特許第6909295号(P6909295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909295
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】肺静脈隔離バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20210715BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20210715BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20210715BHJP
   A61B 18/06 20060101ALI20210715BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61B18/14
   A61B18/18 100
   A61B18/06
   A61B17/00 700
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-530824(P2019-530824)
(86)(22)【出願日】2017年12月1日
(65)【公表番号】特表2020-510459(P2020-510459A)
(43)【公表日】2020年4月9日
(86)【国際出願番号】US2017064255
(87)【国際公開番号】WO2018106538
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年8月6日
(31)【優先権主張番号】62/432,045
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ケー. オルソン
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505050(JP,A)
【文献】 特表2002−538932(JP,A)
【文献】 特表2006−516465(JP,A)
【文献】 特表2016−516473(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0260277(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0224153(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0086073(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0184400(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0270238(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0105764(US,A1)
【文献】 米国特許第05766151(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 18/06
A61B 18/14
A61B 18/18
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスバルーン装置であって、
第1の外周を有する遠位円筒部分と、
前記第1の外周より大きい第2の外周を有する近位円筒部分と、
前記近位円筒部分及び前記遠位円筒部分の間に延びている円錐台形の形状を有する中間部分と、を備える、
医療デバイスバルーン装置。
【請求項2】
前記遠位部分は、肺静脈口と係合することによって、前記医療デバイスバルーン装置の前記長手方向軸を肺静脈と軸方向に整列させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記近位部分及び前記中間部分の少なくとも一方は、肺静脈洞の連続する長さ及び円周と係合し、前記肺静脈洞に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも前記遠位部分及び前記中間部分は、肺静脈の連続する長さ及び外周に沿って肺静脈口及び肺静脈洞の両方と係合するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
心房細動を処置するシステムであって、
近位端及び遠位端を備えるバルーン送達カテーテルと、
前記バルーン送達カテーテルの前記遠位端に結合されるアブレーションバルーンと、を備え
前記アブレーションバルーンは、
第1の外周を有し、前記アブレーションバルーンの第1の長手方向軸を肺静脈の第2の長手方向軸に整列させるために、肺静脈口と係合するように構成される遠位円筒部分と、
前記第1の外周より大きい第2の外周を有する近位円筒部分と、
前記アブレーションバルーンの前記近位円筒部分と前記遠位円筒部分との間に延びている円錐台形の形状を有する中間部分と、を備え、
前記アブレーションバルーンの前記近位円筒部分及び前記中間部分の少なくとも一方は、連続する長さ及び円周に沿って肺静脈洞と係合し、前記肺静脈洞に対して均一のアブレーション治療を行なうように構成される、システム。
【請求項6】
前記アブレーションバルーンは、前記肺静脈洞の連続する長さ及び円周に沿って一貫したアブレーション治療を行なうように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記アブレーションバルーンは、独立して膨張するように構成される第1のバルーン及び第2のバルーンを備え、
前記第1のバルーンは、前記アブレーションバルーンの近位端に配置されるとともに、前記肺静脈洞に対して周方向でアブレーション治療を行なうように更に構成され、
前記第2のバルーンは、前記アブレーションバルーンの遠位端に位置決めされるとともに、前記肺静脈口に対して周方向でアブレーション治療を行なうように更に構成される、請求項又はに記載のシステム。
【請求項8】
前記アブレーションバルーンの断面は、楕円形状であり、
前記アブレーションバルーンの前記楕円形状は、前記アブレーションバルーンの膨張に応じた肺静脈組織の伸張を防止するように構成される、請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記アブレーションバルーンは、前記肺静脈組織の円周に沿う壁応力を最小限に抑えて統一するように更に構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記アブレーションバルーンは、非弾性材料から成るとともに、前記アブレーションバルーンの前記中間部分が前記肺静脈洞と接触することに応じて、前記遠位部分が過度に拡張することを防止するように構成される、請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記アブレーションバルーンは、低温流体アブレーション、レーザエネルギー、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、不可逆的エレクトロポレーション、化学反応、及び、高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を使用して、組織をアブレーションする、請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
肺静脈隔離用のバルーンカテーテルであって、
アブレーションバルーンを肺静脈内に展開するように構成されるカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位端に結合されるアブレーションバルーンであって、
未展開の形態から展開するとともに、
肺静脈洞の連続する長さ及び円周に沿って前記肺静脈の組織壁と係合するように構成され、
第1の外周を有する遠位部分と、前記第1の外周より大きい第2の外周を有する近位円筒部分と、前記アブレーションバルーンの前記近位円筒部分と前記遠位円筒部分との間に延びている円錐台形の形状を有する中間部分と、を備える、前記アブレーションバルーンと、
前記アブレーションバルーンにより係合される前記肺静脈洞に対して均一なアブレーション治療を行なうように前記アブレーションバルーンと共に構成される組織アブレーション手段と、を備える、
バルーンカテーテル。
【請求項13】
前記組織アブレーション手段は、冷凍アブレーション、レーザエネルギー、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、不可逆的エレクトロポレーション、化学反応、及び、高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を備える、請求項12に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
