(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材が、縦穴を有するスピンドル上に搭載され、前記スピンドルの長さに沿って1つもしくは複数の開口部を有するロール製品であり、ステップ2)において、前記酸素欠乏ガスが、前記スピンドルが搭載された前記基材を経て、前記スピンドルの長さに沿う少なくとも1つの開口部を通って、そして前記縦穴を通って流れる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
前記硬化性コーティング組成物が、1種もしくは複数のトリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、パーフルオロヘキシルエチルアクリラート、パーフルオロヘキシルエチレンおよびパーフルオロオクチルエチレンを含有する請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
前記酸素欠乏雰囲気が、室温および1気圧で気体である微量ガスの残渣を有する、少なくとも98モル%の窒素および最大0.1モル%までの酸素分子を含む請求項3に記載の方法。
前記酸素欠乏雰囲気が、室温および1気圧で気体である微量ガスの残渣を有する、少なくとも98モル%の水蒸気および最大0.1モル%までの酸素分子を含む請求項3に記載の方法。
前記酸素欠乏雰囲気が、1気圧で40℃以下の沸騰温度を有し、かつ1個もしくは複数の重合性の炭素−炭素2重結合を有する少なくともガス相、重合性モノマーを含む請求項3に記載の方法。
ステップ4)において、前記ガス相、重合性モノマーが、前記硬化性コーティング組成物中の少なくとも1種のモノマーとホモポリマー化または共重合する請求項23に記載の方法。
前記酸化前処理ステップが、前記基材を超大気圧で酸素含有雰囲気下、100〜220℃、好ましくは150〜190℃まで加熱することを含む請求項25に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のプロセスのステップ1)においては、本明細書に記載される硬化性コーティング組成物が、基材に塗布される。硬化性組成物は、液体または懸濁液であるので、多くの従来の方法のうちのいずれかにより、例えばロール塗り、はけ塗り、吹付け塗り、基材を組成物に浸漬、パッドルを塗布、および例えばエアーナイフまたはドクターブレードを用いて基材上でまたは基材中で組成物を掻き取ることにより、並びに他の方法により、基材に塗布できる。浸漬方法は、硬化性コーティング組成物が多量の液状担体を含有する場合に、使用できる。浸漬方法の後には、一般的に、硬化する前に過剰のコーティング組成物を除去する手段が続く。
【0014】
ステップ1)中の条件は、非重合性の条件である。非重合性の条件は、このステップ中に殆ど(10モル%以下、好ましくは5モル%以下)または全くモノマーの硬化が起こらないような条件である。具体的には、ステップ1)中の温度は、熱活性化重合の開始剤が活性化されないように選択される。ステップ1)中の温度は、熱活性化重合の開始剤の1時間半減期温度より低いのが好ましい。さらに、フリーラジカルの他の供給源が、コーティングステップ中に存在しないことが好ましい。本発明の目的上、熱活性化重合の開始剤の1時間半減期温度より低い温度と、フリーラジカルの供給源が他に存在しないこととを含む条件が、非重合性の条件としてみなされる。
【0015】
ステップ1)中の圧力および温度条件はまた、モノマーおよび熱活性化重合の開始剤が容易に揮発しないように選択される。ステップ1)は、例えば、およそ1バールの気圧下で、つまり約50〜150kPaまたは約90〜119kPaで実施してよい。
【0016】
好ましいコーティング量は、被覆される基材の面積1平方メートル当たり1〜150グラム(g/m
2)、殊に1.5g/m
2〜70g/m
2または1.5〜20g/m
2である。特定の実施形態においては、コーティング量は、例えば、1.5〜10または1.5〜5g/m
2または6〜15g/m
2であってもよいが、より重い基材(殊に多孔質基材)に関しては、コーティング量はそれより高くてもよい。高コーティング量は、浸漬パディングにより、または2台以上の薬液移送装置を直列で使用することにより、または薬液移送装置を介して基材を複数回通過せることにより、塗布できる。本発明の著しい利点は、非常に低いコーティング量が容易に塗布され、最小の化学「廃棄物」が存在することまたは蒸発に対する損失が最も少ないことである。
【0017】
次に、酸素分子が、被覆基材を収容する容器からパージされる。「パージする」とは、酸素分子を容器内の雰囲気から除去することを単に意味する。パージステップはまた、基材の表面と接触する酸素分子、さらに基材表面に流体連結した状態である基材の任意の細孔または間隙空間に存在し、そのためにプロセス中に塗布された硬化性コーティングと接触し得る酸素分子も除去するのが好ましい。例えば、パージする前に、酸素分子が、全てまたは一部のこれらの細孔または間隙空間を占有することがある。そのような場合においては、酸素分子は、通常、閉じ込められた空気の成分として存在する。織物は、例えば、通例、材料を構成する交差繊維間の間隙空間を有する高多孔質材料である。基材の1つもしくは複数の表面に化学吸着または物理吸着される酸素分子もある。パージステップ中に、化学吸着または物理吸着した酸素分子は、除去されるのが好ましく、酸素分子は、そのような間隙空間から除去されるのが好ましい。電子機器は、その構成部品の接合部に貫通穴、または小さな亀裂もしくは開口部を有することがあり、そこから、酸素分子がパージステップ2)中に除去されるのが好ましい。
【0018】
パージステップ2)は、ステップ1)に関して記載したように、非重合性の条件下で実施される。さらに、パージステップ2)中の圧力および温度条件は、モノマーおよび熱活性化重合の開始剤が揮発しないように選択される。
【0019】
パージステップは、様々な方法で実施できる。
【0020】
パージステップを実施するひとつの方法は、塗布された硬化性コーティングを有する基材を容器に入れ、容器内の雰囲気を酸素欠乏ガスと入れ替えることである。基材が多孔質(織物ではよくあることである)であるならば、酸素欠乏ガスは、基材を介して流入し、閉じ込められた空気または酸素分子を細孔から機械的に押し出すことができる。従って、例えば、塗布された硬化性コーティングを有する基材は容器内に配置されてよく、酸素欠乏ガス流は、酸素欠乏ガスの流路が基材を介するおよび/または基材の表面を通過するように、ガスの除去と同時に容器に導入される。基材を介するおよび/または基材を通過するこのガスの流れは、機械的に閉じ込められた空気または酸素分子に置き換わる。電子機器のコーティングに関しては、ガス圧を用いて、とても小さい開口部および小さな亀裂に、例えば、回路素子とプリント配線板の間の空隙に閉じ込められた空気を置き換えるのを助長させる。容器を横切っておよび/または基材を介して約0.1〜2MPaの圧力低下は、このやり方で酸素分子を追い出すのに十分であることが多い。所望ならば、除去したガスの酸素分子含有量は、モニターでき、そのような場合には、抜き出されたガスの酸素分子含有量が、1モル%未満、0.1モル%未満、または所望ならば幾分それより低い値まで下がるまで、酸素欠乏ガスの流れは、続けてもよい。
【0021】
酸素欠乏ガスは、本発明の目的上、多くとも1モル%の酸素分子(O
2)、好ましくは0.1モル%以下の酸素分子を含有するガスである。酸素欠乏ガスは、少なくとも98モル%、好ましくは少なくとも99モル%およびより好ましくは少なくとも99.9モル%の、窒素、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、ヘリウムまたはそれらの任意の2種以上の混合物等の不活性ガスを含有してもよい。いくつかの実施形態においては、酸素欠乏ガスは、1種もしくは複数のガス相、1気圧で40℃以下の沸騰温度、かつ1個もしくは複数の重合性の炭素−炭素2重結合を有する重合性モノマーを含有してもよい。そのようなガス相モノマーの例としては、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等が挙げられる。ある好ましい酸素欠乏ガスは、室温および1気圧で気体である微量ガスの残渣と共に、少なくとも98モル%の窒素および最大0.1モル%までの酸素分子を含む。別の好ましい酸素欠乏ガスは、室温および1気圧で気体である微量ガスが存在するならばその残渣と共に、少なくとも50モル%の窒素、最大1モル%までの酸素分子または最大0.1モル%までの酸素分子、最大49.9モル%までのガス相モノマーを含む。別の酸素欠乏ガスは、室温および1気圧で気体である微量ガスの残渣と共に、少なくとも98モル%の水蒸気および最大0.1モル%までの酸素分子を含む。さらに別の好ましい酸素欠乏ガスは、室温および1気圧で気体である微量ガスが存在するならばその残渣と共に、少なくとも50モル%の水蒸気、最大1モル%までの酸素分子または最大0.1モル%までの酸素分子、最大49.9モル%までのガス相モノマーを含む。
【0022】
パージステップは、基材を損傷することなく機械圧縮を行うことが可能であるならば、塗布された硬化性コーティングを有する基材を機械的に圧縮して、細孔または他の隙間のある場所から酸素分子を除去することにより、実施できる。そのような圧縮は、例えばローラー間の被覆織物を圧縮することにより、織物で実施でき、ローラーのうちの1つまたは両方は、ドラムまたは他の表面(再び加熱可能である)に対して被覆織物に張力をかけることにより、折り畳んで積み重ねた布帛を物理的に圧縮してその圧縮を解除すること等により、加熱できる。機械圧縮は、圧縮力が取り除かれた際に酸素分子が空隙空間に再び入らないように、酸素欠乏ガス下で実施できる。
【0023】
酸素分子をパージする別の方法は、基材を減圧下に置くことであるが、但し、モノマーおよびフリーラジカルの開始剤が、硬化性コーティング組成物中のそれらの初めの濃度の30%より低い濃度まで揮発しないことを条件とする。
【0024】
空気を除去するために上述のアプローチを組み合わせて使用することができる。
【0025】
ステップ2)の間および/またはステップ2)の後に、塗布された硬化性コーティングを有するパージ済みの基材を収容する反応容器は、酸素欠乏ガスを用いて、少なくとも実圧120kPaのガス圧まで加圧される。ステップ1)および2)と同様に、この加圧ステップ3)は、非重合性の条件下で実施される。
【0026】
加圧ステップ3)においては、ガス圧は、例えば少なくとも500kPaまたは少なくとも750kPaであってよい。ガス圧に関して、反応容器および関連する装備の制限以外、原則として上限はない。ガス圧の実際の上限は、約15MPaである。いくつかの実施形態においては、ガス圧は、最大約12MPaまで、最大11MPaまで、最大10MPaまで、最大5MPaまで、最大3.5MPa、最大2.5MPaまで、または最大1.5MPaまでである。全てのガス圧は、特に明記しなければ、実圧である。
