(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出部は、前記積載面部の下側に位置して平面視で互いに異なる位置に配置された複数の重量センサを含んでいて、該複数の重量センサのそれぞれの検出重量を基に、前記異常積載状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の無人搬送システム。
前記検出部は、前記異常積載状態として少なくとも前記アンバランス積載状態を検出可能であって、前記無人搬送車に設けられたジャイロセンサ若しくは加速度センサからの信号を基に、又は、前記無人搬送車若しくは該無人搬送車に搭載されたロボットに設けられた撮像装置が撮像した前記積載面部上の前記搬送対象物の画像データを基に、前記アンバランス積載状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の無人搬送システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した無人搬送車の積載面部には、一個〜数個のワーク(搬送対象物)を並べて積載する場合と、多数のワーク(搬送対象物)を容器に入れてバラ積みする場合とがあるが、いずれの場合においても、積載面部への搬送対象物の積載状態に異常が生じていると、以下のような問題が生じる。
【0006】
即ち、積載面部に積載された搬送対象物の重量分布に偏りが生じていると、無人搬送車が傾いてしまい、無人搬送車の走行中に(特に、旋回時や加減速時に)、搬送対象物が積載面部から落下したり無人搬送車の走行安定性が損なわれたりするという問題がある。
【0007】
また、積載面部に積載された搬送対象物の重量が予め定めた上限値を超えていると、無人搬送車の走行中に(特に、旋回時や加減速時に)搬送対象物に大きな慣性力が作用して搬送対象物が積載面部から落下したり、搬送対象物の重みで無人搬送車の走行安定性が損なわれたりするという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、無人搬送車の積載面部に搬送対象物が異常積載状態で積載された場合に、
人の作業を介さずに該異常積載状態を回避可能な無人搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の一局面に係る無人搬送システムは
、
搬送対象物が積載される積載面部を有する無人搬送車と、
前記無人搬送車に搭載されたロボットと、
前記無人搬送車の前記積載面部に積載された前記搬送対象物の総重量が予め設定した上限値を超える過積載状態と、前記積載面部において前記搬送対象物の重量分布に所定以上の偏りが生じるアンバランス積載状態との少なくとも一方が生じている状態を異常積載状態として検出する検出部と、
前記検出部より前記異常積載状態が検出された場合に、前記ロボットに前記搬送対象物の移動を伴う所定動作を実行させることによって該異常積載状態を解消する積載制御部と、を備えている。
【0010】
この無人搬送システムによれば、無人搬送車の積載面部に積載された搬送対象物の積載状態が異常積載状態(過積載状態とアンバランス積載状態との少なくとも一方)である場合には、検出部によって該異常積載状態が検出される。検出部によって異常積載状態が検出されると、積載制御部によって無人搬送車に搭載されたロボットが駆動され、ロボットが前記搬送対象物の移動を伴う所定動作を実行する。これにより前記異常積載状態が解消される。この所定動作の一例として、アンバランス積載状態を解消するために搬送対象物の位置を変更する動作や、過積載状態を解消するために搬送対象物の一部を在庫に戻す動作等が挙げられる。
【0011】
このように本発明の
一の局面に係る無人搬送車によれば、搬送対象物が積載面部に異常積載状態で積載されている場合には、ロボットにより搬送対象物の異常積載状態が解消されるので、無人搬送車が異常積載状態のまま走行することを回避できる。よって、異常積載状態に起因する搬送対象物の落下や無人搬送車の走行安定性の低下を未然に回避することができる。また、ロボットにより異常積載状態を解消するようにしているので、作業者が搬送対象物を移動させて異常積載状態を解消する場合に比べて、作業者の肉体的負担を低減することができる。
【0012】
前記一の局面に係る無人搬送システムにおいて、前記検出部は、前記異常積載状態として、少なくとも前記アンバランス積載状態を検出するように構成され、前記積載制御部は、前記積載面部に積載されている搬送対象物が容器内にバラ積みされたバラ積み状態にあるか否かを判定して、該バラ積み状態にあると判定した場合において、前記検出部により前記異常積載状態としての前記アンバランス積載状態が検出されたときには、前記無人搬送車に、その場旋回を正逆交互に実行させて、前記容器内の前記搬送対象物を揺することで前記アンバランス積載状態を解消する一方、前記搬送対象物が前記バラ積み状態にないと判定した場合において、前記検出部により前記異常積載状態としての前記アンバランス積載状態が検出されたときには、前記ロボットに前記搬送対象物の移動を伴う前記所定動作を実行させることで前記アンバランス積載状態を解消するように構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の他の局面に係る無人搬送システムは、
搬送対象物が積載される積載面部を有する無人搬送車と、
前記積載面部において前記搬送対象物の重量分布に所定以上の偏りが生じるアンバランス積載状態を異常積載状態として検出する検出部と、
前記搬送対象物が容器内にバラ積みされた状態で前記積載面部に積載されている場合において、前記検出部により前記異常積載状態としての前記アンバランス積載状態が検出されたときに、前記無人搬送車に、その場旋回を正逆交互に実行させて、前記容器内の前記搬送対象物を揺することで前記搬送対象物の前記アンバランス積載状態を解消する積載制御部と、を備えている。
【0014】
この無人搬送システムによれば、無人搬送車の積載面部に積載された搬送対象物の積載状態がアンバランス積載状態にある場合には、検出部によって該アンバランス積載状態が異常積載状態として検出される。ここで、搬送対象物の積載態様としては、搬送対象物を一個〜数個単位で並べて積載する態様と、多数の搬送対象物を容器内にバラ積みした状態で積載する態様とがあるが、本発明によれば、後者の場合(搬送対象物がバラ積みされる場合)において、前記検出部によりアンバランス積載状態が検出されたときには、積載制御部によって、前記無人搬送車がその場で正逆交互に旋回駆動される。これにより、容器内の搬送対象物が揺すられてアンバランス積載状態が解消される。