前記遠位部分は、肺静脈口と係合するように構成され、
前記近位部分及び前記中間部分は、肺静脈洞の連続する長さ及び円周と係合し、組織アブレーション治療を肺静脈洞に対して行なうように構成される、請求項12又は13に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
前記組織アブレーション手段は、前記肺静脈腔及び前記肺静脈口で同時に組織アブレーション治療を行なうように構成される、請求項1214のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
前記アブレーションバルーンは、独立して膨張するように構成される第1のバルーン及び第2のバルーンを備え、
前記第1のバルーンは、前記アブレーションバルーンの近位端に配置されるとともに、前記肺静脈洞に対して周方向でアブレーション治療を行なうように構成され、
前記第2のバルーンは、前記アブレーションバルーンの遠位端に配置されるとともに、前記肺静脈口に対して周方向でアブレーション治療を行なうように構成される、請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年12月9日に出願された米国仮出願第62/434,045号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、カテーテルに関し、特に、心臓内で診断又はアブレーション治療を行なうためのカテーテルに関する。1つの実施形態において、本開示は、肺静脈組織の近傍でアブレーションすることによって心臓不整脈を治療するためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
人の心臓は、その心筋組織を横切る電流を定期的に受ける。各心収縮の直前、電流が心筋組織を通じて広がるにつれて、心臓は脱分極及び再分極する。健康な心臓では、心臓の組織は脱分極波の規則的な進行を受ける。例えば異所性心房頻脈、心房細動及び心房粗動を含む心房性不整脈を受ける心臓などの不健康な心臓では、脱分極波の進行が無秩序状態となる。不整脈は、瘢痕組織又は急速で均一な脱分極の他の障害の結果として残る場合がある。これらの障害により、脱分極波が心臓の幾つかの部分を通じて複数回電気的に循環する場合がある。心房性不整脈は、不規則な心拍、同期性の房室収縮の損失及び血流停止を含む様々な危険な状態をもたらす可能性がある。これらの状態の全ては、死を含む様々な疾患と関連付けられてきた。
【0004】
様々な診断的及び/又は治療的な医療処置では、例えば異所性心房頻脈、心房細動及び心房粗動を含む心房性不整脈などの状態を是正するためにカテーテルが使用される。
【0005】
一般に、血管内処置において、カテーテルは、例えば患者の心臓へ向けて患者の脈管構造を通じて操作されるとともに、マッピング、アブレーション、診断又は他の処置のために使用されてもよい1つ以上の電極を支持する。心房性不整脈を含む症状を軽減するためにアブレーション治療が望ましい場合には、アブレーションカテーテルが心筋組織に対してアブレーションエネルギーを与えて傷を形成する。傷付けられた組織は、電気信号を伝達することが殆どできず、それにより、望ましくない電気経路が断たれ、不整脈をもたらす迷走電気信号が制限又は防止される。アブレーションカテーテルは、例えば、高周波(RF)、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質及び高密度焦点式超音波を含むアブレーションエネルギーを利用してもよい。例えば、バルーンを膨張することで肺静脈の組織を改質するカテーテルの例が、特開2002−538932号公報に開示されている。
【0006】
前述の議論は、本分野を説明することのみを意図しており、特許請求の範囲の否定としてとられるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、心臓内で診断又は組織アブレーションを行なうための電気生理的カテーテルに関する。特に、本開示は、心臓不整脈のための治療を受ける肺静脈の形状に適合し、肺静脈組織の長さ及び円周に沿って一致する組織アブレーションラインを生成する電気生理的カテーテルに関する。
【0008】
本開示の態様は、医療デバイスバルーン装置を対象とする。装置は、第1の外周を有する遠位部分と、近位部分と、中間部分と、を備える。近位部分は、第1の外周より大きい第2の外周を有し、また、中間部分は、アブレーションバルーンの近位部分と遠位部分との間に結合される変化する外周を有する。遠位部分は、第1の周方向に延在する表面を備え、近位部分は、第2の周方向に延在する表面を備える。第1の周方向に延在する表面及び第2の周方向に延在する表面のいずれも、医療デバイスバルーン装置の長手方向軸から離れて延びる径方向ラインから接線方向に延在する。
【0009】
本開示の1つの典型的な実施形態では、心房細動を処置するシステムが教示される。システムは、近位端及び遠位端を有するバルーン送達カテーテルと、バルーン送達カテーテルの遠位端に結合されるアブレーションバルーンと、を備える。アブレーションバルーンは、遠位部分、近位部分及び中間部分を備える。遠位部分は、第1の外周を有し、アブレーションバルーンの長手方向軸を肺静脈の第2の長手方向軸に整列させるために、肺静脈口と係合する。近位部分は、第1の外周より大きい第2の外周を有する。中間部分は、アブレーションバルーンの近位部分と遠位部分との間に結合され、変化する外周を有する。アブレーションバルーンの近位部分及び中間部分の少なくとも一方は、連続する長さ及び円周に沿って肺静脈洞と係合し、肺静脈洞に対して均一のアブレーション治療を行なう。
【0010】
本開示の他の実施形態では、肺静脈隔離用のバルーンカテーテルが開示される。バルーンカテーテルは、カテーテルシャフトと、アブレーションバルーンと、組織アブレーション手段と、を備える。カテーテルシャフトは、アブレーションバルーンを肺静脈内に展開し、バルーン送達カテーテルの遠位端に結合される。アブレーションバルーンは、未展開の形態から展開し、肺静脈洞及び肺静脈口の連続する長さ及び円周に沿って肺静脈の組織壁と係合する。組織アブレーション手段は、アブレーションバルーンと共に、アブレーションバルーンにより係合される肺静脈洞の円周周りに均一なアブレーション治療を行なう。また、アブレーションバルーンは、カテーテルシャフトによりアブレーションバルーンに及ぼされる付勢力に、付勢力に打ち勝つように肺静脈口と係合することによって打ち勝つ。
【0011】
本開示の上記および他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことから、ならびに添付図面を検討することから明らかになるであろう。
【0012】
様々な例示的な実施形態は、添付図面に関連して以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の様々な態様による、治療的な医療処置を行なうためのカテーテルシステムの概略的な図である。
【0014】
図2】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが左心房内から肺静脈を特定している状態の心臓の一部の正断面図である。
【0015】
図3】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが肺静脈内に配置された状態の左心房の正断面図である。
【0016】
図4】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンの展開前における、アブレーションバルーンカテーテルが内部に配置された状態の、左心房の一部と肺静脈の正断面図である。
【0017】
図5】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが内部で展開された状態の肺静脈の正断面図である。
【0018】
図6A】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンの斜視側面図である。
【0019】
図6B】本開示の様々な態様による、図6Aのアブレーションバルーンの平面図である。
【0020】
図6C】本開示の様々な態様による、図6Aのアブレーションバルーンの正面図である。
【0021】
図7A】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンの斜視背面図である。
【0022】
図7B】本開示の様々な態様による、図7Aのアブレーションバルーンの平面図である。
【0023】
図7C】本開示の様々な態様による、図7Aのアブレーションバルーンの正面図である。
【0024】
図8A】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンの斜視側面図である。
【0025】
