(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素塗布剤は、重量平均分子量が1,000〜150,000である低分子量ポリビニルアセテート(Poly(vinyl acetate)、PVAc)をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤。
溶媒に重量平均分子量が300,000〜600,000である高分子量ポリビニルアセテート(Poly(vinyl acetate)、PVAc)を溶解させて、第1溶液を製造する第1溶解段階と;
溶媒にロジンを溶解させて、第2溶液を製造する第2溶解段階と;
前記第1溶液に第2溶液、フッ素化合物およびソルビタン脂肪酸エステル(sorbitan fatty acid ester)を投入し、撹拌する混合段階と;
を含む、
粘度が800〜1,500cPである、
天然ロジンよりなるフッ素塗布剤と比較して、象牙細管の内部に製剤が浸透して象牙細管を封鎖しうる象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上した、
溶媒の揮発により硬化してコーティング膜を形成するフッ素塗布剤の製造方法。
前記第1溶解段階で、溶媒に重量平均分子量が1,000〜150,000である低分子量ポリビニルアセテート(Poly(vinyl acetate)、PVAc)をさらに含ませて、第1溶液を製造することを特徴とする、請求項6に記載の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤の製造方法。
【背景技術】
【0002】
歯のう蝕症は、口腔内細菌がまとまっている歯苔で、宿主が摂取する栄養分(特に単糖類)を細菌が分解して酸成分を生成する。このように生成された酸性分は、歯を構成している無機成分のうちカルシウム塩を溶解させて化学構造に欠陥を招くことによって、歯が損傷して発生する。
【0003】
歯苔細菌が作る様々な種類の酸成分のうち特に乳酸は、分子のサイズが非常に小さいため、歯の琺瑯質の構造内に浸透することができ、フッ素の含量が比較的低い内部琺瑯質でひどい損傷を誘発することになる。このような損傷によって歯の表面の真下のカルシウム塩が脱灰(Demineralization)され、歯の表面でさらに大きい微細な孔が表面の下部分に生成され、これを白色斑点と呼ぶ。
【0004】
歯のう蝕症の発生機序を脱灰というと、予防機序は、再石灰化(remineralization)であり、再石灰化を通じて発生機序を遮断したり発生した初期う蝕を再び回復して歯の表面の構造を変えることによって、う蝕の発生機序の発生または進行を抑制することができる。
【0005】
歯のう蝕症の予防および目的に用いられる代表的な方法としては、フッ素を含有する製剤または材料を使用するものがある。口腔内フッ素化合物の塗布は、脱灰された琺瑯質を再石灰化されるように促進するので、しみる歯症状(知覚過敏処置)と虫歯予防(歯のう蝕の防止)に大きい助けになりうる。それだけでなく、歯にフッ素化合物が含まれたコーティング膜を形成して琺瑯質を強化させることによって、虫歯を予防し、カルシウムなどの無機質が歯に結合する過程を強化させることができる。
【0006】
フッ素の歯のう蝕の予防または抑制メカニズム(作用機作)は、特にフッ素の含量が少ない幼歯に効果的である。これは、フッ素が幼歯の形成期間中に琺瑯質の結晶体構造に含まれると、酸にあまり溶解しないフッ化燐灰石(fluoroapatite)のような物質を形成することになり、特に幼歯が口腔内に出る直前には、体液で囲まれた琺瑯質の表面にフッ素が多く積もることになって、フッ素の濃度が急激に増加して、歯の表面の結晶構造である燐灰石(apatite)がさらに化学的、物理的安定性を有することになるためである。
【0007】
韓国の保健福祉部の口腔保健事業計画の資料によれば、フッ素を利用した代表的口腔管理製品を4分類に分けて管理しており、フッ素洗歯剤(フッ素が含有された歯磨き粉のような製品)、フッ素溶液歯磨き剤(フッ素が含有された口腔清浄剤のような製品)、フッ素ゲル(フッ素ゲルをトレーに注いで口に含んで使用する製品)、フッ素塗布剤(フッ素が歯の表面に永らくついているようにするために、天然ロジンである松脂成分と共に塗布する製品)がある。
