特許第6909711号(P6909711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909711
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】防音パネル及び防音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-219317(P2017-219317)
(22)【出願日】2017年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-90231(P2019-90231A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】神谷 洋介
【審査官】 東 芳隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−124483(JP,A)
【文献】 特開2006−241966(JP,A)
【文献】 特開2011−026898(JP,A)
【文献】 実開昭60−135315(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 3/00−8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で設置された支柱間に挿入され、両側端部が前記支柱に支持されることにより防音壁を構築する防音パネルであって、
挿入方向に対向する一方の端部辺が他方の端部辺よりも長く、
前記一方の端部辺と前記他方の端部辺とを結ぶ前記両側端部の側端部辺のうち少なくとも一方の側端部辺が、前記一方の端部辺から前記他方の端部辺に向かって他方の側端部辺側に傾斜している
ことを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
騒音源に面する前壁部と、
前記前壁部に対して所定の間隔を置いて当該前壁部の背面側に設けられた背壁部と、
前記前壁部と前記背壁部との間に設けられて前記側端部を形成する一対の側壁部と、
を備え、
少なくとも一方の前記側壁部は、前記前壁部及び前記背壁部から部分的に側方に突出し、前記一方の端部辺から前記他方の端部辺に向かって前記前壁部及び前記背壁部との間に進入している
ことを特徴とする請求項1に記載の防音パネル。
【請求項3】
各端部辺の中心を通る直線に対して線対称に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防音パネル。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の防音パネルと、
前記防音パネルが挿入される所定の間隔で設置された複数の支柱と、
前記複数の支柱が立設された基礎部と
を備え、
前記基礎部は、一方の前記支柱から他方の前記支柱に向かって傾斜した勾配部を有する
ことを特徴とする防音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の間隔で設置された支柱間に挿入される防音パネル及び当該防音パネルを備える防音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や線路を走行する車両や工場等の騒音源から発せられる騒音の拡散を抑えるために、騒音源の脇に防音壁が設置されている。
防音壁は、例えば、H形鋼等からなる支柱間に、複数枚の防音パネルを嵌め込んで積み重ねることにより構築される。
防音パネルは、正面板、背面板及び側面板を、縦断面形状が平行四辺形となるように組み合わせて箱状に形成し、背面板から正面板に向かうにつれて上り傾斜を有するパネル本体内の空間に吸音材が収容されている。防音パネルは、騒音源に面する正面板にルーバーを形成することにより、パネル本体内に伝達された騒音を吸音材で吸収することができるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−124483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防音壁は、平坦地(水平部)に設置するだけでなく、傾斜地に設置することがある。例えば、勾配が3%を超えた傾斜地に防音壁100を設置する場合、図9に示すように、H形鋼の支柱Pへの挿入時に防音パネル110の四隅の角部のいずれかが支柱Pに接触して防音パネル110の挿入が阻害されることがあり、挿入作業が困難になっていた。
