特許第6909586号(P6909586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 葛城工業株式会社の特許一覧

特許6909586フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム
<>
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000002
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000003
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000004
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000005
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000006
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000007
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000008
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000009
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000010
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000011
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000012
  • 特許6909586-フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909586
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】フレーム用鋼管の製造方法、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレーム
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20210715BHJP
   B21D 41/02 20060101ALI20210715BHJP
   B21D 41/04 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   E04H1/12 301
   B21D41/02 Z
   B21D41/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-16373(P2017-16373)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123566(P2018-123566A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】310020286
【氏名又は名称】葛城工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 弘修
(72)【発明者】
【氏名】呉 佩良
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−177151(JP,A)
【文献】 特開平08−117904(JP,A)
【文献】 特開2002−318083(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0140999(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
B21D 41/02
B21D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角鋼管を所要の長さに切断する第一工程と、切断した角鋼管の一端を円筒形に成形する第二工程と、前記円筒形部分を圧搾して前記角鋼管と同軸の円筒部を頂点に有する略円錐形に成形する第三工程と、前記円筒部の内面に雌ネジを形成する第四工程とから成り、前記第三工程における鋼管の円筒部分の成形は、頂点が開放された円錐形のキャビティを有する金型に前記円筒部分を挿入して圧搾する加工を、大きさが段階的に小さくなる複数の金型を用いて反復することを特徴とする、フレーム用鋼管の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフレーム用鋼管と、前記雌ネジに螺合可能な雄ネジを有するボルトとから成る、高さ調節可能なフレーム部材。
【請求項3】
