特許第6909543号(P6909543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6909543トンネル研掃装置およびトンネル研掃システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909543
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】トンネル研掃装置およびトンネル研掃システム
(51)【国際特許分類】
   E01H 1/00 20060101AFI20210715BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20210715BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20210715BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20210715BHJP
   B24C 3/06 20060101ALI20210715BHJP
   B28D 1/00 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   E01H1/00 B
   B66F11/04
   B66F9/06 B
   B24C9/00 K
   B24C3/06 C
   B28D1/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-177322(P2018-177322)
(22)【出願日】2018年9月21日
(65)【公開番号】特開2020-45743(P2020-45743A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−230819(JP,A)
【文献】 特開2005−230676(JP,A)
【文献】 実開昭57−142012(JP,U)
【文献】 実公昭50−018361(JP,Y1)
【文献】 特開2012−024695(JP,A)
【文献】 特開2013−154431(JP,A)
【文献】 実開昭62−172696(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00
B24C 3/06
B24C 9/00
B28D 1/00
B66F 9/06
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面になったトンネル内面を研掃するトンネル研掃装置であって、
ベースプレート上に垂直に設けられ、駆動手段で上下動するロッドと、
基端が前記ロッドの先端に位置するとともに、先端が前記ロッドの延長線上とは異なる位置になったアーム部と、
前記アーム部の先端に揺動自在に取り付けられ、トンネルの内面を研掃する研掃手段と、
前記ベースプレートをトンネルの延伸方向である第1の方向および前記第1の方向と水平に直交する第2の方向に往復移動させる移動手段と、
を有し、
前記研掃手段は、前記移動手段により前記第1の方向に移動しながら研掃を行い、その後、前記第2の方向に移動するとともに前記ロッドにより上昇または下降しトンネル内面に追随して揺動して次の研掃位置に移行し、前記第1の方向に移動しながら研掃を行う動作を繰り返す、
ことを特徴とするトンネル研掃装置。
【請求項2】
前記アーム部は、前記ロッドに対して斜め上方に屈曲している、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル研掃装置。
【請求項3】
前記研掃手段は、
前記ロッドに垂直方向に回動自在となって取り付けられた取付台と、
上方を向けて前記取付台に設置され、トンネルの内面を研掃する研掃機と、
前記取付台の上面に設置された複数のキャスタと、
を有することを特徴とする請求項1または2記載のトンネル研掃装置。
【請求項4】
前記研掃機は、噴射口からトンネルの内面に研削材を噴射して当該トンネルの内面を研削する、
ことを特徴とする請求項3記載のトンネル研掃装置。
【請求項5】
前記研掃手段は、前記取付台を上下動可能に支持するエアシリンダをさらに有する、
ことを特徴とする請求項3または4記載のトンネル研掃装置。
【請求項6】
前記ベースプレートに載置され、前記ロッドを水平方向に回転自在に搭載するターンテーブルをさらに有する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のトンネル研掃装置。
【請求項7】
前記ベースプレートは、水平方向に回転自在となっている、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のトンネル研掃装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のトンネル研掃装置と、
