(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの内側面には、タイヤの空気圧を一定に保持するために空気透過抑制層としてインナーライナーが設けられている。インナーライナーは、一般に、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムなどの気体が透過しにくいゴム層で構成されているが、タイヤの軽量化のため、薄肉化が可能な樹脂フィルムの使用が検討されている。
【0003】
耐空気透過性樹脂フィルムとしては、ゴム成分と熱可塑性樹脂とを溶融混練し、動的架橋させることにより得られ、熱可塑性樹脂を連続相(マトリックス相)とし、ゴム成分を分散相(ドメイン相)とした海島構造を有する熱可塑性エラストマー組成物(Thermoplastic Vulcanizates;TPV)が用いられている。
【0004】
従来から、耐空気透過性フィルムに用いられる熱可塑性エラストマー組成物としては、加工性、柔軟性、ゴムとの接着性に優れたものが求められている。柔軟性を改善する方法としては、ゴム成分の配合割合を大きくすることが考えられるが、ゴム成分の配合割合を大きくした場合、加工性が悪化するため、可塑剤を添加する必要があった。しかしながら、可塑剤を添加すると、耐空気透過性が悪化するという問題があった。
【0005】
少ない可塑剤量で、連続相中に、ゴム成分を多量配合する方法として、例えば、特許文献1に、ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の動的架橋熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、予めポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)をポリアミド樹脂(A)に溶融混練することにより、ポリアミド樹脂を変性し、ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)との反応を抑制し、ポリアミド樹脂用可塑剤を減量しながらハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを多量配合することが開示されている(請求項1、段落0013等)。
【0006】
しかしながら、先行文献1に記載の発明は、ポリアミド樹脂の低温耐久性を改善することを課題とするものであり、加工性、柔軟性、及びゴムとの接着性についての記載はなく、これらの特性についてさらなる改善の余地があった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を連続相(マトリックス相)とし、ゴム成分を分散相(ドメイン相)とした海島構造を持つものである。
【0016】
連続相を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体などのポリアミド系樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポチエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などのポリエステル系樹脂;ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体などのポリニトリル系樹脂;酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどのセルロース系樹脂;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系樹脂;芳香族ポリイミド(PI)などのイミド系樹脂;エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられ、これらはそれぞれ単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
分散相を構成するゴム成分としては、ブチルゴム(IIR)が用いられる。また、ゴム成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のゴム成分が含まれていてもよい。このようなゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、水素化スチレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴム及びその水素添加ゴム;エチレンプロピレンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンブチレンゴム、アクリルゴム(ACM)などのオレフィン系ゴム;クロロプレンゴム(CR)などの含ハロゲンゴム;その他、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリスルフィドゴムなどが挙げられる。
【0018】
分散相を構成するゴム成分におけるブチルゴム(IIR)の含有割合は、80質量%以上100質量%未満であることが好ましく、90質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。
【0019】
上記熱可塑性樹脂とゴム成分との含有割合(充填剤などの含有成分を除いたポリマー成分としての比率)は、熱可塑性樹脂の種類によっても変わり、特に限定されないが、質量比(熱可塑性樹脂/ゴム成分)で、通常は60/40〜25/75程度が好ましく、より好ましくは50/50〜30/70である。
【0020】