図8B】本開示の様々な態様による、図8Aのアブレーションバルーンの平面図である。
【0026】
図8C】本開示の様々な態様による、図8Aのアブレーションバルーンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において検討されている様々な実施形態が修正形態及び代替形態に適しているが、それらの態様は図面に例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、特許請求の範囲を説明されている特定の実施形態に限定する意図はないことが理解されるべきである。それどころか、特許請求の範囲において定義される態様を含む本開示の範囲内に入る全ての修正形態、等価物、および代替案を包含することが意図されている。さらに、本願を通じて用いられている用語「例(example)」は実例に過ぎず、制限ではない。
【0028】
本開示は、心臓内で診断又は組織アブレーションを行なうための電気生理的カテーテルに関する。特に、本開示は、心臓不整脈のための治療を受ける肺静脈の形状に適合し、肺静脈組織の長さ及び円周に沿って一致する組織アブレーションラインを生成する電気生理的カテーテルに関する。本開示の様々な実施形態の詳細については、図を具体的に参照して以下で説明する。
【0029】
一般に、アブレーション治療は、傷ラインを形成するために制御された態様で多くの個々のアブレーションを行なうことによって果たされてきた。そのような傷ラインは、多くの場合、心臓内へ異常な電気信号を導入し得る心臓の左心房内の肺静脈周り/肺静脈間に形成されることが望ましい。この種のアブレーション治療は、最適な結果のためにアブレーションカテーテルの正確な位置決めを必要とする。エネルギーの印加を最小にして十分なアブレーションのブロックを得ようとする、開発中の、又は商品化されているデバイスが存在する。既存の設計は、フープを有する診断カテーテルから、エネルギー印加機能を有するバルーン装着設計にまで及ぶ。既存の設計は、治療を行なっている最中に肺静脈の円周及び長さ周りに連続的に接触できないという欠点があり、その結果、一貫性のない傷ラインと不完全な電気信号遮断がもたらされる。
【0030】
同様の参照番号が様々な図における同様の構成要素を特定するために使用される図面を参照すると、図1は、組織アブレーション処置を行なうためのカテーテルアブレーションシステム100の概略的な図である。実施形態の一例では、組織120は人体140内の心臓組織を備える。しかしながら、システムが人の体内及び人以外の体内の様々な他の組織に関連する用途を見出してもよく、したがって、本開示が心臓組織及び/又は人体のみに関連するシステムの使用に限定されるように意図されていないことが理解されるべきである。
【0031】
カテーテルアブレーションシステム100は、カテーテル160と、カテーテル160の遠位端128でアブレーションバルーン130により行なわれるアブレーション治療を制御するためのアブレーションサブシステム180を含んでもよい。アブレーションサブシステム180は、例えば高周波(RF)、直流電流(DC)、不可逆的エレクトロポレーション、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質、及び、高密度焦点的超音波を含む、アブレーションエネルギーの印加及び/又は生成を制御できる。そのようなアブレーションサブシステムの実施形態の例は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,449,538号、米国特許第9,289,606号、米国特許第8,382,689号、及び、米国特許第8,790,341号に記載される。
【0032】
図1の例示的な実施形態において、カテーテル160は、心臓組織120などの体内組織の検査、診断及び/又は処置のために設けられる。カテーテルは、ケーブルコネクタ又はインタフェース121、ハンドル122、近位端126と遠位端128とを有するシャフト124(本明細書中で使用される「近位」は、ハンドル122付近のカテーテル160の端部へと向かう方向を指し、「遠位」は、ハンドル122から離れる方向を指す)、及び、カテーテルシャフト124の遠位端128に結合されるアブレーションバルーン130を含んでもいてよい。
【0033】
アブレーションバルーン130は、シャフト124の1つ以上の部分を操作してアブレーションバルーンを(例えば心筋内の)所望の位置に位置決めするために、ハンドル122を使用して患者140の脈管構造を通じて操作されてもよい。様々な実施形態において、アブレーションバルーンは、アブレーションサブシステム180により動作されるときにアブレーションバルーン130と接触する組織120をアブレーションするアブレーション要素(例えば、アブレーション電極、高密度焦点式超音波アブレーション要素、超冷却/超加熱流体など)を含む(また、場合によっては、アブレーションバルーン130に近接する組織が、血液プールを通って近位組織へ伝導性のエネルギーを伝達することによってアブレーションされてもよい)。
【0034】
本開示の様々な特定の実施形態において、カテーテル160は、カテーテルシャフト124の遠位端128に、電極と1つ以上の測位センサ(例えば、電極及び/又は磁気センサ)を含んでいてもよい。そのような実施形態において、電極は、心臓組織120に関連するEPデータを取得し、一方、測位センサは、アブレーションバルーン130の3D位置を示す位置データを生成する。更なる実施形態において、カテーテル160は、例えば、限定されないが、操作ワイヤとアクチュエータ、灌注ルーメンとポート、圧力センサ、接触センサ、温度センサ、付加的な電極、及び、対応する導体又はリード線などの他の従来のカテーテル構成要素を更に含む。
【0035】
コネクタ121は、例えばアブレーションサブシステム180からアブレーションバルーン130まで延在する1つ以上のケーブル132のための機械的及び電気的な接続を行なう。他の実施形態において、コネクタは、例えば、流体源(カテーテル160が灌注カテーテルを備える場合)及び接触/圧力検出回路などのカテーテルシステム100内の他の構成要素から延在するケーブルのための機械的接続、電気的接続及び/又は流体接続を行なってもよい。コネクタ121は、当該技術分野において従来のものであり、カテーテル160の近位端126に配置される。
【0036】
ハンドル122は、ユーザがカテーテル160を保持するための場所をもたらし、身体140内でシャフト124のための操作又は案内を更に行なってもよい。例えば、ハンドル122は、カテーテル160を通じてシャフト124の遠位端128まで延在することによりシャフトを操作する1つ以上の操作ワイヤを操作するための手段を含んでいてもよい。ハンドル122は、当該技術分野において従来のものであり、ハンドルの構成は異なっていてもよいことが理解される。他の実施形態において、カテーテル160の制御は、カテーテルシャフト124をロボット駆動又はロボット制御することによって、或いは磁気ベースの案内システムを使用してカテーテルシャフト124を駆動及び制御することによって、自動化されていてもよい。
【0037】
カテーテルシャフト124は、患者の身体140内で移動するように構成される長尺な管状の可撓性部材である。シャフトは、アブレーションバルーン130をカテーテル160の遠位端128に支持する。また、シャフト124は、(灌注流体、低温アブレーション流体及び体液を含む)流体、薬剤、及び/又は、手術用の道具又は器具の輸送、送達及び/又は除去を可能にしてもよい。ポリウレタンなどのカテーテルのために使用される従来の材料から形成されていてもよいシャフト124は、導電体、流体及び/又は手術用の道具を収容及び/又は輸送するように構成される1つ以上のルーメンを画定する。カテーテルは、従来の導入シースを介して身体140内の血管又は他の構造体へと導入されてもよい。
【0038】
例示的な心臓アブレーション治療において、心房性不整脈を是正するために、導入シースは、抹消静脈(一般的には大腿静脈)を通って導入され、右心房内へと進められ、これは中隔アプローチと称される。その後、導入シースは、卵円窩(左心房と右心房との間の組織壁)に切開部を形成し、卵円窩の中に導入シースを固定するために、卵円窩の切開部を通って延在する。その後、アブレーションカテーテル160は、導入シースのルーメンを通って左心房内へと延在してもよい。その後、アブレーションカテーテル160のカテーテルシャフト124は、肺静脈などの左心房内の所望の位置にアブレーションバルーン130を位置決めするために、左心房を通って操作又は案内されてもよい。
【0039】
