(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909919
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】対物レンズ保護装置、対物レンズシステムおよびリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】26
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-502598(P2020-502598)
(86)(22)【出願日】2018年7月23日
(65)【公表番号】特表2020-526800(P2020-526800A)
(43)【公表日】2020年8月31日
(86)【国際出願番号】CN2018096594
(87)【国際公開番号】WO2019015687
(87)【国際公開日】20190124
【審査請求日】2020年3月13日
(31)【優先権主張番号】201710602722.8
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】309012351
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロ エレクトロニクス イクイプメント(グループ)カンパニー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リー シエンミン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ バオトン
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第202837812(CN,U)
【文献】
中国実用新案第201236208(CN,Y)
【文献】
特表2019−525259(JP,A)
【文献】
特表2003−532304(JP,A)
【文献】
特開2006−013502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を備え、該本体は、対向して配置される、第1の取り出しユニットと、ガス注入ユニットとを有し、該ガス注入ユニットは、ガスを送達するように構成され、該第1の取り出しユニットは、該ガス注入ユニットによって送達されるガスを取り出すように構成され、該ガス注入ユニットと該第1の取り出しユニットとの間に、少なくとも1層のエアカーテンが形成され、
ここで、前記ガス注入ユニットは、その上に複数のガス注入口が設けられたガス注入面を有し、
前記第1の取り出しユニットは、その上に複数の第1のガス取り出し口が設けられた第1のガス取り出し面を有し、
前記ガス注入面および/または前記第1のガス取り出し面は、階段状のプロファイルを有する、
ことを特徴とする対物レンズ保護装置。
【請求項2】
前記ガス注入面が、前記ガス注入ユニットのガス注入方向に対して垂直である、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項3】
前記複数のガス注入口のそれぞれが、前記複数の第1のガス取り出し口の対応する1つに対応し、かつそれに対向配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項4】
前記ガス注入面と、前記第1のガス取り出し面とが、軸対称に分布されている、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項5】
前記ガス注入面が、同一平面上に位置しない複数のガス注入面部分を含み、該複数のガス注入面部分が、互いに平行である、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項6】
前記ガス注入ユニットが、さらに、複数の非ガス注入面を備え、該非ガス注入面のそれぞれが、2つの隣り合うガス注入面部分を接続するように構成され、ガス注入口を有していない、ことを特徴とする請求項5に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項7】
前記非ガス注入面の1つと、前記ガス注入面部分の対応する1つとの間の角度が、85°〜95°である、ことを特徴とする請求項6に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項8】
前記第1のガス取り出し面が、同一平面上に位置しない複数の第1のガス取り出し面部分を含み、該複数の第1のガス取り出し面部分が、互いに平行である、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項9】
前記第1の取り出しユニットが、さらに、非ガス取り出し面を備え、該非ガス取り出し面のそれぞれが、2つの隣り合うガス取り出し面部分を接続するように構成され、第1のガス取り出し口を有していない、ことを特徴とする請求項8に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項10】