デッキ部に前記トンネル研掃装置が取り付けられた高所作業車と、
を有することを特徴とするトンネル研掃システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル研掃装置およびトンネル研掃システムに関し、特に内面が曲面になったトンネルの補修工事に適用して有効なトンネル研掃技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路や一般道に構築されているトンネルには、ボックスカルバートなどを使用した断面が矩形のトンネルや、湾曲したセグメントなどを使用した断面が円形や馬蹄形のトンネルがある。そして、前者のトンネルは、天井や壁が平面で構成されているのに対して、後者のトンネルは曲面で構成されている。
【0003】
トンネルは、供用開始から所定期間経過したならば、劣化した表面を削り取って目荒しや塗膜除去を行う下地処理をした後、コンクリート改質剤を塗布する表面処理を行う補修工事が実行される。
【0004】
ここで、下地処理作業は、作業箇所に高所作業台を設置し、当該作業台に作業員が乗って人力で行っていた。しかしながら、人力での作業は、重量のある工具を用いて上向き姿勢で行わなければならないために作業効率が悪く、時間がかかるのみならず費用も嵩むことになる。
【0005】
そこで、例えば特許文献1(特開2017−040103号公報)に記載のように、人力によらず、自動的にトンネル天井面の研掃を行うトンネル天井面研掃装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−040103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のトンネル天井面研掃装置は、平面形状になったトンネルの天井を自動的に研掃するには有効な装置であるが、曲面形状になったトンネルの研掃に適用することはできない。つまり、特許文献1のトンネル天井面研掃装置では、トンネルの曲面に沿って研掃手段を動かすことができない。
【0008】
そこで、本発明者等は、上下動するロッドの先端に研掃手段を揺動自在に取り付け、トンネルの曲面に沿って研掃手段を揺動させた状態で押し付けるとの着想を得た。
【0009】
ここで、研掃手段は大きな押し付け力により確実にトンネルの内面に押し付けなければならない。そして、研掃手段を大きな力で押し付ける場合、押し付け用のロッドの軸力を大きくしなければならないが、前述した構造では、押し付け力を大きくするとロッドの先端の水平力が大きくなりロッドの撓みが大きくなる。
【0010】
ロッドの撓みを小さくするにはロッドの剛性を大きくすればよいが、そのためにはロッドが大きくなり、重量が重くなってしまう。
【0011】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、内面が曲面になったトンネルに研掃手段を確実に押し付けて研掃することのできるトンネル研掃装置およびトンネル研掃システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のトンネル研掃装置は、曲面になったトンネル内面を研掃するトンネル研掃装置であって、ベースプレート上に垂直に設けられ、駆動手段で上下動するロッドと、基端が前記ロッドの先端に位置するとともに、先端が前記ロッドの延長線上とは異なる位置になったアーム部と、前記アーム部の先端に揺動自在に取り付けられ、トンネルの内面を研掃する研掃手段と、前記ベースプレートをトンネルの延伸方向である第1の方向および前記第1の方向と水平に直交する第2の方向に往復移動させる移動手段と、を有し、前記研掃手段は、前記移動手段により前記第1の方向に移動しながら研掃を行い、その後、前記第2の方向に移動するとともに前記ロッドにより上昇または下降しトンネル内面に追随して揺動して次の研掃位置に移行し、前記第1の方向に移動しながら研掃を行う動作を繰り返す、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明のトンネル研掃装置は、上記請求項1に記載の発明において、前記アーム部は、前記ロッドに対して斜め上方に屈曲している、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明のトンネル研掃装置は、上記請求項1または2記載の発明において、前記研掃手段は、前記ロッドに垂直方向に回動自在となって取り付けられた取付台と、上方を向けて前記取付台に設置され、トンネルの内面を研掃する研掃機と、前記取付台の上面に設置された複数のキャスタと、