(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記TD方向における、80℃、10秒の収縮率であるB1を35〜55%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
前記TD方向における、90℃、10秒の収縮率であるB2を、前記B1の値より大きくするとともに、45〜65%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された、比較的薄肉のポリエステル系シュリンクフィルムを、筒状に成形し、ポリエステル系シュリンクフィルム成形品とした後、PETボトル等に装着しようとしても、所定時間、所定形状を保持するという自立性に乏しいという問題が見られた。
したがって、各種PETボトルの形状に対応させようとした場合、ポリエステル系シュリンクフィルム成形品の装着ミスが発生しやすいという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、比較的薄肉であっても、リングクラッシュ法により得られる値を制御することにより、所定形状を所定時間(例えば30秒以上)保持することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、リングクラッシュ法により得られる値を、関係式に沿って制御し、比較的薄肉であっても、装着ミスの発生が少ないポリエステル系シュリンクフィルム、及びそれを用いたポリエステル系シュリンクフィルム成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ポリエステル樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、下記(a)〜(d)の構成を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムが提供され、上述した問題を解決することができる。
(a)ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向をTD方向とし、それに直交する方向をMD方向としたときに、MD方向のリングクラッシュの値を0.4〜2.8Nの範囲内の値とする。
(b)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを15〜28μmの範囲内の値とする。
(c)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
【0008】
Y=0.14X+C1 (1)
【0009】
(C1は切片であって、−1.7≦C1≦−1.1である。)
【0010】
(d)ポリエステル系シュリンクフィルムを温水90℃に10秒浸漬した場合の熱収縮率を45%以上の値とする。
すなわち、構成(a)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、所定成形品とした場合に、リングクラッシュにより測定される圧縮強度を良好なものにできる。
また、構成(b)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムが比較的薄肉であっても、所定成形品とした場合に、所定形状を所定時間保持することができ、自立性に優れていることから、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、装着ミスを少なくできる。
また、構成(c)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さの値が多少ばらついたような場合であっても、そのような影響因子の要因を低下させることができる。したがって、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、所定成形品とした場合に、リングクラッシュにより測定される圧縮強度を良好なものとし、かつ、良好な自立性も得ることができる。
更にまた、構成(d)を満足することによって、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、安定的に収縮し、所定成形品とした場合に、所定の機械的特性や、良好な装飾性を安定的かつ効果的に得ることができる。
なお、自立性は、例えば実施例1の評価3−1と評価3−2において、それぞれ〇以上の評価が得られた場合を良好とする。
【0011】
また、本発明のポリエステル系シュリンクを構成するにあたり、下記(c´)の構成を更に満足することが好ましい
(c´)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、下記関係式(2)を満足する。
【0012】
Y/X=0.0029X+C2 (2)
【0013】
(C2は、切片であって、0.002≦C2≦0.012である。)
【0014】
このように構成することによって、Xと、Y/Xであらわされる数値との間で、優れた相関関係を得ることができる。
したがって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(X)の値が多少ばらついたような場合であっても、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、リングクラッシュにより測定される圧縮強度をより良好なものとし、かつ、更に良好な自立性も得ることができる。
【0015】
また、本発明のポリエステル系シュリンクを構成するにあたり、下記(c´´)の構成を更に満足することが好ましい。
(c´´)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)とし、80℃の温水中で10秒の条件で収縮させた場合の、TD方向における収縮率をB1としたときに、下記関係式(3)を満足する。
【0016】
B1=709Y/X+C3 (3)
【0017】
(C3は、切片であって、−17≦C3≦−4である。)
【0018】
このように構成することによって、Y/Xであらわされる数値と、所定条件(温水80℃、10秒)で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率B1との間で、優れた相関関係を得ることができる。
したがって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(X)の値が多少ばらついたような場合であっても、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムにおける収縮率B1を安定的に制御することができる。
【0019】
また、本発明のポリエステル系シュリンクを構成するにあたり、下記(c´´´)の構成を更に満足することが好ましい。
(c´´´)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)とし、90℃の温水中で10秒の条件で収縮させた場合の、TD方向における収縮率をB2としたときに、下記関係式(4)を満足する。
【0020】
B2=679Y/X+C4 (4)
【0021】
(C4は、切片であって、−4≦C4≦8である。)
【0022】
このように構成することによって、Y/Xであらわされる数値と、所定条件(温水90℃、10秒)で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率B2との間で、優れた相関関係を得ることができる。
したがって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(X)の値が多少ばらついたような場合であっても、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムにおける収縮率B2を安定的に制御することができる。
【0023】
