特許第6909942号(P6909942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6909942充電時間管理システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6909942
(24)【登録日】2021年7月7日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】充電時間管理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
   H02J7/00 P
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-30328(P2021-30328)
(22)【出願日】2021年2月26日
【審査請求日】2021年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】泉 洋志郎
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−135412(JP,A)
【文献】 特開2012−034506(JP,A)
【文献】 特開2019−053577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H01M 10/42−10/48
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電池を用いて走行する車両の充電に関わる情報、充電場所に関する情報、および当該充電に関わる情報が得られた時間に関する情報、を取得する取得手段と、
前記充電に関わる情報、前記充電場所に関する情報、および前記時間に関する情報により、予め定められた充電場所にて行われた前記車両の充電時間を特定する充電時間特定手段と、
前記車両の前記充電池の充電量の情報と、当該車両の走行距離に関する情報と、当該車両の充電回路に流れる電流の情報とを取得し、取得した当該充電量の情報と当該走行距離に関する情報とを用いて、当該電流の情報を取得していない期間のうち課金対象となる課金期間を特定し、特定された当該課金期間における充電時間を推定する充電時間推定手段と、
を備える充電時間管理システム。
【請求項2】
前記電流の情報を取得していない期間は、予め定められた時間長にて当該電流の情報が存在しない期間であることを特徴とする請求項に記載の充電時間管理システム。
【請求項3】
前記充電時間推定手段は、前記車両に対して行った充電の記録である充電実績情報により、前記充電時間を推定することを特徴とする請求項に記載の充電時間管理システム。
【請求項4】
前記充電実績情報は、前記充電池の充電量の増加が予め定められた条件を満たした際の前記車両の充電の記録であることを特徴とする請求項に記載の充電時間管理システム。
【請求項5】
前記取得手段、前記充電時間特定手段、および前記充電時間推定手段は、充電を管理する充電管理サーバに設けられ、
前記取得手段は、前記車両を管理する車両管理サーバから、前記電流の情報、前記充電場所に関する情報、および前記時間に関する情報を取得し、
前記充電時間推定手段は、前記車両管理サーバから、前記充電量の情報と、前記走行距離に関する情報とを取得する
ことを特徴とする請求項に記載の充電時間管理システム。
【請求項6】
コンピュータに、
充電池を用いて走行する車両の充電池を流れる電流の情報、充電場所に関する情報、および当該電流の情報が得られた時間に関する情報、を取得する機能と、
前記電流の情報、前記充電場所に関する情報、および前記時間に関する情報により、予め定められた充電場所にて行われた前記車両の充電時間を特定する機能と、
前記車両の前記充電池の充電量の情報と、当該車両の走行距離に関する情報と、を取得し、取得した当該充電量の情報と当該走行距離に関する情報とを用いて、前記電流の情報を取得していない期間のうち課金対象となる課金期間を特定し、特定された当該課金期間における充電時間を推定する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の充電時間を管理する充電時間管理システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、充電池を用いて走行する車両を管理する管理サーバから、車両の充電に関わる情報と、車両の移動履歴に関する情報と、を取得する取得手段と、車両の充電に関わる情報及び車両の移動履歴に関する情報により、予め定められた充電場所にて行われた車両の充電の度合を特定する充電度合特定手段と、特定された充電の度合を基に、充電場所に関する課金情報を出力する出力手段とを備える充電管理サーバが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020−135412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車(EV:Electric Vehicle)の普及に際しての課題として、集合住宅における充電環境整備が遅れていることがあげられる。充電環境整備が遅れている要因の一つとして、集合住宅の駐車場の電気は共用部の電気であり、EV保有者が充電するとその料金がEVを保有していない人も負担する必要があり公平性に欠ける点がある。充電量や充電時間を計測することができる充電機器を設置する手段もあるが、そのような充電機器の設置には多額の費用がかかる。特別な充電機器を用いなくとも、EVがどれくらい充電したかを判定することができれば、公平性を保ちつつ、比較的廉価な充電環境設備を集合住宅にも導入することができる。
上記特許文献1によればこの課題の解決も可能であるが、例えば充電記録漏れなどの特異な状態が生じた場合であっても、より正しく充電を認識することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される充電時間管理システムは、充電池を用いて走行する車両の充電に関わる情報、充電場所に関する情報、および当該充電に関わる情報が得られた時間に関する情報、を取得する取得手段と、前記充電に関わる情報、前記充電場所に関する情報、および前記時間に関する情報により、予め定められた充電場所にて行われた前記車両の充電時間を特定する充電時間特定手段と、前記車両の前記充電池の充電量の情報と、当該車両の走行距離に関する情報と、当該車両の充電回路に流れる電流の情報とを取得し、取得した当該充電量の情報と当該走行距離に関する情報とを用いて、当該電流の情報を取得していない期間のうち課金対象となる課金期間を特定し、特定された当該課金期間における充電時間を推定する充電時間推定手段と、を備える充電時間管理システムである
た、前記電流の情報を取得していない期間は、予め定められた時間長にて当該電流の情報が存在しない期間であることがある。
