(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高硬度材は、前記クッションパッドへの無荷重状態において、前記サイドフレームの左右方向内側に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシートクッション。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施の形態におけるシートクッション2を有する乗物用シート1の平面図である。
図2はシートクッション2の平面図である。
図3は、
図2のIII−III線におけるシートクッションの切断部端面図である。なお、各図面における矢印U−D,L−R,F−Bは、乗物用シート1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。また、
図2ではクッションパッド20を透過した状態を図示し、クッションパッド20及び高硬度材25の外形を二点鎖線で図示している。
【0017】
図1に示すように、乗物用シート1は、自動車等の車両5に搭載される座席である。乗物用シート1は、車両5の乗降口(ドア)6が右側に隣接する。即ち、乗物用シート1の右側に乗降口6が面するように乗物用シート1が車両5に搭載される。そのため、着座者は、乗物用シート1の右側から車両5(乗物用シート1)に乗降する。
【0018】
乗物用シート1は、座面を構成するシートクッション2と、背凭れを構成するシートバック3と、シートバック3の上端部に固定されるヘッドレスト4とを備える。シートバック3は、シートクッション2の後端部にリクライニング装置(図示せず)を介して傾倒可能に固定される。乗物用シート1に着座者が着座すると、シートクッション2が着座者の臀部を支持し、シートバック3が着座者の腰部および背中を支持し、ヘッドレスト4が着座者の頭部を支持する。
【0019】
図2及び
図3に示すように、シートクッション2は、骨組みを構成するクッションフレーム10と、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されるクッションパッド20と、クッションパッド20を覆う表皮材(図示せず)とを備える。クッションフレーム10は、左右一対のサイドフレーム11,12と、サイドフレーム11,12の前端部に架け渡されるフロントフレーム13と、サイドフレーム11,12の後端部に架け渡されるリアフレーム14とを備える。
【0020】
サイドフレーム11,12と、フロントフレーム13と、リアフレーム14とが互いに連結されて略四角枠状に構成される。この四角枠によりクッションパッド20の縁部が支持されると共に、フロントフレーム13とリアフレーム14とに架け渡されるばね(図示せず)によりクッションパッド20の中央部が支持される。
【0021】
フロントフレーム13は、プレス等の曲げ加工により形成される板金製の部材である。フロントフレーム13は、主に着座者の大腿部を下方から支持するため、上面が広く形成される。リアフレーム14は、金属製の円筒状のパイプから構成される。リアフレーム14の両端がサイドフレーム11,12に溶接等により接合される。
【0022】
サイドフレーム11はシートクッション2の左側に配置され、サイドフレーム12はシートクッション2の右側に配置される。サイドフレーム11,12は、前後方向に亘って形成される側板部15と、側板部15の前方側に配置されるプレート部16とを備える。
【0023】
側板部15は、プレス等の曲げ加工により形成される板金製の部材である。側板部15は、板材の板厚方向を基本的に左右へ向けつつ、薄い板材の上端や下端などの一部を左右方向に曲げて形成される。側板部15の上端面15aは、左右方向内側へ向かうにつれて下方へ傾斜する。側板部15の上端面15aは、左右方向内側の端縁に100°以下の角度の角部17を備える。本実施の形態では、上端面15aの左右方向内側の端縁が板材の端縁であるので、角部17の角度が90°である。
【0024】
