(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電子写真機器用現像ロール(以下、単に現像ロールということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用現像ロールの外観模式図(a)と、そのA−A線断面図(b)である。
【0012】
現像ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周に形成された中間層16と、中間層16の外周に形成された表層18と、を備える。弾性体層14は、現像ロール10のベースとなる層(基層)である。表層18は、現像ロール10の表面に現れる層となっている。
【0013】
現像ロール10において、表層18は体積抵抗率1.0×10
14〜1.0×10
20Ω・cmの範囲内に設定される。また、中間層16は体積抵抗率1.0×10
7〜1.0×10
13Ω・cmの範囲内に設定される。表層18が体積抵抗率1.0×10
14Ω・cm以上の高抵抗であることで、高い帯電性を有することができる。そして、体積抵抗率1.0×10
14Ω・cm以上の表層18に対し、体積抵抗率1.0×10
7Ω・cm以上の中間層16を有することで、電荷の抜けが抑えられ、高い帯電性を維持することができる。また、体積抵抗率1.0×10
14Ω・cm以上の表層18に対し、体積抵抗率1.0×10
13Ω・cm以下の中間層16を有することで、適度な除電性を有し、残留電荷による画像不具合を抑えることができる。すなわち、体積抵抗率1.0×10
14Ω・cm以上の表層18に対し、体積抵抗率1.0×10
7〜1.0×10
13Ω・cmの中間層16を有することで、高い帯電性の維持と除電性を両立して画像不具合を抑えることができる。
【0014】
表層18の体積抵抗率は、帯電性の向上などの観点から、好ましくは1.0×10
15Ω・cm以上である。また、除電性の向上などの観点から、好ましくは1.0×10
19Ω・cm以下である。
【0015】
中間層16の体積抵抗率は、電荷の抜けを抑える効果により優れるなどの観点から、好ましくは1.0×10
9Ω・cm以上である。また、除電性の向上で残留電荷による画像不具合を抑える効果により優れるなどの観点から、好ましくは1.0×10
12Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10
11Ω・cm以下である。
【0016】
体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。表層18および中間層16の体積抵抗率は、材料種の選択、材料の分子量の調整、導電剤の配合などにより調整することができる。例えば分子量が大きくなると硬く高抵抗になる傾向がある。また、共重合成分が少ないと硬く高抵抗になる傾向がある。硬く高抵抗になるにつれて、破壊強度が低下する傾向があるため、破壊強度も考慮して、材料の分子量の調整を行うとよい。
【0017】
表層18は、材料として樹脂、金属酸化物、ケイ素化合物のいずれか1種または2種以上を含むとよい。これらは、表層18の材料として1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、樹脂を含むことが好ましい。表層18が樹脂を含むと、伸びの向上による脆性破壊が抑えられ、耐久性が向上する。樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のうちでは、加工性などの観点から、熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0018】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂、ポリアミドイミドなどが挙げられる。表層18がこれらの樹脂を含むと、硬く高抵抗の表層を形成しやすい。これらは、表層18の材料として1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、成形性などの観点から、(メタ)アクリル樹脂、スチレン系樹脂がより好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂から選択される樹脂である。(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートの重合体(単独重合体または共重合体)、(メタ)アクリル樹脂に対しフッ素含有基、シリコーン基(ポリジメチルシロキサンなど)等が付加された変性品の重合体などが挙げられる。(メタ)アクリレートは、単官能、多官能のいずれであってもよい。
【0020】
単官能の(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・プロピル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・イソアミル(メタ)アクリレート・2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート・ラウリル(メタ)アクリレート・ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート・クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート・エトキシエチル(メタ)アクリレート・ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート・ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基変性アクリレート、ポリジメチルシロキサン変性アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
多官能の(メタ)アクリレートとしては、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコール等のエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン等の多価ビニル化合物等が挙げられる。
【0022】
スチレン系樹脂は、スチレンの重合体(ポリスチレン)およびスチレンの共重合体(スチレンを主成分とする重合体)から選択される。スチレン系樹脂としては、一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などが挙げられる。一般用ポリスチレン(GPPS)は、スチレンの単独重合体からなり、硬いが脆く、耐衝撃性がよくない。耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、耐衝撃性向上のため、GPPSにゴムを配合したものである。
