【文献】
橘 直博,電力市場におけるネガワットの不安定性低減に関する一考察,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年11月 8日,Vol.117 No.400,pp.17−22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3提示部は、前記異なる残りの分類に属する各需要家に対して予測したエネルギー需要の時間変化の総和が、前記残りのエネルギー需要の時間変化以下である場合、前記異なる残りの分類に属する各需要家に対して、前記予測したエネルギー需要の時間変化を提示する請求項1記載の需要調整サーバ。
【背景技術】
【0002】
従来より、電力需要の調整量を配分する方法が知られている。例えば、電力系統における電力需要を調整する電力需要調整システムにおいて、需要家機器における電力需要の調整力と、前記需要家機器に対する調整制御の指令量と前記調整制御により行われた需要家機器の電力消費量に基づいて決定する指令応答性を表す評価量との相関を表す特性カーブに基づいて、前記電力需要の調整量を需要家機器ごと又は複数の需要家機器を含む所定のグループごとに配分する方法が知られている(特許文献1)。この特許文献1に記載の従来技術では、調整制御要求に対する需要家機器の電力消費量の応答性に基づいて、電力需要の調整量を配分する。
【0003】
また、複数の電気機器を有する需要家において、前記電気機器の電力制御単位となる制御区分毎に、当該制御区分に係る人数を示す環境情報を取得する環境情報取得手段と、前記制御区分の各々で削減可能な電力を需要削減量として算出する需要削減量算出手段と、前記制御区分各々の環境情報又は需要削減量を用いて、当該需要削減量の実施に伴う影響の大きさを示す影響指数を決定する影響指数決定手段と、前記影響指数に基づいて前記制御区分を組み合わせ、当該制御区分の各組により前記需要削減量の合計値を段階的に増加させた複数の需要削減プランを生成する需要削減プラン生成手段と、前記複数の需要削減プランのうち、外部装置により選択された需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、当該制御区分に属する前記電気機器を制御する機器制御手段と、を備える電力需給調整装置が知られている(特許文献2)。この特許文献2に記載の従来技術では、人数を考慮して需要削減量を算出する。
【0004】
また、従来より、電力需要の調整に応じたインセンティブを決定する方法が知られている。例えば、蓄電池による充放電に対するインセンティブが与えられない状態の蓄電池の翌日運用計画を需要家から取得するデータ取得部と、翌日運用計画を基にインセンティブが与えられない状態の需要カーブを求め、需要カーブ及び翌日運用計画を基に、翌日の所定時間において需要カーブで表される電力需要を平準化した目標需要カーブを求める目標需要カーブ作成部と、目標需要カーブ作成部により作成された目標需要カーブと需要カーブとの差を基に、所定時間における時間帯毎の翌日インセンティブを決定するインセンティブ決定部と、インセンティブ決定部により決定された翌日インセンティブを通知するインセンティブ通知部とを備える電力需要調整装置が知られている(特許文献3)。この特許文献3に記載の従来技術では、目標需要カーブと予測される需要カーブとの差を基に、時間帯毎の翌日インセンティブを決定する。
【0005】
また、デマンドレスポンスの実行を需要家に要請する信号であるDR信号をブロードキャストする信号送信部と、複数の需要家のそれぞれに対してデマンドレスポンスの対価である報酬額を算出する演算部と、系統供給電力量(指標電力量)のデータを記録するデータベースとを備え、演算部は、需要家がデマンドレスポンスを実行したことで削減(または増大)した系統供給電力量である削減電力量(調整電力量)が大きい需要家ほど高額になるように報酬額を算出するデマンドレスポンスシステムが知られている(特許文献4)。この特許文献4に記載の従来技術では、報酬総額を、調整電力量の大きさに応じて分配することで各需要家の報酬額を算出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電力需要の調整量の配分では、需要家毎に協力度合いが異なることを考慮できず、電力需要の調整の実現精度が悪くなってしまう可能性がある。
【0008】
