【文献】
縣弘樹、山下淳、金子透,市松模様の背景を用いたクロマキーによる領域抽出,情報処理学会研究報告 2005-AVM-51,社団法人情報処理学会,2005年12月13日,第2005巻第124号,p.57-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外接矩形計測部は、前記計測対象物に対してスレッシュホールド値を変化させて得られる、複数のサイズの外接矩形のうち、スレッシュホールドの変化に対し、サイズ変化の少ない区間を選択する、請求項3に記載の物体計測装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置の構成を示す構成概略図であり、
図1(b)は、
図1(a)においてA方向から見た、背景部の上に載置された計測対象物の撮像時の一例を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(a)においてA方向から見た背景部のパターン模様が格子柄(チェック柄)である一例を示す図であり、
図2(b)は、格子柄(チェック柄)が45度斜めに配置されたパターン模様の一例を示す図であり、
図2(c)は、パターン模様が3角形で構成された一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置を構成する構成要素の接続関係を示すブロック構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置の全体の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)〜(c)は、差分画像生成部により背景差分法で計測対象物を抽出する手順を順に説明するための画像の図であり、
図5(a)は、計測対象物と背景部が撮影された物体画像であり、
図5(b)は、背景部のみが撮影された背景画像であり、
図5(c)は、計測対象物が抽出された差分画像である。
【
図6】
図6(a)〜(e)は、画像選択部による画像選択、決定の動作を説明するための図であって、
図6(a)は、背景差分を行なった画像における基本のヒストグラム形状を示す図であり、
図6(b)は、RGB差分グレースケールのヒストグラムを示す図であり、
図6(c)は、R要素抽出したヒストグラムを示す図であり、
図6(d)は、G要素抽出したヒストグラムを示す図であり、
図6(e)は、B要素抽出したヒストグラムを示す図である。
【
図7】
図7(a)〜(d)は、画像選択部による画像選択、決定の動作を説明するための図であって、
図7(a)は、背景の山(P1部分)と物体による山(P2部分)を説明するヒストグラムを示す図であり、
図7(b)は、スレッシュホールドが0に近いものでは明確に分離することができない場合を示す例の図であり、
図7(c)は、スレッシュホールドから右側の物体によって生じたピクセル変化分は、面積が広いほうが分離しやすいことを示す例の図であり、
図7(d)は、谷の部分において、分離の難しいピクセルの量が少ないほうがより明確に分離できる場合を示す例の図である。
【
図8】
図8は、
図4で示したStep08のサブルーチン、関数として処理する場合のものであって、撮像画像から、グレースケール,R要素,G要素、B要素,H要素,S要素,V要素の7つの画像について、ヒストグラムパターン評価を行ない、利用する画像を決定する画像選択部の動作を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(a)、(b)は、最適なスレッシュホールドの値を決定するための方法を説明する図である。
【
図10】
図10(a)〜(c)は、ピクセル輝度値を等分に分割し、その分割位置による外接矩形のサイズを計測することにより最適なスレッシュホールドの値を決定する方法を説明する図である。
【
図11】
図11は、
図4で示したStep09のサブルーチン、関数として処理する場合のものであって、決定した画像に対してフィードバック制御によるスレッシュホールドの最適化を行った外接矩形を求める動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、
図11で示したStep96のサブルーチン、関数として処理する場合のものであって、取得した長辺、短辺のスレッシュホールド位置での長さ情報を基に、各々の安定区間を抽出する動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13(a)〜(i)は、辺の長さリストからの安定区間の決定動作の一例を各区間の処理毎に説明するための図である。
