特許第6909906号(P6909906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カルソニックカンセイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000002
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000003
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000004
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000005
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000006
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000007
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000008
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000009
  • 特許6909906-ベンチレータ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6909906
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】ベンチレータ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20210715BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20210715BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   B60H1/34 611Z
   B60H1/34 651B
   F24F13/14
   F24F13/08 C
   F24F13/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-118661(P2020-118661)
(22)【出願日】2020年7月9日
【審査請求日】2020年12月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真実
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−079374(JP,A)
【文献】 特開2012−037134(JP,A)
【文献】 特開2005−153818(JP,A)
【文献】 実開昭60−096111(JP,U)
【文献】 特開2009−083518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06
F24F 1/00−13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を通って開口部から風が吹き出すベンチレータであって、
ノブが装着された第1ルーバと、
前記第1ルーバと交差する方向に設けられ、前記第1ルーバよりも風流れ方向の上流側に配置される複数の第2ルーバと、
前記第1ルーバを回動可能に支持し、前記開口部の一部を形成する一対の側壁と、
前記一対の側壁の間で前記開口部の他の一部を形成し、風流れ方向の上流側から下流側へ向けて前記開口部の開口面積が広がるように傾斜する第1傾斜部材と、
を備え、
前記第1傾斜部材は、風流れ方向の上流側に位置する傾斜の頂点を有し、
前記第1ルーバの風流れ方向の上流側の上流端部が前記第1傾斜部材に最も近くなるように前記第1ルーバを回動させた最大角度状態において、前記上流端部は、前記頂点よりも風流れ方向の下流側に位置し、
前記頂点に対して風流れ方向の上流側に隣接して配置された凸部をさらに備え、
前記凸部は、前記第1ルーバの回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向において、前記頂点よりも前記流路の内側に突出するとともに、風流れ方向から見て複数の前記第2ルーバを横切るように延在して設けられる
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のベンチレータであって、
前記凸部は、風流れ方向において、前記第1ルーバと前記第2ルーバとの間に配置される、
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベンチレータであって、
前記第1ルーバの回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向において、前記凸部は、前記最大角度状態で前記第1傾斜部材に最も近接する前記第1ルーバの近接端部の位置よりも前記流路の内側に突出する、
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のベンチレータであって、
風流れ方向の上流側で前記凸部と隣接し、風流れ方向の上流側から下流側へ向かう方向において、前記流路の内側に向かって傾斜する第2傾斜部をさらに備える、
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項5】
請求項に記載のベンチレータであって、
前記第2傾斜部とともに、前記流路の内側に向かって風を案内するガイド流路を形成するガイド部材をさらに備え、
前記ガイド部材は、前記第1ルーバの回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向において、前記頂点よりも前記流路の内側に突出する第2凸部を有する、
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項6】
請求項に記載のベンチレータであって、
前記ガイド流路の出口は、前記ガイド流路の入口よりも狭い、
