特許第6909068号(P6909068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909068
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】ビード部材及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20210715BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   B60C15/06 B
   B60C15/04 G
   B60C15/04 C
   B60C15/06 M
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-119979(P2017-119979)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-1419(P2019-1419A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 圭一
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−063743(JP,A)
【文献】 特開2015−101228(JP,A)
【文献】 特開平11−198617(JP,A)
【文献】 特開2010−162826(JP,A)
【文献】 特開2015−123905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C15/06
15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のビードコアと、
前記ビードコアに対して前記ビードコアの径方向の外側に位置するビードフィラと、を備え、
前記ビードフィラは、樹脂製の樹脂フィラ部と、前記樹脂フィラ部に対して接合されているゴム製のゴムフィラ部と、を備え
前記ビードコアはコア被覆樹脂で被覆されており、
前記樹脂フィラ部は、前記コア被覆樹脂と一体に形成されている、ビード部材。
【請求項2】
前記ビードコアは、1本以上のビードワイヤがワイヤ被覆樹脂で被覆されているストリップ部材が複数回巻回されて積層された状態の環状体を備え、
前記環状体の周囲に前記コア被覆樹脂が被覆されている、請求項に記載のビード部材。
【請求項3】
前記環状体は、前記ストリップ部材が、前記ビードコアの径方向、及び、前記ビードコアの軸方向、の少なくとも一方に積層された状態とされている、請求項に記載のビード部材。
【請求項4】
前記ビードコアの軸方向において前記樹脂フィラ部と前記ゴムフィラ部とが重なる、前記ビードコアの径方向における重複領域がある、請求項1乃至のいずれか1つに記載のビード部材。
【請求項5】
前記重複領域は、前記ビードフィラの先端まで延在する、請求項に記載のビード部材。
【請求項6】
前記重複領域において、前記樹脂フィラ部は、前記ビードコアの軸方向の一方側に露出しており、前記ゴムフィラ部は、前記ビードコアの軸方向の他方側に露出している、請求項又はに記載のビード部材。
【請求項7】
前記重複領域において、前記樹脂フィラ部の前記ビードコアの軸方向における両側は、前記ゴムフィラ部に覆われている、請求項又はに記載のビード部材。
【請求項8】
前記樹脂フィラ部のうち、前記ゴムフィラ部が接合されている接合面には、少なくとも1つの凸部又は凹部が形成されている、請求項1乃至のいずれか1つに記載のビード部材。
【請求項9】
前記ビードコアの軸方向における前記樹脂フィラ部の幅は、前記ビードコアの径方向の外側に向かうにつれて漸減する、請求項1乃至のいずれか1つに記載のビード部材。
【請求項10】
環状のビードコアと、
前記ビードコアに対して前記ビードコアの径方向の外側に位置するビードフィラと、を備え、
前記ビードフィラは、樹脂製の樹脂フィラ部と、前記樹脂フィラ部に対して接合されているゴム製のゴムフィラ部と、を備え、
前記樹脂フィラ部のうち、前記ゴムフィラ部が接合されている接合面には、少なくとも1つの凸部又は凹部が形成されている、ビード部材。
【請求項11】
環状のビードコアと、
前記ビードコアに対して前記ビードコアの径方向の外側に位置するビードフィラと、を備え、
前記ビードフィラは、樹脂製の樹脂フィラ部と、前記樹脂フィラ部に対して接合されているゴム製のゴムフィラ部と、を備え、
前記ビードコアの軸方向における前記樹脂フィラ部の幅は、前記ビードコアの径方向の外側に向かうにつれて漸減する、ビード部材。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1つに記載のビード部材と、前記ビード部材を巻き込むように折り返されるカーカスと、を備える空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビード部材及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、硬質ゴムを用いたビードフィラが知られている。これに対して特許文献1には、熱可塑性樹脂からなるビードフィラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−151510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の樹脂製のビードフィラは、ゴム製のビードフィラと比較して、ビード部の強度を高めることができ、操縦安定性を高めることができる。その一方で、同一の大きさ・同一の形状のゴム製のビードフィラと比較して、剛性が大きく変形し難い。そのため、車種や車両の用途に応じて乗り心地性能を悪化させるおそれがある。樹脂製のビードフィラの厚みを薄くすることで乗り心地性能を高めることが考えられるが、操縦安定性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、操縦安定性及び乗り心地性能の両立を実現可能な、ビードフィラに樹脂製の部分を含む、ビード部材及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としてのビード部材は、環状のビードコアと、前記ビードコアに対して前記ビードコアの径方向の外側に位置するビードフィラと、を備え、前記ビードフィラは、樹脂製の樹脂フィラ部と、前記樹脂フィラ部に対して接合されているゴム製のゴムフィラ部と、を備える。
上述の構成を備えることにより、操縦安定性及び乗り心地性能の両立を実現可能である。
【0007】
本発明の1つの実施形態として、前記ビードコアはコア被覆樹脂で被覆されており、前記樹脂フィラ部は、前記コア被覆樹脂と一体に形成されている。
上述の構成を備えることにより、ビード部材の製造を簡素化することができる。また、ビード部材の耐久性を向上させることができる。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記ビードコアは、1本以上のビードワイヤがワイヤ被覆樹脂で被覆されているストリップ部材が複数回巻回されて積層された状態の環状体を備え、前記環状体の周囲に前記コア被覆樹脂が被覆されている。
上述の構成を備えることにより、ビードコアの耐久性をより向上させることができる。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記環状体は、前記ストリップ部材が、前記ビードコアの径方向、及び、前記ビードコアの軸方向、の少なくとも一方に積層された状態とされている。