プレート部16は、クッションパッド20を介してサイドフレーム11,12が受ける着座者からの荷重を分散するための板状の部位である。プレート部16は、フロントフレーム13と一体成形される。後述するメイン部21とサイド部22,23との境界である仮想線Aで示した部分よりも左右方向外側がプレート部16であり、仮想線A間がフロントフレーム13である。
【0025】
プレート部16は、左右方向内側の端縁16aが後方へ向かうにつれて左右方向外側へ傾斜する。また、プレート部16は、後端部が側板部15に固定され、その固定部分を支点に前端部を上下可能に構成される。これにより、クッションパッド20の前端側を上下することで、シートクッション2への座り心地が調整される。
【0026】
プレート部16は、側板部15の上端面15aの上方に配置される上板部18と、上板部18の左右方向内側に連なって仮想線Aまで形成される傾斜板部19とを備える。上板部18は、板厚方向を上下方向に向けて配置される略平板上の部位である。傾斜板部19は、上板部18から左右方向内側(仮想線A)へ向かうにつれて下方へ傾斜する部位である。上板部18と傾斜板部19とは滑らかな曲面で連なり、上板部18と傾斜板部19との角部の角度は約120°に設定される。
【0027】
側板部15の上端面15aの左右方向寸法は、上板部18の左右方向寸法と比べて小さく設定される。また、上端面15aの角部17の角度が90°であるのに対し、上板部18と傾斜板部19とによる角度が約120°である。これらにより、着座時に着座者の臀部が間に位置する側板部15の間隔を確保しつつ、着座者の大腿部を側方から支持する側板部15の面積を広くできる。その結果、臀部のソフト感と大腿部のサポート感とを両立できる。
【0028】
クッションパッド20は、所定の弾力を有するクッション材である。クッションパッド20の裏面には、不織布などから構成される補強材(図示せず)が一体化される。この補強材によりクッションパッド20の裏面が補強されて、クッションフレーム10との擦れ合いによるクッションパッド20の摩耗を抑制できる。
【0029】
クッションパッド20は、左右方向中央に配置されるメイン部21と、メイン部21の左右方向両側に連なるサイド部22,23とを備える。メイン部21は、2本の仮想線A間の部位であり、主に着座者の臀部や大腿部を下方から支持する。メイン部21は、フロントフレーム13やリアフレーム14、それらに架け渡されるばね(図示せず)によって下方から支持される。メイン部21は、モールド成形された軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成される。
【0030】
サイド部22,23は、臀部や大腿部を側方から支持して着座者の横揺れを抑制する部位である。サイド部22は、左側の仮想線Aより左側の部位であり、メイン部21の左側に配置されて、サイドフレーム11に下方から支持される。サイド部23は、右側の仮想線Aより右側の部位であり、メイン部21の右側に配置されて、サイドフレーム12に下方から支持される。
【0031】
サイド部22は、モールド成形された軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成される。サイド部22は、メイン部21と一体成形される。サイド部23は、モールド成形された軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されるサイド本体24と、サイド本体24よりも高硬度の高硬度材25とを備える。サイド本体24は、メイン部21と一体成形される。
【0032】
高硬度材25は、軟質ポリウレタンフォームの製造工程で生じる端材等を粉砕・接着して形成されたチップウレタンから構成される。サイド本体24や高硬度材25がいずれも軟質フォームなどの可撓性を有する軟質材料から構成される場合には、JIS K6400−2(2012年版)に規定されるD法に準拠して測定される25%圧縮時の力を、サイド本体24や高硬度材25の硬度として定義する。
【0033】
高硬度材25は、前後方向に延びて形成される直方体状の部材である。高硬度材25は、サイド部23の前後方向中央に配置される。詳しくは、サイド部23を前後方向に3等分したときの中央部分に収まるように高硬度材25が配置される。また、高硬度材25は、上面視において、前側の一部がプレート部16と重なる。即ち、プレート部16の端縁16aの前後両側に高硬度材25が配置される。