【0023】
フッ素樹脂は、フッ素を含む樹脂である。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの完全フッ素化樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどの部分フッ素化樹脂、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素化樹脂共重合体などが挙げられる。フッ素樹脂は、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、成膜性(塗工性)などの観点から、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどの部分フッ素化樹脂が好ましい。
【0024】
金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらは、表層18の材料として1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、高抵抗などの観点から、酸化アルミニウムがより好ましい。
【0025】
ケイ素化合物としては、酸化ケイ素、アルコキシシランの反応物、シランカップリング剤の反応物、シラザンの反応物、ポリシラザンの反応物などが挙げられる。
【0026】
表層18は、引張弾性率が500MPa〜7000MPaの範囲内であることが好ましい。表層18の引張弾性率が500MPa以上であると、硬く高抵抗の表層を形成することができ、高い帯電性を維持しやすい。この観点から、表層18の引張弾性率は、より好ましくは1000MPa以上、さらに好ましくは2000MPa以上である。一方、表層18の引張弾性率が7000MPa以下であると、弾性体層14や中間層16への追従性に優れる。この観点から、表層18の引張弾性率は、より好ましくは6000MPa以下、さらに好ましくは5000MPa以下である。表層18の引張弾性率は、表層18の形成用材料から得られたシートサンプルを任意の形状に打ち抜き、JIS K7161、7127に準拠して測定することができる。
【0027】
表層18は、引張破壊ひずみが5.0%以上であることが好ましい。表層18の引張破壊ひずみが5.0%以上であると、伸びの向上による脆性破壊が抑えられ、耐久性が向上する。表層18の引張破壊ひずみは、表層18の形成用材料から得られたシートサンプルを任意の形状に打ち抜き、JIS K7161、7127に準拠して測定することができる。
【0028】
表層18は、厚みが0.1〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。表層18の厚みが0.1μm以上であると、体積抵抗率1.0×10
14Ω・cm以上の高抵抗の表層において、高い帯電性(初期の帯電性)を確保しやすい。この観点から、表層18の厚みは、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。一方、表層18の厚みが3.0μm以下であると、適度な除電性を確保しやすい。この観点から、表層18の厚みは、より好ましくは2.5μm以下である。そして、表層18の厚みが0.1〜3.0μmの範囲内であると、高い帯電性の維持と除電性を両立しやすい。表層18の厚みは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製、「VK−9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、中間層16の表面から表層18の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0029】
表層18は、本発明に影響を与えない範囲において、上記する樹脂、金属酸化物、ケイ素化合物のいずれか1種または2種以上に加え、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、導電剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離形剤、染料、顔料、難燃剤などが挙げられる。
【0030】
表層18は、表層18の形成用材料を中間層16の外周面に塗工し、必要に応じて熱処理や架橋処理などを施すことにより形成することができる。表層18の形成用材料は、上記する樹脂、金属酸化物、ケイ素化合物のいずれか1種または2種以上に加え、添加剤や希釈溶媒を含んでいてもよい。希釈溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0031】
中間層16は、引張弾性率が5.0〜500MPaの範囲内であることが好ましい。中間層16の引張弾性率が5.0MPa以上であると、適度な硬さを有しており、耐久性(耐摩耗性)などに優れる。この観点から、中間層16の引張弾性率は、より好ましくは7.5MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上である。一方、中間層16の引張弾性率が500MPa以下であると、表層18よりも軟らかく、表層18の脆性破壊が抑えられることにより耐久性が向上しやすい。この観点から、中間層16の引張弾性率は、より好ましくは400MPa以下、さらに好ましくは300MPa以下である。そして、中間層16の引張弾性率が5.0〜500MPaの範囲内であると、耐摩耗性、耐久性に優れる。また、中間層16の体積抵抗率を所望の範囲に設定しやすい。中間層16の引張弾性率は、中間層16の形成用材料から得られたシートサンプルを任意の形状に打ち抜き、JIS K7161、7127に準拠して測定することができる。中間層16は、引張弾性率が表層18より低く、表層18より柔軟であることが好ましい。これにより、中間層16の体積抵抗率を表層18の体積抵抗率よりも低くしやすい。
【0032】
中間層16の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば1.0〜30μmの範囲などに設定することができる。中間層16の厚みは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製、「VK−9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から中間層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0033】