上述の構成を備えることにより、簡易にストリップ部材の積層を実現することができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態としてのビード部材は、前記ビードコアの軸方向において前記樹脂フィラ部と前記ゴムフィラ部とが重なる、前記ビードコアの径方向における重複領域がある。
上述の構成を備えることにより、樹脂フィラ部とゴムフィラ部との接合箇所及びその近傍での剛性段差を低減することができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記重複領域は、前記ビードフィラの先端まで延在する。
上述の構成を備えることにより、ビードフィラの剛性バランスを高めることができる。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記重複領域において、前記樹脂フィラ部は、前記ビードコアの軸方向の一方側に露出しており、前記ゴムフィラ部は、前記ビードコアの軸方向の他方側に露出している。
上述の構成を備えることにより、所望の位置が変形するように変形箇所を調整することができる。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記重複領域において、前記樹脂フィラ部の前記ビードコアの軸方向における両側は、前記ゴムフィラ部に覆われている。
上述の構成を備えることにより、ビードフィラの剛性バランスを高めることができる。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記樹脂フィラ部のうち、前記ゴムフィラ部が接合されている接合面には、少なくとも1つの凸部又は凹部が形成されている。
上述の構成を備えることにより、接合面での接合強度を高めることができる。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記ビードコアの軸方向における前記樹脂フィラ部の幅は、前記ビードコアの径方向の外側に向かうにつれて漸減する。
上述の構成を備えることにより、ビードフィラの剛性を緩やかに調整し易くなる。
【0016】
本発明の第2の態様としての空気入りタイヤは、上記ビード部材と、前記ビード部材を巻き込むように折り返されるカーカスと、を備える。
上述の構成を備えることにより、操縦安定性及び乗り心地性能の両立を実現可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操縦安定性及び乗り心地性能の両立を実現可能な、ビードフィラに樹脂製の部分を含むビード部材及び空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るビード部材を備える、本発明の一実施形態としての空気入りタイヤのタイヤ軸方向に沿う断面の一部を示す部分断面図である。
図2図1に示すビード部近傍の拡大図である。
図3】本発明の第1実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
図4】本発明の第2実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
図5】本発明の第3実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
図6】本発明の第4実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
図7】本発明の第5実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
図8】本発明の第6実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
図9】本発明の第7実施形態としてのビード部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るビード部材及び空気入りタイヤの実施形態について、図1図9を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0020】
以下、特に断りのない限り、各要素の寸法、長さ関係、位置関係等は、空気入りタイヤをリムに装着し、所定の内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。
【0021】
ここで、「リム」とは、空気入りタイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「所定の内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、空気入りタイヤ1(以下、「タイヤ1」と記載する。)のタイヤ回転軸を含むタイヤ軸方向Aに沿う断面(以下、「タイヤ軸方向断面」と記載する。)での断面図である。図1では、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ軸方向Aの一方側の半部のみ示し、他方側の半部は図示を省略しているが、他方側の半部についても同様の構成である。また、図1は、上述の基準状態でのタイヤ1を示している。
【0023】
図1に示すように、タイヤ1は、一対のビード部材2と、カーカス3と、ベルト4と、バンド5と、被覆ゴム6と、を備えている。本実施形態のタイヤ1のトレッド部1a、このトレッド部1aの両側に連なる一対のサイドウォール部1b、及び、各サイドウォール部1bに連なるビード部1cは、上述の一対の環状のビード部材2、カーカス3、ベルト4、バンド5及び被覆ゴム6から構成されている。
【0024】
[ビード部材2]
ビード部材2は、ビード部1cに埋設されており、環状のビードコア7と、このビードコア7に対してビードコア7の径方向(図1ではタイヤ径方向Bと同じ方向)の外側に位置するビードフィラ8と、を備えている。以下、説明の便宜上、ビードコア7の径方向及びタイヤ1のタイヤ径方向Bを単に「径方向B」と記載する。また、以下、説明の便宜上、ビードコア7の軸方向及びタイヤ1のタイヤ軸方向Aを単に「軸方向A」と記載する。更に、以下、説明の便宜上、ビードコア7の周方向及びタイヤ1のタイヤ周方向を単に「周方向」と記載する。
【0025】
ビードフィラ8は、樹脂製の樹脂フィラ部9と、この樹脂フィラ部9に対して接合されているゴム製のゴムフィラ部10と、を備えている。このようなビードフィラ8とすることにより、樹脂フィラ部9によって操縦安定性を高めつつ、ゴムフィラ部10によって乗り心地性能の低下を抑制することができる。すなわち、操縦安定性と乗り心地性能を両立可能なビード部材2を実現することができる。
【0026】
樹脂フィラ部9を構成する樹脂材料としては、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱や電子線によって架橋が生じる樹脂、又は、熱転位によって硬化する樹脂、を用いることもできるが、熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、かつ、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、かつ、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、かつ、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。樹脂フィラ部9の樹脂材料の引張弾性率(JIS K7113:1995に規定される)は、50MPa以上が好ましい。また、樹脂フィラ部9の樹脂材料の引張弾性率の上限は、1000MPa以下とすることが好ましい。なお、ここでいう樹脂フィラ部9の樹脂材料には、ゴム(常温でゴム弾性を示す有機高分子物質)は含まれないものとする。