また、前記充電時間推定手段は、前記車両に対して行った充電の記録である充電実績情報により、前記充電時間を推定することがある。
また、前記充電実績情報は、前記充電池の充電量の増加が予め定められた条件を満たした際の前記車両の充電の記録であることがある。
前記取得手段、前記充電時間特定手段、および前記充電時間推定手段は、充電を管理する充電管理サーバに設けられ、前記取得手段は、前記車両を管理する車両管理サーバから、前記電流の情報、前記充電場所に関する情報、および前記時間に関する情報を取得し、前記充電時間推定手段は、前記車両管理サーバから、前記充電量の情報と、前記走行距離に関する情報とを取得することがある。
他の観点から捉えると、本発明が適用されるプログラムは、コンピュータに、充電池を用いて走行する車両の充電池を流れる電流の情報、充電場所に関する情報、および当該電流の情報が得られた時間に関する情報、を取得する機能と、前記電流の情報、前記充電場所に関する情報、および前記時間に関する情報により、予め定められた充電場所にて行われた前記車両の充電時間を特定する機能と、前記車両の前記充電池の充電量の情報と、当該車両の走行距離に関する情報と、を取得し、取得した当該充電量の情報と当該走行距離に関する情報とを用いて、前記電流の情報を取得していない期間のうち課金対象となる課金期間を特定し、特定された当該課金期間における充電時間を推定する機能と、を実現させるプログラムである
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば充電記録漏れなどの特異な状態が生じた場合であっても、より正しく充電を認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係るEV充電管理システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施の形態に係る車両管理サーバ、充電管理サーバ、および料金管理サーバのハードウェア構成例を示す図である。
図3】本実施の形態に係る充電管理サーバの機能構成例を示す図である。
図4】本実施の形態に係る充電時間特定部が充電池の充電の開始時間を検出する際のフローチャートである。
図5】充電池における充電の開始を検出する際に充電時間特定部が取得する情報を表した図表である。
図6】本実施の形態に係る充電時間特定部が充電池の充電の終了を検出する際のフローチャートである。
図7】(a)〜(c)は、充電時間特定部が充電池の充電の開始を検出した後に、充電池の充電の終了を検出する際に取得する情報の一例を表した図表である。
図8】(a)〜(d)は、特定場所判定部が用いるEVに関する情報を示した図である。
図9】データ中断期間の分類の一例として、この分類に際して用いる複数パターンを示した図である。
図10】(a)、(b)は、本実施の形態に係る中断期間分類部がデータ中断期間を分類し、充電時間推定部が充電時間を推定する際に用いる情報の一例を示した図表である。
図11】(a)〜(c)は、本実施の形態に係る充電時間推定部が充電実績格納配列を作成する際の具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
<EV充電管理システムの全体構成>
図1は、本実施の形態に係るEV充電管理システム1の全体構成例を示す図である。本実施の形態に係るEV充電管理システム1は、車両管理サーバ100と、充電管理サーバ200と、料金管理サーバ300と、電気自動車(EV:Electric Vehicle)であるEV500とを備える。このEV500は、充電池を用いて走行する車両である。
【0010】
車両管理サーバ100は、複数台のEV500を管理するサーバ装置である。車両管理サーバ100としては、例えば、EV500の製造又は販売等を行う自動車会社が管理しているサーバ装置を挙げることができる。この車両管理サーバ100は、EV500を利用するユーザ(以下、「利用ユーザ」と称する)の情報(例えば、利用ユーザの氏名、住所)や、EV500の車両に関する情報(例えば、EV500を識別するためにEV500毎に付与された車両IDや、EV500の車種)などの各種情報を、EV500毎に管理する。また、車両管理サーバ100は、インターネット等のネットワークを介して、EV500から常時(例えば5分毎)又は必要に応じて、EV500の位置情報、EV500の充電に関わる情報などを取得する。
【0011】
付言すると、EV500の位置情報は、EV500の存在する位置を示す情報である。この情報をEV500にて、取得・記録しておき、車両管理サーバ100が取得することにより、時間の経過に従った位置情報が取得される。その結果、EV500の移動経路などの移動履歴が把握される。
【0012】
ここで、EV500の充電に関わる情報としては、例えばEV500の充電池におけるSOC(State Of Charge)などの充電量に関する情報、また例えば充電回路や充電池に流れる電流量、また例えば充電池にかかる電圧、また例えばEV500の速度と走行距離、などが挙げられる。
【0013】
充電管理サーバ200は、EV500の充電池を充電した時間を把握し管理するサーバ装置である。この充電管理サーバ200は、例えば、EV500に対して電力を提供する電力会社のサーバ装置で構成することができる。この充電管理サーバ200は、インターネット等のネットワークを介して、車両管理サーバ100から、EV500の位置情報、EV500の電流の情報などの、充電に関わる情報を取得する。そして、充電管理サーバ200は、車両管理サーバ100から取得した情報を基に、EV500が特定の充電設備にて行った充電時間を特定および推定する。
本実施の形態において、EV充電管理システム1が充電時間管理システムの一例として機能するが、充電管理サーバ200が単体にて充電時間管理システムの一例として機能することができる。
【0014】
料金管理サーバ300は、利用ユーザに対して課金する、充電の料金を管理するサーバ装置である。この料金管理サーバ300は、例えば、EV500を充電する充電設備の管理会社のサーバ装置や、充電設備が設置された集合住宅の管理組合のサーバ装置で構成することができる。この料金管理サーバ300は、インターネット等のネットワークを介して、充電管理サーバ200から、EV500が充電設備にて行った充電の時間を示す情報を取得する。そして、料金管理サーバ300は、取得した情報を基に、利用ユーザに対して課金する料金を計算する。
【0015】
EV500は、充電池501、充電回路502、車載器503を備える。ここで、EV500は、充電プラグ等を介して、集合住宅等に設置された充電設備に接続される。そして、充電設備から充電回路502を介して、充電池501に電力が供給される。充電池501は、充電回路502から供給される電力で充電され、充電された電力をEV500の各所に供給する。また、車載器503は、車両管理サーバ100との間で通信を行い、例えばGPS(Global Positioning System)によって取得したEV500の位置情報や、EV500の充電に関わる情報を出力する。なお、車載器503は、EV500の製造時に取り付けられた装置に限られず、EV500の製造後に取り付けられた外付けの装置であってもよい。