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明のトンネル研掃装置は、上記請求項3記載の発明において、前記研掃機は、噴射口からトンネルの内面に研削材を噴射して当該トンネルの内面を研削する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の本発明のトンネル研掃装置は、上記請求項3または4記載の発明において、前記研掃手段は、前記取付台を上下動可能に支持するエアシリンダをさらに有する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の本発明のトンネル研掃装置は、上記請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記ベースプレートに載置され、前記ロッドを水平方向に回転自在に搭載するターンテーブルをさらに有する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の本発明のトンネル研掃装置は、上記請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記ベースプレートは、水平方向に回転自在となっている、ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するため、請求項8に記載の本発明のトンネル研掃システムは、請求項1〜7の何れか一項に記載のトンネル研掃装置と、デッキ部に前記トンネル研掃装置が取り付けられた高所作業車と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、研掃手段を研掃面に押し付けたときのロッド先端の水平変位が小さくなるので、内面が曲面になったトンネルに対して研掃手段を大きな押し付け力で確実に押し付けて研掃することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図である。
図2】本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を示す正面図である。
図3】本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を示す側面図である。
図4】本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を構成する移動手段を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置に設けられた研掃手段を示す平面図である。
図6】本発明者等が検討対象としたトンネル研掃装置を示す概念図である。
図7図6のトンネル研掃装置における押し付け力を説明するための説明図である。
図8】片持ち梁の先端に水平力が作用した場合を説明するための説明図である。
図9】片持ち梁の先端に回転モーメントが作用した場合を説明するための説明図である。
図10】本実施の形態に係るトンネル研掃装置を示す概念図である。
図11図10のトンネル研掃装置における押し付け力を説明するための説明図である。
図12】本実施の形態のトンネル研掃装置を用いたトンネル内面の研掃を示す説明図である。
図13】本実施の形態のトンネル研掃装置におけるアーム部の形状の変形例を示す説明図である。
図14】本実施の形態のトンネル研掃装置におけるアーム部の形状の他の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図、図2は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を示す正面図、図3は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を示す側面図、図4は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を構成する移動手段を示す説明図、図5は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置に設けられた研掃手段を示す平面図である。なお、図2および図3においては、トンネル研掃装置を構成する移動手段の一部は図示が省略されている。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態のトンネル研掃システムは、高所で作業を行うための特殊車輌である高所作業車Vと、当該高所作業車Vに設置されたブームVaの先端のデッキ部Vbに取り付けられたトンネル研掃装置Mとを備えている。ブームVaは、起伏および旋回が可能になっており、さらに直線的に伸縮可能になっている。そして、ブームVaを動かして所定の高さ位置に設定することで、トンネル研掃装置Mによるトンネル(特に、内面が曲面になったトンネル)の研掃が行われる。