【0027】
[カーカス3]
カーカス3は、一対のビード部1c間、より具体的には一対のビード部材2のビードコア7間に跨っており、トロイダル状に延在している。また、カーカス3は、少なくともラジアル構造を有している。
【0028】
更に、カーカス3は、カーカスコードを周方向(図1では紙面に直交する方向)に対して例えば75°〜90゜の角度で配列した1枚以上(本実施形態では1枚)のカーカスプライから構成されている。このカーカスプライは、一対のビードコア7間に位置するプライ本体部と、このプライ本体部の両端で、ビードコア7の廻りでタイヤ幅方向(軸方向Aと同じ方向)の内側から外側に折り返されるプライ折返し部と、を備えている。そして、プライ本体部と折返し部との間には、径方向Bの外側に先細状に延びるビードフィラ8が配置されている。カーカスコードとして、本実施形態ではポリエステルコードを採用しているが、これ以外にもナイロン、レーヨン、アラミドなどの有機繊維コードや、必要によりスチールコードを採用してもよい。また、カーカスプライの枚数については、2枚以上としてもよい。
【0029】
[ベルト4]
ベルト4は、カーカス3のクラウン部に対して径方向Bの外側に配置されている1層以上(図1に示す例では2層)のベルト層を備える。本実施形態のベルト4は、カーカス3の径方向Bの外側の表面に積層されている第1ベルト層4aと、この第1ベルト層4aの径方向Bの外側に積層されている第2ベルト層4bと、を備えている。第1ベルト層4a及び第2ベルト層4bそれぞれは、スチールコードであるベルトコードを周方向に対して10°〜40°の角度で傾斜配列したベルトプライから形成されている。これら2枚のベルトプライは、ベルトコードの傾斜の向きを互いに違えて重ね置きされている。そのため、ベルトコードがベルトプライ間相互で交差し、ベルト剛性が高められ、トレッド部1aの略全幅をタガ効果によって補強する。本実施形態では、径方向Bの内側に位置する第1ベルト層4aを、径方向Bの外側に位置する第2ベルト層4bと比較し幅広に形成している。そのため、本実施形態では、径方向Bの内側に位置する第1ベルト層4aは、径方向Bの外側に位置する第2ベルト層4bよりも、タイヤ幅方向の外側まで延在している。
【0030】
但し、径方向Bの外側に位置する第2ベルト層4bを、径方向Bの内側に位置する第1ベルト層4aと比較し幅広に形成してもよい。つまり、径方向Bの外側に位置する第2ベルト層4bが、径方向Bの内側に位置する第1ベルト層4aよりも、タイヤ幅方向の外側まで延在する構成としてもよい。また、本実施形態のベルト4は2層のベルト層により構成されているが、1層のみのベルト層としてもよく、3層以上のベルト層としてもよい。
【0031】
[バンド5]
バンド5は、ベルト4に対して径方向Bの外側に配置されている1層以上(図1に示す例では1層)のバンド層を備える。本実施形態のバンド5は、ベルト4の第2ベルト層4bの径方向Bの外側の表面に積層されている単層のバンド層5aから構成されている。バンド層5aは、ベルト4に対して径方向Bの外側の位置で、ベルト4の軸方向A全域を覆っている。バンド層5aは、有機繊維のバンドコードとしてのナイロンコードを周方向に対して10°以下、好ましくは5°以下の角度で螺旋状に巻回させたバンドプライから形成されている。なお、バンド5を径方向Bに積層される複数のバンド層から構成してもよく、必要に応じてバンド5を設けない構成としてもよい。
【0032】
[被覆ゴム6]
被覆ゴム6は、トレッドゴム6a及びサイドゴム6bを備える。トレッドゴム6aは、バンド5に対して径方向Bの外側に配置されている。図示していないがトレッドゴム6aの径方向Bの外側の面には、軸方向Aや周方向に延びる溝等によりトレッドパターンが形成されている。サイドゴム6bは、トレッドゴム6aと一体で形成されており、カーカス3のタイヤ幅方向の外側を被覆している。なお、「トレッドゴム6a」とは、路面に接地する部分のゴムを意味する。
【0033】
なお、図1に示すタイヤ1の内面には、空気不透過層としてインナーライナが配置されている。インナーライナの材料としては、例えばブチル系ゴムを用いることができる。
【0034】
[ビードコア7及びビードフィラ8]
以下、ビード部材2のビードコア7及びビードフィラ8の更なる詳細及び特徴部について説明する。
【0035】
図2は、図1に示すタイヤ1のビード部1cの拡大図である。また、図3は、ビード部材2単体について、ビードコア7の中心軸を含む軸方向Aに平行な断面での断面図である。以下、説明の便宜上、図3に示す断面を「ビードコア軸方向断面」と称する。
【0036】
図2図3に示すように、本実施形態のビードコア7は、1本以上(図2図3に示す例では3本)のビードワイヤ11がワイヤ被覆樹脂Xで被覆されているストリップ部材12が複数回巻回されて積層された状態の環状体13を備える。本実施形態のストリップ部材12は帯状である。
【0037】
本実施形態のストリップ部材12は、溶融状態のワイヤ被覆樹脂Xをビードワイヤ11の外周側に被覆し、冷却により固化させることによって形成することができる。本実施形態のストリップ部材12は、その延在方向に直交する断面において、長方形の断面外形を有している。具体的に、本実施形態の帯状のストリップ部材12は、タイヤ軸方向断面視(図1図2参照)で、軸方向Aに延びる長辺と、径方向Bに延びる短辺と、備える長方形の断面外形を有している。本実施形態のストリップ部材12では、軸方向Aに間隔を空けて直線状に配置された3本のビードワイヤ11がワイヤ被覆樹脂Xにより被覆されており、上述の長方形の断面外形は、ビードワイヤ11の周囲に被覆されているワイヤ被覆樹脂Xにより形成されている。
【0038】
本実施形態の環状体13は、ストリップ部材12を径方向Bに積層させながら巻回することで形成することができる。本実施形態の環状体13では、周方向の任意の位置において、ストリップ部材12が径方向Bに少なくとも3段積層されている。段同士の接合は、例えば、熱板溶着等でワイヤ被覆樹脂Xを溶融させながらストリップ部材12を巻回して、溶融したワイヤ被覆樹脂Xを固化することにより行うことができる。あるいは、段同士を接着剤等により接着することにより接合することもできる。
【0039】
なお、本実施形態のストリップ部材12は、タイヤ軸方向断面視(図1図2参照)で、軸方向Aに長辺が延びる長方形の断面外形を有するが、この断面外形に限られるものではなく、例えば、同断面視で、径方向Bに長辺が延びる長方形の断面外形、正方形の断面外形、平行四辺形の断面外形など、積層し易い別の断面外形を有する構成としてもよい。ストリップ部材12の断面形状は、例えば押し出し機を用いて所期した形状に成形することができる。また、ストリップ部材12に埋設されるビードワイヤ11の本数や配置についても、本実施形態の構成に限られるものではなく、適宜設計可能である。更に、本実施形態の環状体13は、ストリップ部材12が径方向Bに積層された状態として構成されているが、軸方向Aに積層された状態として構成される環状体としてもよく、径方向B及び軸方向Aの両方に積層された状態として構成される環状体としてもよい。このように径方向B及び軸方向Aの少なくとも一方に積層する積層方法とすれば、簡易にストリップ部材12の積層構成を実現することができる。