また、防音パネル110を防音壁100の基礎部200にまで挿入したとしても、防音パネル110の四隅の角部が支柱Pに接触したままでの挿入となり、防音パネル110が支柱Pとの接触により変形するおそれがある。防音パネル110が変形しないまでも、支柱Pに接触した状態において引き続き挿入作業を続けると、基礎部200と防音パネル110との間に隙間ができ、支柱Pにおける防音パネル110の設置状態が安定しないことがある。
したがって、傾斜地における防音壁100には、傾斜地の勾配に合わせた防音パネルを別途、製造しなければならず、防音パネルの製造コストの増大に繋がっていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、傾斜地に設置される防音壁に容易に設置でき、安定した設置状態を確保し、かつ製造コストを抑えた防音パネル、及び当該防音パネルを備えた防音壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の間隔で設置された支柱間に挿入され、両側端部が前記支柱に支持されることにより防音壁を構築する防音パネルであって、挿入方向に対向する一方の端部辺が他方の端部辺よりも長く、前記一方の端部辺と前記他方の端部辺とを結ぶ前記両側端部の側端部辺のうち少なくとも一方の側端部辺が、前記一方の端部辺から前記他方の端部辺に向かって他方の側端部辺側に傾斜していることを特徴とする。
【0007】
また、騒音源に面する前壁部と、前記前壁部に対して所定の間隔を置いて当該前壁部の背面側に設けられた背壁部と、前記前壁部と前記背壁部との間に設けられて前記側端部を形成する一対の側壁部と、を備え、少なくとも一方の前記側壁部は、前記前壁部及び前記背壁部から部分的に側方に突出し、前記一方の端部辺から前記他方の端部辺に向かって前記前壁部及び前記背壁部との間に進入していることが好ましい。
【0008】
また、各端部辺の中心を通る直線に対して線対称に形成されていることが好ましい。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、防音壁であって、防音パネルと、前記防音パネルが挿入される所定の間隔で設置された複数の支柱と、前記複数の支柱が立設された基礎部とを備え、前記基礎部は、一方の前記支柱から他方の前記支柱に向かって傾斜した勾配部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傾斜地に設置される防音壁に容易に設置でき、安定した設置状態を確保し、かつ製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】傾斜地に構築された防音壁を示す図である。
図2】防音パネルを側方から見た部分透視図である。
図3】防音パネルの正面図である。
図4】防音パネルの背面図である。
図5】防音パネルの側端部を上方から見た図である。
図6】防音パネルの側壁部の構成を説明するための図である。
図7】防音パネルの設置方法を説明するための図である。
図8】防音パネルの側端部の拡大図である。
図9】従来の防音パネルの設置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0013】
<防音壁の構成>
図1は、傾斜地に構築された防音壁を示す図である。図2は、防音パネルを側壁部側から見た部分的な透視側面図である。図3は、防音パネルを前壁部側から見た正面図である。図4は、防音パネルを背壁部側から見た背面図である。図5は、防音パネルの側端部を上方から見た図である。図6は、防音パネルの側壁部の構成を説明するための図であり、(a)は、側壁部の平面図であり、(b)は、側壁部の底面図であり、(c)は、側壁部の前面部の正面図であり、(d)は、側壁部の背面部の正面図であり、(e)は、側壁部の側面部の正面図である。
なお、図中、防音壁1の延在方向及び防音パネルの長手方向(幅方向ともいう。)を「L」とし、高さ方向を「H」とし、厚さ方向を「W」とする。
【0014】
図1に示すように、防音壁1は、所定の勾配(例えば、6%)を有する傾斜地に設置されており、道路や線路上を走行する車両の騒音源からの騒音の拡散を抑えるために用いられるものであり、騒音源の脇に設置されている。防音壁1は、基礎部2と、支柱3と、防音パネル4と、を備えている。
【0015】
[基礎部]
基礎部2は、傾斜地に構築されて、防音壁1の設置面から所定の高さだけ延在している、いわゆる壁高欄である。防音壁1において最下段に配置される防音パネル4が接触する部分に、基礎部2は傾斜地の勾配に平行な勾配部21を有する。勾配部21は、防音壁1において最下段に位置する防音パネル4が接触する部分である。
なお、本実施の形態においては、基礎部2に支柱3が立設されているが、道路等の地盤に直接立設してもよい。この場合、地盤が基礎部となる。