前記非ガス取り出し面の1つと、前記第1のガス取り出し面との間の角度が、85°〜95°である、ことを特徴とする請求項9に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項11】
前記ガス注入ユニットが、さらに、前記複数のガス注入口のそれぞれに連通するガス吸込口を備え、前記第1の取り出しユニットが、さらに、前記複数の第1のガス取り出し口のそれぞれに連通するガス排出口を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項12】
前記本体が、さらに、環状の第2のガス取り出し面を有する第2の取り出しユニットを備え、該第2のガス取り出し面が、該本体の下面に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項13】
前記第2のガス取り出し面には、複数の第2のガス取り出し孔が設けられている、ことを特徴とする請求項12に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項14】
前記第2のガス取り出し面のガス取り出し方向が、前記ガス注入ユニットのガス注入方向と平行ではない、ことを特徴とする請求項12に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項15】
前記第2のガス取り出し面のガス取り出し方向が、前記ガス注入ユニットのガス注入方向に対して垂直である、ことを特徴とする請求項12に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項16】
前記第2の取り出しユニットが、前記第2のガス取り出し面によって、ガスが取り出される、第2の取り出しチャンバを備える、ことを特徴とする請求項12に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項17】
前記第1の取り出しユニットが、第1の取り出しチャンバを備え、該第1の取り出しチャンバと、前記第2の取り出しチャンバとが互いに連通している、ことを特徴とする請求項16に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項18】
前記第1の取り出しチャンバが、ガス排出口に連通しており、前記複数の第1のガス取り出し口を通ってガスが取り出され、該第1の取り出しチャンバへ入り、該ガス排出口を通って排出される、ことを特徴とする請求項17に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項19】
前記本体が、さらに、対物レンズを接続するように構成されかつ該本体の一側に位置する接続部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項20】
前記接続部が、ねじ式インターフェイスである、ことを特徴とする請求項19に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項21】
さらに、前記本体に接続されかつ保護対象の対物レンズと前記少なくとも1層のエアカーテンとの間に位置する、物理的保護層を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項22】
前記物理的保護層が、ガラスまたは樹脂から構成される、ことを特徴とする請求項21に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項23】
さらに、前記物理的保護層と前記本体との間のギャップをシールするように構成され、かつ該物理的保護層と該本体との間に配置される、シーリング要素を備える、ことを特徴とする請求項21に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項24】
前記本体が、一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ保護装置。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の対物レンズ保護装置を備える、ことを特徴とする対物レンズシステム。
【請求項26】
