特許第6910065号(P6910065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6910065-アクチュエータ及び流量制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910065
(24)【登録日】2021年7月8日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】アクチュエータ及び流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20210715BHJP
   F16K 31/53 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   F16H1/16 Z
   F16K31/53
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-227355(P2017-227355)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-95037(P2019-95037A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年6月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼公開日 平成29年9月1日 ▲2▼公開場所 洞爺サンパレスリゾート&スパ(北海道有珠郡壮瞥町字洞爺湖温泉7−1)
(73)【特許権者】
【識別番号】390001166
【氏名又は名称】株式会社エム・システム技研
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】龍田 武志
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−131455(JP,A)
【文献】 特開2011−226554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
F16K 31/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部から供給される回転力を伝達する第1回転力伝達部と、
手動ハンドル部から供給される回転力を用いて回転するウォームと、前記ウォームから供給される回転力を用いて回転するウォームホイールとを有する第2回転力伝達部と、
前記モータ部が駆動しているとき前記第1回転力伝達部から供給される回転力を出力部に伝達し、前記手動ハンドル部が駆動しているとき前記ウォームホイールから供給される回転力を前記出力部に伝達する第3回転力伝達部とを備え、
前記第3回転力伝達部は、
前記第1回転力伝達部からの回転力を受ける入力側歯車部と、
前記出力部に歯合する出力側歯車部と、
前記入力側歯車部及び前記出力側歯車部を繋ぐ回転軸と、
を有し、
前記回転軸は、前記回転軸の回転軸線周りに回転可能なように前記ウォームホイールに通されており、
前記入力側歯車部及び前記出力側歯車部は、前記回転軸の回転軸線方向において、前記ウォームホイールの互いに反対側に位置しており、
前記ウォーム及び前記ウォームホイールは、前記ウォーム側から前記ウォームホイール側に回転力を伝達するときにはセルフロックがかからず、前記ウォームホイール側から前記ウォーム側に回転力を伝達するときにはセルフロックがかかる形状を有する、
アクチュエータ。
【請求項2】
モータ部から供給される回転力を伝達する第1回転力伝達部と、
手動ハンドル部から供給される回転力を用いて回転するウォームと、前記ウォームから供給される回転力を用いて回転するウォームホイールとを有する第2回転力伝達部と、
前記モータ部が駆動しているとき前記第1回転力伝達部から供給される回転力を出力部に伝達し、前記手動ハンドル部が駆動しているとき前記ウォームホイールから供給される回転力を前記出力部に伝達する第3回転力伝達部とを備え、
前記第3回転力伝達部は、
前記第1回転力伝達部からの回転力を受ける入力側歯車部と、
前記出力部に歯合する出力側歯車部と、
前記入力側歯車部及び前記出力側歯車部を繋ぐ回転軸と、
を有し、
前記回転軸は、前記回転軸の回転軸線周りに回転可能なように前記ウォームホイールに通されており、
前記入力側歯車部及び前記出力側歯車部は、前記回転軸の回転軸線方向において、前記ウォームホイールの互いに反対側に位置しており、
前記モータ部が駆動しているとき、前記ウォーム及び前記ウォームホイールは歯合しており且つ前記モータ部から供給される回転力の少なくとも一部によって前記ウォームは回転しない、
アクチュエータ。
