(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6909922
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】セリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20210715BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20210715BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20210715BHJP
C01F 17/235 20200101ALI20210715BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/41
A61Q17/04
C01F17/235
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-510589(P2020-510589)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公表番号】特表2020-531504(P2020-531504A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】KR2018001129
(87)【国際公開番号】WO2019045203
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0110021
(32)【優先日】2017年8月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514140698
【氏名又は名称】カチョン ユニバーシティ オブ インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】リー ヨンチョル
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1438458(KR,B1)
【文献】
韓国登録特許第10−1437925(KR,B1)
【文献】
特表2010−531907(JP,A)
【文献】
特開平11−222421(JP,A)
【文献】
特表2016−532678(JP,A)
【文献】
特開2003−267850(JP,A)
【文献】
特開2011−012031(JP,A)
【文献】
JI, Hye-Min et al.,Efficient harvesting of wet blue-green microalgal biomass by two-aminoclay [AC]-mixture systems,Bioresource Technology,2016年 3月22日,Vol.211,pages.313-318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C09K 3/00− 3/32
C01F 1/00−17/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム−アミノクレイナノ粒子を含有するものの、
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されて、下記の化1で表されるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物。
[化1]
[H2N(CH2)3]8Si8Ce6O12(OH)4
【請求項2】
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、セリウム層状珪酸塩であることを特徴とする、
請求項1に記載のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物。
【請求項3】
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子の平均大きさは、10〜500nmであることを特徴とする、
請求項1に記載のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物。
【請求項4】
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、人間由来の繊維芽細胞(Fibroblast)に対して無毒性であることを特徴とする、
請求項1に記載のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物。
【請求項5】
セリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法であり、
(a)前駆体を有機溶媒に溶解して前駆体溶液を製造するステップ;
(b)前記(a)ステップの前駆体溶液に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane)を滴下して撹拌し反応物を得るステップ;
(c)前記(b)ステップで得られた反応物を遠心分離するステップ;
(d)前記(c)ステップの遠心分離済み反応物を洗滌乾燥するステップ;とを含み、
前記(a)ステップの前駆体は、
塩化セリウム、アセト酸セリウム、炭酸セリウム、フッ化セリウム、窒酸セリウム、硫酸セリウム、ブローム化セリウム、ヨード化セリウム、シュウ酸セリウム、過塩素酸セリウム、硫酸セリウム、及びこれらの水和物からなるグループのうち選択される1種以上であり、
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されて、下記の化1で表されることを特徴とする、
セリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法。
[化1]
[H2N(CH2)3]8Si8Ce6O12(OH)4
【請求項6】
前記(a)ステップの有機溶媒は、
メタノール、エタノール及びアセトンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、
請求項5に記載のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体溶液のセリウム(Ce)及び3−アミノプロピルトリエトキシシランの珪素(Si)は、1:0.5〜3のモル比で添加されることを特徴とする、
請求項5に記載のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(c)ステップの遠心分離は、
10〜15分間2,500〜3,000rpmで行われることを特徴とする、
請求項5に記載のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法。
【請求項9】
3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されて、下記の化1で表されるセリウム−アミノクレイナノ粒子を含有することを特徴とする、紫外線遮断化粧料組成物。
[化1]