中間層16の材料としては、ポリウレタン、(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。これらは、中間層16の材料として1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、抵抗制御・柔軟性などの観点から、ポリウレタンがより好ましい。
【0034】
中間層16は、本発明に影響を与えない範囲において、ポリウレタン、(メタ)アクリル樹脂に加え、添加剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。このような添加剤としては、導電剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離形剤、染料、顔料、難燃剤などが挙げられる。
【0035】
導電剤としては、イオン導電剤、電子導電剤が挙げられる。イオン導電剤としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は、導電性を意味する。)などの導電性酸化物などが挙げられる。
【0036】
中間層16は、中間層16の形成材料を用い、これを弾性体層14の外周面に塗工し、乾燥処理などを適宜行うことにより形成することができる。中間層16の形成材料は、希釈溶媒を含んでもよい。希釈溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0037】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。
【0038】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0039】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0040】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0041】
非極性ゴムとしては、シリコーンゴム(Q)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。非極性ゴムのうちでは、低硬度でへたりにくい(弾性回復性に優れる)などの観点から、シリコーンゴムがより好ましい。
【0042】
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0043】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0044】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0045】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0046】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部の範囲内、より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
【0047】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2−メルカプトベンゾチアゾール塩、2−メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0048】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1〜2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
【0049】
弾性体層14には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0050】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて10
2〜10
10Ω・cm、10
3〜10
9Ω・cm、10
4〜10
8Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0051】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1〜10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0052】
弾性体層14は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。
【0053】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0054】
以上の構成の現像ロール10によれば、軸体12の外周に弾性体層14と中間層16と表層18とをこの順で有し、表層18の体積抵抗率が1.0×10
14〜1.0×10
20Ω・cmの範囲内であり、中間層16の体積抵抗率が1.0×10
7〜1.0×10
13Ω・cmの範囲内であることから、高い帯電性の維持と除電性を両立して画像不具合を抑えることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0056】
(実施例1〜5、7〜17、比較例1〜5)
<弾性体層用組成物の調製>
導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、「X−34−264A/B、混合質量比A/B=1/1」)をスタティックミキサーにて混合することにより、弾性体層用組成物を調製した。
【0057】
<弾性体層の作製>
軸体として直径6mmの中実円柱状の鉄棒を準備し、その外周面に接着剤を塗布した。この軸体をロール成形用金型の中空空間にセットした後、調製した弾性体層用組成物を中空空間内に注入し、190℃で30分間加熱して硬化させ、脱型した。これにより、軸体の外周面に沿って導電性シリコーンゴムよりなるロール状の弾性体層(厚み3mm)を形成した。
【0058】
<中間層の作製>
表1〜3に記載の配合(質量部)となるように各成分を配合し、固形分濃度25質量%となるように希釈溶媒(MIBK)で濃度調整し、中間層用組成物を調製した。次いで、中間層用組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に中間層(厚み20μm)を形成した。
【0059】
中間層材料として用いた材料は以下の通りである。
・熱可塑性ポリウレタン:日本ポリウレタン工業製「ニッポラン5196」
・アクリル樹脂(1):根上工業製「パラクロンW−197C」
・アクリル樹脂(2):根上工業製「パラクロン プレコート200」
・カーボンブラック:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製「ケッチェンEC300J」
・エーテル系ポリオール:アデカ製「アデカポリエーテルP−1000」