また、従来の電力需要の調整に対する報酬の決定では、需要家毎に協力度合いが異なることを考慮できず、協力度合いが高い需要家の協力意欲を低下させてしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、エネルギー需要の調整の成功率を高くすることができる需要調整サーバ及び需要調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る需要調整サーバは、プラントからエネルギーの供給を受ける需要家群のエネルギー需要を調整するための需要調整サーバであって、前記需要家群を、エネルギー需要の調整協力可能な度合いに応じた複数の分類に分ける分類部と、前記調整協力可能な度合いが最も高い分類に属する各需要家から、調整協力可能なエネルギー需要の割合である調整協力予定率の時間変化を取得する協力予定率取得部と、各需要家について、蓄積した当該需要家のエネルギー需要の実績データに基づいて、当該需要家のエネルギー需要の時間変化を予測し、前記需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化を予測する需要予測部と、所定の条件を満たすように、前記需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化を調整する需要調整部と、前記調整協力可能な度合いが最も低い分類に属する各需要家に対して、前記需要家について予測したエネルギー需要の時間変化を提示する第1提示部と、前記調整協力可能な度合いが最も高い分類に属する各需要家に対して、前記調整協力予定率の時間変化に基づいて、前記需要家について予測したエネルギー需要の時間変化を調整し、前記調整したエネルギー需要の時間変化を提示し、前記調整された前記需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化から、前記提示した、前記調整したエネルギー需要の時間変化の総和と、前記第1提示部により提示された前記エネルギー需要の時間変化の総和を差し引いて、残りのエネルギー需要の時間変化を算出する第2提示部と、前記調整協力可能な度合いが最も低い分類及び前記調整協力可能な度合いが最も高い分類とは異なる残りの分類に属する各需要家に対して予測したエネルギー需要の時間変化の総和が、前記残りのエネルギー需要の時間変化より大きい場合、前記残りのエネルギー需要の時間変化を、前記残りの分類に属する各需要家に対して予測したエネルギー需要の時間変化に応じて比例按分して、前記残りの分類に属する各需要家に対して、前記需要家について按分されたエネルギー需要の時間変化を提示する第3提示部と、を含んで構成されている。
【0011】
第1の発明によれば、分類部が、前記需要家群を、エネルギー需要の調整協力可能な度合いに応じた複数の分類に分ける。協力予定率取得部が、前記調整協力可能な度合いが最も高い分類に属する各需要家から、調整協力可能なエネルギー需要の割合である調整協力予定率の時間変化を取得する。
【0012】
そして、需要予測部が、各需要家について、蓄積した当該需要家のエネルギー需要の実績データに基づいて、当該需要家のエネルギー需要の時間変化を予測し、前記需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化を予測する。需要調整部が、所定の条件を満たすように、前記需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化を調整する。
【0013】
そして、第1提示部が、前記調整協力可能な度合いが最も低い分類に属する各需要家に対して、前記需要家について予測したエネルギー需要の時間変化を提示する。第2提示部が、前記調整協力可能な度合いが最も高い分類に属する各需要家に対して、前記調整協力予定率の時間変化に基づいて、前記需要家について予測したエネルギー需要の時間変化を調整し、前記調整したエネルギー需要の時間変化を提示し、前記調整された前記需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化から、前記提示した、前記調整したエネルギー需要の時間変化の総和と、前記第1提示部により提示された前記エネルギー需要の時間変化の総和を差し引いて、残りのエネルギー需要の時間変化を算出する。第3提示部が、前記調整協力可能な度合いが最も低い分類及び前記調整協力可能な度合いが最も高い分類とは異なる残りの分類に属する各需要家に対して予測したエネルギー需要の時間変化の総和が、前記残りのエネルギー需要の時間変化より大きい場合、前記残りのエネルギー需要の時間変化を、前記残りの分類に属する各需要家に対して予測したエネルギー需要の時間変化に応じて比例按分して、前記残りの分類に属する各需要家に対して、前記需要家について按分されたエネルギー需要の時間変化を提示する。
【0014】