[H2N(CH2)3]8Si8Ce6O12(OH)4
【請求項10】
前記化粧料組成物は、
溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション及びスプレーからなるグループのうち1種のものに剤形化されることを特徴とする、
請求項9に記載の紫外線遮断化粧料組成物.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドナノ物質又は単独金属酸化物ナノ粒子、例えば、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ及び酸化セリウムナノ粒子は、他のナノ粒子の間で環境及び人間の健康及び安全に対する関心を引き起こしている。工学的に合成した半導体金属酸化物のうち酸化セリウムナノ粒子は、これらの高い表面積対体積比、紫外線及び可視光吸収能、長い寿命のため、紫外線遮断剤、足の管理、軟膏、自動販売機の販売品、染料及び抗菌コーティング剤として、ペイント抗カビ剤、ガスセンサー、電子素材、光触媒として、化粧品及びバイオ医学分野におけるその使用が爆発的に増加しつつある。
【0003】
二酸化セリウム(cerium dioxide)は、セリア(ceria)又は酸化セリウムと呼ばれ、立方結晶構造を有し、希土類酸化物のうち応用性の非常に高い魅力的な材料の一つである。よって、二酸化セリウムは、燃料電池、絶縁体、研磨剤、ガスセンサー、高温酸化抵抗材料等、産業的に様々な活用可能性を有しており、且つ自動車マフラーの3元系触媒、触媒活性剤又は触媒の支持体として用いられる。
【0004】
特に、二酸化セリウム超微粉体の粉末は、可視光に対する透明性が高いだけでなく、紫外線に対する吸収能に優れており、多くの量を塗った場合に現れやすい青白い肌トン、すなわち、白濁現象に対するおそれが少なくて、自然な肌色を示すことができるため、サンクリーム又はサンブロックと呼ばれる紫外線遮断用化粧料の無機系紫外線遮断剤として用いるのに理想的な特徴を有している。
【0005】
しかし、二酸化セリウム超微粉体の粉末は、有機系物質を酸化させやすい触媒特性を有しており、紫外線遮断用化粧料にほとんど用いられていない。
【0006】
したがって、上記のような問題点を克服するために、無定形シリカ(SiO
2)を二酸化セリウムの表面にコーティングして、二酸化セリウムの触媒活性を減少させようとする研究が行われてきた。しかし、無定形シリカ(SiO
2)を二酸化セリウムの表面にコーティングする場合、紫外線遮断効果もともに低下する短所があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するために提案されたものであって、細胞に毒性がなく、紫外線遮断効果に優れたセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物及びその製造方法を提供することに目的がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、以上に言及した課題に制限されないし、言及していないさらに他の課題は、以下の記載から通常の技術者にとって明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の好ましい一実施例によるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物は、セリウム−アミノクレイナノ粒子を含有するものの、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されて、下記の化1で表されることを特徴とする。
【0010】
[化1]
[H
2N(CH
2)
3]
8Si
8Ce
6O
12(OH)
4
【0011】
一実施例において、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、セリウム層状珪酸塩であるものが好ましい。
【0012】
一実施例において、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子の平均大きさは、10〜500nmであることが好ましい。
【0013】
一実施例において、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、人間由来の繊維芽細胞(Fibroblast)に対して無毒性であるものが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい他の実施例によるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物の製造方法は、(a)前駆体を有機溶媒に溶解して前駆体溶液を製造するステップ;(b)前記(a)ステップの前駆体溶液に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane)を滴下して撹拌し反応物を得るステップ;(c)前記(b)ステップで得られた反応物を遠心分離するステップ;(d)前記(c)ステップの遠心分離済み反応物を洗滌乾燥するステップ;とを含むことを特徴とする。
【0015】
一実施例において、前記(a)ステップの前駆体は、塩化セリウム、アセト酸セリウム、炭酸セリウム、フッ化セリウム、窒酸セリウム、硫酸セリウム、ブローム化セリウム、ヨード化セリウム、シュウ酸セリウム、過塩素酸セリウム、硫酸セリウム、及びこれらの水和物からなるグループのうち選択される1種以上
【0016】
一実施例において、前記(a)ステップの有機溶媒は、メタノール、エタノール及びアセトンからなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0017】
一実施例において、前記前駆体溶液のセリウム(Ce)及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane)の珪素(Si)は、1:0.5〜3のモル比で添加されることが好ましい。
【0018】
一実施例において、前記(c)ステップの遠心分離は、10〜15分間2,500〜3,000rpmで行われることが好ましい。
【0019】
本発明の好ましい他の実施例による紫外線遮断化粧料組成物は、3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されたセリウム−アミノクレイナノ粒子を含有することを特徴とする。
【0020】
一実施例において、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、下記の化1で表されることが好ましい。
【0021】
[化1]
[H
2N(CH
2)
3]
8Si
8Ce
6O
12(OH)
4
【0022】
一実施例において、前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション及びスプレーからなるグループのうち1種であるものが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物及びその製造方法を利用すれば、従来の酸化セリウムナノ粒子と異なり、細胞毒性を減少させたセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物を提供することのできる長所がある。