請求項25に記載の対物レンズシステムを備える、ことを特徴とするフォトリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体および光学技術の分野に関し、特に、対物レンズ保護装置、対物レンズシステムおよびフォトリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ機の重要な構成要素としての対物レンズは、製品の画像(結像)品質(imaging quality)を直接決定する。対物レンズの最下部のレンズは、通常、加工中の基板に非常に近接して(そこから約40mmの距離で)配置される。フォトリソグラフィ機を用いて露光処理を行う場合、被加工基板の表面を被覆するフォトレジストコーティングに含まれる有機溶剤が、露光の作用下で連続的にゆっくりと揮発する。フォトリソグラフィ機を連続運転すると、揮発した有機溶剤が対物レンズの下面に付着し、最下部のレンズの下面に汚染有機膜を形成し、対物レンズの光透過率を大幅に低下させ、基板の画像品質および製造品質を低下させる可能性がある。
【0003】
以上の問題点を克服するために、これまでに提案されている方法は主に以下の通りである:
【0004】
1.高い画像品質を確保するために、最下部のレンズの表面を定期的に拭いて、付着した有機汚染物を除去してもよい。しかしながら、細心の注意を払って拭き取っても、レンズのコーティング膜に悪影響を与えることは避けられず、不可逆的な損傷をもたらすことさえある。したがって、この接触方法は、頻繁に使用するには不適切であり、操作者の熟練度および他の要因によって結果が異なり、それによって、結果的に製品の均一性の制御が困難となる。
【0005】
2.対物レンズの最下部のレンズの下方に、有機溶剤のレンズ表面への付着を防止するための極薄の保護膜を有するホルダを取り付けてもよい。この方法ではレンズ汚染を効果的に防止することができるが、保護膜は、本来エネルギーの形態である光の透過(transmittance)を受けなければならず、それによって前記膜の寿命が短くなる。さらに、現在の技術によって制限されているため、極薄の保護膜は容易には取り付けることはできず、外部ガス圧の影響のために(最大15%の割合で)破断しやすい。さらに、透過光のエネルギーおよび画像品質の要件によっては、30〜60日間の使用後に保護膜を交換しなければならず、したがって、設備の継続的で効率的な運転が中断され、製造業者のユーザーコストが増大する。
【0006】
したがって、安定的かつ信頼できる方法で、レンズ汚染を継続的かつ効率的に防止することができる製造方法が求められている。
【発明の概要】
【0007】
上記に鑑みて、本願の目的は、対物レンズの容易な汚染の問題を解決するために、対物レンズ保護装置、対物レンズシステムおよびフォトリソグラフィ装置を提供することである。
【0008】
本願は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本体を含み、該本体が、対向配置される、ガス注入(injection)ユニットと第1の取り出し(抽出)(extraction)ユニットとを有する、対物レンズ保護装置を提供するものである。前記ガス注入ユニットは、ガスを送達するように構成され、前記第1の取り出しユニットは、該ガス注入ユニットによって送達されたガスを取り出す(抽出する)(extract)ように構成され、ガス注入ユニットと第1の取り出しユニットとの間に少なくとも1層のエアカーテンが形成される。
【0009】
任意に、ガス注入ユニットは、ガス注入ユニットのガス注入方向に対して垂直で、かつその上に複数のガス注入口(port)が設けられたガス注入面を有してもよく、ここで、第1の取り出しユニットは、その上に複数の第1のガス取り出し口が設けられた第1のガス取り出し面を有し、複数のガス注入口の各々は、複数の第1のガス取り出し口の対応する1つに対応し、それに対向して配置される。
【0010】
任意に、ガス注入面および第1のガス取り出し面の各々は、階段状のプロファイルを有していてもよい。
【0011】
任意に、ガス注入面および第1のガス取り出し面は、軸対称に分布(distribute)していてもよい。
【0012】
任意に、ガス注入面は、同一平面内に位置しない複数のガス注入面部分(portion)を備えていてもよく、複数のガス注入面部分は互いに平行である。
【0013】
任意に、ガス注入ユニットは、さらに、複数の非ガス注入面を備えていてもよく、非ガス注入面の各々は、2つの隣り合う(adjacent)ガス注入面部分を接続するように構成され、ガス注入口を有さず、非ガス注入面の1つと、ガス注入面部分の対応する1つとの間の角度は、85°〜95°である。
【0014】
任意に、第1のガス取り出し面は、同一平面内に位置しない複数の第1のガス取り出し面部分を備えていてもよく、複数の第1のガス取り出し面部分は互いに平行である。
【0015】
任意に、第1の取り出しユニットは、さらに、非ガス取り出し面を備えていてもよく、非ガス取り出し面の各々は、2つの隣り合うガス取り出し面部分を接続するように構成され、第1のガス取り出し口を有さず、非ガス取り出し面の1つと、第1のガス取り出し面との間の角度は、85°〜95°である。
【0016】
任意に、ガス注入ユニットは、さらに、複数のガス注入口の各々と連通するガス吸込口(inlet port)を備えていてもよく、第1の取り出しユニットは、さらに、複数の第1のガス取り出し口の各々と連通するガス排出口(outlet port)を備えていてもよい。