【
図14】
図14(a)は、パターン模様を有しない単色の背景部に計測対象物を載置した場合の一例を示す図であり、
図14(b)は、本願発明に係るパターン模様の背景部に計測対象物を載置した場合の一例を示す図である。
【
図15】
図15(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る計測装置の構成を示す構成概略図であり、
図15(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る計測装置を構成する構成要素の接続関係を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔本発明の第1の実施の形態〕
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置の構成を示す構成概略図であり、
図1(b)は、
図1(a)においてA方向から見た、背景部の上に載置された計測対象物の撮像時の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置1は、撮像時に計測対象物10の背後に配置される背景部20と、計測対象物10の画像を取得する撮像部30と、撮像部30により取得した撮像画像に基づいて、計測対象物10の寸法計測処理、形状計測処理等の計測を実行する制御部40と、を有し、背景部20は、パターン模様を有して構成されている。なお、撮像時に計測対象物10を照明し、また、影の映り込みを低減するために、照明装置80を適宜配置することが好ましい。本実施の形態に係る物体計測装置1は、上記に示したように、計測対象物10の寸法計測、形状計測等の物体計測を行なうことができる。例えば、複数個所の寸法計測により計測対象物10の寸形計測が可能である。また、計測対象物10の形状を抽出することにより、検出された輪郭から、例えば、パターンマッチングにより形状の特定を行なうことで形状計測が可能である。以下の説明では、計測対象物10の寸法計測を行なう場合について説明する。
【0014】
(計測対象物10)
計測対象物10は、外観が、任意の形状、任意の色、又は、任意のテクスチャを有する不特定物である。一般的な品質検査等における計測では、特定の決められた物体に対する計測となるため、背景、測定方向、距離など、最適化が可能であるが、本実施の形態に係る測定対象は、一般に物流で流れる様々な商品(箱状、袋状、円筒など)であるため、測定対象を特定できない、不特定物である。
【0015】
(背景部20)
背景部20は、
図1(a)に示すように、載置台25の上面に設置されている。背景部20は、載置台25の上面に直接パターン模様として印刷等されていてもよく、また、パターン模様が印刷等されたシート等を載置台25の上面に貼り付けたものでもよい。その他、背景のパターンは、直接転写、張り付け、更にはスライド型で複数枚を利用、液晶によるカラー画像等、種々の形態のものが可能である。
【0016】
図2(a)は、
図1(a)においてA方向から見た背景部のパターン模様が格子柄(チェック柄)である一例を示す図であり、
図2(b)は、格子柄(チェック柄)が45度斜めに配置されたパターン模様の一例を示す図であり、
図2(c)は、パターン模様が3角形で構成された一例を示す図である。
【0017】
背景部20のパターン模様は、
図2(a)に示すような、格子柄(チェック柄)、市松模様であり、例えば、2色で構成できる。また、3色以上のパターン模様であってもよい。また、グラデーション画像であってもよい。また、背景部20のパターン模様は、
図2(b)に示すような、格子柄(チェック柄)が45度斜めに配置されたパターン模様であってもよい。また、背景部20のパターン模様は、
図2(c)に示すような、パターン模様が3角形で構成されたものあってもよい。
【0018】
なお、上記は、パターン模様の一例を示すものであって、直線、曲線、円形、円弧、図形、記号等の組み合わせによるパターン模様が使用可能である。また、パターン模様は、繰り返して表示される模様以外に、ランダムに配置されたパターンの模様であってもよい。
【0019】
(撮像部30)
撮像部30は、
図1(a)に示すように、計測対象物10を撮像するカメラである。撮像部30は、一般に使用される、主に可視光域に感度を有するカメラが使用可能である。撮像部30は、計測対象物10を撮像することにより、撮像画像としての物体画像RGBを取得することができる。
【0020】