【0016】
また、位置情報は、GPSによって取得する構成に限られない。例えば、EV500の車載器503が、周囲にある装置と無線通信を行うことにより、EV500の位置を把握してもよい。また、EV500に備え付けられたカメラで周囲を撮影し、撮影した画像を車両管理サーバ100に送信してもよい。さらに、充電設備がEV500の情報を車両管理サーバ100に送信することも考えられる。例えば、充電設備にカメラを設けて、カメラでEV500を撮影し、撮影した画像を車両管理サーバ100に送信することにより、車両管理サーバ100がEV500を識別することで、EV500が充電設備の場所にいることが把握される。
【0017】
本実施の形態では、例えばEV500の走行時と、充電時とにおいて、データ収集期間としてデータを収集している。また、例えばEV500が非充電の状態で停車しているときは、非データ収集期間としてデータを収集しない。このデータ収集期間において、EV500は、例えば1秒毎に位置情報や電池電流などのデータを収集し記憶する。
また、本実施の形態では、EV500の電源が入っておりEV500の走行可能な期間をデータ収集期間としており、さらに、EV500の電源が入っていない場合であっても充電している場合には、データ収集期間としている。そして、EV500の電源が入っておらず充電をしていないデータ収集期間以外の期間が、非データ収集期間となる。
【0018】
また、上述した例では、利用ユーザの情報は、車両管理サーバ100に保存されることとしたが、充電管理サーバ200に保存されることとしてもよい。この場合、充電管理サーバ200では、例えば、車両IDと利用ユーザの情報(即ち、その車両IDが付与されたEV500を利用する利用ユーザの情報)との紐付けが行われる。他方、車両管理サーバ100では、例えば、EV500毎に、車両IDとその他の情報(例えば、EV500の車種、EV500の位置情報、EV500の充電に関わる情報)との紐付けが行われる。そのため、充電管理サーバ200は、車両管理サーバ100からEV500の情報を取得する場合、利用ユーザに紐付けられている車両IDを指定することで、その利用ユーザが利用するEV500の情報を取得することが可能である。
なお、ここでは、車両IDと利用ユーザの情報とを紐付けることとしたが、EV500を識別可能な情報と利用ユーザの情報とを紐付ければよく、車両IDを用いる構成に限られない。
【0019】
<充電管理サーバのハードウェア構成>
次に、本実施の形態に係る各サーバのハードウェア構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る車両管理サーバ100、充電管理サーバ200、および料金管理サーバ300のハードウェア構成例を示す図である。
【0020】
図示するように、車両管理サーバ100、充電管理サーバ200、および料金管理サーバ300は、ファームウェアを含むプログラムの実行を通じて装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)11と、BIOS(Basic Input Output System)やファームウェア等のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)12と、プログラムの実行領域として使用されるRAM(Random Access Memory)13とを備える。
【0021】
また、充電管理サーバ200は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種プログラム、各種プログラムに対する入力データ、各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域であるHDD(Hard Disk Drive)14を備える。そして、ROM12やHDD14等に記憶されたプログラムが、RAM13に読み込まれてCPU11に実行されることにより、充電管理サーバ200の機能が実現される。
さらに、充電管理サーバ200は、外部との通信を行うための通信インタフェース15と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構16と、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力デバイス17とを備える。
【0022】
<充電管理サーバ200の機能構成>
次に、図3を参照し、本実施の形態に係る充電管理サーバ200の機能構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る充電管理サーバ200の機能構成例を示す図である。
充電管理サーバ200は、データ取得部210と、中断期間特定部220と、充電時間特定部230と、特定場所判定部240と、中断期間分類部250と、充電時間推定部260と、出力部270とを有している。
【0023】
データ取得部210は、車両管理サーバ100と各種ネットワークを介して接続し、EV500の充電に関わる情報と充電場所に関する情報とを取得する。このデータ取得部210は、充電管理サーバ200が充電時間を特定および推定するときに、EV500の充電に関わる情報と充電場所に関する情報とを、車両管理サーバ100からまとめて取得する。もしくは、定期的にEV500に関する情報を車両管理サーバ100から取得して充電管理サーバ200の記憶装置(HDD14等)に記憶させておいてもよい。例えば、電気料金の課金が1か月単位である場合は、前回の電気料金の課金対象となった1か月の終わりの時点から起算して1か月間を、料金計算の対象の期間とする。そして、データ取得部210は、この対象の期間についてのEV500の情報を取得する。
【0024】
ここで、データ取得部210が取得するEV500の充電に関わる情報としては、データを計測した時間と、充電池501に流れる電流の量である電池電流の量と、充電池501の充電量の残量と、EV500の位置情報と、EV500の車速と、EV500の走行距離と、が一例として挙げられる。
データを計測した時間は、例えば、対象の期間の最初を1秒として、この最初の1秒を基準とする時間を示している。
電池電流の量は、EV500の充電池501に流れる電流を計測したものである。EV500の電池電流の値がマイナスの状態は、充電池501が放電する状態であり、電池電流の値がプラスの状態は、充電池501に蓄電する状態である、として計測される。
