特許第6909181号(P6909181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909181
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】絶縁被覆金属粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20210715BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   B22F1/02 D
   H05K9/00 W
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-106893(P2018-106893)
(22)【出願日】2018年6月4日
(65)【公開番号】特開2019-210507(P2019-210507A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】福井 隆太
(72)【発明者】
【氏名】深澤 元晴
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−103719(JP,A)
【文献】 特開2019−178402(JP,A)
【文献】 特開平04−160102(JP,A)
【文献】 特開昭62−277703(JP,A)
【文献】 特開2006−237153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiAlおよびFeを含む鉄系合金粒子であって、表面に絶縁層を有し、前記絶縁層は、Si酸化物およびAl酸化物の少なくとも一種とFe酸化物を含み、各濃度から数式1にて示される比が2以上であり、平均粒子径が7〜29μmかつ平均円形度が0.94以上であって、前記絶縁層の厚みが20〜171nm(但し、43nm以下は除く)である絶縁被覆粒子。
(数式1)
(Al酸化物濃度+Si酸化物濃度)/(Fe酸化物濃度)
なお、式中のAl酸化物濃度、Si酸化物濃度、およびFe酸化物濃度はX線光電子分光分析法により求めたAl酸化物、Si酸化物、Fe酸化物の和を100atom%とした際の各濃度(単位:atom%)である。
【請求項2】
前記絶縁層の厚みが122〜171nmである請求項1に記載の絶縁被覆粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽能を有する絶縁被覆金属粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・高速処理化に伴い、電磁ノイズ対策の重要度が増している。従来よりノイズ対策として、電磁波遮蔽材を含む電磁波遮蔽シートをノイズ源に貼り付けるという方法がとられてきた。電磁波遮蔽材としては、その電磁波吸収特性の高さから軟磁性金属粒子が用いられる。加えて、回路を伝送する電気信号品質の劣化を防止し、渦電流損による反射率の増大を防ぐ観点から、軟磁性金属粒子には絶縁性の被覆がなされており、その絶縁層には高い電気抵抗と高い密着性、薄さといった特性が要求される。
【0003】
この電磁波遮蔽シートを利用する方法ではノイズの低減に一定の効果が見込めるものの、シートを素子が実装された回路基板上に直接設置する必要があり、特に電子機器の小型・薄型化が進む昨今、利用には電子機器設計の制約を受けることがしばしばあった。
【0004】
これに対し、電磁波遮蔽材を混合した樹脂の利用、すなわち電子機器筐体内面に電磁波遮蔽材を混合した樹脂を塗布する、素子自体を電磁波遮蔽材を混合した樹脂で封止するという技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術においては、複数の磁性金属粒子がセラミックスによって囲まれた複合磁性粒子を、電磁波吸収材として樹脂に分散し用いることが提案されている。この方法では個々の磁性金属粒子に直接絶縁性を付与していないため、複合磁性粒子の絶縁性を十分に確保するためにはセラミックスを多く含ませる必要があり、結果的に絶縁性と電磁波遮蔽特性を高水準で両立することが難しい。また、得られる複合磁性粒子の形状が複雑化することにより、樹脂混合物の流動性の低下が懸念される。
【0005】