また、本実施の形態における計測対象物10の寸法計測が可能な程度の解像度、1ピクセルの画素寸法を備えたものを使用する。使用する光学系、レンズにより所定の画角とすることにより、撮像部30により取得された撮像画像により、1ピクセルに対応する寸法が算出される。これにより、計測対象物10の長辺、短辺等の寸法の算出が可能となる。なお、1ピクセルに対応する計測対象物10の寸法は、予め、
図1(a)に示すような、背景部20、撮像部30の配置後に、キャリブレーションを行なうことにより求めておくことができる。
【0021】
(制御部40)
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置を構成する構成要素の接続関係を示すブロック構成図である。制御部40は、記憶されたプログラムに従って、取得した画像データに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるコンピュータを備える。
【0022】
制御部40は、撮像部30、照明装置80等の制御、外部との入出力制御を行なうと共に、後述する、差分画像生成部41、画像選択部42、外接矩形計測部43を備えている。また、制御部40は、外部機器と接続可能であり、例えば、物体計測装置1に対する制御信号S
C、外部への出力信号S
Oにより、外部との入出力が可能である。
【0023】
差分画像生成部41は、撮像画像と背景部のみの背景画像との差分画像を生成する背景差分法による差分画像を生成する。
【0024】
画像選択部42は、撮像画像から変換した複数の異なる色空間画像を、それぞれから生成した色空間画像のヒストグラムパターンの評価値に基づいて利用する寸法測定画像を選択する。ここで、色空間画像は、グレースケール画像、RGB画像、HSV画像、HSL画像、CMY画像、YIQ画像等の種々の色空間画像とすることができる。本実施の形態では、複数の異なる色空間画像として、グレースケール画像、RGB画像、HSV画像を使用するものとして説明する。
【0025】
外接矩形計測部43は、計測対象物に対してスレッシュホールド値を変化させて得られる、複数のサイズの外接矩形のうち、スレッシュホールドの変化に対し、サイズ変化の少ない区間を選択する。サイズ変化の少ない区間は、サイズ変化の安定区間である。また、より詳しくは、スレッシュホールド位置での長辺、短辺の情報を基に、区間の伸延、短縮を実行しながら、各々の安定区間を抽出して安定区間の決定動作を行なう。
【0026】
プログラム言語としては、C言語、Java、Python等の種々の言語が使用可能であるが、本実施の形態では、プログラム言語としてPython環境で行なう。本実施の形態で使用する、後述する大津の2値化、外接矩形を求める等においては、例えば、OpenCVモジュールとして、ライブラリ化、関数化されており、これらを利用することができる。
【0027】
(物体計測装置1の動作概略)
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る物体計測装置の全体の動作を示すフローチャートである。以下において、物体計測装置1の全体の動作を各ステップに従って説明する。
【0028】
(Step01)
処理が開始されると、制御部40は、撮像部30により、背景画像(RGB)を取得する。
【0029】
(Step02)
制御部40は、終了キーが押下されたかどうかを判断する。終了キーは、制御部40が有する操作キーでも、外部において制御信号S
Cを生成するための外部操作キーでもよい。制御部40は、終了キーが押下されたかどうかを判断し、終了キーが押下されない場合はStep03へ進み(Step02:No)、終了キーが押下された場合はStep12へ進んで(Step02:Yes)、処理を終了する。
【0030】
(Step03)
制御部40は、撮像部30により、撮像画像としての物体画像(RGB)を取得する。
【0031】
(Step04)
制御部40は、物体画像(RGB)と背景部のみの背景画像との差分画像を生成する背景差分法による差分画像生成部41において、背景画像と物体画像(RGB)からRGBの差分を取得する。
【0032】
(Step05)
制御部40は、撮像画像としての物体画像(RGB)から、グレースケール画像、R、G、B、H、S、Vの各色空間画像を生成し、それぞれ生成した色空間画像のヒストグラムパターンの評価値に基づいて利用する寸法測定画像を選択する画像選択部42において、差分画像をグレースケール画像に変換する。
【0033】
(Step06)
また、制御部40は、画像選択部42において、差分画像から、R,G,Bの各要素のみを抽出した色空間画像を各々生成する。
【0034】
(Step07)