【0017】
任意に、本体は、さらに、環状の第2のガス取り出し面を有する第2の取り出しユニットを備えていてもよく、第2のガス取り出し面は、本体の下面に配置されてもよい。
【0018】
任意に、第2のガス取り出し面に、複数の第2のガス取り出し孔を設けてもよい。
【0019】
任意に、第2のガス取り出し面のガス取り出し方向は、ガス注入ユニットのガス注入方向と平行でなくてもよい。
【0020】
任意に、第2のガス取り出し面のガス取り出し方向は、ガス注入ユニットのガス注入方向に対して垂直であってもよい。
【0021】
任意に、第2の取り出しユニットは、第2のガス取り出し面によってガスが取り出される第2の取り出しチャンバを備えていてもよい。
【0022】
任意に、第1の取り出しユニットは、ガス排出口に連通する第1の取り出しチャンバを備えていてもよく、複数の第1のガス取り出し口を通ってガスは取り出され、第1の取り出しチャンバに入り、ガス排出口を通って排出される。そして、第1の取り出しチャンバと第2の取り出しチャンバとは、互いに連通している。
【0023】
任意に、本体は、さらに、対物レンズを接続(connect)するように構成され、該本体の一側(one side)に位置する接続部を備えていてもよい。
【0024】
任意に、前記接続部は、ねじ式インターフェイスであってもよい。
【0025】
任意に、対物レンズ保護装置は、さらに、本体に接続され、かつ保護される対物レンズと少なくとも1層のエアカーテンとの間に配置される、物理的保護層を備えていてもよい。
【0026】
任意に、物理的保護層は、ガラスまたは樹脂で作製されてもよい。
【0027】
任意に、対物レンズ保護装置は、さらに、物理的保護層と本体との間のギャップをシールするように構成され、かつ物理的保護層と本体との間に配置される、シーリング要素を備えていてもよい。
【0028】
任意に、本体を一体的に形成してもよい。
【0029】
上記課題を解決するために、本願の別の態様は、上記で定義された対物レンズ保護装置を備える対物レンズシステムを提供する。
【0030】
上記課題を解決するために、本願は、また、上記対物レンズシステムを備えるフォトリソグラフィ装置を提供する。
【0031】
本願で提供される対物レンズ保護装置は、以下の有益な利点を有する:
【0032】
1.ガス注入ユニットと取り出しユニットとの間にエアカーテンを形成する。前記装置の運転時には、風速が効果的に制御され、均一かつ密に配置された横方向のガス注入口によって、層流状態に風を維持し、それにより、エアカーテンに対して均一な流れ場を確保する。さらに、第1のガス取り出し口を用いて、レンズ全体を覆うことができるエアカーテンの層を形成することにより、下から上に揮発する有機物を効果的にブロックし、レンズに直接接触する機会を排除することができる。その結果、フォトレジストからの有機揮発物による対物レンズの汚染を防ぐことができ、対物レンズの画像品質を確保することができる。
【0033】
2.垂直な第2のガス取り出し口は、有機揮発物を取り出し、他の構成要素の汚染を軽減することができる。同様に、均一かつ密に配置された第2のガス取り出し口は、取り出しガス流の流れ場を効果的に制御することができ、それにより、エアカーテンを乱すことなく、揮発性物質をシステムから取り出すことができる。
【0034】
3.物理的保護層は、揮発性汚染物質とレンズとの間に接触が存在しないことを可能にする、二次的な物理的保護を提供する。
【0035】
4.ガス注入口、第1のガス取り出し口および第2のガス取り出し口は、全て、均一かつ密に配置された円形の貫通孔であり、ガス注入流およびガス取り出し流の流量を効果的に制御して、それらを層流状態に維持することができる。その結果、安定したエアカーテンを確保することができ、エアカーテンの良好な閉塞効果と十分な取り出しを証明することができる。
【0036】
5.本体は一体的に形成されているため、前記装置をよりコンパクトかつ省スペースにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1は、本願の一実施形態に係る対物レンズ保護装置の概略斜視図である。
図2aは、本願の一実施形態に係る対物レンズ保護装置の上面図である。
図2bおよび
図2cは、本願の別の実施形態に係る対物レンズ保護装置の上面図である。
図3は、
図2aのA−Aに沿った断面図である。
図4は、
図2aのB−Bに沿った断面図である。
図5は、本願の一実施形態に係る対物レンズ保護装置の正面図である。
図6は、
図5のC−Cに沿った断面図である。
【0038】
図では、
10−本体;11−ガス注入ユニット;111−ガス吸込口;112−ガス注入口;12−第1の取り出しユニット;121−ガス排出口;122−第1のガス取り出し口;123−第2のガス取り出し口;13−接続部;14−ガス流路;20−物理的保護層;30−シーリング要素;A−ガス注入面;B−非ガス注入面;C−第1のガス取り出し面;およびD−非ガス取り出し面。