【請求項3】
モータ部から供給される回転力を伝達する第1回転力伝達部と、
手動ハンドル部から供給される回転力を用いて回転するウォームと、前記ウォームから供給される回転力を用いて回転するウォームホイールとを有する第2回転力伝達部と、
前記モータ部が駆動しているとき前記第1回転力伝達部から供給される回転力を出力部に伝達し、前記手動ハンドル部が駆動しているとき前記ウォームホイールから供給される回転力を前記出力部に伝達する第3回転力伝達部とを備え、
前記第3回転力伝達部は、
前記第1回転力伝達部からの回転力を受ける入力側歯車部と、
前記出力部に歯合する出力側歯車部と、
前記入力側歯車部及び前記出力側歯車部を繋ぐ回転軸と、
を有し、
前記回転軸は、前記回転軸の回転軸線周りに回転可能なように前記ウォームホイールに通されており、
前記入力側歯車部及び前記出力側歯車部は、前記回転軸の回転軸線方向において、前記ウォームホイールの互いに反対側に位置しており、
前記ウォームホイールは、前記ウォームホイールの回転力の前記ウォームへの伝達を阻害するように、前記ウォームと歯合している、
アクチュエータ。
【請求項4】
前記モータ部はステッピングモータを含む、
請求項1〜の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜の何れか一項に記載のアクチュエータと、
前記アクチュエータに制御信号を供給する制御部と、
前記アクチュエータの駆動に応じて開閉するバルブと、
を有する流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ及び流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力部(出力軸)を動力(例えばモータ)によって回転させる場合と、マニュアルハンドルを用いて手動で回転させる場合とをクラッチギアによって切り替えるアクチュエータが開示されている。このようなアクチュエータは、例えばバルブの開閉に使用され得る。
【0003】
しかしながら、クラッチギアによって動力と手動とを切り替えるアクチュエータは、出力部が動力で回転しているときに、作業者が誤ってクラッチギアを切り替えると、マニュアルハンドルに動力が伝達され、作業者の意に反してマニュアルハンドルが回転してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭62−62075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性の高いアクチュエータ及び流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るアクチュエータは、モータ部から供給される回転力を伝達する第1回転力伝達部と、手動ハンドル部から供給される回転力を用いて回転するウォームと、上記ウォームから供給される回転力を用いて回転するウォームホイールとを有する第2回転力伝達部と、上記モータ部が駆動しているとき上記第1回転力伝達部から供給される回転力を出力部に伝達し、上記手動ハンドル部が駆動しているとき上記ウォームホイールから供給される回転力を上記出力部に伝達する第3回転力伝達部とを備え、上記ウォーム及び上記ウォームホイールは、上記ウォーム側から上記ウォームホイール側に回転力を伝達するときにはセルフロックがかからず、上記ウォームホイール側から上記ウォーム側に回転力を伝達するときにはセルフロックがかかる形状を有する。
【0007】
本発明の他の側面に係るアクチュエータは、モータ部から供給される回転力を伝達する第1回転力伝達部と、手動ハンドル部から供給される回転力を用いて回転するウォームと、上記ウォームから供給される回転力を用いて回転するウォームホイールとを有する第2回転力伝達部と、上記モータ部が駆動しているとき上記第1回転力伝達部から供給される回転力を出力部に伝達し、上記手動ハンドル部が駆動しているとき上記ウォームホイールから供給される回転力を上記出力部に伝達する第3回転力伝達部とを備え、上記モータ部が駆動しているとき、上記ウォーム及び上記ウォームホイールは歯合しており且つ上記モータ部から供給される回転力の少なくとも一部によって上記ウォームは回転しない。
【0008】
本発明の更に他の側面に係るアクチュエータは、モータ部から供給される回転力を伝達する第1回転力伝達部と、手動ハンドル部から供給される回転力を用いて回転するウォームと、上記ウォームから供給される回転力を用いて回転するウォームホイールとを有する第2回転力伝達部と、上記モータ部が駆動しているとき上記第1回転力伝達部から供給される回転力を出力部に伝達し、上記手動ハンドル部が駆動しているとき上記ウォームホイールから供給される回転力を上記出力部に伝達する第3回転力伝達部とを備え、上記ウォームホイールは、上記ウォームホイールの回転力の上記ウォームへの伝達を阻害するように、上記ウォームと歯合している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全性の高いアクチュエータ及び流量制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