【0016】
[支柱]
支柱3は、H形鋼で構成されており、所定の間隔、具体的には、防音パネル4の幅に相当する間隔をあけて基礎部2に複数立設されている。
図5に示すように、支柱3は、互いに平行な一対のフランジ部31,32と、当該フランジ部31,32を連結するウェブ部33とを有する。フランジ部31は、例えば、道路側を臨んでおり、フランジ部32は、道路とは反対側を臨んでいる。
【0017】
[防音パネル]
図1に示すように、防音パネル4は、隣接する支柱3の間に設けられており、長手方向Lの両側端部が支柱3によって支持されている。防音パネル4は、支柱3の高さ方向Hに沿って複数段にわたって積み重ねられている。
図2に示すように、防音パネル4は、本体部5と、吸音材6と、を備えている。
【0018】
(本体部)
本体部5は、吸音材6を収容するものであり、例えば、合金めっき鋼板から形成されている。本体部5は、正面視逆台形状に形成されており、高さ方向Hにおいて上側の上端部辺の長手方向Lにおける長さ寸法が、下側の下端部辺の長手方向Lにおける長さ寸法よりも長く形成されている。
本体部5の上端部辺と下端部辺とを高さ方向Hに繋ぐ一対の側端部辺は、上端部辺から下端部辺に向けて本体部5の中央部に向かって傾斜しており、換言すれば、一方の側端部辺が他方の側端部辺に接近するように延在している。
【0019】
本体部5は、吸音材6の正面(例えば、道路を臨む側)側に配置された前壁部51と、背面(正面側とは反対側の面)側に配置される背壁部52と、上壁部53と、下壁部54と、前壁部51及び背壁部52の長手方向Lの端部に配置された一対の側壁部(側端部)55と、を有している。
本体部5は、前壁部51と、背壁部52と、上壁部53と、下壁部54と、側壁部55とによって、吸音材6を収容する空間を画成している。
【0020】
前壁部51は、吸音材6の正面に沿って延びている。アルミニウムにより形成されている。図2及び図4に示すように、前壁部51は、吸音材6の主面に対して略平行に延在している部分であり、ルーバー51aが形成されている。
【0021】
図2及び図4に示すように、背壁部52は、吸音材6の背面に沿って延びている。背壁部52は、吸音材6の少なくとも厚さだけ前壁部51に対して離間されている。
背壁部52は、主面部52aと、屈曲部52bと、を有している。
【0022】
主面部52aは、吸音材6の主面に対して略平行に延在している部分であり、高さ方向Hに屈曲部52bを挟んで2つ設けられている。
屈曲部52bは、高さ方向Hにおいて、背壁部52の中央部付近に主面部52aから吸音材6に向かって屈曲して加工された部分である。屈曲部52bは、防音パネル4の長手方向Lに沿って背壁部52の一端から他端まで延在している。
屈曲部52bは、背壁部52の主面部52aから本体部5の内側に向かって斜め下方に延出する傾斜部52cと、斜め上方に延在する傾斜部52dと、両傾斜部52c,52dを連結する連結部52eとを備えている。連結部52eは、背壁部52の主面部52aに対して平行に延在していて、吸音材6の背面側から吸音材6に当接して吸音材6を背面側から支持している。
【0023】
図2に示すように、上壁部53及び下壁部54は、背壁部52から前壁部51に向かってそれぞれ高さ方向Hにおいて上方に傾斜している。上壁部53は、その先端部が下方に向けて折り曲げられて吸音材6の正面の面方向に対してほぼ平行に延びている。また、防音パネル4の長手方向Lにおいて上壁部53の両端部には、後述する脱落防止用のワイヤー(図示せず。)が挿通するための切り欠き53aが形成されている(図5参照。)。
【0024】
下壁部54は、その先端部が下方に向けて折り曲げられており、吸音材6の正面の面方向に対してほぼ平行に延びている。また、防音パネル4の長手方向Lにおいて下壁部54の両端部には、ワイヤーが挿通するための切り欠きが形成されている。
【0025】
図3図5に示すように、側壁部55の前面部55a及び背面部55bは、高さ方向Hにおいてその上側部分が前壁部51と背壁部52との間から長手方向Lの側方に部分的に突出している。前面部55a及び背面部55bの前壁部51と背壁部52との間から突出した部分は、高さ方向Hにおいて上側から下側に向かって前壁部51と背壁部52との間に入り込んでいる。
前面部55a及び背面部55bは、前壁部51及び背壁部52と側壁部55とが長手方向Lに沿って重なり合う部分で高さ方向Hにおいて複数箇所、例えば、リベット等により取り付けられている。
【0026】
図5に示すように、側壁部55は、防音パネル4の長手方向Lにおいて本体部5の両側端部にそれぞれ設けられていて、前壁部51と背壁部52との間に配置されている。