【0025】
なお、高所作業車Vは、このような伸縮ブーム型ではなく、ブームが途中で屈折する屈折ブーム型でもよく、デッキ部Vbが垂直に昇降するリフタ型(マストブーム式・シザース式)でもよい。
【0026】
図2および図3に詳しく示すように、トンネル研掃装置Mは、ベースプレート10およびベースプレート10を水平方向に移動させる移動手段11を備えている。また、ベースプレート10上には、ロッド15を上下方向に延びるようにして保持する保持フレーム12が設置されている。また、ベースプレート10上には、当該ベースプレート上に立設されたロッド15を上下動させるためのエアシリンダ(駆動手段)13が設置されている。このエアシリンダ13は、中空になったロッド15の内部空間に配置されており、当該ロッド15により起立した状態に保持されている。
【0027】
エアシリンダ13のシリンダロッド13aは、ロッド15内において径方向に設けられた取付板15−1に取り付けられている。これにより、ロッド15はエアシリンダ13に駆動されて上下動し、研掃時において後述する研掃手段17をトンネルの内面に押し付ける。なお、保持フレーム12には、ロッド15の両側を支持するローラ対16a,16bが上下2段に設けられている。したがって、ロッド15はローラ対16a,16bに支持された状態で上下動するようになっており、安定的な上下動が可能になっている。
【0028】
なお、ロッド15を上下動させる駆動手段としては、本実施の形態に示すエアシリンダ13以外に、例えば油圧シリンダやチェーンによる昇降機構などを用いてもよい。また、伸縮可能なロッドを用い、本実施の形態のようにロッド全体ではなく、ロッドの一部を上下動させるようにしてもよい。
【0029】
また、ベースプレート10とエアシリンダ13との間にはターンテーブル14が介在されている。すなわち、エアシリンダ13は、ベースプレート10に載置されたターンテーブル14上に搭載されており、当該ターンテーブル14により水平方向に回転自在になっている。
【0030】
なお、ターンテーブル14は研掃手段17のトンネル内面に対する水平方向の研掃角度を微調整するために用いられるが、微調整までは必要ない場合も考えられる。そのような場合には、ターンテーブル14を設けることなく、ベースプレート10上に直接保持フレーム12やエアシリンダ13などを搭載するようにしてもよい。
【0031】
ここで、移動手段11は、図4に示すように、ベースプレート10を第1の方向D1に往復移動させる第1の移動機構部11aと、ベースプレート10を第1の方向D1と直交する第2の方向D2に往復移動させる第2の移動機構部11bとからなる。
【0032】
図2および図3において、ベースプレート10の裏面の四隅には車輪10aが取り付けられており、第1の移動機構部11aは、ベースプレート10が車輪10aを介して走行可能に載置される第1のレール11a−1、および第1のレール11a−1上のベースプレート10を第1の方向D1に往復移動させるモータ(第1の駆動体)11a−2を備えている。モータ11a−2は第1のレール11a−1の一方端に設置されており、モータ11a−2の回転軸に取り付けられたスプロケット11a−3aと第1のレール11a−1の他方端に回転自在に設置されたスプロケット11a−3bとの間には、チェーン11a−4が掛け渡されている。さらに、チェーン11a−4には、ベースプレート10の下面から延びた伝達棒10bの先端が固定されている。
【0033】
したがって、モータ10cの回転によりチェーン11a−4が周方向に回転すると伝達棒10bが第1の方向D1に移動し、これに伴ってベースプレート10が第1のレール11a−1上を走行して第1の方向D1に移動する。
【0034】
第1のレール11a−1の端部の4箇所には、第1のレール11a−1の延伸方向と直交する方向を回転面とする車輪(図示せず)が取り付けられている。また、図4において、第1のレール11a−1の両端には、第1のレール11a−1とで矩形のフレームを形成するタイロッド11a−5が設置されている。
【0035】
そして、第2の移動機構部11bは、第1のレール11a−1が車輪を介して走行可能に載置される第2のレール11b−1、および第2のレール11b−1上の第1のレール11a−1を第2の方向D2に往復移動させるモータ(第2の駆動体)11b−2を備えている。また、第2のレール11b−1の両端にも、第2のレール11b−1とで矩形のフレームを形成するタイロッド11b−3が設置されている。モータ11b−2は一方のタイロッド11b−3の略中央部分に設置されており、その回転軸上にはシャフト11b−4が取り付けられている。また、他方のタイロッド11b−3におけるモータ11b−2との対向位置には、シャフト11b−4の先端を回転自在に支持する軸受11b−5が設置されている。さらに、第1の移動機構部11aにおけるシャフト11b−4に対応した位置には、一対の第1のレール11a−1を連結するとともに当該シャフト11b−4が貫通する突起片11a−6aが裏面に取り付けられた連結棒11a−6が設けられている。前述したシャフト11b−4には雄ネジが形成され、シャフト11b−4が貫通する突起片11a−6aには、当該雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。