【0034】
次に
図3に加えて
図4を用いて、高硬度材25を有するサイド部23についてさらに詳しく説明する。
図4は
図2のIV−IV線におけるシートクッション2の切断部端面図である。
【0035】
図3及び
図4に示すように、サイド部23は、表面23aがメイン部21に対して上方へ張り出して形成される。サイド部23の裏面は、サイドフレーム12に接触する部位であり、サイド本体24の裏面と、高硬度材25の裏面25bとが滑らかに連なって形成される。
【0036】
サイド本体24の裏面は、サイドフレーム12の上端(側板部15の上端面15a、又は、プレート部16の上板部18)に載せられる載置面24cと、載置面24cの左右方向内側に連なる傾斜面24dとを備える。傾斜面24dは、載置面24cから離れるにつれて下方へ傾斜する面である。傾斜面24dは、クッションパッド20への無荷重状態において、プレート部16の傾斜板部19と一部が接触し、側板部15から離れる。傾斜面24dには、一部を表面23a側へ凹ませた凹部24eが形成される。
【0037】
高硬度材25は、サイド本体24の凹部24eに嵌められる。これにより、高硬度材25は、サイド部23の裏面に沿ってサイド部23の裏面側に、且つ、サイド本体24とサイドフレーム12との間に配置される。高硬度材25の裏面25bは、傾斜面24dと同様に左右方向内側へ向かうにつれて下方に傾斜し、傾斜面24dと略同一面を形成する。また、高硬度材25(凹部24e)は、上端面15aや上板部18よりも高い位置(上方)まで設けられる。
【0038】
高硬度材25は、裏面25bと反対側の面である受圧面25aを備える。受圧面25aは、サイド部23の表面23a側に面し、サイド本体24から圧力を受ける面である。受圧面25aは、前後方向視において左右方向内側および上方を向いて滑らかな平面状に形成される。なお、傾斜板部19と受圧面25aとは略平行に設定される。
【0039】
無荷重状態において、高硬度材25の厚さ(受圧面25aから裏面25bまでの距離)L1は、前後方向視(切断部端面)における受圧面25aの中央において、受圧面25aに垂直な部分のサイド本体24の厚さL2の1/2以下1/5以上の範囲に設定される。さらに、無荷重状態において、高硬度材25の厚さL1がサイド本体24の厚さL2の1/3以下1/4以上の範囲に設定されることが好ましい。
【0040】
次に、クッションパッド20の製造方法について説明する。まず、成形型(図示せず)の所定位置に補強材(図示せず)及び高硬度材25を磁石や装着ピンなどで固定する。次に、軟質フォームの発泡原液を成形型に注入して、発泡原液を成形型内で発泡・硬化させ、メイン部21、サイド部22及びサイド本体24を成形する。
【0041】
このとき、不織布製の補強材やチップウレタン製の高硬度材25の繊維間に発泡原液が侵入し、その状態で軟質フォームが硬化する。これにより、クッションパッド20の裏面に補強材が一体化されると共に、サイド本体24に高硬度材25が接合されて一体化される。高硬度材25の繊維間に発泡原液が侵入して硬化した部分(以下「硬化層」と称す)は、元々の高硬度材25よりも高硬度である。高硬度材25は、高硬度材25の元々の硬度に係わらず、硬化層が形成された状態の硬度がサイド本体24の硬度よりも高ければ良い。
【0042】
以上のようなシートクッション2によれば、サイド本体24とサイドフレーム12との間に、サイド本体24よりも高硬度の高硬度材25が配置される。そのため、サイド部23に着座者の身体の一部を押し付けたとき、サイド本体24とサイドフレーム12との間で高硬度材25が圧縮変形される。着座者側からサイドフレーム12へ向かってサイド本体24、高硬度材25の順に硬度が高く設定されるので、サイドフレーム12から着座者へ向かう反力を分散し易くできる。その結果、サイドフレーム12の硬さを着座者に感じさせ難くできる。
【0043】
さらに、サイド部23の裏面に沿ってサイド部23の裏面側に高硬度材25が配置されるので、高硬度材25と着座者との間のサイド本体24の厚さ(例えば厚さL2)を確保できる。そのため、サイド本体24によるソフト感を着座者に与えつつ、高硬度材25に起因した異物感を緩和できる。これらの結果、着座者が身体の一部を押し付けたときの異物感を緩和できる。
