(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の樹脂層と、前記複数の樹脂層のうちの任意の層の各々に配設される複数の電子部品と、金属微粒子を含有する金属含有液へのレーザ照射により形成され、前記複数の電子部品を電気的に接続する複数の配線とにより構成される回路を設計するための情報処理装置であって、
N層目の樹脂層に配設される配線が設計される際に、前記N層目より下層の樹脂層に配設される電子部品の位置を、配線形成禁止領域として表示装置に表示させる情報処理装置。
前記N層目より下層の樹脂層に配設される電子部品の外縁に、前記金属含有液に照射されるレーザのスポット径に応じた幅の領域を付加した状態で、前記配線形成禁止領域を前記表示装置に表示させる請求項1に記載の情報処理装置。
前記N層目より下層の樹脂層のうちの任意に選択された樹脂層に配設される電子部品の位置を、前記配線形成禁止領域として前記表示装置に表示させる請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に回路形成装置10を示す。回路形成装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、装着ユニット26と、制御装置(
図2参照)27を備える。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット24と装着ユニット26とは、回路形成装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0009】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ(
図2参照)38を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36がX軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されており、X軸方向に移動可能とされている。そして、Y軸スライドレール50の一端部が、X軸スライダ36に連結されている。そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ(
図2参照)56を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0010】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基板が載置される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置された基板のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、基板が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60を昇降させる。
【0011】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基板(
図3参照)70の上に配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド(
図2参照)76を有しており、基台60に載置された基板70の上に、金属インクを線状に吐出する。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものである。なお、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。
【0012】
焼成部74は、レーザ照射装置(
図2参照)78を有している。レーザ照射装置78は、基板70の上に吐出された金属インクにレーザを照射する装置であり、レーザが照射された金属インクは焼成し、配線が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属製の配線が形成される。
【0013】
また、第2造形ユニット24は、ステージ52の基台60に載置された基板70の上に樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、吐出部85と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド(
図2参照)88を有しており、基台60に載置された基板70の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。なお、インクジェットヘッド88は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0014】
吐出部85は、ディスペンスヘッド(
図2参照)89を有しており、基台60に載置された基板70の上に導電性紫外線硬化樹脂を吐出する。導電性紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂に、金属微粒子が分散されたものである。そして、紫外線の照射により樹脂が硬化し、収縮することで、金属微粒子が密着し、導電性紫外線硬化樹脂が導電性を発揮する。なお、導電性紫外線硬化樹脂の粘度は、金属インクと比較して、比較的高いため、ディスペンスヘッド89は、インクジェットヘッド76のノズルの径より大きな径の1個のノズルから導電性紫外線硬化樹脂を吐出する。なお、ディスペンスヘッド89は、例えば、スタンプにてペースト転写する転写ヘッドでもよく、導電性紫外線硬化樹脂は、例えば、導電性熱硬化性樹脂でもよい。
