(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード、半導体レーザ等の発光素子が搭載された光半導体装置(オプトデバイス)では、発光素子の封止材料として、輝度を上げる目的で透過率の高い透明な樹脂組成物が用いられている。封止は、一般に、部品を収容したケースまたは金型内に液状の熱硬化性樹脂を、常圧または真空下で注入滴下して硬化させる方法(注形法)の他、トランスファー成形や圧縮成形による方法が用いられており、注形法ではいわゆる2液型の封止材が使用され、トランスファー成形や圧縮成形では固形状の封止材が使用される。生産性の点では後者の方法が望ましい。
【0003】
一方、オプトデバイスを屋外の表示灯等に使用する場合、点灯させていないにも関わらず、外乱光等によりあたかも点灯しているように見えることがあり、これを防止するために、透明樹脂に微量の着色剤を添加することが行われている。また、透明樹脂で封止されたオプトデバイスでは、内部構造が外から容易に透けて見えるが、微量の着色剤(顔料)を添加することで、かかる透視を防ぐことができる。
【0004】
本来、着色剤の添加量と樹脂の厚みと透過率の関係はLambert−Beerの法則に従うことが知られており、目的とする厚みの透過率に対して、着色剤の添加量を計算することができる。しかし、上記のような微量の着色剤の添加においては、着色剤の偏析があると封止樹脂の透過率が計算どおりにならず、偏析箇所とそうでない箇所に色むらが生じ、透過率のバラツキが起こる。透過率のバラツキは輝度のバラツキにつながる。
【0005】
このような着色剤の偏析は、2液型の封止材では、主剤液と硬化剤液に同濃度の微量な着色剤を添加し、それぞれを長時間撹拌することで、抑制することができる。しかし、2液型の封止材を使用する封止方法は、前述したように生産性に乏しい。これに対し、生産性の高い固形状の封止材を用いるトランスファー成形や圧縮成形では、混合・混練時間を長くすると硬化が進行するため、着色剤の偏析の抑制は困難である。
【0006】
また、着色剤に有機染料を使用すれば、上記偏析の問題は解消されるが、耐熱性に乏しいため、特に微量添加した場合、熱履歴後の透過率の変化が大きく、発光素子を封止した場合に輝度の変化が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の課題に対処してなされたもので、封止作業性、成形作業性に優れ、かつ着色剤の偏析がなく安定した透過率が得られる光半導体用樹脂組成物、及びその製造方法、並びにそのような光半導体用樹脂組成物を用いた、生産性が良好で、かつ安定した品質を備えた光半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、着色剤として特定の平均一次粒子径を有するカーボンブラックを特定量含有させることによって、封止作業性、成形作業性の向上、着色剤の偏析の抑制、透過率の安定化を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]の構成を有する、光半導体用樹脂組成物及びその製造方法、並びに光半導体装置である。
[1](A)固形状エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(B)液状酸無水物、(C)硬化促進剤、及び(D)平均一次粒子径が1〜50nmのカーボンブラックを含有し、前記(D)カーボンブラックの含有量が、組成物全体の0.01〜0.05質量%であることを特徴とする光半導体用樹脂組成物。
[2](A)成分は、固形状エポキシ樹脂を50〜95質量%含むことを特徴とする[1]の光半導体用樹脂組成物。
[3]前記固形状エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は多官能型エポキシ樹脂を含むことを特徴とする[1]または[2]の光半導体用樹脂組成物。
[4][1]乃至[3]のいずれかの光半導体用樹脂組成物の製造方法であって、(D)カーボンブラックの一部もしくは全部を、(A)エポキシ樹脂の一部もしくは全部と、または(A)エポキシ樹脂の一部もしくは全部および(B)液状酸無水物の一部もしくは全部と予め混合して予備混合物を得、その後、前記予備混合物と前記光半導体用樹脂組成物の残りの成分とを混合することを特徴とする光半導体用樹脂組成物の製造方法。
[5][1]乃至[3]のいずれかの光半導体用樹脂組成物により、光半導体素子が封止されていることを特徴とする光半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止作業性、成形作業性に優れ、かつ着色剤の偏析がなく安定した透過率が得られる光半導体用樹脂組成物、及びその製造方法が提供される。また、本発明によれば、そのような光半導体用樹脂組成物の硬化物で封止された、生産性が良好で、かつ安定した品質を備えた光半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光半導体用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)液状酸無水物、(C)硬化促進剤、及び(D)カーボンブラックを含有するものである。