分散相を構成するゴム成分は、ブチルゴム100質量部に対して、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)を1〜10質量部含有するものであることが好ましく、3〜10質量部含有するものであることがより好ましく、5〜10質量部含有するものであることがさらに好ましい。クロロスルホン化ポリエチレンは、熱可塑性樹脂とゴム成分の溶融混練前に予めブチルゴムと混練していてもよく、あるいはまた、熱可塑性樹脂とゴム成分の溶融混練中に添加してもよい。
【0021】
分散相を構成するゴム成分には、架橋剤、亜鉛華、ステアリン酸、充填剤、軟化剤、老化防止剤など、ゴム組成物に一般に添加される各種含有成分を適宜添加することができる。すなわち、分散相を構成するゴム成分は、ブチルゴムに各種含有成分を添加したゴム組成物からなるものであってもよい。
【0022】
ゴム成分を架橋するための架橋剤としては、硫黄や硫黄含有化合物等などの加硫剤、加硫促進剤の他、フェノール系樹脂などが挙げられる。耐熱性の点からは、フェノール系樹脂を用いることが好ましい。フェノール系樹脂としては、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる樹脂が挙げられ、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合体又は臭素化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合体であることがより好ましい。
【0023】
架橋剤の含有量は、ゴム成分を適切に架橋できれば特に限定されず、その種類によっても異なるが、目安としては、ブチルゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部程度である。
【0024】
なお、架橋剤としての硫黄は必須ではなく、架橋系としては、加硫促進剤やフェノール系樹脂のみを配合してもよい。本実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物をタイヤ用耐空気透過性フィルムとして用いる場合、被貼り合わせ部材であるゴム部材やゴム層の加硫成形時に共架橋させることが好ましいが、硫黄を配合すると、耐空気透過性フィルムを作製する際の温度によりゴム成分の架橋が進みすぎてしまい、上記のような共架橋が難しくなるためである。
【0025】
なお、上記ゴム成分に任意に添加される各種含有成分は、予めゴム成分に添加していてもよく、あるいはまた、熱可塑性樹脂とゴム成分の溶融混練中に添加してもよい。特に、加硫促進剤などの加硫系の含有成分は、ゴム成分がなるべく架橋されないように、溶融混練の最終段階で添加することが好ましい。上記溶融混練の段階で動的架橋してもよいが、ゴム成分が架橋されすぎると、被貼り付け部材の加硫成形時に上記のように共架橋させることが難しくなるので、ゴム成分があまり架橋されないように加熱時間及び温度を設定することが好ましい。
【0026】
また、ゴム成分には可塑剤は実質含まないことが好ましい。ここで、「実質含まない」とは、その含有によって有意な作用効果が認められない範囲の含有量であることをいい、可塑剤の種類等によっても異なるが、通常は、ブチルゴム100質量部に対して1質量部未満であり、0.1質量部未満であることが好ましい。
【0027】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルグリコールアジペート、ジブチルカルビトールアジペート、ジオクチルセバケート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシジエチルホスフェート、ブチルベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂とゴム成分とともに、相溶化剤を混合してなるものであってもよい。相溶化剤の配合により、熱可塑性樹脂とゴム成分との界面張力を低下させて、海島構造の分散相を細粒化することができる。相溶化剤としては、一実施形態として、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体(即ち、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、及び/又は、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体)を用いてもよい。該相溶化剤の含有量は特に限定されないが、ブチルゴム100質量部に対して0.5〜10質量部とすることができる。
【0029】
また本実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物を、タイヤ用耐空気透過性フィルムに適用する場合、接着性向上剤としてレゾルシン系ホルムアルデヒド縮合体を含有させてもよい。該接着性向上剤は、タイヤにおいて耐空気透過性フィルムと隣接するゴム部材との接着性を向上するために配合されるものである。レゾルシン系ホルムアルデヒド縮合体としては、レゾルシンを少なくとも一部に含むフェノール類化合物と、ホルムアルデヒドとが縮合して得られた化合物が用いられる。好ましくは、レゾルシン−アルキルフェノール−ホルムアルデヒド共縮合体または改質レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を用いることである。改質レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂としては、骨格をなすフェノール化合物の少なくとも一部に不飽和基含有モノマーが結合して、アリールアルキル基(アラルキル基)の側鎖またはグラフト状のポリマー鎖などを形成したもの、または、不飽和基含有モノマーの重合物もしくはこれとレゾルシンとの共重合物などが混在するものなどが挙げられる。また、部分的にホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物を含むものであってもよい。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、インデン、及びビニルトルエンから選ばれた少なくとも1つ(特に好ましくはスチレン)を、レゾルシン及びホルムアルデヒドと共存させて得られた反応生成物であってもよく、また、ブチルアルデヒドまたはその他のアルデヒドを、少量混合して得られた反応生成物であってもよい。レゾルシン系ホルムアルデヒド縮合体の含有量は特に限定されないが、ブチルゴム100質量部に対して1〜10質量部とすることができる。