また、本発明のポリエステル系シュリンクを構成するにあたり、80℃の温水中に10秒間浸漬した場合の、TD方向における収縮率であるB1を35〜55%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように収縮率のB1を、所定範囲内の値に具体的に制限することによって、関係式(3)の相関係数を高めることができる。
【0024】
また、本発明のポリエステル系シュリンクを構成するにあたり、90℃の温水中に10秒間浸漬した場合の、TD方向における収縮率であるB2を、B1の値より大きくするとともに、45〜65%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように収縮率のB2を、収縮率のB1との関係で、所定範囲内の値に具体的に制限することによって、関係式(4)の相関係数を高めることができる。
【0025】
また、本発明のポリエステル系シュリンクを構成するにあたり、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂と、の混合物から構成されており、非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90〜100重量%の範囲で含むことが好ましい。
このように非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を具体的に制限することによって、圧縮強度や、収縮温度付近(例えば、80〜90℃、以下同様である。)における収縮率を所望範囲に、更に容易に調整しやすくできるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる。
なお、樹脂全体量のうち、非結晶性ポリエステル樹脂の残分は、結晶性ポリエステル樹脂やポリエステル樹脂以外の樹脂が寄与する値である。
【0026】
また、本発明の別の態様は、ポリエステル樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルム由来のポリエステル系シュリンクフィルム成形品であって、下記(a)〜(d)の構成を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルム成形品。
(a)ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向をTD方向とし、それに直交する方向をMD方向としたときに、MD方向のリングクラッシュの値を0.4〜2.8Nの範囲内の値とする。
(b)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを15〜28μmの範囲内の値とする。
(c)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
【0027】
Y=0.14X+C1 (1)
【0028】
(C1は切片であって、−1.7≦C1≦−1.1である。)
【0029】
(d)ポリエステル系シュリンクフィルムを90℃の温水に10秒間浸漬した場合の熱収縮率を45%以上の値とする。
すなわち、構成(a)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した所定成形品において、リングクラッシュにより測定される圧縮強度を良好なものとすることができる。
また、構成(b)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した、比較的薄肉の所定成形品において、所定形状を所定時間保持することができ、自立性に優れていることから、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、装着ミスを少なくすることができる。
また、構成(c)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さの値が多少ばらついたような場合であっても、そのような影響因子の要因を低下させることができる。したがって、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムに由来した所定成形品において、リングクラッシュにより測定される圧縮強度を良好なものとし、かつ、良好な自立性についても得ることができる。
更にまた、構成(d)を満足することによって、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、安定的に収縮した、ポリエステル系シュリンクフィルムに由来した所定成形品において、所定の機械的特性や、良好な装飾性を安定的かつ効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、
図1(a)に例示するように、下記(a)〜(d)の構成を満足するポリエステル系シュリンクフィルム10である。
(a)ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向をTD方向とし、それに直交する方向をMD方向としたときに、MD方向のリングクラッシュの値を0.4〜2.8Nの範囲内の値とする。
(b)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを15〜28μmの範囲内の値とする。
(c)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
【0033】
(C1は、関係式の切片であって、−1.7≦C1≦−1.1である。)
【0034】
(d)ポリエステル系シュリンクフィルムを90℃の温水に10秒間浸漬した場合の熱収縮率を45%以上の値とする。
以下、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの構成に分けて、具体的に各種パラメータ等を説明する。
【0035】
1.ポリエステル樹脂
基本的に、ポリエステル樹脂の種類は問わないが、通常、ジオール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂の化合物成分としてのジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つが挙げられる。
また、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
また、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0036】
また、非結晶性ポリエステル樹脂として、例えば、テレフタル酸少なくとも80モル%からなるジカルボン酸と、エチレングリコール50〜80モル%及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20〜50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用できる。必要に応じ、フィルムの性質を変化させるために、他のジカルボン酸及びジオール、あるいはヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。また、それぞれ単独でも、あるいは、混合物であっても良い。
一方、結晶性ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
【0037】
また、ポリエステル樹脂が、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂との混合物である場合、良好な耐熱性や収縮率等を得るために、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量に対し、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、90〜100重量%の範囲内の値とすることが好ましく、91〜100重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0038】