また、充電池501の充電量の残量は、例えば、充電池501の満充電の状態を100とし、充電量がなくなった状態を0とするパーセンテージで表したものを取得することができる。以下、この充電量の残量をパーセンテージで表したものをSOCと称することがある。このSOCが充電量の情報の一例である。また、充電量の情報として、充電池501の充電量の残量を電力量(kWh)で表すこともできる。なお、充電池501への充電をするのに費やした電力量(kWh)を充電量の情報とすることもできる。
【0025】
位置情報は、例えば、EV500が特定場所にあるか否かの情報である。ここで、特定場所とは、集合住宅の駐車場など、充電設備を有し、予め定められたユーザがEV500の充電を行う場所である。
EV500が特定場所にあるか否かは、GPS等によってEV500の位置の緯度経度を取得し、EV500の緯度経度と特定場所の緯度経度とが予め定められた範囲内にあるか否かで判定する。
【0026】
EV500が特定場所にあるか否かを判断する他の方法として、例えば、特定場所にある無線通信装置から特定の情報を発信し、EV500に積載されている受信機が特定の情報を受信した場合に、この特定場所にEV500が位置していると判定する方法もある。さらには、特定場所に設置されているカメラで画像を取得し、その画像情報からEV500を識別し、EV500の位置を把握してもよい。
【0027】
車速とは、EV500が移動している速度である。また、走行距離とは、EV500が移動した距離である。走行距離は、減少することがなく、非データ収集期間であってもEV500が移動した場合に増加する。
【0028】
中断期間特定部220は、取得したEV500に関するデータの時間的連続性が途切れている期間をデータ中断期間として判定する。本実施の形態では、上述のように、データ収集期間と非データ収集期間とがあり、データを取得していないこの非データ収集期間はデータ中断期間の一つである。また、本来はデータ収集期間であるにも関わらず何らかの障害によってデータを取得できなかった期間である障害期間もデータ中断期間と判断される。
【0029】
充電時間特定部230は、EV500にて充電された時間である充電時間を特定する。充電時間特定部230は、充電の開始の時間と充電の終了の時間とを検出し、この充電の開始の時間と充電の終了の時間との間を充電時間と特定する。詳しくは後述するが、例えば、充電時間特定部230は、EV500の充電池501の電池電流の値を用いて充電の開始時間と充電の終了時間を検出する。そして、充電時間特定部230は、充電の開始の時間の検出と充電の終了の時間の検出とを繰り返すことで、充電の開始の時間と充電の終了の時間との間の時間を充電時間として特定する。
【0030】
特定場所判定部240は、充電時間特定部230が特定した充電時間において、EV500が特定場所にあるか否かを判定する。通常は、取得した位置情報から、EV500が特定場所にあるかを判定する。しかし、屋内の駐車場にEV500が位置しているなど、例えば衛星からの電波を受信するのが難しいときには、GPSによる位置情報が取得できない場合がある。この位置情報が取得できない場合に、予め定められた特定場所にEV500が駐車されているかを特定場所判定部240が判定する。
さらに、後述する中断期間分類部250がデータ中断期間を分類した際に、課金対象と分類したデータ中断期間において、EV500が特定場所にあるか否かを特定場所判定部240が判定する。
【0031】
中断期間分類部250は、中断期間特定部220が特定したデータ中断期間を、課金対象の期間か、課金対象ではない期間かに分類する。この分類は、例えば、データ中断期間の前後のデータのEV500のSOCの残量と走行距離とに基づいて行う。
前述の中断期間特定部220において特定されるデータ中断期間としては、データを取得していない非データ収集期間と、障害によってデータを取得できなかった障害期間がある。そこで、中断期間分類部250は、特定場所で充電したと判断できるデータ中断期間を課金対象期間とし、特定場所で充電したことが判断できないデータ中断期間を課金対象期間でない期間とする分類を行う。
【0032】
充電時間推定部260は、中断期間分類部250によって課金対象と判断されたデータ中断期間における充電時間を推定する。このデータ中断期間では、データが取得されていないため、例えば、データ中断期間の前後におけるSOCの情報や、過去に充電を行った際の記録等を用いて、データ中断期間中に行った充電時間を推定する。
特定場所判定部240、中断期間分類部250、および充電時間推定部260は、充電時間推定手段の一例として機能する。
【0033】
出力部270は、充電時間特定部230が特定した充電時間と充電時間推定部260が推定した充電時間とを、料金管理サーバ300へ送信する。
【0034】
以下、充電管理サーバ200が行う処理を説明する。
<充電時間特定の処理>
まず、図4のフローチャートを用いて、充電時間特定部230が充電の開始時間を検出する処理を説明する。
図4は、本実施の形態に係る充電時間特定部230が充電池501の充電の開始時間を検出する際のフローチャートである。
【0035】
充電時間特定部230は、データ取得部210が取得した電池電流の情報から、時系列順にデータを参照し電池電流の値を取得する(ステップ1001)。次に、充電時間特定部230は、電池電流の値が閾値を超えたか否かを判断する(ステップ1002)。この「閾値」は、満充電のときを充電時間と把握してしまうことを避けるために決定される。一般に、満充電に近づくと電池電流の値が小さくなるが、この満充電になると充電時間の把握は行わない。電池電流の閾値が小さすぎると、この満充電のときを充電時間と把握してしまうことから、閾値としては小さすぎない値が設定される。本実施の形態では、閾値として、例えば1A(アンペア)等が採用される。
【0036】
ステップ1002で、電池電流の値が閾値を超えていない場合は(ステップ1002でNO)、ステップ1001に戻り、次の電池電流の情報から、時系列順に電池電流の値を参照する(ステップ1001)。ステップ1002で電池電流の値が閾値を超えていると判断した場合には(ステップ1002でYES)、充電時間特定部230は、電池電流を計測した時間を充電の開始の時間の候補として、例えばHDD14(図2参照)に記録する(ステップ1003)。
【0037】
次に、充電時間特定部230は、充電の開始時間の候補とした時間から予め定められた時間後までのデータを参照する(ステップ1004)。このステップ1004にて、充電時間特定部230は、充電の開始時間の候補とした時間後に、安定して閾値以上の電流が充電池501に流れているかを把握することが必要である。そこで、充電時間特定部230は、充電の開始時間の候補とした時間から予め定められた時間でのデータを参照している。この予め定められた時間のデータを参照することで、例えば、回生運転の際に生じる一時的な電池電流を把握してしまい回生運転を充電の開始の時間と検出することを抑制することができる。なお、ここで、回生運転とは、EV500が下り坂を走っている場合又はブレーキを掛けている場合等に、充電池501に対して充電する向きの電流を生じさせる制御のことである。