【0008】
このような4つの分類のうちフッ素塗布剤の虫歯予防効果が最も良いことが明らかにされ、その虫歯予防効果は、以前に使用されたフッ素ゲルより2倍さらに高く、フッ素洗歯剤を共に利用した場合に、約10%程度効果が向上することが調査報告された。
【0009】
しかしながら、既存のフッ素塗布剤の場合には、赤色を帯びる天然ロジンである松脂を使用することによって、口腔内のような水中の環境で容易に分解されず、歯との粘着性が強くて、付着が容易であり、象牙細管の内部に高い浸透力を有するという長所がある。反面、フッ素塗布剤の施術を受けた後、歯の色の変化によって患者の審美的拒否感が非常に高く、硬化しない特性に起因して歯にコーティングされた後、約3〜7日の短い期間の間にのみコーティング力が維持されることによって、持続的な歯のう蝕の予防および知覚過敏の抑制効果を期待できないという短所があった。
【0010】
これを補完するために、コーティング維持力が向上した強度および硬度が高い光硬化タイプのフッ素塗布剤が開発された。このようなフッ素塗布剤は、1ヶ月以上コーティング膜が維持されて持続的にフッ素イオンを放出することによって、長期間歯のう蝕症を予防する効果を期待することができるが、光に露出するとすぐに硬化が進行されることによって、速くコーティング膜を形成して、歯の象牙細管の内部に製剤が浸透しなくて、象牙細管の封鎖力が低下して、知覚過敏の抑制効果は期待することができなかった。
【0011】
したがって、患者の審美的要求を満足させ、施術者の施術の便宜性、効率性だけでなく、長期間、歯の表面にコーティング膜を維持することによって、長期間、歯のう蝕症を予防し、象牙細管を封鎖して知覚過敏によって発生する歯がしみることを抑制できるフッ素塗布剤に関する必要性が台頭している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて詳細に説明するに先立って、本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解されてはならないし、本発明の技術的思想に符合する意味と概念と解すべきであることを明らかにする。
【0025】
本明細書の全体で、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0026】
本明細書の全体において、特定物質の濃度を示すために使用される「%」は、別途の言及がない場合、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%を意味する。
【0027】
以下では、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤およびその製造方法についてさらに詳細に説明しようとする。
【0028】
まず、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤は、歯の表面に塗布され、前記フッ素塗布剤内に含まれた溶媒の揮発により硬化してコーティング膜を形成することができる。この際に形成されたコーティング膜内に含まれたフッ素化合物から持続的にフッ素イオンを徐々に放出することによって、歯のう蝕症を予防することができる。
【0029】
したがって、長期間、歯のう蝕症を防止するためには、前記フッ素塗布剤が硬化して歯の表面に形成されたコーティング膜が食物の摂取、咀嚼運動、歯磨きなどのような外部ストレスに対して剥かれずに、耐摩耗性、耐スクラッチ性を有しなければならないし、また、コーティング膜内フッ素化合物が十分に含まれていて、持続的にフッ素イオンが放出され得るようにフッ素イオンの徐放性を有していなければならない。
【0030】