このように、各需要家について、エネルギー需要の調整協力可能な度合いに応じて、エネルギー需要の時間変化を提示することにより、エネルギー需要の調整の成功率を高くすることができる。
【0015】
また、第2の発明に係る需要調整サーバは、プラントからエネルギーの供給を受ける需要家群のエネルギー需要を調整するための需要調整サーバであって、前記需要家群を、エネルギー需要の調整協力可能な度合いに応じた複数の分類に分ける分類部と、前記需要家の各々に対し、目標となるエネルギー需要の時間変化を提示する目標需要提示部と、前記需要家の各々に対し、前記需要家について提示された前記目標となるエネルギー需要の時間変化と、前記需要家のエネルギー需要の時間変化の実績と、前記分類部による分類結果とに基づいて、前記調整協力可能な度合いが高い分類ほど、目標達成に対する報酬を高くし、前記目標となるエネルギー需要の時間変化の1日の累積需要に対する、前記需要家のエネルギー需要の時間変化の実績の1日の累積需要の減少度合いが大きいほど、前記報酬を高くするように、前記報酬を計算する報酬計算部と、を含んで構成されている。
【0016】
第2の発明によれば、分類部が、前記需要家群を、エネルギー需要の調整協力可能な度合いに応じた複数の分類に分ける。目標需要提示部が、前記需要家の各々に対し、目標となるエネルギー需要の時間変化を提示する。
【0017】
そして、報酬計算部が、前記需要家の各々に対し、前記需要家について提示された前記目標となるエネルギー需要の時間変化と、前記需要家のエネルギー需要の時間変化の実績と、前記分類部による分類結果とに基づいて、前記調整協力可能な度合いが高い分類ほど、目標達成に対する報酬を高くし、前記目標となるエネルギー需要の時間変化の1日の累積需要に対する、前記需要家のエネルギー需要の時間変化の実績の1日の累積需要の減少度合いが大きいほど、前記報酬を高くするように、前記報酬を計算する。
【0018】
このように、各需要家について、エネルギー需要の調整協力可能な度合いに応じて、報酬を計算することにより、エネルギー需要の調整の成功率を高くすることができる。
【0019】
また、第3の発明に係る需要調整システムは、上記発明の需要調整サーバと、前記需要調整サーバにより提示されたエネルギー需要の時間変化と、前記需要家のエネルギー需要の時間変化の実績とを比較した結果を表示する需要家側端末と、を含んで構成されている。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の需要調整サーバ及び需要調整システムによれば、エネルギー需要の調整の成功率を高くすることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
<需要調整システムのシステム構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る需要調整システム100は、需要家毎に備えられた、家電などの負荷機器10、PV発電器や蓄電池などの発電機器12、及び管理装置16と、需要家群に電力供給を行うためのプラントを有するエネルギーセンター側に設けられたサーバ20とを備えている。需要家毎の管理装置16とサーバ20は、インターネットなどのネットワーク41を介して相互に接続されている。なお、サーバ20が、需要調整サーバの一例であり、管理装置16が、需要家側端末の一例である。
【0024】
管理装置16は、電力需要の時間変化の実績を、需要家の識別番号及び計測日と共にサーバ20へ送信する。また、管理装置16は、サーバ20から受信した、目標電力需要の時間変化を提示する。また、管理装置16は、当該需要家の調整協力可能な度合いの設定を、サーバ20へ送信する。また、管理装置16は、サーバ20から受信した、目標電力需要の時間変化を提示する。
【0025】
また、管理装置16は、目標電力需要の時間変化に基づいて、発電機器12や負荷機器10の稼働を制御してもよい。また、管理装置16は、デマンド要請時間帯における電力需要の時間変化の実績を、通信部(図示省略)によりサーバ20へ送信する。
【0026】
また、管理装置16は、リアルタイムで、現在までの電力需要の時間変化と、提示された目標電力需要の時間変化とを比較し、比較結果を提示する。
【0027】
サーバ20は、各需要家の電力需要の時間変化の実績、及び各需要家の調整協力可能な度合いの設定に基づいて、需要家群の電力需要の時間変化を予測し、需要家群の電力需要の時間変化を調整すると共に、調整した需要家群の電力需要の時間変化から得られた、需要家の目標電力需要の時間変化を、各需要家へ送信して提示する。
【0028】