【0040】
本実施形態のビードワイヤ11はスチールコードにより形成されている。スチールコードは、例えば、スチールのモノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。なお、ビードワイヤ11として、有機繊維やカーボン繊維等を用いてもよい。
【0041】
本実施形態のワイヤ被覆樹脂Xの樹脂材料としては、樹脂フィラ部9の樹脂材料として列挙した上述の樹脂材料を利用することができる。
【0042】
上述のように、ビードワイヤ11をワイヤ被覆樹脂Xにより被覆することで、ビードワイヤをゴムにより被覆する構成と比較して、タイヤ軸方向断面視(図1図2参照)における複数のビードワイヤ11同士の位置関係が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時等においてもビードコア7の断面形状をより安定化させることができる。したがって、耐久性の高いビードコア7を実現することができる。
【0043】
更に、本実施形態の環状体13の周囲は、コア被覆樹脂Yにより被覆されている。コア被覆樹脂Yの樹脂材料としては、樹脂フィラ部9の樹脂材料として列挙した上述の樹脂材料を利用することができる。環状体13をコア被覆樹脂Yで被覆することにより、上述したビードコア7の断面形状の安定性をより一層高め、ビードコア7の耐久性をより向上させることができる。
【0044】
コア被覆樹脂Yと上述のワイヤ被覆樹脂Xとは、同一の樹脂材料としてもよく、異なる樹脂材料としてもよい。但し、より簡易に、耐久性の高いビードコア7を得る観点からは、コア被覆樹脂Yは、ワイヤ被覆樹脂Xと同じ樹脂であることが好ましい。コア被覆樹脂Yとワイヤ被覆樹脂Xとが溶着又は接着し易くなるためである。また、ビードコア7の硬度を調整し易くする観点からは、コア被覆樹脂Yは、ワイヤ被覆樹脂Xと異なる樹脂であることが好ましい。ここで、一般的に、樹脂はゴムより硬度が大きい。このため、ビードコア7と周囲のゴムとの剛性差を緩和するためには、ゴムと直接隣接するコア被覆樹脂Yは、ワイヤ被覆樹脂Xより硬度が小さい(ゴムの硬度に近い)ことが好ましい。一方で、熱収縮の効果をより一層得るためには、コア被覆樹脂Yは、ワイヤ被覆樹脂Xより硬度が大きいことが好ましい。
【0045】
また、コア被覆樹脂Yは、ゴムとの接着性の高い樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
このように、本実施形態のビードコア7はコア被覆樹脂Yを備えている。そして、本実施形態のビードコア7は、ビードコア軸方向断面視(図3参照)において、コア被覆樹脂Yにより四角形の外形に形成されている。より具体的に、本実施形態の同断面視におけるビードコア7の外形は、径方向Bの内側及び外側に位置し軸方向Aに延びる短辺と、軸方向Aの両側に位置し径方向Bに延びる長辺と、を備える長方形である。
【0047】
本実施形態のビードフィラ8は、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が漸減する先薄形状を有している。より具体的に、本実施形態のビードフィラ8は、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が単調減少する先薄形状を有している。なお、「径方向Bの内側から外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が漸減する」とは、軸方向Aの幅が径方向Bの外側に向かうにつれて増加せずに徐々に減少するものであればよく、階段状に減少する構成を含む意味である。これに対して、「径方向Bの内側から外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が単調減少する」とは、軸方向Aの幅が径方向Bの外側に向かうにつれて連続して減少する構成を意味する。すなわち、「単調減少」は「漸減」の一態様である。
【0048】
また、ビードフィラ8は、径方向Bの外側に向かうにつれて、軸方向Aの一方側(本実施形態ではタイヤ幅方向の外側)に延在するように傾斜している。そして、ビードフィラ8の径方向Bの内側の内周端面が、ビードコア7に接合されている。つまり、ビードフィラ8の径方向Bの内側の内周端面が、ビードコア7とのコア接合面8aを構成する。このコア接合面8aとしてのビードフィラ8の内周端面は、ビードコア軸方向断面視で軸方向Aへ直線状に延在しており、このコア接合面8aとしての内周端面が、同断面視で軸方向Aへ延びるビードコア7の径方向B外側の短辺と、接合されている。
【0049】
上述したように、ビードフィラ8は樹脂フィラ部9及びゴムフィラ部10を備え、樹脂フィラ部9が上述のコア接合面8aとしての内周端面を備えている。そして、樹脂フィラ部9は、ビードコア7に対して径方向Bの外側で、コア接合面8aとしての内周端面をビードコア7のコア被覆樹脂Yに溶着又は接着することにより、ビードコア7に接合されている。樹脂フィラ部9と、ビードコア7のコア被覆樹脂Yとは、同一の樹脂材料としてもよく、異なる樹脂材料としてもよい。但し、後述するように、接合工程の省略化及び強度向上の観点から、樹脂フィラ部9と、ビードコア7のコア被覆樹脂Yとを、同一の樹脂材料とすることが好ましい(図4参照)。
【0050】
本実施形態の軸方向Aにおける樹脂フィラ部9の幅は、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸減、より具体的には単調減少している。すなわち、本実施形態の樹脂フィラ部9は、径方向Bの外側に向かうにつれて薄くなる先薄形状を有している。樹脂フィラ部9の幅を漸減させることにより、ビードフィラ8の剛性を緩やかに調整し易くなる。また、本実施形態の樹脂フィラ部9は、タイヤ幅方向の内側となる軸方向Aの一方側(図3では左側)に第1湾曲面9aを備える。また、本実施形態の樹脂フィラ部9は、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの他方側(図3では右側)に第2湾曲面9bを備える。更に、本実施形態の樹脂フィラ部9は、径方向Bの外側の位置に、第1湾曲面9aの径方向Bの外側端9a1と第2湾曲面9bの径方向Bの外側端9b1とを繋ぎ、ゴムフィラ部10と接合される接合面9cを備えている。
【0051】
第1湾曲面9aは、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて、タイヤ幅方向の外側に延在するように傾斜している。また、第2湾曲面9bについても、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて、タイヤ幅方向の外側に延在するように傾斜している。そして、第1湾曲面9aと第2湾曲面9bとの軸方向Aにおける幅は、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸減、より具体的には単調減少している。
【0052】