2.構成(a)
構成(a)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、主収縮方向をTD方向とし、それに直交する方向をMD方向としたときに、MD方向のリングクラッシュの値を0.4〜2.8Nの範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した成形品とした場合に、リングクラッシュによって測定される圧縮強度を良好なものとすることができ、ひいては、良好な自立性の判断に寄与できるためである。
より具体的には、かかるMD方向のリングクラッシュの値が0.4N未満の値になると、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した成形品が、短時間で容易に形状変化してしまい、実施例で詳述する自立性に乏しくなって、各種PETボトルに対する装着ミスが増加する場合があるためである。
一方、かかるMD方向のリングクラッシュの値が2.8Nを超えた値になると、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した成形品が、良好な自立性は示すものの、熱収縮率が過度に低下する場合があるためである。
したがって、MD方向のリングクラッシュの値を1.2〜2.5Nの範囲内の値とすることがより好ましく、1.6〜2.2Nの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0039】
3.構成(b)
構成(b)は、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(X)を15〜28μmの範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムが比較的薄肉であっても、所定成形品とした場合に、所定形状を所定時間保持することができ、自立性に優れていることから、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、装着ミスを少なくできるためである。
より具体的には、かかるポリエステル系シュリンクフィルムの厚さが15μm未満の値になると、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した成形品が、短時間で容易に形状変化してしまい、自立性に乏しくなって、各種PETボトルに対する装着ミスが増加する場合があるためである。
一方、かかるポリエステル系シュリンクフィルムの厚さが28μmを超えた値になると、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した成形品が、良好な自立性は示すものの、熱収縮率が過度に低下したり、取扱い性が低下したりする場合があるためである。
したがって、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(X)を18〜25μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜23μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0040】
4.構成(c)
構成(c)は、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、所定の関係式(1)を満足する旨の必要的構成要件である。
この理由は、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さの値が多少ばらついたような場合であっても、そのような影響因子の要因を低下させることによって、良好なリングクラッシュの値を得ることができるためである。
したがって、構成(c)を満足することによって、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムに由来した成形品とした場合に、リングクラッシュにより測定される圧縮強度を所定範囲内の値に調整し、ひいては、良好な自立性を得ることができる。
【0041】
ここで、
図2に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける厚さ(X、μm)と、関係式(1)のY(N)との関係を説明する。
また、
図3に言及し、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける厚さ(X)と、関係式(2)のY/X(N/μm)との関係を説明する。
すなわち、
図2中に示された測定データのばらつきに関し、関係式(1)を満足している場合には、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける厚さ(X)の値と、リングクラッシュにより測定された圧縮強度(Y)との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.99)があることが理解される。
同様に、
図3中に示された測定データのばらつきに関し、関係式(2)を満足している場合には、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける厚さ(X)の値と、Y/X(N/μm)との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.94)があることが理解される。
【0042】
5.構成(d)
構成(d)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、90℃の温水に10秒間浸漬した場合の熱収縮率(B2)を45%以上の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、かかる熱収縮率(B2)を制御することによって、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、安定的に収縮し、所定成形品とした場合に、所定の機械的特性や、良好な装飾性を安定的かつ効果的に得ることができるためである。
【0043】
より具体的には、熱収縮率(B2)が、45%未満になると、収縮率のばらつきが極端に大きくなって、収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得ることが困難となる場合があるためである。
一方、かかる熱収縮率(B2)が過度に大きくなって、例えば、70%を超えたりすると、同様に、収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、構成(d)として、熱収縮率(B2)を46〜63%の範囲内の値とすることがより好ましく、47〜61%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおける収縮率は、下記式で定義される。
収縮率(%)=(L
0-L
1)/L
0×100
L
0:熱処理前のサンプルの寸法(長手方向又は幅方向)
L
1:熱処理後のサンプルの寸法(L
0と同じ方向)
【0044】
6.任意的構成要件
(1)構成(e)
また、構成(e)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、温水80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率であるB1を35〜55%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、かかるB1を、具体的数値範囲に制限することにより、結果として、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御しやすくなるためである。