図2に示すように、サーバ20は、通信部22と、演算部24とを備えている。演算部24は、需要家情報データベース30と、分類部32と、目標需要計算部34と、報酬計算部36とを備えている。目標需要計算部34が、目標需要提示部の一例である。
【0029】
通信部22は、管理装置16から、需要家毎の調整協力可能な度合いの設定を受信する。設定では、能動的に調整協力可能な需要家であることを示す協力可能度「高」と、受動的に調整可能な需要家であることを示す協力可能度「中」、調整協力できない需要家であることを示す協力可能度「低」が含まれている。なお、管理装置16からの調整協力可能な度合いの設定の送信は日単位で実施されてもよい。
【0030】
また、通信部22は、管理装置16から、当該需要家の電力需要の時間変化の実績を受信する。管理装置16からの実績の送信は日単位で実施されるものとする。また、通信部22は、管理装置16から、翌日の調整協力予定率(通常使用量に対する削減率)の時間変化を受信する。翌日の調整協力予定率の送信は日単位で実施されるものとする。
【0031】
需要家情報データベース30には、各需要家の電力需要の時間変化の実績、及び各需要家の目標熱需要の時間変化が記憶される。
【0032】
需要家情報データベース30には、各需要家の、調整協力可能な度合いの設定、電力需要の時間変化の実績、及び翌日の調整協力予定率の変化が記憶される。例えば、各需要家の翌日の調整協力予定率表が記憶される(表1)。
【0034】
分類部32は、需要家群を、調整協力可能な度合いに応じた複数の分類に分ける。例えば、協力可能度「高」の需要家を、Aグループに分類し、協力可能度「中」の需要家を、Bグループに分類し、協力可能度「低」の需要家を、Cグループに分類する。
【0035】
目標需要計算部34は、需要家の各々に対し、目標となる電力需要の時間変化を計算し、提示する。具体的には、目標需要計算部34は、
図3に示すように、協力予定率取得部40、需要家需要予測部42、需要調整部44、第1需要提示部46、第2需要提示部48、及び第3需要提示部50を備えている。
【0036】
協力予定率取得部40は、調整協力可能な度合い「高」のAグループに属する各需要家について、需要家情報データベース30から、調整協力予定率の時間変化を取得する。
【0037】
需要家需要予測部42は、各需要家について、蓄積した当該需要家の電力需要の時間変化の実績に基づいて、当該需要家の翌日の電力需要の時間変化を予測する。具体的には、過去の蓄積データに基づき、翌日の需要家毎の日需要予測曲線を作成する。
【0038】
また、需要家需要予測部42は、各需要家について予測した電力需要の時間変化に基づいて、需要家群の電力需要の時間変化を予測する。具体的には、各需要家の日需要予測曲線を合成し、需要家群全体の日需要予測曲線を作成する。
【0039】
需要調整部44は、プラントの運転を最適化するように、予測された需要家群の電力需要の時間変化を調整する。具体的には、需要家群全体の日需要予測曲線を精査し、プラントの運転が合理的かつ効率的になるように調整した日需要予測曲線である、プラント製造計画曲線を作成する。例えば、プラントにおいて稼働する各機器の運転効率、各機器の運転効率の変動、プラントの契約エネルギー量、及び予め定められたピークカットに基づいて、予測された、需要家群全体での電力需要の時間変化を削減するように、以下の着眼点を考慮して、プラント製造計画曲線を生成する。
【0040】
・運転台数低減により省エネを図ること。例えば、効率が劣後する機器を停止するように、電力需要の時間変化を削減する。
【0041】
・ピークカット、負荷平準化による契約電力による経済性向上を図ること。例えば、ピークカットに応じて電力需要の時間変化を削減したり、負荷平準化を実現するように電力需要の時間変化を削減する。
【0042】
第1需要提示部46は、調整協力可能な度合い「低」のCグループに属する各需要家に対して、当該需要家について予測した電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。これにより、Cグループの各需要家の日需要予測をそのまま需要設定とし、各需要家に通知する。また、調整後の需要家群の電力需要の時間変化から、Cグループの各需要家の電力需要の時間変化を合成したものを差し引いた、残りの電力需要の時間変化を求める。
【0043】
第2需要提示部48は、調整協力可能な度合い「高」のAグループに属する各需要家に対して、当該調整協力予定率の時間変化に基づいて、当該需要家について予測した電力需要の時間変化を調整し、調整した電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。第1需要提示部46により求められた残りの電力需要の時間変化から、Aグループの各需要家の電力需要の時間変化を合成したものを差し引いて、残りの電力需要の時間変化を算出する。