図2図1のII−II線に沿った断面の主要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。各図面における寸法、形状は、実際のものとは必ずしも同一ではない。
【0012】
図1及び図2に示したアクチュエータ10は、例えば、流量制御装置に組み込まれる。流量制御装置は、アクチュエータ10と、アクチュエータ10に制御信号を供給する制御部(図示せず)と、バルブ(図示せず)とを有し、バルブの開閉によりバルブが取り付けられたパイプ(図示せず)の流量を制御する。断らない限り、上記流量制御部に組み込まれるアクチュエータ10を説明する。このようなアクチュエータ10は、バルブの弁軸に取り付けられ、バルブの開閉を行う。
【0013】
図1及び図2に示すように、アクチュエータ10は、ケーシング12と、出力軸(出力部)14と、モータ部16と、第1回転力伝達部18と、第3回転力伝達部20と、手動ハンドル部22と、第2回転力伝達部24と、を備える。アクチュエータ10は、モータ部16及び手動ハンドル部22それぞれで生成された回転力によって出力軸14を回転可能である。図1及び図2に示した構成に基づいてアクチュエータ10を説明するが、アクチュエータ10は、第1回転力伝達部18と、第2回転力伝達部24と、第3回転力伝達部20と、を備えていればよい。
【0014】
ケーシング12は中空体であり、ケーシング本体26とカバー28とを有する。図2は、図1のII−II線の断面構成のうち、ケーシング本体26の部分を主に拡大し且つ模式的に示している。ケーシング本体26は有底筒状を有する。ケーシング本体26の開口端部は、ケーシング内壁面に例えばねじ止めによって固定された支持プレート30により閉じられている。カバー28は有底筒状又はドーム状を有する。カバー28には、流量制御装置が備える上記制御部によってアクチュエータ10(具体的にはモータ部16)を制御するための制御パネルが設けられてもよい。カバー28は、例えばねじ止めによってケーシング本体26に固定され得る。本実施形態では、ケーシング12の中心軸線方向において、カバー28の頂部側が上側であり、ケーシング本体26の底部32側が下側である。
【0015】
出力軸14は、ケーシング本体26の底部32に形成された孔部32aに通されており、出力軸14の下端部は、ケーシング12から露出している。出力軸14のうちケーシング12から露出している下端部は、バルブの弁軸に嵌合する形状を有する。孔部32aの中心軸線は、出力軸14の回転軸線C1と一致している。本実施形態において、出力軸14の回転軸線C1はケーシング12の中心軸線と一致している。
【0016】
出力軸14は、底部32に設けられた軸受34Aによって回転可能に支持されている。軸受34Aの例はボールベアリングである。ケーシング12の防水のために、孔部32aは、シール部材36でシールされてもよい。
【0017】
出力軸14の上端部(下端部と反対側の端部)と下端部との間の所定位置には、第3回転力伝達部20から供給される回転力を受けるための歯車部38が設けられている。歯車部38は、出力軸14の外面に歯を形成することによって出力軸14に設けられてもよいし、出力軸14に歯車が挿入されることによって出力軸14に設けられてもよい。
【0018】
出力軸14の上端部には凹部14aが形成されており、凹部14aにシャフト40の下端部(底部32側の端部)が挿入されている。シャフト40が出力軸14に挿入されていることで、シャフト40は出力軸14と一体化している。よって、出力軸14の回転に伴ってシャフト40も回転する。シャフト40と出力軸14とが一体化していることから、シャフト40は出力軸14の一部とみなされ得る。シャフト40の回転軸線(中心軸線)C2は出力軸14の回転軸線C1と一致している。シャフト40は凹部14aに例えば圧入されている。シャフト40の下端部は、凹部14cにローレット圧入されてもよい。
【0019】