【0036】
したがって、モータ11b−2によりシャフト11b−4が回転すると連結棒11a−6において回転運動が直線運動に変換され、これにより第1のレール11a−1が第2のレール11b−1上を走行して第2の方向D2に移動する。
【0037】
なお、移動手段11は図4に示すものに限定されるものではなく、ベースプレート10を水平方向に移動させることができる限り、様々な構造を採用することができる。また、移動手段11は、ベースプレート10をトンネルの延伸方向、つまり後述する研掃手段17がトンネルを研掃する方向に移動させることができれば足り、本実施の形態のように、所定範囲内の水平面に対して移動させることができなくてもよい。
【0038】
さて、図2および図3に示すように、エアシリンダ13により上下動するロッド15の先端にはアーム部18が固定されている。このアーム部18は、基端がロッド15の先端に位置しており、先端には、トンネルの内面を研掃する研掃手段17が揺動自在に設置されている。図示するように、アーム部18は、ロッド15に対して斜め上方に屈曲するように固定されており、このようなアーム部18の先端に研掃手段17が揺動自在に取り付けられることにより、内面が曲面になったトンネルに対して大きな押し付け力が得られるようになっている。なお、押し付け力についての詳細は後述する。
【0039】
なお、本願ではロッド15とアーム部18とが別体になっているが、両者を一体にし、ロッド15の上部を屈曲してアーム部としてもよい。
【0040】
研掃手段17は、ロッド15に揺動自在に取り付けられた取付台17aと、トンネルの内面を研掃する研掃機17bとを備えている。
【0041】
すなわち、図3に示すように、アーム部18は、ロッド15に取り付けられたベース板18aと、ベース板の両端に立設された2枚の支持板18bとで構成されている。そして、取付台17aの下面両端に設けられた2枚の回動板17a−1が2枚の支持板18bに対してそれぞれ垂直方向に回動自在に取り付けられることにより、取付台17aがアーム部18に対して揺動自在になっている。
【0042】
図5に示すように、トンネルの内面と対向してトンネルの研掃を行う研掃機17bは、上方を向けて取付台17aに設置されている。また、取付台17aの上面の四隅にはキャスタ17cが設けられており、研掃時には、当該キャスタ17cがトンネルの内面と接することで取付台17aとトンネル内面とが一定の間隔に保たれつつ、研掃手段17の移動に伴って当該キャスタ17cがトンネルの内面により回転するようになっている。
【0043】
なお、キャスタ17cの個数や取付位置は本実施の形態に限定されるものではなく、自由に設定することができる。
【0044】
研掃機17bには、内側から外側に向かって、トンネルの内面に研削材を噴射してトンネルの劣化部分を研削する円形の噴射口17b−1、研削されたトンネル内面の剥離片や噴射された研削材を負圧吸引する円形の吸引口17b−2、および剥離片や研削材の飛散を防止するために吸引口17b−2の周縁に設けられたリングブラシ17b−3が、同心円状に配置されている。
【0045】
図示するように、研掃機17bは2台設置されている。そして、それぞれの研掃機17bは、噴射口17b−1が研掃手段17の揺動方向と直交する方向(つまり、研掃する方向)に対して相互にずらして(オーバーラップして)取り付けられている。本実施の形態では、噴射口17b−1の直径が80mm、オーバーラップ寸法が40mmとなっている。したがって、トンネル内面に対して研削材が120mmの幅で噴射されることになる。但し、これらの数値は例示に過ぎず、本発明がこれらの数値に拘束されるものではない。
【0046】
なお、研掃機17bの設置台数は自由に設定でき、1台でも3台以上でもよい。また、研掃機17bを複数台設ける場合、本実施の形態のように相互にずらして設置しなくてもよい。さらに、研掃機17bは、本実施の形態のような研削材噴射型ではなく、加圧された水流でトンネルの内面を研掃するウォータージェット型などでもよい。
【0047】
