(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロースアセテート及び前記グリセリンエステル系可塑剤の合計量100重量部に対し、前記グリセリンエステル系可塑剤が5重量部以上40重量部以下である、請求項1に記載の熱成形用セルロースアセテート組成物。
前記セルロースアセテート及び前記グリセリンエステル系可塑剤の合計量100重量部に対し、前記グリセリンエステル系可塑剤が5重量部以上40重量部以下である、請求項10または11に記載の熱成形用セルロースアセテート組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[熱成形用セルロースアセテート組成物]
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物は、アセチル置換度が1.4以上2.0以下のセルロースアセテート、及びグリセリンエステル系可塑剤を含有する。
【0028】
[セルロースアセテート]
(アセチル置換度)
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物が含有するセルロースアセテートは、アセチル置換度が1.4以上2.0以下であるところ、アセチル置換度は、1.4以上1.8以下が好ましく、1.5以上1.8以下がより好ましく、1.6以上1.8以下がさらに好ましい。アセチル置換度がこの範囲であると、優れた生分解性を有するだけでなく、熱成形性にも優れる。また、本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物をタバコの部材、特に、セルロースアセテートトウフィルタ等の吸い口に用いられる部材として用いた場合に必要な耐水性も併せ持つ。
【0029】
熱成形性に優れるとは、具体的には例えば、溶融物(melt)の溶融状態を熱成形に適した範囲に調整することが可能、つまり、溶融物(melt)の溶融時の粘度を熱成形に適した範囲とし、均一に溶融させることが可能であることをいう。得られるセルロースアセテート組成物は、熱成形性に優れるため、白濁及び未溶融物の残留が少ない。
【0030】
ここで、本開示において、熱成形とは、加熱により変形可能な可塑性を発揮し、冷却により所定の形状を作ることをいい、熱成形の方法としては、例えば、加熱圧縮成形、押出成形及び射出成形等が挙げられる。
【0031】
未溶融物とは、加熱によっても溶融することなく残った固体状の物であり、未溶融物としては、主に直径0.5mm〜2mmのセルロースアセテートが含まれる。また、白濁又は濁りは、固体状の物の形状が肉眼で確認できない程、微小な未溶融物が広がることにより生じる。または、樹脂表面にシャークスキン(shark skin)現象(表面に微細な荒れが生じる現象)が起こることにより生じる。
【0032】
一方、アセチル置換度が1.4未満であると、得られるセルロースアセテート組成物は、熱成形性に劣る他、水溶性または水吸着性が強くなり、成形体としての耐久性が劣る傾向があり、タバコの部材、特に、セルロースアセテートトウフィルタ等の吸い口に用いられる部材として用いた場合に、水溶性また水吸着性が強いと喫味に対し悪影響を及ぼす傾向がある。また、アセチル置換度が2.0を超えると優れた生分解性が実現できない傾向がある。
【0033】
セルロースアセテートのアセチル置換度は、セルロースアセテートを置換度に応じた適切な溶媒に溶解し、セルロースアセテートの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。アセチル置換度は、手塚(Tezuka, Carbonydr. Res. 273, 83(1995))の方法に従い、セルロースアセテートの水酸基を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、重クロロホルムに溶解し、NMRにより測定することもできる。
【0034】
さらに、アセチル置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的なセルロースアセテートの置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル置換度
AV:酢化度(%)
【0035】
まず、乾燥したセルロースアセテート(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶媒(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
【0036】
なお、本開示において、アセチル置換度とは、アセチル総置換度、つまり、セルロースアセテートのグルコース環の2,3,6位の各アセチル平均置換度の和と言い換えることもできる。
【0037】
(組成分布指数(CDI))
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物が含有するセルロースアセテートは、組成分布指数(CDI)が4.0以下(例えば、1.0〜4.0)である。組成分布指数(CDI)は、3.0以下、2.8以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、さらに1.3以下の順により小さい方が好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、1.0以上であってよい。セルロースアセテートは組成分布指数(CDI)が小さく、組成分布(分子間置換度分布)が均一となることにより、本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物は、熱成形性により優れるものとなる。
【0038】
組成分布指数(CDI)が4.0を超えると、アセチル置換度がばらついた不均一なセルロースアセテートとなるため、このようなセルロースアセテートと可塑剤とからなる樹脂組成物は、熱によって均一に溶融しにくく、溶融性に劣る。そのため、得られるセルロースアセテート組成物には、白濁等の濁りが生じること、及び/又は未溶融物が残留することがある。したがって、このようなセルロースアセテート組成物は、熱成形用として適さない。
【0039】
計算上、組成分布指数(CDI)の下限値は0であるが、これは例えば100%の選択性でグルコース残基の6位のみをアセチル化し、他の位置はアセチル化しない等の特別な合成技術をもって実現されるものであり、そのような合成技術は知られていない。グルコース残基の水酸基の全てが同じ確率でアセチル化および脱アセチル化される状況において、CDIは1.0となるが、実際のセルロースの反応においてはこのような理想状態に近付けるためには相当の工夫を要する。従来の技術においては、このような組成分布の制御についてはあまり関心が払われていなかった。
【0040】
ここで、組成分布指数(Compositional Distribution Index, CDI)とは、組成分布半値幅の理論値に対する実測値の比率[(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)]で定義される。組成分布半値幅は「分子間置換度分布半値幅」又は単に「置換度分布半値幅」ともいう。
【0041】
セルロースアセテートのアセチル置換度の均一性を評価するのに、セルロースアセテートの分子間置換度分布曲線の最大ピークの半値幅(「半価幅」ともいう)の大きさを指標とすることができる。なお、半値幅は、アセチル置換度を横軸(x軸)に、この置換度における存在量を縦軸(y軸)としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、分布のバラツキの目安を表す指標である。組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めることができる。なお、HPLCにおけるセルロースエステルの溶出曲線の横軸(溶出時間)を置換度(0〜3)に換算する方法については、特開2003-201301号公報(段落0037〜0040)に説明されている。
【0042】
(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
【数2】
m:セルロースアセテート1分子中の水酸基とアセチル基の全数
p:セルロースアセテート1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(セルロースアセテートの残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
【0043】
さらに、組成分布半値幅の理論値を置換度と重合度で表すと、以下のように表される。下記式(2)を組成分布半値幅の理論値を求める定義式とする。
【数3】
DS:アセチル置換度
DPw:重量平均重合度(セルロースアセテートの残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
【0044】
ところで、式(1)および式(2)においては、より厳密には重合度分布を考慮に入れるべきであり、この場合には式(1)および式(2)の「DPw」は、重合度分布関数に置き換え、式全体を重合度0から無限大までで積分すべきである。しかしながら、DPwを使う限り、式(1)および式(2)は近似的に十分な精度の理論値を与える。DPn(数平均重合度)を使うと、重合度分布の影響が無視できなくなるので、DPwを使うべきである。
【0045】
(組成分布半値幅の実測値)
本開示において、組成分布半値幅の実測値とは、セルロースアセテート(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
【0046】