【0044】
サイド本体24の厚さL2に対して高硬度材25の厚さL1が小さい程、厚さL2を確保できるため、サイド本体24によるソフト感を向上しつつ、高硬度材25に起因した異物感を緩和し易くできる。しかし、厚さL1を確保できないために、サイドフレーム12から着座者へ向かう反力を高硬度材25で十分に分散できなくなる。
【0045】
高硬度材25の厚さL1をサイド本体24の厚さL2の1/2以下1/5以上の範囲に設定することで、サイド本体24によるソフト感や高硬度材25に起因した異物感の緩和と、高硬度材25による反力の分散性能とを両立できる。さらに、厚さL1を厚さL2の1/3以下1/4以上の範囲に設定することで、サイド本体24によるソフト感や高硬度材25に起因した異物感の緩和と、高硬度材25による反力の分散性能とのバランスをより良くできる。その結果、異物感の緩和性能を向上できる。
【0046】
なお、サイド部23の裏面に沿ってサイド部23の裏面側に高硬度材25が配置されるので、着座者がシートクッション2に正しい姿勢で着座しただけでは、着座者からサイドフレーム12へ荷重が付与され難い。そのため、高硬度材25によってサイド本体24による着座者の支持性能(横揺れ抑制性能)を変化し難くできる。
【0047】
着座者からサイドフレーム12へ比較的大きな荷重が付与されて高硬度材25が圧縮変形される状態(サイドフレーム12に起因した異物感が問題となり得る状態)としては、例えば、以下の3つの状態が挙げられる。1つ目は、シートクッション2に着座した着座者が姿勢を変えるとき等に、サイド部23に手をついて手で着座者の体重を支える場合である。2つ目は、外部から車両5内の荷物を取るときに、サイド部23に前脛部を載せる場合である。3つ目は、
図5に示すように、車両5に乗降口6から乗降するとき、シートクッション2の左右に着座者の身体の全体を向けて、大腿部31や臀部をサイド部23に載せる場合である。
【0048】
特に、車両5の乗降時には、サイド部23の前後方向中央に大腿部31が載せられ易い。また、サイド部23に手をつくときは、サイド部23の前後方向中央に手をつき易い。そのため、サイド部23及びサイドフレーム12の前後方向中央が大腿部31や手から比較的強い荷重を受け易い。比較的強い荷重を受け易いサイド部23の前後方向中央に高硬度材25が配置されるので、サイドフレーム12に起因した異物感を高硬度材25により効率的に緩和できる。
【0049】
また、特に降車時には、前方を向いていた大腿部31を左右方向外側へスライドさせて向けるので、サイド部23に左右方向外側への荷重が入力される。さらに、車両5内の床面の位置が地面から高いと、サイド部23上を臀部を滑らせて降車するので、サイド部23に左右方向外側への荷重が入力される。これらの場合、左右方向外側への荷重がサイド部23からサイドフレーム12に付与され易く、着座者がサイドフレーム12に起因した異物感を覚え易い。
【0050】
本実施の形態では、クッションパッド20への無荷重状態において、サイドフレーム12の左右方向内側に高硬度材25が配置される。そのため、
図5に示すように、サイド部23に左右方向外側への荷重が入力されたとき、大腿部31や臀部などとサイドフレーム12との間で高硬度材25を圧縮変形させることができる。その結果、シートクッション2に対して着座者の身体の一部を左右方向外側へスライドさせたとき(特に降車時)のサイドフレーム12に起因した異物感を緩和できる。
【0051】
さらに、サイドフレーム12の左右方向内側に高硬度材25が配置されるので、サイド部23への左右方向外側の荷重によって、サイドフレーム12の左右方向内側に高硬度材25が押し付けられる。そのため、大腿部31や臀部などとサイドフレーム12との間から高硬度材25をずれ難くできる。その結果、サイドフレーム12に起因した異物感を高硬度材25によって確実に緩和できる。
【0052】
なお、高硬度材25とサイド本体24とが一体化されているので、高硬度材25の周囲のサイド本体24も変形し難くなる、即ち、高硬度材25の周囲のサイド本体24も硬度が高くなる。そのため、上端面15aや上板部18の直上に高硬度材25は配置されていないが、上端面15aや上板部18の直上からサイド部23に着座者から荷重が付与されても、サイドフレーム12に起因した異物感を緩和できる。