【0030】
実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物は、これに限定されないが、熱可塑性樹脂とゴム成分を架橋剤とともに溶融混練し、該架橋剤でゴムを動的架橋させることで得ることができる。このようにゴム成分を動的架橋させることにより、分散相の粒子サイズを小さくして柔軟性を向上させることができる。架橋剤などの含有成分は、上記混練中に添加してもよく、混練前に予め混合しておいてもよい。混練に使用する混練機としては、特に限定されず、例えば、二軸押出機、スクリュー押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。溶融混練条件は、特に限定されないが、例えば、200〜250℃において、回転数100〜300rpmで、1〜3分間混練することができる。熱可塑性エラストマー組成物の分散相の粒子サイズは、特に限定されないが、平均粒子径で0.1〜2μmであるのが好ましく、0.1〜1μmであるのがより好ましい。
【0031】
一実施形態として、ゴム成分に架橋剤とCSMを添加してゴムマスターバッチのペレットを作製し、該ペレットを、熱可塑性樹脂、及び相溶化剤とともに混練機に投入し、溶融混練して動的架橋することにより熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得てもよい。また、熱可塑性樹脂、ゴム成分、架橋剤、CSM及び相溶化剤を事前混合せずに混練機に投入し、溶融混練して動的架橋することにより熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得てもよい。上記接着性向上剤は、ゴム成分と同時に添加してもよく、動的架橋前でも後でもよいが、架橋剤としてフェノール系樹脂を添加する場合、接着性向上剤は動的架橋後に添加することが好ましい。この場合の溶融混練条件は、特に限定されないが、例えば、200〜250℃において、回転数100〜300rpmで、1〜3分間混練することが好ましい。
【0032】
このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットをフィルム化することにより、本発明の実施形態に係る耐空気透過性フィルムが得られる。フィルム化する方法は特に限定されず、例えば押し出し成形やカレンダー成形など、通常の熱可塑性樹脂をフィルム化する方法を用いることができる。
【0033】
耐空気透過性フィルムの厚さは、用途によるので特に限定されないが、例えばタイヤ用の場合、0.02〜1.0mmとすることができ、好ましくは0.05〜0.5mmであり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。
【0034】
耐空気透過性フィルムの空気透過性も、用途によるので特に限定されないが、タイヤ用の場合、JIS K7126−1「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に準じて、試験気体:空気、試験温度:80℃にて測定した値が、少なくともブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムなどのゴム層で構成されたインナーライナーと同程度の耐空気透過性であることが好ましく、5.0×10
13fm
2/Pa・s以下であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムは、例えば、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどの重荷重用タイヤを含む各種の自動車用タイヤ、また自転車を含む二輪車用タイヤなど、各種の空気入りタイヤに適用することができる。
【0036】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤ1の断面図である。図示するように、空気入りタイヤ1は、リム組みされる一対のビード部2と、該ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3と、該一対のサイドウォール部3間に設けられた路面に接地するトレッド部4とから構成される。一対のビード部2には、それぞれリング状のビードコア5が埋設されている。有機繊維コードを用いたカーカスプライ6が、ビードコア5の周りを折り返して係止されるとともに、左右のビード部2間に架け渡して設けられている。また、カーカスプライ6のトレッド部4における外周側には、スチールコードやアラミド繊維などの剛直なタイヤコードを用いた2枚のベルトプライからなるベルト7が設けられている。
【0037】
カーカスプライ6の内側にはタイヤ内面の全体にわたってインナーライナー8が設けられている。本実施形態では、このインナーライナー8として上記耐空気透過性フィルムが用いられている。インナーライナー8は、
図1中の拡大図に示すように、タイヤ内面側のゴム層であるカーカスプライ6の内面に貼り合わされており、より詳細には、カーカスプライ6のコードを被覆するトッピングゴム層の内面に貼り合わされている。
【0038】
本実施形態に係る空気入りタイヤは、カーカスプライ6のコードがインナーライナー8に喰い込むことを防止するために、カーカスプライ6とインナーライナー8との層間の一部に選択的にタイゴム層が配されるものであってもよい。