一般的に、アセチル置換度2〜3のセルロースアセテートに対しては、前処理なしに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を行うことができ、それによって組成分布半値幅を求めることができる。例えば、特開2011−158664号公報には、置換度2.27〜2.56のセルロースアセテートに対する組成分布分析法が記載されている。
【0047】
一方、組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値は、HPLC分析前に前処理としてセルロースアセテートの分子内残存水酸基の誘導体化を行い、しかる後にHPLC分析を行って求める。この前処理の目的は、置換度の低いセルロースアセテートを有機溶剤に溶解しやすい誘導体に変換してHPLC分析可能とすることである。すなわち、分子内の残存水酸基を完全にプロピオニル化し、その完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)をHPLC分析して組成分布半値幅(実測値)を求める。ここで、誘導体化は完全に行われ、分子内に残存水酸基はなく、アセチル基とプロピオニル基のみ存在していなければいけない。すなわち、アセチル置換度(DSac)とプロピオニル置換度(DSpr)の和は3である。これは、CAPのHPLC溶出曲線の横軸(溶出時間)をアセチル置換度(0〜3)に変換するための較正曲線を作成するために関係式:DSac+DSpr=3を使用するためである。
【0048】
セルロースアセテートの完全誘導体化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させることにより行うことができる。より具体的には、溶媒として混合溶媒[ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド=1/1(v/v)]をセルロースアセテート(試料)に対して20重量部、プロピオニル化剤として無水プロピオン酸を該セルロースアセテートの水酸基に対して6.0〜7.5当量、触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジンを該セルロースアセテートの水酸基に対して6.5〜8.0mol%使用し、温度100℃、反応時間1.5〜3.0時間の条件でプロピオニル化を行う。そして、反応後、沈澱溶媒としてメタノールを用い、沈澱させることにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネートを得る。より詳細には、例えば、室温で、反応混合物1重量部をメタノール10重量部に投入して沈澱させ、得られた沈澱物をメタノールで5回洗浄し、60℃で真空乾燥を3時間行うことにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を得ることができる。なお、重量平均重合度(DPw)も、セルロースアセテート(試料)をこの方法により完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とし、測定したものである。
【0049】
上記HPLC分析では、異なるアセチル置換度を有する複数のセルロースアセテートプロピオネートを標準試料として用いて所定の測定装置および測定条件でHPLC分析を行い、これらの標準試料の分析値を用いて作成した較正曲線[セルロースアセテートプロピオネートの溶出時間とアセチル置換度(0〜3)との関係を示す曲線、通常、三次曲線]から、セルロースアセテート(試料)の組成分布半値幅(実測値)を求めることができる。HPLC分析で求められるのは溶出時間とセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度分布の関係である。これは、試料分子内の残存ヒドロキシ基のすべてがプロピオニルオキシ基に変換された物質の溶出時間とアセチル置換度分布の関係であるから、本開示のセルロースアセテートのアセチル置換度分布を求めていることと本質的には変わらない。
【0050】
上記HPLC分析の条件は以下の通りである。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H
2O=8/1(v/v),B液:CHCl
3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
【0051】
較正曲線から求めた置換度分布曲線[セルロースアセテートプロピオネートの存在量を縦軸とし、アセチル置換度を横軸とするセルロースアセテートプロピオネートの置換度分布曲線](「分子間置換度分布曲線」ともいう)において、平均置換度に対応する最大ピーク(E)に関し、以下のようにして置換度分布半値幅を求める。ピーク(E)の低置換度側の基部(A)と、高置換度側の基部(B)に接するベースライン(A−B)を引き、このベースラインに対して、最大ピーク(E)から横軸に垂線をおろす。垂線とベースライン(A−B)との交点(C)を決定し、最大ピーク(E)と交点(C)との中間点(D)を求める。中間点(D)を通って、ベースライン(A−B)と平行な直線を引き、分子間置換度分布曲線との二つの交点(A’、B’)を求める。二つの交点(A’、B’)から横軸まで垂線をおろして、横軸上の二つの交点間の幅を、最大ピークの半値幅(すなわち、置換度分布半値幅)とする。
【0052】
このような置換度分布半値幅は、試料中のセルロースアセテートプロピオネートの分子鎖について、その構成する高分子鎖一本一本のグルコース環の水酸基がどの程度アセチル化されているかにより、保持時間(リテンションタイム)が異なることを反映している。したがって、理想的には、保持時間の幅が、(置換度単位の)組成分布の幅を示すことになる。しかしながら、HPLCには分配に寄与しない管部(カラムを保護するためのガイドカラムなど)が存在する。それゆえ、測定装置の構成により、組成分布の幅に起因しない保持時間の幅が誤差として内包されることが多い。この誤差は、上記の通り、カラムの長さ、内径、カラムから検出器までの長さや取り回しなどに影響され、装置構成により異なる。このため、セルロースアセテートプロピオネートの置換度分布半値幅は、通常、下式で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。このような補正式を用いると、測定装置(および測定条件)が異なっても、同じ(ほぼ同じ)値として、より正確な置換度分布半値幅(実測値)を求めることができる。
Z=(X
2−Y
2)
1/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3のセルロースアセテートの見掛けの置換度分布半値幅(実際は置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル置換度(0≦x≦3)である]
【0053】
なお、上記置換度3のセルロースアセテート(もしくはセルロースプロピオネート)とは、セルロースのヒドロキシル基の全てがエステル化されたセルロースエステルを示し、実際には(理想的には)置換度分布半値幅を有しない(すなわち、置換度分布半値幅0の)セルロースエステルである。
【0054】
先に説明した置換度分布理論式は、すべてのアセチル化と脱アセチル化が独立かつ均等に進行することを仮定した確率論的計算値である。すなわち、二項分布に従った計算値である。このような理想的な状況は現実的にはあり得ない。セルロースアセテートの加水分解反応が理想的なランダム反応に近づくような、および/または、反応後の後処理について組成について分画が生じるような特別な工夫をしない限り、セルロースエステルの置換度分布は確率論的に二項分布で定まるものよりも大幅に広くなる。
【0055】
反応の特別な工夫の一つとしては、例えば、脱アセチル化とアセチル化が平衡する条件で系を維持することが考えられる。しかし、この場合には酸触媒によりセルロースの分解が進行するので好ましくない。他の反応の特別な工夫としては、脱アセチル化速度が低置換度物について遅くなる反応条件を採用することである。しかし、従来、そのような具体的な方法は知られていない。つまり、セルロースエステルの置換度分布を反応確率論通り二項分布にしたがうよう制御するような反応の特別な工夫は知られていない。さらに、酢化過程(セルロースのアセチル化工程)の不均一性や、熟成過程(セルロースアセテートの加水分解工程)で段階的に添加する水による部分的、一時的な沈澱の発生などの様々な事情は、置換度分布を二項分布よりも広くする方向に働き、これらを全て回避し、理想条件を実現することは、現実的には不可能である。これは、理想気体があくまで理想の産物であり、実在する気体の挙動はそれとは多かれ少なかれ異なることと似ている。
【0056】
従来の置換度が低いセルロースアセテートの合成と後処理においては、このような置換度分布の問題について殆ど関心が払われておらず、置換度分布の測定や検証、考察が行われていなかった。例えば、文献(繊維学会誌、42、p25 (1986))によれば、置換度の低いセルロースアセテートの溶解性は、グルコース残基2、3、6位へのアセチル基の分配で決まると論じられており、組成分布は全く考慮されていない。
【0057】
本開示によれば、後述するように、セルロースアセテートの置換度分布は、驚くべきことにセルロースアセテートの加水分解工程の後の後処理条件の工夫で制御することができる。文献(CiBment, L., and Rivibre, C., Bull. SOC. chim., (5) 1, 1075 (1934)、Sookne, A. M., Rutherford, H. A., Mark, H., and Harris, M. J . Research Natl. Bur. Standards, 29, 123 (1942)、A. J. Rosenthal , B. B. White Ind. Eng. Chem., 1952, 44 (11), pp 2693-2696.)によれば、置換度2.3のセルロースアセテートの沈澱分別では、分子量に依存した分画と置換度(化学組成)に伴う微々たる分画が起こるとされており、本開示のように置換度(化学組成)で顕著な分画ができるとの報告はない。さらに、本開示のような置換度の低いセルロースアセテートについて、溶解分別や沈澱分別で置換度分布(化学組成)を制御できることは検証されていなかった。