シャフト40は、例えば支持プレート30に形成された孔部に、シャフト40を回転可能に支持する軸受34Aを介して通される。この場合、シャフト40の上端部(シャフト40の下端部と反対側の端部)は支持プレート30上に位置する。このような形態では、出力軸14の回転状態をアクチュエータ10の作業者(操作者)が把握するために、例えば、カバー28の頂部(ケーシング本体26と反対側の部分)に、作業者がシャフト40の上端面を視認可能な窓部を形成してもよい。この際、窓部にシャフト40の回転角度を把握するための目盛りを付与するとともに、例えば、シャフト40の上端面に、上記目盛りを指し示す指標(例えば矢印等)を付与しておけばよい。
【0020】
モータ部16はモータ42を有しており、出力軸14を駆動するための回転力を生成する。モータ42は、例えば支持プレート30の表面(カバー28側の面)上に設けられ得る。モータ部16(具体的にはモータ42)は、流量制御装置が備える上記制御部によって駆動制御される。すなわち、アクチュエータ10の一つのモード(モータ部16による駆動モード)では、アクチュエータ10は、制御部によって駆動される。モータ42は例えば、定位置保持力を有するモータである。定位置保持力とは、例えばモータが回転していないときでも停止位置を保持する力である。定位置保持力を有するモータとしては、例えばステッピングモータ、超音波モータ等であってもよい。
【0021】
モータ部16は、減速部44を更に備える。減速部44は、例えば支持プレート30の表面上に設けられ得る。図2に示したように、モータ42は減速部44上に設けられてよい。減速部44は、モータ42の出力軸の回転を減速させる減速機構を有する。減速機構は、例えば歯車機構を用いて実現され得る。減速部44で減速された回転によって減速部44の出力軸(モータ部16の出力軸に相当)46が回転する。図2に示したように、減速部44が支持プレート30の表面上に設けられている形態では、出力軸46の自由端が支持プレート30の裏面(支持プレート30の表面と反対側の面)側から露出するように、出力軸46は、支持プレート30に形成された孔部を通され得る。この場合、出力軸46は、出力軸46を回転可能な軸受を介して上記孔部に通されてもよい。出力軸46の自由端には歯車部48が設けられている。
【0022】
歯車部48は、出力軸46の外面に歯を形成することによって出力軸46に設けられてもよいし、出力軸46に歯車が挿入されることによって出力軸46に設けられてもよい。歯車部48は、第1回転力伝達部18に係わり合っている。よって、モータ42を駆動することによってモータ部16で生成された回転力は歯車部48を介して第1回転力伝達部18に伝達される。
【0023】
第1回転力伝達部18は、歯車50と、遊星歯車機構52とを有する。歯車50には、歯車50の回転軸線C3と同軸に、第1回転力伝達部18に含まれる筒部54が取り付けられている。筒部54は例えば歯車50に圧入され得る。筒部54は、軸受34Cを介してシャフト40に通されている。軸受34Cは、シャフト40を回転可能に支持する。軸受34Cがシャフト40と筒部54の間に介在しているので、歯車50(及び筒部54)はシャフト40と独立に回転する。軸受34Cの例はすべり軸受であり、すべり軸受の例はドライブッシュである。軸受34Cがすべり軸受(例えばドライブッシュ)である形態では、アクチュエータ10の小型化を図れる。以下の説明において、軸受としてすべり軸受(例えばドライブシュ)を採用している場合の作用効果も同様である。
【0024】
遊星歯車機構52は、歯車50の下方(底部32側)に設けられており、歯車部56と、内歯車58と、2つの遊星歯車60と、キャリア62と、を有する。
【0025】
歯車部56は、筒部54の下端部に設けられている。歯車部56は、筒部54の外面に歯を形成することによって筒部54に設けられてもよいし、筒部54に歯車が挿入されることによって筒部54に設けられてもよい。歯車部56は、遊星歯車機構52における太陽歯車として機能する。
【0026】
内歯車58は、筒部54と同軸(換言すれば、シャフト40の回転軸線C2と同軸)に設けられており、ケーシング内壁面に固定されている。内歯車58は、例えばねじ止めによってケーシング内壁面に固定され得る。
【0027】
2つの遊星歯車60の構成は同じである。2つの遊星歯車60は、歯車部56と内歯車58の間に、歯車部56の回転軸線(シャフト40の回転軸線C2)に対して対称配置されている。2つの遊星歯車60それぞれは、歯車部56及び内歯車58に歯合している。歯合とは、例えば、歯車同士がかみ合う状態、歯と歯とを合わせた状態、歯と歯とが螺合する状態、歯と歯とが接触可能な状態、一方の歯が他方の歯に力を与えることができる状態などをいう。
【0028】
各遊星歯車60には棒状部材64が取り付けられている。各遊星歯車60の回転軸線C4と、対応する棒状部材64の中心軸線C5とは一致している。棒状部材64と独立して遊星歯車60がその回転軸線周りに回転(自転)可能なように、棒状部材64は、軸受34Dを介して遊星歯車60に取り付けられていてもよい。軸受34Dの例はすべり軸受(例えばドライブシュ)である。