【0044】
第3需要提示部50は、調整協力可能な度合い「中」のBグループに属する各需要家に対して、当該需要家に対して予測した電力需要の時間変化を合成したものが、第2需要提示部48により求められた、残りの電力需要の時間変化より大きい場合、当該残りの電力需要の時間変化を、Bグループに属する需要家に対して予測した電力需要の時間変化に応じて比例按分して、当該需要家について按分された電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。具体的には、Bグループに属する各需要家に対して予測した電力需要の時間変化を合成したものが、第2需要提示部48により求められた、残りの電力需要の時間変化の少なくとも1時刻において値が大きくなる場合に、残りの電力需要の時間変化を比例按分する。
【0045】
一方、第3需要提示部50は、調整協力可能な度合い「中」のBグループに属する各需要家に対して、当該需要家に対して予測した電力需要の時間変化を合成したものが、第2需要提示部48により求められた、残りの電力需要の時間変化以下である場合、Bグループに属する需要家に対して予測した電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。具体的には、Bグループに属する各需要家に対して予測した電力需要の時間変化を合成したものが、全時刻において、第2需要提示部48により求められた、残りの電力需要の時間変化の値以下となる場合に、予測した電力需要の時間変化を、そのまま目標電力需要の時間変化とする。
【0046】
Bグループの各需要家から、提示した電力需要の時間変化に関する合意が得られなければ、上記需要調整部44の処理に戻り、需要調整部44と、第1需要提示部46と、第2需要提示部48と、第3需要提示部50との各処理を繰り返す。このとき、需要調整部44では、調整量を少なくする。また、Bグループの需要家の管理装置16は、翌日の電力需要の時間変化を受信すると、提示して、合意するか否かの入力を受け付け、受け付けた内容をサーバ20へ送信する。
【0047】
目標需要計算部34は、各需要家について計算した、デマンド要請時間帯における電力需要の時間変化を、需要家情報データベース30に格納する。
【0048】
報酬計算部36は、需要家の各々に対し、当該需要家について提示された目標電力需要の時間変化と、当該需要家の電力需要の時間変化の実績と、分類部32による分類結果とに基づいて、調整協力可能な度合いが高い分類ほど、報酬を高くし、目標電力需要の時間変化の1日の累積需要に対する、当該需要家の電力需要の時間変化の実績の1日の累積需要の減少度合いが大きいほど、報酬を高くするように、報酬を計算する。
【0049】
具体的には、
図4に示すように、報酬計算部36は、目標需要取得部52と、需要実績取得部54と、報酬決定部56と、報酬付与部58とを備えている。
【0050】
目標需要取得部52は、デマンド要請時間帯の後に、各需要家についての、デマンド要請時間帯における電力需要の時間変化を、需要家情報データベース30から取得する。
【0051】
需要実績取得部54は、デマンド要請時間帯の後に、各需要家についての、デマンド要請時間帯における電力需要の時間変化の実績を、需要家情報データベース30から取得する。
【0052】
報酬決定部56は、調整分相当と非調整分相当の報酬を計算し、その合算を報酬とする。
【0053】
調整分相当の報酬は、デマンド要請時間帯の調整に対する報酬を意味し、調整協力可能な度合いが高い分類ほど、目標達成に対する報酬を高くし、時間帯毎の目標電力需要と、実際の電力需要との差の絶対値が小さいほど、報酬を高くする。非調整分相当の報酬は、デマンド削減による省エネに対する報酬を意味し、日単位の目標電力需要の累積に対して、実際の日単位の電力需要の実績の累積の減少率が大きいほど、報酬を高くする。
【0054】
上記のように、各需要家に対して付与する報酬を計算する。これは、デマンド要請に十分応じられなかったものの大幅な省エネルギーを実現した場合にも報酬を得られることを意味する。
【0055】
具体的には、デマンド要請時間帯の調整を評価する指標を、α(協力形態の係数)×β(要請達成度の係数)とし、省エネを評価する指標を、γ(削減率の係数)とし、これらの指標の和により報酬を算出する。
【0056】
例えば、以下のSTEP1〜STEP4により報酬を算出する。
【0057】