【0015】
このように本発明の他の局面に係る無人搬送車によれば、積載制御部によって、搬送対象物のアンバランス積載状態が解消されるので、該アンバランス積載状態に起因する搬送対象物の落下及び無人搬送車の走行安定性の低下を防止することできる。また、この無人搬送システムによれば、バラ積みされた搬送対象物のアンバランス積載状態を解消するために無人搬送車をその場で正逆交互に旋回させるだけでよいので、ロボットを搭載していない無人搬送車であっても、作業者の手を介さずにアンバランス積載状態を解消することができる。また、ロボットを搭載した無人搬送車においては、ロボットにより搬送対象物を一つずつ把持して移動させる場合に比べてアンバランス積載状態を迅速に解消することができる。
【0016】
本発明の無人搬送システムにおいて、前記検出部は、前記積載面部の下側に位置するとともに平面視で互いに異なる位置に配置された複数の重量センサを含んでいて、該複数の重量センサのそれぞれの検出重量を基に、前記異常積載状態を検出するように構成されていることが好ましい。
【0017】
これによれば、重量センサを積載面部の下側の互いに異なる位置に配置するようにしているので、例えば重量センサを無人搬送車の各車輪に設けるようにした場合に比べて、搬送対象物の重量分布の偏りが各重量センサの検出値に精度良く反映される。したがって、検出部による異常積載状態の検出精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明において、前記検出部は、前記異常積載状態として少なくとも前記アンバランス積載状態を検出可能であって、前記無人搬送車に設けられたジャイロセンサ若しくは加速度センサからの信号を基に、又は、前記無人搬送車若しくは該無人搬送車に搭載されたロボットに取付けられた撮像装置が撮像した前記積載面部上の前記搬送対象物の画像データを基に、前記アンバランス積載状態を検出するように構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、ジャイロセンサ若しくは加速度センサからの信号を基に、又は、無人搬送車若しくは無人搬送車のロボットに取付けられた撮像装置による積載面部上の搬送対象物の撮像画像を基に、異常積載状態の一つであるアンバランス積載状態が検出部により検出される。ここで、ジャイロセンサ又は加速度センサは無人搬送車の走行制御にも利用することができるので、部品の共通化を図ってコストを低減することができる。また、撮像装置は、ロボットによる搬送対象物のピッキング作業等にも利用することができるので、部品の共通化を図ってコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の一局面に係る無人搬送システムによれば
、搬送対象物が無人搬送車の積載面部に異常積載状態で積載されている場合には、無人搬送車のロボットにより異常積載状態を解消することができる。
【0021】
また、本発明の他の局面に係る無人搬送システムによれば、搬送対象物が容器内にバラ積みされた状態で前記積載面部に積載されている場合において、搬送対象物の積載状態が異常積載状態の一つであるアンバランス積載状態になっているときには、無人搬送車をその場で交互に旋回させて容器内の搬送対象物を揺することで異常積載状態を解消することができる。
【0022】
したがって、本発明では、無人搬送車の積載面部に搬送対象物が異常積載状態で積載されたとしても、
人の作業を介さずに該異常積載状態を回避することができ、延いては、無人搬送車の走行安定性の低下及び搬送対象物の積載面部からの落下を極力回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
本例の無人搬送システム1は、工場の建屋2内に設けられた生産システムSに適用される。この生産システムSは、工作機械10、測定機11及び洗浄機12などから構成される。無人搬送システム1は、無人搬送車30と、無人搬送車30に搭載されるロボット20と、ロボット20及び無人搬送車30を制御する制御装置50(
図6参照)などから構成される。無人搬送車30は、建屋2内に設けられた在庫スペース3にて作業者Mにより積載された加工前のワーク100(搬送対象物の一例)を、工作機械10に搬送し、工作機械10による加工が終了したワーク100を、測定機11及び洗浄機12に順次搬送する。
【0026】
尚、建屋2内に設けられる生産システムSは、工作機械10、測定機11及び洗浄機12を含んで構成されているが、このシステム構成はあくまでも例示であってこれに限られるものではなく、産業上使用されるあらゆる装置を含めることができ、そのレイアウトもこの例に限られるものではない。
【0027】
一例としての本例の工作機械10は、
図1において、建屋2内の図示上側寄りの中央に配設されている。この工作機械10には、公知の各種工作機械が適用されるが、例えば、ワーク100を把持するチャックが装着されるワーク主軸、旋削工具などが配設されるタレット、並びに回転工具等が保持される工具主軸を有する刃物台など備えた所謂複合加工型のNC(数値制御)工作機械が例示される。
【0028】
また、前記測定機11は、工作機械10で加工されたワーク100について所定部位の寸法を測定する装置であり、
図1において工作機械10の左隣に配設されている。また、前記洗浄機12は、
図1において測定機11の左隣に配設されており、測定後のワーク100を洗浄する装置である。
【0029】
前記無人搬送車30は、
図2に示すように、その上面に前記ロボット20が搭載されるとともに、作業者が携帯可能な操作盤33が付設されている。この操作盤33は、データの入出力を行う入出力部33a(後述する
図6参照)、当該無人搬送車30及びロボット20を手動操作する操作部33b、画面表示可能なディスプレイ33c、並びに音声を出力可能なスピーカ33dなどを備えている。
【0030】
図3に示すように、無人搬送車30は、平面視で見て所定の一方向(
図3の左右方向)に長い矩形状をなしている。本例では、この一方向(
図3の左右方向)が無人搬送車30の前後方向に一致し、該一方向に直交する方向(