【0015】
硬化部86は、平坦化装置(
図2参照)90と照射装置(
図2参照)92とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一させる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂、若しくは、導電性紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が形成され、基板70の上に吐出された導電性紫外線硬化樹脂が硬化し、配線が形成される。
【0016】
また、装着ユニット26は、ステージ52の基台60に載置された基板70の上に電子部品(
図4参照)96を装着するユニットであり、供給部100と、装着部102とを有している。供給部100は、テーピング化された電子部品96を1つずつ送り出すテープフィーダ(
図2参照)110を複数有しており、供給位置において、電子部品96を供給する。なお、供給部100は、テープフィーダ110に限らず、トレイから電子部品96をピックアップして供給するトレイ型の供給装置でもよい。また、供給部100は、テープ型とトレイ型との両方、あるいはそれ以外の供給装置を備えた構成でもよい。
【0017】
装着部102は、装着ヘッド(
図2参照)112と、移動装置(
図2参照)114とを有している。装着ヘッド112は、電子部品96を吸着保持するための吸着ノズル(
図4参照)118を有する。吸着ノズル118は、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品96を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品96を離脱する。また、移動装置114は、テープフィーダ110による電子部品96の供給位置と、基台60に載置された基板70との間で、装着ヘッド112を移動させる。これにより、装着部102では、テープフィーダ110から供給された電子部品96が、吸着ノズル118により保持され、その吸着ノズル118によって保持された電子部品96が、基板70に装着される。
【0018】
また、制御装置27は、
図2に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122とを備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、レーザ照射装置78、インクジェットヘッド88、ディスペンスヘッド89、平坦化装置90、照射装置92、テープフィーダ110、装着ヘッド112、移動装置114に接続されている。コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26の作動が、コントローラ120によって制御される。
【0019】
回路形成装置10では、上述した構成によって、基板70上に電子部品96が装着され、配線が形成されることで、回路が形成される。具体的には、ステージ52の基台60に基板70がセットされ、そのステージ52が、第2造形ユニット24の下方に移動される。そして、第2造形ユニット24において、
図3に示すように、基板70の上に樹脂積層体130が形成される。樹脂積層体130は、電子部品96を装着するためのキャビティ132を有しており、インクジェットヘッド88からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への照射装置92による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。
【0020】
詳しくは、第2造形ユニット24の第2印刷部84において、インクジェットヘッド88が、基板70の上面に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。この際、インクジェットヘッド88は、基板70の上面の所定の部分が概して矩形に露出するように、紫外線硬化樹脂を吐出する。続いて、紫外線硬化樹脂が薄膜状に吐出されると、硬化部86において、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂が平坦化装置90によって平坦化される。そして、照射装置92が、その薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に薄膜状の樹脂層133が形成される。
【0021】
続いて、インクジェットヘッド88が、その薄膜状の樹脂層133の上の部分にのみ紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。つまり、インクジェットヘッド88は、基板70の上面の所定の部分が概して矩形に露出するように、薄膜状の樹脂層133の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。そして、平坦化装置90によって薄膜状の紫外線硬化樹脂が平坦化され、照射装置92が、その薄膜状に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層133の上に薄膜状の樹脂層133が積層される。このように、基板70の上面の概して矩形の部分を除いた薄膜状の樹脂層133の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層133が積層されることで、キャビティ132を有する樹脂積層体130が形成される。