図2および図3に示すように、研掃手段17には、エアシリンダ17dが備えられている。このエアシリンダ17dは、支持フレーム17eに取り付けられてロッド15に反力をとるように設置されており、先端が取付台17aに固定されている。したがって、取付台17aがエアシリンダ17dによって上下動可能に支持されており、研掃時には、エアシリンダ17dを伸長させることによって、取付台17aに設置されたキャスタ17cがトンネルの内面に押さえ付けられる。そして、キャスタ17cが押さえ付けられた状態において、リングブラシ17b−3がトンネルの内面に接触する。
【0048】
なお、前述したエアシリンダ13によりロッド15の上下位置を調整することによりキャスタ17cをトンネルの内面に押さえ付けるようにすることもできる。このようにロッド15のみで押さえ付ける場合には、エアシリンダ17dを省略することができる。但し、ロッド15で研掃手段17の大まかな高さを調節し、エアシリンダ17dでキャスタ17cをトンネルの内面に押さえ付けるようにすれば、研掃手段17を容易に適切な押圧力で押さえ付けることができる。
【0049】
なお、以上説明した移動手段11、エアシリンダ13、ターンテーブル14、研掃手段17は、図示しないコントローラを用いて、作業者により遠隔操作される。
【0050】
ここで、本発明者等が検討対象としたトンネル研掃装置と本実施の形態に係るトンネル研掃装置とに関し、内面が曲面になったトンネルに研掃手段17を押し付けたときの押し付け力について、図6図11を用いて説明する。図6は本発明者等が検討対象としたトンネル研掃装置を示す概念図、図7図6のトンネル研掃装置における押し付け力を説明するための説明図、図8は片持ち梁の先端に水平力が作用した場合を説明するための説明図、図9は片持ち梁の先端に回転モーメントが作用した場合を説明するための説明図、図10は本実施の形態に係るトンネル研掃装置を示す概念図、図11図10のトンネル研掃装置における押し付け力を説明するための説明図である。
【0051】
研掃手段17によるトンネル内面の研掃では、研掃手段17のロッド15を鉛直方向から研掃面に押し付ける必要がある。このときの研掃手段17の押し付け力は、押し付け用のロッド15の軸力の分力で得られる。
【0052】
図6に示す検討対象のトンネル研掃装置では、大きな押しつけ力が必要な場合にはロッド15の軸力を大きくしなければならないが、軸力を大きくするとロッド15の先端の水平力が大きくなってたわみが大きくなる。そして、ロッド15の水平方向のたわみを小さくするためには剛性を大きくしなければならないが、そうするとロッド15の重量が重くなってしまう。
【0053】
図7において、研掃手段17の押し付け位置での研掃面の傾斜角をβ、ロッドの軸力をFとすると、トンネルの研掃面への押し付け力Fおよび水平力Fは、それぞれ、
【数1】
【数2】
となる。
【0054】
また、ロッドの剛性をEI、ロッドの長さをL、ロッドの先端荷重をPとすると、ロッド先端のたわみδは、
【数3】
となる。
【0055】
ここで、片持ち梁の先端に水平力が作用した場合(図8)および回転モーメントが作用した場合(図9)の片持ち梁の先端の変位δは、それぞれ、
【数4】
【数5】
となる。
【0056】
したがって、図10に示す本実施の形態に係るトンネル研掃装置のように、片持ち梁の先端つまりロッド15の先端にアーム部18を設け、水平力と同時に当該水平力を打ち消す方向の回転モーメントを作用させれば、ロッド15先端の水平変位を小さくすることができることが分かる。
【0057】
なお、図11において、アーム部の長さをd、アーム部の水平面に対する角度(鈍角)をαとすると、トンネルの研掃面への押し付け位置であるB点における反力Fによって発生する回転モーメントMは、
【数6】
となる。
【0058】
次に、以上のような構成を有するトンネル研掃装置によるトンネル内面の研掃について、図12を用いて説明する。なお、ここでは、内面が曲面になったトンネルを研掃する場合について説明する。ここで、図12は本実施の形態のトンネル研掃装置を用いたトンネル内面の研掃を示す説明図である。
【0059】
トンネル内面の研掃においては、トンネル研掃装置Mが取り付けられた高所作業車Vを研掃エリアへと移動する。そして、ブームVaを動かしてトンネル研掃装置Mを所定の高さ位置に設定する。
【0060】
そして、移動手段11によりベースプレート10を水平方向に動かし、研掃手段17を移動手段11の端部に配置する。
【0061】
続いて、トンネル研掃装置Mに設けられた研掃手段17の水平移動方向とトンネルの延伸方向とが平行になり、且つ、研掃手段17の揺動方向がトンネルの延伸方向と直交する方向となるように、ブームVaやターンテーブル14によりトンネル研掃装置Mの水平方向(つまり、研掃手段17の研掃角度)を調整する。これは、トンネルの延伸方向と研掃手段17の水平移動方向とを平行に保たないと研掃位置が上下にずれてしまうからである。なお、調整にあたっては、ブームVaでベースプレート10の粗調整を行った後に、ターンテーブル14で微調整を行うようにするのが望ましい。