【0029】
キャリア62は、歯車部56より下方(底部32側)に配置されており、キャリアプレート66と、筒部68とを有する。
【0030】
キャリアプレート66には、2つの棒状部材64が接続されている。例えば2つの棒状部材64は、キャリアプレート66に圧入されている。これにより、キャリアプレート66は、遊星歯車60が歯車部56の周りを回転(公転)した場合、それに伴って回転する。棒状部材64がキャリアプレート66に圧入されている形態では、棒状部材64は、キャリアプレート66にローレット圧入されてもよい。キャリアプレート66の形状は限定されないが、例えば小判状を有する。
【0031】
筒部68は、キャリアプレート66と同軸にキャリアプレート66に取り付けられている。例えば、筒部68は、キャリアプレート66に圧入される。筒部68は、キャリアプレート66にローレット圧入されてもよい。筒部68は、シャフト40を回転可能に支持する軸受34Eを介してシャフト40に同軸に通されている。これにより、キャリア62は、シャフト40の回転と独立して回転可能に、シャフト40に支持されている。筒部68の下端部(底部32側の端部)には、歯車部70が形成されている。
【0032】
歯車部70は、筒部68の外面に歯を形成することによって筒部68に設けられてもよいし、筒部68に歯車が挿入されることによって筒部68に設けられてもよい。歯車部70は、第3回転力伝達部20に係わり合っている。よって、第1回転力伝達部18によって伝達される回転力は、歯車部70を介して第3回転力伝達部20に伝達される。
【0033】
第3回転力伝達部20は、遊星歯車機構52(具体的には、キャリア62)より下方(底部32側)に配置されている。第3回転力伝達部20は、2つの歯車(入力側歯車部)72を有する。
【0034】
2つの歯車72の構成は同じである。2つの歯車72は、シャフト40の回転軸線C2に対して対称に配置されており、歯車部70に歯合している。各歯車72のそれぞれには回転軸74が取り付けられており、各歯車72は、対応する回転軸74によって支持されている。回転軸74は、その回転軸線C6と歯車72の回転軸線C7とが一致するように、歯車72に対して配置されている。回転軸74と歯車72とは、例えばねじを回転させることで外径が広がる一方、内径が縮小するロック機構76によって連結されている。各回転軸74の下端部には、歯車部(出力側歯車部)78が形成されている。すなわち、回転軸74は、歯車72と歯車部78とを繋いでいる。
【0035】
歯車部78は、回転軸74の外面に歯を形成することによって回転軸74に設けられてもよいし、回転軸74に歯車が挿入されることによって回転軸74に設けられてもよい。歯車部78は、出力軸14に設けられた歯車部38に歯合している。これにより、歯車部78の回転力、すなわち、第1回転力伝達部18から供給され第3回転力伝達部20を伝達してきた回転力が出力軸14に供給される。
【0036】
手動ハンドル部22は、図1に示したように、ケーシング12の外部に設けられている。手動ハンドル部22は、アクチュエータ10の作業者によって回転されることによって回転力を生成する。手動ハンドル部22は、第2回転力伝達部24に接続されている。
【0037】
第2回転力伝達部24は、ウォーム80とウォームホイール82とを有する。ウォーム80の回転軸84の一端はケーシング12から露出しており、手動ハンドル部22に連結されている。よって、手動ハンドル部22が作業者によって回転されることに伴ってウォーム80が回転する。図2では、図示の都合上、ウォーム80及びその回転軸84それぞれを、円を用いて模式的に図示している。
【0038】
ウォームホイール82は、出力軸14を回転可能に支持する軸受34Fを介してシャフト40に同軸に通されている。軸受34Fの例はすべり軸受(例えばドライブッシュ)である。ウォームホイール82は、ウォーム80とウォームギアを構成するように、ウォーム80に歯合している。
【0039】
本実施形態において、ウォーム80とウォームホイール82は、セルフロック機能を発揮し得る所定の形状を有している。セルフロック機能とは、ウォームホイール82側からウォーム80への回転力の伝達を実質的に阻害する機能である。具体的には、溝の進み角が小さくなるように構成されたウォーム80にウォームホイール82が歯合している。例えば、一条で且つ進み角が4°以下のウォーム80が採用され得る。本実施形態において、ウォーム80及びウォームホイール82は、セルフロック機能を発揮し得る所定の形状を有しているので、ウォーム80を回転させることによりウォームホイール82を容易に回転させることができる一方、ウォームホイール82を回転させてもウォーム80を回転させることができない又は極めて困難である。