・イソシアヌレート:東ソー製「コロネートHL」
【0060】
<表層の作製>
表1〜3に記載のバインダーを配合し、所定の固形分濃度となるように所定の希釈溶媒で濃度調整し、表層用組成物を調製した。次いで、表層用組成物を中間層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、中間層の外周に表層を形成した。これにより、現像ロールを作製した。
【0061】
表層材料として用いた材料は以下の通りである。
・スチレン系樹脂(1):DIC製「ディックスチレンCR−2500」(GPPS)
・スチレン系樹脂(2):DIC製「ディックスチレンXC−315」(GPPS)
・スチレン系樹脂(3):DIC製「ディックスチレンMH−6100−2」(HIPS)
・アクリル樹脂:根上工業製「パラクロンW−197C」
・ポリフッ化ビニリデン:クレハ製「KFポリマー♯850」
・ポリエーテルサルホン:住友化学製「スミカエクセル3600G」
・酸化アルミニウム:マツモトファインケミカル製「オルガッチクスAL3001」
・オルトケイ酸テトラエチル:試薬
・ポリアミドイミド:東洋紡製「バイロマックスHR−16NN」
・ニトリルゴム(NBR):PTIジャパン製「CTBN1300×8」
・ポリカーボネート:出光興産製「タフロンネオAG1950」
・イソシアヌレート:東ソー製「コロネートHL」
【0062】
(実施例6)
中間層用組成物に表層材料を直接投入し、中間層を形成する際に表面に表層材料を浮かせる方法にて中間層と表層を同時に形成した。これにより、現像ロールを作製した。この際、中間層全面を表層材料が覆っていなくても表層とみなした。
【0063】
(比較例6)
中間層を形成しなかった以外は実施例15と同様にして、現像ロールを作製した。
【0064】
調製した表層用組成物を用い、表層材料の体積抵抗率、引張破壊ひずみ、引張弾性率を測定した。また、調整した中間層用組成物を用い、中間層材料の体積抵抗率、引張弾性率を測定した。そして、作製した各現像ロールについて、画像評価(ベタ追従性評価、ベタ濃度測定)、除電性評価(残留電荷の測定)を行った。また、併せて耐久試験による耐久性評価を行った。表層材料および中間層材料の配合組成(質量部)と評価結果を以下の表に示す。
【0065】
(体積抵抗率の測定)
各組成物を離型PET上にバーコートし、熱処理することにより成膜した。得られた膜を離型PETから剥がし、評価シートサンプルとした。電気抵抗率計(測定レンジ10
4〜10
18Ω)(ケスレーインスツルメンツ製、「6517B型エレクトロメーター」)を用い、JIS−K6911に準拠し、評価シートサンプルに印加電圧500Vを印加したときの体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0066】
(引張破壊ひずみ、引張弾性率の測定)
各組成物を離型PET上にバーコートし、熱処理することにより成膜した。得られた膜を離型PETから剥がし、評価シートサンプルとした。評価シートサンプルを任意の形状に打ち抜き、その試験片を用いて、JISK−7161、7127に準拠し、引張破壊ひずみ、引張弾性率を測定した。
【0067】
(画像評価)
作製した現像ロールを電子写真方式の市販のマルチファンクションプリンタ(富士ゼロックス社製、「DocuCentre−IV C2260」)に組み込み、A4サイズの普通紙を用いて、23.5℃×52%RHの環境下にてマゼンタ色でのベタ画像を画出しした。次いで、白色光度計(TC−6DS/A:東京電色製:レンズ:Gレンズ、STANDARD値設定:87.8)を用い、印字初期部分と印字最終部分間で均等に12点の濃度を測定し、その最大値と最小値の濃度差を評価した。濃度差が小さい場合をベタ追従性が良好であるとした。濃度差が0以上0.5未満の場合をベタ追従性「A」、濃度差が0.5以上の場合をベタ追従性「C」とした。
【0068】
(除電性)
ロール表面とコロトロンの芯部との距離を10mmに設定してロール軸方向の中央部の外にコロトロン(直流電源使用)を配置し、作製した現像ロールを23℃×53%RHの環境下、回転数10rpmで周方向に回転させた状態で100μA(定電流)のコロナ電流を印加してロール表面を帯電させた。次いで、その帯電させた位置から回転方向に90度回転した位置において、表面電位計のプローブとロール表面との距離を1mmに設定してロール表面の表面電位をロール軸方向の中央部にて1点測定した。これを、現像ロールの表面残留電荷とした。表面残留電荷の値が0V以上5V未満を除電性「A」、5V以上7.5V未満を除電性「B」、7.5V以上を除電性「C」とした。
【0069】
(耐久性)
作製した現像ロールを電子写真方式の市販のマルチファンクションプリンタ(富士ゼロックス社製、「DocuCentre−IV C2260」)に組み込み、A4サイズの普通紙を用いて、23.5℃×52%RHの環境下にて画出しによる耐久試験を行った。規定回数で現像ロールを取り出し、ロール表面の破壊(クラック、欠け)を目視で確認した。破壊が確認されるまでの耐久枚数が5000枚以上の場合を耐久性「A」、1000枚以上5000枚未満の場合を耐久性「B」、1000枚以下の場合を耐久性「C」とした。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
比較例1,2,5,6は、本願で特定する高抵抗の表層に対し本願で特定する抵抗値の中間層を有していない。比較例1は、中間層の抵抗値が低すぎる。比較例6は、中間層を有しておらず、高抵抗の表層が低抵抗の弾性体層に接して設けられている。このため、表層に溜めた電荷が抜けやすく、ベタ追従性の低下により画像不具合が発生した。比較例2,5は、中間層の抵抗値が高すぎる。このため、残留電荷が多くなっている。また、比較例3,4は、本願で特定する抵抗値の表層を有していない。表層の抵抗値が低いため、ベタ追従性の低下により画像不具合が発生した。
【0074】
これに対し、実施例は、本願で特定する高抵抗の表層に対し本願で特定する抵抗値の中間層を有している。これにより、表層に溜めた電荷の抜けが抑えられ、ベタ追従性に優れている。また、残留電荷が少なく、除電性にも優れている。すなわち、実施例によれば、高い帯電性の維持と除電性を両立して画像不具合を抑えることができる。
【0075】
実施例1〜4から、表層の厚みが0.1〜3.0μmの範囲であると、除電性により優れる。実施例2,7,8から、中間層の引張弾性率が5.0〜500MPaの範囲であると、耐久性により優れる。実施例3、9〜17から、表層が樹脂を含むと、耐久性により優れる。また、実施例3、9〜17から、表層の引張破壊ひずみが5.0%以上であると、耐久性により優れる。
【0076】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。