このために、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素保布制は、重量平均分子量が300,000〜600,000である高分子量ポリビニルアセテート(Poly(vinyl acetate)、PVAc)を含むことによって、フッ素塗布剤が硬化して形成されたコーティング膜と歯の表面との間の粘着性を向上させて、外部ストレスに対して耐摩耗性を有することによって、長期間、歯の表面にコーティング膜を維持することができる。
【0031】
一方、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤は、前記高分子量のポリビニルアセテートとともに、ロジン、フッ素化合物、乳化剤および溶媒をさらに含むことができる。
【0032】
前記ロジンは、前記フッ素塗布剤のベース物質であって、口腔内のような水中環境で容易に分解されないため、化学的安全性が高いと共に、粘着性付与効果があり、各種弾性樹脂との相溶性が高いという長所がある。
【0033】
それだけでなく、前記ロジンは、通常、医療および食品材料として歯との接着力を発揮することができ、溶媒に溶解可能なものであれば、特に限定されずに使用可能であり、ガムロジンまたはウッドロジン系化合物を使用することができる。
【0034】
一例として、前記ロジンは、天然ロジン、脱水素化ロジン(Dehydrogenated Rosin)、水添ロジンエステル系(Ester of Hydrogenated Rosin)、完全水添ロジン系(Fully Hydrogenated Rosin)、部分水添ロジン系(Partially Hydrogenated Rosin)、二量体ロジン系(Dimerized Rosin)、および炭化水素レジン系(Hydrocarbon Resin)よりなる群から選ばれた一つ以上でありうる。
【0035】
好ましくは、前記ロジンは、本発明のフッ素塗布剤の全体組成物内15〜35wt%含まれ得て、前記フッ素塗布剤内に含まれるロジンの含量が15wt%未満の場合、歯との十分な粘着力を期待することができず、ロジンの含量が35wt%を超過することになると、粘度の増加によって歯への塗布時の広がり性が低下して施術の便宜性が低下すると共に、歯の表面にコーティング層が厚く形成されて、被施術者が異物感を感じることがあり得る。
【0036】
一方、前記フッ素塗布剤内に含まれたフッ素化合物は、持続的にフッ素イオンを放出することによって、琺瑯質を強化させて歯のう蝕の発生を予防し、カルシウムなどの無機質が歯に結合する過程を強化させる役割をする。
【0037】
前記フッ素塗布剤内に含まれるフッ素化合物は、人体に毒性がなく、フッ素イオンを放出しうるものであれば、特に限定されずに使用可能であり、一例として、フッ化ナトリウム(NaF)、一フッ素リン酸ナトリウム(Na2PFO3)、フッ化スズ(SnF2)、三フッ化ビスマス(BiF3)、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化カリウム(KF)、フッ化カルシウム(CaF2)、四フッ化ジルコニウム(ZrF4)、六フッ化ケイ酸(H2SiF6)、および六フッ化ケイ酸ナトリウム(Na2SiF6)よりなる群から選ばれた一つ以上を使用することができる。
【0038】
一例として、前記フッ素塗布剤内に含まれたフッ素化合物から発生したフッ素イオンが口腔内水素イオンと結合してフルオロ化水素(HF)を形成し、形成されたフルオロ化水素がバクテリアの内部に浸透して入ることになる。前記バクテリアの内部に入ったフルオロ化水素が溶解してバクテリア細胞の内部を酸性化させ、フッ素は、細胞の解糖作用(Glycolysis)を抑制させることができる。このようにバクテリア細胞内にフッ素が蓄積されると、口腔内有害菌であるバクテリアが死滅し、これによって、口腔内のフッ素イオンは、虫歯を予防することができる。
【0039】
また、前記フッ素化合物から放出されたフッ素イオンは、脱灰化された琺瑯質を再び再石灰化するように促進する。それだけでなく、フッ素イオンが歯の主成分である水酸化燐灰石の水酸化イオンサイトに割り込みながら、歯の表面に水酸化燐灰石よりさらに丈夫なフルオル化燐灰石を作り、これを通じて琺瑯質からミネラルの損失を抑制することによって、脱灰化を防備して歯のう蝕を予防することができる。