【0040】
ウォームホイール82には、回転軸74が通されている。これにより、ウォームホイール82が回転すると、回転軸74がウォームホイール82の回転方向に押されるので、回転軸74(及び対応する歯車72)が出力軸14の回転軸線C1周りに回転(公転)する。その結果、回転軸74に設けられた歯車部78も回転軸線C1周りに公転する。すなわち、ウォームホイール82の回転力が歯車部78を介して第3回転力伝達部20に伝達される。歯車部78は、出力軸14に設けられた歯車部38と歯合していることから、歯車部78を介して、ウォームホイール82の回転力が出力軸14に伝達される。換言すれば、第2回転力伝達部24から供給され第3回転力伝達部20を伝達してきた回転力が出力軸14に供給される。
【0041】
アクチュエータ10において、回転軸74は、回転軸74をその回転軸線C6周りに回転可能に支持する軸受34Gを介してウォームホイール82に通されている。これにより、回転軸74は、ウォームホイール82とは独立して回転軸74の回転軸線C6周りに回転(自転)可能である。一方、ウォームホイール82に回転軸74が通されているので、ウォームホイール82が回転すると、前述したように、回転軸74は、出力軸14の回転軸線C1周りに回転(公転)する。
【0042】
従って、歯車72、回転軸74及び歯車部78を有する第3回転力伝達部20は、歯車72を介して第1回転力伝達部18から回転力が供給された場合には、その回転力を伝達する一方、ウォームホイール82を介して第2回転力伝達部24から回転力が供給された場合は、その回転力を伝達する。
【0043】
回転軸74がウォームホイール82に通されている形態においては、前述したロック機構76によって回転軸74に対して歯車72を固定することにより、アクチュエータ10の組み立てが容易になる。例えば、まず、回転軸74をウォームホイール82に形成された所定の挿通孔に通す。次に、回転軸74においてウォームホイール82の上側に位置する端部側に歯車72を配置するとともに、歯車72と回転軸74の間にロック機構76を配置する。その後、ロック機構76のねじを操作することによって、歯車72を回転軸74に対して固定し得る。
【0044】
アクチュエータ10を構成する各構成要素の材料などは、アクチュエータ10の耐久性及び製造容易性などを勘案して適宜採用すればよい。
【0045】
上記構成のアクチュエータ10の動作を、アクチュエータ10をバルブに取り付けた場合、すなわち、出力軸14の下端部をバルブの弁軸に嵌合させた場合を例にして説明する。例えば、以下の説明では、モータ部16(具体的にはモータ42)を駆動する場合には、手動ハンドル部22の操作は行わず、手動ハンドル部22を駆動する場合には、モータ部16を駆動しない。よって、モータ部16を駆動する場合と、手動ハンドル部22を駆動する場合とに分けてアクチュエータ10の動作を説明する。
【0046】
まず、モータ42を駆動する場合を説明する。モータ42を駆動すると、モータ部16の出力軸46がモータ42の回転に応じて回転する。出力軸46は、第1回転力伝達部18が有する歯車50と歯合しているので、出力軸46の回転に伴って歯車50が回転する。これにより、モータ部16で生成された回転力が第1回転力伝達部18に伝達される。
【0047】
歯車50には、筒部54が同軸に取り付けられているので、モータ部16で生成された回転力が供給されることで、歯車50が回転すると筒部54が回転する。その結果、筒部54に設けられた歯車部56が回転する。歯車部56が回転すると、歯車部56に歯合している2つの遊星歯車60が、各遊星歯車60の回転軸線周りに回転(自転)しながら、太陽歯車としての歯車部56の周りを回転(公転)する。2つの遊星歯車60の公転によりキャリア62が有するキャリアプレート66がシャフト40の回転軸線C2を回転軸線として回転するので、キャリアプレート66に取り付けられた筒部68が回転する。その結果、筒部68に設けられた歯車部70が回転する。このようにして、歯車50に供給された回転力が第1回転力伝達部18内を伝達する。
【0048】
歯車部70は、第3回転力伝達部20が有する2つの歯車72に歯合していることから、歯車部70の回転に伴って2つの歯車72それぞれが回転軸線C7周りに回転(自転)する。すなわち、歯車部70が自転することで、第1回転力伝達部18にモータ部16から供給された回転力が第3回転力伝達部20に伝達される。
【0049】