(αの設定)
STEP1:協力形態の係数αは、グループ別に設定する。Ai,Bj,Ckを各需要家とし、
α(Ai)=a
α(Bj)=0.5×a
α(Ck)=0
とする。
【0058】
(βの設定)
STEP2:要請達成度の係数βは、デマンド要請時間帯に各1時間単位で目標電力需要LPtと各需要家の実際の電力需要の実績Ltの偏差に応じ、
β(Ai,t)=b (0.00≦|LPt―Lt|/LPt≦0.03の場合)
β(Ai,t)=0.5×b (0.03<|LPt―Lt|/LPt≦0.05の場合)
β(Ai,t)=0 (0.05<|LPt―Lt|/LPtの場合)
とし、以下のように、デマンド要請時間帯tについての総和を計算し、βを設定する。
β(Ai)=Σβ(Ai,t)
【0059】
また、β(Bj)についても同様に設定する。
【0060】
(γの設定)
STEP3:削減率の係数γは、需要家が、デマンド要請時間帯の目標電力需要の累積に対し、省エネ削減できた率eに応じ、
γ(Ai)=c×e(Ai)
γ(Bj)=c×e(Bj)
γ(Ck)=c×e(Ck)
とする。
【0061】
(報酬の算出)
STEP4:報酬Rは、以下の式により算出する。
R=α×β+γ
【0062】
報酬付与部58は、需要家毎に算出した報酬Rを需要家情報データベース30に格納する。
【0063】
<需要調整システム100の動作>
次に、本実施の形態に係る需要調整システム100の動作について説明する。
【0064】
まず、需要家毎の管理装置16は、需要家毎の調整協力可能な度合いの設定をサーバ20へ送信する。そして、サーバ20は、需要家情報データベース30に、需要家毎の調整協力可能な度合いの設定を格納する。また、サーバ20は、需要家群を、調整協力可能な度合いに応じた複数の分類に分け、各需要家の分類結果を需要家情報データベース30に格納する。
【0065】
需要家毎の管理装置16は、当該需要家の負荷機器10及び発電機器12の稼働状況から電力需要の時間変化の実績を計測して、電力需要の時間変化の実績を、需要家の識別番号及び計測日と共にサーバ20へ送信する。そして、サーバ20は、需要家情報データベース30に、各需要家の電力需要の時間変化の実績を格納する。
【0066】
調整協力可能な度合い「高」のAグループに属する需要家毎の管理装置16は、翌日の調整協力予定率の時間変化をサーバ20へ送信する。そして、サーバ20は、需要家情報データベース30に、Aグループに属する各需要家の翌日の調整協力予定率の時間変化を格納する。
【0067】
そして、サーバ20により、
図5に示す需要調整処理ルーチンが実行される。
【0068】
まず、ステップS100において、協力予定率取得部40は、調整協力可能な度合い「高」のAグループに属する各需要家について、需要家情報データベース30から、調整協力予定率の時間変化を取得する。
【0069】
そして、ステップS102において、需要家需要予測部42は、各需要家について、蓄積した当該需要家の電力需要の時間変化の実績に基づいて、当該需要家の翌日の電力需要の時間変化を予測する。また、需要家需要予測部42は、各需要家について予測した電力需要の時間変化に基づいて、需要家群の電力需要の時間変化を予測する。
【0070】
ステップS104において、需要調整部44は、プラントの運転を最適化するように、予測された需要家群の電力需要の時間変化を調整する。
【0071】
ステップS106において、第1需要提示部46は、調整協力可能な度合い「低」のCグループに属する各需要家に対して、当該需要家について予測した電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。また、調整後の需要家群の電力需要の時間変化から、Cグループの各需要家の電力需要の時間変化を合成したものを差し引いた、残りの電力需要の時間変化を求める。
【0072】
ステップS108において、第2需要提示部48は、調整協力可能な度合い「高」のAグループに属する各需要家に対して、当該調整協力予定率の時間変化に基づいて、当該需要家について予測した電力需要の時間変化を調整し、調整した電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。第1需要提示部46により求められた残りの電力需要の時間変化から、Aグループの各需要家の電力需要の時間変化を合成したものを差し引いて、残りの電力需要の時間変化を算出する。
【0073】