各側壁部55は、横断面視U字状に形成された板状の部材であり、防音パネル4の高さ方向Hにわたって延在している。側壁部55は、金属製であり、例えば、合金めっき鋼板から形成されている。
【0027】
側壁部55における側面部55cの高さ方向Hにおいて中心よりも上側には孔55hが形成されている(図6(e)参照。)。孔55hにはアイボルトBが挿通されて側壁部55に取り付けられている。アイボルトBには、防音壁1の支柱3間に高さ方向Hにおいて積み重ねられる防音パネル4同士を繋ぐワイヤロープ(図示せず。)が挿通される。
【0028】
防音パネル4の両端部に設けられている側壁部55は、それぞれ同じ形状を有しているため防音パネル4は左右対称に形成されている。両側壁部55において高さ方向Hに延在する前面部55a及び背面部55bの縁(側端部辺)は、それぞれ上側の端部辺、及び下側の端部辺に対して上方から下方に向かって対向する側壁部55に接近するように等しく傾斜している。つまり、防音パネル4は、上下の各端部辺の中心を通る直線に対して線対称に形成されている。
【0029】
図6(a)、(b)に示すように、側壁部55は、前壁部51に対して平行に延びる前面部55aと、背壁部52に対して平行に延びる背面部55bと、厚さ方向Wに延びて本体部5の側方を覆う側面部55cとを備え、平面視U字形状を有する。前面部55aと背背面部55bとは、側面部55cの厚さ方向Wの両端から同じ方向に立設されている。
【0030】
図6(c)に示すように、前面部55aは、側面部55cとは反対側の縁部(側端部辺)が上端部から下端部に向かって、側面部55cに接近するように延在している。つまり、側壁部55の前面部55aの長手方向Lに沿った寸法は、高さ方向Hに沿って連続的に変化しており、具体的には、上端部から下端部に向かって連続的に小さくなっている。
例えば、上端部における前面部55aの長手方向Lの寸法は、下端部における前面部55aの長手方向Lの寸法に対して1.3.〜1.5倍であり、特に1.4倍であることが好ましい。
【0031】
図6(d)に示すように、背面部55bは、背壁部52の屈曲部52bを避けるようにして高さ方向Hにおいて2つに分断されている。つまり、側壁部55は、高さ方向Hにおいて上側の背面部55buと、下側の背面部55bdとを有している。2つの背面部55bu,55bdは、互いに大きさは異なるが相似の関係にある。2つの背面部55bu,55bdは、互いに背壁部52の屈曲部52bを避ける程度に離間されている。
【0032】
各背面部55bu,55bdは、側面部55cとは反対側の縁部(側端部辺)が上端部から下端部に向かって、側面部55cに接近するように延在している。つまり、側壁部55の背面部55bu,55bdの長手方向Lに沿った寸法は、高さ方向Hに沿って連続的に変化しており、具体的には、上端部から下端部に向かって連続的に小さくなっている。この関係は、背面部55bを、2つの背面部55bu,55bdとしてではなく、1つの背面部55bとして見た場合にも当然に当てはまる。
例えば、上端部における背面部55buの長手方向Lの寸法は、下端部における背面部55bdの長手方向Lの寸法に対して1.3.〜1.5倍であり、特に1.4倍であることが好ましい。
【0033】
図6(e)に示すように、側面部55cは、高さ方向Hにおいて背壁部52の延在形状に対応した形状を有している。具体的には、側面部55cは、背面部55b側に背壁部52の屈曲部52bの形状に沿って切り欠かれた切り欠き部7を有する。
側面部55cの切り欠き部7は、その縁部に沿って、つまり、背壁部52の傾斜部52c,52d及び連結部52eに沿うようにして複数の壁部71,72,73が立設されている(図6(d)参照。)。
【0034】
側壁部55は、背壁部52の屈曲部52bの形状に合わせて、背面部55bを2つに分断したり、側面部55cに切り欠き部7を設けたりすることで、背壁部52の屈曲部52bの存在に側壁部55の設置が妨げられないようにすることができる。
【0035】
(吸音材)
図4に戻って示すように、吸音材6は、本体部5に収容されている。吸音材6は、防音パネル4のユニットの大きさに合わせて、例えば、平面視矩形状に形成された板状の部材である。吸音材6は、正面側が敷地内に面するように配置される。
吸音材6は、例えば、ポリエステル、グラスウール等の繊維材や、ウレタン等の樹脂から形成されたスポンジ材や、内部に綿や羽毛が詰められたクッション材により、又はこれらの組み合わせにより形成されている。
【0036】
<防音パネルの設置>
次に、図7及び図8を用いて支柱3間への防音パネル4の設置について説明する。図7は、傾斜地における防音壁への防音パネルの設置について説明するための図である。図8は、防音パネルの側壁部を部分的に拡大した拡大図である。