【0022】
上述した手順により樹脂積層体130が形成されると、ステージ52が装着ユニット26の下方に移動される。装着ユニット26では、テープフィーダ110により電子部品96が供給され、その電子部品96が装着ヘッド112の吸着ノズル118によって、保持される。そして、装着ヘッド112が、移動装置114によって移動され、吸着ノズル118により保持された電子部品96が、
図4に示すように、樹脂積層体130のキャビティ132の内部に装着される。なお、樹脂積層体130の高さ寸法と、電子部品96の高さ寸法とは略同じとされている。
【0023】
電子部品96がキャビティ132の内部に装着されると、ステージ52が第2造形ユニット24の下方に移動され、
図5に示すように、キャビティ132の隙間、つまり、キャビティ132を区画する内壁面と電子部品96との間に、樹脂積層体150が形成される。なお、樹脂積層体150は、樹脂積層体130と同様に、インクジェットヘッド88による紫外線硬化樹脂の吐出と、照射装置92による紫外線の照射とが繰り返されることで、形成される。また、樹脂積層体150の高さ寸法は、樹脂積層体130および電子部品96の高さ寸法と略同じとされている。これにより、樹脂積層体130の上面と樹脂積層体150の上面と電子部品96の上面とは、面一とされる。
【0024】
次に、キャビティ132の隙間に樹脂積層体150が形成されると、ステージ52は第1造形ユニット22の下方に移動される。そして、第1印刷部72において、インクジェットヘッド76によって、金属インクが樹脂積層体130,150の上に、回路パターンに応じて線状に吐出される。そして、金属インクへのレーザ照射によって金属インクを焼成させ、電子部品96を電気的に接続するための配線が形成される。
【0025】
ただし、電子部品96へのレーザ照射を防止するべく、金属インクは、電子部品96の上に吐出されないように、電子部品96の近傍まで線状に吐出される。これは、電子部品96へのレーザ照射による電子部品96の損傷を防止するためである。また、電子部品96に照射されたレーザが電子部品96に吸収され、電子部品96の上に吐出された金属インクが適切に焼成せずに、結線不良が生じる虞があるためである。そして、金属インクが電子部品96の近傍まで吐出されると、焼成部74において、レーザ照射装置78によって金属インクにレーザが照射される。これにより、金属インクが焼成し、
図6に示すように、電子部品96の近傍まで延び出す配線166a,bが形成される。
【0026】
次に、ステージ52が第2造形ユニット24の下方に移動され、吐出部85において、ディスペンスヘッド89が、
図7に示すように、電子部品96の電極162と、配線166a,bとを繋ぐように、導電性紫外線硬化樹脂170を吐出する。そして、硬化部86において、照射装置92が、導電性紫外線硬化樹脂170に紫外線を照射する。これにより、導電性紫外線硬化樹脂170が導電性を発揮し、導電性紫外線硬化樹脂170により、電子部品96の電極162と、配線166a,bとが電気的に結線される。
【0027】
続いて、
図8に示すように、樹脂積層体130の上に、2層目の樹脂積層体180が形成される。樹脂積層体180は、樹脂積層体130と同様に、インクジェットヘッド88からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への照射装置92による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。なお、樹脂積層体180には、キャビティ182とビア穴184とが形成される。キャビティ182とビア穴184とは、樹脂積層体130のキャビティ132と同様の手法により形成されるが、ビア穴184の内寸は、キャビティ182の内寸より小さくされている。また、ビア穴184の底部には、配線166bの一部が露出している。
【0028】
次に、装着ユニット26において、
図9に示すように、2層目の樹脂積層体180のキャビティ182の内部に、電子部品190が装着され、第2造形ユニット24において、キャビティ182の隙間、つまり、キャビティ182を区画する内壁面と電子部品190との間に、樹脂積層体192が形成される。なお、電子部品190の装着手法、及び、樹脂積層体192の形成手法は、電子部品96の装着手法、及び、樹脂積層体150の形成手法と同じである。
【0029】
続いて、第1造形ユニット22において、2層目樹脂積層体のビア穴184の内部に金属インクが吐出され、その金属インクにレーザが照射されることで、
図10に示すように、ビア穴184の内部に配線196が形成される。これにより、配線196は、下端において、1層目の樹脂積層体130に形成された配線166bと結線され、上端において、2層目の樹脂積層体180の上面に露出する。さらに、配線196の上端から電子部品190の近傍まで、金属インクが吐出され、その金属インクにレーザが照射されることで、配線198aが形成される。これにより、配線196と配線198aとが結線される。また、電子部品190を挟んで配線198aの反対側に、金属インクが線状に吐出され、その金属インクにレーザが照射されることで、配線198bが形成される。
【0030】