【0058】
本発明者らが見出した置換度分布を狭くするもう1つの工夫は、セルロースアセテートの90℃以上の(又は90℃を超える)高温での加水分解反応(熟成反応)である。従来、高温反応で得られた生成物の重合度について詳細な分析や考察がなされて来なかったにもかかわらず、90℃以上の高温反応ではセルロースの分解が優先するとされてきた。この考えは、粘度に関する考察のみに基づいた思い込み(ステレオタイプ)と言える。本発明者らは、セルロースアセテートを加水分解して置換度の低いセルロースアセテートを得るに際し、90℃以上の(又は90℃を超える)高温下、好ましくは硫酸等の強酸の存在下、多量の酢酸中で反応させると、重合度の低下は見られない一方で、CDIの減少に伴い粘度が低下することを見出した。すなわち、高温反応に伴う粘度低下は、重合度の低下に起因するものではなく、置換度分布が狭くなることによる構造粘性の減少に基づくものであることを解明した。上記の条件でセルロースアセテートの加水分解を行うと、正反応だけでなく逆反応も起こるため、生成物(置換度の低いセルロースアセテート)のCDIが極めて小さい値となり、熱性成形用セルロースアセテート組成物を構成した場合は、溶融状態が安定し(言い換えれば、溶融物(melt)の溶融時の粘度を熱成形に適した範囲とし、均一に溶融させることができる)、特に優れた熱成形性が実現できる。これに対し、逆反応が起こりにくい条件でセルロースアセテートの加水分解を行うと、置換度分布は様々な要因で広くなり、熱性成形用セルロースアセテート組成物を構成した場合は、溶融状態が安定しにくく、つまり溶融しない部分が残存する可能性があり、良好な熱成形性が得られない場合がある。
【0059】
(重量平均重合度(DPw))
重量平均重合度(DPw)は、セルロースアセテート(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
【0060】
本開示のセルロースアセテートの重量平均重合度(DPw)は、100〜1000の範囲であることが好ましい。重量平均重合度(DPw)が低すぎると熱成形性に劣る傾向がある。また、重量平均重合度(DPw)が高すぎると、生分解性に劣る傾向がある。前記重量平均重合度(DPw)は、好ましくは100〜800、さらに好ましくは200〜700である。
【0061】
上記重量平均重合度(DPw)は、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、セルロースアセテート(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、サイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより求められる(GPC−光散乱法)。
【0062】
上述のように、セルロースアセテートの重合度(分子量)は、GPC−光散乱法(GPC−MALLS、GPC−LALLSなど)により測定される。セルロースアセテートは置換度によって溶媒への溶解性が変化するため、広い範囲の置換度の重合度を測定する場合に、異なった溶媒系で測定して比較しなければならないことがある、この問題を回避するための有効な方法の一つは、セルロースアセテートを誘導体化し、同じ有機溶媒に溶解するようにし、同じ有機溶媒でGPC−光散乱測定を行うことである。この目的のセルロースアセテートの誘導体化としてはプロピオニル化が有効であり、具体的な反応条件及び後処理は前記組成分布半値幅の実測値の説明箇所で記載した通りである。
【0063】
(分子量分布Mw/Mn)
本開示のセルロースアセテートの分子量分布(重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した分子量分布Mw/Mn)は3.0以下2.0以上であることが好ましく、2.5以下2.0以上がより好ましく、2.4以下2.0以上がさらに好ましい。3.0を超えたり2.0未満であると、成形体とした場合、成形加工の安定性(例えば、成形体の寸法安定性及び強度等の物性安定性など、これら安定性としては、より具体的には、例えば、成形体の表面に不要な凹凸が生じにくい;成形体内部に空孔が生じにくい;成形体全体の機械強度のばらつきが小さい;成形直後からの短時間での変形が生じにくいことなどが挙げられる)が悪くなる。セルロースアセテートの分子量分布が3.0以下2.0以上であることにより、良好な熱成形加工性を実現できる。
【0064】
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、HPLCを用いた公知の方法で求めることができる。本開示において、セルロースアセテートの分子量分布(Mw/Mn)は、測定試料を有機溶剤に可溶とするため、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、セルロースアセテート(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、以下の条件でサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより決定される(GPC−光散乱法)。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、同ガードカラム
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
【0065】
測定結果により得られた重量平均分子量と数平均分子量より下式に従い、分子量分布を算出することができる。
分子量分布=Mw/Mn
Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量
【0066】
(全硫黄含有量)
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物が含有するセルロースアセテートは、全硫黄含有量が15mg/kg以上150mg/kg未満である。全硫黄含有量は、15mg/kg以上100mg/Kg以下が好ましく、20mg/kg以上80mg/Kg以下がより好ましく、25mg/kg以上70mg/Kg以下がさらに好ましく、25mg/kg以上60mg/Kg以下が最も好ましい。
【0067】
全硫黄含有量がこの範囲であることにより、本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物は、加熱によっても着色しにくく、熱安定性にも優れるため、熱成形用として優れた物性を有する。全硫黄含有量が150mg/kg以上となると、熱安定性に劣り、加熱によって着色(特に黄色の着色)しやすくなる。
【0068】
セルロースアセテートの全硫黄含有量とは、単位重量あたりのセルロースアセテートに含まれる硫黄化合物の重量を硫黄元素の重量に換算した値をいう。
【0069】
セルロースアセテートの全硫黄含有量は、以下の方法により求めることができる。乾燥したセルロースアセテートを1300℃の電気炉で焼き、昇華した亜硫酸ガスを10%過酸化水素水にトラップし、規定水酸化ナトリウム水溶液にて滴定し、SO4
2−換算の量を総硫酸量(単位重量あたりのセルロースアセテートに含まれる硫酸の重量)として測定する。次に、換算式:総硫酸量×32/98=全硫黄含有量によって、全硫黄含有量を算出する。
【0070】
[グリセリンエステル系可塑剤]
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物が含有するグリセリンエステル系可塑剤としては、グリセリンの低級脂肪酸エステル、言い換えれば、グリセリンと炭素数2〜4の脂肪酸とのエステル化合物を用いることができる。炭素数2の脂肪酸は酢酸であり、炭素数3の脂肪酸はプロピオン酸であり、炭素数4の脂肪酸はブチル酸である。本開示のグリセリンエステル系可塑剤は、グリセリンの3個のヒドロキシル基すべてが同じ脂肪酸によってエステル化されているものでもよく、2個のヒドロキシル基が同じ脂肪酸によってエステル化されているものでもよく、グリセリンの3個のヒドロキシル基すべてが異なる脂肪酸によってエステル化されているものでもよい。
【0071】
本開示のグリセリンエステル系可塑剤は、無毒性であり、容易に生分解されるため環境への負荷が小さい。また、本開示のセルロースアセテートに添加することにより、得られる熱成形用セルロースアセテート組成物のガラス転移温度を低下させることができるため、加熱により容易に均一に溶融させ、セルロースアセテートに優れた熱成形性を付与することもできる。セルロースアセテート組成物をより低い温度で熱成形できれば、熱成形性が向上するだけでなく、セルロースアセテート分子の損傷を低減できる。そして、セルロースアセテート分子の損傷を低減できれば、各種加工品としての使用寿命を長くすることができる。
【0072】
上記脂肪酸が酢酸である場合、グリセリンエステル系可塑剤として、グリセリンの3個のヒドロキシル基が酢酸によってエステル化されているものとしてトリアセチン、及び2個のヒドロキシル基が酢酸によってエステル化されているものとしてジアセチン等が挙げられる。
【0073】
上記グリセリンエステル系可塑剤の中でも特に、グリセリンの3個のヒドロキシル基すべてが酢酸によってエステル化(言い換えればアセチル化)されているトリアセチン(グリセロールトリスアセタート)が好ましい。トリアセチンは、人が摂取しても安全と認められる成分であり、容易に生分解されるため環境への負荷が小さい。また、トリアセチンを本開示のセルロースアセテートに添加することにより得られる熱成形用セルロースアセテート組成物は、セルロースアセテート単体の場合よりも生分解性が向上する。さらに、トリアセチンを本開示のセルロースアセテートに添加することにより、セルロースアセテートのガラス転移温度を効率よく低下させることができ、優れた熱成形性を付与することができる。