心臓アブレーション治療中、アブレーションバルーン130の中心線を、アブレーション治療が行なわれるようになっている肺静脈腔及び/又は近位の肺静脈口の中心線と位置合わせすることが望ましい。アブレーションバルーンの位置合わせは、シャフト124を患者の身体140の右側へ向けて必然的に付勢させる卵円窩を通る中隔アプローチに起因して、多くの実施形態において特に難しい。この付勢により、付加的なトルクがアブレーションカテーテルシステム100に作用し、その結果、アブレーションバルーンは、肺静脈内への配置後、肺静脈の中心線から離れるように付勢される場合がある。アブレーションバルーン130が肺静脈の中心線から離れるように展開される場合には、そのような展開により、不均一な接触圧と、対応する不均一な肺静脈組織壁応力とがもたらされることがある。接触面積及び組織の歪みがアブレーション治療の効果の低下と関連付けられることが分かってきた。本開示の態様は、アブレーションバルーン130を肺静脈の中心線の円周に更に効果的に位置決めすることによって、アブレーション治療の効果を改善する。より具体的な実施形態において、展開されたアブレーションバルーン130は、肺静脈に対する輪郭マッピングを改善し、それにより、アブレーションバルーン130の延在された中断のない長さ及び円周に沿って展開し肺静脈と係合することによって、アブレーション治療の効果を更に改善する。
【0040】
図2は、本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテル231が左心房212L内から肺静脈(例えば、214,216,218,220)を特定している心臓210の一部の正面断面図である。そのようなアプローチは、心房細動治療を行なうために使用されてもよい。図2に示されるように、心筋210は、左心房212L及び右心房212Rと呼ばれる2つの上側の部屋と、左心室及び右心室と呼ばれる2つの下側の部屋(部分的に見える)を含む。
【0041】
本開示の態様は、組織を通じて移動する電気信号のための導電経路を形成する肺静脈214,216,218,220における(又はこれに隣接する)組織が、不要な電気インパルスの原因(不整脈病巣)を電気的に分離するために、破壊されるアブレーション治療を対象とする。不整脈病巣を破壊すること、又は、左心房212Lから不整脈病巣を電気的に分離することのいずれかによって、心房細動の原因を低減又は排除することができる。
【0042】
図2に示されるように、アブレーションバルーンカテーテル231は、導入シース230によって左心房212L内へ導入されてもよい。導入シース230により左心房212L内へ導入された時点で、ガイドワイヤ232及びカテーテルシャフト234の操作可能な部分は、アブレーションバルーン236を案内してもよい。任意で、アブレーションバルーンカテーテル231は、アブレーションバルーン236の近位端及び遠位端にそれぞれマッピング電極240,238を含んでもよい。動作において、導入シース230は、その遠位端が左心房212L内に配置される。図2に示されるように、導入シース230が抹消静脈(一般に、大腿静脈)を通って導入され、右心房212Rへと進められる中隔アプローチが利用されてもよい。導入シース230は、卵円窩226内に小切開部を形成し、それにより、導入シース230の遠位端は、(中隔壁224を通って)左心房212Lに入り、それ自体を卵円窩226の壁に固定できる。
【0043】
アブレーションバルーンカテーテル231は、動脈系を通って左心房212L内へ導入されてもよい。その場合、導入シース230は、動脈(例えば、大腿動脈)内へと導入され、動脈を通って大動脈、大動脈弓へと逆行して進められ、左心室内へと至る。その後、アブレーションバルーンカテーテル231は、導入シース230のルーメン内から延在され、僧帽弁222を通って左心房212Lに入る。
【0044】
導入シース230が左心房212L内に配置されると、操作可能なアブレーションバルーンカテーテル231は、導入シースの遠位端から肺静脈(例えば、214,216,218,220)のうちの1つに向かって進められる。図2では、標的の肺静脈は、右上の肺静脈214である。アブレーションバルーンカテーテルの遠位先端が標的の肺静脈口に向かうまで、アブレーションバルーンカテーテルのガイドワイヤ232及びカテーテルシャフト234の操作可能な部分は操作され、その後、アブレーションバルーンは、少なくとも部分的に肺静脈214内へと延在される。
【0045】
アブレーションバルーン236は、アブレーションバルーンカテーテル231の遠位端付近に支持された状態では、それが導入シース230を通過して標的の肺静脈214に入ることができるように、畳まれた状態のままである。配置されると、アブレーションバルーン236は展開され、それにより、アブレーションバルーン236は係合し、標的の肺静脈214に対して軸方向の位置にアブレーションバルーンカテーテル231を固定する。
【0046】
任意で示されるように、図2の実施形態は、マッピング電極238,240を含んでもよい。マッピング電極238,240は、肺静脈214の伝導電位の展開前の電気的マッピングを医師が行なうことができるようにするリング電極であってもよい。マッピング電極は、アブレーションバルーンカテーテル231に支持されているように示されているが、代替的に、別個の電気生理的カテーテルに搭載して(例えば、ループカテーテルに搭載して)支持されてもよい。
【0047】
組織をアブレーションするために、アブレーションバルーン236は、展開されると、DCエネルギー電流を肺静脈214の標的組織中へと電気的に伝導してもよい。他の実施形態において、アブレーションバルーン236は、標的組織をアブレーションするために高周波エネルギーを伝達してもよい。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーン236は、以下のエネルギー、すなわち、数ある中でも特に、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質及び高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を標的組織に送達してもよい。
【0048】
図3は、肺静脈314の腔内へと進められるアブレーションバルーン336を含むアブレーションバルーンカテーテル331を示す。アブレーションバルーンカテーテル331が肺静脈314に入ると、アブレーションバルーン336の展開前に適切な位置を確かめるために、電極338(図では見えない),340を使用してマッピングが行なわれてもよい。
【0049】
肺静脈内でアブレーションバルーンを適切に位置決めすることが、アブレーション治療の効果にとって極めて重要であることが分かってきた。例えば、アブレーションバルーンが膨張時に肺静脈内で軸方向の中心にない場合、アブレーションバルーンの一部が肺静脈の円周の一部と接触しないことがある。傷付けられていない組織のこの部分は、肺静脈を通じて心臓310の左心房312L内へと電気信号を連続的に伝導できるようにする。傷付けられていない組織は、不整脈を引き起こす迷走電気信号の流れを制限する傷付けられた組織の効果を大きく妨げる。更に、肺静脈314内のアブレーションバルーンの中心でない位置及び不均一な圧力は、アブレーションバルーン336と膨張時に接触する肺静脈組織に過度の応力を加えることがあるとともに、アブレーション治療の名目上の傷の深さだけ損傷され得る構造体(例えば、横隔神経及び食道神経)より近い位置に肺静脈を再配置することもある。本出願人は、肺静脈組織に過剰な歪みを加えると、組織が薄くなり傷が所望の深さよりも深くなり、同様に、肺静脈組織に対する歪みが不十分になると、所望の状態よりも組織が厚くなり浅い傷がもたらされ、これらの全てがアブレーション治療の効果を低下させることを見出した。具体的には、応力が加えられた組織は、均一にアブレーションされる可能性が低く、さらに増加した熱容量能力を示す場合さえあり、それにより、壊死に先立ち増大したアブレーションエネルギーを吸収し得る。したがって、本開示の態様は、肺静脈の腔部と入口部との間の肺静脈の輪郭により良く適合するアブレーションバルーンのプロファイルを伴って、肺静脈314内でのアブレーションバルーン336の適合を改善する。膨張したアブレーションバルーン336と肺静脈314との間のこの改善された適合性は、アブレーション治療の効果の改善をもたらすとともに、後に続くアブレーション処置が必要となる可能性の低減をもたらす。
【0050】
図4は、本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテル431がアブレーションバルーン436の展開前に内部に位置決めされた状態の左心房412L及び肺静脈414の一部の正面断面図である。図4に示されるように、アブレーションバルーン436は、バルーン展開前に肺静脈414内に配置される。本開示の1つの実施形態において、アブレーションバルーンの適切な位置は、アブレーションバルーンの展開前に、マッピングにより決定/確認されてもよい。図4に示されるように、肺静脈の入口部415及び腔部416はそれぞれ、肺静脈の長手方向の長さ及び断面の両方に沿って形状が不規則かつ変化している。重要なことに、多くの肺静脈が、円形とは対照的に楕円の断面形状を示すことが分かってきた。アブレーションバルーンが略円形である場合には、膨張中、肺静脈の楕円断面形状の特定の部分には過剰に応力が加えられる場合があり、一方、肺静脈の他の部分はアブレーションバルーンと接触せず、アブレーション治療の効果が制限される。したがって、本開示の態様は、(例えば図7A図7Cに示されるような)略楕円形状を有するアブレーションバルーンを対象とする。そのような実施形態は、肺静脈組織の円周に沿う壁応力を最小限に抑えて統一する。