【0053】
さらに、上端面15aや上板部18の左右方向内側に位置する高硬度材25は、上端面15aや上板部18よりも高い位置まで設けられると共に、サイド本体24は表面23aが左右方向内側へ向かって下方へ傾斜する。そのため、上端面15aや上板部18の直上のサイド本体24の厚さ(上下方向寸法)に比べて、高硬度材25の直上のサイド本体24の厚さ(上下方向寸法)が小さい。これにより、高硬度材25の直上のサイド本体24から着座者への反力が支配的になり易いので、上端面15aや上板部18に起因した異物感を緩和できる。
【0054】
シートクッション2は、右側に乗降口6が隣接するように車両5に搭載されるので、乗降時には、シートクッション2の右側のサイド部23に大腿部31や臀部が載せられる。乗降時に荷重が付与されるサイド部23のみに高硬度材25が配置されるので、サイド部22にも高硬度材25を配置する場合に比べて、高硬度材25の材料コストやクッションパッド20の加工コスト等を抑えつつ、特に乗降時の異物感を緩和できる。
【0055】
高硬度材25は可撓性を有する軟質材料から構成される。これにより、サイド部23に手をついたり前脛部を載せたりして高硬度材25に局所的な荷重が加わっても高硬度材25を破損し難くできる。その結果、高硬度材25の耐久性を向上できる。
【0056】
サイドフレーム12のプレート部16は、左右方向内側および上方を向く傾斜板部19を備えるので、サイド部23への荷重を傾斜板部19の上面全体で受けることができる。そのため、プレート部16に起因した異物感を着座者に感じさせ難くできる。さらに、プレート部16とサイド本体24との間に高硬度材25が配置されるので、プレート部16に起因した異物感を着座者により感じさせ難くできる。
【0057】
傾斜板部19と上板部18とのなす角度が120°以上なので、傾斜板部19と上板部18との角部に起因した線当たりの異物感を緩和できる。さらに、傾斜板部19と上板部18とのなす角度が140°以上であることが好ましい。この角度が大きい程、傾斜板部19と上板部18との角部に起因した線当たりの異物感の緩和性能を向上できる。
【0058】
また、傾斜板部19と高硬度材25の受圧面25aとが略平行に設定されるので、高硬度材25の局所的な変形を抑制できる。その結果、高硬度材25から着座者へ局所的な反力が付与されることを抑制でき、高硬度材25に起因した異物感を抑制できる。
【0059】
サイドフレーム12の側板部15は、上端面15aの左右方向内側に100°以下の角部17を備える。これにより、サイドフレーム11,12の側板部15の間隔を最大限確保して臀部のソフト感を向上させることができる。その一方で、角部17の角度が100°以下であるため、サイド部23から側板部15への荷重が角部17に集中し易く、角部17に起因した線当たりの異物感を着座者が感じ易くなる。
【0060】
本実施の形態では、角部17とサイド本体24との間に高硬度材25が配置されるので、サイド部23への荷重入力時にサイド本体24と角部17との間で高硬度材25が圧縮変形される。その結果、側板部15の間隔を確保して臀部のソフト感を向上させつつ、角部17に起因した線当たりの異物感を高硬度材25によって緩和できる。
【0061】
また、プレート部16の上面の全面を上端面としたとき、プレート部16の上端面の角部となる端縁16aも角度が90°である。この端縁16aの前後両側に高硬度材25が配置されるので、同様に、端縁16aに起因した線当たりの異物感を高硬度材25によって緩和できる。
【0062】
高硬度材25の受圧面25aは、前後方向視において左右方向内側および上方を向いて滑らかに形成されるので、着座者からサイドフレーム12へ向かう荷重を、滑らかな受圧面25aで受けることができる。これにより、高硬度材25に起因した局所的な異物感を着座者に覚えさせ難くできる。その結果、高硬度材25に起因した異物感の緩和性能を向上できる。
【0063】