【0013】
本発明で使用する(A)成分のエポキシ樹脂は、固形状エポキシ樹脂を含む。なお、本明細書において、単に「固形状エポキシ樹脂」というときは、常温(25℃)で固形状のエポキシ樹脂をいう。同様に、単に「液状エポキシ樹脂」というときは、常温で液状のエポキシ樹脂をいう。他の成分についても同様であり、例えば、(B)成分の「液状酸無水物」は、常温で液状の酸無水物をいう。
【0014】
固形状エポキシ樹脂は、常温で固形状であって、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量等に制限されることなく一般に電子部品の封止材料として使用されているものを広く用いることができる。具体的には、例えば、固形状の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び多官能型エポキシ樹脂の併用がより好ましい。
【0015】
本発明において使用する固形状エポキシ樹脂は、エポキシ当量が400〜800の範囲にあるものが好ましい。固形状エポキシ樹脂のエポキシ当量が400未満では、硬化物の靱性が低下し、一方、エポキシ当量が800を超えると、樹脂の軟化温度が高くなるため、製造時の混合・混練温度を上昇させる必要が生じ、その結果、混合・混練中に硬化が始まり、未充填箇所が生じやすくなる。
【0016】
なお、本発明においては、(A)成分のエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。固形状エポキシ樹脂として2種以上組み合わせて使用する場合、個々の樹脂が上記条件を満足する必要はなく、組み合わせて得られる固形エポキシ樹脂の平均エポキシ当量が上記条件を満たしていればよい。
【0017】
固形状エポキシ樹脂として好適なビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品を例示すると、例えば、東都化成(株)製のYD−011(エポキシ当量475)、同YD−012(エポキシ当量650)、同YD−013(エポキシ当量850)、同YD−014(エポキシ当量950)、DIC(株)製のエピクロンシリーズの860(エポキシ当量245)、1050(エポキシ当量450)、1055(エポキシ当量450)、2050(エポキシ当量630)、2055(エポキシ当量630)、3050(エポキシ当量780)、3055(エポキシ当量780)、4050(エポキシ当量950)、三菱化学(株)製のjER1002(エポキシ当量650)、(以上、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0018】
(A)成分中に、上記固形状エポキシ樹脂は、50〜95質量%含有されることが好ましく、60〜85質量%であるとより好ましい。固形状エポキシ樹脂の含有量が50質量%未満では、混合・混練後に冷却しても固形化することが困難となり、粉砕してペレットやタブレット等を製造することができないおそれがある。また、硬化させるために、成形の際、多量の硬化触媒が必要になり、その結果、フロアライフや熱履歴後の透過率等が低下するおそれがある。一方、固形状エポキシ樹脂の含有量が95質量%を超えると、製造時の混合・混練温度を上昇させる必要が生じ、その結果、混合・混練中に硬化が始まり、未充填箇所が生じやすくなる。
【0019】
上記固形状エポキシ樹脂と併用するエポキシ樹脂は、特に限定されず、常温で液状であって、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量等に制限されることなく一般に電子部品の封止材料として使用されているものを広く用いることができる。具体的には、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、アルキル置換ビスフェノール、水添ビスフェノール等のジグリシジルエーテル;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;シクロヘキサン誘導体等のエポキシ化によって得られる脂環式エポキシ樹脂(1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノールジグリシジルエーテル等);ビフェニル型エポキシ樹脂;エステルまたはポリエステル型エポキシ樹脂(ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、トリグリシジルイソシアヌレート等);ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのなかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。これらの液状エポキシ樹脂についても、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。固形状エポキシ樹脂と併用する好ましい液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学(株)製のYD−8125(商品名、エポキシ当量175)等が挙げられる。