次に、第2造形ユニット24において、電子部品190の電極199と、配線198a,bとを繋ぐように、導電性紫外線硬化樹脂200が吐出される。そして、導電性紫外線硬化樹脂200に紫外線が照射されることで、導電性紫外線硬化樹脂200が導電性を発揮し、電子部品190の電極199と配線198a,bとが結線される。これにより、1層目の樹脂積層体130に配設された電子部品96と、2層目の樹脂積層体180に配設された電子部品190とが、配線166等及び導電性紫外線硬化樹脂170等により、電気的に接続される。
【0031】
続いて、第2造形ユニット24において、
図11に示すように、樹脂積層体180の上に、3層目の樹脂積層体210が形成される。そして、樹脂積層体210には、キャビティ212とビア穴214とが形成されている。なお、樹脂積層体210は、樹脂積層体180と同様に形成される。
【0032】
次に、装着ユニット26において、
図12に示すように、3層目の樹脂積層体210のキャビティ212の内部に、電子部品220が装着され、第2造形ユニット24において、キャビティ212を区画する内壁面と電子部品220との間に、樹脂積層体218が形成される。そして、金属インクの吐出とレーザ焼成とにより、
図13に示すように、ビア穴214の内部に配線222が形成され、3層目の樹脂積層体210の上面に配線224a,bが形成される。また、電子部品220の電極226と、配線224a,bとを繋ぐように、導電性紫外線硬化樹脂228が吐出され、導電性紫外線硬化樹脂228への紫外線の照射により導電性紫外線硬化樹脂228が導電性を発揮する。これにより、2層目の樹脂積層体180に配設された電子部品190と、3層目の樹脂積層体210に配設された電子部品220とが、配線198等及び導電性紫外線硬化樹脂200等により、電気的に接続される。
【0033】
このように、回路形成装置10は、基板70の上に多層的な回路を形成することが可能とされている。しかしながら、多層的な回路では、上層での配線形成時において、その配線が形成される層より下方の層に配設された電子部品等に、レーザが照射される虞がある。具体的に、上記手順で形成された多層的な回路300を、上方からの視点において示す
図14を用いて説明する。なお、回路300では、1層目の樹脂積層体130に配設された電子部品96と、2層目の樹脂積層体180に配設された電子部品190と、3層目の樹脂積層体210に配設された電子部品220とが、上方からの視点において、1直線上に配置されている。
【0034】
そして、回路300の3層目の樹脂積層体210に、配線224aが形成される際に、一般的に、ビア穴214の内部に形成された配線222と、3層目の樹脂積層体210に配設された電子部品220とを最短距離で接続するように、樹脂積層体210の上面に金属インクが吐出される。この際、3層目の樹脂積層体210に吐出された金属インクの下方には、1層目の樹脂積層体130の電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170と、2層目の樹脂積層体180の電子部品190及び導電性紫外線硬化樹脂200とが位置する。
【0035】
このため、3層目の樹脂積層体210に吐出された金属インクにレーザが照射されると、3層目の樹脂積層体210を介して、2層目の樹脂積層体180の電子部品190及び導電性紫外線硬化樹脂200にも照射される。また、3層目の樹脂積層体210及び2層目の樹脂積層体180を介して、1層目の樹脂積層体130の電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170にも、レーザが照射される。そして、電子部品及び導電性紫外線硬化樹脂は、レーザ耐性が低く、樹脂積層体は、比較的薄いため、電子部品及び導電性紫外線硬化樹脂へのダメージを考慮すると、電子部品及び導電性紫外線硬化樹脂へのレーザ照射は好ましくない。
【0036】
このようなことに鑑みて、回路形成装置10で形成される回路の設計時において、上層での配線形成時に、その配線が形成される層より下方の層に配設された電子部品等に、レーザが照射されないように、回路設計が行われる。具体的には、回路形成装置10で形成される回路は、設計プログラム(
図15参照)350がインストールされた情報処理装置(
図15参照)352によって作成される。情報処理装置352は、ディスプレイ(
図15参照)354に接続されており、設計プログラム350の処理に従って、回路の各層を設計するための画面が、ディスプレイ354に表示される。
【0037】
例えば、回路300の1層目の樹脂積層体130が設計される場合は、
図15に示すように、1層目設計画面360が、ディスプレイ354に表示される。この1層目設計画面360では、電子部品96,導電性紫外線硬化樹脂170,配線166a,bの配置が、カーソル等のユーザ操作により設計される。なお、1層目の樹脂積層体130の下方に、電子部品等は配置されない。このため、ユーザは、1層目設計画面360において、1層目の樹脂積層体130の何れの位置にでも、電子部品96,導電性紫外線硬化樹脂170,配線166a,bの配置を設計することができる。
【0038】
また、回路300の2層目の樹脂積層体180が設計される場合は、
図16に示すように、2層目設計画面370が、ディスプレイ354に表示される。この2層目設計画面370では、電子部品190,導電性紫外線硬化樹脂200,配線196,198a,bの配置が、ユーザ操作により設計される。なお、2層目の樹脂積層体180の下方には、1層目の樹脂積層体130が位置しており、その樹脂積層体130への電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170の配置設計が、1層目設計画面(