図3の上下方向)が無人搬送車30の左右方向に一致している。無人搬送車30は、その下面に二つの駆動車輪31と二つの従動車輪32とを有している。二つの駆動車輪31は、無人搬送車30の前後方向の中央部における左右両端部にそれぞれ配置されている。二つの駆動車輪31は、それぞれに連結されたモータ31aにより互いに独立に回転駆動される。無人搬送車30は、この二つの駆動車輪31を同速度で回転させることで前進又は後退可能であるとともに、二つの駆動車輪31の回転速度を異ならせることで進行方向に対して左右に旋回可能になっている。また、無人搬送車30は、二つの駆動車輪31を逆向きに回転させることでその場で旋回可能になっている。一方、前記二つの従動車輪32は、無人搬送車30の前端部及び後端部における車幅方向の中央にそれぞれ配置されている。各従動車輪32は、例えばキャスター付き車輪により構成されていて無人搬送車30の移動に伴って従動回転する。尚、以下の説明において、特に断らない限り、前側、後側、左側及び右側は、
図3の方向軸に示すように、無人搬送車30の前側、後側、左側及び右側を意味するものとする。
【0031】
前記ロボット20は、無人搬送車30の上面における前側端部に搭載されている。
図2に示すように、ロボット20は、第一アーム21、第二アーム22及び第三アーム23の三つのアームを備えた多関節型のロボットであり、第三アーム23の先端部にはエンドエフェクタとしてのハンド24が装着されている。ハンド24は、互いに対向する一対の把持爪24aを有していて、一対の把持爪24aによりワーク100を挟み込んで把持する。ハンド24の上部には、互いに間隔を空けて並ぶ一対のカメラ25(
図2では一方のみを示す)が支持バー26を介して取付けられている。一対のカメラ25は、例えば、ロボット20によりワーク100のピッキングを行う際にその位置及び姿勢等を認識するために設けられている。
【0032】
図4に示すように、無人搬送車30の上面におけるロボット20の後側には、加工前及び加工後のワーク100を積載するための積載面部34が設けられている。本例では、積載面部34には、円柱状の複数(図の例では16個)のワーク100がパレット80に保持された状態で積載されている。パレット80は、偏平な直方体状をなしており、その上面に上側に開放する複数の円筒穴80aを有している。複数のワーク100は、それぞれの基端部がパレット80の各円筒穴80aに嵌合する状態で、鉛直に起立して配列されている。
【0033】
積載面部34は、無人搬送車30の左右方向の略全体に亘って設けられた矩形状の積載プレート35により構成されている。積載プレート35は、
図5に示すように、嵌合板部35aと規制板部35bを有している。嵌合板部35aは、無人搬送車30の天板40に形成された開口部40aに嵌め込まれて該天板40に略連続的に繋がるように形成されている。
図4に示すように、嵌合板部35aの中心位置C(対角線の交差位置)は、無人搬送車30の重心位置Gを通り且つ前後方向に延びる直線L1上に位置している。前記規制板部35bは、嵌合板部35aの外周縁に沿って延設されていて、前記天板40の下面に当接することで嵌合板部35aの上方位置を規制する。
【0034】
積載プレート35の下側には、その上面に積載されるワーク100から作用する重量を検知する四つの重量センサ36〜39が設けられている。四つの重量センサ36〜39は、その検知面である上端面が積載プレート35の下面に当接する状態で、無人搬送車30の骨格フレーム41(
図5にのみ示す)に固定されている。
【0035】
四つの重量センサ36〜39はそれぞれ、平面視で積載プレート35の四隅に位置している。左側の二つの重量センサ36,38と右側の二つの重量センサ37,39とは、前記直線L1に対して線対称に配置されている。また、前側の二つの重量センサ36,37と後側の二つの重量センサ38,39とは、前記積載プレート35の中心位置Cを通り且つ左右方向に延びる直線L2に対して線対称に配置されている。そして、四つの重量センサ36〜39はそれぞれ、検知した重量を電気信号に変換して後述する制御装置50に出力する。
【0036】
無人搬送車30は、工場の建屋2内における自身の位置を認識可能なセンサ(例えば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を備えており、前記制御装置50による制御の下で、前記建屋2内を無軌道で走行するように構成され、本例では、在庫スペース3(
図1参照)に設定された待機位置P
0、並びに、工作機械10、測定機11及び洗浄機12に対してそれぞれ設定された各作業位置P
1〜P
3に経由する。
【0037】
前記制御装置50は、前記無人搬送車30の筐体内に格納されており、
図6に示すように、動作プログラム記憶部51、移動位置記憶部52、動作姿勢記憶部53、マップ情報記憶部54、手動運転制御部55、自動運転制御部56、マップ情報生成部57、位置認識部58、異常検出処理部59、報知処理部60、及び入出力インターフェース61から構成される。そして、制御装置50は、この入出力インターフェース61を介して、前記工作機械10、測定機11、洗浄機12、ロボット20、カメラ25、無人搬送車30、操作盤33、及び、四つの重量センサ36〜39に接続している。
【0038】
尚、制御装置50は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記手動運転制御部55、自動運転制御部56、マップ情報生成部57、位置認識部58、異常検出処理部59、報知処理部60、及び入出力インターフェース61は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、所定の処理を実行する。また、動作プログラム記憶部51、移動位置記憶部52、動作姿勢記憶部53、及びマップ情報記憶部54はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0039】
前記手動運転制御部55は、作業者により前記操作盤33から入力される操作信号にしたがって、前記無人搬送車30及びロボット20を動作させる機能部である。即ち、作業者は、この手動運転制御部55による制御の下で、操作盤33を用いて、前記無人搬送車30及びロボット20の手動操作を実行することができる。
【0040】
前記動作プログラム記憶部51は、生産時に前記無人搬送車30及び前記ロボット20を自動運転するための自動運転用プログラム、並びに後述する建屋2内のマップ情報を生成する際に前記無人搬送車30を動作させるためのマップ生成用プログラムを記憶する機能部である。自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムは、例えば、前記操作盤33に設けられた入出力部33aから入力され、当該動作プログラム記憶部51に格納される。