逆に言えば、収縮率のB1が、35%未満の値になったり、あるいは、55%を超えたりした値になると、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御することが困難となる場合があるためである。
したがって、構成(e)として、収縮率のB1を36〜52%の範囲内の値とすることがより好ましく、37〜49%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0045】
ここで、
図4に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける関係式(3)のY/X(N/μm)と、所定加熱条件(温水80℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率(B1)との関係を説明する。
すなわち、
図4中に示される測定データのばらつきに関し、関係式(3)を満足している場合には、Y/X(N/μm)の値と、所定加熱条件(温水80℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率(B1)との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.81)があることが理解される。
【0046】
(2)構成(f)
また、構成(f)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、温水90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率であるB2を、B1よりも大きく、かつ、45〜65%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、かかるB2を、具体的数値範囲に制限することにより、結果として、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御しやすくなるためである。
逆に言えば、収縮率のB2が、45%未満の値になったり、あるいは、65%を超えた値になったりすると、装飾用ラベルとして、PETボトルに装着した際に、ラベルがボトルにしっかりと密着せず、隙間が生じる場合があるためである。
したがって、構成(f)として、収縮率のB2を46〜63%の範囲内の値とすることがより好ましく、47〜61%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0047】
ここで、
図5に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける関係式(4)のY/X(N/μm)と、所定加熱条件(温水90℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率(B2)との関係を説明する。
すなわち、
図5中に示される測定データのばらつきに関し、関係式(4)を満足している場合には、Y/X(N/μm)の値と、所定加熱条件(温水90℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率(B2)との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.81)があることが理解される。
【0048】
(3)構成(g)
また、構成(g)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を90〜250%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、所定加熱条件(温水80℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率であるB1と所定加熱条件(温水90℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率であるB2から、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に更に容易かつ定量性をもって制御しやすくなるためである。
【0049】
より具体的には、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率が、90%未満の値になると、製造上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
一方、MD方向における延伸倍率が250%を超えると、TD方向における収縮率に影響し、その収縮率の調整自体が困難となる場合があるためである。
したがって、構成(f)として、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を95〜230%の範囲内の値とすることがより好ましく、100〜210%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0050】
(4)構成(h)
また、構成(h)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率を300〜600%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように収縮前のフィルムのMD方向のみならず、TD方向における延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、所定加熱条件(温水80℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率であるB1と所定加熱条件(温水90℃、10秒)で収縮させた場合の収縮率であるB2から、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に更に容易かつ定量性をもって制御しやすくなるためである。
【0051】
より具体的には、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率が、300%未満の値になると、TD方向における収縮率が著しく低下し、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限される場合があるためである。
一方、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率が、600%を超えた値になると、収縮率が著しく大きくなって、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限されたり、あるいは、その延伸倍率自体を一定に制御することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、構成(h)として、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率を320〜580%の範囲内の値とすることがより好ましく、340〜560%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0052】
(5)構成(i)
また、構成(i)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルムのJIS K 7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなるためである。
より具体的には、収縮前のフィルムのヘイズ値が、5%を超えた値になると、透明性が低下し、PETボトルに対する装飾用途等への適用が困難となる場合があるためである。
一方、収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合がある。