ステップS110において、第3需要提示部50は、調整協力可能な度合い「中」のBグループに属する各需要家に対して、当該需要家に対して予測した電力需要の時間変化を合成したものが、第2需要提示部48により求められた、残りの電力需要の時間変化より大きい場合、当該残りの電力需要の時間変化を、Bグループに属する需要家に対して予測した電力需要の時間変化に応じて比例按分して、当該需要家について按分された電力需要の時間変化を、目標電力需要の時間変化として通信部22により送信し、当該需要家の管理装置16により提示する。そして、需要調整処理ルーチンを終了する。
【0074】
そして、需要家毎の管理装置16は、当該需要家の負荷機器10及び発電機器12の稼働状況から電力需要の時間変化の実績を計測して、電力需要の時間変化の実績を、需要家の識別番号及び計測日と共にサーバ20へ送信する。そして、サーバ20は、需要家情報データベース30に、各需要家の電力需要の時間変化の実績を格納する。
【0075】
そして、サーバ20により、
図6に示す報酬付与処理ルーチンが実行される。
【0076】
まず、ステップS120において、目標需要取得部52は、デマンド要請時間帯の後に、各需要家についての、デマンド要請時間帯における電力需要の時間変化を、需要家情報データベース30から取得する。
【0077】
ステップS122において、需要実績取得部54は、デマンド要請時間帯の後に、各需要家についての、デマンド要請時間帯における電力需要の時間変化の実績を、需要家情報データベース30から取得する。
【0078】
ステップS124において、報酬決定部56は、各需要家について、分類部32による分類結果に基づいて、協力形態の係数αを設定する。
【0079】
ステップS126において、報酬決定部56は、各需要家について、デマンド要請時間帯の目標電力需要の時間変化と実際の電力需要の時間変化の実績の偏差に基づいて、要請達成度の係数βを設定する。
【0080】
ステップS128において、報酬決定部56は、各需要家について、デマンド要請時間帯の目標電力需要の時間変化の累積に対する、実際の電力需要の時間変化の実績の削減率に基づいて、削減率の係数γを設定する。
【0081】
ステップS130において、報酬決定部56は、各需要家について、協力形態の係数α、要請達成度の係数β、及び削減率の係数γに基づいて、報酬Rを算出する。
【0082】
ステップS132において、報酬付与部58は、各需要家の報酬Rを需要家情報データベース30に格納し、報酬付与処理ルーチンを終了する。
【0083】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る需要調整システムによれば、各需要家について、電力需要の調整協力可能な度合いに応じて、目標電力需要の時間変化を提示することにより、電力需要の調整の成功率を高くすることができる。
【0084】
また、各需要家について、電力需要の調整協力可能な度合いに応じて、報酬を計算することにより、電力需要の調整の成功率を高くすることができる。
【0085】
また、プラントの最適運転となるように、需要家毎の調整協力可能な度合いを考慮して、需要家毎の電力需要の調整が可能となり、需要家毎の協力度合いを反映して設定した目標電力需要に応じて報酬を決定することにより、デマンドレスポンス要請に対し、需要家の協力意欲を高くして需要家群全体での電力需要の調整の成功率を高くすることができ、省エネ性、経済性の更なる向上が可能となる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0087】
例えば、電力需要以外のエネルギー需要を調整する場合に、本発明を適用してもよい。例えば、需要家毎の熱需要を調整する場合に、本発明を適用してもよい。
【0088】
また、通常時の省エネ性向上を図るための運用だけではなく、各インフラ途絶時や設備故障時等の非常時の運用に、本発明を適用してもよい。
【解決手段】協力予定率取得部40が、調整協力可能な度合いが最も高い分類に属する各需要家から、調整協力予定率の時間変化を取得する。需要家需要予測部42が、各需要家について、需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化を予測する。需要調整部44が、需要家群全体でのエネルギー需要の時間変化を調整する。第1提示部46が、調整協力可能な度合いが最も低い分類に属する各需要家に対して、予測したエネルギー需要の時間変化を提示する。第2提示部48が、調整協力可能な度合いが最も高い分類に属する各需要家に対して、調整協力予定率の時間変化に基づいて、予測したエネルギー需要の時間変化を調整し、提示する。第3提示部50が、残りの分類に属する各需要家に対して、残りのエネルギー需要の時間変化を、予測したエネルギー需要の時間変化に応じて比例按分して提示する。