【0051】
図5は、標的の肺静脈514の入口部515と腔部516との間に係合される拡張されたアブレーションバルーン536を示す。アブレーションバルーン536の拡張された形状は、図6A図6B及び図7A図7Cに関連して更に論じられるように、肺静脈の輪郭とより正確に一致するように設計された3つの異なる部分を有する。この異なる形状は、肺静脈と拡張されたアブレーションバルーンとの間で接触する表面積を増大させ、その結果、(アブレーションバルーンと肺静脈組織との間で接触する表面に依存する)アブレーション治療の効果を大きく改善する。肺静脈の円周に沿う連続的な接触がなければ、円周に沿う連続的な傷が形成されない場合がある。結果として、迷走電気信号が(おそらく強さは低減するが)依然として肺静脈と左心房512Lとの間で伝達され得る。そのため、患者は、依然として心臓不整脈を経験する可能性がある。したがって、肺静脈の直径に沿う連続的な接触は、肺静脈組織を完全にアブレーションするために、また、肺静脈と左心房との間の全ての電気信号通信を軽減するために必要である。そのような連続的な接触を達成するために、本開示は、より効果的なアブレーション治療のための少なくとも3つの異なる部分を有する多輪郭アブレーションバルーンを教示する。
【0052】
アブレーションバルーン536は、図5に示されるその拡張状態で、標的の肺静脈514の内壁と係合する。前述した1つ以上のアブレーションプロセスにより、アブレーションバルーンは、入口部515と腔部516との間の肺静脈の内壁に沿ってアブレーションの周方向ゾーン550をもたらす。アブレーションゾーンは、標的の肺静脈を左心房512Lから電気的に分離する。不整脈病巣がアブレーションゾーン内に位置される限り、不整脈病巣は破壊される。不整脈病巣が左心房からアブレーションゾーンの反対側にある標的の肺静脈内に位置される限り、これらの病巣によりもたらされる電気インパルスがアブレーションゾーンによって遮断又は妨げられる。
【0053】
典型的なアブレーション治療において、肺静脈は、不整脈病巣を有するそれらの可能性にしたがって処置される。多くの場合、全ての肺静脈が処置される。右上の肺静脈514に対して記載されたプロセスは、3つの他の肺静脈516、518、520のそれぞれに対して同様である。
【0054】
アブレーション治療が完了したら、アブレーションバルーン536は収縮されてもよく、また、アブレーションバルーンカテーテル531は、(図3に示されるように)導入シース330内へ引き戻されてもよい。電気生理的カテーテル、又は、アブレーションバルーンの近位側及び遠位側の電極は、アブレーションバルーンカテーテル531の除去の前に、治療の効果を確かめるために使用されてもよい。本開示の様々な実施形態では、アブレーションバルーン536の表面上に更なる電極が、単独で、又はアブレーションバルーンの近位及び遠位の電極と共に配置されてもよい。
【0055】
アブレーションバルーンは、様々な異なる用途のために開発されてきており、多くの異なる形態を成す。本開示の態様は、様々なタイプ及び異なる機械的構造のアブレーションバルーンを利用してもよい。アブレーションバルーンは、導電材料又は非導電材料のいずれであってもよく、例えば内部バルーンの使用により、自立できるか、機械的に直立され得る。1つの実施形態の例では、アブレーションバルーンカテーテル531のシャフト534の長さを通じて延在するルーメンは、アブレーションバルーンに径方向の力を及ぼす流体をアブレーションバルーン内へ注入してもよく、それにより、(図5に示されるように)バルーンを直立構成へと拡張してもよい。
【0056】
ある特定の実施形態において、アブレーションバルーンは、非適合性の材料から成ってもよい。そのような実施形態では、バルーンの近位部分が肺静脈組織壁の腔部と接触した場合に、肺静脈組織壁の入口部付近のバルーンの遠位部分の過剰拡張を防止できる。
【0057】
図6A及び図6Bはそれぞれ、本開示の様々な態様による、アブレーションバルーン600の斜視側面図及び平面図である。図6A及び図6Bに示されるように、アブレーションバルーンは、肺静脈の内部と接触するアブレーションバルーンの表面積の大きさを向上させるように設計される3つの異なる部分を含む。第1の部分605は、肺静脈の入口部と嵌合するように設計される。中間部分610は、入口部と腔部との間の肺静脈の移行部に同様に嵌合する。アブレーションバルーンの近位端601にある第2の部分615は、肺静脈の腔部に嵌合する。アブレーションバルーンの長さに沿って3つの異なる輪郭を含むことにより、アブレーションバルーンは、肺静脈の輪郭に適合するのにより良く適している。前述したように、肺静脈とより良く接触するように展開されたアブレーションバルーンの長さを輪郭付けることは、肺静脈組織とアブレーションバルーン600との間の接触を必要とするアブレーション治療の効果にとって重要である。アブレーションバルーンカテーテルの挿入及び引き抜きの特性を向上させるために、アブレーションバルーン600の近位端601及び遠位端602は、挿入される際に肺静脈の腔部に引っ掛かる、又は導入シースのルーメン内へ引き込まれる際に導入シースに引っ掛かる場合があるアブレーションバルーンの鋭利な角部を最小限に抑えるための面取り部又は半径部を含んでいてもよい。
【0058】
図6A及び図6Bのアブレーションバルーン600の1つの適用例において、アブレーションバルーンの形状は、患者の肺静脈及びその入口の測定(例えば、超音波画像、磁気共鳴画像等)に基づいて、特定の患者に適合するように仕立てたものであってもよい。具体的には、患者の測定に基づいて、アブレーションバルーン600の長手方向軸に沿う形状は、肺静脈の形状を真似るように選択されてもよい(また、幾つかの実施形態では、長手方向軸の長さに沿って変化してもよい)。同様に、第1の部分605及び中間部分610を含むアブレーションバルーン600の様々な部分の直径は、長さにわたって変化してもよい。例えば、中間部分610は、それが左心房と交差する際に標的の肺静脈の腔部を収容するように長さにわたって変化する。
【0059】
本開示の様々な実施形態による図6A図6Cに示されるように、アブレーションバルーン600の第1の部分605は、肺静脈内へ挿入可能であり、(その中で膨張すると)静脈の入口部の長さと接触する。図6Aに示されるように、アブレーションバルーン600の第1の部分605は、肺静脈口が多くの場合にかなり一貫した直径を維持するため、長手方向軸に沿ってほぼ一貫した直径を成すことができる。中間部分610は、肺静脈内で膨張すると、肺静脈の腔部の長さと接触することができる。肺静脈の腔部が、肺静脈の入口部の小さい直径と、肺静脈と左心房との間の交差部に関連付けられる大きい直径との間に位置決めされているため、腔部は、多くの場合、肺静脈の長手方向軸にわたって変化する直径を示す。幾つかの肺静脈において、この変化する直径は、図6Bに示されるように、中間部分610により示されるような略直線状であってもよく、他の肺静脈において、中間部分は半径のように見えてもよい。また、中間部分は、肺静脈内へのアブレーションバルーン600の過剰な挿入を防止してもよい。1つの特定の例において、アブレーションバルーン600は、肺静脈内へ挿入される前に(部分的に)膨張してもよい。そのような場合、中間部分610(及び/又は第2の部分615)は、肺静脈の腔部と接触する際にハードストッパとして作用する。
【0060】
実施形態の更なる例において、アブレーションバルーン600は、特定の肺静脈に特有のものであってもよい。例えば、様々な研究は、様々な患者の人口統計データ(以下の表1参照)にわたって平均肺静脈径、最大肺静脈径及び最小肺静脈径を決定してきた。そのようデータを使用して、肺静脈のそれぞれのためのアブレーションバルーンが形成され、例えば心房細動患者に対する治療処置中に交換されてもよく、それにより、アブレーション処置の効果が高められてもよい。カスタマイズされた治療解決策を仕立て、それにより、各肺静脈とアブレーションバルーン600との間の接触を改善するために、肺静脈の様々な他のパラメータが考慮されてもよい。肺静脈口(例えば右上の肺静脈)の直径の範囲が15〜20ミリメートルである1つの特定の例において、アブレーションバルーン600の第1の部分605は、肺静脈組織に作用する過度の壁応力により恒久的に損傷され得るより小さい直径の肺静脈への損傷の可能性を制限しつつ、大部分の患者に対する肺静脈と第1の部分605との間の(膨張時の)接触を確保するために、約19ミリメートルの直径を有していてもよい。更に、組織が過度の壁応力を受けているとき、アブレーション治療は、アブレーションの効果及び一貫性の低下に見舞われる可能性がある。