【0027】
加圧ステップ3)で印加された圧力は、処理済基材の特性に影響を与えることがわかっている。基材が布帛である場合、加圧ステップ3)中の圧力の増大は、低圧力を用いる場合よりも通気性が高い処理済布帛を生み出す傾向がある。従って、加圧ステップ3)中に印加する圧力の選択は、処理済布帛の通気性を変える作動パラメーターとして使用できる。本発明は、いかなる理論にも制限されないが、圧力が高いほど薄いコーティングを生み出す傾向があり、それにより、糸条間の空間が大きくなるので、通気性が増大すると考えられている。
【0028】
加圧ステップは、コーティングを織物等の多孔質基材の内部に推し進めるのを助力し、また同様に基材を構成する個々の繊維および/またはフィラメントに対してコーティングを広げるのを助力すると考えられている。これが、加圧ステップなしでの達成が非常に困難である、スパンステープル繊維等のスパン繊維からの織布のような場合でさえ、コーティング組成物が個々の繊維および/またはフィラメントの間を浸透するのを可能にすると考えられている。
【0029】
電子基板に関して、加圧ステップは、回路部品と回路部品との間のとても小さい空間、(例えば)プリント配線板に、および接点および金属ビア等のとても小さい開口部にコーティングを推し進めると考えられている。
【0030】
いくつかの実施形態においては、加圧ステップ3)は、パージステップ2)の一部として、実施できる。例えば、パージステップ2)は、1回もしくは複数回の加圧/脱圧サイクルを行うことにより、実施でき、各サイクルにおいて、被覆基材を収容する容器は、酸素欠乏ガスを用いて超大気圧まで加圧された後(加圧ステップ3に関して上述したように)に、例えば実圧で50〜150kPaの圧力まで脱圧される。最大20回まで、最大10回までまたは最大3回までのそのような加圧/脱圧サイクルが実施されてよい。加圧ステップ3)に対応するこのサイクルの加圧部分は、そのような場合において続く加圧ステップは必要ないので、最終の加圧ステップは所望ならば実施してもよいが、所望ならば省いてもよい。
【0031】
上述のように加圧/脱圧サイクルを実施するのは、被覆される前に基材の通気性が低い場合、例えば3標準立方フィート/分/平方フート(0.01524m/秒)またはTextest FX3300計器および38cm
2試験面積を用いてASTM D797に従って測定した値よりも低い場合に、特に有益である。
【0032】
硬化性コーティング組成物は、次に、塗布された硬化性コーティング組成物を有する基材を酸素欠乏の条件下で加熱することにより、少なくとも部分的に硬化される。「酸素欠乏の条件」とは、本発明の目的上、重合が、前述したように酸素欠乏雰囲気中で実施されること、または基材が液体もしくは超臨界流体中に浸漬されている間に実施されることを意味する。好ましい液体は、80〜220℃、好ましくは80〜145℃の沸騰温度(1気圧で)を有する。ステップ3)において酸素欠乏ガスを用いて加圧された後、被覆基材は、ステップ4)の実施後まで、1モル%以上の酸素を含有する雰囲気に曝されない。
【0033】
いくつかの実施形態において、重合ステップ4)は、ステップ3)からの被覆基材が酸素欠乏ガス下である間に、実施される。このような実施形態においては、重合ステップ4)は、加圧ステップ3)を実施するのと同じ容器内で実施してもよい。このような場合には、ステップ4)は、加圧ステップ3)に関して上述したように、超大気圧下で実施してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態における被覆基材は、ステップ3)の開始から重合ステップ4)が実施されるまで、このような超大気条件で連続的に維持される。超大気下でのポリマーの硬化は、加圧条件が解放される際にポリマーがその場に留まり、所望のコーティング特性を提供するように、ポリマーを正しい位置に固定すると考えられている。
【0035】
他の実施形態においては、重合ステップ4)は、液体または超臨界二酸化炭素等の超臨界流体中に浸漬されるステップ3)からの被覆基材を用いて実施される。
【0036】
この硬化ステップ4)においては、基材および塗布された硬化性コーティング組成物は、熱活性化重合の開始剤を活性化し重合を開始するのに十分な温度まで、加熱される。
【0037】
硬化ステップ4)を実施する際に、容器を封止して容器の内部からガスが逃げるのを回避してよい。封止したとしても、容器は、原子炉の圧力が所定の値を超えるならば、原子炉の内部からガスを抜くため、および/または所定の値に圧力を調節するためにリリーフ弁等の手段を含んでよい。ステップ4)中に容器を流れるガス流を維持することも本発明の範囲内であるが、但し、要求圧力が維持され、かつ容器内の雰囲気(存在するならば)が、依然として酸素欠乏の状態であることを条件とする。
【0038】
超臨界流体中での浸漬の場合においては、超臨界流体がガス相に変換するように、重合ステップ後または重合ステップ中に圧力を下げてもよい。重合の残渣があれば、その重合は、そのようなガス相下でも、大気圧下でも、または超大気圧下で実施してもよい。
【0039】
ステップ4)での好ましい硬化温度は、一般的に80〜210℃である。硬化温度は、少なくとも90℃、少なくとも100℃または少なくとも120℃であってよく、最大190℃まで、最大175℃まで、最大160℃までまたは最大150℃までであってよい。前述の範囲内で硬化温度が低いほど、ポリエステル、ナイロンおよびポリプロピレン布帛等の熱に弱い布帛を処理するのに有益となることがある。布帛収縮が小さいのは、低い硬化温度で、具体的には150℃以下で、見られることが多い。例えば、0.5%以下の布帛収縮は、これらのより低い硬化温度で見られることが多い。最大140℃までの温度が、アクリル布帛およびアラミド布帛を処理するのに殊に好適であり、最大150℃までの温度が、綿を処理するのに殊に好適である。
【0040】
酸素欠乏の条件下での硬化は、硬化性コーティング組成物中の重合性モノマーの少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%がポリマーに変換されるまで、続けられる。いくつかの実施形態において、硬化は、硬化性コーティング組成物中の重合性モノマーの少なくとも75モル%、少なくとも85%、少なくとも95モル%または少なくとも98モル%がポリマーに変換されるまで、加圧した酸素欠乏ガス下で実施される。変換が、このステップ中に、100%に達することもある。
【0041】
いくつかの実施形態においては、ステップ4)は、硬化性コーティング組成物中の重合性モノマーの変換が、50〜99モル%、好ましくは75〜95モル%およびより好ましくは85〜95モル%になるまで、酸素欠乏ガス下、ステップ3)に関して記載したような超大気圧で実施され、そしてさらなる硬化が、ガス圧が実圧で120kPa未満、例えば75〜119kPaまたは95〜105kPa等で実施される。他の実施形態においては、ステップ4)は、硬化性コーティング組成物中の重合性モノマーの変換が50〜99モル%、好ましくは75〜99モル%になるまで、酸素欠乏の条件下で実施され、そしてさらなる硬化は、大気下で実施される。この作業においては、「硬化」と「重合」は、交換可能に使用される。
【0042】
ステップ4)を実施するのに必要な時間は、通常短く、例えば、0.5〜60分または5〜20分であるが、特定の環境においては、それより長い時間や短い時間が使用できる。ステップ4)に必要な時間は、硬化温度、特定のモノマーおよび重合開始剤等の要因にいくらか応じて当然変わることとなる。
【0043】
単一の反応容器内で少なくともステップ2)、3)および4)を実施するのは、一般的に有用である。従って、塗布された硬化性コーティングを有する基材組成物を反応容器内に配置し、反応容器の酸素分子をパージした。次に、反応容器を酸素欠乏ガスで加圧し、重合温度まで加熱して、結果として硬化性コーティング組成物の硬化を達成する。
【0044】
同一の反応容器でコーティングステップ1)を実施するのは可能であるが、一般的に、薄いコーティングを塗布するのに適合した別の装備でコーティングステップを実施するのが好ましい。コーティングステップ1)の直後にステップ2)、3)および4)を実施する必要はない。
【0045】
好適な反応容器は、オートクレーブであり、またはステップ3)および4)において遭遇する圧力を扱うことができる他の容器である。そのような反応容器として、好ましくは、容器を加圧するために、また熱を加えるためのガスを導入し、容器の内部空間からガスの除去をもたらす様々なガス操作装備が挙げられる。このような手段は、よく知られており、そのような手段を特別に設計することは必要ない。
【0046】
図1〜3は、本発明のステップ2)、3)および4)を実施するのに好適な装置を描写する。
【0047】
図1〜3において、反応容器1は、底部13Bおよび上部13Aを含み、それらは、本発明のステップ2)、3)および4)を実施するために基材7(
図3)を配置する内部空間5を一緒に画定する。反応容器1は、例えば、オートクレーブであり、またはプロセスにおいて遭遇する温度および圧力に耐えるように適合した他の容器である。閉じて動作の際には、底部13Bおよび上部13A(
図1)は、任意の好適な封止方法、例えば、ナットとボルト12(
図1)、クリップ、クランプまたはリベット等の他の機械封止装置、磁気封止装置、接着剤、ガスケット等を用いて、接合部11(
図1)に沿って封止される。
図1に示す実施形態においては、基材(図示省略)は、中心スピンドル2に搭載され、下の支持部2Aにより支持され、プレート2Bと共に所定の位置に保持される。中心スピンドル2は、縦穴を1つ有し、縦穴から反応容器1の内部空間5中への流路をつくり出す外部の開口部10(
図2)を有する。
【0048】
反応容器1は、ガスを内部空間5に導入するおよび内部空間5から除去するための手段をさらに含む。図示する好ましい実施形態においては、反応容器1には、第一ガスポート4、任意の第二ガスポート9が装備される。図示するように、第二ガスポート9は、中心スピンドル2の中心穴と流体連結した状態である。或いは、単一のガスポートは、入口と出口の両方としての役割を果たす。
【0049】
パージステップ2)中に、酸素欠乏ガスは、内部空間5に導入され、中心スピンドル2の開口部10を通過して、ガスポート4とガスポート9のうちの1つを経て除去される。ガスは、ガスポート4とガスポート9の間をいずれかの方向に流れる。ガスポート4は、入り口であってよく、そこを通って、酸素欠乏ガスは、内部空間5に入り、そこから基材7を通過して、スピンドル2の中心穴を介して開口部10中に流れて、ガスポート9を通って出る。或いは、ガス流の方向は、反対にでき、ガス流は、ガスポート9を通って、中心スピンドル2の中心穴に流れ、開口部10を介して内部空間5中を通過し、基材7の前を通って、ガスポート4を経て内部空間5から引き出される。