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1つに記載のベンチレータであって、
前記凸部よりも風流れ方向の上流側に位置し、前記第1ルーバの回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向において、前記頂点よりも前記流路の内側に突出する第2凸部を備え、
前記第2凸部は、前記凸部よりも大きく突出している、
ことを特徴とするベンチレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンチレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、開口部の上部及び下部にて車室に向かって拡開するように傾斜する第1傾斜面と、開口部内に設けられ上下方向の傾斜角度を調整することで上下方向の空気の吹き出し方向を変更するフィンと、を備える空調用レジスタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5597423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空調用レジスタでは、同文献の図6Cに示されるように、下方に向かって空気を吹き出す場合に、空気の一部が上方に向かって吹き出されている。すなわち、特許文献1の空調用レジスタでは、空気の吹き出し方向によっては、空気を吹き出させたい方向とは反対方向に空気の一部が流れている。
【0005】
本願発明者は、空調用レジスタが下方に向かって空気を吹き出す場合に開口部から吹き出す空気の一部が上側の第1傾斜面に沿って(すなわち上方に向かって)流れる現象が、フィンに対する稜線の配置に基づくものである点を見いだした。すなわち、本願発明者は、ダクトから空調用レジスタに向かう風が、稜線上を通り過ぎるときにコアンダ効果によって第1傾斜面に張り付くことで上記の現象が起きていると推察した。
【0006】
ここで、稜線の配置は、空調用レジスタのデザインによって決められる。空調用レジスタのデザインとしては、例えば、稜線が空調用レジスタ内の風流れ方向上流側の奥まった位置にあって、第1傾斜面がフィンよりも空調用レジスタ内の風流れ方向上流側から下流側へ向かって延在するようなデザインも考えられる。このようなデザインは、意匠部としての第1傾斜面が空調用レジスタの内部まで入り込むことで、奥行きのある高級感が生じるデザインとなる。しかしながら、当該デザインでは、上記のとおり、ダクトから空調用レジスタに向かう風が、稜線上を直接通り過ぎることになるため、コアンダ効果が発生しやすいという課題がある。
【0007】
これに対し、フィン自体を空調用レジスタ内の風流れ方向上流側に延伸させて、フィンと第1傾斜面との間の空間を閉じることで、コアンダ効果の発生を抑制することも考えられる。しかしながら、一般的にフィン(ルーバ)には操作用のノブが装着されるため、フィンが第1傾斜面に接触する前に操作用のノブが第1傾斜面と干渉して、フィンと第1傾斜面との間の空間を閉じることができない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、開口部の一部を形成する部材が、風流れ方向上流側から下流側へ向けて当該開口部の開口面積が広がるように傾斜するベンチレータにおいて、当該部材上でのコアンダ効果の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、流路を通って開口部から風が吹き出すベンチレータは、ノブが装着された第1ルーバと、前記第1ルーバと交差する方向に設けられ、前記第1ルーバよりも風流れ方向の上流側に配置される複数の第2ルーバと、前記第1ルーバを回動可能に支持し、前記開口部の一部を形成する一対の側壁と、前記一対の側壁の間で前記開口部の他の一部を形成し、風流れ方向の上流側から下流側へ向けて前記開口部の開口面積が広がるように傾斜する第1傾斜部材と、を備える。 前記第1傾斜部材は、風流れ方向の上流側に位置する傾斜の頂点を有する。前記第1ルーバの風流れ方向の上流側の上流端部が前記第1傾斜部材に最も近くなるように前記第1ルーバを回動させた最大角度状態において、前記上流端部は、前記第1傾斜部材の風流れ方向上流側の頂点よりも風流れ方向の下流側に位置する。ベンチレータは、前記頂点に対して風流れ方向の上流側に隣接して配置された凸部をさらに備える。前記凸部は、前記第1ルーバの回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向において、前記頂点よりも前記流路の内側に突出するとともに、風流れ方向から見て複数の前記第2ルーバを横切るように延在して設けられる
【発明の効果】
【0010】
この態様では、第1傾斜部材の風流れ方向上流側の頂点へ風が通過するのを抑制することで、コアンダ効果の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係るベンチレータの正面図である。
図2図2は、図1のベンチレータが最も上方へ風を吹き出す場合の断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。
図3図3は、図1のIII−III断面の概要図である。
図4図4は、図3のIV−IV断面の概要図である。
図5図5は、ベンチレータが最も上方へ風を吹き出す場合の断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。
図6図6は、ベンチレータが最も下方へ風を吹き出す場合の断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。
図7図7は、本発明の実施形態の変形例に係るベンチレータの断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。
図8図8は、本発明の実施形態の他の変形例に係るベンチレータの断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。