【0024】
また、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物は、水に対する水溶性が高いため、従来の紫外線遮断剤組成物に比べ洗顔後、毛穴等に少なく残留する効果がある。
【0025】
また、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物は、酸化セリウムナノ粒子と異なり、子宮頚がん細胞に対する特異的毒性を示すことができ、その他正常細胞に対する毒性は、非常に低い長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例によるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物の製造方法を示した工程流れ図。
【
図2】本発明のセリウム−アミノクレイナノ粒子の化学構造を近似的に示した図面。
【
図3】
図3(a)〜(e)は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の透過電子顕微鏡写真。
【
図4】本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子のX線回折パターンを示したグラフ。
【
図5】本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の赤外線スペクトルグラフ。
【
図6】本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子のDI water及びRMPIでの流体力学的大きさ及びゼータ電位を示した図面。
【
図7】本発明の実施例及び比較例に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子、塩化セリウム及び酸化セリウムのXANES分析グラフ。
【
図8】本発明の実施例及び比較例に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子及び酸化セリウムの紫外線吸光度を示したグラフ。
【
図9】
図9aは、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による繊維母類似細胞株(WI−38)の生存率を示したグラフ。
図9bは、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による正常繊維芽細胞(CCD−986SK)の生存率を示したグラフ。
【
図10】
図10aは、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による肺癌細胞(A549)の生存率を示したグラフ。
図10bは、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による繊維母類似細胞株(WI−38)の生存率を示したグラフ。
【
図11】
図11aは、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子を動物細胞に処理した後の動物細胞の断面を撮影したイメージ。
図11bは、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子を動物細胞に処理した後の動物細胞の断面を拡大したイメージ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付の図面を参照しながら、本発明による好ましい実施例を詳説する。
【0028】
本発明の利点及び特徴、そしてそれを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。
【0029】
しかし、本発明は、以下に開示する実施例によって限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現することができる。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にして、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。また、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0030】
さらに、本発明の説明において、関連する公知の技術等が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合は、それに関する詳説は省略する。
【0031】
本発明は、セリウム−アミノクレイナノ粒子を含有するものの、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されて、下記化1で表されるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物を提供する。
【0032】
[化1]
[H
2N(CH
2)
3]
8Si
8Ce
6O
12(OH)
4
【0033】
前記セリウムは、空気中に酸化しやすい。空気中に酸化したセリウムは、酸化セリウム(CeO
2)又はセリア(ceria)と言う。
【0034】
また、前記酸化セリウム(CeO
2)は、自体として紫外線遮断性を示し、細胞に対する毒性を示すことができるが、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子とハイブリッドナノ物質(hybrid nanomaterials)を形成する場合は、細胞毒性を減少させることができる。
【0035】
前記酸化セリウム(CeO
2)が細胞に毒性を示す理由は、半導体をもって光源を受けると、活性ラジカルが生成するからである。
【0036】
したがって、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、人間由来の繊維芽細胞(Fibroblast)に対して毒性を発揮しない。
【0037】
前記化1で表される前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、マグネシウムアミノクレイに類似する構造を有し、ただし、8面体板(octahedral sheet)でマグネシウム位置にセリウムが配置して構成されたものである。
【0038】
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、板状構造であり、平均粒子大きさが10〜500nmであってもよい。
【0039】
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、ゾル−ゲル反応によって形成することができる。
【0040】