したがって、構成(i)として、収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1〜3%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜1%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0053】
(6)構成(j)
また、構成(j)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、非結晶性ポリエステル樹脂を、全体量の90〜100重量%含む旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、構成(a)の圧縮強度の値や構成(b)の厚さの値が多少ばらついた場合であっても、適宜配合量等を調整し、所定影響因子の要因を低下させることができるためである。
したがって、結果として、ポリエステル系シュリンクフィルムの圧縮強度や、収縮温度付近における収縮率を所望範囲に調整できるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる。
【0054】
より具体的には、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が90%未満の値になると、ポリエステル系シュリンクフィルムの圧縮強度や、収縮温度付近における収縮率の制御が困難となる場合があるためである。
但し、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が過度に多くなると、所定影響因子の要因を低下させる範囲が著しく狭くなる可能性がある。
したがって、構成(j)として、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を、全体量の90〜100重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、91〜100重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0055】
(7)その他
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01〜10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1〜1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
【0056】
また、
図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたとときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1〜10%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0057】
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0058】
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にして、加水分解防止効果や機械的保護を更に図ったり、あるいは、
図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
かかる収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
【0059】
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1〜3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
また、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
【0060】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムを用いた成形品の製造方法に関する。
【0061】
1.原材料の準備及び混合工程
原材料として、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。
次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した非結晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
【0062】
2.原反シートの作成工程
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
次いで、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度180℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、10〜100μm)の原反シートを得ることができる。
【0063】
3.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成する。
すなわち、所定の延伸温度、延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で固化させることによって、装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
【0064】
4.ポリエステル系シュリンクフィルムの検査工程
作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの目視検査
2)厚さのばらつき測定
3)引張弾性率測定
4)引裂強度測定
5)SSカーブによる粘弾性特性測定
【0065】
5.ポリエステル系シュリンクフィルム成形品の自立性に関する検査工程
そして、第2の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品の製造において、下記(a)〜(d)の構成を検査する工程を備えることが好ましい。
(a)ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向をTD方向とし、それに直交する方向をMD方向としたときに、MD方向のリングクラッシュの値を0.4〜2.8Nの範囲内の値とする。
(b)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを15〜28μmの範囲内の値とする。
(c)ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、関係式(1)を満足する。
(d)ポリエステル系シュリンクフィルムを90℃の温水に10秒間浸漬した場合の熱収縮率を45%以上の値とする。
【0066】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する。
したがって、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
【0067】
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断するとともに、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断する(円筒状のポリエステル系シュリンクフィルム成形品と称する場合がある)。
次いで、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
【0068】
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
よって、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