【0040】
このようなフッ素化合物は、本発明のフッ素塗布剤の全体の組成物内に1〜10wt%含まれ得て、フッ素化合物の含量が1wt%未満で含むとき、所望の歯のう蝕の予防効果を期待しにくく、10wt%を超過することになると、フッ素化合物が過量で含まれて、歯とフッ素塗布剤との粘着力が低下することがあり得る。
【0041】
好ましくは、前記フッ素化合物は、平均粒径が0005〜100μmであるものを使用することができ、前記フッ素化合物の平均粒径が0005μmより小さいと、粒子相互間の凝集力に起因してフッ素塗布剤内での均一な分散が難しいことがあり、平均粒径が100μmより大きければ、フッ素塗布剤の塗布性が減少して、被施術者が歯に塗布しにくく、塗布後に唾液または舌によりフッ素化合物の粒子が喪失される可能性が高くなって、フッ素イオンの放出が減少することがあり得る。
【0042】
一方、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤は、歯の表面に塗布後、前記フッ素塗布剤内に含まれた溶媒が揮発されて、歯の表面にコーティング膜を形成することができる。
【0043】
しかしながら、前記フッ素塗布剤が歯の表面に速く硬化する場合、象牙細管の内部にフッ素塗布剤が浸透する前に、硬化反応が進行されて、象牙細管を完全に封鎖せず、硬化反応が遅く進行されることになると、フッ素塗布剤が完全に硬化するまで施術時間が長くなり得るので、前記フッ素塗布剤の好適な粘度を通じて硬化時間を制御しなければならない。
【0044】
本発明のフッ素塗布剤の粘度または硬化時間は、溶媒または乳化剤を通じて調節することができる。
【0045】
前記乳化剤は、前記フッ素塗布剤の粘度を調節すると同時に、化学的安定性を付与して前記ロジン、フッ素化合物、ポリビニルアセテートなどの溶質と溶媒とが互いに分離する相分離現象を防止することができる。
【0046】
前記乳化剤は、グリコールエーテル(glycol ether)、ソルビタン脂肪酸エステル(sorbitan fatty acid ester)、アルキルポリグリコシド(alkyl polyglycosides)およびアルコキシレートアルコール(alkoxylated alcohol)よりなる群のうち少なくとも一つ以上選ばれた非イオン性界面活性剤を含むことができ、好ましくはグリコールエーテル(glycol ether)、ソルビタン脂肪酸エステル(sorbitan fatty acid ester)を使用することができる。
【0047】
また、前記乳化剤は、本発明のフッ素塗布剤内01〜15wt%含量で含まれることが好ましく、前記乳化剤の含量が好適な数値範囲を外れる場合、フッ素塗布剤の相分離現象が発生したり、フッ素塗布剤の硬化時間が長くなって、施術の便宜性が低下しうる。
【0048】
前記に記述したように、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤の場合、歯への塗布時に、前記フッ素塗布剤内に含まれた溶媒が揮発することによって、硬化してコーティング膜を形成する。
【0049】
したがって、前記フッ素塗布剤内に含まれる溶媒は、揮発性を呈する溶媒を使用することができ、一例として、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、シクロヘシサン、トルエン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、エチルアセテート、メチルアセテート、およびイソプロピルアセテートよりなる群から選ばれる一つ以上を使用することができる。
【0050】
本発明のフッ素塗布剤内に含まれた溶媒の含量によってフッ素塗布剤の広がり性、コーティング膜形成度、分散性に影響を及ぼすことができる。このような溶媒は、前記フッ素塗布剤内に27〜71wt%含まれ得て、前記フッ素塗布剤の保管方法、使用期間、使用様態、使用方法によって前記溶媒の含量は、好適な量で適切に調節して使用され得る。
【0051】