【0037】
防音壁1を傾斜地に構築する場合、防音パネル4を設置する基礎部2の勾配部21は、傾斜地にほぼ平行になっている。つまり、勾配部21は、水平面に対して所定の角度を成している。
【0038】
傾斜地に構築される防音壁に従来の矩形状の防音パネルを用いる場合、傾斜地の勾配に合わせて防音パネルを傾けて支柱間に落とし込んでいく(挿入していく)。しかし、この場合、例えば、図9に示すように、防音パネル110の左上の角部及び右下の角部が支柱Pに接触することがある。防音パネル110と支柱Pとの接触により、防音パネル110の支柱Pへの落とし込みが阻害され、防音壁100に防音パネル110を適切に設置することができなくなる。
【0039】
これに対して、防音パネル4は、本体部5の長手方向Lにおける両側端に設けられた側壁部55の一方の側端部が高さ方向Hにおいて上方から下方に向かって他方の側壁部55に接近するように傾斜している。
かくして、傾斜地の勾配に合わせて防音パネル4を傾けて支柱3間に挿入しても、側壁部55の狭められた幅の量だけ防音パネル4を支柱3のウェブ部33側に寄せるので、例えば、防音パネル4の左上の角部と支柱3のウェブ部33とが接触することを防ぐことができるとともに、防音パネル4の右下部分と支柱3のウェブ部33とが接触することを防ぐことができる。
防音パネル4は、傾斜地における防音壁1への設置時であっても、当該防音パネル4の下壁部54と基礎部2の勾配部21との間に隙間が形成されることなく支柱3間に設置することができる。つまり、傾斜地に構築される防音壁1において防音パネル4の下壁部54が基礎部2の勾配部21に面接触するまで防音パネル4を落とし込むことができる。
また、設置された防音パネル4の上壁部53と、積み重ねられる防音パネル4の下壁部54とが面接触して間に隙間が形成されることなく、防音パネル4を積み重ねていくことができる。
【0040】
側壁部55を部分的に前壁部51と背壁部52との間から側方に突出させて、防音パネル4の上側の端部辺、及び下側の端部辺の長さを調整して傾斜地に構築される防音壁1に対応させている。これにより、前壁部51及び背壁部52の長手方向Lにおける側方部分を加工する必要がなく、側壁部55のみを加工するだけであり、防音パネル4において加工する部材点数を抑えることができる。
【0041】
防音パネル4は、上下の各端部辺の中心を通る直線に対して左右対称に形成されているので、勾配の向きに関係なく前壁部51を道路側に向けた状態で支柱3間に落とし込むだけでよく防音壁1の施工効率が向上する。
また、防音パネル4は、長手方向Lにおける寸法が小さい下端部側(下壁部54側)から支柱3間に挿入するようになるので、支柱3間への防音パネル4の挿入がより容易にもなる。
【0042】
防音パネル4は、例えば、6%までの勾配を有する傾斜地に構築される防音壁1に使用することができる。勾配に応じた防音パネルをその都度製造する必要がなくなるので、種々の勾配を有する傾斜地に構築される防音壁に対して防音パネル4を使用することができ、製造コストを抑えることができる。
【0043】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、防音パネル4が、傾斜地に構築される防音壁1の支柱3間に当該支柱に3に接触することなく設置することができるのであれば、側壁部55は、防音パネル4の一方の側端部に設けられているだけでもよい。
この場合、防音パネル4の他方の側端部に設けられる側壁部の、長手方向Lにおける前面部及び背面部の幅寸法は、側壁部55とは異なり、高さ方向Hにわたって変化することはない。つまり、他方の側端部に設けられる側壁部は、高さ方向Hにおいて一貫して同じ幅寸法を有しており、前面部及び背面部はそれぞれ矩形状を有している。
【0044】
また、長手方向Lにおけるフランジ部32の幅寸法が175mm以上であることが好ましい。これにより、防音パネル4を支柱3間に設置した場合であっても、側壁部55において前面部55a及び背面部55bの側面部55cとは反対側の縁は支柱3のフランジ部32の幅寸法内に位置するようになる。つまり、例えば、防音壁1を前壁部51側から見た場合に、防音パネル4と支柱3との間に隙間は形成されておらず、防音パネル4の側壁部55は、支柱3において確実に支持されている。
【符号の説明】
【0045】
1 防音壁
2 基礎部
21 勾配部
3 支柱
4 防音パネル
5 本体部
51 前壁部
52 背壁部
53 上壁部
54 下壁部
55 側壁部(側端部)
6 吸音材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9