なお、候補とした時間から予め定められた時間として、例えば60秒等を採用できる。
【0038】
ステップ1004で、予め定められた時間後までのデータを参照した充電時間特定部230は、ステップ1004にて参照したデータの数が、取得すべきデータ数に対して予め定められた割合以上の数であるか否かを判断する(ステップ1005)。このステップ1005では、例えば、許容される数秒程度のデータ欠損の場合には充電の開始時間の検出を行い、許容されない程度のデータ欠損がある場合には充電時間の開始を検出しないという処理を行う。ここで、取得すべきデータ数は、例えば、EV500が1秒間隔でデータを取得しており、予め定められた時間が60秒である場合には60個である。なお、予め定められた割合とは例えば9割等を採用できる。
【0039】
ステップ1005で、参照したデータ数が取得すべきデータ数の予め定められた割合以上でないと判断されると(ステップ1005でNO)、ステップ1001に戻り、充電時間特定部230は、次の電池電流の情報から、時系列順に電池電流の値を参照する(ステップ1001)。
ステップ1005で、参照したデータ数が取得すべきデータ数の予め定められた割合以上であると判断されると(ステップ1005でYES)、充電時間特定部230は、参照した全ての電池電流の値が閾値を超えているか否かを判断する(ステップ1006)。参照した電池電流の値のうち少なくとも一つが閾値以下の場合は(ステップ1006でNO)、ステップ1001に戻り、次の電池電流の情報から、時系列順に電池電流の値を参照する。
ステップ1006で、参照した全ての電池電流の値において閾値を超えていると判断されると(ステップ1006でYES)、充電時間特定部230は充電の開始の時間の候補として記憶していた時間を充電の開始の時間としてHDD14に記憶し(ステップ1007)、処理が終了する。
【0040】
また、充電時間特定部230は、EV500が移動しているか否かを判断するための情報を用いることができる場合に、充電の開始を検出する条件として、EV500が移動している場合は充電の開始を検出しないとする条件を加えることができる。このような条件を加えると、回生運転で生じる電池電流が発生したときを充電の開始時間とすることをさらに抑制できる。EV500が移動しているか否かを判断するための情報とは、例えば、EV500の車速や走行距離や位置情報が挙げられる。附言すると、EV500の車速が0km/hより大きい場合や、EV500の走行距離や位置情報が変化している場合は、車が移動していると判断することができる。
【0041】
次に、図5を用いて、充電の開始時間の検出処理を説明する。
図5は、充電池501における充電の開始を検出する際に充電時間特定部230が取得する情報を表した図表である。この図5では、データを取得した時間(秒)毎の、充電池501を流れる電池電流の値(A)と、EV500の走行距離(m)と、EV500の車速(km/h)との値が示されている。
【0042】
充電時間特定部230は、充電の開始時間の検出を行う際に、古いデータから時系列順にデータを参照する。図5の例では、まずデータを取得した時間が1秒のときの電池電流の値を参照し、−5Aを取得する。この電池電流の値が閾値である1Aを超えていないので、充電時間特定部230は時系列的に次のデータである2秒のデータを参照する。2秒のときの電池電流も閾値を超えていないので、次のデータを参照する。電池電流の値が閾値を超えるまでデータの参照を繰り返す。10秒の電池電流の値が6Aとなり閾値を超えているため、この10秒を充電の開始の時間の候補とする。そして、候補の時間である10秒から、予め定められた時間である60秒後までのデータを参照すると、11秒から70秒までのデータの電池電流の値が6Aとなっているため、充電の開始の時間を10秒であると検出する。
【0043】
さらに、図5の例では、走行距離と車速とのデータもあるので、電池電流の値が閾値を超えてから60秒の間に走行距離の変化又は車速が0であるかを判定することで、より確実な充電の開始の時間を判定できる。
【0044】
次に、充電の終了の時間を検出する処理について、図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係る充電時間特定部230が充電の終了時間を検出する際のフローチャートである。
充電時間特定部230は、上述したように充電の開始時間を検出すると、次に充電の終了時間の検出する処理を行う。
まず、充電時間特定部230は、データ取得部210が取得した電池電流の情報から、時系列順にデータを参照し電池電流の値を取得する(ステップ2001)。充電時間特定部230は、参照しているデータと時系列順で次のデータとが予め定められた時間以上の間隔があいているか否かを判断する(ステップ2002)。このステップにより、データを取得していない期間を充電時間として特定することを防止している。なお、予め定められた時間としては、例えば60秒等を採用することができる。
【0045】
ステップ2002で、参照しているデータと時系列順で次のデータとが予め定められた時間以上の間隔があいていると判断されると(ステップ2002でYES)、この間隔ではデータが取得できていない、ということとなり、充電時間が特定できないことから、充電時間特定部230は、参照しているデータの時間を充電の終了時間として、例えばHDD14(図2参照)に記憶する(ステップ2003)。そして、処理が終了する。
【0046】
ステップ2002で、参照しているデータと時系列順で次のデータとが予め定められた時間以上の間隔があいていないと判断されると(ステップ2002でNO)、充電時間特定部230は、参照しているデータの電池電流の値が閾値より小さくなっているか否かを判断する(ステップ2005)。なお、電池電流の値の閾値として、例えば1A(アンペア)等を採用できる。
【0047】
ステップ2005で、参照しているデータの電池電流の値が閾値より大きいと判断されると(ステップ2005でNO)、充電が継続していることとし、ステップ2001に戻り、充電時間特定部230は、時系列順に電池電流の値を参照する(ステップ2001)。
ステップ2005で、参照しているデータの電池電流の値が閾値以下になっていると判断されると(ステップ2005でYES)、充電時間特定部230は、電池電流を計測した時間を充電の終了の時間の候補として、例えばHDD14に記録する(ステップ2006)。次に、充電時間特定部230は、充電の終了時間の候補の時間から予め定められた時間後までのデータを参照する(ステップ2007)。なお、この予め定められた時間は、充電の終了とは関係しない電流の低下を除外するために設けられたものであり、例えば60秒等を採用できる。
【0048】