【0074】
そして、上述のとおり、トリアセチンは、人が摂取しても安全であり、セルロースアセテートに優れた熱成形性を付与できることから、いわゆるドラッグデリバリーシステムに用いるドラッグデリバリー用のカプセルの材料としても用いることができる。さらに、トリアセチンをセルロースアセテートに添加することにより、得られる熱成形用セルロースアセテート組成物をタバコの部材として用いる場合にも、タバコの喫味を害する恐れがない。
【0075】
なお、トリアセチンは、化学構造的に純粋なトリアセチンのみから構成されるものの他、トリアセチン純度は高い方がよいが、例えば、トリアセチンの含有量は、グリセリンエステル系可塑剤のうち80重量%以上、90重量%以上であってもよい。残部としてモノアセチン及び/又はジアセチンが含まれているものであってもよい。
【0076】
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物に含まれるグリセリンエステル系可塑剤の含有量は特に限定されないが、セルロースアセテート及び前記グリセリンエステル系可塑剤の合計量100重量部に対し、2重量部以上40重量部以下が好ましく、5重量部以上40重量部以下がより好ましく、10重量部以上30重量部以下がさらに好ましく、10重量部以上25重量部以下が最も好ましい。2重量部未満であると、セルロースアセテートに熱成形性を十分に付与できず、40重量部を超えると、グリセリンエステル系可塑剤がブリードアウトする可能性が高くなるためである。
【0077】
[熱成形用セルロースアセテート組成物の製造]
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物の製造方法は、グリセリンエステル系可塑剤を、分散媒または溶媒に分散または溶解させて、分散液または溶液を調製する工程と、前記分散液または前記溶液とセルロースアセテートとを混合する工程と、前記混合により得られた混合物から、前記分散媒または前記溶媒を気化させる工程とを有し、前記セルロースアセテートは、アセチル置換度が1.4以上2.0以下、下記で定義される組成分布指数(CDI)が4.0以下、及び全硫黄含有量が15mg/kg以上150mg/kg未満である。
【0078】
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:セルロースアセテート(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
【数4】
DS:アセチル置換度
DPw:重量平均重合度(セルロースアセテート(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
【0079】
組成物中、グリセリンエステル系可塑剤がセルロースアセテートに対し、不均一な状態で配合されていると、当該組成物を溶融紡糸や射出成形等の熱成形して成形体にしても、溶融物(melt)中に未溶融物が残留し、不均一な成形体となってしまう。
【0080】
一般に高分子の溶融成形では、当該組成物中の不純物を除去する目的で、フィルター(特にメッシュ状フィルター)を設置している。未溶融物が多く残留すると、未溶融物によりフィルターがすぐに目詰まりを起こす。フィルターの目詰まりにより、押出機のヘッドプレッシャーが上昇して成形体の製造効率が低下し、更には製造機器(押出機等)の損傷にもつながる。
【0081】
しかしながら、本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物の製造方法により、グリセリンエステル系可塑剤がセルロースアセテートに対し均一な状態で配合されるため、当該組成物を熱成形する際の加工性を向上し、成形体の製造効率も向上できる。優れた生分解性を有し、白濁及び未溶融物の残留が少なく優れた熱成形性を有する熱成形用セルロースアセテート組成物が得られる。そして、溶融物(melt)中に未溶融物が残留することなく、均一な成形体が得られる。
【0082】
グリセリンエステル系可塑剤を、分散媒または溶媒に分散または溶解させて、分散液または溶液を調製する工程について述べる。
【0083】
分散媒は、可塑剤を、分散(特に懸濁化)、またはエマルジョン化できる液体をいい、溶媒は、可塑剤を溶解できる液体をいう。
【0084】
分散媒または溶媒としては、特に限定されるものではないが、水、エタノール、または水及びエタノールの混合溶液が好ましい。セルロースアセテートを膨潤させて、グリセリンエステル系可塑剤をより容易にセルロースアセテートの内部に浸み込ませることができるためである。また、セルロースアセテートとグリセリンエステル系可塑剤との接触面積を増やして、グリセリンエステル系可塑剤がセルロースアセテートに対しより均一な状態で配合できるためである。その結果、未溶融物が消失し、白濁及び未溶融物が残留することなく、より均一なセルロースアセテート組成物又は成形体が得られる。さらに、水、エタノール、または水及びエタノールの混合溶液は、人体に対して無害または低毒性であり、沸点が低い。特に、水はコストも低い。
【0085】
セルロースアセテートに対する分散媒または溶媒の配合量は、特に限定されるものではないが、セルロースアセテート及びグリセリンエステル系可塑剤の合計量100重量部に対し、分散媒または溶媒が50重量部以上150重量部以下が好ましく、60重量部以上90重量部以下がより好ましい。
【0086】
前記分散液または前記溶液とセルロースアセテートとを混合する工程について述べる。
【0087】
混合は、遊星ミル、ヘンシェルミキサー、振動ミル、及びボールミル等の混合機により行うことができる。小スケールであれば、フードプロセッサー等を用いて混合してもよい。また、混合の条件は特に限定されるものではないが、撹拌しながら、少量ずつ分散液または溶液をセルロースアセテートに添加することが好ましい。分散液または溶液の添加速度は、例えば、100重量部のセルロースアセテートに対して、2重量部/min〜20重量部/minであってよい。
【0088】
前記混合により得られた混合物から、前記分散媒または前記溶媒を気化させる工程について述べる。
【0089】
分散媒または溶媒を気化させる方法としては、特に限定されるものではない。前記混合により得られた混合物が溶融する温度以上また当該温度未満であってよいが、0℃以上200℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。
【0090】
分散媒または溶媒として、水、エタノール、または水及びエタノールの混合溶液を用いる場合、20℃以上70℃以下の温度で、4時間以上72時間以下の条件で乾燥すればよい。
【0091】
さらに、前記混合により得られた混合物から、前記分散媒または前記溶媒を気化させる工程の後、溶融混練する工程を有してもよい。溶融混練の条件としては、一軸又は二軸押出機等の押出機を用いて、例えば、各加熱ゾーンの温度を140℃以上170℃以下に設定して行うことができる。
【0092】
また、前記混合により得られた混合物から、前記分散媒または前記溶媒を気化させる工程と、溶融混練する工程を同時に行ってもよい。言い換えれば、溶融混練を行いながら分散媒または溶媒を気化させてもよい。ただし、気化と溶融混練とを同時に行う場合は、分散媒または溶媒としてはエタノールを用いることが好ましい。
【0093】
セルロースアセテートと、グリセリンエステル系可塑剤とを配合する方法としては、セルロースアセテート及びグリセリンエステル系可塑剤を共通良溶媒に溶解し、均一に混合した後に溶媒を揮発させる方法でも良い。共通良溶媒としては、例えば、塩化メチレン/メタノール(重量比9:1)の混合溶媒が挙げられる。
【0094】
いずれの製造方法においても、セルロースアセテートとグリセリンエステル系可塑剤との配合時に、成形体の用途・仕様に応じ、着色剤、耐熱安定剤、抗酸化剤、及び紫外線吸収剤等を添加することが出来る。
【0095】
(セルロースアセテートの製造)
セルロースアセテートは、例えば、(A)中乃至高置換度セルロースアセテートの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈澱工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。
【0096】
((A)加水分解工程(熟成工程))
この工程では、中乃至高置換度セルロースアセテート(以下、「原料セルロースアセテート」と称する場合がある)を加水分解する。原料として用いる中乃至高置換度セルロースアセテートのアセチル置換度は、例えば、1.5〜3、好ましくは2〜3である。原料セルロースアセテートとしては、市販のセルロースジアセテート(アセチル置換度2.27〜2.56)やセルローストリアセテート(アセチル置換度2.56超〜3)を用いることができる。
【0097】
加水分解反応は、有機溶媒中、触媒(熟成触媒)の存在下、原料セルロースアセテートと水を反応させることにより行うことができる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、アセトン、アルコール(メタノール等)、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、少なくとも酢酸を含む溶媒が好ましい。触媒としては、一般に脱アセチル化触媒として用いられる触媒を使用できる。触媒としては、特に硫酸が好ましい。
【0098】
有機溶媒(例えば、酢酸)の使用量は、原料セルロースアセテート1重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