また、第1湾曲面9aの径方向B外側の端である外側端9a1は、第2湾曲面9bの径方向Bの外側の端である外側端9b1よりも、更に径方向Bの外側に位置している。換言すれば、第1湾曲面9aは、径方向Bにおいて、第2湾曲面9bよりも外側まで延在している。したがって、接合面9cは、ビードコア軸方向断面視(図3等参照)で、軸方向Aと交差する方向に延在している。また、上述したように、第1湾曲面9a及び第2湾曲面9bは、径方向Bの内側から外側に向かうにつれてタイヤ幅方向の外側に延在するように傾斜しているため、接合面9cは、ビードコア7よりもタイヤ幅方向の外側の位置に形成されている。
【0053】
なお、樹脂フィラ部9の軸方向Aにおける幅は、接合面9cの位置においても、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸減、より具体的には単調減少している。具体的に、接合面9cの位置における樹脂フィラ部9の軸方向Aの幅は、第1湾曲面9aと接合面9cとにより規定され、この第1湾曲面9aと接合面9cとの軸方向Aにおける幅が、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて単調減少している。
【0054】
本実施形態のゴムフィラ部10は、タイヤ幅方向の内側となる軸方向Aの一方側(図3では左側)に第1側面10aを備える。また、本実施形態のゴムフィラ部10は、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの他方側(図3では右側)に第2側面10bを備える。更に、本実施形態のゴムフィラ部10は、径方向Bの内側の位置に、第1側面10aの径方向Bの内側端10a1と第2側面10bの径方向Bの内側端10b1とを繋ぎ、樹脂フィラ部9の接合面9cと接合される対向接合面10cを備えている。
【0055】
第1側面10aは、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて、タイヤ幅方向の外側に延在するように傾斜している。また、第2側面10bについても、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて、タイヤ幅方向の外側に延在するように傾斜している。そして、第1側面10aと第2側面10bとの軸方向Aにおける幅は、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸減、より具体的には単調減少し、第1側面10aと第2側面10bとが交差した稜線により、径方向Bの外側端となる周方向に連続する尾根部14が形成されている。図2に示すように、尾根部14は、ビードコア7よりもタイヤ幅方向の外側に位置している。
【0056】
本実施形態の第1側面10aは、樹脂フィラ部9の第1湾曲面9aと略面一に連続している。そのため、樹脂フィラ部9の第1湾曲面9aの外側端9a1が角部として露出せず、外側端9a1によるカーカス3の損傷等を抑制することができる。また、本実施形態の第2側面10bについても、樹脂フィラ部9の第2湾曲面9bと略面一に連続している。そのため、樹脂フィラ部9の第2湾曲面9bの外側端9b1が角部として露出せず、外側端9b1によるカーカス3の損傷等を抑制することができる。
【0057】
なお、ゴムフィラ部10の軸方向Aにおける幅は、対向接合面10cの位置においては、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸増している。具体的に、対向接合面10cの位置におけるゴムフィラ部10の軸方向Aの幅は、第2側面10bと対向接合面10cとにより規定され、この第2側面10bと対向接合面10cとの軸方向Aにおける幅が、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸増している。
【0058】
上述したように、樹脂フィラ部9の接合面9cは、ビードコア軸方向断面視(図3等参照)で、軸方向Aと交差する方向に延在しており、ゴムフィラ部10の対向接合面10cは、この樹脂フィラ部9の接合面9cと接着剤又は加硫により接着されている。すなわち、樹脂フィラ部9の接合面9cと、ゴムフィラ部10の対向接合面10cと、の接合界面IFについても、軸方向Aと交差する方向に延在している。
【0059】
ここで、本実施形態のビードフィラ8は、径方向Bにおいて、重複領域D1と、非重複領域D2と、を有している。
【0060】
径方向Bにおける重複領域D1とは、軸方向Aにおいて樹脂フィラ部9とゴムフィラ部10とが重なる領域である。上述したように、本実施形態の接合界面IFは軸方向Aと交差する方向に延在している。そのため、径方向Bにおいて接合界面IFが位置する領域は、軸方向Aにおいて樹脂フィラ部9とゴムフィラ部10とが重なる領域、すなわち、重複領域D1となる。逆に、径方向Bにおける非重複領域D2とは、軸方向Aにおいて樹脂フィラ部9とゴムフィラ部10とが重ならない領域である。具体的に、本実施形態のビードフィラ8では、上述の重複領域D1以外の領域が非重複領域D2となる。すなわち、本実施形態のビードフィラ8では、重複領域D1よりも径方向Bの外側のゴムフィラ部10のみの領域と、重複領域D1よりも径方向Bの内側の樹脂フィラ部9のみの領域と、が非重複領域D2となる。そして、ビードフィラ8の径方向Bにおける全領域D3は、重複領域D1及び非重複領域D2により構成されている。
【0061】
ビードフィラ8が重複領域D1を備える構成とすることにより、重複領域D1が無い構成と比較して、樹脂フィラ部9とゴムフィラ部10との接合箇所及びその近傍での径方向Bの位置による剛性段差を低減することができる。
【0062】
また、重複領域D1において、樹脂フィラ部9は、タイヤ幅方向の内側となる軸方向Aの一方側(図3では左側)に露出しており、ゴムフィラ部10は、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの他方側(図3では右側)に露出している。このような配置とすることにより、タイヤ幅方向の内側から外側に向かって作用する荷重に対しては、樹脂フィラ部9により変形が抑制される。これに対して、タイヤ幅方向の外側から内側に向かって作用する荷重に対しては、ゴムフィラ部10により変形が生じ易い。つまり、ビードフィラ8のタイヤ幅方向の内側の面を所定の形状に安定的に保持しつつ、ビードフィラ8のタイヤ幅方向の外側の面を外力に応じて変形させることができる。そのため、ブラダを用いたタイヤ成形時に、ビードフィラ8のタイヤ幅方向の外側に隣接する部材(図1図2ではカーカス3の折返し部)や、この隣接する部材をビードフィラ8に向かって押し付ける成形装置の押付部材、の形状に追従して、タイヤ幅方向の外側の面を所望の形状に変形させることができる。その一方で、ブラダを用いたタイヤ成形時に、変形が望ましくないビードフィラ8のタイヤ幅方向の内側の面については、変形を抑制し、所望の形状を保持することができる。
【0063】
なお、本実施形態のビードフィラ8の重複領域D1において、樹脂フィラ部9はタイヤ幅方向の内側に露出し、ゴムフィラ部10はタイヤ幅方向の外側に露出するが、目的に応じて変形させたい箇所を異ならせてもよい。したがって、例えば、重複領域D1において、樹脂フィラ部9をタイヤ幅方向の外側に露出させ、ゴムフィラ部10をタイヤ幅方向の内側に露出させたビードフィラとしてもよい。つまり、所望の位置が変形するように変形箇所を調整することができる。但し、上述したように、ブラダを用いたタイヤ成形時を考慮すれば、本実施形態のように、重複領域D1において、樹脂フィラ部9がタイヤ幅方向の内側に露出し、ゴムフィラ部10がタイヤ幅方向の外側に露出する構成とすることが好ましい。また、後述するように、接合界面IFの接着剤等の接合耐久性を考慮すれば、重複領域D1において、樹脂フィラ部がタイヤ幅方向の外側に露出し、ゴムフィラ部がタイヤ幅方向の内側に露出する構成とすることが好ましい(図9参照)。