【0041】
尚、この自動運転用プログラムには、無人搬送車30が移動する目標位置としての移動位置、移動速度及び無人搬送車30の向きに関する指令コードが含まれ、また、ロボット20が順次動作する当該動作に関する指令コードが含まれる。また、マップ生成用プログラムは、前記マップ情報生成部57においてマップ情報を生成できるように、無人搬送車30を無軌道で建屋2内を隈なく走行させるための指令コードが含まれる。
【0042】
前記マップ情報記憶部54は、無人搬送車30が走行する建屋2、及びこの建屋2内に配置される機械等、即ち、工作機械10、測定機11、及び洗浄機12の配置情報、並びに在庫スペース3の配置位置を含むマップ情報を記憶する機能部であり、このマップ情報は前記マップ情報生成部57によって生成される。
【0043】
前記マップ情報生成部57は、詳しくは後述する前記制御装置50の自動運転制御部56による制御の下で、前記動作プログラム記憶部51に格納されたマップ生成用プログラムにしたがって無人搬送車30を走行させた際に、前記センサによって検出される距離データから建屋2内の空間情報を取得するとともに、建屋2内に配設される前記機械等の平面形状を認識し、例えば、予め登録された前記機械等の平面形状を基に、建屋2内に配設された具体的な機械等の位置、平面形状等(配置情報)を認識する。そして、マップ情報生成部57は、得られた空間情報及び装置等の配置情報を建屋2内のマップ情報として前記マップ情報記憶部54に格納する。
【0044】
前記位置認識部58は、前記センサによって検出される距離データ、及び前記マップ情報記憶部54に格納された建屋2内のマップ情報を基に、建屋2内における無人搬送車30の位置を認識する機能部であり、この位置認識部58によって認識される無人搬送車30の位置に基づいて、当該無人搬送車30の動作が前記自動運転制御部56によって制御される。
【0045】
前記移動位置記憶部52は、前記無人搬送車30が移動する具体的な目標位置としての移動位置であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した具体的な移動位置を記憶する機能部であり、この移動位置には、上述した待機位置P
0及び作業位置P
1〜P
3が含まれる。尚、この移動位置は、例えば、前記手動運転制御部55による制御の下、前記操作盤33により前記無人搬送車30を手動運転して、目標とする各位置に移動させた後、前記位置認識部58によって認識される位置データを前記移動位置記憶部52に格納する操作によって設定される。この操作は所謂ティーチング操作と呼ばれる。
【0046】
前記動作姿勢記憶部53は、前記ロボット20が所定の順序で動作することによって順次変化するロボット20の姿勢(動作姿勢)であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した動作姿勢に係るデータを記憶する機能部である。この動作姿勢に係るデータは、前記手動運転制御部55による制御の下で、前記操作盤33を用いたティーチング操作により、当該ロボット20を手動運転して、目標とする各姿勢を取らせたときの、当該各姿勢におけるロボット20の各関節(モータ)の回転角度データであり、この回転角度データが動作姿勢に係るデータとして前記動作姿勢記憶部53に格納される。
【0047】
前記自動運転制御部56は、前記動作プログラム記憶部51に格納された自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムのいずれかを用い、当該プログラムにしたがって無人搬送車30及びロボット20を動作させる機能部である。その際、前記移動位置記憶部52及び動作姿勢記憶部53に格納されたデータが必要に応じて使用される。
【0048】
異常検出処理部59は、前記四つの重量センサ36〜39により検知された重量を基に、過積載状態とアンバランス積載状態との少なくとも一方が生じる状態を異常積載状態として検出する処理を実行する機能部である。この異常検出処理部59と、前記四つの重量センサ36〜39とが本発明の検出部として機能する。
【0049】
ここで、過積載状態とは、積載面部34に積載された搬送対象物(本例ではワーク100)の総重量が最大積載重量を超える状態である。最大積載重量は、例えば無人搬送車30の走行安定性を確保できる積載重量の上限値として設計段階で定められる。
【0050】
アンバランス積載状態とは、積載面部34において搬送対象物(本例ではワーク100)の重量分布に所定以上の偏りが生じる状態である。ここで、所定以上の偏りとは、無人搬送車30の走行安定性の低下又は走行中の搬送対象物の落下の可能性が所定レベルを上回るほど重量分布に偏りが生じている状態を意味する。アンバランス積載状態及び過積載状態の検出処理の詳細は後述する。
【0051】
報知処理部60は、異常検出処理部59により前記異常積載状態が検出された場合に、操作盤33のスピーカ33dによって異常積載状態である旨を外部に報知させる機能部である。スピーカ33dによる報知は、例えば「異常積載状態です。ワーク100の配置位置を変更して下さい。」という音声メッセージを発することにより行われる。この報知処理部60とスピーカ33dとが本発明の報知部として機能する。尚、本例では、スピーカ33dから音声を発することで異常積載状態である旨を報知するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、操作盤33のディスプレイ33cにメッセージを表示することで異常積載状態である旨を報知するようにしてもよい。
【0052】
そして、本例では、前記自動運転制御部56は、異常検出処理部59により前記異常積載状態が検出された場合には、自動運転用プログラムに基づく無人搬送車30の走行を禁止する。
【0053】
このように制御装置50は、異常積載状態に対応するための異常対応制御を実行可能に構成されている。
図7は、制御装置50にて実行される異常対応制御の一例を示すメインフローチャートであり、
図8は、
図7のステップSA2に示す積載状態検出処理の詳細な流れの一例を示すサブフローチャートである。
【0054】
制御装置50は、その電源(本例では無人搬送車30の電源と共通)が投入されると先ず、四つの重量センサ36〜39による検出重量を読込む(ステップSA1)。そして、読込んだ各重量センサ36〜39の検出重量を基に、異常検出処理部59が積載状態検出処理(ステップSA2)を実行する。