【0050】
図1〜3に示す実施形態は、好ましい設計であり、ロール巻きした織物等のロール巻きした製品を処理するのに特によく適合している。
図3に示すように、ロール巻きした織物等の可撓性基材7は、中心スピンドル2の周りに巻かれ、または中心スピンドル2の上に搭載するコアにロール巻きされる。酸素欠乏ガスは、従って、酸素欠乏ガスがガスポート4から中心スピンドル2の開口部10中を通過して、そこから、ガスポート9を経て(またはガスポート9からガスポート4への反対の方向で)反応容器1を出るように、酸素欠乏ガスは、可撓性基材7を通って移動する。基材を通るガスのこの移動は、基材7の細孔または他の細隙に閉じ込められた酸素分子を除去する効果的な方法である。
【0051】
加圧ステップ3)および硬化ステップ4)は、同様に、
図1〜3に示す実施形態において、反応容器1内で実施される。
【0052】
動作中に、塗布された硬化性コーティングを有する基材は、反応容器1の内部空間5内に挿入される(コーティングステップ1)がそこで実施されないならば)。酸素欠乏ガスの流れは、内部空間5に入り、通過して出て行き、酸素分子をパージするように定められている。例えば、抜き出されたガスの酸素分子の含有量が1モル%未満、0.1モル%未満または他の所定の値に下がるまで、このガスの流れを続けてもよい。或いは、内部空間5の体積の所定数倍(例、2:50の反応体積または2:10の原子炉体積)に等しいガスの体積が、反応容器1を経て通過してしまうまで、ガスの流れを続けてもよい。
【0053】
パージステップ中におよび/またはパージステップ後に、追加の酸素欠乏ガスが、基材7を収容する反応容器1内に導入され、内部空間5を前述のガス圧まで加圧する。反応容器を加圧した後、加熱手段3により加熱し、内部空間5の温度を上昇させて重合を開始する。酸素欠乏の条件下で、好ましくは前述の圧力を維持しながら酸素欠乏ガス下で、重合を行う。少なくとも50モル%の重合性モノマーがポリマーに変換されるまで、加熱を維持する。図示するように、加熱手段3が、設けられ、プロセスのステップ4)を実施するために反応容器1の含有物を加熱する。加熱手段は、例えば、加熱用ジャケット、電気ヒーター、放射ヒーターであってよく、天然ガスまたは電気を用いて加熱するオーブンもしくはオイル浴、または好適な加熱手段に反応容器1を置き換えてもよい。反応容器1に供給される酸素欠乏ガスを加熱することにより、必要な加熱を行うことも可能である。
【0054】
代替的な実施形態においては、硬化性コーティング組成物で被覆した織物基材は、編組され、ステップ2)、3)および4)は、編組織物で実施される。このような一実施形態においては、編組した被覆織物は、1つもしくは複数のガスポートを有するビン(bin)内に収容されてよく、そのガスポートを介してガスは、導入、または除去されて、パージステップ、加圧ステップおよび硬化ステップを実施できる。編組した被覆織物は、編組されて、一連の水平層をビン内に形成することがある。そのような場合においては、ガスポートは、ビンの底面または上面に、またはビンの底面または上面の近くに配置されてよく、また、パージステップ2)中に、ガスの流れは、編組した被覆織物の層を通って上向きまたは下向きに定めてよい。
【0055】
上述の代替的な実施形態においては、ビンは、パージステップ、加圧ステップ、および硬化ステップを実施する大型圧力容器の外で、搬入、編組および放出を実施できるように規格化された部品(modular)であり得る。搬入後、1つもしくは複数のそのようなビンは、圧力容器内に導入され、パージステップ、加圧ステップおよび重合ステップ2)、3)および4)が実施され、一方、搬入されたビンは、圧力容器内に存在する。圧力容器は、ガスを圧力容器の内部に導入し圧力容器の内部から除去するための1つもしくは複数の導入口と、ビンと、ビンの含有物に必要な重合温度をもたらす加熱手段とを含む。
【0056】
特定の実施形態における本発明は、硬化性コーティング組成物で被覆した基材を硬化するための反応装置であり、以下を含む:
A.内部空間を画定する外部の加圧室であって、外部の加圧室が、実圧で0.5〜15MPaの内圧に耐えることができる外部の加圧室;
B.基材の層がビン内に水平に配置され、そのようなビンが加圧室の内部空間に適合して収まるように、積層基材をビン内に保つために内部容積を画定するビン;
C.ビンの内部容積の底に位置決めされたガスプレナムであって、そのガスプレナムが、動作中にビンの内部容積にガスが入るのを可能にする複数の開口部を有するガスプレナム;
D.ビンの内部容積からガスを除去するために、ビンの上部または上部近くに位置決めされた少なくとも1つの開口部;および
E.ビンの内部容積を加熱するための加熱手段
F.ガスプレナムに対してのガスの流れおよびガスプレナムを通るガスの流れを定めるためのガス循環手段であって、ビンが、外部の加圧室の内部空間であり、ビンの上部にまたは上部近くに位置決めされた前記少なくとも1つの開口部を通ってビン内外の積層した布帛を経るガス循環手段;および
G.外部の加圧室の内部空間内に超大気圧を定めるための手段。
【0057】
そのような装置を用いて、積層基材は、硬化性コーティング組成物で被覆され、複数の水平に配置された被覆基材の層がビンに存在するように、層状にビンに導入される。次に、ビンは、外部の加圧室の内部に導入され、そこで、パージステップ2)、加圧ステップ3)および重合ステップ4が実施される。少なくともパージステップ2)中に、パージガスが、ガスプレナムの開口部を経てビン内に導入され、基材の層を通って上向きに流れ、ビンの上部でまたはその近くで抜き出される。抜き出されたガスは、外部の加圧室の内部空間中を流れることがある。加圧ステップ3)は、a)ガスをガスプレナムの開口部を経てビンに導入することによるか(ガスがビンから逃げるのを回避するか、もしくはガスをビンから外部の加圧室内に逃げさせることによるかのどちらかで)、または内部空間をビンの内部と連結する1つもしくは複数の流体導管を介して、加圧用ガスを外部の加圧室の内部空間からビンに入れながら、外部の加圧室の内部空間を加圧することによるかのどちらかにより、外部の加圧室内のビンを用いて実施される。
【0058】
加熱手段Fは、上述したような任意の加熱手段であってよい。
ガス循環手段Gとしては、ガス供給源からガスプレナムにガスを供給するコンジット、およびガスプレナムの開口部を経て、ビン内の基材の層を通って、ビンの上部またはその近くの開口部から、移動するガスの動力を提供する圧力差を定める手段が挙げられる。圧力差を定める手段としては、例えば、ガスの加圧供給源;ファンもしくはブロアーまたはポンプ;真空ポンプ等が含まれてよい。
【0059】
硬化の前の、コーティング、パージおよび加圧の一連のステップは、特に織物や電子機器に塗布した場合に、硬化済みのコーティングの効力に予期しない著しい改善をもたらすことがわかった。具体的には、この手法で塗布および硬化されるコーティングは、加圧ステップ3)を省いた場合よりも著しく良好な撥水性を呈することが多い。本発明は、いかなる理論にも限定されないが、ステップ3)で印加した昇圧は、基材の表面中の細孔、細隙、亀裂または他の小さな開口部に硬化性コーティング組成物を機械的に推し進め、それにより、コーティング組成物のそのような小さい開口部への浸透を促進し、それらを封止するのが容易になると考えられている。次に、硬化性組成物は、所定の位置で硬化し、ガス圧が解放された際に永久的な封止を生み出す。
【0060】
硬化性コーティング組成物が小さな粒子を含有する場合においては、小さな粒子の一部または全てが、機械的封止を形成するようにまたは前記粒子が固着するために、上述の開口部へ推し進められて、それにより、使用に関連する粒子の損傷に対する洗濯耐久性と耐摩擦性の両方を提供する。
【0061】
ステップ4)中に上昇した圧力は、硬化ステップ4)中に、硬化性コーティング組成物の様々な成分、具体的には以下に記載する特定の担体化合物および/または揮発性モノマーの蒸発を制限する傾向がある。具体的には、プロセスは、硬化性コーティング組成物が、重合ステップ4)の温度で、1〜67kPa(約10〜500トル)、殊に6.7〜53kPa(約50〜400トル)の蒸気圧を有する1種もしくは複数の化合物を含有する場合に、かなり有益であることが判明されている。そのような化合物は、例えば、以下に記載する1種もしくは複数のモノマーおよび/または1種もしくは複数の担体材料であってよい。110〜125℃の重合温度で、前述の範囲内の蒸気圧を有する硬化性コーティング組成物の成分の例としては、例えばトリメトキシ(1H、1H、2H、2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、パーフルオロヘキシルエチルアクリラート、パーフルオロヘキシルエチレンおよびパーフルオロオクチルエチレンが挙げられる。硬化性コーティング組成物は、例えば、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%または少なくとも45重量%の、この段落に記載した蒸気圧を有する化合物を含有してもよい。
【0062】
このプロセスで被覆される基材は、特に制限されず、その上のコーティングが本発明に従って作製できる任意の固体材料は、基材に使用できる。基材が多孔質である場合および/または塗布されたコーティングにより封止される小さな亀裂または間隙空間を有する場合に、特有の利点が見られる。
【0063】
有用な多孔質基材としては、繊維織物が挙げられる。「繊維状」とは、織物の表面が、少なくとも1種類の繊維から構成されるまたは少なくとも1種類の繊維を含むことを意味する。繊維は、空気および/または酸素分子が、閉じ込められ、塗布された硬化性コーティング組成物が、塗布される際および加圧ステップ3)の間に、その中を浸透できる、隙間のある空隙空間を画定する。そのように特徴付けられる多孔質布帛は、本発明によるコーティングの前に、ASTM D737に従い、Textest FX3300計器および38cm
2の試験面積を用いて測定した、少なくとも0.2立方フート/分/平方フート(0.001016m/s)の通気性を有し得る。多孔質布帛が、少なくとも10(0.0508)、少なくとも50(0.204)、少なくとも75(0.3060)または少なくとも130(0.6604)フィート/分/平方フート(m/s)の通気性を有するのがより好ましい。多孔質布帛の通気性は、200立方フィート/分/平方フート(1.016m/s)まで等の任意の高い値であることがある。PTFEまたはポリウレタン系の薄膜布帛等の一部の布帛は、水蒸気に対する透過性が大きく、空気に対する透過性よりも大きいことがある。そのような布帛は、少なくとも1000g/sqメートル/24時間、好ましくは5000〜20,000g/sqm/24時間の、JISL1099B1に従って測定した透湿速度を有することがある。
【0064】