【0064】
なお、本実施形態では、接合界面IFの径方向Bの外側の端である外側端(本実施形態では第1湾曲面9aの外側端9a1と同じ)が、接合界面IFの径方向Bの内側の端である内側端(本実施形態では第2湾曲面9bの外側端9b1と同じ)よりも、タイヤ幅方向の内側となる軸方向Aの一方側(図3では左側)に位置している。しかしながら、後述するように、接合界面IFの径方向Bの外側の端である外側端が、接合界面IFの径方向Bの内側の端である内側端よりも、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの他方側(図3では右側)に位置する構成とすることが、より好ましい(図5参照)。このような構成とすれば、径方向Bにおいてより広範囲に重複領域D1を確保し易くなる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、上述のビード部材2と別の実施形態としてのビード部材22について、図4を参照して説明する。図4は、ビード部材22のビードコア軸方向断面を示す。
【0066】
図4に示すビード部材22は、ビードコア27及びビードフィラ28を備えている。ビードフィラ28は、樹脂フィラ部29と、ゴムフィラ部30と、を備えている。上述の図1図3に示すビード部材2では、別体のビードコア7及びビードフィラ8が溶着又は接着により接合されているが、図4に示すビード部材22では、ビードコア27と、ビードフィラ28の一部と、が一体で形成されている。ビード部材22のその他の構成は、上述した図1図3に示すビード部材2の構成と同一であるためここでは説明を省略する。
【0067】
図4に示すビード部材22のビードコア27は、上述したビード部材2のビードコア7と同様、コア被覆樹脂Yにより被覆されている。そして、本実施形態では、ビードフィラ28の樹脂フィラ部29が、ビードコア27を被覆しているコア被覆樹脂Yと一体に形成されている。このような構成とすれば、ビードコア27とビードフィラ28との間の接合工程を省略でき、ビード部材22の製造を簡素化することができる。また、ビード部材22の強度を向上させることができ、ビード部材22の耐久性を高めることができる。そのため、ビード部材22を含むタイヤがリム組みされた状態で、カーカス3の引き抜けをより一層抑制することができる。
【0068】
なお、樹脂フィラ部29を、ビードコア27の被覆部分と共にコア被覆樹脂Yにより一体に形成する方法としては、例えば射出成形を利用することができるが、この方法に限られるものではなく、各種方法により一体形成を実現することができる。
【0069】
<第3実施形態>
次に、別の実施形態としてのビード部材32について、図5を参照して説明する。図5は、ビード部材32のビードコア軸方向断面を示す。
【0070】
図5に示すビード部材32は、ビードコア37及びビードフィラ38を備えている。ビードフィラ38は、樹脂フィラ部39と、ゴムフィラ部40と、を備えている。本実施形態のビード部材32は、上述の図4に示すビード部材22と、接合界面IFの構成が相違しているが、その他の構成は、図4に示すビード部材22の構成と同一である。そのため、ここでは主に上記相違点について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0071】
図5に示すように、樹脂フィラ部39とゴムフィラ部40との間の接合界面IFは、図4に示す接合界面IFよりも径方向Bにおける領域が長い。換言すれば、本実施形態の重複領域D1は、図4に示すビード部材22の重複領域D1よりも、径方向Bに長く確保されている。そのため、接合界面IFが拡がり接合強度を高めることができる。また、樹脂フィラ部39とゴムフィラ部40との間での剛性段差を、図4に示す構成と比較して、より低減することができる。
【0072】
換言すれば、接合界面IFの径方向Bの外側の端である外側端(本実施形態では第1湾曲面29aの外側端29a1と同じ)が、接合界面IFの径方向Bの内側の端である内側端(本実施形態では第2湾曲面29bの外側端29b1と同じ)よりも、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの一方側(図5では右側)に位置している。そのため、径方向Bにおいてより広範囲に重複領域D1を確保し易くなる。更に、このような構成とすることにより、重複領域D1における樹脂フィラ部39の軸方向Aの幅の変化率を小さくすることができる。重複領域D1における樹脂フィラ部39の軸方向Aの幅は、径方向Bの内側から外側に向かうにつれて漸減するが、重複領域D1が径方向Bに長く確保できることで、漸減する幅の変化率をより小さくすることが可能となる。ゴムフィラ部40の軸方向Aの幅の変化率についても同様である。したがって、径方向Bに沿って変化する剛性の変化率を緩やかにすることができる。すなわち、樹脂フィラ部39とゴムフィラ部40との接合箇所及びその近傍での剛性段差をより一層低減することができる。
【0073】
また、本実施形態では、図5に示すように、ビードフィラ38の径方向Bの全領域D3のうち、重複領域D1は非重複領域D2よりも長い。換言すれば、重複領域D1の長さは、ビードフィラ38の径方向Bの全領域D3の1/2より大きい。このようにすることで、上述した接合強度の向上と剛性段差の低減とを実現し易くなる。
【0074】
更に、本実施形態では、図5に示すように、ビードコア37の軸方向Aの最大幅W1よりも、接合界面IFの径方向Bの長さ(重複領域D1の長さ)が長い。このようにすることで、上述した接合強度の向上と剛性段差の低減とを実現し易くなる。
【0075】
なお、本実施形態の重複領域D1は、ビードフィラ38の径方向Bの内側端から形成されている。したがって、本実施形態の非重複領域D2は、樹脂フィラ部39の径方向Bの外側端(本実施形態では第1湾曲面29aの外側端29a1と同じ)よりも、径方向Bの外側の領域である。
【0076】
<第4実施形態>
次に、別の実施形態としてのビード部材42について、図6を参照して説明する。図6は、ビード部材42のビードコア軸方向断面を示す。
【0077】
図6に示すビード部材42は、ビードコア47及びビードフィラ48を備えている。ビードフィラ48は、樹脂フィラ部49と、ゴムフィラ部50と、を備えている。本実施形態のビード部材42は、上述の図5に示すビード部材32と、接合界面IFの構成が相違しているが、その他の構成は、図5に示すビード部材32の構成と同一である。そのため、ここでは主に上記相違点について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0078】
図6に示すように、樹脂フィラ部49とゴムフィラ部50との間の接合界面IFには凹凸が設けられている。具体的に、樹脂フィラ部49のうち、ゴムフィラ部50が接合されている接合面49cには、少なくとも1つの凸部90a又は凹部90bが形成されている。より具体的に、図6に示す接合面49cには、複数の凸部90aと、この複数の凸部90a間に形成されている複数の凹部90bと、が形成されている。ゴムフィラ部50の対向接合面50cは、凹凸に沿って接合面49cに密着し、接着剤又は加硫により接合面49cに接着されている。接合面49cに少なくとも1つの凸部90a又は凹部90bを設けることにより、接合界面IFでの接合強度を高めることができる。