なお、高硬度材25の受圧面25a側の角部は、滑らかな曲面から形成されることが好ましい。この場合には、高硬度材25の角部に起因した線当たりの異物感を緩和できる。さらに、高硬度材25の受圧面25a側の角部の角度が120°以上であることが好ましく、140°以上であることがより好ましい。この角度が大きい程、高硬度材25の角部に起因した線当たりの異物感の緩和性能を向上できる。
【0064】
次に
図6及び
図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、高硬度材25がサイドフレーム12(上端面15aや上板部18)の左右方向内側のみに位置する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、高硬度材46が上端面15aや上板部18の直上にも位置する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0065】
図6は第2実施の形態におけるシートクッション40の平面図である。
図7は
図6のVII−VII線におけるシートクッション40の切断部端面図である。なお、
図6ではクッションパッド41を透過した状態を図示し、クッションパッド41及び高硬度材46の外形を二点鎖線で図示している。
【0066】
図6に示すように、シートクッション40は、乗物用シート1(
図1参照)の座面を構成する部位である。シートクッション40は、骨組みを構成するクッションフレーム10と、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されるクッションパッド41と、クッションパッド41を覆う表皮材(図示せず)とを備える。
【0067】
クッションパッド41は、所定の弾力を有するクッション材である。クッションパッド41の裏面には、不織布などから構成される補強材(図示せず)が一体化される。この補強材によりクッションパッド41の裏面が補強されて、クッションフレーム10との擦れ合いによるクッションパッド41の摩耗を抑制できる。
【0068】
クッションパッド41は、左右方向中央に配置されるメイン部42と、メイン部42の左右方向両側に連なるサイド部43,44とを備える。メイン部42は、2本の仮想線A間の部位であり、主に着座者の臀部や大腿部を下方から支持する。メイン部42は、フロントフレーム13やリアフレーム14、それらに架け渡されるばね(図示せず)によって下方から支持される。メイン部42は、モールド成形された軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成される。
【0069】
サイド部43,44は、臀部や大腿部を側方から支持して着座者の横揺れを抑制する部位である。サイド部43は、左側の仮想線Aより左側の部位であり、メイン部42の左側に配置されて、サイドフレーム11に下方から支持される。サイド部44は、右側の仮想線Aより右側の部位であり、メイン部42の右側に配置されて、サイドフレーム12に下方から支持される。
【0070】
サイド部43は、モールド成形された軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成される。サイド部44は、モールド成形された軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されるサイド本体45と、サイド本体45よりも高硬度の高硬度材46とを備える。
【0071】
サイド部43及びサイド本体45の硬度は、同一であり、メイン部42の硬度よりも高く設定される。これにより、メイン部42による臀部のソフト感を確保しつつ、サイド部43,44による着座者の横揺れの抑制効果を向上できる。その結果、シートクッション40への座り心地を向上できる。
【0072】
メイン部42、サイド部43及びサイド本体45は、例えば、それぞれに対応した配合の発泡原液を成形型内の所定位置に注入し、発泡原液を発泡・硬化させることで形成される。このように、硬度が異なるメイン部42、サイド部43及びサイド本体45が一体成形される。なお、メイン部42とサイド部43とサイド本体45(サイド部44)とを別々に形成した後に、メイン部42とサイド部43とサイド本体45とを互いに接着剤等で接合しても良い。