同様にして、制御部40は、画像選択部42において、背景と物体画像をHSVに各々変換し、差分を取得することにより、差分画像から、H,S,Vの各要素のみを抽出した色空間画像を各々生成する。
【0035】
(Step08)
制御部40は、画像選択部42において、グレースケール、R要素,G要素、B要素、H要素、S要素、V要素の7つの色空間画像(グレー画像、R画像、G画像、B画像、H画像、S画像、V画像)について、ヒストグラムパターン評価を行ない、利用する寸法測定画像を選択して、決定する。
【0036】
(Step09)
制御部40は、外接矩形計測部43において、決定した色空間画像、すなわち、グレー画像、R画像、G画像、B画像、H画像、S画像、V画像の中から選択、決定された色空間画像に対して、フィードバック制御によるスレッシュホールドの最適化を行った外接矩形を求める。
【0037】
(Step10)
制御部40は、登録キーが押下されたかどうかを判断する。登録キーは、制御部40が有する操作キーでも、外部において制御信号S
Cを生成するための外部操作キーでもよい。制御部40は、登録キーが押下されたかどうかを判断し、登録キーが押下されない場合はStep02へ戻って処理を続行し(Step10:No)、登録キーが押下された場合はStep11へ進む(Step10:Yes)。
【0038】
(Step11)
制御部40は、データ登録を行ない、Step02へ戻って処理を続行する。
【0039】
(差分画像生成部41による差分画像生成の動作)
差分画像生成部41による差分画像生成の動作は、
図4で示したStep04により実行される。差分画像生成部41は、計測対象物10のテクスチャ(模様)の影響を軽減するための背景差分法を実行する。本実施の形態では、背景部20にパターン模様を持たせることで、計測対象物10が背景に同化し、認識できないという事象を回避することができる。
【0040】
図5(a)〜(c)は、差分画像生成部により背景差分法で計測対象物を抽出する手順を順に説明するための画像の図であり、
図5(a)は、計測対象物と背景部が撮影された物体画像であり、
図5(b)は、背景部のみが撮影された背景画像であり、
図5(c)は、計測対象物が抽出された差分画像である。
【0041】
制御部40は、差分画像生成部41において、
図5(a)に示す物体画像(RGB)201と、
図5(b)に示す背景部のみの背景画像202から、差分をとることにより、
図5(c)に示す差分画像203を抽出する。なお、差分画像203には、背景部のパターン模様との差分を取ることにより、色の変化や、テクスチャが現れるが、サイズ計測という目的からは、このパターンの表出は問題にならない。
【0042】
差分画像生成部41による差分画像の生成により、背景部のパターン模様を消去し、計測対象物10の画像のみを浮き上がらせることができる。これにより、計測対象物10が背景に同化し、コンピュータが計測対象物10を認識できないという事象は回避することができる。
【0043】
(画像選択部42による画像選択、決定の動作)
画像選択部42による画像選択、決定の動作は、
図4で示したStep05からStep08により実行される。
【0044】
本実施の形態で扱う計測対象物10のサイズ測定において、もっとも重要なことは如何に背景部20と計測対象物10の境界を精度良く認識するかにある。背景部20だけの画像と計測対象物10の映った撮像画像の差分を取ることで、理論的には背景部分は全くエネルギーを持たない黒の状態になり、物体の存在する部分は、物体の色や明るさに応じた何らかのエネルギーを持った状態になる。これを、エネルギー強度(ピクセルの持つ輝度値)を横軸に、画像の中でのピクセル数を縦軸に取ったヒストグラムで表すと、
図6(a)のような形状になる。このヒストグラムは、物体の色や明るさの影響を受けるため、
図6(b)に示すようにカラーカメラで撮った撮像画像(RGB)からRGBの差分をとり、その3つの値から直接グレースケールに変換した場合と、差分のRGBの中から、R、G、Bの各要素を各々独立して抽出した場合を示す
図6(c)〜
図6(e)とでは、その形状が異なる。また、図示は省略するが、カラーカメラで撮った撮像画像(RGB)からH、S、Vの各要素を各々独立して抽出した場合においてもその形状が異なる。したがって、背景部20と計測対象物10の分離処理では、使う画像(RGBグレー画像、R画像、G画像、B画像、H画像、S画像、V画像)によって精度が異なってくる。
【0045】