多孔質基材の繊維は、例えば、織成、編成、交絡、結節、フェルト、糊付けまたは別の方法で、本発明のプロセスを経てもたらされる十分な機械的完全性を有する布帛、不織布もしくは織物に形成されてもよい。そのような布帛としては、例えば、天然繊維、例、綿、麻、ウール、リネン、絹、テンセル、レーヨン、革、竹、セルロース等、または合成繊維、例、ナイロン、パラ−もしくはメタ−アラミド、ポリプロピレン、ポリエステル(PETを含む)、ポリアセタート、ポリアクリル、ポリ乳酸、セルロースエステルまたは他の繊維および上述の繊維の2種以上のブレンドであり得る繊維が挙げられる。それは、平滑または柔らかく毛羽立った布帛であってよく、少量の(最大50%まで、好ましくは最大10%までのまたは最大3重量%まで)の、Elastane、Lycra、またはSpandex等の伸縮性繊維を含有してもよい。
【0065】
前述のように、本発明は、織物ロール材を処理するのに特に好適である。基材がシートの形態である場合は、基材は、約12mm以下の厚みを有するべきであり、10mm以下または8mm以下の厚みを有するのが好ましい。基材は、プロセスを経て伝わる十分な機械的完全性を有するならば、幾分小さい厚みを有することができる。いくつかの実施形態における硬化性組成物は、1600mmから7メートル以上まで等の100mm以上の幅を有することがある織物ロール製品に塗布される。
【0066】
プロセスは、ロール材の布帛に限定されない。折り畳み織物シートまたは広げられた織物シートは、織物成分を有する完成品であり得るので、基材として使用できる。本発明は、シャツ、パンツ、セーター、コート、スエットシャツ、手袋、帽子、スカーフ、レッグウォーマー、アームウォーマーおよびストッキング、さらに靴および他の履物、カーテン、寝具および他の織物材料等の衣料品にコーティングを塗布するのに有用である。本発明のプロセスは、既に塗布されたコーティングが擦り切れまたは洗浄除去を有する衣料品、或いは除去された衣料品、必要とされる機能属性を回復させるコーティングを再び塗布する必要がある衣料品の再処理に使用できる。
【0067】
他の実施形態においては、靴に限定しないが靴をはじめとして、基材は、例えば、革製品、もしくはビニル等の合成革製品の場合と同様に、または合成繊維と天然繊維の混合物を含む、競技シューズ用の、ポリエステル、ポリプロピレンまたはナイロンの場合と同様に、片面を被覆されてよく、被覆された側に露出した繊維面またはクモの巣状の面を有する。コーティング、従って硬化ポリマーは、縫製された縫い目、ロゴ、ラベル、装飾的な機能、Velcroファスナー、ボタン、スナップ、リベットおよびジッパー等の塗布される機能の上面に塗布されてよい。基材は、不織材料、またはセルロース材料、例えば、紙、ティシュペーパー、または厚紙等でよい。
【0068】
他の実施形態においては、基材は、電子部品である。電子部品の種類は、重要ではない。電子部品は、例えば、ディスクリートパッケージしたベーシックな電子部品、または電子部品のアレイもしくはネットワーク、例、半導体集積回路、ハイブリッド集積回路もしくは厚膜素子であってよい。電子部品は、完成品、例えば、携帯電話、MP3プレイヤー、フィットネス用エレクトロニクス、「スマート」織物(つまり、ウェアブルエレクトロニクス)および軍用電子機器であり得る。それぞれ個々のベーシックな電子部品は、例えば、トランジスター、真空管もしくはダイオード等の半導体素子、抵抗器、誘導子、変圧器もしくはコンデンサー等の受動部品、オプトエレクトロニクス素子、および光学検出器もしくはエミッター、電源、磁気誘導素子、メモリー、およびRCもしくはLCネットワーク、アンテナ、圧電素子、クリスタル、共鳴器、ターミナルもしくはコネクター、アンテナ、ケーブル、スイッチ、ヒューズ、サーキットブレーカ、バリスターもしくは突入電流リミッタ等の保護素子、またはその他の電子機械部品であってよい。
【0069】
任意の酸化前処理ステップは、コーティングステップ1)の前に実施してよい。このような酸化前処理ステップは、酸素含有雰囲気下で、超大気圧で100〜220℃、好ましくは150〜190℃等の高温まで基材を加熱するステップを備える。温度は、基材が劣化または永久的に変形する温度よりも低い温度でなければならない。酸素含有雰囲気は、少なくとも20モル%、少なくとも50モル%もしくは少なくとも75モル%の酸素分子を含有してよく、かつ最大100モル%まで、最大99モル%までまたは最大95モル%までの酸素分子を含有してもよい。超大気圧は、例えば125kPa〜15MPa、好ましくは300kPa〜5MPaであってよい。基材は、酸化前処理ステップの条件下で、例えば1分間〜1時間、保たれてよい。
【0070】
酸化前処理ステップにより、その後の塗布されたコーティングの性能が向上することが判明されている。具体的には、酸化前処理ステップを実施した際に、より良好な撥水性および/またはより良好な撥油性が得られる。本発明は、いずれの理論にも限定されないが、布帛製造中に添加されることが多いサイズ剤および/または潤滑剤等の表面コーティング剤は、酸化前処理ステップ中に酸化除去され、基材表面と硬化性コーティング組成物との良好な接触を可能にすると考えられている。
【0071】
酸化前処理は、代替的方法を超える有意の利点を提供する。布帛から潤滑剤の除去(脱サイジング)は、水系洗浄ステップを用いて行われる。しかし、アラミド等の幾種かの布帛の水への曝露は、繊維強度を弱めることが知られており、さらに、水洗浄ステップは、乾燥ステップを必要とし、布帛の収縮を助長することが多い。酸素含有雰囲気プラズマはまた、例えば90%のアルゴンと10%の酸素ガスとの混合物を含有し、この脱サイジングステップに使われてもよいが、しかしプラズマ系洗浄は、前述の高圧酸素の洗浄方法よりも高価なアプローチであり、布帛の原子状酸素への曝露は、繊維を弱めることがあることを留意されたい。高圧酸化前処理ステップは、プラズマ系洗浄で起こり得るこれらの問題を回避する。両方の方法は、水を使わない洗浄または織物および不織布の脱サイジングを提供するためにおよび/または接着性を促進するためにおよび/または処理物の洗濯耐久性を向上させるために、使用できる。
【0072】
硬化性コーティング組成物は、a)1分子当たりフリーラジカル重合性基を1個だけ有する1種もしくは複数のフリーラジカル硬化性モノマーを含有する。フリーラジカル硬化性モノマー成分a)は、少なくとも100℃の沸騰温度を有する。沸騰温度は、好ましくは少なくとも120℃であり、より好ましくは少なくとも150℃である。本明細書に記載した全ての沸騰温度は、特に明記しない限り、1気圧での温度である。
【0073】
フリーラジカル硬化性モノマーは、重合性基に直接もしくは間接的に結合する少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有するのが好ましい。ヒドロカルビル基は、部分的にフッ素化されても、完全にフッ素化されても、非フッ素化でもよい。
【0074】
少なくとも1種の成分a)モノマーが、プロセスのステップ4)での重合温度で、好ましくは6.7kPa以下、より好ましくは1kPa以下の蒸気圧を有する。
【0075】
成分a)の1種もしくは複数のモノマーは、22℃で液体でも固体でもよい。モノマーの混合物を用いるならば、それらが全て液体であってもよく、全て固体であってもよく、それらが、固体モノマーと液体モノマーとの混合物を含んでもよい。好ましい実施形態においては、成分a)は、少なくとも2種のモノマーの混合物であり、そのモノマーのうち少なくとも1種は、22℃で固体であり、そのモノマーのうち少なくとも1種は、22℃で液体ある。
【0076】
フリーラジカル重合性基は、フリーラジカル重合で重合するいかなる基でも可能であるが、アルケニル基、アクリラート基、メタクリラート基またはクロロシラン基であるのが好ましい。アクリラート基および/またはメタクリラート基が、最も好ましい。
【0077】
ヒドロカルビル基は、直鎖または分岐の脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの2つ以上を含有する基であってよい。ヒドロカルビル基は、少なくとも10個または少なくとも12個の炭素原子を含んでもよい。ヒドロカルビル基は、例えば6〜24個の炭素原子、8〜24個の炭素原子、10〜20個の炭素原子、または12〜18個の炭素原子を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、ヒドロカルビル基は、8〜24、10〜20もしくは12〜18個の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル基である。いくつかの実施形態においては、ヒドロカルビル基は、部分的にまたは完全にフッ素化され、6〜24個、または好ましくは8〜20個の炭素原子を含む。
【0078】
ヒドロカルビル基は、フリーラジカル重合性基に直接結合(つまり、共有結合を介して)しても、連結基を介してフリーラジカル重合性基に間接的に結合してもよい。
【0079】
水は、30℃でモノマー100重量部当たり、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.25重量部以下の程度まで成分a)のモノマー中で可溶性である。
【0080】
成分a)モノマーの例としては、以下の1種もしくは複数が挙げられるが、これらに限定されない:アクリル酸、メチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、n−オクチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、n−オクチルメタクリラート、デシルアクリラート、デシルメタクリラート、アクリル酸ラウリル、ステアリルアクリラート、ラウリルメタクリラート、オクタデシルアクリラート、オクタデシルメタクリラート、2−(パーフルオロへキシル)エチルアクリラート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリラート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリラート、2−(パーフルオロへキシル)エチルメタクリラート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、ステアリルメタクリラート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリラート、2−(パーフルオロオクチル)エチルトリクロロシランおよびビニルナフタレン。これらのうちで、上述のアクリラートおよびメタクリラートモノマーが、最も好ましい。
【0081】