【0039】
詳細な説明
本願で提案する、対物レンズ保護装置、対物レンズシステムおよびフォトリソグラフィ装置を、添付の図面および特定の実施形態を参照して、以下により詳細に説明する。本願の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより明らかになるであろう。添付の図面は、非常に簡略化された形式で示されており、必ずしも縮尺通りに示されているわけではなく、本願を説明する際の便宜および明確さを容易にすることのみを意図していることに留意されたい。
【0040】
以下の説明では、フォトリソグラフィ機を例として、対物レンズ保護装置について説明するが、前記装置の用途は、フォトリソグラフィ機に限定されるものではなく、同様の汚染防止ニーズを有する様々なタイプの装置も含むものである。
【0041】
図1〜
図6を参照すると、一実施形態では、提供される対物レンズ保護装置は、ガス注入ユニット11および第1の取り出しユニット12を有する本体10を含む。ガス注入ユニット11と、第1の取り出しユニット12との間には、少なくとも1つのエアカーテンを形成するための空間がある。本発明者らは、流れるガス流としてのエアカーテンが、隔離および保護に効果的であることを研究により見出した。前記装置を対物レンズの下に配置すると、基板のフォトリソグラフィ機へのエッチングプロセス中に、シリコン基板表面の有機溶剤が上方に揮発した状態で、対物レンズ表面まで上昇する揮発性有機溶剤を、エアカーテンがブロックすることができる。形成されたエアカーテンは、対物レンズの表面に対して、平行であってもよいし、1°〜5°の角度でわずかに傾斜していてもよい。本体10は、対物レンズおよび/または他の構成要素の組み立てまたは動作に影響を与えない限り、任意の適切な構造およびサイズを有することができる。当業者であれば、特定の条件に応じて、本体10の構造およびサイズを設計することができ、本願は、この点に関しては特に限定されない。
【0042】
さらに、
図2を参照すると、ガス注入ユニット11は、ガス注入面Aを有することができ、第1の取り出しユニット12は、第1のガス取り出し面Cを有することができる。ガス注入面Aと、第1のガス取り出し面Cとの間に、少なくとも1つのエアカーテンが形成される。より均一なエアカーテンを得るために、ガス注入面Aは、第1のガス取り出し面Cに対向して配置されていてもよい。ガス注入ユニット11は、ガス吸込口111(
図4参照)および複数のガス注入口112を有していてもよい。ガス吸込口111は、外部のガス源を接続するように構成されていてもよい。複数のガス注入口112は、ガス注入面Aに均一に分布していてもよく、複数のガス注入口112のそれぞれは、ガス吸込口111に連通している。第1の取り出しユニット12は、ガス排出口121(
図3参照)と、複数の第1のガス取り出し口122とを有していてもよい。複数の第1のガス取り出し口122は、第1のガス取り出し面Cに均一に分布している。複数の第1のガス取り出し口122の各々は、ガス排出口121と連通している。ガス排出口121は、取り出し機器に接続するように構成されていてもよい。第1のガス取り出し面Cに配置される複数の第1のガス取り出し口122はそれぞれ、複数のガス注入口112の対応する1つに対応し、対向しているか、あるいは、複数の第1のガス取り出し口122および複数のガス注入口112は、エアカーテンを維持できる他の態様で配置されている。第1のガス取り出し口122は、ガス注入口112からのガスを吸引して、対物レンズ表面の一側に安定したエアカーテンを形成するように、均一かつ横方向に分布していてもよい。したがって、エアカーテンの均一なカバー領域を確保することができる。形成された安定したエアカーテンは、対物レンズの表面に対して平行であってもよいし、対物レンズの表面に対して角度を有していてもよく、実際の状況に応じて、当業者が選択することができる。具体的には、複数の第1のガス取り出し口122および複数のガス注入口112はそれぞれ、直径が0.5mm〜1mmの範囲の円形の貫通孔である。好ましくは、複数のガス注入口112は均一に分布し、複数の第1のガス取り出し口122は均一に分布する。
【0043】
第1の取り出しユニット12は、第1の取り出しチャンバ(不図示)を含むことができる。この場合、ガス排出口121を第1の取り出しチャンバに連通させ、ガスを第1のガス取り出し口122を介して第1の取り出しチャンバに導入し、ガス排出口121から排出するようにしてもよい。
【0044】
図2a〜2cを参照すると、ガス注入面Aおよび/または第1のガス取り出し面Cは、階段状であってもよい。ガス注入面Aは、同一平面内に位置しない複数のガス注入面部分を含んでいてもよく、複数のガス注入面部分は、互いに平行である。ガス注入面Aおよび/または第1のガス取り出し面Cは、