ここで、撮像部30により取得された、撮像画像としての物体画像(RGB)は、各ピクセル(画素)は、R(赤Red)、G(緑Green)、B(青Blue)の成分を有している。ピクセルの成分RGBの内、GとBを0にして、赤み成分Rのみが残った画像として生成された色空間画像をR画像という。同様に、Gのみが残った画像として生成された色空間画像をG画像、Bのみが残った画像として生成された色空間画像をB画像という。また、背景画像(RGB)、物体画像(RGB)を、各々HSV画像に変換し、色相(Hue)のみが残った画像として生成された色空間画像をH画像という。同様に、彩度(Saturation・Chroma)のみが残った画像として生成された色空間画像をS画像、明度(Value・Brightness)のみが残った画像として生成された色空間画像をV画像という。
【0046】
図7(a)に示すように、ヒストグラムにおける、背景の山(P1部分)と物体による山(P2部分)が明確に判別できるヒストグラムのほうが高い精度で分離できる。実際の分離における評価は、
図7(b)〜
図7(d)に示すようにいくつかの評価を行った値を、総合的な評価値に合成し、その合成値の最も高い値を持つ画像(イメージ)を採用する。
【0047】
実際の評価値の算出方法としては、
図7(b)に示すように、2値化分離スレッシュホールドが規定値以上かどうかを評価する。ヒストグラムを物体と背景に分離する最初の段階として、最初に大津の2値化処理により、まず、初期の分離スレッシュホールドを得る。この結果、
図7(b)に示すように、スレッシュホールドの値がピクセル輝度値の0に近い場合は、分離が上手くできない。したがって、このような場合には評価値は0とする。
【0048】
ここで、大津の2値化処理とは、自動的に閾値T(スレッシュホールド)を決定して2値化処理を行う手法の1つである。この手法では、閾値Tでヒストグラムを2つのクラスに分け、2つの分散から、分離度S(クラス内分散とクラス間分散の比)を求めて、分離度が最大になるときの閾値Tを2値化処理に用いる閾値に決定する、というものである。
【0049】
また、オブジェクトによる変化分ピクセル数の積分結果を評価する。ヒストグラムにおける初期のスレッシュホールドより右の部分は物体によって生じた画像の差分に伴うピクセルの変化分である。
図7(c)に示すように、この部分の面積が大きいほうが分離は行い易い。したがって、この部分を積分し、求めた面積を評価値の一つとする。
【0050】
また、背景の山と、物体の山の間に生じる谷の深さによる評価を行なう。ヒストグラムにおける背景の山と、物体の山の間に生じる谷の部分は物体と背景を分離する場合に分離の難しいピクセル(エネルギーを中途半端に持ったピクセル)の量になる。したがって、
図7(d)に示すように、この谷が低い位置まで下がっているほうが、物体と背景の分離は明確に行える。この谷の最低値も評価値の一つとする。
【0051】
以上の評価方法により、スレッシュホールドが大きく、オブジェクトよる変化分が大きく、かつ、背景の山と物体の山に生じる谷の最低値がより低いイメージを物体の輪郭抽出用の画像、寸法測定画像として選択する。実際には、RGBからの派生に加え、人間の色感覚に近いHSVに変換した各々の要素値も使い、RGBグレー、R、G、B、H、S、Vの7種類の色空間画像を評価する。
【0052】
上記の処理は、
図4で示したStep08のサブルーチン、関数として処理される。上記の処理を実行して、決定された選択画像に対応する値を戻り値として返す動作を、
図8に示すフローチャートで説明する。
【0053】
(ヒストグラムパターンの評価動作)
図8は、
図4で示したStep08のサブルーチン、関数として処理する場合のものであって、撮像画像から、グレースケール,R要素,G要素、B要素,H要素,S要素,V要素の7つの画像について、ヒストグラムパターン評価を行ない、利用する画像を決定する画像選択部の動作を示すフローチャートである。
【0054】
(Step81)
処理が開始されると、制御部40は、画像選択部42において、画像をヒストグラム(輝度とピクセル数)に変換する。
【0055】
(Step82)
大津の2値化により、ヒストグラムを背景と物体に分離し、結果の2値化画像とスレッシュホールドを取得する。
【0056】
(Step83)
ヒストグラムのうち、スレッシュホールドより大きい部分(物体部分)を積分し、物体部分の面積を求める。
【0057】
(Step84)
ヒストグラムの最初の山(背景)と2つ目の山(物体)の間にある谷の部分の最低値(分離最低値)を求める。
【0058】
(Step85)
スレッシュホールドと、物体部分の面積、分離最低値をもとに、画像の評価値を決定する。
【0059】
(Step86)