硬化性コーティング組成物としてはまた、b)1種もしくは複数の熱活性化フリーラジカル開始剤もしくはUV活性化フリーラジカル開始剤が挙げられる。好適な重合開始剤としては、フリーラジカル開始剤、例えば、1)過酸化アセチルまたは過酸化ベンゾイル等の過酸化アシル、2)過酸化クミル、過酸化ジクミル、過酸化ラウロイル、またはt−ブチルパーオキシド等の過酸化アルキル、3)t−ブチルまたはクミルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド、4)t−ブチルパーベンゾアートのようなパーエステル、5)1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アシルアルキルスルホニルパーオキシド、ジアルキルパーオキシジカルボナート、ジパーオキシケタール、ケトンパーオキシド、または1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを含む他の有機過酸化物、6)2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、または1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物、7)種々のテトラジンおよび8)過硫酸カリウム等の種々の過硫酸化合物が、挙げられる。22℃で固体である重合開始剤は、60℃以上の温度で10時間半減期を有する重合開始剤であるので、好ましい。少なくとも100℃で1分半減期温度を有する重合開始剤が、殊に好ましい。いくつかの実施形態における重合開始剤は、100℃で少なくとも1分半減期、または100℃で少なくとも5分半減期を有することがある。
【0082】
本発明の硬化性コーティング組成物はまた、以下の任意の成分のうち1種もしくは複数を含んでもよい:
【0083】
c)少なくとも2個のフリーラジカル硬化性基と、少なくとも100℃の沸騰温度を有する少なくとも1種の架橋モノマー。沸騰温度は、好ましくは少なくとも125℃であり、より好ましくは少なくとも150℃である。本明細書における全ての沸騰温度は、特に明記しない限り、1気圧での温度である。架橋性モノマーは、好ましくは22℃で液体である。フリーラジカル硬化性重合基は、成分a)に関してアクリラート基またはメタクリラート基が好ましいと上述した通りであってよい。架橋性モノマーは、例えば1分子当たり2〜20個、好ましくは2〜8個、より好ましくは2〜6個のフリーラジカル硬化性基を有してよい。架橋性モノマーの例としては、1分子当たり2〜20個、好ましくは2〜8個もしくは2〜6個のアクリラート基および/またはメタクリラート基を有するポリアクリラート化合物またはポリメタクリラート化合物が挙げられる。具体的な例としては、2〜50個、2〜20個もしくは4〜12個の炭素原子を有するポリオールのアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、1,8−オクタンジオールジアクリラート、シクロヘキサンジメタノールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、グリセリントリアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、ジペンタエリトリトールテトラアクリラート、ジエペンタエリトリトールヘキサアクリラート(diepentaerythritol hexacrylate)、その対応するメタクリラート等が挙げられる。所謂、あまに油、サフラワー油およびきり油のような乾性油も、同様に有用な架橋剤である。
【0084】
d)成分a)およびc)と異なる1種もしくは複数のフリーラジカル硬化性モノマー。そのようなモノマーは、100℃未満の沸騰温度を有してよい。そのようなモノマーは、フリーラジカル重合性基を1個だけ有してよく、または複数のフリーラジカル重合性基を有してもよく、そのような場合においては、フリーラジカル重合性基は、架橋剤として働くこととなる。そのようなモノマーは、22℃で液体でも固体でもよい。成分d)モノマーは、存在するならば、成分a)モノマーおよびc)モノマーと共重合可能であるのが好ましい。成分d)モノマーにおける好ましいフリーラジカル重合性基は、アクリラートおよびメタクリラートである。成分d)モノマーの例としては、へキシルアクリラート、ブチルアクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、へキシルメタクリラート、ブチルメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリラート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリラート、スチレン、エチレンベンゼン、クロロスチレン等が挙げられる。
【0085】
e)1種もしくは複数の担体。有用な担体または担体の混合物は、22℃で液体であり、液体でないならば22℃で固体であるが、100℃以下、好ましくは50℃以下の溶融温度を有する材料である。担体はまた、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも125℃、さらにより好ましくは少なくとも150℃の沸騰温度を有する。担体は、いかなるフリーラジカル重合性基も含有しない。好ましい担体は、成分a)モノマーに関して記載したように、水への溶解特性を有する。しかし、担体は、コーティング組成物を硬化する際に形成されるポリマーに可溶であるか、またはそのポリマーに部分的に混入されるのが好ましい。
【0086】
有用な担体の例は、(i)14〜30個の炭素原子を有する脂肪族モノアルコールもしくは脂肪族モノカルボン酸;(ii)脂肪酸と高級アルコールとのエステルであって、18〜48個の炭素原子、好ましくは20〜36個の炭素原子を有するエステル;(iii)1個もしくは複数のヒドロキシル基を有するポリエーテル;(iv)ポリシロキサンであって、直鎖、分岐または環式であり得るポリシロキサン;(v)ポリシロキサン−ポリ(アルキレングリコール)コポリマー;(vi)ポリエチレンワックス、蜜蝋、ラノリン、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、オーリクリー蝋、サトウキビ蝋、ホホバ蝋、エピクチクラ蝋、ココナッツ蝋、石油蝋、パラフィン蝋等のワックス、殊に22℃超、好ましくは35℃超であるが100℃以下、殊に50℃以下の溶融温度を有するワックス;(vii)フルオロポリマー、(viii)固体の植物油および/または動物油または固体の植物脂肪および/または動物脂肪;(viii)最大100℃までの純相の溶融温度または軟化温度を有する別の有機オリゴマーまたはポリマー、或いは(ix)様々な可塑剤である。
【0087】
そのうちで、脂肪族モノアルコールは、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール等の飽和高級アルコールを含む高級アルコールであり、同様に高級アルコールは、高級アルコール鎖に炭素−炭素不飽和の1つもしくは複数の位置を有する。脂肪酸と高級アルコールとのエステルのうちで有用なエステルは、例えば、へキシルオクタデカノアート、オクチルオクタデカノアート、ドデシルオクタデカノアート、ヘキサドデシルオクタデカノアート等である。エステルの脂肪酸および/または高級アルコール部分は、炭素−炭素不飽和の1つもしくは複数の位置を含むことがある。
【0088】
好適なポリエーテルは、プロピレンオキシド、テトラメチレングリコール等の1種もしくは複数の環式エーテルのポリマーである。分子量は、最大100℃までの溶融温度を有するポリマーを生成できるような高分子量である。ポリエーテルは、1個もしくは複数のヒドロキシル基を含有してもよい。ポリエーテルは、直鎖でも分岐でもよい。ポリエーテルは、末端アルキルエステル基を含有してもよい。好適なポリエーテルの具体的な例としては、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)のモノアルキルエステル、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)のモノアルキルエステル、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーおよびそれらのモノアルキルエステル、ポリ(テトラメチレンオキシド)等が挙げられる。
【0089】
有用なポリシロキサンとしては、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)およびそれらのコポリマーが挙げられる。ポリシロキサンは、直鎖、分岐または環式でもよい。有用なシロキサン−ポリ(アルキレングリコール)コポリマーとしては、例えば、ブロック構造またはグラフト構造を有することができるポリ(ジメチルシロキサン−ポリ(エチレングリコール)コポリマーが挙げられる。
【0090】
担体もしくは担体混合物の成分として有用である100℃未満の溶融温度を有する有機ポリマーとしては、低分子量のポリアミド、低分子量のポリエーテル、低分子量のポリスチレン、低分子量のアクリラートポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート(PEGMEA)、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、低分子量の熱可塑性セルロースエーテルおよびエステル、ポリ(2−エチルアクリル酸)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホナート)、ポリ(2−エチル2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0091】
そのうちで、可塑剤は、フタル酸エステル、トリメリタートエステル、アジピン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、テレフタル酸エステル、種々の脂肪酸エステル、エポキシ化植物油、スルホンアミド、オルガノホスファート、アルキルシトラート、アセチル化モノギルセリド(monogylceride)等である。
【0092】
担体は、硬化組成物に特定の機能属性を提供することがある。いくつかの実施形態においては、担体は、硬化組成物に向上した疎水性および/または撥油性を提供する。担体はまた、可塑化機能を行うこともある。
【0093】
殊に好ましい担体としては、ポリシロキサンオイル、ワックスおよびアルコール担体が挙げられる。殊に好ましいポリシロキサンオイルとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、および直鎖または分岐のポリジメチルシロキサン(PDMS)オイル、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)オイル、および他の液状シクロメチコンが挙げられる。パラフィンまたは蜜蝋ワックスが、殊に好ましいワックス担体である。ステアリルおよびセチルアルコールは、殊に好ましいアルコール担体であり、22℃で固体である。