【0061】
図7A図7Cは、本開示の様々な態様による、アブレーションバルーン700の斜視図、平面図及び正面図をそれぞれ示す。アブレーションバルーンは3つの異なる部分から成る。第1の部分705は、肺静脈の入口部と嵌合するように設計される。中間部分710は、入口部と腔部との間の肺静脈の移行部に嵌合するように絶えず変化する外径を含む。アブレーションバルーン700の近位端にある第2の部分715は、肺静脈の腔部に嵌合するように絶えず変化する外径を含む。アブレーションバルーンの長さに沿って3つの異なる輪郭を含むことにより、アブレーションバルーンは、標的の肺静脈の輪郭との適合性の向上を示す。重要なことには、肺静脈内でのアブレーションバルーン700の適合を向上させるための更なる手段として、アブレーションバルーンの断面形状は略楕円であり、本出願人は、典型的な肺静脈の形状をより厳密に真似ることを見出した。アブレーションバルーンの略楕円形状は、肺静脈内でのアブレーションバルーン700の軸心合わせを改善することによって、肺静脈内での均一なアブレーション治療の適用をさらに促進させる。また、アブレーションバルーン700の膨張中、アブレーションバルーン700の楕円形状は、肺静脈の曲率と適切に嵌合するように自己調整(例えば回転)できる。
【0062】
本開示の様々な実施形態において、アブレーションバルーン700は、アブレーションバルーンの2つ以上の位置でアブレーション治療を行なうことができる。例えば、エネルギーをアブレーションバルーン700の第1の部分705、中間部分710及び第2の部分715に送達できる。幾つかの実施形態において、第1の部分705、中間部分710、第2の部分715又はこれらの組み合わせは、アブレーション治療を同時に行なってもよい。例えば、アブレーションエネルギーを第1の部分705及び中間部分710に直列に(又は並列に)印加できる。より特定の実施形態において、1つの組織の位置で行なわれるアブレーション治療の量(例えば、組織に伝えられるエネルギー及び治療の長さ)は、個々に制御されていてもよい。
【0063】
アブレーションバルーンカテーテルの冷凍アブレーションの特定の用途において、拡張されたアブレーションバルーンの遠位部分は、アブレーションバルーンを肺静脈内の中心に置き、アブレーションバルーンを肺静脈に固定する。その後、中間部分及び近位部分は、肺静脈の腔部に対する冷凍アブレーション治療を行なうために冷却される。アブレーション治療が完了されると、アブレーションバルーンは収縮し、アブレーションバルーンは肺静脈から除去される。
【0064】
本開示の様々な実施形態において、アブレーションバルーンは、個々に膨張してもよい1つ以上の(内部)バルーンを含んでもよい。1つの典型的な実施形態において、アブレーションバルーンの近位端に位置決めされる第1の(内部)バルーンは、肺静脈洞に対して周方向でアブレーション治療を行なうために拡張されてもよく、また、アブレーションバルーンの遠位端に位置決めされる第2の(内部)バルーンは、肺静脈口に対して周方向でアブレーション治療を行なうために拡張されてもよい。そのような(内部)バルーンは、図6及び図7におけるアブレーションバルーンの一部(例えば、第1の部分705、中間部分710及び第2の部分715)に関連し得る。1つの特定の実施形態では、1つ以上の内部バルーンが外部バルーンにより覆われていてもよい。
【0065】
本開示の1つの重要な利点は、本開示によるアブレーションバルーンが食道神経及び横隔神経と肺静脈との相互作用の低下と関連付けられるという点である。多くの場合、そのような相互作用は、肺静脈の内径よりも大きい直径までバルーンが肺静脈内で拡張することに起因する壁の歪みによって引き起こされる。肺静脈と食道神経及び横隔神経との間の相互作用を防止することにより、アブレーション治療による神経損傷に関連する合併症が大幅に低減される。
【0066】
図7A図7Cのアブレーションバルーン700の1つの特定の用途では、第1の部分705(プラグとも称される)は肺静脈内へ差し込まれてもよく、一方、中間部分710(フレア端とも称される、第2の部分715を含んでいても含まなくてもよい)が冷凍アブレーション治療を行なう。そのような設計は、肺静脈口周りでの接触を向上させつつ、肺静脈内でバルーン700を安定させるのに役立つ。
【0067】
図8A図8Cは、本開示の様々な態様による、アブレーションバルーン800の斜視図、平面図及び正面図をそれぞれ示す。アブレーションバルーンは5つの異なる部分から成る。バルーン800の遠位部分802は、肺静脈の入口部と嵌合するように設計される第1の長手方向延在部805と接して延在する径方向の表面を有する。中間部分810は、入口部と腔部との間の肺静脈の移行部と嵌合する(絶えず)変化する外径を含む。第2の長手方向延在部815は、略球状であってもよく、アブレーションバルーン800の近位端801まで延在していてもよい。第2の長手方向延在部815は、絶えず変化する外径を有してもよい。様々な実施形態において、第2の長手方向延在部815は、肺静脈の腔部と嵌合してもよい。アブレーションバルーン800の長さに沿ってこれらの異なる輪郭を利用することにより、アブレーションバルーンは、標的の肺静脈の輪郭との適合性の向上を示してもよい。本実施形態において、アブレーションバルーン800の断面形状は略ピーナッツ形状であり、本出願人は、典型的な肺静脈の形状をより厳密に真似ることを見出した。
【0068】
本開示の様々な実施形態は、最適な治療を行なうための肺静脈隔離バルーン設計を対象とする。具体的には、本明細書中に開示されるバルーン設計は、バルーンと肺静脈の腔部及び/又は近位入口部との間のより良い位置合わせによって、エネルギー送達の向上を促進するように構成されていてもよい。本明細書中に開示される様々な実施形態は、様々なバルーンに基づくエネルギー送達手段(より詳細に前述した手段など)のいずれかに適用されてもよい。
【0069】
多くの用途の心臓カテーテルは、卵円窩を利用して心臓内に入る。卵円窩と左心房内の肺静脈への入口との間の幾何学的形態に起因して、カテーテルシャフトは、必然的に患者の左側へ向けて付勢され、それにより、(例えば、肺静脈隔離アブレーション治療処置のために)それが肺静脈を特定する(肺静脈と接触して位置決めされる)際に、心臓カテーテルに引張/トルクを作用させる。この付勢力は、標的である肺静脈の本来の中心線からカテーテルシャフトを引き離し、それにより、バルーンと肺静脈壁との間で生じる力及び接触面積の変化がもたらされる。一例として、付勢力が標的の肺静脈の本来の中心線からアブレーションバルーンを引き離すと、付加的な付勢力を受ける肺静脈側でバルーンにより及ぼされる接触面積及び力が、バルーンの他方側よりも大きくなる。結果として、カテーテルのエネルギー送達は、カテーテルの位置に縛られ、治療の変動の一因となりことがある。
【0070】
本開示の様々な実施形態は、肺静脈の幾何学的形態(例えば、2つ以上の幾何学的形態)の入口部及び腔部の範囲に対する多形状バルーンを対象とするものであってもよい。そのような多形状バルーンは、例えば均一なアブレーション治療を適用するための肺静脈内でのバルーンの中心合わせを容易にしてもよい。また、そのような多形状バルーンは、(接触面積の増大に起因して)肺静脈の腔部及び入口部の両方に対して同時にエネルギーを送達できできてもよく、それにより、直線状及び周方向の伝導経路を対象とする。更なる実施形態において、多形状バルーンは、遠位バルーン表面、中間バルーン表面又は近位バルーン表面へのエネルギー送達を対象としてもよい。多形状バルーンは、バルーンの遠位長さを利用して肺静脈の入口部と接触し、それにより、肺静脈内でのバルーンの適切な中心合わせを容易にしてもよく、一方、肺静脈の腔部と接触するバルーンの近位長さはアブレーション治療を行なう。
【0071】
例えば、図5及び図6A図6Cに示されるような多形状バルーンは、肺静脈口及び肺静脈洞周りの全てと接触するフレア部(中間部分610とも称される)を伴って、標的の肺静脈内でネスト化されてもよい。バルーンが肺静脈内に差し込まれるときに、バルーンのフレア部は冷却されてもよい。そのような設計は、肺静脈の入口部の外周と嵌合するように設計される第1の部分605(図6A図6Cに示され、プラグとも称される)を介して、肺静脈内でのバルーンの安定化を容易にする。特定の実施形態において、バルーンの最大フレアは、15ミリメートルの径の遠位端プラグを伴って、直径が23ミリメートルであってもよい。更なる他のより特定の実施形態において、バルーンは、肺静脈内でのネスト化の向上を容易にするために、楕円断面を有していてもよい。多くの肺静脈が、楕円形(又は少なくとも肺静脈の入口部/腔部の入口)であることが分かってきた。以下にもたらされる表1は、平均の肺静脈口の直径を示す。
【表1】
【0072】