図9図9は、比較例に係るベンチレータの断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るベンチレータ100について説明する。
【0013】
まず、図1から図4を参照して、ベンチレータ100の構成について説明する。
【0014】
図1は、ベンチレータ100の正面図である。図2は、図1のベンチレータ100が最も上方へ風を吹き出す場合の断面の概要図であって図1のII−II断面に相当する概要図である。図3は、図1のIII−III断面の概要図である。図4は、図3のIV−IV断面の概要図である。
【0015】
図1では、紙面上下方向は、ベンチレータ100の上下方向である。紙面左右方向は、ベンチレータ100の左右方向である。紙面垂直方向は、ベンチレータ100の風流れ方向である。
【0016】
図2では、紙面左側は、ベンチレータ100内の風流れ方向の上流側である。紙面右側は、ベンチレータ100内の風流れ方向の下流側である。図3では、紙面上側は、ベンチレータ100内の風流れ方向の上流側である。紙面下側は、ベンチレータ100内の風流れ方向の下流側である。
【0017】
ベンチレータ100は、車両用であって、例えば、車室のインストルメントパネルやセンタークラスタなどに設けられる。ベンチレータ100は、空調装置(図示省略)によって温度及び湿度が調整された空気を車室内に導くものである。
【0018】
図1から図3に示すように、ベンチレータ100は、流路部材1(ハウジングやケースとも言う)と、ベゼル部2と、第1ルーバ部3と、第2ルーバ部4と、を備える。
【0019】
流路部材1は、略筒状形状の部材である。図3に示すように、流路部材1の両端には流入口12と流出口13とが開口する。
【0020】
図2及び図3に示すように、流路部材1の内部には、風が通過可能な流路11(風が流れる空間)が形成される。流入口12には、ダクト(図示省略)が接続される。流路11へは、ダクトを介して空調装置から送られる風が、流入口12から流入する。流路11に流入した風は、流路11内を流れ、流出口13からベゼル部2へ流出する。第1ルーバ部3及び第2ルーバ部4によって方向が変えられる流れではなく、流路11内全体として上流から下流に流れる風の方向を「風流れ方向」と称する。「風流れ方向」とは、言い換えれば、流路11の伸長方向、または、流路11の内壁11aと平行な方向である。風の流れの詳細については、後述する。
【0021】
図2及び図3に示すように、ベゼル部2は、流出口13側に設けられる部位であって、ベンチレータ100における風が吹き出す開口部110を形成する部位である。ベゼル部2は、第1傾斜部材21と、一対の側壁22,23と、内装パネル24と、を備える。
【0022】
図1に示すように、第1傾斜部材21は、開口部110の一部を形成する(開口部110の輪郭の一部を区画する)部材である。第1傾斜部材21は、開口部110における下側の位置に配置される。図2に示すように、第1傾斜部材21は、表面が頂点21aを起点にしてベンチレータ100内の風流れ方向の上流側から下流側へ向けて開口部110の開口面積が広がるように傾斜した形状の部材である。第1傾斜部材21の頂点21a付近の接線と風流れ方向(流入口12から開口部110に向かって直進するように風が流れた場合の方向とも言う。図2では、頂点21a付近に破線で示す。)との角度である傾斜角度R1は、第1傾斜部材21の表面に風が張り付くコアンダ効果が発生し易い範囲(0度<R1<40度)内にある。特にコアンダ効果が発生し易いのは、傾斜角度R1が0度<R1<30度の範囲内にある場合である。コアンダ効果が最も顕著に発生しやすいのは、傾斜角度R1が24度の場合である。
【0023】
図1及び図2に示すように、第1傾斜部材21は、開口部110における底部を形成している。通常、ベンチレータ100は、車室内において乗員の目の位置よりも下方に配置される。そのため、乗員がベンチレータ100を見るときには、開口部110の底部が視認されやすい。本実施形態の第1傾斜部材21は、車室内において乗員が視認する化粧板(フィニッシャ)となっている。第1傾斜部材21の表面(車室内に露出する面)には、メッキ処理、塗装、フィルム加飾、艶消し処理や加飾等が施されていてもよく、合皮や本革、木目フィルム等で加飾されていてもよい。図2に示すように、化粧板としても機能する第1傾斜部材21が開口部110の奥(第1傾斜部材21が少なくとも上下ルーバ31と対向する範囲)までなだらかな傾斜で入り込むことで、化粧板がベンチレータ100の内部にまで入り込んだ奥行感のあるデザインが達成される。これにより、高級感のある印象を乗員に与えることができる。なお、図1に示すように、本実施形態では、第1傾斜部材21は、開口部110を超えて幅方向(図1の左右方向)に延在している。
【0024】
図1に示すように、一対の側壁22,23は、開口部110の左右方向を区画する部材である。すなわち、一対の側壁22,23は、開口部110の一部を形成している。図3に示すように、一対の側壁22,23には、後述する上下ルーバ31を支持するための軸受部22a,23aが設けられる。
【0025】
一対の側壁22,23は、欧州特許出願公開第0289065号明細書(EP0289065A1)に開示されるような、上下ルーバ31を模倣するような形状をしていてもよい。すなわち、図1の一対の側壁22,23の位置に、一対の側壁22,23に代わって上下ルーバ31と実質的に同じ厚さ(図1に示す上下ルーバ31における紙面上下方向の長さ)であって図1紙面奥側から紙面手前側に向かって突出するルーバ模倣側壁を配置し、ルーバ模倣側壁が上下ルーバ31を支持する構造であってもよい。このような構造では、上下ルーバ31が後述する基準状態に位置する場合に、上下ルーバ31とルーバ模倣側壁とが一直線に並び、実際の上下ルーバ31よりも幅広のルーバがあるように見える。
【0026】
図1に示すように、内装パネル24は、第1傾斜部材21よりも上側であって、第1傾斜部材21と対向する位置に配置される部材である。図2に示すように、内装パネル24は、第1傾斜部材21の傾斜角度R1とは異なる傾斜角度で、風流れ方向上流側から下流側へ向けて開口部110の開口面積が広がるように傾斜した形状の部材である。内装パネル24における風流れ方向上流側の傾斜の起点付近と風流れ方向(図2に破線で示す線)との角度である傾斜角度R2は40度以上である。