図15参照)360において行われている。このため、1層目設計画面360において設計された電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170の配置予定位置を含む配線形成禁止領域372が、2層目設計画面370に表示される。
【0039】
配線形成禁止領域372は、配線の配置設計を禁止する領域であり、ユーザ操作により、配線形成禁止領域372において、配線の配置設計を行うことができないように構成されている。なお、配線形成禁止領域372は、電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170の配置予定位置を含み、その配置予定位置の外縁に所定の幅の領域が付加された状態で表示される。これは、金属インクにレーザが照射されるレーザのスポット径を考慮し、電子部品等へのレーザの照射を確実に防止するためである。
【0040】
詳しくは、レーザの照射範囲は、一般的に、円形とされており、その円の直径がレーザのスポット径と呼ばれる。このため、レーザの中心と電子部品の外縁とが離れている場合であっても、レーザの中心と電子部品の外縁との間の距離が、スポット径の半分、つまり、半径以下である場合には、電子部品の外縁にレーザが照射される。そこで、配線形成禁止領域372は、電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170の配置予定位置の外縁に、レーザのスポット径の半分に相当する幅L
1の領域が付加された状態で表示される。
【0041】
なお、レーザのスポット径は、D4σ幅,D86幅,有効ビーム径,10/90ナイフエッジ幅等を採用することが可能である。D4σ幅は、ISOの国際標準規格であり、所定の式を用いることで演算されるが、この式は、公知の式であるため、記載を省略する。また、D86幅は、ビームプロファイルの重心を中心として、ビームパワーの86%が含まれる円の直径として定義される。このため、ビームプロファイルの重心から円形に領域を増加させていき、領域内のトータルのビームパワーが86%になったところで、円の直径を算出する。そして、この直径がD86幅となる。
【0042】
また、有効ビーム径は、測定されたビームのピーク強度に対して特定のパーセンテージ以上の強度をもつすべてのピクセルの面積と等しい面積の円の直径として定義される。このため、例えば、特定のパーセンテージとして、70%が選択された場合に、ピーク強度の70%の強度以上の全てのピクセルの総数が、有効ビーム径の計算に用いられる。そして、ピクセルの総数が演算されると、センサーのピクセルピッチは既知であるため、このピクセル総数と同じ面積の円に置き換えられ、その円の直径が有効ビーム径となる。
【0043】
また、10/90ナイフエッジ幅は、直行するX軸/Y軸の幅の定義の一種であり、各々の軸のプロファイル断面の総エネルギーに対して、積算エネルギーが10%と90%となる2点の間の距離で定義される。ちなみに、レーザの照射範囲が円形である場合に、スポット径として、D4σ幅を採用することが好ましく、レーザの照射範囲が非対称で複雑である場合に、スポット径として、D86幅を採用することが好ましい。また、レーザの照射範囲が矩形である場合、つまり、レーザがラインビームである場合に、スポット径として、10/90ナイフエッジ幅を採用することが好ましい。なお、上記D4σ幅など以外に、簡易的に、レーザの最大強度から、最大強度の1/e
2まで下がる幅を、スポット径として採用してもよい。
【0044】
このように、レーザの照射範囲の形状に応じたスポット径に基づいて、配線形成禁止領域372における電子部品等の配置予定位置の外縁に付加される領域(以下、「外縁領域」と記載する)の幅L
1が演算される。さらに言えば、レーザの拡散をも考慮して、外縁領域の幅L
1が演算される。詳しくは、レーザは拡散するため、焦点の有った状態から、照射距離が長くなると、スポット径が大きくなる。このため、焦点の有った状態でのスポット径の1/2、つまり、半径を、R
0とし、焦点から上下方向に距離Z、ズレた状態でのスポット径の1/2、つまり、半径を、R
Zとすると、R
0とR
Zとは、下記式により示される。
R
Z=R
0[1+{(λz)/(πR
02)}
2]
1/2
ここで、λは、レーザの波長である。
【0045】
そこで、上記式に基づいて、配線形成禁止領域372における外縁領域の幅L
1が演算されることで、レーザの拡散をも考慮して、配線の配置設計を行うことができる。これにより、配線へのレーザ照射時において、その配線が形成される層より下方の層に配設された電子部品等へのレーザ照射を確実に防止することが可能となる。つまり、2層目設計画面370において、ユーザが、配線形成禁止領域372を避けて、配線196,198a,bの配置を設計することで、2層目の樹脂積層体180の作成時において、1層目の樹脂積層体130に配置された電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170へのレーザ照射を確実に防止することが可能となる。
【0046】