制御部40は、画像選択部42において、画像(RGBグレー画像、R画像、G画像、B画像、H画像、S画像、V画像)がまだあるかどうかを判断する。画像がある場合は、次の画像をセットしてStep81に戻って処理を続行し(Step86:Yes)、画像がない場合は、Step87へ進む(Step86:No)。
【0060】
(Step87)
制御部40は、画像選択部42において、評価値の最も高い画像を選択する。
【0061】
(Step88)
制御部40は、選択画像に対応する値を戻り値として、リターン動作を実行し、
図4で示す、Step08に戻る。
【0062】
(外接矩形計測部43による外接矩形計測の動作)
外接矩形計測部43による外接矩形計測の動作は、
図4で示したStep09により実行される。
【0063】
実際に撮影した計測対象物10の画像では、差分を取った後の画像でも、物体の周りに影の影響で淡い変化が見られる。このため、単純にヒストグラムを使った背景部20と計測対象物10の分離では、この淡い変化分も計測対象物10の一部として認識されてしまう。
【0064】
図9(a)、(b)は、最適なスレッシュホールドの値を決定するための方法を説明する図である。上記のことを避けるため、
図9(a)に示すように、スレッシュホールドを背景の山と、物体の山の間にある谷の最低値の中間位置(A位置)から、物体の山の終わりまでの位置(B位置)で変化させ、最適なスレッシュホールドの値を決定する。スレッシュホールドを動かすと、物体のサイズを示す矩形は、
図9(b)に示すように、A位置では、物体の全体と影を含む大きな矩形の状態になり、B位置の近くでは、物体のピクセルのうち、大部分は背景として分離された小さな矩形になる。
【0065】
図10(a)〜(c)は、ピクセル輝度値を等分に分割し、その分割位置による外接矩形のサイズを計測することにより最適なスレッシュホールドの値を決定する方法を説明する図である。最適なスレッシュホールド位置に対する評価は、
図10(a)に示すように、A位置からB位置までの間を、等分に分割し、その分割位置による外接矩形のサイズを計測することにより行う。各位置で外接矩形の長辺と短辺の変化は、
図10(b)に示すように、スレッシュホールドの変化に対し、大きく変化する位置(物体の外形を外れ、微妙な画像変化の影響を顕著に受ける区間)と、
図10(c)に示すように、あまり変化しない場所(物体の外形に接し、淡い変化分に従い緩やかにサイズが変化する部分)が存在する。したがって、最適なスレッシュホールド位置は、
図10(c)に示すように、測定値の変化が少ない区間の中央(平均)の値を採用する。このようにすることで、物体による影の影響を抑え、より物体の外形に近い位置に外接矩形をフィットさせることができる。
【0066】
(フィードバック制御による最適なスレッシュホールド値の決定動作)
図11は、
図4で示したStep09をサブルーチン、関数として処理する場合のものであって、決定した画像に対してフィードバック制御によるスレッシュホールドの最適化を行った外接矩形を求める動作を示すフローチャートである。
【0067】
(Step91)
処理が開始されると、制御部40は、外接矩形計測部43において、ヒストグラムの最初の山(背景)の頂点とスレッシュホールド位置の中間値から、物体の山の終端までの間を評価数で等分し、スレッシュホールドとしてのピクセル輝度値を求める。
【0068】
(Step92)
スレッシュホールドとしてのピクセル輝度値を基準に画像を分離し、2値化する。
【0069】
(Step93)
2値化した画像を基に、最も外側になる輪郭に対し、外接矩形(回転含む)を求める。外接矩形(回転含む)を求めるために、エッジ抽出、ノイズフィルタリング、輪郭抽出、最大輪郭選択、外接矩形取得を実行する。これらの処理は、本実施の形態ではプログラム言語としてPython環境で行なうので、例えば、OpenCVモジュールとして、ライブラリ化、関数化されており、これらを利用することができる。
【0070】
(Step94)
外接矩形の長辺、短辺の長さを評価値として登録する。
【0071】
(Step95)
制御部40は、外接矩形計測部43において、評価位置をすべて処理したかを判断する。評価位置をすべて処理した場合は、Step96へ進み(Step95:Yes)、評価位置をすべて処理していない場合は、次の画像をセットしてStep92に戻って処理を続行する(Step95:No)。
【0072】
(Step96)
取得した長辺、短辺のスレッシュホールド位置での長さ情報を基に、各々の安定区間を抽出する。
【0073】
(Step97)
長辺、短辺の各々の安定位置の重なった位置を抽出し、最適スレッシュホールド位置をその真ん中に設定する。
【0074】
(Step98)