【0069】
ここで、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、少なくとも構成(a)〜(d)を満足する。
そうすることで、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した所定成形品において、リングクラッシュにより測定される圧縮強度を良好なものとすることができる。
また、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムに由来した、比較的薄肉の所定成形品において、所定形状を所定時間保持することができ、自立性に優れていることから、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、装着ミスを少なくすることができる。
また、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さの値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を下げて、ポリエステル系シュリンクフィルムの成形品において、好適な圧縮強度を得ることができ、良好な自立性も得ることができる。
また、各種PETボトルの形状や形態等が変化したとしても、安定的に収縮した、ポリエステル系シュリンクフィルムに由来した所定成形品において、所定の機械的特性や、良好な装飾性を安定的かつ効果的に発揮することができる。
更に、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムは、乳酸由来の構造単位を事実上含まないことから、保管条件における厳格な湿度管理等が不要になるという利点もある。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例の記載によって狭められることはない。
なお、実施例において用いた樹脂や添加剤は、以下の通りである。
【0071】
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール25モル%、ジエチレングリコール5モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG2)
1,4−シクロヘキサンジメタノール変成ポリエチレンテレフタレートからなる非結晶性ポリエステル(SKケミカル社製、商品名「Skygreen K2012」)
(PETG3)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール72モル%、ネオペンチルグリコール25モル%、ジエチレングリコール3モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PBT)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:1,4−ブタンジオール100モル%からなる結晶性ポリエステル
(添加剤1)
マトリクス樹脂:PET、シリカ含有量:5質量%、シリカの平均粒径:2.7μmからなるシリカマスターバッチ(住友カラー株式会社製、商品名「EPM−7E325」)
(添加剤2)
マトリクス樹脂:PET、脂肪酸アミド含有からなる静電防止マスターバッチ(理研ビタミン株式会社製、商品名「TS940R」)
(添加剤3)
マトリクス樹脂:PET、脂肪酸アミド含有からなる静電防止マスターバッチ(東京インキ株式会社製、商品名「AS−0151AL」)
【0072】
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部に対して、添加剤2(EPM−7E325)を0.8重量部の割合で混合し、それを原料として用いた。
次いで、この原料を絶乾状態にしたのち、押出温度180℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、厚さ100μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、延伸温度86℃、延伸倍率(MD方向:111%、TD方向:500%)で、厚さ25.0μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0073】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)評価1(厚さのばらつき)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である25.0μmを基準値として)を、マイクロメータを用いて測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:厚さのばらつきが基準値±0.1μmの範囲内の値である。
〇:厚さのばらつきが基準値±0.5μmの範囲内の値である。
△:厚さのばらつきが基準値±1.0μmの範囲内の値である。
×:厚さのばらつきが基準値±3.0μmの範囲内の値である。
【0074】
(2)評価2(圧縮強度)
延伸方向が長手方向になるように、収縮前のポリエステルシュリンクフィルムをカットして、幅12.7mm、長さ150mmの試験片を準備した。
次いで、JIS P 8126に準拠して、所定形状のブロックと直径48.9mmのディスクからなる試験片支持具を用いた。
より具体的には、当該ブロックに当該ディスクを取り付けることによって、円形の溝(深さ6.35mm)が形成される。その溝に沿って、試験片をリング状に巻いて、平行な上下圧縮板の間に挟み、試験片が圧縮破壊を受けるまで耐えうる最大圧縮力(N、A1)を圧縮強度として測定し、以下の基準に準じて評価した。なお、A1(N)は、明細書、図表等において、リングクラッシュの値であるY(N)と称する場合がある。
◎:1.6〜2.2Nの範囲内の値である。
〇:1.2〜2.5Nの範囲内の値であって、かつ、1.6N未満又は2.2Nを超える値である。
△:0.4〜2.8Nの範囲内の値であって、かつ、1.2N未満又は2.5Nを超える値である。
×:0.4N未満又は2.8Nを超える値である。
【0075】
(3)評価3−1(自立性1)
ポリエステル系シュリンクフィルムを、幅2cm、長さ5cmの短冊状にカットしたフィルムを試験片とし、当該試験片を5個準備した。
次いで、評価2で使用したものと同じ試験片支持具を用いて、試験片の長手方向が上下となるように、試験片の下端を試験片支持具の円形の溝に差し込んで把持し、フィルムが自立できるか否かを目視観察し、自立した試験片の数により、以下の基準に沿って、自立性(Z1)を評価した。
◎:5cmの試験片は5個中、5個が30秒以上、自立した。
〇:5cmの試験片は5個中、4個が30秒以上、自立した。
△:5cmの試験片は5個中、3個が30秒以上、自立した。
×:5cmの試験片は5個中、2個が30秒以上、自立した。
【0076】
(4)評価3−2(自立性2)
ポリエステル系シュリンクフィルムを、幅2cm、長さ6cmの短冊状にカットしたフィルムを試験片とし、当該試験片を5個ずつ準備したほかは、評価3−1と同様に、以下の基準に沿って、自立性(Z2)を評価した。
◎:6cmの試験片は5個中、5個が30秒以上、自立した。
〇:6cmの試験片は5個中、3〜4個が30秒以上、自立した。
△:6cmの試験片は5個中、1〜2個が30秒以上、自立した。
×:6cmの試験片は5個中、5個が30秒以上、自立しなかった。
【0077】
(5)評価4(収縮率1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温槽を用いて、80℃の温水に、10秒間浸漬し(B1条件)、熱収縮させた。
次いで、それぞれの加熱処理前後の寸法変化から、下式に準じて、収縮率(B1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ−熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100