上記の表1の平均の直径を使用して、潜在的な患者集団の大部分に対する適合を改善するために、バルーン寸法が最適化されてもよい。更に、バルーンと肺静脈との間の適切な適合により、バルーンは、例えば、アブレーション治療中に最小の力を伴って、肺静脈と係合し、肺静脈内で所定位置をより良く保つだろう。また、適切な適合は、壁応力/壁歪みを最小限に抑えて統一することもでき、様々なアブレーションエネルギータイプに対するより均一な反応を与える。バルーンと標的の肺静脈との間の本来の間隔寸法に起因する肺静脈の伸張/歪みをより小さくすると、食道神経及び横隔神経の相互作用の可能性をかなり低減できる。
【0073】
本開示の態様は、医療デバイスのバルーン装置を対象とする。装置は、第1の外周を有する遠位部分、近位部分及び中間部分を含む。近位部分は、第1の外周よりも大きい第2の外周を有し、また、中間部分は、アブレーションバルーンの近位部分と遠位部分との間に結合される変化する外周を有する。遠位部分は第1の周方向に延在する表面を含み、また、近位部分は第2の周方向に延在する表面を含む。第1及び第2の周方向に延在する表面はいずれも、医療デバイスのバルーン装置の長手方向軸から離れて延びる径方向ラインから接線方向に延在する。
【0074】
本開示の1つの典型的な実施形態では、心房細動を治療するためのシステムが教示される。システムは、近位端及び遠位端を有するバルーン送達カテーテルと、バルーン送達カテーテルの遠位端に結合されるアブレーションバルーンを含む。アブレーションバルーンは、遠位部分、近位部分及び中間部分を含む。遠位部分は、第1の外周を有するとともに、アブレーションバルーンの長手方向軸と肺静脈の第2の長手方向軸とを整列するために、肺静脈口と係合する。近位部分は、第1の外周よりも大きい第2の外周を有する。中間部分は、アブレーションバルーンの近位部分と遠位部分との間に結合され、変化する外周を有する。アブレーションバルーンの近位部分及び中間部分のうちの少なくとも一方は、中断されない長さ及び外周に沿って肺静脈洞と係合し、肺静脈洞に対して均一なアブレーション治療を行なう。
【0075】
本開示の他の実施形態では、肺静脈の隔離のためのバルーンカテーテルが開示される。バルーンカテーテルは、カテーテルシャフト、アブレーションバルーン及び組織アブレーション手段を含む。カテーテルシャフトは、バルーン送達カテーテルの遠位端に結合されるアブレーションバルーンを肺静脈内へと展開する。アブレーションバルーンは、非展開形態から展開し、肺静脈の腔部及び入口部の中断されない長さ及び円周に沿って肺静脈の組織壁と係合する。組織アブレーション手段は、アブレーションバルーンと共同して、アブレーションバルーンにより係合される肺静脈洞の円周周りに均一なアブレーション治療を行なう。また、アブレーションバルーンは、カテーテルシャフトによりアブレーションバルーンに及ぼされる付勢力にも、付勢力に打ち勝つべく肺静脈口と係合することによって打ち勝つ。
【0076】
上記の説明及び図面に基づき、当業者であれば容易に分かるように、本明細書中で図示されて説明された例示的な実施形態及び用途に厳密に従うことなく、様々な実施形態に対して様々な修正及び変更を行なってもよい。例えば、本開示の態様による展開されたアブレーションバルーンは、患者の標的の肺静脈の内部寸法を示す撮像データに基づいて、多くの様々な幾何学的形態から成っていてもよい。そのような実施形態において、展開されたアブレーションバルーンは、アブレーション治療の効果を最大にするために、アブレーションバルーンの中断されない長さ及び外周に沿って標的の肺静脈と係合する。そのような修正は、特許請求の範囲に記載される態様を含む本開示の様々な態様の真の思想及び範囲から逸脱しない。
【0077】
以上、本開示を実施できる少なくとも幾つかの方法の理解を容易にするためにある程度の特殊性を伴って幾つかの実施形態を説明してきたが、当業者は、本開示の範囲及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して多くの変更を成すことができる。上記の説明に含まれ、又は添付図面に示される全ての事柄が、限定的ではなく単なる例示として解釈されるものとすることが意図される。したがって、本明細書中の例示及び実施形態は、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきでない。詳細又は構造の変更は、本教示から逸脱することなく行なわれてもよい。前述の説明及び以下の特許請求の範囲は、そのような修正及び変化の全てを網羅するように意図される。
【0078】
様々な装置、システム、および方法の様々な実施形態について本明細書で説明した。明細書で説明され、添付図面に示されているように、実施形態の全体的な構造、機能、製造、および使用の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、実施形態がそのような特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者によって理解されるであろう。他の例では、明細書で説明した実施形態を不明瞭にしないために、周知の動作、構成要素、および要素は、詳細には説明されていなくてもよい。本明細書で説明し、図示した実施形態が非限定的な例であることは、当業者には明らかであり、したがって、本明細書で開示した特定の構造的および機能的詳細が、典型的なものである場合があり、実施形態の範囲を必ずしも限定せず、その範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることは、理解され得る。
【0079】
この開示で使用される用語「含む」、「備える」及びその変形は、特に別段述べられなければ、「〜を含むが、それらに限定されない」ことを意味する。この開示で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特に別段述べられなければ、「1つ以上の」を意味する。
【0080】
本明細書を通して、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じた所々の「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などの語句の表現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、具体的な特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされる場合がある。したがって、1つの実施形態に関連して図示または説明した具体的な特徴、構造、または特性は、全体または一部において、限定されることなく、1つまたは複数の他の実施形態の特徴、構造、または特性と組み合わされる場合がある。
【0081】
プロセスステップ、方法ステップ、アルゴリズム等が連続した順序で記載される場合があるが、そのようなプロセス、方法及びアルゴリズムは、別の順序で機能するように構成されていてもよい。換言すると、記載される場合があるステップの任意のシーケンス又は順序は、必ずしもそのステップがその順序で行なわれる必要性を示すとは限らない。本明細書中に記載されるプロセス、方法及びアルゴリズムのステップは、実用的な任意の順序で行なわれてもよい。更に、幾つかのステップが同時に行なわれてもよい。
【0082】
単一のデバイス又は物品が本明細書中に記載される場合には、容易に分かるように、単一のデバイス又は物品の代わりに複数のデバイス又は物品が使用されてもよい。同様に、複数のデバイス又は物品が本明細書中に記載される場合には、容易に分かるように、複数のデバイス又は物品の代わりに単一のデバイス又は物品が使用されてもよい。1つのデバイスの機能性又は特徴は、代替的に、そのような機能性又は特徴を有するように明示的に記載されない1つ又は複数の他のデバイスによって具現化されてもよい。
【0083】
医師が患者を処置するために使用される器具の一端を操作することに関連して、用語「近位」及び「遠位」が明細書の全体にわたって使用される場合があることが分かる。用語「近位」は、医師に最も近い器具の部分を指し、用語「遠位」は、医師から最も遠くに配置される部分を指す。しかしながら、外科用器具は多くの配向及び位置で使用されてもよく、また、これらの用語は、限定的で絶対的であることを意図しない。他の全ての方向的又は空間的な言及(例えば、上側、下側、上方、下方、左、右、左方向、右方向、上端、下端、上側、下側、垂直、水平、時計回り、反時計回り)は、本開示の読み手の理解を助けるために識別の目的のためだけに使用されるにすぎず、特に本開示の位置、配向又は使用に関して限定をもたらさない。接合の言及(例えば、取り付けられ、結合され、接続され等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対移動との間に中間部材を含んでもよい。したがって、接合の言及は、2つの要素が直接に接続されて互いに固定関係を成すことを必ずしも暗示するとは限らない。