【0073】
高硬度材46は、可撓性を有する軟質材料であるチップウレタンから構成される。高硬度材46は、前後方向に延びて形成される略直方体状の部材である。高硬度材46は、サイド部44の前後方向中央から後方にかけて配置される。詳しくは、サイド部44を前後方向に3等分したときの中央部分および後方部分に亘って高硬度材46が配置される。これにより、サイドフレーム12のうち、プレート部16がない部分の側板部15の略全長に亘って高硬度材46を配置できる。また、プレート部16の端縁16aの前後両側に高硬度材46が配置される。
【0074】
図7に示すように、サイド部43は、表面23aがメイン部42に対して上方へ張り出して形成される。サイド部43の裏面は、サイドフレーム12に接触する部位であり、サイド本体45の裏面と、高硬度材46の裏面46bとが滑らかに連なって形成される。
【0075】
サイド本体45の裏面は、サイドフレーム12の上端(側板部15の上端面15a、又は、プレート部16の上板部18)に載せられる載置面45cと、載置面45cの左右方向内側に連なる傾斜面45dとを備える。傾斜面45dは、載置面45cから離れるにつれて下方へ傾斜する面である。傾斜面45dは、クッションパッド41への無荷重状態において、プレート部16の傾斜板部19と一部が接触し、側板部15から離れる。載置面45c及び傾斜面45dには、一部を表面23a側へ凹ませた凹部45eが形成される。
【0076】
高硬度材46は、傾斜面45d側の凹部45eに嵌められる内側部47と、載置面45c側の凹部45eに嵌められる外側部48とを備える。高硬度材46は、サイド部44の裏面に沿ってサイド部44の裏面側に、且つ、サイド本体45とサイドフレーム12との間に配置される。
【0077】
内側部47及び外側部48は、それぞれ裏面46bと反対側の面である受圧面47a,48aを備える。受圧面47a,48aは、サイド部44の表面44a側に面し、サイド本体45から圧力を受ける面である。受圧面47aは、前後方向視において左右方向内側および上方を向いて滑らかな平面状に形成される。受圧面48aは、前後方向視において上方を向いて滑らかな平面状に形成される。受圧面47aと受圧面48aとは、互いに滑らかな曲面で連なる。
【0078】
無荷重状態において、内側部47の厚さ(受圧面47aから裏面46bまでの距離)L3は、前後方向視(切断部端面)における受圧面47aの中央において、受圧面47aに垂直なサイド本体45の厚さL4の1/2以下1/5以上の範囲に設定される。さらに、無荷重状態において、内側部47の厚さL3がサイド本体45の厚さL4の1/3以下1/4以上の範囲に設定されることが好ましい。
【0079】
無荷重状態において、外側部48の厚さ(受圧面48aから裏面46bまでの距離)L5は、前後方向視(切断部端面)における受圧面47aの中央において、受圧面47aに垂直なサイド本体45の厚さL6の1/2以下1/5以上の範囲に設定される。さらに、無荷重状態において、外側部48の厚さL5がサイド本体45の厚さL6の1/3以下1/4以上の範囲に設定されることが好ましい。
【0080】
以上のようなシートクッション40によれば、サイド本体45とサイドフレーム12との間に、サイド本体45よりも高硬度の高硬度材46が配置されると共に、サイド部44の裏面に沿ってサイド部44の裏面側に高硬度材46が配置される。そのため、着座者が身体の一部を押し付けたときに、サイド本体45とサイドフレーム12との間で高硬度材46を圧縮変形させつつ、高硬度材46と着座者との間のサイド本体45の厚さ(例えば
厚さL4,L6)を確保できる。その結果、第1実施の形態と同様に、着座者が身体の一部を押し付けたときの異物感を緩和できる。
【0081】
プレート部16がない部分の側板部15の略全長に亘って高硬度材46が配置されるので、側板部15の角部17がサイド部44に直接接触する部分の略全長に亘って高硬度材46を配置することができる。これにより、角部17に起因した線当たりの異物感を前後方向に亘って緩和できる。
【0082】