【0094】
担体はまた、100℃未満の沸騰温度を有する低分子量の有機化合物を含んでもよいが、そのような材料が存在するならば、低分子量の有機化合物が、硬化性組成物全体の、2重量%以下、好ましくはそれらの1重量%以下または0.25重量%以下を構成する。これらの低分子量の有機化合物としては、例えば、PPG−14モノブチルエステル等の液体ポリエーテルおよびポリエーテルモノアルキルエステル;n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン等の液体アルカン;n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、メタノールおよびエタノール等の液体アルコール;パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルロ(perfluro)デカン−ピナン、パーフルオロデカン−オクタン、パーフルオロドデカン等のフッ素化アルカン;イソアミルクロリド、イソブチルクロリドおよびベンジルクロリド等の塩素化アルカンおよび塩素化芳香族化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよび1,4−ブタンジオール等のアルカンジオールおよびポリアルキレングリコール;セバシン酸ジイソプロピルおよびトリパルミチン酸グリセリン等の液体エステル;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の液体脂肪酸;1−ナフタルアミン;ビフェニル;ベンゾフェノン;ジフェニルアミン;1,2−ジフェニルエタン;無水マレイン酸;ピラジン;チモール;グリセリン;ソルビトールまたは他の糖;およびジベンジリデンソルビトールが挙げられる。
【0095】
f)1種もしくは複数の仕上げ加工属性化学物質。「仕上げ加工属性化学物質」は、担体およびモノマー以外の化合物であり、それは、本発明の処理プロセスの後に基材に残存し、基材にいくつかの所望の特性を付与する。仕上げ加工属性化学物質の例は、例えば、以下が挙げられる:
【0096】
f−1)疎水処理、つまり、処理済基材に撥水性および/または疎水性を付与する化学物質;
【0097】
f−2)撥油処理および疎油処理、つまり、処理済基材に油脂を容易に吸収させない物質、または油脂を寄せ付けないようにさせる物質;
【0098】
f−3)超疎水化剤;つまり、処理済基材の表面に水滴との非常に大きい接触角(>130°)を付与する物質。超疎水化剤は、50nm〜100ミクロンのサイズの固体粒子、例えば、粉末状のフルオロカーボンポリマー粉体等を含んでもよい。他の超疎水化剤としては、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ブチルジメチルクロロシランおよびトリメチルクロロシラン等の塩素化またはフッ素化シリコーン化合物が挙げられる。
【0099】
f−4)ウィッキング剤、充填剤、水捕捉剤、着色剤、難燃剤、研磨剤、レオロジー改質剤等の機能を実行する微粒子固体。このような微粒子固体としては、例えば、シリカゲル粒子、ヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドシリカ、ガラスまたは他のセラミック粒子、ポリスチレン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、ポリ(ビニルフルオリド)粒子、ポリ(ビニリデンフルオリド)粒子、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン粒子、ポリ(パーフルオロプロピルビニルエーテル)粒子、ポリ−(パーフルオロメチルビニルエーテル)粒子、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)粒子、ポリプロピレン微小球、鉱物粉末、例えばタルク、炭酸鉄および炭酸カルシウム等、並びに難燃性鉱物、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、種々のボラート、ホウ素化合物および/または亜リン酸化合物および無機水和物、炭化チタン、炭化タングステン、軽石、炭化ケイ素、ジルコニアアルミナが挙げられる。
【0100】
f−5)抗菌処理、つまり、Cu化合物、Zn化合物、Ag化合物、およびキトサン粒子を含む、微生物生長を阻害する物質および/または微生物を殺す物質。
【0101】
f−6)アボベンゾン、ルチル型二酸化チタン、二酸化ケイ素、ホモサラート、オキシベンゾン、4−アミノ安息香酸(PABA)、オクチサラート、オクトシレン、2−エチルへキシル4−ジメチルアミノベンゾアート等のUV吸収体および/またはUV反射体;
【0102】
f−7)染料および顔料等の着色剤。これらには、酸染料、反応性染料、および分散染料が含まれる。
【0103】
f−8)メラミン−ホルムアルデヒド樹脂および尿素−ホルムアルデヒド樹脂等の皺防止剤;
【0104】
f−9)ポリジメチルシロキサンおよびポリメチルヒドロシラン等の柔軟剤および擦り切れ防止剤;
【0105】
f−10)反射金属粒子、二酸化チタンまたはZnO粒子等の光反射材および/または熱反射材。
【0106】
f−11)例えば、柔らかさ、着心地および/または保湿性をつくりだす緩和剤。
【0107】
f−12)メトフルトリン、トランスフルトリン、ジクロボス、ペルメトリン、サイム油、ローズマリー油、シトロネラ油、シトロネラ油、レモンユーカリ油、レモングラス油、およびセダーウッド油等の殺虫剤および/または駆虫剤。
【0108】
f−13)種々の有機亜リン酸、亜リン酸含有化合物、ナトリウムテトラボラートおよびホウ酸をはじめとする臭素含有化合物およびホウ素含有化合物を含む固体または液体難燃剤。
【0109】
f−14)模倣品または偽造仕上げ処理を検出するのを助力する製剤に加えられるトレース法医学的化学マーカー(Trace forensic chemical markers)。そのようなマーカーは、イットリウム、スカンジウム、セリウム、ユウロピウムもしくはエルビウム等の希土類元素、または織物において通常見つからない他の元素、または紫外線に曝された際に検出可能な蛍光を提供する化合物を含有してもよい。
【0110】
化学処理混合物はまた、重合開始剤のためのg)1種もしくは複数の促進剤または活性化剤を含んでもよい。鉄塩、チタン塩またはバナジウム塩等の金属塩およびマンガンイオンもしくはマンガンは、そのような促進剤の例である。
【0111】
化学処理混合物は、h)1種もしくは複数の発泡剤をさらに含んでもよい。好適な発泡剤には、22℃で液体であるが硬化ステップの条件下で揮発する物理(吸熱性)型と、硬化反応条件下で分解する、分解しなければ反応してガスを形成する物理型とが含まれる。有機物理発泡剤が存在するならば、硬化性組成物が10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下、そしてさらにより好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.25重量%以下の、沸騰温度100℃未満の有機化合物を含有するように、有機物理発泡剤は、僅かな量で使用されたい。化学発泡剤が、二酸化炭素または窒素を発生するのが好ましく;化学発泡剤には、所謂アゾ型発泡剤、パーオキシエステル、パーオキシカルボナート等のパーオキシ発泡剤、並びに特定のカルバマート化合物およびシトラート化合物が含まれる。
【0112】
硬化性コーティング組成物の種々の原料の選択、それらの割合、および組成物を調製する手法は全て、コーティング組成物が22℃で液体であるように、または22℃、標準圧力で液相に分散した1種もしくは複数の固体の懸濁液であるように、およびコーティング組成物が、コーティング組成物の全重量を基準として、沸騰温度が100℃未満である有機化合物を10重量%以下、水を5重量%以下含有するように行われる。硬化性コーティング組成物は、5%以下、より好ましくは2%以下、さらにより好ましくは1%以下、そしてさらに好ましくは0.25以下重量%の沸騰温度100℃未満の有機化合物と、2%以下、より好ましくは1%以下そしてさらにより好ましくは0.25重量%以下の水を含有するのが好ましい。
【0113】
硬化性コーティング組成物は、重合ステップ4)の温度で1〜67kPa、好ましくは6.7〜53kPaの蒸気圧(1気圧で)を有する化合物を例えば少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%もしくは少なくとも25重量%含有してもよい。
【0114】
成分a)モノマー(存在するならば、および成分c)モノマー)は、硬化性組成物の重量の例えば0.5〜100%を一緒に構成してもよい。いくつかの実施形態においては、成分a)モノマーと成分c)モノマーが、硬化性コーティング組成物の重量の少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%または少なくとも40%を一緒に構成する。成分a)と成分c)は、硬化性コーティング組成物の重量の最大90%まで、最大80%まで、最大70%まで、最大60%まで、最大50%まで、最大40%まで、最大25%まで、最大10%までまたは最大5%までを一緒に構成してよい。いくつかの実施形態における成分c)は、成分a)と成分b)の重量の5〜50%、10〜40%、10〜30%または15〜25%を構成する。
【0115】
成分d)モノマーは、存在するならば、硬化性組成物の重量の最大50%までを構成してもよいが、但し、成分d)モノマーが100℃未満の沸騰温度を有するならば、成分d)モノマーは、硬化性組成物が沸騰温度100℃未満の有機化合物を2重量%以下含有する量で存在することを条件とする。好ましい量は、いくらか存在する場合、成分d)モノマーが100℃未満で沸騰するならば、硬化性コーティング組成物の重量の0.01〜25重量%、または0.01〜10%である。いくつかの実施形態においては、成分d)モノマーは、仮にも存在するならば、成分a)、b)およびc)を合わせた重量の最大5%まで、最大2%までまたは最大1%までを構成する。
【0116】
フリーラジカル開始剤等の重合開始剤は、硬化性組成物の重量の最大20%までを構成してもよい。好ましい量は、0.1〜10重量%である。より好ましい量は、硬化性組成物の2〜5重量%である。いくつかの実施形態においては、重合開始剤は、成分a)、c)およびd)を合わせた重量の最大30%まで、例えばそれらの3〜20%または5〜15%の量で存在する。
【0117】
担体または担体の混合物は、存在するならば、例えば、硬化性組成物の重量の2〜98%を構成してよい。22℃で固体である担体は、モノマー(つまり、成分a)、成分c)および成分d)の重量の最大150%までの量で存在するのが好ましい。いくつかの実施形態におけるそのような固体担体は、モノマーの重量の少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%の量で、およびモノマーの重量の最大150%まで、最大125%まで、または最大100%までの量で存在する。ワックス(担体型、上述の(vi))は、前述の文で示唆した量で存在するのが好ましい。