制御部40は、外接矩形計測部43において、決定したスレッシュホールドで外接矩形を求める。
【0075】
(Step99)
制御部40は、外接矩形に対応する値を戻り値として、リターン動作を実行し、
図4で示す、Step09に戻る。
【0076】
(辺の長さリストからの安定区間の決定動作)
図12は、
図11で示したStep96をサブルーチン、関数として処理する場合のものであって、取得した長辺、短辺のスレッシュホールド位置での長さ情報を基に、各々の安定区間を抽出する動作を示すフローチャートである。また、
図13(a)〜(i)は、辺の長さリストからの安定区間の決定動作の一例を各区間の処理毎に説明するための図である。
【0077】
(Step961)
制御部40は、初期のスレッシュホールド位置を基に、開始区間を設定する。
図13(a)に示すように、例えば、初期スレッシュホールドの入るS2区間から開始する。
【0078】
(Step962)
制御部40は、区間の前後における辺の長さ変化を求める。
図13(b)〜
図13(h)に示すように、区間の前後における辺の長さ変化を求める。
【0079】
(Step963)
制御部40は、変化値がいずれも許容範囲を超えるかどうかを判断する。変化値がいずれも許容範囲を超えない場合は、Step965へ進み(Step963:No)、変化値がいずれも許容範囲を超える場合は、Step964へ進む(Step963:Yes)。
【0080】
(Step964)
図13(a)〜(i)に示す処理を実行して安定区間を出力した場合、制御部40は、安定区間に対応する値を戻り値として、リターン動作を実行し、
図11で示す、Step96に戻る。
【0081】
(Step965)
制御部40は、変化の小さい側に区間を延伸する。例えば、
図13(b)に示す例では、D1よりD3が小さいためD3側に伸延する。
【0082】
(Step966)
制御部40は、区間の両端にあたる部分の変化値を計算する。
【0083】
(Step967)
制御部40は、どちらかの変化が許容範囲を超えるかどうかを判断する。どちらかの変化が許容範囲を超える場合は、Step968へ進み(Step967:Yes)、どちらかの変化が許容範囲を超えない場合は、Step962に戻って処理を続行する(Step967:No)。
【0084】
(Step968)
制御部40は、大きな変化を起こす側の区間を削除(短縮)する。例えば、
図13(c)に示す例では、伸延とは逆側のD2が誤差範囲を超えているためS2区間を削除して短縮する。制御部40は、Step962に戻って処理を続行する。
【0085】
上記示したような一連の動作により、本実施の形態に係る物体計測装置1は、一般に物流で流れる様々な商品(箱状、袋状、円筒など)である不特定の計測対象物の外形サイズ(幅W、奥行きD、正確には回転角を持つ外接矩形)を計測することが可能になる。特に、背景部は、パターン模様を有している構成とされていることから、計測対象物の外観が、任意の形状、任意の色、又は、任意のテクスチャを有する不特定物であっても寸法計測が可能となる。
【0086】
また、撮像画像から、グレースケール画像、R、G、B、H、S、Vの各色空間画像を生成し、それぞれ生成した色空間画像のヒストグラムパターンの評価値に基づいて利用する寸法測定画像を選択する画像選択部を有する構成としていることから、最適な色空間画像を使用して、スレッシュホールド位置を決定し、外接矩形計測を実行することが可能となる。
【0087】
(第1の実施の形態の効果)
図14(a)は、パターン模様を有しない単色の背景部に計測対象物を載置した場合の一例を示す図であり、
図14(b)は、本願発明に係るパターン模様の背景部に計測対象物を載置した場合の一例を示す図である。
図14(a)の場合は、背景205が単色であり、計測対象物207である物体の輪郭付近208の色が同色、近似する色、又は、近似する輝度を有する色である。このような場合、スレッシュホールドの設定が難しく、計測対象物207である容器の縁の輪郭付近208が背景に同化し、ラベル209のみが検出され、正しい輪郭を検出できないことがある。これに対して、
図14(b)に示すような本実施の形態では、計測対象物207である容器の少なくとも一部の縁が輪郭抽出可能であり、複数色パターンを使った輪郭消失の抑止効果が期待できる。
【0088】