電磁波遮蔽能、絶縁性、樹脂への充填性を高い水準で両立する方針として、球形度の高い電磁波遮蔽材粒子を用い、各粒子に絶縁性を付与することが考えられる。なお、本明細書中における充填性とは、樹脂混合物中の電磁波遮蔽材粒子の充填率が高い場合にも高い流動性を維持できる性質を意味しており、充填性の高さはすなわち樹脂混合物の流動性の高さを意味する。樹脂混合物の流動性の低さは、複雑あるいは微細な形状への成型に不利となる。各粒子に絶縁性を付与する方法として、例えば特許文献2では、軟磁性金属粉末の表面にリン酸塩皮膜を形成する方法が、特許文献3では鉄系粉末表面にアルカリハロゲン化合物を含有する絶縁層と潤滑用ワックスコーティング層を設ける方法が、それぞれ開示されている。しかしながらこれらの方法では、絶縁皮膜中にリン酸やアルカリ金属等のイオン性成分が残留しており、イオン性成分の流出によって基板の配線や素子などを腐食させる可能性があった。また、絶縁皮膜の抵抗も、用途によっては不十分であった。特許文献4では、噴霧熱分解法を用いて金属粒子の表面を誘電体により被覆することが提案されているが、金属粒子と誘電体の界面での剥離の恐れがある。上記の通り従来技術では、イオン性成分流出のリスクが低く、充分な抵抗を有し、かつ皮膜の剥離の可能性が低い電磁波遮蔽材粒子を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−358493号公報
【特許文献2】特開2002−305395号公報
【特許文献3】特開2014−141744号公報
【特許文献4】特開2001−338813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電磁波遮蔽能を有しかつ円形度の高い軟磁性金属粒子に対し、剥離しにくい絶縁層を設けることで、絶縁性と樹脂への充填性を高い水準で両立した絶縁被覆金属粒子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
SiおよびAlの少なくとも一種とFeを含む鉄系合金粒子であって、表面に絶縁層を有し、前記絶縁層は、Si酸化物およびAl酸化物の少なくとも一種とFe酸化物を含み、各濃度から数式1にて示される比が1以上であり、平均粒子径が5〜50μmかつ平均円形度が0.90以上であって、前記絶縁層の厚みが20〜200nmである絶縁被覆粒子である。
(数式1)
(Al酸化物濃度+Si酸化物濃度)/(Fe酸化物濃度)
なお、式中のAl酸化物濃度、Si酸化物濃度、およびFe酸化物濃度はX線光電子分光分析法により求めたAl酸化物、Si酸化物、Fe酸化物の和を100atom%とした際の各濃度(単位:atom%)である。
【0009】
本発明によれば、絶縁性と樹脂への充填性を高い水準で両立可能な、電磁波遮蔽能を有する絶縁被覆金属粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られた絶縁被覆金属粒子の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した写真である。
図2図2は、実施例1で得られた絶縁被覆金属粒子の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した写真であり、図1よりも高倍率である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の絶縁被覆金属粒子は、軟磁気特性を有する鉄系合金と、その表面に合金を構成する元素を含む絶縁層を有する。鉄系合金中に含まれる元素の一部を酸化して酸化物を形成し、その酸化物が鉄系合金粒子の表面を覆う絶縁層となる形態を持たせることにより、外から絶縁性物質を付着させて絶縁層を形成する方法に比べて、均一な絶縁層を設けることができる。軟磁気特性を有する鉄系合金としては、Fe−Ni−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Si合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−B合金などを用いることができる。これらの鉄系合金はいずれも飽和磁束密度や透磁率が大きく、保磁力が小さいため、軟磁性金属材料として有用である。これらの合金中に含まれるAlやSiが、表面で酸化され酸化物となって、鉄の酸化物に比べて高い絶縁性を有する絶縁層を形成する。特にFe−Si−Al合金が好ましく、また特に透磁率の高いSi:4〜13質量%、Al:4〜7質量%、残部はFeおよび不可避不純物からなる組成であることがより好ましい。例えばFe−Si−Al合金を空気中で加熱処理した場合、表面にはAl酸化物を多く含む絶縁層が形成される。
【0012】
本発明の絶縁被覆金属粒子の表面に設けられる絶縁層の厚みは20から200nmである。絶縁層が薄すぎれば十分な絶縁性を確保できず、過剰に厚くしようとすると絶縁層の剥離が発生して絶縁性を損ねるリスクが高まる。より好ましくは30〜150nmである。
【0013】
絶縁層の形成方法としては、酸化雰囲気下での熱処理が好ましい。酸化雰囲気下にて材料を高温にさらすことにより、表面での酸化物形成と、それに伴い表面から失われる酸化物構成元素および酸素の粒子内拡散を促進する。加えて、高温にさらすことで磁気的な歪みを解放することができ、より磁気特性を高めることができる。熱処理に用いる装置としては電気炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャー炉などがあげられる。適する熱処理の条件は材料により異なるが、例えばFe−Si−Al合金の場合、加熱温度は600〜900℃、加熱時間は15〜300分が好ましい。温度が低ければ表面の絶縁層が十分成長せず、粒子の絶縁性が不十分になる。温度が高い場合には絶縁層の剥離が生じやすく、加えて粒子表面の凹凸が顕著になり、樹脂混合物の流動性が低下する。また時間が短くても絶縁皮膜が十分成長せず、長い場合には過剰に絶縁層が成長して剥離を生じるリスクが高まると同時に粒子表面の凹凸も顕著になる。加えて、加熱時間を長く取ることは生産性の低下を招く。