【0027】
なお、内装パネル24は、第1傾斜部材21及び一対の側壁22,23とともに開口部110を形成する。言い換えれば、開口部110は、第1傾斜部材21、一対の側壁22,23及び内装パネル24によって形成される。
【0028】
内装パネル24は、車室内において乗員が視認する化粧板(フィニッシャ)であり、第1傾斜部材21と同様又は異なる加飾が施されている。
【0029】
図1から図3に示すように、第1ルーバ部3は、上下ルーバ31と、ノブ32と、フォーク部材33と、を有する。
【0030】
上下ルーバ31は、略板形状の部材である。図3に示すように、上下ルーバ31は、幅L1が開口部110の幅と同程度に形成される。また、上下ルーバ31は、長さL2(風流れ方向の長さ)が、上下ルーバ31が回動する際に、流路11の内壁11a,流出口13の内壁,もしくは開口部110の内壁などに干渉しない程度に形成される。
【0031】
上下ルーバ31は、一対の側壁22,23に支持されることで、開口部110内に配置される。上下ルーバ31の軸部31a,31bは、回転軸となっており、側壁22,23に支持される。これにより、上下ルーバ31は、図2に示す回動中心Oを中心にして、ベンチレータ100の上下方向に回動可能となる。
【0032】
図2及び図4に示すように、ノブ32は、上下ルーバ31に装着される部材である。ノブ32は、ベンチレータ100の左右方向(図3に示す上下ルーバ31の幅L1方向)に摺動可能に装着される。ノブ32は、上下ルーバ31が軸部31a,31bを中心にベンチレータ100の上下方向に回動すると、上下ルーバ31ともにベンチレータ100の上下方向に回動する(図2参照)。図2に示すように、ノブ32の端部32aは、ノブ32における風流れ方向の上流側の端部である。また、端部32bは、図2に示す最大角度状態(詳細は後述する。)において、第1傾斜部材21と最も近接する端部である。図2に示すように、ノブ32は、上下ルーバ31の下面(第1傾斜部材21と対向する面)に摺動可能に装着されているため、上下ルーバ31と第1傾斜部材21の間には、部分的にノブ32が存在することになる。なお、ノブ32は、図2の断面において上下ルーバ31の外周を包み込むように、上下ルーバ31に装着されてもよい。
【0033】
図2に示すように、使用者がノブ32を上下方向に動かすことで、上下ルーバ31及びノブ32は、回動中心Oを中心に回動する。上下ルーバ31は、回動可能な範囲である最大回動範囲内の配置に応じて、空調装置から流れてくる風の流れ方向を上下に変更させる。
【0034】
最大回動範囲において、ベンチレータ100が風を最も上方に吹き出す場合の上下ルーバ31の角度を「最大角度」と称し、その際の上下ルーバ31の状態を「最大角度状態」と称する(図2参照)。最大角度状態は、最大回動範囲のなかで、上下ルーバ31の風流れ方向の上流側の上流端部31cが第1傾斜部材21に最も近づく角度である。また、最大角度状態の上下ルーバ31において第1傾斜部材21に最も近い端部を近接端部31dと称する。なお、図2では、上流端部31cと近接端部31dが異なる箇所となっているが、同一箇所であってもよい。すなわち、最大角度状態で上流端部31cが、上下ルーバ31のなかで最も第1傾斜部材21に近い箇所であってもよい。
【0035】
一方、最大回動範囲において、ベンチレータ100が風を最も下方に吹き出す場合の上下ルーバ31の角度を「逆最大角度」と称し、その際の上下ルーバ31の状態を「逆最大角度状態」と称する(後述する図6参照)。
【0036】
また、最大角度範囲において、流路11の内壁11aと平行になる上下ルーバ31の角度(図2にて二点鎖線で示す上下ルーバ31の角度)を「基準角度」と称する。基準角度は、所定身長(例えば175cm)の乗員が着座した際に、乗員の首に向かってベンチレータ100が風を吹き出す場合の角度である。上下ルーバ31が基準角度である状態を、「基準状態」と称する。図2では基準角度を一点鎖線Nで示す。図2では、線Nと流路11の内壁11aの間に角度があるように見えるが、実際には基準状態において、両者は平行である。
【0037】
図3に示すように、ノブ32の風流れ方向の上流側の端部には、フォーク部材33が連結されている。図4に示すように、ノブ32とフォーク部材33とは、ピン34を介して繋がっている。図3に示すように、フォーク部材33の突起部33a,33bの間には、後述する第2ルーバ部4のピン部材48がはめ込まれる。
【0038】
図1及び図3に示すように、第2ルーバ部4は、複数個の左右ルーバ41〜46と、リンク部材47と、ピン部材48と、を有する。図3に示すように、第2ルーバ部4は、流路11内において第1ルーバ部3よりも風流れ方向の上流側に配置される。
【0039】
図1に示すように、複数個の左右ルーバ41〜46は、リンク部材47を介して連結される。また、左右ルーバ41〜46は、所定の軸部を中心に図1における左右方向に回動する(図2にて、左右ルーバ44と、左右ルーバ44の軸部44aを示す。)。複数個の左右ルーバ41〜46のうち、フォーク部材33の突起部33a,33b間の空間に最も近い左右ルーバ44には、第2ルーバ部4とフォーク部材33とを繋ぐためのピン部材48が設けられる(図1から図4参照)。
【0040】
ピン部材48は、ノブ32及びフォーク部材33がベンチレータ100の左右方向(図3に示す上下ルーバ31の幅L1方向)に摺動すると、それとともにベンチレータ100の左右方向に回動する。ピン部材48が回動すると、それに連動して左右ルーバ41〜46がピン部材48の回動方向(すなわち、ベンチレータ100の左右方向)に向かって傾く。左右ルーバ41〜46は、傾斜状態に応じて、空調装置から流れてくる風の左右の流れ方向を変更する。
【0041】
図2に示すように、流路部材1内の流路11には、補助上下ルーバ5が設けられる。補助上下ルーバ5は、上下ルーバ31と接続部材51を介して連結している(図1参照)。補助上下ルーバ5は、上下ルーバ31及びノブ32がベンチレータ100の上下方向に回動するのに伴って、上下ルーバ31及びノブ32と同じ方向に回動する。補助上下ルーバ5は、空調装置から流れてくる風の上下の流れ方向を変更する。