クッションパッド41への無荷重状態において、サイドフレーム12の左右方向内側に高硬度材46の内側部47が配置される。そのため、シートクッション40に対して大腿部などを左右方向外側へスライドさせて降車するときのサイドフレーム12に起因した異物感を内側部47によって確実に緩和できる。
【0083】
さらに、上端面15a及び上板部18の直上に外側部48が配置される。そのため、サイド部44に着座者が載る等して、上端面15a及び上板部18の直上からサイド部44に着座者から荷重が付与されるとき、サイド本体45と上端面15a及び上板部18との間で外側部48が圧縮変形される。そのため、着座者からサイド部44に上方からの荷重が付与されたときの、異物感の緩和性能を外側部48により向上できる。
【0084】
受圧面47a,48aがそれぞれ滑らかな平面状に形成されると共に、受圧面47aと受圧面48aとが滑らかな曲面で連なるので、高硬度材46に起因した局所的な異物感を着座者に覚えさせ難くできる。その結果、異物感の緩和性能を向上できる。特に、受圧面47a,48aがそれぞれ滑らかな平面状なので、受圧面47aと受圧面48aとの境界(角部)における滑らかな曲面以外に、荷重が集中する箇所をなくすことができる。その結果、異物感の緩和性能をより向上できる。
【0085】
さらに、受圧面47aと受圧面48aとの角部の角度を120°以上に設定することが好ましく、140°以上に設定することがより好ましい。この角度が大きい程、受圧面47aと受圧面48aとの角部に起因した線当たりの異物感の緩和性能を向上できる。
【0086】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。上記各実施の形態で挙げた形状や素材は一例であり、他の形状や素材を採用することは当然可能である。例えば、高硬度材25,46を上端面15aや上板部18の直上のみに配置しても良い。
【0087】
上記各実施の形態では、自動車等の車両5に搭載される乗物用シート1について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。自動車以外の車両(例えば鉄道車両)や船舶、航空機等の乗物に搭載される座席に乗物用シート1を適用することは当然可能である。
【0088】
上記各実施の形態では、メイン部21,42、サイド部22,43及びサイド本体24,45が軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。3次元的に絡み合う複数の合成樹脂製繊維で構成される立体網状体、固綿等の繊維体、ゴム状弾性体などからメイン部21,42、サイド部22,43及びサイド本体24,45を構成しても良い。
【0089】
上記各実施の形態では、サイド本体24,45よりも高硬度のチップウレタンから高硬度材25,46が構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。高硬度材25,46は、サイド本体24,45よりも高硬度であれば良く、例えば、チップウレタン以外の軟質フォームや、3次元的に絡み合う複数の合成樹脂製繊維で構成される立体網状体、固綿等の繊維体、ゴム状弾性体などの、可撓性を有する軟質材料から構成しても良い。また、硬質フォームや、ビーズ法発泡ポリプロピレンからなる発泡体、サイドフレーム11,12よりも低硬度の樹脂成形品などの、可撓性を有しない硬質材料から構成しても良い。
【0090】
また、高硬度材25,46を、受圧面25a,47a,48aから裏面25b,46bへ向かうにつれて順に高硬度となる複層に形成しても良い。これにより、サイドフレーム12に起因した硬さを着座者により感じさせ難くしつつ、サイド部23,44の表面側のソフト感を確保できる。その結果、サイドフレーム12や高硬度材25,46に起因した異物感をより一層緩和できる。
【0091】
上記各実施の形態では、右側(乗降口6側)のサイド部23,44のみに高硬度材25,46を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。シートクッション2,40の左側に乗降口6が隣接する場合には、左側のサイド部22,43のみに高硬度材25,46を設ければ良い。また、乗降口6に関係なく、左右のサイド部22,23,43,44の片方または両方に高硬度材25,46を設けても良い。