【0014】
本発明の絶縁被覆金属粒子の粒径は5〜50μmである。粒径が5μm未満および50μmを超える場合には樹脂と混合した際の流動性が低下する。より好ましくは7〜20μmである。
【0015】
本発明の絶縁被覆金属粒子の形状は球状であり、その球形度は0.90以上、より好ましくは0.95以上である。球形度が0.90未満である場合には、樹脂と混合した際の転がり抵抗の増大によって流動性が低下し、成型加工性に難が生じる。
【0016】
本発明の絶縁被覆金属粒子の原料となる軟磁性金属粒子は、アトマイズ法により製造することができる。アトマイズ法により得られる粒子は平均円形度が高いため、樹脂への充填量を高めた場合にも樹脂混合物の流動性を損ねにくく、良好な成形性を示す。特に、アルゴン等の不活性ガスを用いたガスアトマイズ法により得られる粒子は平均円形度が高いため、本用途に好適である。また絶縁被覆金属粒子は、粒径分布を調整することで樹脂への充填性を高めることができる。
【0017】
本発明の絶縁被覆金属粒子は、表面処理を施すことにより更に樹脂への充填性を高めることができる。表面処理剤としては、一般にシランカップリング剤が用いられるが、他にチタネートカップリング剤及びアルミネート系カップリング剤も用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0019】
[実施例1]
(絶縁被覆金属粒子の作製)
平均粒子径17μmガスアトマイズFe−Si−Al合金粉末(山陽特殊製鋼社製、合金名PST−S、粒度−32μm)を、440メッシュの篩に通して粗大粒子を除去した後、10cm角・深さ5cmのアルミナ製容器に250g秤量し、電気炉にて800℃で90分加熱し、冷却後にメノウ乳鉢で解砕して絶縁被覆金属粒子を得た。
【0020】
実施例及び比較例にて作製した絶縁被覆金属粒子の特性を、以下の方法で評価した。
[(Al酸化物濃度+Si酸化物濃度)/(Fe酸化物濃度)の算出]
試料をサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製の粉末測定用の試料ホルダーに、試料面が平らになるように充填し、X線光電子分光分析装置(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製、K−Alpha型)にて測定した。測定条件は、X線源としてモノクロメータ付きAl−Kα線を、帯電中和には低速電子と低速イオンの同軸照射型のデュアルビームを用い、検出角度90°、出力36W、測定領域は約400μm×200μm、パスエネルギーは50eV、データは0.1eV/step、50msecで取り込み、積算回数は5回、測定範囲についてはAl酸化物:65〜85eV、Si酸化物:95〜110eV、Fe酸化物:700〜740eVとした。
上記測定範囲にて得られたピークよりバックグラウンドを差し引いて算出されたAl−O、Si−O,Fe−Oの結合成分に由来のピーク面積(信号強度)を補正係数(相対感度係数、透過関数、運動エネルギー補正)で割り算し、補正後の面積の合計が100になるように計算して、Al酸化物、Si酸化物、Fe酸化物の各濃度(単位:atom%)を算出した。尚、補正係数(相対感度係数、透過関数、運動エネルギー補正)は、一般的に測定対象元素や測定装置に依存する。今回は、上記操作及び計算をサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製「K−Alpha型」に付属している解析ソフト「Thermo Advantage」にて行った。得られた値を用い、数式1に基づいて(Al酸化物濃度+Si酸化物濃度)/(Fe酸化物濃度)を計算した。結果、数式1にて示されるSi酸化物とAl酸化物の濃度の和と、Fe酸化物濃度との比は14となった。
【0021】
[平均粒子径]
平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、MT3300EXII)を用いて求めた。分散剤としてオクチルフェノキシポリエトキシエタノール(関東化学社製、トリトンX−100)0.5重量%を溶解した水に、絶縁被覆金属粒子を適量投入し、攪拌しながら循環器内蔵の超音波照射装置を用いて40Wの超音波を3分間照射した後測定を行った。体積分布において50%となる粒径を平均粒子径とした。結果、得られた絶縁被覆金属粒子の平均粒子径は19μmであった。
【0022】
[平均円形度]