【0099】
触媒(例えば、硫酸)の使用量は、原料セルロースアセテート1重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部である。触媒の量が少なすぎると、加水分解の時間が長くなりすぎ、セルロースアセテートの重合度(分子量)の低下を引き起こすことがある。一方、触媒の量が多すぎると、加水分解温度に対する解重合速度の変化の度合いが大きくなり、加水分解温度がある程度低くても解重合速度が大きくなり、重合度(分子量)がある程度大きいセルロースアセテートが得られにくくなる。また、アセチル置換度がばらついた不均一なセルロースアセテートにもなる。
【0100】
加水分解工程における水の量は、原料セルロースアセテート1重量部に対して、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜7重量部である。また、該水の量は、有機溶媒(例えば、酢酸)1重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1.5重量部である。水は、反応開始時において全ての量を系内に存在させてもよいが、セルロースアセテートの沈澱を防止するため、使用する水の一部を反応開始時に系内に存在させ、残りの水を1〜数回に分けて系内に添加してもよい。
【0101】
加水分解工程における反応温度は、例えば、40〜130℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃である。特に、反応温度を90℃以上(或いは90℃を超える温度)とする場合には、正反応(加水分解反応)に対する逆反応(アセチル化反応)の速度が増加する方向に反応の平衡が傾く傾向があり、その結果、置換度分布が狭くなり、後処理条件を特に工夫しなくとも、組成分布指数CDIは極めて小さい、置換度の低いセルロースアセテートを得ることができる。この場合、触媒として硫酸等の強酸を用いるのが好ましく、また、反応溶媒として酢酸を過剰に用いるのが好ましい。また、反応温度を90℃以下とする場合であっても、後述するように、沈澱工程において、沈澱溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いて沈澱させたり、沈澱分別及び/又は溶解分別を行うことにより、組成分布指数CDIが非常に小さい、置換度の低いセルロースアセテートを得ることができる。
【0102】
((B)沈澱工程)
この工程では、加水分解反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、沈澱溶媒を加えて置換度の低いセルロースアセテートを沈澱させる。沈澱溶媒としては、水と混和する有機溶剤若しくは水に対する溶解度の大きい有機溶剤を使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトニトリル等の含窒素化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル;これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0103】
沈澱溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いると、後述する沈澱分別と同様の効果が得られ、組成分布(分子間置換度分布)が狭く、組成分布指数(CDI)が小さい、置換度の低いセルロースアセテートを得ることができる。好ましい混合溶媒として、例えば、アセトンとメタノールの混合溶媒、イソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒等が挙げられる。
【0104】
また、沈澱して得られた置換度の低いセルロースアセテートに対して、さらに沈澱分別(分別沈澱)及び/又は溶解分別(分別溶解)を行うことにより、組成分布(分子間置換度分布)が狭く、組成分布指数CDIが非常に小さい置換度の低いセルロースアセテートを得ることができる。
【0105】
沈澱分別は、例えば、沈澱して得られた置換度の低いセルロースアセテート(固形物)を水または水と親水性溶媒(例えばアセトン)の混合溶媒に溶解し、適当な濃度(例えば、2〜10重量%、好ましくは3〜8重量%)の水系溶液とし、この水系溶液に貧溶媒を加え(又は、貧溶媒に前記水系溶液を加え)、適宜な温度(例えば、30℃以下、好ましくは20℃以下)に保持して、置換度の低いセルロースアセテートを沈澱させ、沈澱物を回収することにより行うことができる。貧溶媒としては、例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトン等が挙げられる。貧溶媒の使用量は、前記水溶液1重量部に対して、例えば1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部である。
【0106】
溶解分別は、例えば、前記沈澱して得られた置換度の低いセルロースアセテート(固形物)或いは前記沈澱分別で得られた置換度の低いセルロースアセテート(固形物)に、水と有機溶媒(例えば、アセトン等のケトン、エタノール等のアルコール等)の混合溶媒を加え、適宜な温度(例えば、20〜80℃、好ましくは25〜60℃)で撹拌後、遠心分離により濃厚相と希薄相とに分離し、希薄相に沈澱溶剤(例えば、アセトン等のケトン、メタノール等のアルコール等)を加え、沈澱物(固形物)を回収することにより行うことができる。前記水と有機溶媒の混合溶媒における有機溶媒の濃度は、例えば、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
【0107】
((C)洗浄、中和工程)
沈澱工程(B)で得られた沈澱物(固形物)は、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトン等の有機溶媒(貧溶媒)で洗浄するのが好ましい。また、塩基性物質を含む有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトン等)で洗浄、中和することも好ましい。洗浄、中和により、加水分解工程で用いた触媒(硫酸等)等の不純物を効率よく除去することができる。
【0108】
前記塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド等)、並びにアルカリ土類金属化合物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属カルボン酸塩;マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド等)等を使用できる。これらの中でも、特に、酢酸カリウム等のアルカリ金属化合物が好ましい。
【0109】
[成形体]
本開示の成形体は、上記熱成形用セルロースアセテート組成物を成形してなるものである。その成形体の形状としては、特に制限されず、例えば、繊維等の一次元的成形体;フィルム等の二次元的成形体;並びにペレット、チューブ及び中空円柱状等の三次元的成形体が挙げられる。
【0110】
繊維等の一次元的成形体を製造する場合、本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物を紡糸することによって得ることができ、その紡糸方法としては、溶融紡糸(メルトブロー紡糸法を含む)が挙げられる。
【0111】
例えば、前記熱成形用セルロースアセテート組成物(ペレット等)を、公知の溶融押出紡糸機において、加熱溶融した後、口金から紡糸し、紡出された連続長繊維フィラメント群をエジェクターにより高速高圧エアーで延伸し巻き取るか、あるいは、開繊して捕集用の支持体面上に捕集してウェブを形成することにより繊維状のセルロースアセテート複合体成形品を得ることができる。また、押出機で溶融した前記熱成形用セルロースアセテート組成物を、例えば幅方向1m当たり数百から数千個の口金を持つダイから、高温・高速の空気流で糸状に吹き出し、繊維状に延伸された樹脂をコンベア上で集積し、その間に繊維同士の絡み合い及び融着を生じさせることにより不織布を製造することができる(メルトブロー紡糸法)。溶融紡糸時の紡糸温度は、例えば、130〜240℃、好ましくは140〜200℃、より好ましくは150〜188℃である。紡糸温度が高すぎると成形品の着色が顕著になる。また、紡糸温度が低すぎると、組成物の粘度が低くなり、紡糸ドラフト比を高くするのが困難となり生産性が低下しやすくなる。紡糸ドラフト比は、例えば200〜600程度である。
【0112】
上記溶融紡糸法により得られる糸の繊度は、例えば1〜9デニール(d)、好ましくは1.3〜5デニール(d)である。また、前記糸の強度は、例えば0.3〜1.5g/d程度である。
【0113】
特に、電子タバコに用いる紙巻タバコのセルロースアセテートトウフィルタとして使用する場合、繊度は1〜40デニール(d)、3〜30デニール(d)、5〜30デニール(d)、8〜25デニール(d)、10〜20デニール(d)であってよい。電子タバコは、従来の紙巻きタバコと異なり、燃焼させないので燃焼に伴って生じる副生物を除去する必要がなく、電子タバコに用いる紙巻タバコのセルロースアセテートトウフィルタの濾過性能(性)は、従来の紙巻きタバコに用いられるフィルタと比較して遥かに低くてもよいためである。なお、電子タバコに用いる紙巻タバコの中空のセルロース・アセテート管体は、トウから製造するのは、中空状の形状への成形を含めて製造過程に時間がかかり、製造コストの上昇にも関わる。また、フィルタの低濾過性を実現するのに、トウ繊維のデニールを大きくする(繊維を太くする)手法もあるが、太いデニールトウ繊維の製造には工業的に限界がある。将来的に電子タバコ向けの更なる低濾過性フィルタの需要に対して、トウでは達成困難であるため、後述するように、三次元的成形体として形成してもよい。