【0042】
図2に示すように、流路部材1の流路11内には、凸部材6及びガイド部材7が配置される。
【0043】
ここで、凸部材6及びガイド部材7を説明するのに先立ち、凸部材6及びガイド部材7の配置を決める要素である第1傾斜部材21の頂点21aの配置の詳細について説明する。
【0044】
図2に示すように、頂点21aは、第1傾斜部材21において、開口部110の開口面積を最も狭める箇所である。また、頂点21aは、風流れ方向の上流側の端部である。すなわち、頂点21aは、第1傾斜部材21のうち流路部材1の流出口13に最も近い部位である。
【0045】
図2に示すように、頂点21aは、最大角度状態における上下ルーバ31の上流端部31cよりも風流れ方向の上流側に配置される。
【0046】
次に、凸部材6及びガイド部材7について説明する。
【0047】
図2に示すように、凸部材6は、風流れ方向の上流側にて第1傾斜部材21の頂点21aに隣接する位置に配置される。凸部材6は、凸部6aと第2傾斜部6bとを有する。
【0048】
凸部6aは、頂点21aよりも流路11の内側に向かって突出する部位である。ここで、流路11の内側とは、流路部材1の流路11を形成する内周面から離れる方向に向かう側、すなわち、流路部材1の下側の内壁11aから図2にて二点鎖線で示される基準状態の第1ルーバ部3の位置へ向かう側である。凸部6aは、上下ルーバ31の回転軸の方向及び風流れ方向の両方と直交する方向(すなわち、図2の略上下方向)において、流路11内に向かって突出しているとも言える。
【0049】
凸部6aは、さらに詳細に言えば、上下ルーバ31の回転軸の方向及び風流れ方向の両方と直交する方向(すなわち、図2の略上下方向)において、最大角度状態の上下ルーバ31の近接端部31dよりも上方に突出している(高さが高くなっている)。
【0050】
凸部6aは、頂点21aよりも3mm突出している。好ましくは、凸部6aは、第1ルーバ部3が基準状態から最大角度状態までの回動軌跡(図2に実線で示す端部32aの位置と図2に二点鎖線で示す端部32aとを結ぶ円弧状の二点鎖線)に達しない範囲で、上記の方向に頂点21aよりも3mm以上突出している。
【0051】
図2に示すように、第2傾斜部6bは、凸部6aよりも風流れ方向の上流側に位置し、風流れ方向の上流側から下流側へ向けて流路11の内側に向かうように傾斜する斜面である。
【0052】
図2に示すように、ガイド部材7は、凸部材6よりも風流れ方向の上流側に配置される。また、ガイド部材7は、第2凸部7aを有する。第2凸部7aは、上下ルーバ31の回転軸の方向及び風流れ方向の両方と直交する方向(すなわち、図2で言えば略上下方向)において、近接端部31dよりも流路11の内側に向かって突出している。本実施形態では、第2凸部7aは、凸部6aよりも流路11の内側に向かって突出している。
【0053】
ガイド部材7は、凸部材6とともにガイド流路8を形成する。ガイド流路8は、出口8bの流路断面積が入口8aの流路断面積よりも小さくなるように形成される。
【0054】
以下、図5図6及び図9を参照して、ベンチレータ100の送風時における作用について説明する。
【0055】
図5は、ベンチレータ100が最も上方へ風を吹き出す場合の断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。図6は、ベンチレータ100が最も下方へ風を吹き出す場合の断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。図9は、比較例に係るベンチレータ200の断面の概要図であり、図1のII−II断面に相当する図である。図5図6及び図9では、ベンチレータ100,200を流れる風の流れを矢印A〜Kで示す。
【0056】
まず、図5を参照して、風を最も上方へ吹き出す場合について説明する。当該場合には、第1ルーバ部3及び補助上下ルーバ5は、最大角度状態であり、風流れ方向の下流に向かうほど上方に向かうように傾斜している。
【0057】
空調装置から送られる風は、流路部材1の流入口12より流路11へ流入する。流路11に流入する風は、矢印Aで示すように流路11の上側(流路11のうち図2の紙面上方側、すなわち補助上下ルーバ5が配置される側)へ流入する風と、矢印Bで示すように流路11の内側(流路11のうち図2の紙面中央側、すなわちピン部材48付近側)へ流入する風と、矢印C及び矢印Dで示すように流路11の下側(流路11のうち図2の紙面下方側、凸部材6及びガイド部材7が配置される側)へ流入する風と、に大別することができる。以下、それぞれの風の流れに分けて説明する。
【0058】
流路11の上側へ流入する風は、矢印Aで示すように流路11内を流れる。すなわち、流路11の上側へ流入する風は、まず流路11の伸長方向に向かって(言い換えれば流路11の内壁11aと平行な方向に)流れてゆく。その後、当該風は、補助上下ルーバ5によって流れがベンチレータ100の上方側へと変えられて、上方へ向かって流出口13及び開口部110から吹き出される。
【0059】
流路11の下側へ流入する風は、矢印C又は矢印Dで示すように流路11内を流れる。すなわち、流路11の下側へ流入する風は、矢印Cで示すようにガイド流路8を通過しない場合と、矢印Dで示すようにガイド流路8を通過する場合とに分けることができる。
【0060】
矢印Cに示すようにガイド流路8を通過しない場合について説明する。当該場合には、流路11の下側へ流入する風は、まず流路11の伸長方向に向かって流れてゆく。
【0061】
その後、当該風は、ガイド部材7の第2凸部7aに当たって、流れが第1ルーバ部3へ向かう方向へ変えられる。流れが変えられた風は、矢印Bの風と合流して開口部110に向かう。ここで、第2凸部7aに対して風流れ方向の下流側には凸部6aが位置し、凸部6aが第1傾斜部材21の頂点21aと隣接している。これにより、上記の合流した風が頂点21aへ回り込むことを抑制できる。その結果、第1傾斜部材21の表面に空気が張り付くコアンダ効果の発生を防ぐことができる。特に、最大角度状態において、凸部6aは、上下ルーバ31の近接端部31dよりも大きく突出しているため、最大角度状態において、第1傾斜部材21と上下ルーバ31との間に向かって風が直接流れることが抑制される。また、矢印Cの風と矢印Bの風とが合流した風の一部が凸部6aを迂回するように回り込んだとしても、まず、上記のように頂点21a付近では風が張り付くことが抑制される。さらに、第1傾斜部材21が風流れ方向の下流側に向かって下方に傾斜している。よって、第1傾斜部材21が風流れ方向の下流側に向かって下方に傾斜していることから、当該風の一部が第1傾斜部材21の表面に触れることも抑制される。