次に、充電時間特定部230は、参照したデータ数に対して予め定められた割合の数以上のデータにおいて、電池電流の値が閾値以下となっているか否かを判断する(ステップ2008)。この予め定められた割合によって充電の終了する検知の感度を変更できる。予め定められた割合が小さいほど、計測の不備等で充電中にもかかわらず一部の電池電流の値が低くなった場合に充電の終了と判断する可能性が高まる。予め定められた割合が大きいほど、充電が終了した可能性がより高い場合に充電の終了を判断することになる。言い替えると、予め定められた割合が大きいほど、充電が終了している場合でも、充電を終了していないと判断する可能性が高まる。予め定められた割合としては、例えば9割等を採用できる。
ステップ2008で、参照したデータ数に対して予め定められた割合の数以上のデータにおいて、電池電流の値が閾値以下となっていないと判断されると(ステップ2008でNO)、ステップ2001に戻り、充電時間特定部230は、時系列順に電池電流の値を参照する。
ステップ2008で、参照したデータ数に対して予め定められた割合の数以上のデータにおいて、電池電流の値が閾値以下となっていると判断されると(ステップ2008でYES)、充電時間特定部230は、充電の終了時間の候補として記憶していた時間を充電の終了時間としてHDD14に記憶し(ステップ2009)、処理が終了する。
【0049】
次に、図7を用いて、充電の終了の時間の検出処理を説明する。
図7(a)〜(c)は、充電時間特定部230が充電池501の充電の開始を検出した後に、充電池501の充電の終了を検出する際に取得する情報の一例を表した図表である。図7(a)は、満充電となり充電が終了したことが想定される図表であり、図7(b)は予約充電が終了し充電が終了したことが想定される図表である。また、図7(c)は、充電が終了し、再度、充電したことが想定される図表である。それぞれの図表に、データを取得した時間(秒)毎の、充電池501を流れる電池電流の値(A)と、EV500の走行距離(m)と、EV500の車速(km/h)との値が示されている。
【0050】
図7(a)では、903秒のデータの電池電流の値が1Aであり、その後963秒のデータまで電池電流の値が、閾値である1A以下であるため、903秒から60秒に亘って電池電流の値が1A以下になっている。この場合、充電時間特定部230は、903秒を充電の終了時間と検出する。この図7(a)では、電池電流の値が徐々に減少している。この電池電流の値の推移は、充電によって充電池の状態が満充電に近づくと電池電流が徐々に減少する動きを表したものであると考えられる。この図7(a)では、903秒以降にて、満充電となり充電が終了した場合の電池電流の値を示していると想定される。
【0051】
図7(b)では、100秒から106秒までは、閾値である1Aより大きい3Aの電池電流の値であることから、この間は充電を行っていると考えられる。一方、106秒から900秒までの間のデータがない。そのため、106秒のデータから時系列的に次のデータである900秒のデータまで、予め定められた時間である60秒以上間隔があいていることから、充電時間特定部230は、106秒を充電の終了時間と検出する。
この図7(b)では、タイマー等によって106秒の時点まで充電し、その後にEV500を使用した場合が想定される。
【0052】
図7(c)では、この106秒から900秒までの間のデータがない。そのため、106秒のデータから時系列的に次のデータである900秒のデータまで、予め定められた時間である60秒以上間隔があいているため、充電時間特定部230は、106秒を充電の終了時間と検出する。この図7(c)は、106秒までEV500に対して充電し、さらに900秒から再びEV500に対して充電を行った場合が想定される。
【0053】
<特定場所検出方法>
次に、特定場所判定部240が行う処理を説明する。
図8(a)〜(d)は、特定場所判定部240が用いるEV500に関する情報を示した図である。図8(a)は、充電時間の直近のデータが走行中である場合に、充電時間におけるEV500の位置を特定場所であると特定場所判定部240が判断したときに取得した情報の図表である。また、図8(b)は、充電時間の直近のデータが充電中である場合に、充電時間におけるEV500の位置を特定場所であると特定場所判定部240が判断したときに取得した情報の図表である。更に、図8(c)は、充電時間の直近のデータが走行中である場合に、充電時間におけるEV500の位置を特定場所ではないと特定場所判定部240が判断したときに取得した情報の図表である。また更に、図8(d)は、充電時間の直近のデータが充電中である場合に、充電時間におけるEV500の位置を特定場所ではないと特定場所判定部240が判断したときに取得した情報の図表である。この図8(a)〜(d)の図表では、データを取得した時間(秒)毎の、充電池501を流れる電池電流の値(A)と、EV500の位置と、EV500の車速(km/h)と、EV500の走行距離(m)との値が示されている。EV500の位置は、EV500が特定場所にいるときを「1」とし、そうでない場合には「0」で示し、GPSの位置情報を取得できない場合など場所が不明である場合には「−」としている。この図8(a)〜(d)では、自宅が特定場所を示しており、外出が特定場所以外を示している。
【0054】
特定場所判定部240は、上述したように充電時間特定部230が特定した充電時間における充電が特定場所で行われた充電であるかを位置情報から判定する。特定された充電時間における位置情報が取得できていない場合、特定場所判定部240は、例えば、充電時間中の走行距離が同じデータであって充電時間より前に取得されたデータを遡って参照する。そして、特定場所判定部240は、参照したデータに位置情報があればその位置を充電時間中のEV500の位置情報であると判定する。
なお、走行距離が同じとは、数値が全く同じ場合だけでなく、走行距離の差が予め定められた範囲にあるものを走行距離が同じと判断することもできる。例えば、屋内の特定場所が、GPSの電波を受信可能な位置から数メートル離れた位置に存在する場合には、走行距離が数メートル異なっていても、走行距離が同じとして扱うことができる。
【0055】
図8(a)では、10秒のデータから電池電流の値が閾値の1Aを超えている。安定して閾値以上の電流が充電池501に流れているかを把握するための予め定められた時間である60秒後、すなわち図8(a)の70秒のデータにおいても電池電流の値が閾値の1Aを超えている。したがって、充電時間特定部230は、10秒以降の期間をEV500に充電を行った充電時間であると特定できる。この充電時間では、位置情報が記録されておらず、特定場所判定部240は、この充電時間におけるEV500の位置を判定する処理を行う。
【0056】
ここでは、10秒以降の充電時間において、走行距離は10000mである。そして、この走行距離と同じでデータあって、充電時間より前に取得された走行距離を参照すると、3秒の走行距離が参照できる。この3秒では位置情報が1である。したがって特定場所判定部240は、この充電時間におけるEV500の位置情報が1であると判定する。これにより、この10秒以降の充電時間の充電は特定場所で行われたと判定される。