接地用部材として請求項2に記載のフレーム部材を用いたことを特徴とする、高さ調節可能な浴室ユニット設置用フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物内に設置する浴室ユニットを支承する浴室ユニット設置用フレームに用いるフレーム用鋼管の製造方法、及び、フレーム部材、浴室ユニット設置用フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用浴室ユニット、いわゆるユニットバスは、一般的に、角鋼管を接合して形成した浴室ユニット設置用フレーム(以下、「フレーム」と記す。)を介して浴室の土台上に設置される。フレームは、図1に示す如く、角鋼管から成る水平部材と垂直部材を溶接又はボルトナットで接合して構成されているが、設置個所の土台の高さや凹凸に対応して高さ調節が必要となるため、図2に示す如く、フレーム下面の複数個所にボルトを下から捻じ込む構造として、ボルトの頭部によって土台に接地させており、ボルトの貫入長さを変えることで高さ調節を行っている。
【0003】
また、フレームの構造上、垂直部材が用いられる箇所には特に大きな荷重が掛かる場合が多いため、かかる箇所では垂直部材の下端にボルトを取付て接地させている。ボルトを取付る部材(以下、「フレーム部材」と記す。)は、図3及び図4に示す如く、フレーム部材用の角鋼管(以下、「フレーム材」と記す。の開口部にボルト孔を設けた鋼板を溶接またはネジ留めしてこれを塞ぎ、該ボルト孔にボルトを貫入螺合させる構造が一般的に用いられている。
【非特許文献1】出願人が製造している在来のボルト孔付フレーム材の写真
【0004】
しかし、かかる従来技術によれば、フレーム全体の製造工程において、フレーム材への鋼板の溶接あるいはネジ留めの工程が必要となるため、製造コストの増加要因となっていた。また、ボルト孔には前記鋼板の厚み分しか雌ネジを設けることができず、ボルトは、雄ネジの延長のごく一部のみでフレーム部材を支持する形となる。ボルトの取付部においては、フレームに不均等な荷重が掛かった場合に、ボルトがフレーム部材の軸線からずれて傾斜し、接地が不十分とならないよう十分な強度を確保する必要がある。しかし、鋼板の厚みのみを介してフレーム材がボルトに支持される従来技術では、構造上、ボルト取付部の強度の向上には限界があった。また、フレーム部材に用いられる鋼管の肉厚は一般的に1mm程度であるため、鋼板の溶接やネジ留め箇所の耐久性の向上にも限界があった。さらに、フレームの高さ調節は、鋼板の雌ネジに歯合したボルトの雄ネジの回転により行うため、雄ネジは雌ネジに十分に歯合するだけの歯高が求められ、ボルトは少なくともM16以上のサイズのものが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みて、鋼板のような別体の部材を溶接又はネジ留めすることなく、角鋼管自体の形状の加工により、ボルトを十分な強度で取り付けてフレームの高さ調節を可能とするフレーム部材及び浴室ユニット設置用フレームを提供するとともに、低コストで角鋼管をフレーム用鋼管へと加工してフレーム部材を製造する製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、フレーム用鋼管の製造方法であって、角鋼管を所要の長さに切断する第一工程と、切断した角鋼管の一端を円筒形に成形する第二工程と、前記円筒形部分を圧搾して前記角鋼管と同軸の円筒部を頂点に有する略円錐形に成形する第三工程と、前記円筒部の内面に雌ネジを形成する第四工程とから成り、前記第三工程における鋼管の円筒部分の成形は、頂点が開放された円錐形のキャビティを有する金型に前記円筒部分を挿入して圧搾する加工を、大きさが段階的に小さくなる複数の金型を用いて反復することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のフレーム用鋼管と、前記雌ネジに螺合可能な雄ネジを有するボルトとから成るフレーム部材である。
【0008】
請求項3に記載した発明は、接地用部材として請求項2に記載のフレーム部材を用いたことを特徴とする、高さ調節可能な浴室ユニット設置用フレームである。
【0009】
請求項2に係るフレーム部材によれば、鋼板やその取付金具といった別体の部材を必要とせず、フレーム材に直接ボルトを螺合させることができるため、部品点数の減少とフレームの組み立て工程の簡略化によるコストダウンが可能となる。また、ボルトと螺合するボルト孔については、円筒部の長さ分だけ雌ネジを設けることができるため、ボルトとボルト孔の螺合延長を十分に確保でき、ボルトの取付強度が向上できるだけでなく、比較的ネジのピッチやネジ山の高さが小さなボルトも適用可能となる。
【0010】
浴室ユニット設置用フレームのフレーム部材の中でも接地用の垂直部材は、入浴時には湯を満たして重量が増加する浴槽を支える箇所をはじめ、大きな荷重を支える箇所に使用されるため、当該箇所のフレーム部材へのボルト取付強度の向上はフレーム全体の耐久性向上に資するものとなる。
【0011】
また、別体部材を用いることなく角鋼管の一端にボルトを強固に螺合させるためには、角鋼管の一端に内面に雌ネジを設けた十分な長さのボルト孔を形成する必要がある。本発明では、角鋼管を一旦円筒形に成形した後、この円筒形部分を略円錐形に搾り込みつつ、その頂点を同軸の円筒部に成形することで一体的かつ連続的にボルト孔を形成する。そのため、搾り込みの過程において、円筒の肉厚は略円錐形の頂点に向けて漸進的に増加し、先端に形成する同軸の円筒部の肉厚は最も厚くなる。これにより、従来技術のようにネジ孔を鋼板に設ける場合に比べて、ネジ山のピッチや高さがより小さなボルトも適用可能となる。