本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤は、重量平均分子量が300,000〜600,000である高分子量ポリビニルアセテートを含んで、歯の表面に塗布されて形成されたコーティング膜の耐ストレッチ性を向上させることによって、コーティング膜を長期間維持させることができる。このように長期間、コーティング膜が維持される間、持続的にフッ素イオンを口腔の内部に放出して、歯のう蝕性(虫歯)を防止することができる。
【0052】
前記フッ素塗布剤は、前記高分子量ポリビニルアセテートとともに、重量平均分子量が1,000〜150,000である低分子量ポリビニルアセテート(Poly(vinylacetate)、PVAc)をさらに含むことによって、フッ素塗布剤の歯接着性を向上させることができる。
【0053】
好ましくは、前記フッ素塗布剤の総重量を基準としてポリビニルアセテートは8〜25wt%を含むことができ、前記ポリビニルアセテートは、高分子量ポリビニルアセテートまたは高分子量ポリビニルアセテートおよび低分子量ポリビニルアセテートの混合物でありうる。
【0054】
前記ポリビニルアセテートの含量が前記フッ素塗布剤の8wt%未満で含まれる場合、歯の表面に形成されたコーティング膜が外部の刺激に容易に剥かれるか、摩耗して、歯のう蝕の防止効果を期待しにくく、27wt%を超過して含まれる場合、前記フッ素塗布剤の粘度増加によって薄くコーティング膜を形成しにくくて、被施術者が異物感を感じることができると共に、塗布性が低下して、施術の便宜性が低下することがあり得る。
【0055】
また、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤は、適切な硬化速度を有することで、歯の象牙細管に前記フッ素塗布剤が浸透、封鎖することによって、知覚過敏を抑制して「しみる歯」症状を緩和することができる。したがって、前記フッ素塗布剤は、800〜1500cPの粘度を有しなければならない。前記フッ素塗布剤の粘度が好適な範囲を外れる場合、フッ素塗布剤の塗布性が低下して、施術の便宜性が低下したり、硬化速度が遅いかまたは速いことによって、象牙細管に前記フッ素塗布剤が十分に浸透しないか、施術時間が長くなりうる。
【0056】
このような本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤は、歯の美白、琺瑯質(エナメル)の強化など口腔健康を向上させることができる通常的に配合される公知の有効成分をさらに含むことができ、これらの有効成分は、本発明の効果を阻害しない範囲内で薬学的、機能的に有効な量をさらに含むことができる。
【0057】
一例として、イソプロピルメチルフェノールなどの非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどのカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸などの抗炎症剤、デクストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リゾチームなどの酵素、フッ化ナトリウムなどのフッ化物、正リン酸のカリウム塩などの水溶性リン酸化合物、グルコン酸銅、銅クロロフィリンナトリウムなどの銅化合物、塩化ナトリウム、二酸化ケイ素、硝酸カリウム、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウムなどの無機塩類、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなどのビタミン類、クロロフィル、トウキ軟稠エキス、タイム、オウゴン、丁香、ハマメリスなどの植物抽出物、歯石防止剤、歯垢防止剤、知覚過敏を抑制するCPP−ACP(CaseinPhosphopeptide−Amorphous Calcium Phosphate)を含む知覚過敏処置剤(Desensitizer)などが挙げられる。
【0058】