【0114】
次に、フィルム等の二次元的成形体を製造する場合、溶融製膜方法を採用することができる。溶融製膜方法としては、押出成形、ブロー成形等が挙げられる。押出成形について、具体的には、例えば、本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物を一軸又は二軸押出機等の押出機で溶融混練して、ダイのスリットからフィルム状に押出成形し、冷却することによりフィルム又はシートを製造することができる。
【0115】
溶融製膜方法によって得られるフィルムの厚さは、例えば、1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜500μm、さらに好ましくは10μm〜250μmである。特に、電子タバコに用いる紙巻タバコの冷却要素として使用する場合、フィルムの厚さが15μm〜200μm、20μm〜150μm、25μm〜100μm、35μm〜70μmであってよい。電子タバコは、従来の紙巻タバコに比べ、タバコ葉を加熱することにより飛散するニコチンの量は僅かであるので、なるべく損失することなく喫煙者(電子タバコを吸っている人)にデリバリー(配分)する必要がある。また、タバコ葉を加熱するタイプでは、ニコチンはエアロゾル中の液滴に含まれているが、この液滴は吸引するには高温であるので、予め冷却する必要がある。これらの要件を満たすため、フィルムの厚さは上記範囲であってよい。
【0116】
さらに、中空円柱状等の三次元的成形体を製造する場合、熱成形によって製造することができる。具体的には、例えば、ペレット状の本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物を、加熱圧縮成形、溶融押出成形、及び射出成形することにより、中空円柱状を含む所望の三次元的成形体を製造することができる。機器としては、例えば、株式会社メイホー 射出成形機Micro−1や、丸東製作所 FRP試験片成形用加熱圧縮成形機 ML−48などを使うことができる。成形時の加熱温度としては、240〜180℃の間であってよく、グリセリンエステル系可塑剤を含む添加剤の添加量は適宜調整すればよい。
【0117】
本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物をペレット状とする方法は、特に限定されないが、例えば、まず、本開示のセルロースアセテート及びグリセリンエステル系可塑剤を、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、及びニーダー等の混合機を用いて乾式又は湿式で予備混合して調製し、次に、一軸又は二軸押出機等の押出機で溶融混練して、ペレット状に調製する方法が挙げられる。
【0118】
ペレット状の本開示の熱成形用セルロースアセテート組成物から溶融押出成形によって三次元的成形体を形成する具体的方法としては、特に限定されないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等を用いることができる。
【0119】
上記のとおり、本開示のセルロースアセテート及びグリセリンエステル系可塑剤を押出機で溶融混練して、ペレットを調製してから成形体を得る方法の他、セルロースアセテートのフレーク表面にグリセリンエステル系可塑剤を付着させたものを、加熱して、圧縮成形を行うことにより中空円柱状を含む所望の三次元的成形体を製造することができる。圧縮成形は、市販の圧縮成形機を用いて、温度は150℃から240℃、望ましくは230℃、圧力は0.01MPa以上、望ましくは0.5MPaで、30秒以上望ましくは2分間程度加工すればよい。セルロースエステルのフレークとは、セルロースをアセチル化した後、平均置換度を調整するために加水分解反応を行い、精製・乾燥して得られたフレーク状のセルロースエステルのことをいう。
【0120】
中空円柱状の三次元的成形体は、電子タバコに用いる紙巻タバコの中空のセルロース・アセテート管体としてそのまま用いることができるものであってもよいし、また、軸方向に垂直に切り出すことで、電子タバコに用いる紙巻タバコの中空のセルロース・アセテート管体を得ることができる切断前の長尺の部材であってもよい。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0122】
後述する実施例、比較例及び参考例に記載の各物性は、以下の方法で評価した。
【0123】
<アセチル置換度、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、組成分布指数(CDI)及び全硫黄含有量>
アセチル置換度、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、組成分布指数(CDI)及び全硫黄含有量は、上記の方法により求めた。また、これらに関連する、酢化度、組成分布半値幅の実測値、分子量分布(Mw/Mn)、及び重量平均重合度(DPw)も、上記の方法により求めた。数平均重合度(DPn)は、重量平均重合度(DPw)と同様に、セルロースアセテート(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
【0124】
<熱成形性評価>
熱成形性評価はガラス転移温度を測定することにより行った。示差走査熱量測定機(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント社製示差走査熱量計DSC Q2000)を用いて、窒素雰囲気、1st heat:30℃〜200℃、2nd heat:30℃〜250℃の温度範囲、20℃/minの昇温速度という条件にして、DSC曲線を描かせた。このDSC曲線のガラス転移前後のベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(中間点ガラス転移温度)をガラス転移温度Tg(℃)とした。
【0125】
<生分解性評価>
生分解性評価は、JIS K 6950に準じた活性汚泥を使用して生分解度を測定する方法により行った。活性汚泥は、福岡県多々良川浄化センターから入手した。その活性汚泥を1時間程度放置して得られる上澄み液(活性汚泥濃度:約360ppm)を1培養瓶あたり約300mL使用した。サンプル30mgを当該上澄み液中で撹拌した時点を測定開始とし、その後24時間おきに、720時間後つまり30日後まで合計31回測定した。測定の詳細は以下のとおりである。大倉電気(株)製クーロメータ OM3001を用いて、各培養瓶中の生物化学的酸素要求量(BOD)を測定した。各試料の化学組成に基づく完全分解における理論上の生物化学的酸素要求量(BOD)に対する、生物化学的酸素要求量(BOD)のパーセンテージを生分解度(重量%)とした。
【0126】
<耐水性評価>
塩化メチレン/メタノール(重量比9:1)の混合溶媒に、各試料(セルロースアセテートまたはセルロースアセテート組成物)1重量部に対し、混合溶媒5重量部の割合で溶解し、ガラス基板を用いて溶液流延法(solution casting)で、フィルムサンプルを作製した。フィルムサンプルのサイズは、2cm×2cmで、厚み約120μmである。フィルムサンプルを80ml純水を入れた100mlサイズの瓶に入れ、回転機にて14rpmの回転速度で回転を開始し、フィルムサンプルの形状及び重量の経時変化を確認した。形状は肉眼で観察した。重量については、フィルムサンプルを純水から取り出し、水滴を拭き、105℃乾燥機にて1h乾燥した後に分析用精密電子天秤にて重量を測定し、回転開始時からの重量変化量(%)として求めた。また、表1に示す評価の詳細は次のとおりである。
○:回転開始から1時間後、フィルムサンプルに破損も変形もなく、フィルムサンプルの重量変化量が10%未満の減少である。
△:回転開始から1時間後、フィルムサンプルの重量変化量が10%未満の減少であるが、破損または変形があった;または、フィルムサンプルに破損も変形もないが、フィルムサンプルの重量変化量が10%以上の減少である。
×:回転開始から1時間以内にフィルムサンプルが全て溶解した。
【0127】
<実施例A−1>
原料セルロースアセテート(ダイセル社製、商品名「L−50」、アセチル総置換度2.43、6%粘度:110mPa・s)1重量部に対して、5.1重量部の酢酸および2.0重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌してセルロースアセテートを溶解した。この溶液に0.13重量部の硫酸を加え、得られた溶液を95℃に保持し、加水分解を行った。加水分解の間にセルロースアセテートが沈澱するのを防止するために、系への水の添加を2回に分けて行った。すなわち、反応を開始して0.3時間後に0.67重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに0.7時間後、1.33重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに1.5時間反応させた。合計の加水分解時間は2.5時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
【0128】
加水分解を実施した後、系の温度を室温(約25℃)まで冷却し、反応混合物に15重量部の沈澱溶媒(メタノール)を加えて沈澱を生成させた。
【0129】
固形分15重量%のウェットケーキとして沈澱を回収し、8重量部のメタノールを加え、固形分15重量%まで脱液することにより洗浄した。これを3回繰り返した。洗浄した沈澱物を、酢酸カリウムを0.004重量%含有するメタノール8重量部でさらに2回洗浄して中和し、乾燥して、アセチル置換度1.7のセルロースアセテートを得た。なお、これをセルロースアセテートAと称する。セルロースアセテートAの各物性は表4に示すとおりである。