【0012】
さらに、フレーム用鋼管の成形に当り、角鋼管の円筒形部分を一回の圧搾で成形しようとすると、管肉にひび割れや変形を生じるおそれがあるが、請求項1に係るフレーム用鋼管の製造方法によれば、大きさが順次小さくなる複数の金型を用いて段階的に成形を行うことで、歩留まりが向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項2に係るフレーム部材は、ボルト孔を設けるために鋼板のような別体部材を必要としないため、浴室ユニット設置用フレームの製造において部品点数の減少と製造工程の簡略化によるコストダウンの効果を奏する。また、ボルト孔はフレーム部材の鋼管の一端の成形により一体的に形成され、従来技術に比べてボルトとボルト孔の螺合延長も長く確保できるため、ボルトの取付部分自体の構造強度が高まるだけでなく、ボルトの取付強度自体も向上でき、浴室ユニット設置用フレームの耐久性を向上できるという効果を奏する。また、本発明の請求項1に係るフレーム用鋼管の製造方法によれば、角鋼管をフレーム用鋼管に成形する際の歩留まりが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明に係るフレーム部材、及びフレーム材の製造方法の実施の形態について図を用いて説明する。
【0015】
図5は、本発明に係るフレーム部材の一実施形態の構成を示す斜視図である。フレーム部材Aは、フレーム材1とボルトBとから成り、フレーム材1は、角鋼管10の一端が略円錐形部11を成し、その先端には内面に雌ネジ13を設けた同軸の円筒部12を有する。ボルトBの雄ネジ14は、円筒部12の雌ネジ13の全長に渡って歯合するため、ネジ高が小さなボルトを使用しても歯合が滑るおそれはなく、少なくともM10以上のサイズのボルトであれば適用可能となる。図6は、ボルトBを螺合させた状態のフレーム部材Aの試作品の写真であり、図7は、ボルトBのない状態のフレーム材1の一端の拡大写真である。なお、写真のフレーム材1は、角鋼管10の他端寄りに水平部材(図示せず)を接合するための金具を溶接して設けている。水平部材をここにボルト留めで接合し、あるいは他端を他の水平部材と溶接して接合することで浴室ユニット設置用フレームを形成する。
【0016】
図8から図11は、フレーム部材Aのフレーム材1の製造方法を示す工程図である。第一工程では、図8に示す如く、角鋼管を所要の長さに切断する。第二工程では、図9に示す如く、パイプ絞り機(図示せず)により角鋼管10の一端を円筒状に成形する。第三工程では、パイプ絞り機に設けた先端が開放された円錐形のキャビティ20を有する金型2内に角鋼管10の円筒形部分を挿入して圧搾し、金型2をキャビティ20が段階的に小さなものに変えてこの工程を複数回繰り返すことにより、先端に円筒部12を有する略円錐形へと成形する。この工程を繰り返す過程で、フレーム材1は先端方向に向かって肉厚が厚くなっていく。第4工程では、円筒部12の先端を整えた上で、その内面にネジ切り加工を施し、雌ネジ13を形成する。なお、円筒形部分の圧搾成形により、フレーム材1は絞り出される形でその全長が増加するため、所要の長さのフレーム材1を成形するためには、第一工程では長さの増加分を考慮して切断する角鋼管の長さを設定することが望ましい。
【0017】
以上、本発明に係るフレーム部材、フレーム用鋼管の製造方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良又は変更が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係るフレーム部材、及びフレーム材の製造方法は、浴室ユニット設置用フレームのフレーム部材に適用可能であるだけでなく、接地箇所において微妙な高さ調節が必要とされる各種構造物や仮設物、あるいは各種設備の架台など幅広い分野に適用可能である。また、接地用の垂直部材に限らず、水平部材を構造物等に固定する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】浴室ユニットの構造を示す参考写真である。
図2】浴室ユニット設置用フレームの構造を示す参考写真である。
図3】従来技術に係るフレーム材の参考写真である。
図4】従来技術に係るフレーム材のボルト取付部を拡大した参考写真である。
図5】実施形態に係るフレーム部材の斜視図である。
図6】実施形態に係るフレーム部材の写真である。
図7】実施形態に係るフレーム材のボルト取付部を拡大した写真である。
図8】フレーム材成形の第一工程を示す斜視図及び断面図である。
図9】フレーム材成形の第二工程を示す斜視図及び断面図である。
図10】フレーム材成形の第三工程を示す斜視図及び断面図である。
図11】フレーム材成形の第四工程を示す斜視図及び断面図である。
図12】フレーム材成形の第三工程の詳細な加工工程を示す略図である。
【符号の説明】
【0020】
BT バスタブ
BF 浴室フロア
HF 水平部材
VF 垂直部材
A フレーム部材
B ボルト
F フレーム
1 フレーム材
10 角鋼管
11 略円錐形部
12 円筒部
13 雌ネジ
14 雄ネジ
2 金型
20 キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12