図2a〜2cに示すように、水平方向に階段状のプロファイルを有し、複数のガス注入面部分が、同一の垂直方向(vertical direction)を有し、少なくとも2つのガス注入面部分が、ガス注入方向に平行な水平軸上の異なる位置に位置していてもよいし、または、垂直方向に階段状のプロファイルを有し、少なくとも2つのガス注入面部分が、垂直方向において異なる位置に位置し、少なくとも2つのガス注入面部分が、ガス注入方向に平行な水平軸上の異なる位置に位置していてもよい。ここで、上記同一または異なる位置とは、対応する方向の座標のみに基づくものであり、上記技術的解決策は、当業者であれば、実際の用途に応じて変更することができる。
【0045】
ガス注入ユニットは、さらに、非ガス注入面Bを含むことができる。非ガス注入面Bには、ガス注入口が形成されていない。非ガス注入面Bの1つと、ガス注入面Aの対応する1つとの間の角度は、85°〜95°の範囲であり、好ましくは90°である。もちろん、本願は、90°に限定されず、他の角度も利用可能である。
【0046】
ガス注入面Aおよび/または第1のガス取り出し面Cは、対称(例えば、軸対称)に分布していてもよく、ガス注入面Aは、ガス注入ユニット11のガス注入方向に対して垂直であってもよい。第1の取り出しユニット12は、第1のガス取り出し面Cを有していてもよい。第1のガス取り出し面Cには、第1の取り出し口122が設けられており、ガス注入ユニット11のガス注入方向に対して垂直である。第1のガス取り出し面Cは、同一平面内にない、複数の第1のガス取り出し面部分を含んでいてもよい。複数の第1のガス取り出し面部分は、互いに平行である。第1の取り出しユニット12はまた、非ガス取り出し面Dを有していてもよい。非ガス取り出し面Dには、第1のガス取り出し口が形成されていない。非ガス取り出し面Dの1つと、第1のガス取り出し面Cの対応する1つとの間の角度は、85°〜95°の範囲であり、好ましくは90°である。もちろん、本願は、90°に限定されず、他の角度も利用可能である。
【0047】
さらに、本体10はまた、第2のガス取り出し面を有する第2の取り出しユニット(不図示)を含むことができる。第2のガス取り出し面は、環状でかつ水平面に平行であってもよい。第2のガス取り出し面は、本体10の下面に位置してもよく、複数の第2のガス取り出し口123は、第2のガス取り出し面上に均一に分布していてもよい。第2のガス取り出し面に形成される複数の第2のガス取り出し口123の各々は、ガス排出口121に連通していてもよい。第2の取り出し面に分布された複数の第2のガス取り出し口123は、形成されたエアカーテンを取り囲む。第2のガス取り出し面のガス取り出し方向は、ガス注入ユニットのガス注入方向と平行でなくてもよい。本願の別の実施形態では、第2のガス取り出し面のガス取り出し方向は、ガス注入ユニットのガス注入方向に対して垂直であってもよい。
【0048】
第2のガス取り出し口123の開口方向は、基板の周辺で揮発性物質を含むガス流を吸引するために対物レンズとは反対方向を向いているため、揮発性物質を完全に排出することができ、レンズまたは他の構成要素を汚染物質から効果的に防ぐことができる。第2の取り出しユニットは、第2の取り出しチャンバを備えることができる。ガスは、最終的に装置から排出される前に、第2のガス取り出し口を介して第2の取り出しチャンバに取り出される。第2の取り出しチャンバおよび第1の排気チャンバは、別々に配置されてもよいし、または組み込まれて単一の取り出しチャンバを形成してもよい。具体的には、本体10は、中空構造であってもよい。本体10内には、ガス流路14(すなわち、第2の取り出しチャンバ)が設けられている。ガス流路14は、全ての第2のガス取り出し口123を第1の取り出しユニット12に連通させる。
【0049】
具体的には、第2のガス取り出し口123は、直径が0.5mm〜1mmの範囲の円形の貫通孔であってもよく、全ての第2のガス取り出し口123は、本体10に均一に分布している。
図1に示すように、本体10は、環状シリンダーとすることができ、垂直方向に分布する全ての第2のガス取り出し口123は、本体の周囲に周方向に分布するため、エアカーテンは、第2のガス取り出し口123によって取り囲まれ、揮発性物質が、エアカーテンの上方に配置された対物レンズに到達するのを防いでいる。ガス注入ユニット11および第1の取り出しユニット12は、本体10の内側に位置し、対向して配置される。
【0050】
さらに、ガス注入ユニット11のガス注入面は、本体10の環状シリンダーに適合する階段状のプロファイルを有していてもよく、全てのガス注入口112は、階段状のプロファイル上に分布していてもよい。したがって、第1の取り出しユニット12の第1のガス取り出し面は、階段状のプロファイルを有しており、全ての第1のガス取り出し口122は、この階段状のプロファイル上に分布している。ガス注入面および第1のガス取り出し面は、対物レンズの作業領域(光路)と相互作用しなくてもよい。
【0051】