【0020】
本発明で使用する(B)成分の液状酸無水物は、上記(A)成分の硬化剤であり、液状であって、従来、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものであれば、特に制限されることなく使用することができる。具体的には、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルブチルテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メチルハイミック酸等が使用される。これらの液状酸無水物は1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
(B)成分の硬化剤の配合量は、(A)成分中のエポキシ基1当量当たり、0.9〜1.2当量となる範囲が好ましく、1.0〜1.1当量となる範囲がより好ましい。酸無水物の配合量が前記範囲であれば、ガラス転移温度が高く、耐熱性、機械的特性、耐湿性等の良好な硬化物が得られる。また、硬化性も良好である。
【0022】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、従来、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているフェノール樹脂硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾール化合物、潜在性硬化剤、イソシアネート化合物、カチオン系硬化剤等の硬化剤を配合してもよい。
【0023】
フェノール樹脂硬化剤の具体例としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、シクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明で使用される(C)成分の硬化促進剤は、(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分の液状酸無水物の反応を促進するものであり、かかる作用を有するものであれば特に制限されることなく使用できる。具体的には、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン系硬化促進剤、ジアザビシクロ系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、有機ボロン塩系硬化促進剤、ポリアミド系硬化促進剤物等が使用される。
【0025】
硬化促進剤の具体例としては、例えば、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等のジアザビシクロ化合物及びこれらの塩;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p‐メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、テトラアルキルホスホニウムジアルキルホスフェート(例えば、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート等)等の有機ホスフィン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のテトラ‐またはトリフェニルボロン塩等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。(C)硬化促進剤としては、なかでも、成形性、透過率維持等の観点から、有機ホスフィン化合物が好ましい。
【0026】
この硬化促進剤の配合量は、組成物全体に対して、0.1〜5質量%の範囲が好ましく、0.3〜1質量%の範囲がより好ましい。硬化促進剤の配合量が前記範囲であれば、組成物の硬化時間を短縮することができ、また、適度な流動性になるため充填性が良好であり、さらに、常温における可使時間が短くなることもない。なお、硬化促進剤は不純物濃度の低いものを使用することが好ましい。
【0027】
本発明で使用される(D)成分のカーボンブラックは、平均一次粒子径が1〜50nmのものである。このようなカーボンブラックを使用することにより、組成物の透明性、特に可視光に対する良好な透明性を確保しつつ、外乱光による反射や内部が透けて見えるのを抑制することができる。なお、このカーボンブラックの「平均一次粒子径」は、電子顕微鏡観察による算術平均径である。カーボンブラックは、できるだけ黒色度の高いものを使用することが、着色性の観点から好ましい。
【0028】
この(D)成分のカーボンブラックの配合量は、組成物全体の0.01〜0.05質量%であり、この範囲を外れると上記効果が得られない。すなわち、カーボンブラックの配合量が、組成物全体の0.01質量%未満では、外乱光による反射や内部の透視を防止する効果が大きく低下する。また、0.05質量%を超えると、透過率が低下するうえ、分散性が低下し、色むらや透過率のバラツキが生じやすくなる。
【0029】