第3回転力伝達部20が有する2つの歯車72が自転すると、それに伴って各歯車72に接続された回転軸74がその回転軸線C6周りに回転(自転)する。その結果、回転軸74に設けられた歯車部78も回転軸線C6周りに回転(自転)する。歯車部78は、出力軸14の歯車部38に歯合していることから、歯車部78の自転に伴い、出力軸14がその回転軸線C1周りに回転する。すなわち、第3回転力伝達部20に第1回転力伝達部18から供給された回転力が出力軸14に伝達される。第3回転力伝達部20から供給された回転力で出力軸14が回転することによって、出力軸14の下端部に嵌合したバルブの弁軸が回転するので、バルブを開閉できる。
【0050】
本実施形態では、上述したようにウォーム80及びウォームホイール82がセルフロック機能を発揮し得る所定の形状を有し、回転軸74がウォームホイール82に通されている。このため、第1回転力伝達部18から第3回転力伝達部20(回転軸74)に供給される力にウォームホイール82を回転させる成分が含まれていた場合でもウォームホイール82、ウォーム80が自由に回転することができない。よって、第1回転力伝達部18から供給される力により、作業者の意に反して手動ハンドル部22が回転することがない。
【0051】
次に、手動ハンドル部22を駆動した場合の動作を説明する。手動ハンドル部22を駆動する際には、モータ42は停止している。
【0052】
手動ハンドル部22を作業者が駆動(回転)すると、その回転に応じた回転力が生成される。手動ハンドル部22とウォーム80の回転軸84とが接続されていることから、手動ハンドル部22で生成された回転力は第2回転力伝達部24(具体的にはウォーム80)に供給される。
【0053】
ウォーム80は、ウォームホイール82と歯合していることから、ウォーム80が回転すると、ウォームホイール82が出力軸14の回転軸線C1を回転軸線として回転する。ウォームホイール82には、回転軸74が通されているため、ウォームホイール82の回転に伴って、回転軸74がウォームホイール82の回転方向に押されて回転軸74(及び対応する歯車72)が出力軸14の回転軸線C1(シャフト40の回転軸線C2)周りに回転(公転)する。すなわち、第2回転力伝達部24に供給された回転力が第3回転力伝達部20に伝達される。
【0054】
回転軸74に設けられた歯車部78は、出力軸14の歯車部38に歯合しているので、回転軸74が出力軸14の回転軸線C1周りに公転することによって、歯車部38が回転し、その結果、出力軸14が回転する。すなわち、手動ハンドル部22に供給された回転力が、第2回転力伝達部24及び第3回転力伝達部20を介して出力軸14に伝達され、出力軸14が回転する。このように、出力軸14が回転することによって、出力軸14の下端部に嵌合したバルブの弁軸が回転するので、バルブを開閉できる。
【0055】
上記のように、アクチュエータ10では、モータ42を駆動することによってバルブを開閉可能であるとともに、手動ハンドル部22を作業者が回転させることによってもバルブを開閉可能である。
【0056】
手動ハンドル部22で出力軸14を回転させる際に、出力軸14を必要以上に回転させないために、アクチュエータ10は、ストッパ86を備えてもよい。ストッパ86は、底部32に形成されており、孔部32aにつながった凹部32b内に配置され得る。底部32には、ストッパ86のストップ位置を規定する規制部材(例えばボルトなど)をとおすための孔部32cが凹部32bにつながるように形成され得る。
【0057】
出力軸14に回転力を伝達する第3回転力伝達部20は、歯車72が歯車部70に歯合することによって、第1回転力伝達部18と係わり合っており、回転軸74がウォームホイール82を通っていることで、第2回転力伝達部24と係わり合っている。更に、第2回転力伝達部24が有するウォーム80とウォームホイール82とは、手動ハンドル部22が駆動しているときとともに、モータ部16が駆動しているときにも歯合している。
【0058】
このような構成でも、ウォーム80とウォームホイール82とが、ウォームホイール82からウォーム80への回転力の伝達を阻害する機能(セルフロック機能)を有するウォームギアを構成していることから、モータ42を駆動している際に、その回転力が手動ハンドル部22に伝達されて手動ハンドル部22が回転することが防止されている。よって、アクチュエータ10の安全性が確保できている。
【0059】
そのため、手動ハンドル部22を用いてアクチュエータ10を駆動しないときでも、手動ハンドル部22をアクチュエータ10に取り付けておけることから、手動ハンドル部22によるバルブの開閉が緊急に必要になっても、作業者は速やかに対応可能である。
【0060】
モータ42が定位置保持力を有する場合、モータ42が駆動していない状態でも、モータ42は外部からの力(例えば、手動ハンドル部22から供給される力)により回転し難い。このため、手動ハンドル部22から供給される力の一部がモータ42を回転させるために消費されないので、その分だけ手動ハンドル部22から供給される力を効率的に出力軸14に伝達できる。