一方、本発明の他の実施形態は、本発明の象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤の製造方法に関し、溶媒に重量平均分子量が300,000〜600,000である高分子量ポリビニルアセテート(Poly(vinylacetate)、PVAc)を溶解させて、第1溶液を製造する第1溶解段階;溶媒にロジンを溶解させて、第2溶液を製造する第2溶解段階;および前記第1溶液に第2溶液、フッ素化合物および乳化剤を投入し、撹拌する混合段階;を含むことができる。
【0059】
前記フッ素塗布剤の製造方法で使用される溶媒、ロジン、フッ素化合物、乳化剤に関する具体的な説明は、前記に言及したので、ここでは省略することとする。
【0060】
前記第1溶解段階は、溶媒に重量平均分子量が300,000〜600,000である高分子量ポリビニルアセテート(PVAc)を溶解させて、第1溶液を製造する段階であって、分子量が高い有機化合物である前記高分子量ポリビニルアセテートを溶解させるために希釈された溶媒を使用することができる。
【0061】
好ましくは、前記第1溶解段階で使用される溶媒は、揮発性がある溶媒である、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、エチルアセテート、メチルアセテート、およびイソプロピルアセテートよりなる群から選ばれる一つ以上が水に希釈されたものを使用することができ、より好ましくは、91〜97%濃度の希釈液であってもよく、最も好ましくは、92〜96%のエタノールを使用することができる。これは、希釈液でない100%揮発性溶媒を使用する場合、前記高分子量ポリビニルアセテートが十分に溶解しないためである。
【0062】
また、前記希釈された溶媒を使用して高分子量ポリビニルアセテートを溶解時に低分子量ポリビニルアセテートをさらに含むことができる。
【0063】
一例として、92〜96%の揮発性溶媒を45〜75℃の温度で湯煎した後、高分子量ポリビニルアセテートまたは高分子量ポリビニルアセテートおよび低分子量ポリビニルアセテートの混合物を投入して、第1溶液を製造することができる。
【0064】
前記第2溶解段階は、揮発性溶媒にロジンを溶融させて、第2溶液を製造することができる。この際に使用される揮発性溶媒は、前記第1溶解段階で使用される溶媒と同じ溶媒を使用したり、100%揮発性溶媒を使用することができる。これは、前記ロジンの場合、揮発性溶媒への溶解性が前記高分子量ポリビニルアセテートより高いので、第2溶解段階ではあえて前記揮発性溶媒を希釈した希釈液を使用せずに、100%揮発性溶媒を使用しても、十分に高濃度でロジンを溶解させることができるためである。
【0065】
一例として、100%揮発性溶媒を45〜75℃の温度で湯煎した後、ロジンを投入して溶解させて、第2溶液を製造することができる。
【0066】
前記第1溶解段階および第2溶解段階を通じて製造された第1溶液および第2溶液にフッ素化合物および乳化剤を投入して混合段階を行うことによって、象牙細管浸透力およびコーティング維持力が向上したフッ素塗布剤を製造することができる。
【0067】
前記混合段階で、前述した歯の美白、琺瑯質(エナメル)の強化など口腔健康を向上させることができる通常的に配合される公知の有効成分をさらに含むこともできる。
【0068】
以下では、本発明の実施例を記述する。しかしながら、本発明の範疇が以下の好適な実施例に限定されるものではなく、当業者なら本発明の権利範囲内で本明細書に記載された内容の様々な変形された形態を実施することができる。
【0069】
[製造例]
フッ素塗布剤の製造
まず、下記表1のような重量平均分子量を有するポリビニルアセテートを94%エタノールに65℃で湯煎して、30%PVAc溶液である第1溶液を製造した。
【0070】
次に、ロジン(rosin)を94%エタノールに65℃で湯煎して、70%Rosin溶液である第2溶液を製造した。
【0071】
前記第1溶液に第2溶液、フッ素化合物、CPP−ACP、二酸化ケイ素、硝酸カリウム、乳化剤を下記表1のような比率で混合して、
図1のようなフッ素塗布剤である実施例1と比較例
1を製造した。
【0073】
[実験例1]