【0055】
この積載状態検出処理では、
図8に示すように、先ず、読込んだ各重量センサ36〜39の検出重量の合計値を算出し、算出した合計値が最大積載重量以下であるか否かを判定する(ステップSA21)。そして、この合計値が最大積載重量を超える場合(ステップSA21でNOの場合)には、過積載状態つまり異常積載状態であると検出する(ステップSA25)。一方、この合計値が最大積載重量以下である場合(ステップSA21でYESの場合)には、過積載状態が生じていないものとして、今度はアンバランス積載状態が生じているか否かの判定処理を行う。
【0056】
本例では、先ず、前側の二つの重量センサ36,37の検出重量の合計値と、後側の二つの重量センサ38,39の検出重量の合計値との差の絶対値を前後重量差として算出し、この算出した前後重量差が所定閾値以下であるか否かを判定する(ステップSA22)。そして、算出した前後重量差が所定閾値以下である場合(ステップSA22でYESの場合)にはさらに、左側の二つの重量センサ36,38の検出重量の合計値と、右側の二つの重量センサ37,39の検出重量の合計値との差の絶対値を左右重量差として算出し、この算出した左右重量差が所定閾値以下であるか否かを判定する(ステップSA23)。この所定閾値は、上述した前後重量差に対する所定閾値とは別に設定された値であり、算出した左右重量差が所定閾値以下である場合(ステップSA23でYESの場合)には、アンバランス積載状態も発生していないと判断して、ワーク100が正常積載状態にあると検出する(ステップSA24)。一方、前後重量差又は左右重量差が、それぞれに対して設定された所定閾値を超える場合(ステップSA22でNO又はステップSA23でNOの場合)には、アンバランス積載状態つまり異常積載状態が発生していると検出する(ステップSA25)。
【0057】
そうして、積載状態検出処理が終了した後は、
図7に示すメインフローチャートのステップSA3に進み、上述の積載状態検出処理によって異常積載状態が検出されたか否かを判定する。そして、異常積載状態が検出されたと判定した場合(ステップSA3でYESの場合)には、報知処理部60が、操作盤33のスピーカ33dによって、異常積載状態が生じている旨の報知を実行させるとともに(ステップSA4)、自動運転制御部56が、自動運転用プログラムに基づく無人搬送車30の走行を禁止する(ステップSA5)。一方、上述の積載状態検出処理によって正常積載状態が検出された場合(ステップSA3でNOの場合)には、自動運転制御部56が、自動運転用プログラムに基づく無人搬送車30の走行を許可する(ステップSA6)。
【0058】
そうして、制御装置50は、その電源がOFFされて処理が終了されるまで、ステップSA1〜ステップSA6の処理を繰り返す。尚、本例では、ステップSA5において、自動運転制御部56による無人搬送車30の無人走行を禁止するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、無人走行に加えて手動運転制御部55による無人搬送車30の手動走行も禁止するようにしてもよい。
【0059】
以上の構成を備えた無人搬送システム1によれば、前記制御装置50の自動運転制御部56による制御の下で、前記動作プログラム記憶部51に格納された自動運転用プログラムが実行され、この自動運転用プログラムにしたがって、無人搬送車30及びロボット20が動作する。
【0060】
即ち、無人搬送車30は、在庫スペース3(
図1参照)において、作業者Mにより積載面部34上に加工前のワーク100が積載された後、自動運転用プログラムにしたがって、工作機械10、測定機11、洗浄機12に対してそれぞれ設定された各作業位置P
1〜P
3に経由し、各作業位置P
1〜P
3において、ロボット20が対応する各機械10〜12に対して設定された作業を行う。ロボット20が行う作業は、各機械10〜12に対するワーク100の着脱作業等であり、ロボット20は、各機械10〜12にて処理が完了したワーク100を取り外して積載面部34上に戻した後、積載面部34上にある未処理のワーク100を把持して各機械10〜12に装着する。無人搬送車30は、積載面部34に積載された全てのワーク100について最終工程である洗浄機12による洗浄処理が完了すると、在庫スペース3に戻って作業者Mによるワーク100の積み替えを待つ。そして、作業者Mによる積載面部34上のワーク100の積み替えが完了して、作業者Mが無人搬送車30の操作盤33に設けられた無人走行開始ボタンを押すと、無人搬送車30が自動運転プログラムにしたがって無人走行を開始し、その後は各作業位置P
1〜P
3に経由する。
【0061】
ここで、作業者Mがワーク100の積み替えを行った際に、積載面部34に新たに積載したワーク100の重量分布に偏りが生じる場合がある。
図9及び
図10は、このような重量分布の偏りが生じる場合の一例を示す概略平面図である。
【0062】
図9は、パレット80が積載面部34に収まるように配置されているものの、ワーク100がパレット80の一方側(無人搬送車30の左側)に偏って配置されているために、積載面部34におけるワーク100の重量分布が無人搬送車30の左側に偏っている例を示している。一方、
図10は、パレット80上におけるワーク100の配置は均等であるものの、パレット80自体が積載面部34に対して左側に偏って配置されているために、積載面部34におけるワーク100の重量分布が無人搬送車30の左側に偏っている例を示している。
【0063】
このように積載面部34においてワーク100の重量分布に偏りが生じていると、無人搬送車30の走行中に(特に、加減速時及び旋回時に)、無人搬送車30がワーク100の重量側(
図9及び
図10の例では左側)に傾いて走行安定性が損なわれたり、ワーク100が積載面部34から落下したりする虞がある。
【0064】
また、積載面部34におけるワーク100の重量分布の偏り以外にも、例えば、積載面部34に積載されたワーク100の重量が最大積載重量を超えていると、無人搬送車30がワーク100の重みで傾く等して走行安定性が損なわれる虞がある。また、ワーク100の重量が大きい分、ワーク100に作用する慣性力が増大してワーク100の落下の問題も生じ易い。
【0065】
これに対して本例では、制御装置50の電源が投入されると、四つの重量センサ36〜39により検出される重量に基づき、異常検出処理部59において、上述した