【0079】
<第5実施形態>
次に、別の実施形態としてのビード部材52について、図7を参照して説明する。図7は、ビード部材52のビードコア軸方向断面を示す。
【0080】
図7に示すビード部材52は、ビードコア57及びビードフィラ58を備えている。ビードフィラ58は、樹脂フィラ部59と、ゴムフィラ部60と、を備えている。本実施形態のビード部材52は、上述の図5に示すビード部材32と、接合界面IFの構成が相違しているが、その他の構成は、図5に示すビード部材32の構成と同一である。そのため、ここでは主に上記相違点について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0081】
図7に示すように、樹脂フィラ部59とゴムフィラ部60との間の接合界面IFが、ビードフィラ58の径方向Bの先端となる周方向に連続する尾根部91まで延在している。換言すれば、本実施形態では、重複領域D1が、ビードフィラ58の径方向B外側の先端まで延在している。このような構成とすれば、ビードフィラ58の径方向Bの外側でゴムフィラ部60のみとなる部分が無いため剛性バランスを高めることができる。更に、本実施形態の重複領域D1は、ビードフィラ58の径方向B内側の基端まで延在している。したがって、本実施形態のビードフィラ58は、径方向Bにおいて、軸方向Aにおいて樹脂フィラ部59及びゴムフィラ部60が重なる重複領域D1のみで構成されている。
【0082】
また、本実施形態では、樹脂フィラ部59が、ビードフィラ58の径方向Bの外側の先端まで延在している。ビードフィラ58の径方向Bの外側の先端の軸方向Aにおける幅は薄い。そのため、樹脂フィラ部59の径方向Bの外側の先端の軸方向Aにおける幅も非常に薄い。したがって、ビードフィラ58の径方向Bの外側の先端まで樹脂フィラ部59を配置しても、弾性変形し易く柔軟性の高いビードフィラ58の先端部を実現することができる。
【0083】
なお、本実施形態の樹脂フィラ部59の軸方向Aの幅は、径方向Bの外側の先端まで単調減少しているが、樹脂フィラ部59の軸方向Aの幅は、本実施形態で示す単調減少する構成に限らず、径方向Bの外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が漸減するその他の構成としてもよい。例えば、径方向Bの外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が単調減少するテーパ部と、このテーパ部と径方向Bの外側で連続し、径方向Bの外側の先端まで径方向Bの位置によらず軸方向Aの幅が一様な等幅部と、を備える樹脂フィラ部としてもよい。但し、上述したように、剛性段差を緩和する観点から、樹脂フィラ部59の軸方向Aの幅が径方向Bの外側に向かうにつれて単調減少する構成とすることが好ましい。なお、樹脂フィラ部の軸方向Aの幅が径方向Bの外側に向かうにつれて単調減少する構成が好ましい点は、上述の第1実施形態〜第4実施形態でも同様である。
【0084】
<第6実施形態>
次に、別の実施形態としてのビード部材62について、図8を参照して説明する。図8は、ビード部材62のビードコア軸方向断面を示す。
【0085】
図8に示すビード部材62は、ビードコア67及びビードフィラ68を備えている。ビードフィラ68は、樹脂フィラ部69と、ゴムフィラ部70と、を備えている。本実施形態のビード部材62は、上述の図1図7に示すいずれのビード部材とも、ビードフィラの構成が相違しているが、ビードコアの構成については、図1図7に示すビード部材と同様である。そのため、ここでは主に上記相違点について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、本実施形態の樹脂フィラ部69は、その全体がゴムフィラ部70に覆われている。このようにすることで、ビードフィラ68の芯材としての樹脂フィラ部69から、軸方向Aの両側及び径方向Bの外側それぞれに向けて、段階的に柔軟性を高めることができると共に、剛性バランスを高めることができる。以下、ビードフィラ68の詳細を説明する。
【0087】
本実施形態のビードコア67は、コア被覆樹脂Yにより被覆されている。そして、本実施形態では、ビードフィラ68の樹脂フィラ部69が、ビードコア67を被覆しているコア被覆樹脂Yと一体に形成されている。樹脂フィラ部69の軸方向Aの幅は、径方向Bの外側に向かうにつれて漸減する構成であるが、径方向Bの位置によらず一様な構成であってもよい。但し、剛性段差を緩和する観点では、樹脂フィラ部69の軸方向Aの幅は、径方向Bの外側に向かうにつれて漸減することが好ましく、単調減少することがより好ましい。
【0088】
ここで、樹脂フィラ部69の径方向Bにおける各位置での軸方向Aの幅は、ビードコア67の軸方向Aの最大幅W1よりも小さい。また、樹脂フィラ部69は、ビードコア67の軸方向Aにおける略中央の位置から径方向Bの外側に突出するように一体形成されている。より具体的に、ビードコア67は、ビードコア軸方向断面視(図8参照)において、軸方向Aの両側で径方向Bに延在する長辺と、径方向Bの内側及び外側で軸方向Aに延在する短辺と、を備える略長方形の断面外形を有する。そして、樹脂フィラ部69は、同断面視で、ビードコア67の径方向Bの外側に位置する短辺の軸方向Aの略中央の位置から径方向Bの外側に向かって突出するように、コア被覆樹脂Yにより、ビードコア67と一体形成されている。
【0089】
樹脂フィラ部69は、径方向Bの外側に向かうにつれて、タイヤ幅方向の外側となる、軸方向Aの一方側(図8では右側)に延在するように傾斜している。
【0090】
そして、この樹脂フィラ部69は、その軸方向Aの両側と径方向Bの外側とが、ゴムフィラ部70により覆われている。したがって、本実施形態における重複領域D1は、径方向Bにおいて、樹脂フィラ部69が位置する領域である。また、本実施形態における非重複領域D2は、樹脂フィラ部69よりも径方向Bの外側の領域である。換言すれば、本実施形態では、重複領域D1において、樹脂フィラ部69の軸方向Aにおける両側は、ゴムフィラ部70に覆われている。このように、重複領域D1を設けることで、上述した別の各実施形態と同様、樹脂フィラ部69とゴムフィラ部60との剛性段差を低減することができる。更に、本実施形態では、樹脂フィラ部69の軸方向Aの両側を、ゴムフィラ部70で挟み込んでいるため、樹脂フィラ部69及びゴムフィラ部70を備えることによる操縦安定性及び乗り心地性能の両立に加えて、ビードフィラ68の軸方向Aの両側の側面の柔軟性を高めることができる。そのため、操縦安定性及び乗り心地性能に加えて、追従性が向上し周囲の部材との密着力を向上可能なビード部材62を実現することができる。
【0091】
より具体的に、本実施形態のゴムフィラ部70は、樹脂フィラ部69に対して、タイヤ幅方向の内側となる軸方向Aの一方側(図8では左側)に位置する第1側片部70aを備える。また、本実施形態のゴムフィラ部70は、樹脂フィラ部69に対して、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの他方側(図8では右側)に位置する第2側片部70bを備える。更に、本実施形態のゴムフィラ部70は、樹脂フィラ部69に対して、径方向Bの外側(図8では上側)に位置する先端部70cを備える。
【0092】