乳化剤の条件による相分離現象
1)乳化剤の包含有無による相分離現象の観察
まず、乳化剤の添加有無による相分離現象を確認するために、前記製造例の実施例1(A)と同じ製造方法で製造するものの、乳化剤の代わりに溶媒をさらに追加して、対照群(B)を製造した。
【0074】
前記実施例1と対照群(B)をそれぞれコニカルチューブにそれぞれ10mlずつ入れて、常温で45日間放置した後、相分離の有無を観察した。
【0075】
図2のように、45日後、乳化剤が含まれた実施例1(A)の場合、相分離現象をほとんど観察することができなかったが、乳化剤が含まれていない対照群(B)は、高分子であるポリビニルアセテートと、水添ロジンと、有効成分と、フッ素化合物とが沈殿した沈殿層(b)と、上澄み液(a)とが互いに分離して相分離現象が起こることを確認することができた。
【0076】
2)乳化剤の種類とポリビニルアセテートの分子量とによる相分離現象
製造例の実施例1と同じ製造方法で製造するものの、乳化剤の代わりに溶媒をさらに追加して製造された対照群、比較例1と同じ製造方法で製造するものの、低分子量ポリビニルアセテートの代わりに、高分子量ポリビニルアセテートを使用して製造した比較例2を製造した。
【0077】
前記対照群、比較例1、比較例2および実施例1をコニカルチューブにそれぞれ10mlずつ入れて、常温で放置した。放置された日から1ヶ月、2ヶ月が経過した後、下記式(1)を使用して相分離%を測定し、その結果は、
図3に示した。
相分離(relative%)=(沈殿した層のml)/(10ml)×100…式(1)
図2および
図3の結果を参照すると、乳化剤を添加していない対照群の場合、1ヶ月が経過した後から相分離現象を確認することができた。
【0078】
一方、グリコールエーテルである乳化剤の低分子量ポリビニルアセテートを使用して製造された比較例1と高分子量ポリビニルアセテートを使用して製造された比較例2とを比較してみると、低分子量ポリビニルアセテートを使用した比較例1の場合には、2ヶ月が経過した後にも相分離現象が大きく現れなかったが、高分子量ポリビニルアセテートを使用した比較例2の場合には、2ヶ月が経過した後には、顕著に相分離現象を確認することができた。ただし、乳化剤としてソルビタン脂肪酸エステルを使用した実施例1の場合には、2ヶ月が経過した後にも、相分離現象がほとんど現れないことを確認することができた。
【0079】
したがって、重量平均分子量が150,000未満の低分子量ポリビニルアセテートの場合、溶媒への溶解度が相対的に高分子量のポリビニルアセテートより高いため、同じ量、同じ成分を有する乳化剤(グリコールエーテル)を含む場合、時間が次第に経過するにつれて、高分子量のポリビニルアセテートを含む比較例2の場合、相分離現象が発生することを確認することができた。
【0080】
しかしながら、乳化能がグリコールエーテルに比べて優れた特性を有する、ソルビタン脂肪酸エステルを含む実施例1の場合には、高分子量のポリビニルアセテートが含まれているにもかかわらず、2ヶ月後に相分離現象が発生しないことを確認することができた。
【0081】
これより、高分子量ポリビニルアセテートが含まれた本発明のフッ素塗布剤の場合、乳化剤としてソルビタン脂肪酸エステルを使用することが好ましいことが分かった。
【0082】
[実験例2]
フッ素塗布剤の粘度によるコーティング膜の厚み
前記実施例1に溶媒をさらに投入してフッ素塗布剤の粘度を調節して、粘度によるコーティング膜の厚みを確認した。
【0083】
この際、フッ素塗布剤の粘度は、粘度測定機器(micro VISC viscositymeter,Rheosense(社)、USA)を使用してそれぞれの剤形を1cc取って測定した。
【0084】
コーティングの厚みは、SEM写真を通じて測定し、異物感の実験は、10人の被施術者の歯にフッ素塗布剤を使用してコーティング膜を形成した後、異物感の有無(異物感がある:○/異物感がなし:X)を観察した。
【0086】
前記表2と