図8(
図7のステップSA2)に示す積載状態検出処理が実行されて、ワーク100の積載状態が異常積載状態(過積載状態とアンバランス積載状態との少なくとも一方が生じる状態)にあるか否かが監視される。そして、異常検出処理部59によって、異常積載状態が検出されると、その旨が、前記操作盤33のスピーカ33dを介して外部に報知される。
【0066】
したがって、作業者Mは、スピーカ33dからの報知を受けて、ワーク100が異常積載状態にあることを容易に且つ迅速に認識し、無人搬送車30が無人走行を開始する前に、ワーク100の異常積載状態を解消するための作業を行うことができる。
【0067】
この作業としては、異常積載状態の一つである過積載状態を解消するために一部のワーク100を在庫に戻したり、異常積載状態の一つであるアンバランス積載状態を解消するためにワーク100の配置位置やパレット80の配置位置を変更したりする作業等が挙げられる。具体的には、例えば
図9の例では、左側に偏ったワーク100の重量分布を解消するために、パレット80の左から二列目の四つのワーク100を、図中の二点鎖線矢印で示すように、パレット80の最も右側(左から四列目)の列に移動させることが考えられる。また、
図10の例では、パレット80全体を、図中の白抜き矢印で示すように右側に移動させて積載面部34内に収めることが考えられる。
【0068】
そうして、作業者Mが異常積載状態を解消するべく迅速な対応をとることで、無人搬送車30が異常積載状態のまま走行を開始することを未然に防止することができる。延いては、異常積載状態に起因する無人搬送車30の走行安定性の低下及び積載面部34からのワーク100の落下の問題を回避することができる。
【0069】
また本例では、異常検出処理部59によって異常積載状態が検出されると、自動運転制御部56において、自動運転用プログラムに基づく無人搬送車30の走行が禁止される(ステップSA5)。
【0070】
したがって、例えばスピーカ33dの故障等により異常積載状態である旨の報知が行われなかった場合に、作業者Mが異常積載状態に気付かずに無人走行開始ボタンを押したとしても、無人搬送車30が走行を開始することはない。よって、無人搬送車30が異常積載状態のまま走行を開始するのを確実に防止することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図11及び
図12は、本発明の第2の実施形態を示している。この実施形態では、制御装置50の機能部の構成、及び、制御装置50により実行される異常対応制御の内容が第1の実施形態とは異なっている。尚、以下の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
即ち、本実施形態では、
図11に示すように、制御装置50は、機能部として、前記報知処理部60を廃止する代わりに速度設定部62を有している。速度設定部62は、積載状態検出処理(
図8参照)による異常積載状態の検出の有無に応じて、制御装置50のROM内に記憶された無人搬送車30の設定速度を書替える機能部である。この設定速度は、自動運転制御部56が、自動運転用プログラムに基づいて無人搬送車30を走行制御する際に利用される。具体的には、自動運転制御部56は、ROM内に記憶された設定速度を読み込んで、無人搬送車30を該読込んだ設定速度で走行させるべく前記駆動車輪31のモータ31aを制御する。この設定速度は、制御装置50の電源投入時には、第一所定速度に設定されているが、後述するように異常検出処理部59により異常積載状態が検出されると、速度設定部62により第一所定速度から第二所定速度に変更される。そうしてこの速度設定部62が本発明の速度変更部として機能する。第一所定速度及び第二所定速度の値は、作業者が操作盤33を介して手動で設定するようにしてもよいし、製造段階において、速度設定部62が実行する速度設定プログラムに固定値として記述しておいてもよい。
【0073】
図12は、本実施形態の制御装置50により実行される異常対応制御の内容を示すメインフローチャートである。制御装置50は、その電源が投入されると、第1の実施形態と同様に、四つの重量センサ36〜39による検出重量を読込み(ステップSB1)、次いで、異常検出処理部59が、読込んだ検出重量を基に積載状態検出処理(ステップSB2)を実行する。この積載状態検出処理は、第1の実施形態で説明したステップSA21〜SA25の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。そして、この積載状態検出処理によって異常積載状態が検出されなかった場合(ステップSB3でNOの場合)には、速度設定部62が、制御装置50のROM内に記憶された無人搬送車30の設定速度を第一所定速度に設定する(ステップSB5)。一方、上述の積載状態検出処理によって異常積載状態が検出された場合(ステップSB3でYESの場合)には、速度設定部62が、制御装置50のROM内に記憶された無人搬送車30の設定速度を第一所定速度よりも低い第二所定速度に設定する(ステップSB4)。したがって、無人搬送車30は、異常積載状態が生じている場合には、異常積載状態が生じていない場合に比べて低速で走行することとなる。
【0074】
制御装置50は、その電源がOFFされて処理が終了されるまで、前記ステップSB1〜SB5の処理を繰り返す。
【0075】
このように、本実施形態の無人搬送システム1によれば、異常積載状態が生じている場合には、無人搬送車30の走行速度が低くなるので、異常積載状態に起因する無人搬送車30の走行姿勢の不安定化を回避することができる。また、無人搬送車30の走行速度を下げることで、無人搬送車30の走行振動及びワーク100に作用する慣性力が低減されるので、異常積載状態に起因するワーク100の落下を防止することができる。
【0076】
(第3の実施形態)
図13及び
図14は、本発明の第3実施形態を示している。この実施形態では、制御装置50の機能部の構成、及び、制御装置50により実行される異常対応制御の内容が前記第1の実施形態とは異なっている。
【0077】
即ち、本実施形態では、
図13に示すように、制御装置50は、機能部として、前記報知処理部60を有さない代わりに積載制御部63を有している。
【0078】
積載制御部63は、異常検出処理部59において異常積載状態が検出された場合に、ロボット20に、ワーク100の移動を伴う所定動作を実行させることで異常積載状態を解消する機能部である。