【0062】
凸部6aと頂点21aの間における「隣接」の範囲とは、凸部6a上を通過する風が頂点21aに回り込まない範囲の、頂点21aと凸部6aの距離を言い、頂点21aから凸部6aまでの距離が概ね3mm以下であることを意味する。なお、頂点21aから第2凸部7aまでの距離が3mm以下であれば、第2凸部7aも頂点21aと隣接していると理解してよい。
【0063】
ここで、第1ルーバ部3及び補助上下ルーバ5は上方に向かって傾斜しているため、第1ルーバ部3へ向かった風は、第1ルーバ部3によって上方へ流れるよう誘導され、上方へ向かって流出口13及び開口部110から吹き出される。
【0064】
矢印Dに示すようにガイド流路8を通過する場合について説明する。当該場合には、流路11の下側へ流入する風は、まず流路11の伸長方向に向かって流れてゆく。
【0065】
その後、当該風は、矢印Dで示すように、ガイド流路8の入口8aから出口8bに向かって流れてゆく。ガイド流路8を流れる風は、第2傾斜部6bによって、上方へ向かうように流れが変えられる。また、上記で説明したようにガイド流路8は、出口8bの流路断面積が入口8aの流路断面積よりも小さくなるように形成される。すなわち、ガイド流路8は、出口8bが入口8aよりも狭くなるように形成される。そのため、ガイド流路8は、ガイド流路8内を流れる風の流速を出口側にて速くして、風を勢いよく出口8bから流出させることができる。
【0066】
ガイド流路8を通過することで流速が速くなるとともに流れが上方へ変わった風は、矢印Dで示すように、矢印Bの風と合流して、第1ルーバ部3の上下ルーバ31に向かって流れる。出口8bから吹き出す風は、上記の通り流速が早くなっているため、矢印Bの風を上側に向かって押し上げる効果を奏する。そうすることで、矢印Dの風が矢印Bの風と合流することで、頂点21aへの風の回り込みが抑制される。これにより、より効果的に、第1傾斜部材21の表面に空気が張り付くコアンダ効果の発生を防ぐことができる。
【0067】
流路11の内側へ流入する風は、矢印Bに示すように流路11内を流れる。すなわち、流路11の内側へ流入する風は、まず流路11の伸長方向に向かって流れてゆく。その後、当該風は、流路11内の下側から上方に向かって流れる風(矢印Cや矢印Dの流れの風)と合流して、流れがベンチレータ100の上方側へと変えられてゆく。また、風は、上下ルーバ31に当たることで、風向きが変わって、上下ルーバ31に沿って上方側へ向かって流れ、流出口13及び開口部110から吹き出される。
【0068】
このように、空調装置からベンチレータ100の流路11に流入した風は、流路11内の上側、内側、もしくは下側のいずれを通過しても、開口部110から上方へと良好に吹き出される。言い換えれば、風を上方に吹き出したい場合に、意図した方向とは反対の下方へ風が流れることが抑制される。
【0069】
ここで、図9を参照して、凸部材6及びガイド部材7を備えない以外は図1図4で示すベンチレータ100と同様のベンチレータ200を比較例として説明する。
【0070】
図9に示すように、ベンチレータ200では、空調装置から流路11の下側へ流入する風は、矢印Jで示すように流れが変わることなく第1傾斜部材21の頂点21aと上下ルーバ31(近接端部31d)との間の空間を通過する。上記で説明した通り、第1傾斜部材21の構造上、第1傾斜部材21の頂点21a付近と風流れ方向(図2で破線で示す線)との角度である傾斜角度R1は40度未満である。
【0071】
この傾斜角度R1が40度未満(特に0度<R1<30度の範囲)である場合に、比較例の図9の矢印Jに示すように風が流れると、当該風は、頂点21aと接触するときにコアンダ効果によって矢印Kに示すように第1傾斜部材21に沿って下方側に流れる。すなわち、凸部材6及びガイド部材7を有しない場合には、上下ルーバ31を上向きとしているにも係わらず、風が下向きにも流れるという、意図した方向とは反対へ風が流れる場合がある。
【0072】
このような風の流れを防ぐためには、上下ルーバ31を風流れ方向上流側へ延伸させて、最大角度状態のときに、上下ルーバ31と第1傾斜部材21との間の空間を閉じることが考えられる。
【0073】
しかしながら、上下ルーバ31が開口部110近傍に配置される構造のベンチレータ200では、上下ルーバ31を後方に延伸させても、上下ルーバ31が第1傾斜部材21と当接する前に、ノブ32が第1傾斜部材21と当接する。その結果、上下ルーバ31と第1傾斜部材21との間には、ノブ32が介在しない部分において、隙間が生じるため、この部分でコアンダ効果が発生する。
【0074】
これに対して、凸部材6及びガイド部材7を備えるベンチレータ100では、図5に示すように、上下ルーバ31を最大角度まで回動させた場合、第1傾斜部材21の風流れ方向の上流側の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に向かおうとする風(図5の矢印Cで示す風であり、特に、第1傾斜部材21の頂点21aに向かう風)は、当該空間を流れる前に第2凸部7aに当たって流れが変わる。また、凸部6aが頂点21aと隣接しているため、凸部6aが頂点21aへ向かう風を阻害する。そのため、当該空間に風が回り込むことが抑制される。したがって、第1傾斜部材21でコアンダ効果が発生して風が当該空間を通過して意図した方向とは反対に流れる(図9の矢印J及び矢印Kのように流れる)ことを防ぐことができる。
【0075】