第1側片部70aは、樹脂フィラ部69と接着剤又は加硫による接着により接合されている接着面70a1と、この接着面70a1と軸方向Aにおいて反対側に位置し、ビードフィラ68のタイヤ幅方向の内側の外面となる内側露出面70a2と、径方向Bの内側のコア接合端面70a3と、を備える。内側露出面70a2は、ビードコア67の軸方向Aの一方側(図8では左側)の側面と略面一に連続している。そのため、ビードコア軸方向断面視(図8参照)で長方形の断面外形を有するビードコア67の径方向B外側の1つの角部が突出しない。したがって、ビードコア67により、周囲に巻き付けられるカーカス3(図1等参照)が損傷等することを抑制することができる。なお、第1側片部70aにより、ビードコア67の径方向B外側の1つの角部を覆うようにしてもよい。また、コア接合端面70a3は、ビードコア67に対して接着剤又は加硫により接着されている。
【0093】
第2側片部70bは、樹脂フィラ部69と接着剤又は加硫による接着により接合されている接着面70b1と、この接着面70b1と軸方向Aにおいて反対側に位置し、ビードフィラ68のタイヤ幅方向の外側の外面となる外側露出面70b2と、径方向Bの内側のコア接合端面70b3と、を備える。外側露出面70b2は、ビードコア67の軸方向Aの他方側(図8では右側)の側面と略面一に連続している。そのため、ビードコア軸方向断面視(図8参照)で長方形の断面外形を有するビードコア67の径方向B外側の1つの角部が突出しない。したがって、ビードコア67により、周囲に巻き付けられるカーカス3(図1等参照)が損傷等することを抑制することができる。なお、第2側片部70bにより、ビードコア67の径方向B外側の1つの角部を覆うようにしてもよい。また、コア接合端面70b3は、ビードコア67に対して接着剤又は加硫により接着されている。
【0094】
なお、本実施形態では、第1側片部70aの軸方向Aにおける幅、及び、第2側片部70bの軸方向Aにおける幅、は共に、径方向Bの外側に向かうにつれて漸減、より具体的には単調減少している。そして、上述したように、樹脂フィラ部69の軸方向Aの幅についても、径方向Bの外側に向かうにつれて漸減している。このように、ビードフィラ68の軸方向Aにおける全幅は、径方向Bの外側に向かうにつれて漸減するが、第1側片部70a、第2側片部70b及び樹脂フィラ部69の軸方向Aの幅それぞれも漸減している。そのため、本実施形態の重複領域D1では、径方向Bの位置によらず、ビードフィラ68の軸方向Aにおける全幅に対する、第1側片部70a、第2側片部70b及び樹脂フィラ部69それぞれの軸方向Aの幅の割合は略一定であり、剛性バランスの高いビードフィラ68とすることができる。なお、剛性バランスの観点では、径方向Bの外側に向かうにつれて軸方向Aの幅が漸減する樹脂フィラ部69を、ビードフィラ68の径方向Bの外側の先端又はその近傍まで延在させることが好ましい。
【0095】
<第7実施形態>
図9に示すビード部材72は、ビードコア77及びビードフィラ78を備えている。ビードフィラ78は、樹脂フィラ部79と、ゴムフィラ部80と、を備えている。本実施形態のビード部材72は、上述の図4に示すビード部材22と、接合界面IFの構成が相違しているが、その他の構成は、図4に示すビード部材22の構成と同一である。そのため、ここでは主に上記相違点について説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0096】
図9に示すように、樹脂フィラ部79とゴムフィラ部80との間の接合界面IFは、図4に示す接合界面IFと比較して、傾斜方向が異なる。具体的に、図9に示す本実施形態では、接合界面IFの径方向Bの外側の端である外側端が、第2湾曲面29bの外側端29b1により構成されている。また、図9に示す本実施形態では、接合界面IFの径方向Bの内側の端である内側端が、第1湾曲面29aの外側端29a1により構成されている。つまり、本実施形態では、接合界面IFの径方向Bの外側の端である外側端を構成する、第2湾曲面29bの外側端29b1が、接合界面IFの径方向Bの内側の端である内側端を構成する、第1湾曲面29aの外側端29a1よりも、タイヤ幅方向の外側となる軸方向Aの一方側(図9では右側)に位置している。このような構成とすれば、ビード部材72を備えるタイヤに鉛直荷重が作用しても、図4に示す接合界面IFの傾斜方向と比較して、接合界面IFを形成する樹脂フィラ部79の接合面で荷重を受け易く、樹脂フィラ部79とゴムフィラ部80との間の接合界面IFに沿う方向にせん断力がかかり難い。その結果、樹脂フィラ部79とゴムフィラ部80とが接合界面IFで剥離することを抑制することができ、樹脂フィラ部79とゴムフィラ部80との接合界面IFの接合耐久性を向上させることができる。
【0097】
本発明に係るビード部材及び空気入りタイヤは、上述した各実施形態に記載した具体的な構成に限られるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形・変更が可能である。例えば、上述の第1実施形態〜第7実施形態で示す特徴を組み合わせて形成されるビード部材も本開示の技術的範囲に属するものである。例えば、第4実施形態で示す接合面49cの凹凸を、別の実施形態の接合面に適用してもよい。なお、第2実施形態〜第7実施形態ではビード部材のみを説明しているが、第2実施形態〜第7実施形態で示すビード部材についても、第1実施形態で示すタイヤ1と同様のタイヤに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明はビード部材及び空気入りタイヤに関する。
【符号の説明】
【0099】
1:空気入りタイヤ、 1a:トレッド部、 1b:サイドウォール部、
1c:ビード部、 2:ビード部材、 3:カーカス、 4:ベルト、
4a:第1ベルト層、 4b:第2ベルト層、 5:バンド、 5a:バンド層、
6:被覆ゴム、 6a:トレッドゴム、 6b:サイドゴム、 7:ビードコア、
8:ビードフィラ、8a:コア接合面、 9:樹脂フィラ部、 9a:第1湾曲面、
9a1:外側端、 9b:第2湾曲面、 9b1:外側端、 9c:接合面、
10:ゴムフィラ部、 10a:第1側面、 10a1:内側端、 10b:第2側面、
10b1:内側端、 10c:対向接合面、 11:ビードワイヤ、
12:ストリップ部材、 13:環状体、 14:尾根部、
22、32、42、52、62、72:ビード部材、
27、37、47、57、67、77:ビードコア、
28、38、48、58、68、78:ビードフィラ、
29、39、49、59、69、79:樹脂フィラ部、
29a:第1湾曲面、 29a1:外側端、 29b:第2湾曲面、
29b1:外側端、30、40、50、60、70、80:ゴムフィラ部、
49c:接合面、 50c:対向接合面、 70a:第1側片部、 70a1:接着面、
70a2:内側露出面、 70a3:コア接合端面、 70b:第2側片部、
70b1:接着面、 70b2:外側露出面、 70b3:コア接合端面、
70c:先端部、 90a:凸部、 90b:凹部、 91:尾根部、
A:タイヤ軸方向、ビードコアの軸方向、 B:タイヤ径方向、ビードコアの径方向、
CL:タイヤ赤道面、 D1:径方向におけるビードフィラの重複領域、
D2:径方向におけるビードフィラの非重複領域、
D3:径方向におけるビードフィラの全領域、 IF:接合界面、
W1:軸方向におけるビードコアの最大幅、 X:ワイヤ被覆樹脂、 Y:コア被覆樹脂
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9