なお、この(D)成分のカーボンブラックは、後述するように、エポキシ樹脂の一部もしくは全部に、またはエポキシ樹脂の一部もしくは全部及び酸無水物の一部もしくは全部に予め混練/混合分散させておき、この予備混練/混合物を他の成分と混合するようにすることが、分散性を高め、かつ短時間の混練/混合でゲル化を抑制できることから好ましい。カーボンブラックと液状エポキシ樹脂との予備混練は、例えば、ロール混練により行うことができ、さらに酸無水物を混合する場合は、カーボンブラックと液状エポキシ樹脂との予備混練物を酸無水物に加え、超音波をかけて混合するようにすればよい。液状エポキシ樹脂と混練したカーボンブラックが市販されており、これを使用することもできる。このような液状エポキシ樹脂とカーボンブラックとの混練物の市販品としては、例えば、アイカ工業(株)製のECB−602(商品名、カーボンブラック(平均粒径 24nm)15質量%、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂75質量%、希釈剤10質量%)等が挙げられる。
【0030】
本発明の光半導体用樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、無機充填剤、酸化防止剤、カップリング剤、光安定剤、離型剤(合成ワックス、天然ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩等)、低応力付与剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム等)等の添加剤を必要に応じて配合することができる。これらの各添加剤はいずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
無機充填剤としては、合成シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ガラス等が挙げられる。これらは、表面がシランカップリング剤で処理されていてもよい。
【0032】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t-ブチル−p−ヒドロトルエン、2,6−ジ−t-ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジフェニルアミン等のアミノ系酸防止剤等が挙げられる。
【0033】
カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤や、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の光半導体用樹脂組成物は、前記した(A)〜(D)成分、及び必要に応じて配合される各種添加成分を万能混合器、熱ロール、ニーダ等により混練処理を行い、次いで、冷却固化させ、適当な大きさに粉砕することにより、調製することができる。
【0035】
上記粉砕方法は特に制限されず、一般的な粉砕機を用いることができる。好ましくは、カッティングミル、ボールミル、サイクロンミル、ハンマーミル、振動ミル、カッターミル、グラインダーミルであり、さらに好ましくは、スピードミルである。
【0036】
本発明においては、(D)成分のカーボンブラックの一部もしくは全部、好ましくは全部を、(A)成分のエポキシ樹脂(好ましくは、液状エポキシ樹脂)の一部もしくは全部、通常一部と、または(A)成分のエポキシ樹脂(好ましくは、液状エポキシ樹脂)の一部もしくは全部、通常一部及び(B)成分の液状酸無水物の一部もしくは全部、通常一部と予備混練/混合して予備混練/混合物を得、この後、この予備混練/混合物に、硬化促進剤及び残りの成分(存在する場合)とを混合するようにする。このように(D)成分のカーボンブラックの一部もしくは全部を、(A)成分のエポキシ樹脂の一部もしくは全部、または(A)成分のエポキシ樹脂の一部もしくは全部及び(B)成分の液状酸無水物の一部もしくは全部を予め混練/混合しておくことにより、カーボンブラックが組成物中に均一にかつ十分に分散され、硬化させた際に、色むらや透過率にバラツキがなく、かつ耐熱性、寸法安定性、機械的特性等にも優れた硬化物を得ることができる。
【0037】
次に、本発明の光半導体装置について説明する。
本発明の光半導体装置は、上記透明樹脂組成物を用いて各種の光半導体素子を封止あるいは二次成形することにより製造することができる。封止、成形を行う光半導体素子としては、発光ダイオード、半導体レーザ等の発光素子が例示される。封止、成形方法としては、トランスファー法の他、圧縮成形法、射出成形法等が用いられる。封止あるいは成形の際の加熱温度、また、その後の後硬化の際の加熱温度は150℃以上が好ましい。このようにして得られた光半導体装置は、色むらがなく、また透過率にバラツキがない上に、外乱光による反射や内部透視を抑制する効果も良好で、さらに耐熱性、寸法安定性、機械的特性等にも優れている。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において「部」は特に断らない限り「質量部」を意味する。
【0039】
(予備混練物(1)の調製)