また、第2傾斜部6bとガイド部材7とによってガイド流路8を設けることで、図5に矢印Dで示すように、流路11の下側へ流入する風を上方へ案内する。風は、図5に矢印Dで示すように上方に向かって流れるため、これによっても、第1傾斜部材21の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に風が流れることが抑制される。特に、第1傾斜部材21の頂点21aへ接触しようとする風の流れを抑制して、頂点21aから風が張り付くコアンダ効果の発生を抑制することができる。
【0076】
さらに、ガイド流路8は、出口8bの流路断面積が入口8aの流路断面積よりも小さくなるように形成される。すなわち、ガイド流路8の出口8bは、入口8aよりも狭くなっている。そのため、ガイド流路8を通過する風は、流速が速くなり、勢いよく上方へ向かう。これによっても、第1傾斜部材21に風が張り付くコアンダ効果の発生を抑制することができる。
【0077】
次に、図6を参照して、風を最も下方へ吹き出す場合について説明する。当該場合には、第1ルーバ部3及び補助上下ルーバ5は、逆最大角度状態であり、風流れ方向下流ほど下方に向かうように傾斜している。すなわち、第1ルーバ部3は、図5に示す位置から図6に示す位置までの範囲(最大回動範囲)内で回動可能である。
【0078】
ベンチレータ100は、空調装置から送られる風を流路部材1の流入口12より流路11へ流入させる。流路11に流入する風は、矢印Eで示すように流路11の上側へ流入する風と、矢印Fで示すように流路11の内側へ流入する風と、矢印G及び矢印Hで示すように流路11の下側へ流入する風と、に大別することができる。以下、それぞれの風の流れに分けて説明する。
【0079】
流路11の上側へ流入する風は、矢印Eで示すように流路11内を流れる。すなわち、流路11の上側から流入する風は、まず流路11の伸長方向に向かって流れてゆく。その後、当該風は、補助上下ルーバ5によって流れがベンチレータ100の下方側へと変えられて、下方側へ向かって流出口13及び開口部110から吹き出される。
【0080】
ところで、流路11の上側を流れる風のなかには、補助上下ルーバ5と接触せずに、流れが変わらないまま、内装パネル24と第1ルーバ部3との間の空間を風が流れる可能性もある。しかしながら、上記のような風があったとしても、内装パネル24の傾斜角度R2が40度以上(例えば42度)となっていることで、コアンダ効果によって当該風が上方に向かって流れる現象が抑制される。すなわち、逆最大角度状態において、風がベンチレータ100から真っすぐに吹き出すことはあっても、上側に向いて(意図した方向と反対方向に)風が吹き出すことは抑制される。
【0081】
流路11の内側へ流入する風は、矢印Fで示すように流路11内を流れる。すなわち、流路11の内側から流入する風は、まず流路11の伸長方向に向かって流れてゆく。その後、当該風は、下方に向かって傾斜する上下ルーバ31及びノブ32と接触することで、上下ルーバ31及びノブ32に沿って下方側へ向かって流れ、矢印Iで示すように下方側へ向かって流出口13及び開口部110から吹き出される。
【0082】
流路11の下側へ流入する風は、矢印G又は矢印Hで示すように流路11内を流れる。すなわち、流路11の下側から流入する風は、矢印Gで示すようにガイド流路8を通過しない場合と、矢印Hで示すようにガイド流路8を通過する場合とに分けることができる。
【0083】
矢印G及び矢印Hで示すように流路11の下側から流入する風は、凸部6a及び第2凸部7a、もしくはガイド流路8によって一旦は上方に向かって流れるものの、矢印Fの風と合流して、やがて下方に傾斜する第1ルーバ部3に当たる。当該風は、第1ルーバ部3に沿って下方へ流れるよう誘導され、矢印Iに示すように下方側へ向かって流出口13及び開口部110から吹き出される。
【0084】
このように、空調装置からベンチレータ100の流路11に流入した風は、流路11内の上側、内側、もしくは下側のいずれを通過しても、開口部110から上方へ吹き出されることはない。すなわち、意図した方向とは反対方向に風は流れない。
【0085】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0086】
流路11を通って開口部110から風が吹き出すベンチレータ100は、ノブ32が装着された上下ルーバ31と、上下ルーバ31を回動可能に支持し、開口部110の一部を形成する一対の側壁22,23と、一対の側壁22,23の間で開口部110の他の一部を形成し、風流れ方向の上流側から下流側へ向けて開口部110の開口面積が広がるように傾斜する第1傾斜部材21と、を備える。第1傾斜部材21は、風流れ方向の上流側に位置する傾斜の頂点21aを有する。上下ルーバ31の風流れ方向の上流側の上流端部31cが第1傾斜部材21に最も近くなるように上下ルーバ31を回動させた最大角度状態において、上下ルーバ31の上流端部31cは、頂点21aよりも風流れ方向の下流側に位置する。ベンチレータ100は、頂点21aに対して風流れ方向の上流側に隣接して配置された凸部6aをさらに備え、凸部6aは、上下ルーバ31の回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向において、頂点21aよりも流路11の内側に突出する。
【0087】
これによれば、上下ルーバ31を最大角度状態まで回動させた場合、凸部6aによって、第1傾斜部材21の頂点21aに風が接触することが抑制されるため、当該頂点21aでコアンダ効果の発生を防ぐことができる。これによって、意図した方向とは反対の方向に風が流れることを抑制することができる。
【0088】
また、好ましい態様において、凸部6aは、最大角度状態において、第1傾斜部材21に最も近接する上下ルーバ31の近接端部31dの位置よりも流路11の内側に突出する。
【0089】
これによれば、上下ルーバ31を最大角度状態まで回動させた場合、凸部6aによって、第1傾斜部材21の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に風が流れることが抑制される。したがって、第1傾斜部材21でのコアンダ効果の発生を抑制し、風が当該空間を通過して意図した方向とは反対に流れることを効果的に防ぐことができる。
【0090】