背景部20と計測対象物10の分離処理では、使う画像(例えば、RGBグレー画像、R画像、G画像、B画像、H画像、S画像、V画像等)によって分離の精度が異なってくるという問題がある。本実施の形態において、画像選択部42は、撮像画像から変換した複数の異なる色空間画像を、それぞれから生成した色空間画像のヒストグラムパターンの評価を行なう。これにより、スレッシュホールドが大きく、オブジェクトよる変化分が大きく、かつ、背景の山と物体の山に生じる谷の最低値がより低いイメージを物体の輪郭抽出用の画像、寸法測定画像として選択することができる。上記示した画像選択の動作において、撮像画像は、パターン模様の背景部に計測対象物を載置した場合に限られず、単色の背景部に計測対象物を載置した場合においても、物体の輪郭抽出の精度を向上させることができる。
【0089】
実際に撮影した計測対象物10の画像では、差分を取った後の画像でも、物体の周りに影の影響で淡い変化が見られ、単純にヒストグラムを使った背景部20と計測対象物10の分離では、この淡い変化分も計測対象物10の一部として認識されてしまうという問題がある。本実施の形態では、外接矩形計測部43は、計測対象物に対してスレッシュホールド値を変化させて得られる、複数のサイズの外接矩形のうち、スレッシュホールドの変化に対し、サイズ変化の少ない区間(安定区間)を選択する。最適なスレッシュホールド位置として、
図10(c)に示すように、測定値の変化が少ない区間の中央(平均)の値を採用することで、物体による影の影響を抑え、より物体の外形に近い位置に外接矩形をフィットさせることができる。
【0090】
〔本発明の第2の実施の形態〕
図15(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る計測装置100の構成を示す構成概略図であり、
図15(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る計測装置100を構成する構成要素の接続関係を示すブロック構成図である。第2の実施の形態では、計測装置100は、計測対象物10の重量を計測する重量計測部125と、撮像部130が深度(高さH)情報の取得も可能な3Dカメラを備えている。これにより、計測対象物10の重量、及び、形状寸法(幅W、奥行きD、高さH)が計測可能となる。
【0091】
図15(a)、(b)に示すように、背景部20は、重量計測部125の上面に設置されている。計測対象物10は、重量計測部125の上面に載置されて、重量を計測されると共に、パターン模様を背景として撮像部130により撮像される。重量計測部125は、制御部40に接続されており、重量の計測制御、重量計測値の入出力が可能である。
【0092】
撮像部130は、深度情報も取得可能なカメラである。例えば、撮像部130は、TOFカメラ(トフカメラ、Time-of-Flight Camera)が使用できる。TOFカメラは、被写体に対して照射したパルス光の反射時間を画素毎に計測することで三次元的な情報を計測できる。これにより、計測対象物10の重量、及び、形状寸法(幅W、奥行きD、高さH)が計測可能となる。
【0093】
制御部40は、差分画像生成部41、画像選択部42、外接矩形計測部43の処理を実行すると共に、重量計測部125、撮像部130の制御も行なう。したがって、計測装置100においては、計測対象物10の重量計測、容積の算出を行なうことが可能となる。
【0094】
なお、上記示した撮像部130による深度情報を含めた情報以外に、計測対象物10の温度、色等の種々の情報取得を行なう各種センサーによる情報に基づいて計測を行なうことも可能である。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0095】
本発明の第2の実施の形態によれば、計測装置100は、計測対象物10の重量を計測する重量計測部125と、撮像部130が深度(高さH)情報の取得も可能な3Dカメラを備えているので、物流における商品の外径寸法(幅W、奥行きD、高さH)、及び重量が計測可能となる。これにより、計測装置100は、保管管理、輸送管理等の物流管理に適用可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【課題】計測対象物の外観が、任意の形状、任意の色、又は、任意のテクスチャを有する不特定物の寸法計測、形状計測等の物体計測が可能な物体計測装置、及び計測装置を提供する。
【解決手段】撮像時に計測対象物10の背後に配置される背景部20と、計測対象物10の画像を取得する撮像部30と、撮像部30により取得した撮像画像に基づいて、計測対象物10の寸法計測、形状計測等の計測処理を実行する制御部40と、を有し、背景部20は、パターン模様を有した物体計測装置1を構成する。また、深度情報も取得可能なカメラを備え、計測対象物の重量を計測可能な構成とすることにより計測装置100を構成する。