【0079】
図14は、本実施形態の制御装置50により実行される異常対応制御の内容を示すメインフローチャートである。制御装置50は、その電源が投入されると、第1の実施形態と同様に、四つの重量センサ36〜39による検出重量を読込み(ステップSC1)、次いで、異常検出処理部59が、読込んだ検出重量を基に積載状態検出処理(ステップSC2)を実行する。この積載状態検出処理は、第1の実施形態で説明したステップSA21〜SA25の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。そして、この積載状態検出処理によって異常積載状態が検出されなかった場合(ステップSC3でNOの場合)には、ワーク100が正常積載状態にあるものとしてリターンする。
【0080】
一方、上述の積載状態検出処理によって異常積載状態が検出された場合(ステップSC3でYESの場合)には、異常検出処理部59において、この異常積載状態の詳細情報を解析して、解析した詳細情報を基に、過積載状態が生じているか否かを判定する(ステップSC4)。
【0081】
ここで、異常積載状態の詳細情報としては、例えば、異常積載状態の内容情報(例えば、アンバランス積載状態、過積載状態、又はその双方が発生する状態のいずれに該当するかの情報)、過積載状態に該当する場合の超過重量の情報、並びに、アンバランス積載状態に該当する場合の重量分布の偏り方向及びその大きさに関する情報が含まれる。超過重量は、最大積載重量から四つの重量センサ36〜39による検出重量の合計値を引いて算出することができる。また、重量分布の偏り方向及び大きさは、前後の重量センサ36〜39の検出重量の差分値、及び左右の重量センサ36〜39の検出重量の差分値を基に算出することができる。
【0082】
そして、異常検出処理部59において過積載状態が生じていると判定された場合(ステップSC4でYESの場合)には、積載制御部63が、異常検出処理部59から超過重量に関する情報を取得する(ステップSC5)。そして、積載制御部63は、積載面部34に積載されたワーク100のうち、取得した超過重量と同等か又はそれをやや上回る重量分の一部のワーク100を、ロボット20に取り出させて所定の場所に移させる動作(ワークの移動を伴う所定動作)を実行する(ステップSC6)。この所定の場所としては、例えば在庫スペース3に設けられた在庫棚や、建屋2内を走行する他の無人搬送車30の積載面部34等が挙げられる。そうして、積載制御部63がロボット20に一部のワーク100を所定の場所に移させることで過積載状態を解消し、しかる後に、ステップSC1にリターンする。
【0083】
一方、異常検出処理部59において過積載状態が生じていないと判定された場合(ステップSC4でNOの場合)には、アンバランス積載状態が生じていると判断できるので、積載制御部63は、このアンバランス積載状態を解消するためにステップSC7〜ステップSC9の処理を実行する。
【0084】
具体的には、積載制御部63は、先ず、ワーク100が積載面部34にバラ積みされているか否かを判定する(ステップSC7)。ここで、バラ積みとは、
図15に示すように、多数のワーク100が容器90内に不規則に積まれた状態であり、積載制御部63は、例えばロボット20に搭載されたカメラ25(
図2参照)により積載面部34上のワーク100の画像を撮像して、撮像した画像を基に、ワーク100がバラ積みされているか否かを判定する。尚、この判定はカメラ25を用いた方法に限らず、例えば作業者が操作盤33を通じてワーク100の積載モードとして整列モードとバラ積みモードとのいずれかを選択可能にしておき、操作盤33からの積載モードの選択情報を基にワーク100がバラ積みされているか否かを判定するようにしてもよい。
【0085】
そして、積載制御部63は、ワーク100がバラ積みされていると判定した場合(ステップSC7でYESの場合)には、
図15の黒矢印で示すように、無人搬送車30にその場旋回を正逆交互に実行させることで、容器90内のワーク100を揺らして均一化する(ステップSC8)。無人搬送車30のその場旋回は、左右の駆動車輪31のモータ31a(
図3参照)を互いに逆向きに回転させることで実現される。その場旋回を行う際の、正転方向の角度及び逆転方向の転角度は等しいことが好ましく、その大きさは10°以上30°以下であることが好ましい。また、正転の回数及び逆転の回数も等しいことが好ましい。本例では、一例として、無人搬送車30の正転20°と逆転20°とを交互にそれぞれ10回ずつ実行するようにしている。尚、本例では、
図14の時計回り方向を正転方向と定義しているが、反時計回り方向を正転方向と定義してもよいことは言うまでもない。
【0086】
一方、積載制御部63は、ワーク100がバラ積みされていなと判定した場合(ステップSC7でNOの場合)には、ワーク100が整列配置(
図9及び
図10等参照)されているものと判断して、ワーク100の重量分布の偏りを解消するべく、ロボット20にワーク100を把持して移動させる動作(ワーク100の移動を伴う所定動作)を実行させる。具体的には、
図9の例では、ロボット20に、ハンド24を介して、パレット80の左から二列目のワーク100を最も右側の列に移動させる動作や、
図10の例では、パレット80をロボット20により右側に押して積載面部34内に移動させる動作が挙げられる。
【0087】
そうして、制御装置50は、その電源がOFFされて処理が終了されるまで、ステップSC1〜ステップSC9の処理を繰り返す。
【0088】
このように、本実施形態の無人搬送システム1によれば、異常検出処理部59において異常積載状態が検出された場合には、積載制御部63が、ロボット20にワーク100の移動を伴う所定動作を実行させることよって異常積載状態を解消する(ステップSC6及びステップSC9)。
【0089】
したがって、無人搬送車30が異常積載状態のまま走行を開始するのを未然に防止することができる。延いては、異常積載状態に起因する無人搬送車30の走行安定性の低下及び積載面部34からのワーク100の落下を回避することができる。また、ロボット20を利用して異常積載状態を解消するようにしているので、作業者Mがワーク100を移動させて異常積載状態を解消する場合に比べて、作業者Mの肉体的負担を低減することができる。
【0090】
