aの平面的な位置は前輪21、31の中間点MP付近(
図1参照)にあるため、移動車両1Cが中間点MPを中心に旋回すると、撮像部S1aは小さい回転半径で回転する。これにより、旋回時の撮像部S1aの揺れは軽減され、第1および第2振動吸収部材61、62によってさらに揺れが軽減されるため、旋回時であってもブレの少ない画像情報を得ることができる。
【0093】
(実施形態3の変形例1)
図10は実施形態3の移動車両の変形例1を示す左側面図であり、
図11は
図10の移動車両における撮像部上昇状態を示す左側面図である。なお、
図10と11において、
図2中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
図8と9で説明した実施形態3の移動車両1Cは、
図10および11に示すような昇降機構部を用いてもよい。
【0094】
図10と11に示す変形例1の移動車両1Dにおける昇降機構部150としては、シングルアーム形のパンタグラフ機構が用いられている。
すなわち、この昇降機構部150は、車台本体11上に固定される前後方向に延びる台枠151と、台枠151の前端部151bに左右軸心廻りに揺動可能に設けられた第1ブーム152Aと、第1ブーム152Aの先端部に左右軸心廻りに揺動可能に設けられた第2ブーム152Bと、第1ブーム152Aと第2ブーム152Bとを接続するヒンジ部152Cと、第2ブーム152Bの先端に設けられた平衡部153と、台枠151内に設けられて第1ブーム152Aを上下に揺動させる図示しない伸縮シリンダとを備える。そして、平衡部153の上に、第2振動吸収部材62としての小型ロープ防振器62Aおよび取付プレート75を介して第1光学センサS1としての撮像部S1aが設けられている。なお、GPSアンテナ74も平衡部153の上に設けられている。
【0095】
台枠151は、後端部に第1ブーム152Aの基端部を枢支する枢着部151bを有している。
第1ブーム152Aは、下第1枠152Aaと、下第1枠152Aaに沿って設けられた下第2枠152Abと、釣合ロッド152Acとを有する。
第2ブーム152Bは、上枠152Baと、上枠152Baに沿って設けられた平衡部支持ロッド152Bbとを有する。
【0096】
下第1枠152Aaの基端部は、枢着部151bに回転可能に枢着された図示しない下側の第1基端軸に固定されると共に、下第1枠152Aaの先端部はヒンジ部152Cに下側の第1先端軸f
112を介して枢着されている。
下第2枠152Abの基端部は、枢着部151bに回転可能に枢着された図示しない下側の第2基端軸に固定されると共に、下第2枠の先端部はヒンジ部152Cに下側の第2先端軸f
114を介して枢着されている。
釣合ロッド152Acの基端部は、枢着部151bに回転可能に枢着された図示しない下側の第3基端軸に固定されると共に、第2釣合ロッド152Acの先端部は上枠152Baの図示しない折れ曲がった基端部に図示しない下側の第3先端軸を介して枢着されている。
【0097】
上枠152Baの基端部は、枢着部151bに枢着された上側の第1基端軸f
117に固定されると共に、上枠152Baの先端部は平衡部153に上側の第1先端軸f
118を介して枢着されている。
平衡部支持ロッド152Bbの基端部は、枢着部151bに枢着された上側の第2基端軸f
119に固定されると共に、平衡部支持ロッド152Bbの先端部は平衡部53に上側の第2先端軸f
120を介して枢着されている。
【0098】
図示しない伸縮シリンダとしては、実施形態1と同様に、電動式、油圧式あるいは空気圧式シリンダを用いることができる。
伸縮シリンダの基端部は台枠151または車台本体11に上下揺動可能に枢着され、伸縮シリンダの先端部は図示しないアームを介して前記下側の第1基端軸に連結されている。このとき、伸縮シリンダの先端部はアームの一端に枢着され、アームの他端は前記下側の第1基端軸に固定されている。
【0099】
平衡部153は、実施形態1と同様に、第1および第2ブーム152A、152Bが上下方向に揺動しても撮像部S1aおよびGPSアンテナ74の正常な姿勢を安定的に保つ平衡装置である。
【0100】
次に、昇降機後部50の動作について説明する。
図10では昇降機構部150が下降した状態が示されており、このとき、伸縮シリンダは伸長している。昇降機構部150を上昇させる場合、伸縮シリンダを短縮させる。これにより、
図11に示すように、伸縮シリンダの先端部と枢着したアームが前方へ引き寄せられると共に、アーム、下側の第1基端軸、下第1枠152Aaとが上方(矢印F方向)へ一体的に揺動する。また、下第1枠152Aaが上方へ揺動することにより、ヒンジ部152Cを介して下第1枠152Aaの先端部と連結した下第2枠152Abが上方(矢印F方向)へ持ち上げられる。
【0101】
このとき、下第1枠152Aaに対して下第2枠152Abが平行のまま位置ずれすることによってヒンジ部152Cの下側の第2先端軸f
114が下第2枠152Abの方へ引き寄せられるため、上枠152Baの前記折れ曲がった基端部が釣合ロッド152Acの方へ引き寄せられ、これによって上枠152Baが矢印G方向に揺動して上昇する。それと同時に、平衡部153を介して上枠152Baの先端部と連結した平衡部支持ロッド152Bbが持ち上げられる。