セイシン企業社製粉体画像解析装置(PITA−1)を用いて測定を行った。試料をエタノールに分散させて、この液体を平面伸張流動セル内に流し、セル内を移動する絶縁被覆金属粒子の200個を、対物レンズにて画像として記録し、この記録画像及び数式2から平均円形度を算出した。数式2中、Sは撮影した記録画像の粒子投影図における面積、Lは粒子投影図の周囲長を表す。このようにして算出された粒子200個の平均値を絶縁被覆金属粒子の平均円形度とした。結果、得られた絶縁被覆金属粒子の平均円形度は0.94であった。
(数式2)
平均円形度=4πS/L
【0023】
[絶縁層の厚み]
被覆金属粒子粉体をエポキシ樹脂で包埋し、アルゴンイオンビーム断面作製装置で切断したあと、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7001F)にて切断面を観察して切断された被覆金属粒子を探し、観察倍率を100000倍として断面写真を得た。実際に得られた断面写真を図2に示す。得られた写真において、絶縁層外表面と内表面の輪郭に対して平行に引いた接線の間隔を、粒子1個に対して5箇所でランダムに読み取り、観察粒子の総数は20個として計100点の算術平均値を絶縁層の厚みとした。結果は表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の絶縁層の厚みは122nmであった。
【0024】
[絶縁性]
絶縁被覆金属粒子を25℃、湿度50RH%の環境に24時間静置し、10gを量りとって粉体抵抗測定システム(三菱化学アナリテック社製、MCP−PD51型とMCP−HT800型を組み合わせて使用)を用いて15.9MPaの圧力をかけながら、測定電圧250Vの条件にて体積抵抗率を測定した。測定結果は表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の体積抵抗率は4.2×1010Ω・cmであった。
【0025】
[絶縁層の剥離の有無]
絶縁被覆金属粒子をエポキシ樹脂で包埋し、アルゴンイオンビーム断面作製装置で切断したあと、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7001F)にて切断面を観察して切断された被覆金属粒子を探し、観察倍率を20000倍としてランダムに観察した100個の粒子のうち、絶縁層の剥離が見られた粒子の数を計測した。結果は表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子100個のうち、絶縁層の剥離が見られたものは3個であった。
【0026】
[樹脂混合物の粘度]
絶縁被覆金属粒子の樹脂への充填性を、樹脂混合物の粘度測定により評価した。粘度が低い樹脂混合物は流動性が高く、高充填した場合の複雑形状あるいは微細形状への成型に有利である。絶縁被覆金属粒子80質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER828)20質量部を秤量後、遊星式撹拌機(シンキー社製、あわとり練太郎AR−250)を用いて回転数2000rpmで3分混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製、MCR300)を用いて、プレート形状:円形平板25mmφ、試料厚み:1mm、温度:25±1℃、剪断速度:0.1s−1、の条件にて粘度を測定した。結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の樹脂混合物の粘度は、241Pa・sであった。
【0027】
[電磁波遮蔽能]
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER807)16質量部、4、4’−ジアミノジフェニルメタン(東京化成社製)4.7質量部を95℃で溶融させながら混合し、実施例1で得られた被覆金属粒子を79.3質量部加え、遊星式撹拌機(シンキー社製、あわとり練太郎AR−250)を用いて回転数2000rpmで混合した。予め加熱しておいたシリコーン製の13cm角・深さ2mmの型枠に上記混合物を流し込み、70℃で30分間静置して液面を平らにしたのち、真空加熱プレス機(井元製作所社製、IMC−1674−A型)を用いて、80℃・0.5MPaで30分間加熱プレスし、続いて80℃・1.0MPaで30分間加熱プレスし、さらに150℃・3MPaで1時間加熱プレスすることで硬化した。硬化後のサンプルを測定用サンプルサイズ(120mm×120mm×2mm)に加工して樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物を用いて、測定周波数は0.1〜1000MHz、発信部と受信部の距離は10mm、試験室の温湿度は20℃、50%RHとして、KEC法により電磁波遮蔽能を評価した。結果を表2に示す。
【0028】
[実施例2]