【0130】
得られたセルロースアセテートAを98重量部と、グリセリンエステル系可塑剤としてトリアセチン2重量部を、塩化メチレン/メタノール(重量比9:1)の混合溶媒に溶解させ、均一に混合させた。その後、室温で3min、45℃乾燥機で30min、150℃乾燥機で30minと順に条件を変え、溶媒を揮発させて熱成形用セルロースアセテート組成物を得た。
【0131】
得られた熱成形用セルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価を行なった。結果は、表1に示す。
【0132】
<実施例A−2〜5>
セルロースアセテートA、及びトリアセチンを表1に示す量に代えた以外は実施例A−1と同様にして、熱成形用セルロースアセテート組成物を得た。
【0133】
得られた熱成形用セルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価を行なった。実施例A−4については、前記の方法で、熱成形性評価、生分解性評価及び耐水性評価を行なった。結果は、表1及び表2に示す。実施例A−4の耐水性評価について述べると、水を入れた容器でサンプルを連続回転処理し、1時間経過後に重量が約6%減少したが、サンプル自体には破損または変形が無かった。
【0134】
<実施例A−6>
セルロースアセテートAを95重量部とし、グリセリンエステル系可塑剤としてジアセチンを5重量部とした以外は実施例A−1と同様にして、熱成形用セルロースアセテート組成物を得た。
【0135】
得られた熱成形用セルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価を行なった。結果は、表1に示す。
【0136】
<実施例A−7〜8>
セルロースアセテートA、及びジアセチンを表1に示す量に代えた以外は実施例A−6と同様にして、熱成形用セルロースアセテート組成物を得た。
【0137】
得られた熱成形用セルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価を行なった。結果は、表1に示す。
【0138】
<実施例A−9>
酸処理済のリンターパルプ(言い換えれば、パルプ7重量部と酢酸4重量部の混合物である。なお、リンターパルプは、坪量:525g/m
2、密度:0.45g/cm
3である。)に、硫酸1重量部、無水酢酸16重量部及び酢酸24重量部を添加し、36℃で125分間アセチル化を行った。その後、アセチル化を行ったパルプを含む反応物に、酢酸マグネシウム、水蒸気、及び水を導入し、85℃で340分間で加水分解させた。精製、乾燥して酢化度49.4%、重量平均重合度(DPw)420の酢酸セルロースが得られた。なお、これをセルロースアセテートBと称する。セルロースアセテートBの各物性は表4に示すとおりである。
【0139】
セルロースアセテートBを80重量部と、グリセリンエステル系可塑剤としてトリアセチン20重量部を、塩化メチレン/メタノール(重量比9:1)の混合溶媒に溶解させ、均一に混合させた。その後、室温で3min、45℃乾燥機で30min、150℃乾燥機で30minと順に条件を変え、溶媒を揮発させて熱成形用セルロースアセテート組成物を得た。
【0140】
得られた熱成形用セルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価及び耐水性評価を行なった。結果は、表2に示す。また、耐水性評価について述べると、水を入れた容器でサンプルを連続回転処理し、1時間経過後に重量が約2%減少したが、サンプル自体には破損または変形が無かった。
【0141】
<比較例A−1>
セルロースアセテートAにグリセリンエステル系可塑剤を添加しなかった以外は、実施例A−1と同様にして、セルロースアセテート組成物を得た。得られたセルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価、生分解性評価及び耐水性評価を行なった。結果は、表1及び表2に示す。また、耐水性評価について述べると、水を入れた容器でサンプルを連続回転処理し、1時間経過後に重量減少は認められなかった。サンプル自体には破損または変形が無かった。
【0142】
<比較例A−2>
原料セルロースアセテート(ダイセル社製、商品名「L−50」、アセチル総置換度2.43、6%粘度:110mPa・s)1重量部に対して、5.1重量部の酢酸および2.0重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌してセルロースアセテートを溶解した。この溶液に0.13重量部の硫酸を加え、得られた溶液を100℃に保持し、加水分解を行った。加水分解の間にセルロースアセテートが沈澱するのを防止するために、系への水の添加を2回に分けて行った。すなわち、反応を開始して0.25時間後に0.67重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに0.5時間後、1.33重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに1.25時間反応させた。合計の加水分解時間は2時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
【0143】
加水分解を実施した後、系の温度を室温(約25℃)まで冷却し、反応混合物に15重量部の沈澱溶媒(メタノール)を加えて沈澱を生成させた。
【0144】
固形分15重量%のウェットケーキとして沈澱を回収し、8重量部のメタノールを加え、固形分15重量%まで脱液することにより洗浄した。これを3回繰り返した。洗浄した沈澱物を、酢酸カリウムを0.004重量%含有するメタノール8重量部でさらに2回洗浄して中和し、乾燥して、アセチル置換度0.87のセルロースアセテートを得た。
【0145】
その得られたセルロースアセテートについて、アセチル置換度、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び組成分布指数(CDI)を測定した。また、セルロースアセテートAを、当該アセチル置換度0.87のセルロースアセテートに代えた以外は、比較例A−1と同様にして、セルロースアセテート組成物を得た。得られたセルロースアセテート組成物について、前記の方法で、生分解性評価及び耐水性評価を行なった。結果は、表1及び表2に示す。また、水を入れた容器でサンプルを連続回転処理し、1時間経過後サンプル自体は全部溶解し、重量測定が不可能になった。
【0146】
<比較例A−3>
セルロースアセテートAをセルロースアセテートBに代えた以外は、比較例A−1と同様にして、セルロースアセテート組成物を得た。得られたセルロースアセテート組成物について、前記の方法で、熱成形性評価、生分解性評価及び耐水性評価を行なった。結果は、表1及び表2に示す。また、耐水性評価について述べると、水を入れた容器に連続回転処理したが、24時間経過後でもほとんど重量は減少せず、サンプル自体には破損または変形が無かった。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
表1に示されるように、実施例の熱成形用セルロースアセテート組成物は、グリセリンエステル系可塑剤を含有することにより、10日後の生分解度が高まり、生分解性が向上した。また、ガラス転移温度が低下し、加熱により容易に均一に溶融させることができるようになり、優れた熱成形性を有することが確認できた。さらに、表1及び表2に示されるように、実施例の熱成形用セルロースアセテート組成物は、セルロースアセテートと同等の耐水性を有することも確認できた。
【0150】
また、実施例A−1のセルロースアセテート組成物のガラス転移温度は、191.6℃であり、比較例A−1の201.4℃に比べて10℃程度低い。アセチル置換度1.7のセルロースアセテートは、220℃付近で熱分解が始まり、250℃以上になると完全に熱分解する性質を有するが、実施例A−1のセルロースアセテート組成物は、比較例A−1のセルロースアセテート組成物に比べて低い温度で熱成形できるため、各種加工品としての使用寿命を長くすることができる。
【0151】
<実施例B−1>
セルロースアセテートAを粉砕加工により粉状にし、105℃乾燥機にて1時間乾燥し、その後デシケーターにて室温で1時間放冷した。
【0152】
グリセリンエステル系可塑剤として30重量部(150g)のトリアセチンと、分散媒または溶媒として70重量部(350g)のエタノールとを混合し、シェーカーにて振動をかけてトリアセチンとエタノールの溶液を調製した。
【0153】
乾燥及び放冷後の70重量部(350g)のアセチル置換度1.7のセルロースアセテートを、フードプロセッサー(Cuisinart社製 DLC−NXPLUS)(以下、「ミキサー」とも称する)に入れて、その後、ミキサーで攪拌しながら、ピペットもしくは噴霧器を用いて、約50g/minの速度で前記溶液をセルロースアセテートに添加した。
【0154】
調製した前記溶液のうち半分量を添加したら、ミキサーを一旦停止し、ミキサーの壁、底、及び攪拌翼に付着したブレンド物を解した。その後、ミキサーを再度起動させて、残りの前記溶液を、引き続き約50g/minの速度で添加した。
【0155】
前記溶液の添加が終わったら、再度、ミキサーを停止し、ミキサーの壁、底、及び攪拌翼に付着したブレンド物を解し、その後、ミキサーを再度起動させて、さらに1分以上攪拌した。
【0156】
ブレンド物を風通しのよい平らな容器に入れて、室温で72時間以上乾燥した。その後、篩(目の開き:3.35mm)を通して、大きな塊を取り除いた。
【0157】
ブレンド物を二軸押出機(Thermo Fisher Scientific社製 Process11)(以下、「小型二軸押出機」とも称する)に入れて、145〜165℃で押出しを行い、ストランドを得た。
【0158】