カーボンブラック(東海カーボン(株)製 商品名「MA600」、平均粒径20nm)10部、及び常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製 商品名「YD−8125」)90部を常温で10分間、ロール混練して予備混練物(1)を得た。
(予備混練物(2)の調製)
カーボンブラック含有エポキシ樹脂(アイカ工業(株)製 商品名「ECB−602」;カーボンブラック(平均粒径 24nm)15質量%、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂75質量%、希釈剤10質量%)2部、及び常温で液状の酸無水物(新日本理化(株)製 商品名「リカシッドMH−700」)58部を常温で混合した後、超音波による粉砕処理(10分間×5回)を行って予備混練物(2)を得た。
【0040】
(実施例1)
表1に示す組成となるような配合量で、まず、上記予備混練物(1)と、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(「YD−8125」)と、常温で固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製 商品名「エピコート1002」)と、常温で固形状の、トリアジン骨格を有する三官能型エポキシ樹脂(日産化学工業(株)製 商品名「TEPIC−S」)と、常温で液状の酸無水物(新日本理化(株)製 商品名「リカシッドMH−700」)と、酸化防止剤のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)とを万能混合器にて70℃で混合し、次いで、この混合物に、硬化促進剤のメチルトリブチルホスホニウム ジメチルホスフェート(日本化学工業(株)製 商品名「ヒシコーリンPX−4MP」)を加えて、押出ニーダにて70〜100℃でさらに混練した。冷却後、スピードミルを用いて粉砕して、光半導体用樹脂組成物を得た。
【0041】
(実施例2〜4、比較例1〜4)
予備混練物(1)に代えて予備混練物(2)を使用するとともに、各成分の配合量を表1、2に示す組成となるような配合量とした以外は、実施例1と同様にして、光半導体用樹脂組成物を得た。
【0042】
(実施例5)
予備混練物を使用せず、カーボンブラックを他の成分と直接混合するようにした以外は実施例1と同様にして、実施例1と同一組成の光半導体用樹脂組成物を得た。
【0043】
(比較例5)
カーボンブラックに代えて、アゾ染料(中央合成化学(株)製 商品名「C−832」)を用いるようにした以外は実施例1と同様にして、光半導体用樹脂組成物を得た。
【0044】
上記各実施例及び各比較例で得られた光半導体用樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
【0045】
(1)硬化性
光半導体用樹脂組成物を用いて、150℃で2分間の条件でトランスファー成形を試み(成形品:50mm×30mm×1mm)、硬化の有無を調べ、下記の基準で評価した。
○:硬化
×:硬化せず
(2)フロアライフ
光半導体用樹脂組成物の調製直後の粘度(初期粘度:V
0)及び20℃で24時間保管後の粘度(保管後の粘度:V
1)を測定し、次式よりその変化率(%)を算出した。粘度は、レオメータ(TAインスツルメント製 製品名 ARES−G2レオメータ)を用い、25mmパラレルプレート、50〜150℃、昇温速度10K/min、1Hzの条件で最低溶融粘度を測定した。
粘度変化率(%)={(V
1−V
0)/V
0}×100
(3)成形品の色むら
(1)で得られた成形品の色むらの有無を目視にて観察した。
(4)光透過性
(1)の場合と同様にして厚さ1mmの透過率測定用試験片を作製し、その試験片について、作製直後の460nmの光に対する透過率T
0と150℃で168時間加熱後の同光に対する透過率T
1を測定するとともに、次式よりその維持率(%)を算出した。透過率は、分光光度計(日本分光(株)製 型名 V−570)を用いて測定した。
光透過率の維持率(%)=(T
1/T
0)×100
(5)光反射性
(1)の場合と同様にして厚さ1mmの反射率測定用試験片を作製し、その試験片について、作製直後の460nmの光に対する反射率R
0と150℃で168時間加熱後の同光に対する透過率R
1を測定するとともに、次式よりその維持率(%)を算出した。反射率は、分光光度計(日本分光(株)製 型名 V−570)を用いて測定した。
光反射率の維持率(%)=(R
1/R
0)×100
(6)曲げ強さ
光半導体用樹脂組成物を用いて、150℃×2分間及び150℃×2時間の条件で曲げ強さ測定用試験片(30mm×4mm×2mm)を作製し、その試験片について、3点曲げ試験(支点間距離11mm)により破断強度を測定した。
結果を光半導体用樹脂組成物の組成とともに表1及び表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
以上の結果より、本発明に係る光半導体用樹脂組成物は、硬化性、フロアライフ及び色むらに関し良好な結果が得られた。また、耐熱性が良好であり、熱履歴後の透過率の変化が小さい硬化物が得られることがわかった。また、この硬化物は、良好な反射抑制効果を有し、その効果は熱履歴後も維持されることがわかった。