【0039】
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムを用いた空気入りタイヤの製造方法としては、例えば、耐空気透過性フィルムをインナーライナーとして用いて、成形ドラムの外周にインナーライナーを筒状に装着し、その上にカーカスプライを貼り付け、更にベルト、トレッドゴム及びサイドウォールゴムなどの各タイヤ部材を貼り重ね、インフレートすることによりグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)が作製され、該グリーンタイヤをモールド内で加硫成形することにより、空気入りタイヤが得られる。なお、
図1に示す例では、耐空気透過性フィルムをカーカスプライの内面側に設けたが、タイヤ内部からの空気の透過を防止して、タイヤの空気圧を保持することができる態様、即ち内圧保持のための空気透過抑制層として設けられるものであれば、例えば、カーカスプライの外面側などの種々の位置に設けることができ、特に限定されない。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
表1に示す配合(質量部)に従い、予め熱可塑性樹脂と相溶化剤とを乾式混合したものと、ゴム成分、クロロスルホン化ポリエチレン、及び接着性向上剤を除く他の含有成分を乾式混合したものとを、220℃の温度で2軸押出機(プラスチック工業研究所)を用いて溶融混練し、動的架橋させて、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られたペレットを、接着性向上剤とともに再度2軸押出機に投入し、220℃の温度で混練した後、単軸押出機を用いて幅14cm、厚さ0.2mmに成型し、フィルムのサンプルを得た。
【0042】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
〈熱可塑性エラストマー組成物〉
・IIR:エクソンモービルケミカル社製「IIR268」
・ナイロン6/66:DSM社製「Novamid 2020J」
・クロロスルホン化ポリエチレン1:東ソー(株)製「TS−320」
・クロロスルホン化ポリエチレン2:東ソー(株)製「TS−530」
・クロロプレンゴム:東ソー(株)製「B−15」
・可塑剤:大八化学工業(株)製「BM−4」
・架橋剤:田岡化学工業(株)製「タッキロール250−III」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・相溶化剤:住友化学(株)製「ボンドファーストE」
・接着性向上剤:田岡化学工業(株)製「スミカノール620」
【0043】
〈接着性評価用のゴム組成物〉
・NR:RSS#3
・SBR:JSR(株)製「JSR1502」
・カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製「ショウワブラックN−330T」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS−P」
・メラミン誘導体:ヘキサメトキシメチルメラミン、日本サイテックインダストリーズ(株)製「サイレッツ963L」
【0044】
得られた熱可塑性エラストマー組成物からなる各サンプルについて、加工性(溶融粘度)、空気透過性、柔軟性(10%引張応力)、及び接着性を評価した。各評価方法は次の通りである。
【0045】
・加工性(溶融粘度):(株)安田精機製作所製のキャピラリーレオメーターを用いて、230℃、せん断速度800(1/s)での溶融粘度を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、溶融粘度が高く、加工性に劣ることを示す。
【0046】
・空気透過性:JIS K7126−1「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に準じて、試験気体:空気、試験温度:80℃にて測定される値である。この値が小さいほど、耐空気透過性に優れる。
【0047】
・柔軟性(10%引張応力):JIS K6251の引張試験に準じて測定した。ダンベル形状は3号形(但し、厚みは200μm)とし、500mm/分の速度で引っ張った際の10%伸びた状態の応力を測定し、フィルムの押出方向の中央値を求めた。この値が小さいほど、柔軟性に優れる。
【0048】
・接着性:表2に記載の配合(質量部)に従い作製された、厚み0.3mmの接着評価用のゴム組成物を、タイゴム層として、カーカスプライの未加硫のトッピングゴム層の表面に貼り付けた。厚み0.2mmの樹脂フィルムからなる各サンプルを、カーカスプライに貼り付けたタイゴム層と重ね合わせ、プレス温度を160℃、プレス時間を20分間、プレス圧力を30kg/cm
2とし、プレス加硫を実施して、接着一体化させた。得られた加硫接着体を25mm幅の短冊状に切り出し、50mm/minの剥離速度で180°剥離試験を行った。8cm間の平均値を接着強度とした。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
評価結果は、表1に示す通りであり、各実施例及び比較例の空気透過性の値は、5.0×10
13fm
2/Pa・s以下であり、優れた耐空気透過性を有することが確認された。また、クロロスルホン化ポリエチレンを用いた実施例1〜3は、比較例1〜4と比較して、加工性、柔軟性、及び接着性が向上した。
【0052】
比較例1と比較例2との対比より、可塑剤を含有することにより、耐空気透過性、及び接着性が悪化することが認められた。
【0053】
また、比較例1と比較例3,4との対比より、クロロスルホン化ポリエチレンとは異なるハロゲン化ゴムのクロロプレンを用いた場合は、接着性が悪化することが認められた。