<加熱加工後(押出し)後の状態>
押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3及び
図1に示す。評価の詳細は次のとおりである。
完全に溶融:未溶融物が確認されず、全体的に透明で均一な成形体が得られた。
未溶融物残留:透明な部分があるが、部分的に未溶融物が含まれる成形体が得られた。
白濁/濁りが発生:全体的に白く濁った成形体が得られた(部分的に未溶融物が含まれる場合を含む)。
完全に未溶融:セルロースアセテートが溶融せず、粉状のままであった。
未溶融物残留、及び白濁/濁りが発生した理由は、溶融状態が不均一であり、部分によって粘度差が生じたことによるものと想定される。
【0159】
<実施例B−2>
グリセリンエステル系可塑剤としてトリアセチンに代えて、ジアセチンを用いた以外は、実施例B−1と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3及び
図2に示す。
【0160】
<実施例B−3>
分散媒または溶媒としてエタノールに代えて水を用い、トリアセチンと水とを混合したものが溶液でなく、エマルジョンであった以外は、実施例B−1と同様にして、ストランドを得た。また、ストランドを切断してペレット状にした、押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。また、以下の方法にて、着色評価を行った。結果は表3及び
図3に示す。
【0161】
<着色評価>
ストランドを切断してペレット状にした。そのペレットを熱プレス機(アズワン製、HC300−01)を用い180℃で厚み3mmの板サンプルに加工した。板サンプルのb値をSpectro Color Meter SQ2000(日本電色工業)にて測定した。なお、b値が高い程、より黄色みが増す。
【0162】
<実施例B−4>
分散媒または溶媒としてエタノールに代えて水を用いた以外は、実施例B−2と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示す。
【0163】
<実施例B−5>
セルロースアセテートAをセルロースアセテートBに代えた以外は、実施例B−1と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示す。
【0164】
<実施例B−6>
セルロースアセテートAをセルロースアセテートBに代えた以外は、実施例B−3と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示す。
【0165】
<比較例B−1>
セルロースアセテートAを粉砕加工により粉状にし、105℃乾燥機にて1時間乾燥し、その後デシケーターにて室温で1時間放冷した。
【0166】
乾燥及び放冷後のセルロースアセテートを小型二軸押出機に入れて、180〜220℃で押出しを行った。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示すように、セルロースアセテートが完全に未溶融物となり、押出機の混練用軸が過負荷により自動停止した。
【0167】
<比較例B−2>
セルロースアセテートAをセルロースアセテートBに代えた以外は、比較例B−1と同様にして、押出しを行った。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示す。
【0168】
<比較例B−3>
絶乾全重量当たり針葉樹材パルプ(坪量:856g/cm
3、密度:0.56g/cm
3)13重量%、硫酸2重量%、無水酢酸35重量%及び氷酢酸50重量%からなる混合物を、36℃で3時間アセチル化を行った。その後、反応後反応物を酢酸カリウムで中和し、さらに、その後反応物に水蒸気及び水を入れ、60℃で6時間加水分解し、精製、乾燥して酢化度約45%、重量平均重合度約300の酢酸セルロースを得た。なお、これをセルロースアセテートCと称する。セルロースアセテートCの各物性は表4に示すとおりである。
【0169】
セルロースアセテートAをセルロースアセテートCに代えた以外は、実施例B−3と同様にして、ストランド及びペレットを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3及び
図3に示す。極微少量の未溶解物が残留した。また、ペレット状にしたときに、より顕著に表面に白濁/濁りが発生した。
【0170】
<比較例B−4>
セルロースアセテートAをセルロースアセテートCに代え、分散媒または溶媒を用いなかった以外は、実施例B−3と同様にして、ストランド及びペレットを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3及び
図3に示す。大量の未溶解物が残留した。
【0171】
<比較例B−5>
セルロースアセテートAを粉砕加工により粉状にし、105℃乾燥機にて1時間乾燥し、その後デシケーターにて室温で1時間放冷した。
【0172】
乾燥及び放冷後の70重量部(350g)のセルロースアセテートAをミキサーに入れた。ミキサーで攪拌しながら、ピペットもしくは噴霧器を用いて、約15g/minの速度で、セルロースアセテートに対し、トリアセチン30重量部(150g)の添加を開始した。
【0173】
トリアセチンの半分量を添加したら、ミキサーを一旦停止し、ミキサーの壁、底、及び攪拌翼に付着したブレンド物を解した。その後、ミキサーを再度起動させて、残りのトリアセチンを、引き続き約15g/minの速度で添加した。
【0174】
トリアセチンの添加が終わったら、再度、ミキサーを停止し、ミキサーの壁、底、攪拌翼に付着したブレンド物を解し、その後、ミキサーを再度起動させて、さらに1分以上攪拌した。
【0175】
ブレンド物を十分に解し、バット等風通しの良い開放系容器に入れて、80℃で2時間乾燥した。その後、篩(目の開き:3.35mm)を通して、大きな塊を取り除いた。
【0176】
ブレンド物を小型二軸押出機に入れて、180〜220℃で押出しを行い、ストランドを得た。押出し後のストランドの状態を目視にて観察した。その結果、ブレンド物は溶融したが、ストランド中に未溶融物が残留した。
【0177】
<比較例B−6>
グリセリンエステル系可塑剤としてトリアセチンに代えて、ジアセチンを用いた以外は、比較例B−5と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。その結果、ブレンド物は溶融したが、ストランド中に未溶融物が残留した。
【0178】
<比較例B−7>
セルロースアセテートAをセルロースアセテートBに代えた以外は、比較例B−5と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。その結果、ブレンド物は溶融したが、ストランド中に僅かに未溶融物が残留した。
【0179】
<参考例1>
アセチル置換度2.45のセルロースアセテート(ダイセル社製酢酸セルロース、極限粘度:84mPa・s)を粉砕加工により粉状にし、105℃乾燥機にて1時間乾燥し、その後デシケーターにて室温1時間放冷した。なお、当該セルロースアセテートの各物性は表3に示すとおりである。
【0180】
乾燥及び放冷後のセルロースアセテートを小型二軸押出機に入れて、180〜220℃で押出しを行った。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示すように、セルロースアセテートが完全に未溶融物となり、押出機の混練用軸が過負荷により自動停止した。
【0181】
<参考例2>
アセチル置換度2.45のセルロースアセテート(ダイセル社製酢酸セルロース、極限粘度:84mPa・s)を粉砕加工により粉状にし、105℃乾燥機にて1時間乾燥し、その後デシケーターにて室温1時間放冷した。
【0182】
乾燥及び放冷後の70重量部(350g)アセチル置換度2.45のセルロースアセテートをミキサーに入れた。ミキサーで攪拌しながら、ピペットもしくは噴霧器を用いて、約15g/minの速度で、セルロースアセテートに対し、トリアセチン30重量部(150g)の添加を開始した。
【0183】
トリアセチンの半分量を添加したら、ミキサーを一旦停止し、ミキサーの壁、底、及び攪拌翼に付着したブレンド物を解した。その後、ミキサーを再度起動させて、残りのトリアセチンを、引き続き約15g/minの速度で添加した。
【0184】
トリアセチンの添加が終わったら、再度、ミキサーを停止し、ミキサーの壁、底、攪拌翼に付着したブレンド物を解し、その後、ミキサーを再度起動させて、さらに1分以上攪拌した。
【0185】
ブレンド物を十分に解し、バット等風通しの良い開放系容器に入れて、80℃で2時間乾燥した。その後、篩(目の開き:3.35mm)を通して、大きな塊を取り除いた。
【0186】
ブレンド物を小型二軸押出機に入れて、180〜220℃で押出しを行い、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示すようにセルロースが完全に溶融し、全体的に透明で均一な成形体が得られた。
【0187】
<参考例3>
グリセリンエステル系可塑剤としてトリアセチンに代えて、ジアセチンを用いた以外は、参考例2と同様にして、ストランドを得た。押出し後の結果物の状態を目視にて観察した。結果は表3に示すようにセルロースが完全に溶融し、全体的に透明で均一な成形体が得られた。
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
表3に示されるように、セルロースアセテートとグリセリンエステル系可塑剤とを直接混合した場合に比べて、グリセリンエステル系可塑剤の分散液または溶液を用いた場合では、未溶融物が残留することなく、全体的に透明で均一な成形体が得られたことが分かる。また、実施例のセルロースアセテート組成物は、b値が低いため、着色しにくいことも分かる。