原料に平均粒子径27μmのガスアトマイズFe−Si−Al合金粉末(山陽特殊製鋼社製、PST−S、−106μm)を用い、表1に示す加熱温度、加熱時間で処理した以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0029】
[実施例3]
表1に示す加熱温度、加熱時間で処理した以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0030】
[実施例4]
平均粒径9μmの水アトマイズFe−Si−Al合金粉末(エプソンアトミックス社製、SENDUST ALLOY T、PF−18F)を、旋回気流式分級機(日清エンジニアリング社製、エアロファインクラシファイアー AC−20)を用いて分級し、得られた平均粒子径3μmの原料を用いた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径4μmの絶縁被覆金属粒子を得た。得られた絶縁被覆金属粒子を、実施例1の絶縁被覆金属粒子と2:8の比で混合し、混合粉を得た。混合粉を、実施例1と同様の方法で評価した結果を表1および表2に示す。混合粉の樹脂混合物の粘度は215Pa・sであった。
【0031】
[比較例1]
表1に示す加熱温度、加熱時間で処理した以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の体積抵抗率は9.3×10Ω・cmであった。
【0032】
[比較例2]
平均粒径9μmの水アトマイズFe−Si−Al合金粉末(エプソンアトミックス社製、SENDUST ALLOY T、PF−18F)を、旋回気流式分級機(日清エンジニアリング社製、エアロファインクラシファイアー AC−20)を用いて分級し、得られた平均粒子径3μmの原料を用いた以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の平均粒子径は4μmとなり、樹脂混合物の粘度は661Pa・sであった。
【0033】
[比較例3]
平均粒子径27μmのガスアトマイズFe−Si−Al合金粉末(山陽特殊製鋼社製、PST−S、−106μm)を、440メッシュの篩を用いて通篩し、篩上に残った平均粒子径55μmの原料を用いた以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の平均粒子径は57μmとなり、樹脂混合物の粘度は434Pa・sであった。
【0034】
[比較例4]
原料に平均粒径9μmの水アトマイズFe−Si−Al合金粉末(エプソンアトミックス社製、SENDUST ALLOY T、PF−18F)を用いた以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子の平均円形度は0.85となり、樹脂混合物の粘度は1375Pa・sであった。
【0035】
[比較例5]
表1に示す加熱温度、加熱時間で処理した以外は実施例1と同様にして絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子100個中、絶縁層の剥離が観察されたのは43個、樹脂混合物の粘度は1131Pa・sであった。
【0036】
[比較例6]
ガスアトマイズFe−Si−Al合金粉末(山陽特殊製鋼社製、PST−S、−106μm)を、440メッシュの篩に通し粗大粒子を除去した粉末400gと、ポリフッ化ビニリデン粉末(アルケマ社製、Kynar 761)50gを、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製、MP−5型、CP2タンクを利用)に投入し、1500rpmで30分間処理して絶縁被覆金属粒子を得た。評価結果を表1に示す。得られた絶縁被覆金属粒子100個中、絶縁層の剥離が観察されたのは36個であった。
【0037】
[比較例7]
平均粒子径27μmのガスアトマイズFe−Si−Al合金粉末(山陽特殊製鋼社製、PST−S、−106μm)を用いて樹脂硬化物を得た以外は、実施例1と同様にしてKEC法により電磁波遮蔽能を評価した。結果を表2に示す。
【0038】
【表1】

【表2】

【0039】
本発明の絶縁被覆金属粒子は、高い体積抵抗率を有するとともに、絶縁層が剥離することなく設けられ、樹脂と混合した際にも高い流動性を有していた。また、電磁波遮蔽能についても、本発明における絶縁化処理によって損なわれることはなく、むしろ熱処理により高まるという結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の絶縁被覆金属粒子は高い体積抵抗率を有し、またその絶縁層には剥離が見られず、かつ樹脂混合物の流動性も高いため、電磁波遮蔽性を有する樹脂複合体や封止材に好適である。
【符号の説明】
【0041】
1 絶縁被覆金属粒子内部
2 絶縁層
3 絶縁被覆金属粒子
4 絶縁層内表面
5 絶縁層外表面
6 包埋樹脂
図1
図2