なお、2層目設計画面370では、ビア穴184の内部に形成された配線196と、電子部品190との間に、配線形成禁止領域372は位置していない。このため、ユーザは、2層目設計画面370において、配線形成禁止領域372に関わらず、ビア穴184の内部に形成された配線196と、電子部品190とを最短距離で接続するように、配線198aを配置設計すればよい。
【0047】
また、回路300の3層目の樹脂積層体210が設計される場合は、
図17に示すように、3層目設計画面380が、ディスプレイ354に表示される。この3層目設計画面380では、電子部品220,導電性紫外線硬化樹脂228,配線222,224a,bの配置が、ユーザ操作により設計される。なお、3層目の樹脂積層体210の下方には、1層目の樹脂積層体130及び2層目の樹脂積層体180が位置している。そして、1層目の樹脂積層体130への電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170の配置設計が、1層目設計画面(
図15参照)360において行われている。また、2層目の樹脂積層体180への電子部品190及び導電性紫外線硬化樹脂200の配置設計が、2層目設計画面(
図16参照)370において行われている。このため、1層目設計画面360において設計された電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170の配置予定位置を含む配線形成禁止領域382と、2層目設計画面370において設計された電子部品190及び導電性紫外線硬化樹脂200の配置予定位置を含む配線形成禁止領域384とが、3層目設計画面380に表示される。
【0048】
なお、配線形成禁止領域382の外縁領域の幅L
2及び、配線形成禁止領域384の外縁領域の幅L
3は、上記配線形成禁止領域372の外縁領域の幅L
1と同じ手法により演算される。ちなみに、配線形成禁止領域382の外縁領域の幅L
2は、配線形成禁止領域384の外縁領域の幅L
3より大きくされている。これは、配線形成禁止領域382に含まれる電子部品96は、配線形成禁止領域382に含まれる電子部品190より下方に配置されているためである。つまり、3層目の配線形成時におけるレーザの照射範囲が、電子部品96が配置されている1層目において、電子部品190が配置されている2層目より広くなるためである。これにより、1層目に配設されている電子部品96と、2層目に配設されている電子部品190との各々の配設高さが異なる場合であっても、確実に電子部品等へのレーザ照射を防止することが可能となる。
【0049】
つまり、3層目設計画面380では、配線形成禁止領域382及び配線形成禁止領域384が、ビア穴214の内部に形成された配線222と、電子部品220との間に位置している。このため、ユーザは、3層目設計画面380において、ビア穴214の内部に形成された配線222と、電子部品220とを最短距離で接続するように、配線224bを配置設計することができない。そこで、ユーザは、3層目設計画面380において、配線形成禁止領域382及び配線形成禁止領域384を避けて、配線224bの配置を設計する。すると、3層目の樹脂積層体210の作成時において、1層目の樹脂積層体130に配置された電子部品96及び導電性紫外線硬化樹脂170と、2層目の樹脂積層体180に配置された電子部品190及び導電性紫外線硬化樹脂200との上方を避けて、金属インクが樹脂積層体210に印刷される。これにより、3層目の樹脂積層体210の作成時において、1層目及び2層目の電子部品96,190及び導電性紫外線硬化樹脂170,200へのレーザ照射を確実に防止することが可能となる。
【0050】
ちなみに、上記実施例において、電子部品96,190,220は、電子部品の一例である。樹脂積層体130,180,210は、樹脂層の一例である。配線166,196,198,222,224は、配線の一例である。導電性紫外線硬化樹脂170,200,228は、導電部の一例である。回路300は、回路の一例である。情報処理装置352は、情報処理装置の一例である。ディスプレイ354は、表示装置の一例である。配線形成禁止領域372,382,384は、配線形成禁止領域の一例である。
【0051】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記実施例では、ディスプレイ354に配線形成禁止領域382等が表示され、ユーザが配線形成禁止領域382等を避けて、配線224b等を配置設計するが、情報処理装置352が自動的に配線形成禁止領域382等を避けて、配線224b等を配置設計してもよい。
【0052】
また、上記実施例では、N層目の配線が設計される際に、N層目より下層の全ての層に配設される電子部品等が表示されるが、N層目より下層の層のうちの選択された層に配設される電子部品等のみが表示されてもよい。つまり、例えば、3層目の配線が設計される際に、1層目と2層目とのうちの選択された層に配設される電子部品等のみが表示されてもよい。この際、通常は、3層目の直下の2層目が選択され、2層目に配設される電子部品等が表示される。これにより、レーザ照射の影響の大きい電子部品等のみを、配線形成禁止領域382等として表示することが可能となり、配線の配置設計の自由度が高くなる。
【0053】
また、上記実施例では、電子部品及び導電性紫外線硬化樹脂の配設位置が、配線形成禁止領域382に含まれるが、電子部品及び導電性紫外線硬化樹脂だけでなく、他の回路を構成する部材、例えば、電子部品等を支持するためのサポート部材の配設位置が、配線形成禁止領域に含まれてもよい。