図4の結果を参照すると、粘度が低い場合(200cp以下)、歯の表面に形成されたコーティング膜が極めて薄くて、歯磨きまたは食物の摂取などの外部ストレスに起因してコーティング膜が容易に除去される可能性がある。反面、粘度が高い場合(3,000〜5,000)、歯の表面に形成されたコーティング膜が極めて厚くて、被施術者が異物感を感じるので、フッ素塗布剤の粘度は、800〜1,500cPになることが好ましい。
【0087】
[実験例3]
フッ素塗布剤の象牙細管浸透率の測定
1)フッ素塗布剤の象牙細管浸透能の比較(SEM分析)
天然ロジンで製造されたフッ素塗布剤と前記実施例1との象牙細管浸透能を電子顕微鏡で観察し、その結果は、
図5に示された通りである。
【0088】
図5の結果を見ると、天然ロジンよりなるフッ素塗布剤の場合、象牙細管に深々と浸透したことを確認することができた。反面、本発明の実施例1の場合、フッ素塗布剤が象牙細管に浸透することによって、象牙細管を封鎖して、知覚過敏を抑制し、しみる歯を予防できるものと期待された。
【0089】
2)フッ素塗布剤内に含まれたポリビニルアセテートの分子量と乳化剤とによる象牙細管透過率の測定(Dentin permeability−digitalの測定)
フッ素塗布剤が象牙細管を浸透して象牙細管を封鎖の有無を確認し、外部のストレス(brushing)後にも依然として象牙細管を封鎖しているかを確認するために、象牙細管透過率を測定した。
【0090】
象牙細管の透過率を測定するために、Odeme社のDentin permeability testを使用して象牙質の透過性を測定し、フッ素塗布剤を塗布する前(処置前)、フッ素塗布剤を塗布した後、完全に硬化した直後(処置直後)、試験片に320〜450gの歯ブラシの重量でブラッシングを通じて外部ストレスを与えた後(1ヶ月間、一日に3回、1回当たり15回のBrushing、1M(4週);総1260回ブラッシング)など、それぞれの条件によって象牙細管の透過率の変化を測定し、その結果は、
図6に示された通りである。
【0091】
図6の結果を参照すると、フッ素塗布剤を塗布する前には、歯の象牙細管に浸透した物質がなくて、比較例1、2および実施例1がいずれも透過率が100%であることを確認することができ、前記比較例1、2および実施例1を塗布した直後には、いずれも象牙細管透過率が0%であることを確認することができた。
【0092】
しかしながら、1Mの間に一日に3回ブラッシングをした後、象牙細管透過率を測定した結果、比較例1、2の場合、外部ストレスによってコーティング膜が損傷して、象牙細管透過率が増加することを確認することができた。
【0093】
反面、高分子量ポリビニルアセテートが含まれた本発明の実施例1の場合には、高いコーティング膜維持力によって象牙細管透過率が比較例1、2に比べて低いことを確認することができ、これを通じて、本発明の実施例1が長期間、コーティング膜を維持することによって、歯のう蝕症を予防し、象牙細管を封鎖することによって、しみる歯症状を緩和させることができることが確認された。
【0094】
[実験例4]
フッ素塗布剤のコーティング維持能の測定
歯に塗布されたフッ素塗布剤のコーティング維持能を測定するために、人体の歯と同じ成分で製造された試験片に天然ロジンで製造されたフッ素塗布剤、比較例1、実施例1を塗布した後、完全に硬化させた。
【0095】
フッ素塗布剤が硬化してコーティング膜が形成された試験片に繰り返して歯磨きを加えた後、コーティング膜の摩耗程度を電子顕微鏡で確認した。
【0096】
試験片に加えられる歯ブラシの重量:320〜450g
歯磨き回数:一日に3回、1回当たり歯磨き15回(片道)
1M(4週);1260回/3M(12週);3780回
図7の結果を参照すると、天然ロジンで製造されたフッ素塗布剤の場合、1ヶ月が経過した時点でコーティング膜が完全に除去されたことを確認することができ、比較例1の場合、1ヶ月が経過した時点で半分程度のコーティング膜が残っていたが、3ヶ月が経過した後には、コーティング膜がほぼ消えることを確認することができた。
【0097】
反面、本発明の実施例1の場合には、3ヶ月が経過した後にも、コーティング膜が依然として存在することを確認することができた。