【0118】
液体(22℃、大気圧で)の担体は、希釈機能を行ってもよいので、いくつかの実施形態において、硬化性組成物の98重量%も構成してもよいし、硬化性組成物の約2重量%だけ構成してもよい。特定の実施形態においては、硬化性組成物は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%または少なくとも70重量%の1種もしくは複数の液状担体を含有してもよい。それは、最大96重量%まで、最大90重量%まで、最大75重量%まで、最大50重量%まで、最大35重量%まで、最大25重量%までまたは最大10重量%まで特定の実施形態において含有してもよい。
【0119】
仕上げ加工属性化学物質は、存在する場合、硬化性組成物の総重量の0.01〜70%、好ましくは0.01〜25%そしてより好ましくは0.01〜10%を構成してもよい。法医学的マーカーは、さらに低く、1〜1000ppmの濃度でもよい。
【0120】
他の材料は、硬化性組成物の総重量の0.01〜70%、好ましくは0.01〜50%、より好ましくは0.01〜25%、そしてさらにより好ましくは0.01〜10%を構成してもよい。
【0121】
好ましい硬化性組成物は、4〜85%の成分a)と、2〜25%の成分c)と、10〜70%、より好ましくは15〜50%の1種もしくは複数の担体と、0〜35%、好ましくは1〜25%の1種もしくは複数の官能属性材料とを含有する。別の好ましい硬化性組成物は、16〜70%の成分a)と、3〜20%の成分c)と、25〜50%の1種もしくは複数の担体と、0〜35%、好ましくは1〜25%の1種もしくは複数の官能属性材料とを含有する。このような好ましい硬化性組成物は、1〜10重量%の1種もしくは複数のフリーラジカル開始剤を含有する。このような好ましい硬化性組成物のいくつかの実施形態においては、成分a)は、1種もしくは複数のアクリラートモノマーまたはメタクリラートモノマーを含み;成分c)は、2〜6個のアクリラート基もしくはメタクリラート基を有する1種もしくは複数のモノマーを含み、成分c)は、存在するならば、1種もしくは複数の脂肪酸アクリラート化合物を含み、および成分e)は、1種もしくは複数のワックスおよびシリコーン油を含む。
【0122】
第3の好ましい硬化性組成物は、成分c)が成分a)と成分c)を合わせた重量の15〜85%を構成する組み合わせにおいて、成分a)と成分c)を合わせて1〜75%と;1種もしくは複数の担体を2〜98%と、1種もしくは複数の官能属性材料を0〜35%、好ましくは1〜25%とを含有する。この好ましい硬化性組成物においては、担体が、少なくとも1種の液状担体と少なくとも1種の固体(22℃で)担体を含むのが好ましく、固体担体が、モノマー(成分a)、c)およびd)を基準として10〜150重量%の量で存在するのが好ましい。第4の好ましい硬化性組成物は、成分c)が成分a)と成分c)を合わせた重量の20〜65%を構成する組み合わせにおける成分a)と成分c)を合わせて1〜60%と、1種もしくは複数の固体担体をモノマーの重量を基準として30〜100%と、1種もしくは複数の液状担体を2〜98重量%と、1種もしくは複数の官能属性材料を0〜35%、好ましくは1〜25%含有する。これらの第3および第4の好ましい硬化性組成物は、1種もしくは複数のフリーラジカル開始剤をモノマーの重量を基準として3〜20重量%または5〜15重量%含有するのが好ましい。そのような第3および第4の好ましい硬化性組成物のいくつかの実施形態において、成分a)は、1種もしくは複数のアクリラートモノマーまたはメタクリラートモノマーを含む;成分c)は、2〜6個のアクリラート基もしくはメタクリラート基を有する1種もしくは複数のモノマーを含み、成分d)は、存在するならば、1種もしくは複数の脂肪酸アクリラート化合物を含み、および成分e)は、1種もしくは複数のワックスおよびシリコーン油を含む。
【0123】
殊に好ましい硬化性組成物(2段落前にまさに記載した好ましい組成物を含む)は、少なくとも1種の固体(22℃で)成分a)モノマーと少なくとも1種の液体(22℃で)成分a)モノマーとを含む。固体成分a)モノマーは、全ての成分a)モノマーの総重量の20〜85%または20〜65%を構成してもよい。そのような組成物おいては、固体成分a)モノマーは、脂肪酸基が炭素原子を18個以上含有する脂肪酸アクリラートを含んでもよく、そして液体成分a)モノマーは、脂肪酸基が炭素原子を最大16個まで含有する脂肪酸アクリラートおよび/または脂肪酸基が炭素原子を最大18個まで含有する脂肪酸メタクリラートであってよい。このような殊に好ましい硬化性組成物は、3〜20%の成分c)を含有してよい。このような組成物中の成分c)材料は、1種もしくは複数のアルカンジオールジアクリラート、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールポリアクリラートおよびあまに油、サフラワー油またはきり油等の乾性油を含んでもよい。この殊に好ましい硬化性組成物は、20〜50%の成分e)を含有してよく、成分e)は、少なくとも1種の高級アルコール、ワックスおよびシリコーン油を含むのが好ましい。この殊に好ましい硬化性組成物は、場合により、1〜25%の少なくとも1種の仕上げ加工属性化学物質を含んでもよく、最大2%までの成分d)モノマー(仮にもいずれか存在するならば)を含有してもよい。
【0124】
以下の実施例は、本発明を例証するが、その範囲を限定しないものとする。特に明記しない限り、全ての部および百分率は、重量によるものである。
【実施例】
【0125】
実施例1
本実施例において、耐衝撃性の衣料に使用される目の粗いパラアミド布帛を基材として使用する。アラミド繊維内の水の存在は、繊維を弱めると考えられている。
【0126】
30重量%のオクタデシルアクリラート、18重量%のパラフィン、9重量%の1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、8重量%のアクリル酸ラウリル、3重量%のジペンタエリトリトールペンタアクリラート/ヘキサアクリラート、5重量%の過酸化ラウロイルおよび27重量%のデカメチルシクロペンタシロキサンを含有する硬化性モノマー系の組成物を混合した後、ポリジメチルシロキサン(5センチストーク)で1:2に希釈し、熱活性化重合開始剤を用いて、フリーラジカル重合性であるモノマーを含有する沸騰温度100℃超の硬化性コーティング組成物を作製する。8.5インチ×8.5インチのアラミド布帛の同一スワッチ2つをこのコーティング組成物に浸漬した後、2つの加圧ローラー間で過剰な液体を絞り出すことにより、これらの2つのスワッチを被覆する。
【0127】
1番目のスワッチ(実施例1)に塗布したコーティング量は、26.1g/m
2である。コーティングを以下のように硬化する:オートクレーブ内のガスが0.1モル%未満の酸素を含有するようになるまで、室温、1気圧でオートクレーブを通して窒素ガスを流し、酸素分子をパージする。次に、オートクレーブを封止し、窒素で1.4MPaまで加圧した後、121℃まで40分間加熱し、重合開始剤を活性化し、組成物を硬化する。昇圧で硬化した試料の後硬化コーティングの加算量は、前硬化のコーティングの加算量と同じで、26.1g/m
2で変わらない。
【0128】
2番目のスワッチ(比較試料A)に塗布したコーティング量は、33.7g/m
2である。実施例1と同じ方法で酸素分子をパージして、このコーティングを硬化し、その後121℃で硬化するが、硬化ステップ中、圧力は、1気圧であり、容器を封止しないので、原子炉内のガスは自由に大気に排気できる。大気圧で硬化した試料の後硬化の加算量は、著しく低く僅か22.7g/m
2であり、または未硬化の塗布したコーティングの量の約3分の2しかない。
【0129】
次に、10分のブンデスマン撥水性試験により、両方のスワッチを評価する。本試験における実施例1での水分増加量は、6.95%であり、被覆試料を介しての水の浸透量は、16mLである。一方、比較試料Aでの水分増加量は、11.97%であり、この試料を介しての水の浸透量は、30mLである。加圧して封止した容器内での圧力下で硬化することにより、水分増加量と水の浸透量の両方が、ほぼ半分まで減る。
【0130】
実施例2
63%のナイロン、25%のポリエステルおよび12%のライクラから成る密に織ったスポーツ衣料用の布帛の2つのスワッチを硬化性コーティング組成物でディップコートし、実施例1で記載したように、加圧したローラー間で絞り出す。1番目のスワッチ(実施例2)を高圧容器内で1.4MPa、125℃で40分間、硬化する。そのスワッチは、硬化したコーティング量14.140g/yd
2を有する。もう一方のスワッチ(比較試料B)を2回被覆した後、同温度で、窒素雰囲気下、大気圧、未封止の原子炉内で硬化する。比較試料Bは、硬化したコーティング量23.360g/yd
2を有する。比較試料Bのコーティング量が非常に高いにもかかわらず、比較試料Bは、AATCC22噴霧試験に基づく噴霧による等級「70」しか実現しなく、実施例2で使用した、それより低いコーティング量の試料は、噴霧による等級「100」を実現する。
【0131】
実施例3
実施例1で用いたのと同じ混合物を用いて、積層のポリエステル/ポリ−ウレタン薄膜布帛の外層として使用する密に織った100%のポリエステル布帛を被覆する。同じ方法および同じ用量で、2つの試料を被覆する。実施例1に関して記載した手法、126℃の硬化温度で、ひとつの試料(実施例3)を硬化する。同じ手法であるが大気圧で、もう一つの試料(比較試料C)を硬化する。実施例1は、ブンデスマン撥水性試験による完全な「5」等級を実現し、水分量が2.53%だけ増加する。比較試料Cは、実施例1より低い「4」等級を実現し、水分が6.32%増加する。ブンデスマン試験において、これらの密に織った試料のどちらも検出可能な水の浸透はない。
【0132】
実施例4および5
実施例1に記載したのと同一な適用量の硬化性コーティング組成物で、屋外用家具の椅子張りに一般的に使用される密に織ったアクリル布帛の重複試料を被覆する。同様に、アクリル幌布地の重複試を同じ組成物で被覆する。硬化したコーティング量を下の表に示す。硬化後の試料の重量を被覆していない試料の重量と比較することにより、硬化したコーティング量を求める。
【0133】