また、ベンチレータ100は、風流れ方向の上流側で凸部6aと隣接し、風流れ方向の上流側から下流側へ向かう方向において、流路11の内側に向かって傾斜する第2傾斜部6bをさらに備える。
【0091】
これによれば、流路11の下側を流れる風が上方へ向かうように誘導される。そのため、最大角度状態において、当該風によって、第1傾斜部材21の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に風が流れることが抑制される。したがって、第1傾斜部材21でのコアンダ効果の発生を抑制し、風が当該空間を通過して意図した方向とは反対に流れる(図9の矢印J及び矢印Kのように流れる)ことを防ぐことができる。
【0092】
また、ベンチレータ100は、第2傾斜部6bとともにガイド流路8を形成するガイド部材7をさらに備え、ガイド部材7は、頂点21aよりも流路11の内側に突出する第2凸部7aを有する。詳細には、第2凸部7aは、近接端部31dよりも流路11の内側に突出する。
【0093】
これによれば、最大角度状態において、第2凸部7aによっても、第1傾斜部材21の風流れ方向上流側の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に風が流れることが抑制される。したがって、風が当該空間を通過して意図した方向とは反対に流れることを防ぐことができる。
【0094】
第2凸部7aは、凸部6aよりも大きく流路11内に突出している。しかしながら、第2凸部7aは、開口部110の方向から流路11を見たときに流路11の奥側に位置するため、見栄えへの影響が低減されている。すなわち、乗員に見えやすい凸部6aを小さくし、相対的に乗員に見えにくい第2凸部7aを大きくすることで、見栄えへの影響を低減しつつ、コアンダ効果の発生の抑制を達成している。
【0095】
また、図1に示すように、開口部110の方向から流路11を見た時に、凸部6aと第2凸部7aは段差状に見える。仮に、凸部6aが第2凸部7aと同程度の高さである場合には、開口部110から流路11を見た時に、凸部6aの壁面(図1で見える面)が目立って見えるのに対し、図1のように段差状となっていることで、視覚的に目立たない工夫がなされている。
【0096】
また、ガイド流路8の出口8bは、ガイド流路8の入口8aよりも狭い。
【0097】
これによれば、ガイド流路8内を流れる風は、勢いよく出口8bから上方へ流出される。これによっても、最大角度状態において、第1傾斜部材21の風流れ方向上流側の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に風が流れることが抑制される。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0099】
上記実施形態では、第1傾斜部材21が開口部110の下方に配置され、最大角度状態では第1ルーバ部3が上方に傾斜する場合を説明した。しかしながら、第1傾斜部材21が開口部110の上方に配置され、最大角度状態では第1ルーバ部3が下方に傾斜する場合にも上記構成を適用可能である。また、左右ルーバ41〜46が上下ルーバ31よりも車室内側に配置されている場合(図1等の構成を90度傾けて車室内に配置した場合として理解してもよい)においては、上記した上下ルーバ31を、左右ルーバ41〜46のうち、第1傾斜部材21ともっとも近いルーバに置き換えて、上記構成を適用してもよい。
【0100】
また、図7に示す変形例のように、ガイド部材17は、第2凸部7aを備えない構成でもよい。当該構成であっても、凸部6aがあれば、第1傾斜部材21の風流れ方向の上流側の頂点21aに風が回り込むことが抑制される。
【0101】
また、図8に示す他の変形例のように、凸部材6及びガイド部材7に代えて、第2傾斜部材16を備える構成であってもよい。
【0102】
第2傾斜部材16は、凸部16aと傾斜部16bとを有する。凸部16aと傾斜部16bとは、一体に成形されている。
【0103】
凸部16aは、上記した凸部6aと同様に、第1傾斜部材21の頂点21aと隣接しているため、風が頂点21aに回り込むのを抑制することができる。これにより、当該空間に風が流れることが抑制される。
【0104】
傾斜部16bは、上記した第2傾斜部6bと同様に、流路11の下側を流れる風を上方へ向かうように誘導する。これにより、第1傾斜部材21の風流れ方向上流側の頂点21aと上下ルーバ31の近接端部31dとの間の空間に風が流れることが抑制される。
【0105】
この変形例に係るベンチレータ100によっても、風が当該空間を通過して意図した方向とは反対に流れる(図9の矢印J及び矢印Kのように流れる)ことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0106】
100 ベンチレータ
21 第1傾斜部材
21a 頂点
22,23 側壁
31 上下ルーバ(ルーバ)
31c 上流端部
32d 近接端部
32 ノブ
32a 端部
32b 端部
6a 凸部
6b 第2傾斜部
7 ガイド部材
7a 第2凸部
8 ガイド流路
8a 入口
8b 出口
110 開口部
【要約】      (修正有)
【課題】開口部の開口面積が下流側へ向けて拡がるよう傾斜する部材上のコアンダ効果発生を抑制するベンチレータを提供する。
【解決手段】ベンチレータ100は、ノブ32が装着された上下ルーバ31と、上下ルーバ31を回動可能に支持し、開口部110の一部を形成する一対の側壁と、一対の側壁の間で開口部110の他の一部を形成し、風流れ方向の上流側から下流側へ向けて開口部110の開口面積が広がるよう傾斜する第1傾斜部材21と、を備える。上下ルーバ31の上流端部31cが第1傾斜部材21に最も近くなるよう上下ルーバ31を回動させた最大角度状態にて、上流端部31cは、頂点21aより風流れ方向の下流側に位置する。第1傾斜部材21の頂点21aに対し風流れ方向の上流側に隣接して配置された凸部6aは、上下ルーバ31の回転軸及び風流れ方向の両方と直交する方向にて、頂点21aよりも流路11の内側に突出する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9