【0062】
なお、ここでは、移動手段11における第1の方向D1(研掃手段17が第1の移動機構部11aによって移動する方向)がトンネルの延伸方向に対応した方向とする。
【0063】
トンネル研掃装置Mの水平方向の調整を行ったならば、トンネル研掃装置Mのロッド15により研掃手段17を上昇させ、さらにエアシリンダ17dにより取付台17aを上昇させて、研掃手段17をトンネルの内面に押さえ付ける。
【0064】
すなわち、研掃手段17は、ロッド15に固定されたアーム部18の先端に揺動自在に設置されているので、ロッド15やエアシリンダ17dで研掃手段17を上昇させると、当該研掃手段17はトンネルの曲面に追随して揺動するとともに(図12参照)、取付台17aに設置されたキャスタ17cがトンネルの内面に押さえ付けられる。しかも、アーム部18は、ロッド15に対して斜め上方に屈曲するように固定されているので、研掃手段17を研掃面に押し付けたときのロッド15先端の水平変位が小さくなる。これにより、内面が曲面になったトンネルに対して研掃手段17を大きな押し付け力で押し付けることができ、研掃手段17を確実に押し付けて研掃することが可能になる。なお、このときの研掃手段17の位置を、図12において、符号R1で示す。
【0065】
ここで、トンネル研掃装置Mは、図12等に示すように、斜め上方に屈曲したアーム部18がトンネルの壁面を向くようにして設置するのが望ましい。これは、アーム部18がトンネルの壁面と反対を向くように設置した場合に比較して、当該アーム部18により研掃手段17をトンネルの壁面に押さえ付ける大きな力を容易に得ることができるからである。但し、アーム部18がトンネルの壁面と反対を向くように設置することを妨げるものではない。
【0066】
このようにして研掃手段17をトンネルの内面に押さえ付けたならば、移動手段11の第1の移動機構部11aによりベースプレート10を動かして当該研掃手段17をトンネルの延伸方向に移動させながら、内面が曲面になったトンネルを研掃する。すなわち、研掃機17bの噴射口17b−1からトンネルの内面に研削材を噴射してトンネルの劣化部分を研削しつつ、吸引口17b−2でトンネル内面の剥離片や研削材を吸引していく。これにより、図12の符号R1で示す箇所が、トンネルの延伸方向に沿って研掃される。
【0067】
研掃手段17をトンネルの延伸方向に移動させ、符号R1で示す箇所のトンネル延伸方向を研掃したならば、次は、研掃端において移動手段11の第2の移動機構部11bでベースプレート10を動かして研掃手段17を所定量だけ第2の方向D2(トンネルの内面から遠ざかる第2の方向D2)に移動させるとともにロッド15により当該研掃手段17を上昇させ、当該研掃手段17を図12の符号R2で示す箇所(つまり、符号R1で示す箇所より上方)に移動させる。このとき、研掃手段17は、トンネルの符号R1で示す位置とは異なる位置である符号R2で示す位置の曲面に追随して、揺動角が僅かに水平方向に変化する。
【0068】
なお、移動手段11が、研掃手段17がトンネルを研掃する第1の方向D1にのみベースプレート10を移動させることができ、第2の方向D2には移動させる機能を有していない場合には、ブームVaにより研掃手段17を第2の方向D2に移動させるようにする。
【0069】
ここで、研掃手段17を下方に移動させる場合には、ロッド15やエアシリンダ17dにより研掃手段17を下降させて当該研掃手段17をトンネルの内面から一旦離間させておき、移動手段11の第2の移動機構部11bにより研掃手段17を第2の方向D2(トンネルの内面に接近する第2の方向D2)に移動させる。そして、あらためて研掃手段17を上昇させてトンネルの内面に押さえ付けなければならない。
【0070】
これに対して、本実施の形態のように研掃手段17を上方に移動させる場合には、研掃手段17をトンネルの内面から離間させることなく、研掃手段17を第2の方向D2に移動させるとともにロッド15により上昇させればよい。よって、研掃手段17を下方に移動させる場合と比較して、研掃手段17の高さ位置の変更を短時間で完了させることができる。但し、研掃手段17を下方に移動させながらトンネルの内面を研掃してもかまわない。
【0071】
さて、研掃手段17を図12の符号R2で示す箇所にしたならば、移動手段11の第1の移動機構部11aにより、符号R1で示す箇所を研掃したときとは逆方向に研掃手段17を移動させる。これにより、図12の符号R2で示す箇所が、トンネルの延伸方向に沿って研掃される。
【0072】