図3に示すように、本体10は、さらに、対物レンズ保護装置と対物レンズとの接続を容易にするための接続部13を備えていてもよい。接続部13は、対物レンズを接続するように構成されてもよく、本体部10の一側に形成されていてもよい。任意に、接続部13は、ねじ式インターフェイスであってもよい。
【0052】
この実施形態によれば、本体10は、3次元(3D)印刷により製造可能な一体構造であってもよい。機械組立と比較して、一体構造は、装置の軽量化および小型化を達成するために、サイズの大幅な縮小を可能にする。
【0053】
さらに、この実施形態によれば、対物レンズ保護装置は、さらに、本体10に接続され、少なくとも1つのエアカーテンをカバーする、物理的保護層20を備えることができる。具体的には、本体10の一側には、物理的保護層20にマッチングしたサイズを有する環状溝を備えていてもよい。したがって、物理的保護層20は、環状溝内に取り付けることができる。好ましくは、物理的保護層20は、ガラスまたは樹脂、特に、円形の保護ガラスから作製される。
【0054】
さらに、
図3および
図4に示すように、物理的保護層20と本体10との間には、物理的保護層20と本体10との間の空間をシールするシーリング要素30が配置されている。
【0055】
この実施形態で提供される対物レンズ保護装置の使用方法は、以下の通りである:フォトリソグラフィ機を起動して露光処理を行う前に、本体10に関連する、取り出し機器および外部ガス源を作動させる;さらに、機械の停止が必要な場合には、フォトリソグラフィ機内のレンズおよび他の構成要素を汚染から保護するために、本体10に関連する、ガス吹き込み装置や取り出し機器を、最後に停止させるか、または、ある一定期間、適切には約12時間、運転し続ける必要がある。
【0056】
本願はまた、上述した対物レンズ保護装置を含む対物レンズシステムを提供する。対物レンズ保護装置は、対物レンズシステムの一端に配置され、対物レンズシステムに接続される。
【0057】
本願はまた、フォトリソグラフィ装置を提供する。フォトリソグラフィ装置の各サブシステムについては、当該技術分野における周知の事項であり、本明細書において詳細な説明は省略する。フォトリソグラフィ装置は、上述したような対物レンズ保護装置を搭載した対物レンズシステムを含む。対物レンズ保護装置は、フォトリソグラフィ装置の作業ステージと対物レンズシステムとの間に配置され、露光および他のプロセス中に、作業ステージまたはワークピースからのガス、液滴または他のタイプの汚染物質から対物レンズシステムを保護する。
【0058】
要約すると、本願の対物レンズ保護装置は、以下の利点を提供する:
【0059】
1.ガス注入ユニットと取り出しユニットとの間に、エアカーテンが形成される。装置の運転時には、均一かつ密に配置された横方向のガス注入口によって、風が層流状態に保たれるように、風速が効果的に制御されており、それによって、エアカーテンに対して均一な流れ場が確保される。さらに、第1のガス取り出し口を用いて、レンズ全体をカバーできるエアカーテンの層を形成することにより、下から上に揮発する有機物を効果的にブロックし、レンズに直接接触する機会を排除できる。その結果、フォトレジストからの有機揮発物による対物レンズの汚染を防止することができ、対物レンズの画像(結像)品質を確保することができる。
【0060】
2.垂直な第2のガス取り出し口は、有機揮発物を取り出して、他の構成要素の汚染を軽減することができる。同様に、均一かつ密に配置された第2のガス取り出し口は、取り出しガス流の流れ場を効果的に制御することができ、それにより、エアカーテンを乱すことなく、揮発性物質をシステムから取り出すことができる。
【0061】
3.物理的保護層は、揮発性汚染物質とレンズとの間に接触が存在しないことを可能にする、二次的物理的保護を提供する。
【0062】
4.ガス注入口、第1のガス取り出し口および第2のガス取り出し口は、いずれも均一かつ密に配置された円形の貫通孔であり、ガス注入流およびガス取り出し流の流量を効果的に制御して、それらを層流状態に維持することができる。その結果、安定したエアカーテンを確保することができ、エアカーテンの良好な閉塞効果と十分な取り出しを証明することができる。
【0063】
5.本体が一体的に形成されているため、装置をよりコンパクトおよび省スペースにすることができる。
【0064】
本明細書に開示される実施形態は、漸進的に説明されており、各実施形態の説明は、他の実施形態との相違点に焦点を当てている。同一または類似の特徴について、実施形態間で参照を行うことができる。実施形態に開示されるシステムは、実施形態で開示される方法に対応するので、その説明は比較的簡略化されており、詳細については、その方法の説明を参照することができる。
【0065】
上記の説明は、本願のいくつかの好ましい実施形態に過ぎず、いかなる意味においても本願の範囲を限定することを意図するものではない。上記の開示に基づいて当業者が行ったあらゆる変更および修正は、添付の特許請求の範囲の保護範囲に含まれる。