【0102】
このとき、上枠152Baに対して平衡部支持ロッド152Bbが平行のまま位置ずれすることによって平衡部153の上側の第2先端軸f
120が平衡部支持ロッド152Bbの方へ引き寄せられるため、平衡部153およびその上に設置された撮像部S1aおよびGPSアンテナ74の正常姿勢が下降位置から上昇位置まで保たれる。
なお、伸縮シリンダを伸長していくと、第1および第2ブーム152A、152Bは前記と逆に動作して
図11の上昇状態から
図10の下降状態となる。
【0103】
実施形態3の変形例1の移動車両1Dでも、昇降機構部150の第1および第2ブーム152A、152Bが上下方向に揺動することにより、撮像部S1aは正常で安定した姿勢を保ちながら昇降することができる。この場合、撮像部S1aによって
図8で説明した昇降機構部50の場合よりも高所からの撮影が可能となる。この際も、上昇した撮像部S1aの平面的な位置は前輪21、31の中間点MP付近(
図1参照)にあるため、移動車両1Dが中間点MPを中心に旋回すると、撮像部S1aは小さい回転半径で回転する。これにより、旋回時の撮像部S1aの揺れは軽減され、第1および第2振動吸収部材61、62によってさらに揺れが軽減されるため、旋回時であってもブレの少ない画像情報を得ることができる。
【0104】
(実施形態3の変形例2)
図12は実施形態3の移動車両の変形例2を示す左側面図である。なお、なお、
図12において、
図2中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
図8と9で説明した実施形態3の移動車両1Cは、
図12に示すような昇降機構部を用いてもよい。
【0105】
図10に示す変形例2の移動車両1Eにおける昇降機構部250としては、枠交差形のパンタグラフ機構が用いられている。
すなわち、この昇降機構部250は、車台本体11上に固定される矩形の台枠251と、台枠251の前端部上に枢着された左右方向の第1軸s
1に固定された外側下枠252と、台枠251の後端部上に枢着された左右方向の第2軸s
2に固定された内側下枠253と、第1ヒンジ部256を介して外側下枠252の先端と連結された外側上枠254と、第2ヒンジ部257を介して内側下枠253の先端と連結された内側上枠255と、外側上枠254の先端および内側上枠255の先端に枢着された昇降台258と、昇降台258上に設けられた固定台259と、台枠251内に設けられて外側下枠252または内側下枠253を上下に揺動させる図示しない伸縮シリンダとを備える。そして、固定台259の上に、第2振動吸収部材62としての小型ロープ防振器62Aおよび取付プレート75を介して第1光学センサS1としての撮像部S1aが設けられている。なお、GPSアンテナ74も固定台259の上に設けられている。
【0106】
このように構成された昇降機後部250によれば、伸縮シリンダを短縮させると枠交差形のパンタグラフ機構が垂直方向(矢印H方向)へ伸長して撮像部S1aおよびGPSアンテナ74が上昇し、伸縮シリンダを伸長させると枠交差形のパンタグラフ機構が短縮して撮像部S1aおよびGPSアンテナ74が下降する。この場合、上昇した撮像部S1aの平面的な位置は前輪21、31の中間点MP付近(
図1参照)にあるため、移動車両1Dが中間点MPを中心に旋回すると、撮像部S1aは小さい回転半径で回転する。これにより、旋回時の撮像部S1aの揺れは軽減され、第1および第2振動吸収部材61、62によってさらに揺れが軽減されるため、旋回時であってもブレの少ない画像情報を得ることができる。
【0107】
(その他の実施形態)
1.実施形態1および2では、第1振動吸収部材としてヘリカル防振器(
図4)を採用し、かつ第2振動球種部材として小型ロープ防振器(
図5)を採用した場合を例示したが、本発明はこれらのワイヤーロープ防振器に限定されるものではなく、移動車両の使用環境に応じた振動吸収部材を適宜選択して用いてもよい。例えば、第1振動吸収部材としてオイルダンパー、エアーダンパー等を採用し、第2振動吸収部材としてゴム製、熱可塑性エラストマー製、バネ製等のインシュレータを採用する場合も想定される。
【0108】
2.実施形態1および2では、上フレーム部と第1光学センサとの間に第2振動吸収部材を設けた場合を例示したが、移動車両の使用環境によっては第1振動吸収部材のみで十分である場合も想定される。そのような場合には、第2振動吸収部材を省略し、第1光学センサを直接上フレーム部に取り付けてもよい。
【0109】
3.
図8と9で説明した実施形態3および
図10〜12で説明した変形例1と2の場合、電動車台部10Aの左右の後輪22、32には駆動力が伝達されない構成となっているが、
図7(A)と(B)で説明したように、右側動力伝達機構45Rによって右側の前輪21の回転力を後輪22に伝達し、かつ左側動力伝達機構45Lによって左側の前輪31の回転力を後輪32に伝達するように構成してもよい。
【0110】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。