【0057】
図8(b)では、10秒から200秒の期間の電池電流の値が閾値の1Aを超える6Aを示しており、また、300秒から360秒の期間においても電池電流の値が6Aを示している。したがって、充電時間特定部230は、10秒から200秒の期間と300秒以降の期間とを充電時間であると特定する。
10秒から200秒の充電時間では、位置情報が記録されていないため、特定場所判定部240は、この充電時間の走行距離10000mが同じデータを遡って参照し、位置情報を取得する。特定場所判定部240は、走行距離が10000mである直近の5秒のデータから、位置情報1を取得する。これによって、特定場所判定部240は、この10秒から200秒の充電時間の位置情報を1と判定する。
【0058】
次に、特定場所判定部240は、300秒以降の充電時間の位置を判定する。300秒以降の期間の充電時間の走行距離は10000mである。走行距離が10000mであるデータであって、300秒以降の期間の充電時間より前に取得されたデータの位置情報を参照する。200秒から10秒までデータの位置情報がないため、さらに遡り、5秒のデータにおいて位置情報1を取得する。これによって、特定場所判定部240は、300秒以降の期間の充電時間の位置情報を1と判定する。
【0059】
図8(c)では、図8(a)と同様に、充電時間特定部230は、10秒以降の期間をEV500に充電を行った時間であると特定する。この充電時間では、位置情報が記録されておらず、特定場所判定部240は、この充電時間におけるEV500の位置を判定する処理を行う。図8(a)と異なり、3秒以前の位置情報は0であり、10秒以降の充電時間におけるEV500の位置情報は0であると判定する。これにより、この10秒以降の充電時間の充電は特定場所以外で行われたと判定される。
【0060】
図8(d)では、図8(b)と同様に、充電時間特定部230は、10秒から200秒の期間と300秒以降の期間とを充電時間であると特定する。
10秒から200秒の期間の充電時間では、位置情報が記録されていないため、特定場所判定部240は、図8(b)と同様に、この充電時間の走行距離10000mが同じデータを遡って参照し、走行距離が10000mである5秒のデータから、位置情報0を取得する。これによって特定場所判定部240は、この10秒から200秒の充電時間の位置情報を0と判定し、充電が特定場所以外で行われたと判断する。
【0061】
また、特定場所判定部240は、300秒以降の充電時間の位置を、図8(b)と同様にして判定する。その結果、特定場所判定部240は、300秒以降の期間の充電時間の位置情報を0と判定し、充電が特定場所以外で行われたと判断する。
【0062】
<データ中断期間の分類>
次に、中断期間分類部250による、データ中断期間の分類について、図9を用いて説明する。
図9は、データ中断期間の分類の一例として、この分類に際して用いる複数パターンを示した図である。
図9には、CaseA〜CaseDの4つの分類が示されている。SOCと走行距離に変化がないデータ中断期間をCaseAとし、走行距離に変化がなくSOCに変化があるデータ中断期間をCaseBとする。また、走行距離に変化がありSOCに変化がないデータ中断期間をCaseCとし、走行距離に変化がありSOCにも変化があるデータ中断期間をCaseDとする。
ここでは、中断期間特定部220が特定したデータ中断期間の前後のデータにて、走行距離の変化とSOCの変化とがあるか否かによって、データ中断期間を4つに分類している。
【0063】
まず、CaseAは、データ中断期間の前後において走行距離に変化がないためEV500は移動しておらず、SOCも変化がないため充電していないと考えられ、CaseAのデータ中断期間は非データ収集期間であると想定される。したがって、CaseAのデータ中断期間は正常であると考えられる。また、データ中断期間が数秒程度の場合は、データ欠損であることも考えられるが、数秒程度のデータ欠損の場合は、充電開始の検出および充電終了の検出において、取得したデータ数が予め定められた割合以上取れている場合に該当するためこのデータ中断期間に対して、特定場所で行われた充電に対する料金の計算についての対策を行わない。
【0064】
CaseBは、データ中断期間の前後において走行距離に変化がないためEV500は移動しておらず、SOCが変化しているためEV500の充電もしくは放電が行われていると想定される。SOCがデータ中断期間の前後で減少している場合は、放電記録が漏れている場合が考えられ、例えば、停車中に空調機器を利用した場合が考えられる。
SOCがデータ中断期間の前後で増加しており充電記録漏れが想定され、且つ、走行距離が変化しないためデータ中断期間におけるEV500の位置が特定場所であることが把握される場合は、SOCが増加した充電を電力料金の課金の対象とすることができる。
【0065】
CaseCは、走行距離に変化があるためデータ中断期間中にEV500が移動しており、SOCが変化しないためデータ中断期間中に移動に使用した電力量分を充電したと想定される。この場合は、走行距離に変化があるため、データ中断期間の前後の情報からでは、データ中断期間中のEV500の位置を把握することができず、EV500が特定場所にいたか否かを判断できない。このため、データ中断期間に行われた充電は特定場所で行われたかどうかを判断できないため、このデータ中断期間に行われた充電を電力料金の課金の対象にすることはしない。
また、走行距離が数100m程度の変化である場合は、走行中の数秒ほどの記録漏れであるため充電していることが想定されないため、対策は不要である。
【0066】
CaseDは、走行距離に変化があるためデータ中断期間中にEV500が移動しており、SOCが変化しているためデータ中断期間中に放電もしくは充電したと想定される。
この場合、過去に行われた充電の記録および走行の記録から例えば電力消費率(電費)を換算してSOCが増加した量を算出することは可能であるが、充電が特定場所で行われたかどうかを判断できないため、このデータ中断期間中に行われた充電を電力料金の課金の対象とすることはしない。
【0067】
ここで、図10を用いて、中断期間特定部220が特定したデータ中断期間を中断期間分類部250が分類する処理を説明する。
図10(a)、(b)は、中断期間分類部250がデータ中断期間を分類し、充電時間推定部260が充電時間を推定する際に用いる情報の一例を示した図表である。図10(a)は、充電時に記録漏れが生じた場合を示し、図10(b)は、充電中データ欠損が生じた場合を示している。ここでは、データを取得した時間(秒)毎の、充電池501のSOC(%)と、EV500の位置と、車速(km/h)、および走行距離(m)が示されている。
【0068】