本発明の他の実施例によれば、本発明は、(a)前駆体を有機溶媒に溶解して前駆体溶液を製造するステップ;(b)前記(a)ステップの前駆体溶液に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane)を滴下して撹拌し反応物を得るステップ;(c)前記(b)ステップで得られた反応物を遠心分離するステップ;(d)前記(c)ステップの遠心分離済み反応物を洗滌乾燥するステップ;とを含むことを特徴とするセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法を提供する。
【0041】
図1は、本発明の一実施例によるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断剤組成物の製造方法を手順図に示したものである。
【0042】
図1を参照すれば、前記(a)ステップの前駆体は、塩化セリウム、アセト酸セリウム、炭酸セリウム、フッ化セリウム、窒酸セリウム、硫酸セリウム、ブローム化セリウム、ヨード化セリウム、シュウ酸セリウム、過塩素酸セリウム、硫酸セリウム、及びこれらの水和物からなるグループのうち選択される1種以上であってもよい。
【0043】
前記(a)ステップの有機溶媒は、メタノール、エタノール及びアセトンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0044】
前記前駆体溶液のセリウム(Ce)及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane)の珪素(Si)は、1:0.5〜3のモル比で添加されてもよく、好ましくは、1:2モル比である場合、反応に参加した前駆体がいずれも反応し切れてもよい。
【0045】
前記(c)ステップの遠心分離は、10〜15分間2,500〜3,000rpmで行われてもよい。
【0046】
前記(c)ステップを経た後、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、粉末状に回収されてもよい。
【0047】
その後、前記(d)ステップで遠心分離された反応物をエタノールで2〜3回洗滌した後、40〜60℃のオーブンで12〜48時間乾燥することができる。
【0048】
前記洗滌過程で不純物を除去することができ、前記乾燥条件で、セリウム−アミノクレイナノ粒子を粉末(powder)として得ることができるため、これを紫外線遮断剤組成物の形状に変形して製造するのに非常に有利である。
【0049】
本発明のさらに他の実施例によれば、本発明は、3−アミノプロピル(3−aminopropyl)で機能化されたセリウム−アミノクレイナノ粒子を含有することを特徴とする紫外線遮断化粧料組成物を提供する。
【0050】
前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、下記の化1で表されてもよい。
【0051】
[化1]
[H
2N(CH
2)
3]
8Si
8Ce
6O
12(OH)
4
【0052】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション及びスプレーからなるグループのうち1種のものに剤形化することができるものの、これに限定されるものではない。より詳細には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック又はパウダーの剤形に製造されてもよい。
【0053】
また、前記化粧料組成物に含まれる成分は、上記成分のほか、化粧料組成物に通常利用される成分を含んでいてもよく、例えば、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤、そして担体を含んでいてもよい。
【0054】
そして、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、化粧料組成物100重量%を基準として0.1〜10重量%の割合で含まれていてもよい。
【0055】
以下では、本発明を理解するため好ましい実施例を提示するが、下記実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1:セリウム−アミノクレイナノ粒子の製造
セリウム−アミノクレイナノ粒子を製造するための前駆体として、セリウム塩化水和物(CeCl
3・7H
2O)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−Aminopropyltriethoxysilane;以下、「APTES」)及びアルコールを準備した。
【0057】
セリウム塩化水和物(CeCl
3・7H
2O)である前駆体を8.4g定量して、200mLのエタノールに溶かした後、10分程混合して前駆体溶液を製造した後、20mLの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−Aminopropyltriethoxysilane;以下、「APTES」)を順次に滴下しながら撹拌した。このとき、ゾル−ゲル反応で反応物が生成され、Ce:Siのモル比は、1:2に滴定した。結果として作られる溶液は、一晩中混合されて、スラーリ状の固形を得ることができる。
【0058】
前記反応物を得て、各々のセリウム−アミノクレイナノ粒子を15分間3,000rpmで遠心分離し、このように分離したセリウム−アミノクレイナノ粒子を100mLのエタノールで1回洗滌し、60℃のオーブンに一日中乾燥した。乾燥後、各々をすり鉢に粉砕して粉末状のセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物を回収した。
【0059】
比較例1
実施例1と同様に実施するものの、前駆体としてCeCl
3・7H
2Oを用いた。
【0060】
比較例2
酸化セリウムを購入して準備した。
【0061】
比較例3
塩化セリウムを購入して準備した。
【0062】
<評価>
1.TEM分析及びXRD patterns of CeAC分析
蒸溜水に0.5mg/mL濃度で分散させたセリウム−アミノクレイナノ粒子の形態的観察を透過電子顕微鏡で観察した。
【0063】
図2は、本発明の実施例によるセリウム−アミノクレイナノ粒子の化学構造を示したものであり、
図3(a)〜(e)は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の透過電子顕微鏡写真であり、
図4は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子のX線回折パターンを示したグラフである。
【0064】
図2を参照すれば、セリウム−アミノクレイナノ粒子のイメージは、格子構造なしに、他の電子対照を有する不均質な模様を示すことを確認することができ、セリウム、シリコーン、塩素、窒素成分が確認されており、これは、セリウム−アミノクレイナノ粒子の層状珪酸塩を考慮するとき、可能である。
【0065】
図3(a)に示したTEMイメージを参照して、セリウム−アミノクレイナノ粒子が層状構造であることを確認することができ、これは、セリウム−アミノクレイナノ粒子が粘土であることを意味する。
【0066】
図4を参照すれば、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、層状珪酸塩ピークを表すことを示す。
【0067】