また、積載制御部63は、ワーク100が容器90内にバラ積みされた状態で積載面部34に積載されている場合において、異常検出処理部59により異常積載状態としてのアンバランス積載状態が検出されたときには、無人搬送車30に、その場旋回を正逆交互に実行させる。これにより、容器90内のワーク100が揺すられて均一化されるので最終的にアンバランス積載状態が解消する。尚、無人搬送車30のその場旋回は、上述のように例えば正逆それぞれ10回ずつ行うようにしているが、その場旋回を正逆10回ずつ1セット実行しただけではアンバランス積載状態が解消されない場合がある。その場合でも、ステップSC1からの処理を再度実行して、最終的にステップSC3で異常積載状態が検出されなくなるまでその場旋回(ステップSC8の処理)が実行される。
【0091】
これによれば、容器90内にバラ積みされたワーク100をロボット20が一つずつ把持して移動させる場合に比べて、容器90内のワーク100の配置を迅速に均一化させて、アンバランス積載状態を迅速且つ確実に解消することができる。
【0092】
(他の実施形態)
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0093】
すなわち、前記各実施形態では、異常検出処理部59は、四つの重量センサ36〜39による検出重量を基に異常積載状態の一つであるアンバランス積載状態を検出するように構成されているが、これに限ったものではない。異常検出処理部59は、無人搬送車30に設けられたジャイロセンサ又は加速度センサからの信号を基にアンバランス積載状態を検出するものであってもよい。
【0094】
ジャイロセンサを利用する場合、例えば前後方向に延びるX軸回りの角速度と、左右方向に延びるY軸回りの角速度と、上下方向に延びるZ軸回りの角速度とを検出可能になるようにジャイロセンサを配置すればよい。この場合において、例えば無人搬送車30の左右方向においてワーク100の重量分布の偏りが生じている場合には、無人搬送車30の発進時や旋回時等にX軸回りの角速度が一瞬増加するし、前後方向においてワーク100の重量分布に偏りが生じている場合には、Y軸回りの角速度が一瞬増加するので、異常検出処理部59において、このようなジャイロセンサからの角速度データを基に、前記アンバランス積載状態を検出することができる。
【0095】
また、加速度センサを利用する場合、例えば、前記X軸、前記Y軸、及び前記Z軸の各軸方向の加速度を検出可能になるように加速度センサを配置すればよい。この場合において、例えば無人搬送車30の左右方向においてワーク100の重量分布の偏りが生じている場合には、無人搬送車30の旋回時等に、Y軸方向の加速度が一瞬増加するし、前後方向においてワーク100の重量分布に偏りが生じている場合には、無人搬送車30の発進時等に、X軸方向の加速度が一瞬増加するので、異常検出処理部59において、このような加速度センサからの加速度データを基に前記アンバランス積載状態を検出することができる。尚、前記ジャイロセンサ及び加速度センサは、走行制御用に無人搬送車30に搭載されている既存のセンサを利用するようにしてもよい。
【0096】
また、異常検出処理部59は、無人搬送車30に搭載されたロボット20に取付けられたカメラ25(撮像装置の一例)が撮像した積載面部34上のワーク100の画像データを基に、アンバランス積載状態を検出するものであってもよい。この場合、カメラ25により撮像した画像データを基に、例えばワーク100とカメラ25との距離を推定して、距離が近い部分にワーク100が偏っていると判定することができる。
【0097】
尚、撮像装置は、カメラ25に限ったものではなく、例えばビジョンセンサや視覚センサにより構成されていてもよい。また、撮像装置は、必ずしもロボット20に取付ける必要はなく、無人搬送車30に取付けられていてもよい。この場合、撮像装置は、例えば積載面部34を上側又は斜め上側から撮像可能な位置に配置することが好ましい。
【0098】
また、無人搬送車30、ロボット20及び制御装置50から構成される走行ロボットシステムの複数が建屋2内に配設される場合に、各制御装置50が適宜通信網を介して相互に接続され、異常検出処理部59が検出した各無人搬送車30の異常積載状態に関する詳細情報を、各制御装置50において共有するようにしてもよい。こうすることで、例えば、無人搬送車30に過積載状態が生じている場合に、該無人搬送車30に積載されたワーク100の一部を他の無人搬送車30に移動させる等して、過積載状態を解消することができる。
【0099】
また、前記各実施形態では、制御装置50が無人搬送車30に搭載されている例を説明したが、これに限ったものではなく、制御装置50を建屋2内に設置して、制御装置50により無人搬送車30を遠隔制御するようにしてもよい。
【0100】
また、前記各実施形態では、無人搬送車30の上面に作業用のロボット20が搭載されている例を示したが、これに限ったものではなく、例えば、ロボット20を廃止して無人搬送車30の上面全体を積載面部34としてもよい。
【0101】
また、前記各実施形態では、作業者Mが、無人搬送車30の積載面部34へのワーク100の積載を行う例を説明したが、これに限ったものではなく、ロボット20が積載面部34へのワーク100の積載を行うようにしてもよい。
【0102】
また、前記各実施形態では、異常検出処理部59によって、過積載状態とアンバランス積載状態との双方を検出可能になっているが、これに限ったものではなく、過積載状態のみを検出するようにしてもよいし、アンバランス状態のみを検出するようにしてもよい。
【0103】
また、第3の実施形態において、積載制御部63は、ワーク100がバラ積みされていると判定した場合に、無人搬送車30を正逆交互にその場旋回させるようにしているが、これに限ったものではく、ロボット20により容器90内のワーク100をかき混ぜたり、重量が偏っている部分に配置されたワーク100をロボット20のハンド24により把持して重量が少ない部分に移動させたりする動作(ワーク100の移動を伴う所定動作)を実行するようにしてもよい。
【0104】
また、本発明は、前記各実施形態の任意の組み合わせを包含するものである。
【0105】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
無人搬送車30の積載面部34に積載された搬送対象物100の総重量が予め設定した上限値を超える過積載状態と前記積載面部34おいて搬送対象物100の重量分布に所定以上の偏りが生じるアンバランス積載状態との少なくとも一方が生じている状態を異常積載状態として検出する検出部と、前記検出部により異常積載状態が検出された場合に、