このようにして符号R2で示す箇所のトンネルの延伸方向を研掃したならば、研掃端において移動手段11の第2の移動機構部11bにより研掃手段17を所定量だけ第2の方向D2に移動させるとともにロッド15により当該研掃手段17を上昇させ、当該研掃手段17を図12の符号R3で示す箇所(つまり、符号R2で示す箇所より上方)に移動させる。このとき、研掃手段17は、トンネルの符号R2で示す位置とは異なる位置である符号R3で示す位置の曲面に追随して、揺動角がさらに水平方向に変化する。そして、当該符号R3で示す箇所のトンネル延伸方向を研掃する。
【0073】
以降、同様にして研掃手段17を下から上へと移動させながら、トンネルの研掃を行う。
【0074】
なお、図5に示すように、研掃機17bの噴射口17b−1からの研削材の噴射幅(すなわち、研掃幅)は研掃手段17の幅よりも狭いので、研掃手段17の位置を下から上に移動させる際の移動量は研削材の噴射幅(本実施の形態では120mm)となる。但し、図12では、煩雑になるのを回避するために、研掃幅と研掃手段17の幅とを同一とした前提で図示している。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態のトンネル研掃装置Mによれば、水平方向に移動するベースプレート10上に設置された上下動可能なロッド15の先端に、研掃手段17が揺動自在に設置され、当該研掃手段17で曲面形状になったトンネルの内面を研掃するようにしている。したがって、研掃手段17が研掃位置の曲面に追随して揺動した状態で研掃が行われるようになるので、トンネルの曲面に沿って研掃手段17を動かすことができ、内面が曲面になったトンネルを研掃することが可能になる。
【0076】
そして、研掃手段17は、ロッド15に対して斜め上方に屈曲するように固定されたアーム部18の先端に揺動自在に設置されているので、研掃手段17を研掃面に押し付けたときのロッド15先端の水平変位が小さくなり、内面が曲面になったトンネルに対して研掃手段17を大きな押し付け力で確実に押し付けて研掃することが可能になる。
【0077】
また、このようにトンネル研掃装置Mにより、内面が曲面になったトンネルを研掃することが可能になるので、手作業で研掃を行う場合よりも研掃時間および費用を大幅に削減することができる。
【0078】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0079】
たとえば、本実施の形態では、ロッド15に対して斜め上方に屈曲して固定されたアーム部18の先端に揺動自在に設置されている。しかしながら、アーム部18は、ロッド15の先端に作用する水平力を打ち消す方向の回転モーメントを作用させることのできる形状、つまり、基端がロッド15の先端に位置し、先端がロッド15の延長線上とは異なる位置になった形状であればよく、本実施の形態に示す形状に限定されるものではない。一例を挙げると、図13に示すように、L字型の形状や、図14に示すように、ロッド15に対して直角に屈曲した形状などとすることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、ターンテーブル14を回転させて研掃手段17のトンネル内面に対する水平方向の研掃角度を調整していたが、ターンテーブル14に代えて、ベースプレート10自体を水平方向に回転自在として、ベースプレート10を回転させて調整するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上の説明では、本発明のトンネル研掃装置およびトンネル研掃システムを、内面が曲面になったトンネルの研掃に適用した場合が示されているが、内面が平面形状になったトンネルの研掃に適用することも適用できる。
【符号の説明】
【0082】
10 ベースプレート
10a 車輪
10b 伝達棒
10c モータ
11 移動手段
11a 第1の移動機構部
11a−1 第1のレール
11a−2 モータ(第1の駆動体)
11a−3a,11a−3b スプロケット
11a−4 チェーン
11a−5 タイロッド
11a−6 連結棒
11a−6a 突起片
11b 第2の移動機構部
11b−1 第2のレール
11b−2 モータ(第2の駆動体)
11b−3 タイロッド
11b−4 シャフト
11b−5 軸受
12 保持フレーム
13 エアシリンダ(駆動手段)
13a シリンダロッド
14 ターンテーブル
15 ロッド
15−1 取付板
16a,16b ローラ対
17 研掃手段
17a 取付台
17a−1 回動板
17b 研掃機
17b−1 噴射口
17b−2 吸引口
17b−3 リングブラシ
17c キャスタ
17d エアシリンダ
17e 支持フレーム
18 アーム部
18a ベース板
18b 支持板
D1 第1の方向
D2 第2の方向
M トンネル研掃装置
V 高所作業車
Va ブーム
Vb デッキ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14