◎:収縮率(B1)が35〜55%の範囲内の値である。
〇:収縮率(B1)が30〜60%の範囲内の値であって、かつ、35%未満又は55%を超える値である。
△:収縮率(B1)が25〜65%の範囲内の値であって、かつ、30%未満又は60%を超える値である。
×:収縮率(B1)が25%未満又は60%を超える値である。
【0078】
(6)評価5(収縮率2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温槽を用いて、90℃の温水に、10秒間浸漬し(B2条件)、熱収縮させた。
次いで、それぞれの加熱処理前後の寸法変化から、下式に準じて、収縮率(B2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ−熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100
◎:収縮率(B2)が45〜65%の範囲内の値である。
〇:収縮率(B2)が40〜70%の範囲内の値であって、かつ、45%未満又は65%を超える値である。
△:収縮率(B2)が35〜75%の範囲内の値であって、かつ、40%未満又は70%を超える値である。
×:収縮率(B2)が35%未満又は75%を超える値である。
【0079】
(7)評価6(ヘイズ)
JIS K 7105に準拠して、得られたポリエステル系シュリンクフィルムのヘイズ値を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:1%以下の値である。
〇:3%以下の値である。
△:5%以下の値である。
×:5%を超えた値である。
【0080】
[実施例2〜8]
実施例2〜8において、表1及び表2に示すように、それぞれ構成(a)〜(d)等の値を変えて、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成し、評価した。
【0081】
すなわち、実施例2において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ26.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0082】
また、実施例3において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部、及び添加剤2(TS940R)を2.5重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ23.2μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0083】
また、実施例4において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部、及び添加剤3(AS−0151AL)を3重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ20.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0084】
また、実施例5において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部、及び添加剤3(AS−0151AL)を3重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ22.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0085】
また、実施例6において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部、及び添加剤2(TS940R)を2重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ22.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0086】
また、実施例7において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ21.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0087】
また、実施例8において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ22.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0088】
[比較例1〜4]
比較例1において、表1及び表2に示すように、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(4)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価した。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を90重量部、結晶性ポリエステル樹脂(PBT)を10重量部、及び添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(4)を満足しない、厚さ25.6μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成した。
【0089】
また、比較例2において、表1及び表2に示すように、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(4)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価した。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(4)を満足しない、厚さ20.6μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成した。
【0090】
また、比較例3において、表1及び表2に示すように、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(4)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価した。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(4)を満足しない、厚さ21.0μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成した。
【0091】
また、比較例4において、表1及び表2に示すように、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(2)及び、関係式(4)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価した。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)100重量部に対して、添加剤1(EPM−7E325)を0.8重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、関係式(1)(構成要件(c))〜関係式(2)及び、関係式(4)を満足しない、厚さ22.8μmのポリエステル系シュリンクフィルム及びそれに由来した成形品を作成した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
(c)厚さをX(μm)とし、リングクラッシュの値をY(N)としたときに、Y=0.14X+C1(C1は、関係式の切片であって、−1.7≦C1≦−1.1である。)を満足する。