【0084】
参照により本明細書に組み込まれると言われる任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、全体または一部において、組み込まれた資料が、本開示に示す既存の定義、声明、または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。そのように、そして必要な程度まで、本明細書に明示的に示された開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料よりも優先される。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に示された既存の定義、声明、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、組み込まれる資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない程度でのみ組み込まれることになる。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
医療デバイスバルーン装置であって、
第1の外周を有する遠位部分と、
前記第1の外周より大きい第2の外周を有する近位部分と、
前記近位部分と前記遠位部分との間に結合され、前記医療デバイスバルーン装置の長手方向軸に沿って変化する外周を有する中間部分と、を備え、
前記遠位部分は、第1の周方向に延在する表面を備え、
前記近位部分は、第2の周方向に延在する表面を備え、
前記第1の周方向に延在する前記表面及び前記第2の周方向に延在する前記表面のいずれも、前記長手方向軸から離れて延びる径方向ラインから接線方向に延在する、医療デバイスバルーン装置。
(項目2)
前記遠位部分は、肺静脈口と係合することによって、前記医療デバイスバルーン装置の前記長手方向軸を前記肺静脈と軸方向に整列させるように構成される、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記近位部分及び前記中間部分の少なくとも一方は、肺静脈洞の連続する長さ及び円周と係合し、前記肺静脈洞に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成される、項目1に記載の装置。
(項目4)
少なくとも前記遠位部分及び前記中間部分は、肺静脈の連続する長さ及び外周に沿って肺静脈口及び肺静脈洞の両方と係合するように構成される、項目1に記載の装置。
(項目5)
前記近位部分の近位端に結合されるカテーテルシャフトを更に備え、
前記遠位部分は、前記カテーテルシャフトにより前記医療デバイスバルーン装置に及ぼされる付勢力に、及ぼされる前記付勢力に打ち勝つように肺静脈口と係合することによって、打ち勝つように構成される、項目1に記載の装置。
(項目6)
心房細動を処置するシステムであって、
近位端及び遠位端を備えるバルーン送達カテーテルと、
前記バルーン送達カテーテルの前記遠位端に結合されるアブレーションバルーンと、を備え
前記アブレーションバルーンは、
第1の外周を有し、前記アブレーションバルーンの第1の長手方向軸を肺静脈の第2の長手方向軸に整列させるために、肺静脈口と係合するように構成される遠位部分と、
前記第1の外周より大きい第2の外周を有する近位部分と、
前記アブレーションバルーンの前記近位部分と前記遠位部分との間に結合され、前記第1の長手方向軸の長さに沿って変化する外周を有する中間部分と、を備え、
前記アブレーションバルーンの前記近位部分及び前記中間部分の少なくとも一方は、連続する長さ及び円周に沿って肺静脈洞と係合し、前記肺静脈洞に対して均一のアブレーション治療を行なうように構成される、システム。
(項目7)
前記アブレーションバルーンは、前記肺静脈洞の連続する長さ及び円周に沿って一貫したアブレーション治療を行なうように構成される、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記アブレーションバルーンは、独立して膨張するように構成される第1のバルーン及び第2のバルーンを備え、
前記第1のバルーンは、前記アブレーションバルーンの近位端に配置されるとともに、前記肺静脈洞に対して周方向でアブレーション治療を行なうように更に構成され、
前記第2のバルーンは、前記アブレーションバルーンの遠位端に位置決めされるとともに、前記肺静脈口に対して周方向でアブレーション治療を行なうように更に構成される、項目6に記載のシステム。
(項目9)
前記アブレーションバルーンの断面は、楕円形状であり、
前記アブレーションバルーンの前記楕円形状は、前記バルーンの膨張に応じた肺静脈組織の伸張を防止するように構成される、項目6に記載のシステム。
(項目10)
前記アブレーションバルーンは、前記肺静脈組織の円周に沿う壁応力を最小限に抑えて統一するように更に構成される、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記アブレーションバルーンは、非弾性材料から成るとともに、前記バルーンの前記中間部分が前記肺静脈洞と接触することに応じて、前記遠位部分が過度に拡張することを防止するように構成される、項目6に記載のシステム。
(項目12)
前記アブレーションバルーンは、低温流体アブレーション、レーザエネルギー、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、不可逆的エレクトロポレーション、化学反応、及び、高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を使用して、組織をアブレーションする、項目6に記載のシステム。
(項目13)
肺静脈隔離用のバルーンカテーテルであって、
アブレーションバルーンを肺静脈内に展開するように構成されるカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位端に結合されるアブレーションバルーンであって、
未展開の形態から展開するとともに、
肺静脈洞の連続する長さ及び円周に沿って前記肺静脈の組織壁と係合するように構成される、前記アブレーションバルーンと、
前記アブレーションバルーンにより係合される前記肺静脈洞に対して均一なアブレーション治療を行なうように前記アブレーションバルーンと共に構成される組織アブレーション手段と、を備え、
前記アブレーションバルーンは、前記カテーテルシャフトにより前記アブレーションバルーンに及ぼされる付勢力に、及ぼされる前記付勢力に打ち勝つように肺静脈口と係合することによって、打ち勝つように更に構成される、バルーンカテーテル。
(項目14)
前記組織アブレーション手段は、冷凍アブレーション、レーザエネルギー、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、不可逆的エレクトロポレーション、化学反応、及び、高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を備える、項目13に記載のバルーンカテーテル。
(項目15)
前記アブレーションバルーンは、第1の外周を有する遠位部分と、前記第1の外周より大きい第2の外周を有する近位部分と、前記アブレーションバルーンの前記近位部分と前記遠位部分との間に結合され、前記アブレーションバルーンの長手方向軸に沿って変化する外周を有する中間部分と、を備え、
前記遠位部分は、肺静脈口と係合するように構成され、
前記近位部分及び前記中間部分は、肺静脈洞の連続する長さ及び円周と係合し、組織アブレーション治療を肺静脈洞に対して行なうように構成される、項目13に記載のバルーンカテーテル。
(項目16)
前記組織アブレーション手段は、前記肺静脈腔及び前記肺静脈口で同時に組織アブレーション治療を行なうように構成される、項目13に記載のバルーンカテーテル。
(項目17)
前記アブレーションバルーンは、独立して膨張するように構成される第1のバルーン及び第2のバルーンを備え、
前記第1のバルーンは、前記アブレーションバルーンの近位端に配置されるとともに、前記肺静脈洞に対して周方向でアブレーション治療を行なうように構成され、
前記第2のバルーンは、前記アブレーションバルーンの遠位端に配置されるとともに、前記肺静脈口に対して周方向でアブレーション治療を行なうように構成される、項目16に記載のバルーンカテーテル。
(項目18)
前記アブレーションバルーンの断面は、楕円形状であり、
前記アブレーションバルーンの前記楕円形状は、前記バルーンの展開に応じた肺静脈組織の伸張を防止するように構成される、項目13に記載のバルーンカテーテル。
(項目19)
前記アブレーションバルーンは、前記肺静脈組織の円周に沿う壁応力を最小限に抑えて統一するように更に構成される、項目18に記載のバルーンカテーテル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C