各場合においては、実施例1に関して記載したのと同じ手法で、試料(それぞれ、実施例4と5)のうちの1つを125℃で硬化する。大気圧であることを除いて、同じ手法で、重複試料(それぞれ比較試料DとE)を硬化する。次に、AATCC22噴霧試験を用いて、試料を評価し、結果を以下の表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1に示すように、超大気圧下での硬化は、両方の布帛に関して、AATCC等級の著しい向上をもたらし、水分増加が殆どない。驚くことに、硬化済みの試料におけるコーティング量は、前硬化の加算量とほぼ同じであるにもかかわらず、比較試料と比べて実施例4および5においてかなり高い。これは、比較試料では、硬化組成物のかなり量が、低い圧力で揮発していることを示唆する。
【0136】
実施例6
実施例1で記載したパラ−アミド布帛の3つの試料を前清浄し、有機汚染物質を除去する。実施例1で記載したコーティング組成物とトリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シランの重量比1:1の混合物で、1番目の試料を被覆する。実施例1のコーティング組成物とパーフルオロヘキシルエチルアクリラートとの重量比1:1の混合物で、2番目の試料を被覆する。
【0137】
3番目の試料を他の2つの試料のように清浄するが、その後にTiCl3イソプロピルアルコールの1:5希釈液で噴霧し、乾燥させた。これにより、チーグラー・ナッタ触媒(Ziegler−Natta catalyst)の存在が試料に提供される。次に、実施例1の組成物とパーフルオロオクチルエチレンとの重量比1:1の混合物で、その試料を被覆する。
【0138】
次に、被覆試料を125℃の硬化温度で、実施例1で記載したように硬化する。AATCC118炭化水素に対する忌避性(hydrocarbon repellency)試験に従って、硬化済みの試料を撥油性に関して試験する。3つの試料全てが、最も高い(「8」)等級を呈し、水とn−ヘプタンの両方とも寄せ付けないことを示唆する。
【0139】
3種類全ての重複試料を大気圧で硬化する場合、それの試料は、撥油性を殆どまたは全く示さず、撥水性だけを立証する。
【0140】
実施例7
36%のオクタデシルアクリラート、11%の1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、9%のアクリル酸ラウリル、5%のジペンタエリトリトールペンタアクリラート/ヘキサアクリラート、4%の過酸化ラウロイルおよび35%のデカメチルシクロペンタシロキサンから成り、5cStのポリジメチルシロキサンで1:2に希釈した炭化水素モノマーの混合物で、コンピュータ回路周辺機器を塗装する。次に、塗装した基材を容器に入れ、容器を通して窒素を流し、その容器を酸素パージし、酸素欠乏の窒素環境下、1.4MPa、126℃の温度でコーティングを硬化する。圧力容器から取り出した際にコーティングが固まったのがわかる。そしてコーティングを電子部品の間および下に押し付け、金属接触路(metal contact vias)にさえにも押し付け、機器を効果的に封止する。コーティングは、撥水性であり、機器上に置いた数滴の水の追加に耐える。湿気に弱いマーカーボタンは、存在する水分を除去するのに使用するが、マーカーボタンの上のコーティングに水滴を直接置いた場合でさえも、水滴はそのままの状態で残っている。
【0141】
実施例8および9
ウィッキング剤を含有していない100%のポリエステルのフリース製品の4つのスワッチを、親水性の仕上げを生み出すモノマーコーティングを用いて、処理する。5番目のスワッチは、対照として未処理のまま残す。
【0142】
アクリル酸、デカメチルシクロペンタシロキサンおよび1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの体積比5:4:1での混合物で、スワッチのうち2つを平滑な表面側上でロール被覆する。これらのうち1つのスワッチ(実施例8)をオートクレーブ内に入れて、窒素でパージした後、窒素下、1.48MPa、125℃、封止したオートクレーブ内で硬化する。残りのスワッチ(比較試料Fを大気圧窒素下、同じ温度で硬化する。実施例8と比較試料Fはそれぞれ、ほぼ等しい「湿分」コーティング量を有するが、硬化後、実施例8のコーティング量は、比較試料Fのコーティング量が僅か1.9g/m
2であるのに対して、6.35g/m
2である。
【0143】
アクリル酸、デカメチルシクロペンタシロキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびエチレングリコールジメタクリラートの体積比5:4:1:1の混合物を表面側にロールコーティングすることにより、2つの他の試料を調製する。これらのうちの1つの試料(実施例9)をオートクレーブ内に入れて、窒素でパージした後、窒素下、1.48MPa、125℃で、封止したオートクレーブ内で硬化する。大気圧窒素下、125℃で、オートクレーブを使って、残りの試料(比較試料G)を硬化する。実施例9および比較試料Gは、それぞれ、ほぼ等しい「湿分」コーティング量を有するが、硬化後、実施例9のコーティング量は、比較試料Fのコーティング量が僅か2.1g/m
2であるのに対して、10.6g/m
2である。
【0144】
対照試料および比較試料FおよびGは、親水性を全く示さず:布帛につけた水滴は、1分を超えた後でさえも、染み込まない。実施例8および9は、即座に親水性を示し、つけた液滴を2秒未満で染み込ませる。
【0145】
実施例10
従来塗布されるウィッキング仕上げ剤(つまり、シャツ生地に付けた水滴を直ちに布帛中に運ぶ)を有する完全に仕上がった100%ポリエステルのスポーツシャツをマネキンに着せて、実施例1の硬化性モノマーコーティング36mLをシャツに、大容量低圧力の塗料吹付け器を用いて吹付け塗りすることにより、シャツを疎水性処理する。シャツの全ての面の外面だけに、縫製された縫い目、襟および半そでを含めて噴霧する。2.5リットルの蒸留水を含有する、18Lの水蒸気オートクレーブ内に噴霧済みのシャツをだらりと入れる。乾燥窒素流を用いて、オートクレーブを最初に酸素パージした後、電機浸漬ヒーターを用いて、水蒸気の発生を開始する。オートクレーブは、圧力が150kPaゲージを超える際に、水蒸気が逃げることができる圧力解放値(relief value)を有する。この圧力での水蒸気の平衡温度は、126℃である。水蒸気が、その体積中に残存するいかなる窒素(もしくは空気)も置き換えるので、製品を硬化中に、いかなる窒素も存在しない。
【0146】
処理済みのシャツを0.15MPa、126℃で20分間加熱した後、電源を切って、装置を冷却させて、大気圧に戻す。硬化後、シャツは、十分に疎水性であり、ポリマー処理が、元来存在していたウィッキング剤に勝ることを示唆している。硬化済みのポリマーの用量を36g/m
2と見積もる。AATCC22噴霧試験と併用する洗濯耐久性試験は、80回の家庭での洗濯/乾燥サイクル後に完全な撥水性(AATCC22噴霧試験に基づく噴霧による等級100)を維持することを示唆する。
【0147】
実施例11
雨水防護用の上着に設計した密に織った100%ポリエステルの3つのスワッチを処理するために調製し、ブンデスマン撥水試験機で試験する。1番目の試料は、未処理であり、対照(比較試料H)としての役目をする。実施例1で記載した組成物を5cStのPDMSで体積比1:2に希釈して作ったコーティング組成物を用いて、残りの試料を被覆する。液体製剤中に試料を浸漬した後に2つの金属ローラー間で過剰な液体を絞り出すことにより、コーティングを行う。被覆試料のひとつ(実施例11)を圧力容器内に入れて、容器内を窒素でパージした後、続いて窒素で1.48MPaまで加圧し、次に125℃まで加熱し、コーティングを硬化する。もう一つの被覆試料(比較試料I)を大気圧窒素下、125℃で硬化する。3つの試料全てをブンデスマン試験機において10分間評価し、結果を表2に示す。目視等級は、目視により1〜5(5が最良)の等級を与える。水分の加算量%は、試験中に試料が得た水分量である。水浸透は、試料を介して通過する水分量であり、最小検出可能量は、1mL未満である。
【0148】
【表2】
【0149】
表3の結果からわかるように、未処理の対照は、完全に濡れている。実施例11と比較試料Iの両方とも、いかなる水も試料を浸透するのを本質的に回避しているが、高圧下で硬化を実施している実施例11は、大気圧で硬化される比較試料Iよりも、約50%少ない水分を吸収する。
【0150】
実施例12
薄膜布帛には、ポリウレタンまたはPTFE等の薄い水蒸気透過性膜が含まれる。薄膜は、非常に薄く、微視的なレベルでは僅かに多孔質であるので、透湿性である。薄膜は、非常に薄いので、他の2枚の布帛の層間に薄膜を挟さんで、薄膜を保護する必要がある。通常、皮膚または他の衣類による摩擦から薄膜を保護する柔らかい布帛の底部と、薄膜を外部からの磨耗から保護する役目を果たしかつ衣料品の外観のための表布帛とが存在する。上面の表布帛は、撥水性の仕上げ剤で処理する必要があり、その結果、雨水が衣料品から急速にはじかれて、「濡れ出し」を回避する。表布帛にそのような水が染み込んだ状態が生じるならば、それは濡れた布帛により遮られる散乱であるので、体からの水蒸気が、薄膜を介して逃げることができない。それゆえに、猛烈なにわか雨の際においてさえも、表布帛ができる限り撥水性であることが望ましい。
【0151】
中央のPTFE薄膜を有する3層の薄膜布帛の複数の試料は、上面の表布帛に被覆を施し、実施例1に記載した一般的な手順を用いて、硬化する。コーティングおよびパージ後に、酸素欠乏雰囲気下、250psig(1.7MPa)または450psig(3.1MPa)圧力のどちらかで、布帛を加圧して、その圧力、90℃で15分間、硬化する。ISO9865試験プロトコルに従って、ブンデスマン撥水性試験機で10分間、被覆布帛を撥水性に関して評価する。1.7MPaの圧力で硬化した試料は、4.7の撥水性等級を実現する。その試料は、15.4%の水分量が増加し、水は全く試料を浸透しない。3.1MPaの圧力で硬化した試料は、完全な5等級の撥水性を実現し、5.7%だけの水分が増加する。水がその試料を通過することもない。これらの実験においては、硬化中の圧力が高いほど、結果は、明らかに向上する。
【0152】
実施例13および14
135℃、1.7MPaゲージ圧力で硬化を実施することを除いて、実施例1に記載した一般的な手順に従って、表面潤滑剤を有するアラミド布帛の重複試料を被覆する。
【0153】
1番目の試料を前処理しないで被覆する。ISO9865試験に基づくと、被覆試料は、20〜25%の水分量が増加する。
【0154】
2番目の試料(実施例13)を50psi(345kPa)純酸素で15分間、150℃まで加熱して、試料に酸化前処理を施す。コーティング後、試料は、2.9%だけ水分量が増加する。この結果は、水洗浄(3.5%の水分量が増加)およびプラズマ処理(2.5%の水分量が増加)により潤滑剤を除去したさらなる比較試料に匹敵する。
【0155】
3番目の試料(実施例14)を50psi(345kPa)純酸素で15分間、190℃まで加熱して、試料に酸化前処理を施す。コーティング後、試料は、0.9%だけ水分量が増加し、それは、対照のいずれと比較しても著しく向上している。