図10(a)では、7秒から907秒まで間の時間的連続性が途切れており、中断期間特定部220は、7秒から907秒まで間の期間はデータ中断期間と特定する。このデータ中断期間の前後のデータは7秒のデータと907秒のデータとである。この2つのデータを中断期間分類部250が参照する。中断期間分類部250は、このデータ中断期間の前後で走行距離は10000mで変化がなく、SOCの値は69.8と90.5で変化していると判断し、このデータ中断期間をCaseB(図9参照)に分類する。この表の例では、データ中断期間の前後でSOCが増加しており、位置の情報が1となっているため、特定場所で充電を行っていると想定される。したがって、このデータ中断期間における充電は管理課金の対象となる。
【0069】
図10(b)では、3秒から10秒の間にデータ中断期間があり、908秒から3500秒の間にもデータ中断期間がある。3秒から10秒の間のデータ中断期間の前後のデータである3秒と10秒のデータにおいてSOCの値と走行距離の値の変化はない。したがって、中断期間分類部250はCaseA(図9参照)に分類する。このデータ中断期間は、非データ収集期間であると想定される。
【0070】
さらに、908秒から3500秒の間のデータ中断期間はSOCに変化があり、走行距離に変化がないため、中断期間分類部250は、CaseB(図9参照)に分類する。データ中断期間の前後においてSOCが増加しているため、このデータ中断期間は、充電中のデータ欠損であることが想定される。ここで、特定場所判定部240がデータ中断期間中のEV500の位置を判定する。データ中断期間の前後の走行距離と変わらないデータとして3秒のデータの位置情報を参照でき、このデータ中断期間の位置は1であると特定場所判定部240が判定する。
このため、このデータ中断期間における充電は管理課金の対象となる。
【0071】
<充電時間推定方法の説明>
次に、管理課金対象の期間に分類されたデータ中断期間における充電時間を推定する処理を説明する。
充電時間推定部260では、SOCの差分と、EV500に対して行った充電の記録である充電実績とから、充電時間を推定する。充電時間の推定は、例えば、SOCが5%以上増加する充電、又は、例えば1時間以上の充電の充電実績、から算出する。充電開始後、SOCが、例えば0.1%増加してから0.3%増加するまでの0.1%ずつの時間をそれぞれ実績として記憶する。なお、実績は、充電時間を推定する時点の実績(現在の実績)でもよいし、データ計測時点での過去の実績を用いても良い。
【0072】
図11(a)〜(c)は、本実施の形態に係る充電時間推定部260が充電実績格納配列Cを作成する処理を示す図である。充電実績格納配列Cは、単位当たりのSOCを増加させるのにかかる時間を推定するために用いられる。図11(a)は実際に充電を行った実績を時系列順に示している。図11(b)は充電実績がない場合を示し、図11(c)は充電実績がある場合を示している。図11(b)および図11(c)には、充電実績格納配列Cが示されている。この充電実績格納配列Cの各要素は、SOCの単位当たりのパーセンテージ(例えば0.1%)を増加させるために実際にかかった時間である。
【0073】
図11(a)では、充電の開始時間のSOCが70.0%であり、70.1%まで増加するのに35秒かかったことが示されている。さらに、SOCが70.1%から70.2%まで増加するのに54秒の時間がかかったことが示されている。そして、SOCが70.2%から70.3%まで増加するのに55秒と、SOCが70.3%から70.4%まで増加するのに57秒と、SOCが70.4%から70.5%まで増加するのに56秒かかったことが示されている。
これらの0.1%増加するのにかかる秒数、具体的には54秒と55秒と57秒と、が充電実績格納配列Cの要素の値になる。
なお、最初の0.1%増加するのにかかった時間である35秒は、SOCの値の小数第二位の値が不明であるため、充電実績格納配列Cの要素としては採用しない。
【0074】
図11(b)では、まず、充電実績格納配列Cに要素がない状態を示している。そのために、充電実績格納配列Cの要素として、まず54を取得し、次に55、最後に57を取得している。
【0075】
図11の(c)では、まず、充電実績格納配列Cの要素として18個の要素があり、その後、さらに要素を取得している。ここでは、要素数の上限が設定されており、要素数の上限として20個までとしている。ここで、充電実績格納配列Cの要素数の上限を定めない場合は、古い実績を用いて推定することとなり推定された値が、現状の値とは異なる値となる可能性が高まる。
最初の例では、要素数が18個の充電実績格納配列Cがあり、その後、図11(a)の充電実績から、要素として54秒、55秒、57秒を取り込んでいる。まず、要素として54秒を充電実績格納配列Cに取り込み、要素数は19個となっている。さらに、要素として55秒を充電実績格納配列Cに取り込み、要素数は20個となっている。つぎに、要素として57秒を充電実績格納配列Cに取り込むが、要素数の上限があることから、充電実績格納配列C要素のうち一番古い要素を削除して57秒の要素を取り込んでいる。
【0076】
このようにして要素を取り込んだ充電実績格納配列Cを用いて、単位当たりのパーセンテージ(例えば0.1%)を増加させるためにかかる時間を推定するが、その際、充電実績格納配列Cの中央値を用いる。この中央値とは、充電実績格納配列Cの要素を時間の長さで順に並べたとき、中央に位置する要素の値のことである。要素の数が偶数である場合は、中央に位置する2つの要素の平均値が中央値となる。
このようにして得られた充電実績格納配列Cの中央値を用いて、充電記録漏れ期間における充電時間を推定する。充電時間推定部260は、データ中断期間中にSOCが増加した量に、推定された充電時間を当てはめることで、データ中断期間中に行った充電時間を推定する。
【0077】
例えば、図10(a)のようにデータ中断期間の前後でSOCが20.7%増加している場合は、推定された0.1%増加するのにかかる時間を207倍した時間がデータ中断期間に充電した時間であると推定する。
【0078】
本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…EV充電管理システム、100…車両管理サーバ、200…充電管理サーバ、210…データ取得部、220…中断期間特定部、230…充電時間特定部、240…特定場所判定部、250…中断期間分類部、260…充電時間推定部、300…料金管理サーバ、500…EV
【要約】
【課題】充電記録漏れなどの特異な状態が生じた場合であっても、より正しく充電を認識する。
【解決手段】充電時間管理システムは、充電池を用いて走行する車両の充電に関わる情報、充電場所に関する情報、および充電に関わる情報が得られた時間に関する情報、を取得する取得手段と、充電に関わる情報、充電場所に関する情報、および時間に関する情報により、予め定められた充電場所にて行われた車両の充電時間を特定する充電時間特定手段とを備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11