【0061】
例えば、モータ42がステッピングモータである形態(すなわち、モータ部16がステッピングモータを含む形態)では、モータ42を利用して回転力を生成しない状態において、モータ42に一定の電流を流しておけばモータ42はモータ42の出力軸の回転を停止した状態を保持する。この場合、第1回転力伝達部18が有する歯車50、遊星歯車60等の回転も停止状態が保持されるため、例えば手動ハンドル部22を駆動した際に、その回転力が第3回転力伝達部20を介して第1回転力伝達部18に伝達されにくい。したがって、手動ハンドル部22で生成された回転力を効率的に出力軸14に伝達できる。
【0062】
上述した説明では、手動ハンドル部22を駆動する際にモータ42を停止する場合について詳細に説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、手動ハンドル部22を駆動する際にモータ42を回転させてもよい。上述したようにウォーム80及びウォームホイール82がセルフロック機能を発揮し得る所定の形状を有し、回転軸74がウォームホイール82に通されているため、手動ハンドル部22を駆動する際にモータ42が回転していても、作業者の意に反して手動ハンドル部22が回転することがないからである。
【0063】
上記アクチュエータ10の構成では、第3回転力伝達部20は、第1回転力伝達部18からの回転力を受ける歯車(入力側歯車)72と、出力軸14(具体的には歯車部38)と歯合する歯車部(出力側歯車)78と、歯車72及び歯車部78を繋ぐ回転軸74と、を有する。回転軸74は、その回転軸線周りに回転(自転)可能なようにウォームホイール82に通されており、歯車72及び歯車部78は、回転軸74の回転軸線方向において、ウォームホイール82の互いに反対側に位置する。この構成では、歯車72の回転に伴う回転軸74の自転によって、第1回転力伝達部18の回転力を、歯車部78を介して出力軸14に供給できるとともに、ウォームホイール82の回転に伴う回転軸74の公転によって、第2回転力伝達部24の回転力を、歯車部78を介して出力軸14に供給できる。すなわち、第3回転力伝達部20は、第1回転力伝達部18及び第2回転力伝達部24それぞれから供給される回転力を、回転軸74の自転及び公転に応じて出力軸14に伝達でているので、第3回転力伝達部20の構成を簡易にできるとともに、アクチュエータ10の小型化が図れている。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0065】
例えば、モータ部は、モータを有していればよい。例えば、モータの出力軸の回転を減速させる必要がない場合、或いは、出力部に回転力を伝達するまでにおいて減速可能な場合、図2に示した減速部44を設けずに、モータの回転力を直接第1回転力伝達部に供給してもよい。
【0066】
第1回転力伝達部は、モータ部から供給される回転力を第3回転力伝達部に伝達できるように構成されていれば上記例示した構成に限定されない。例えば、第1回転力伝達部は、筒部54(図2参照)の回転力を直接的に第3回転力伝達部20に伝達するように構成されていてもよい。
【0067】
第2回転力伝達部は、手動ハンドル部の回転力を第3回転力伝達部に伝達できる一方、モータ部(具体的にはモータ)が駆動されているときに、ウォーム及びウォームホイールは歯合していても、モータ部から供給される回転力の少なくとも一部によってウォームは回転しないように構成されていてもよい。これにより、モータ部が駆動されていても、手動ハンドル部が回転しない。
【0068】
第3回転力伝達部は、モータ部が駆動されているときには第1回転力伝達部から供給される回転力を伝達し、手動ハンドル部が駆動されているときには第2回転力伝達部から供給される回転力を伝達するような構成を有していればよい。
【0069】
出力部は出力軸でなくても、第3回転力伝達部から供給される回転力で回転可能に構成されていればよい。アクチュエータは、バルブの開閉以外においても、出力部を利用して部材を回転させる装置などに適用可能である。よって、アクチュエータは、流量制御装置以外に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…アクチュエータ、14…出力軸(出力部)、16…モータ部、18…第1回転力伝達部、20…第3回転力伝達部、22…手動ハンドル部、24…第2回転力伝達部、72…歯車(入力側歯車部)、74…回転軸、78…歯車部(出力側歯車部)、80…ウォーム、82…ウォームホイール、C6…回転軸の回転軸線。
図1
図2