2.FTIR spectra,Zeta potential/hydrodynamic分析及びXANES分析
図5は、本発明に従って製造された実施例1の赤外線スペクトルグラフであり、
図6は、本発明に従って製造された実施例1のDI water及びRMPI培地での流体力学的大きさ及びゼータ電位を示したものであり、
図7は、本発明に従って製造された実施例1、比較例2及び比較例3のXANES分析グラフである。
【0068】
図6に示したように、実施例1によるセリウム−アミノクレイナノ粒子は、DI waterでは、濃度の変化にかかわらず、ゼータ電位が30〜36mVと表され、RMPI培地では、濃度にゼータ電位が増加することを確認することができる。
【0069】
また、実施例1の流体力学的大きさは、セリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度が増加するにつれて、大きさが増加することを示しており、特に、RMPI培地におけるセリウム−アミノクレイナノ粒子は、濃度が高いほど、DI waterでの増加率より高いことを確認することができた。
【0070】
図7に示したように、実施例1のセリウム−アミノクレイナノ粒子は、酸化数が4価近く存在することを確認することができる。
【0071】
3.UV−Vis absorbance spectra分析
図8は、本発明に従って製造された実施例1及び比較例2の紫外線吸光度を示したグラフである。
【0072】
図8に示したように、紫外線領域帯である200〜400nmにおいて、実施例1の吸収率が比較例2に比べて数等低いことを確認することができた。つまり、本発明によるセリウム−アミノクレイナノ粒子は、酸化セリウムナノ粒子自体の紫外線遮断効果より数等向上することを確認することができる。
【0073】
4.細胞生存率分析
図9は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による繊維母類似細胞株(WI−38)及び正常繊維芽細胞(CCD−986SK)の生存率を示したグラフであり、
図10は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による肺癌細胞(A549)及び繊維母類似細胞株(WI−38)の生存率を示したグラフである。
【0074】
それぞれの細胞の密度が10,000細胞数/mLとなるように、透明96−wellプレートに100μLの培養液を注入した。直ちに、培地は、CO
2インキュベーターで37℃で24時間培養した。
【0075】
もし細胞がプレート底に付いているならば、成長培地を除去する。各々の培養培地にセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による生存率を分析した。
【0076】
図9に示したように、繊維母類似細胞株(WI−38)及び正常繊維芽細胞(CCD−986SK)は、セリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度が高くなっても、生存率が落ちないことを確認することができた。すなわち、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、繊維母類似細胞株(WI−38)及び正常繊維芽細胞(CCD−986SK)に対して毒性を示しないことを確認することができた。
【0077】
5.子宮頚がん細胞対象細胞毒性評価及びCross−section TEM分析
細胞培養培地は、RPMI 1640を10%FBS、1%L−Glutamine及び1%Pen/Strepで混合して製造した。子宮頚がん細胞及び正常細胞は、二日に一回ずつ継代培養した。RPMI培地の上等液を捨てて、PBSバッファーで残留培地をきれいに洗った後、trypsin−EDTAで1滴ずつ滴下し、細胞をフラスコ底から脱離した。子宮頸部癌細胞を15mLのコニカルチューブに集めた後、新しいRPMI培地で混合した後、これをチューブ底から残留細胞を得るために5分間1,000rpmで遠心分離した。
【0078】
細胞数を約10
5から10
6細胞数/mLにしてヘモサイトメーターで個数を数える。細胞をT−75培養フラスコで37℃、5%の二酸化炭素を供給して培養した。
【0079】
細胞の密度が10,000細胞数/mLとなるように、透明96−wellプレートに100μLの培養液を注入した。直ちに、培地は、CO
2インキュベーターで37℃で24時間培養した。
【0080】
もし細胞がプレート底に付いているならば、成長培地を除去する。この培養培地にセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度を高くしながら生存率を記録した。
【0081】
図10は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子の濃度による子宮頚がん細胞(A549)及び正常繊維母類似細胞株(WI−38)の生存率を示したグラフであり、
図11は、本発明の実施例1に従って製造されたセリウム−アミノクレイナノ粒子を動物細胞に処理した後の動物細胞の断面を撮影したイメージである。
【0082】
図10に示したように、実施例1によるセリウム−アミノクレイナノ粒子は、子宮頚がん細胞には毒性を示す反面、正常細胞に対しては、500(μg/mL)濃度以下では、毒性を示しないことが確認できており、癌細胞の場合、弱い酸性を示し、セリウム−アミノクレイナノ粒子を癌細胞に処理すれば、前記セリウム−アミノクレイナノ粒子は、酸化酵素(oxidase)役割を行い、癌細胞に対して毒性を示すが、正常細胞では、細胞生存率が高く出るため、毒性を示さないことを確認することができる。
【0083】
また、正常細胞の小器官は、弱い酸性を示すため、セリウム−アミノクレイナノ粒子が細胞内に浸透されると、毒性を示すことができるが、
図11に示したように、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、細胞小器官まで浸透できないことを確認することができる。したがって、正常細胞に対しては、セリウム−アミノクレイナノ粒子は、毒性を発揮しないことを確認することができる。
【0084】
今まで本発明の一実施例によるセリウム−アミノクレイナノ粒子含有の紫外線遮断組成物及びその製造方法に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から脱しない限度内では、様々な実施の変形が可能であることは自明である。
【0085】
よって、本発明の範囲には説明済み実施例に限られてはならないし、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものによって定めなければならない。
【0086】
すなわち、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しれなければならないし、本発明の範囲は、詳細な説明より後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到するあらゆる変更又は変形した形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。