(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記段部の内周面のうち、少なくとも前記段部の上面に連なる部分には、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ面が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の吐出器。
前記ピストンのうち、前記ピストンが下降端位置に位置したときに前記段部の上面に当接する部分には、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向けて延びる傾斜面が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の吐出器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る吐出器の構成を、
図1〜
図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1に示すように、吐出器1は、容器本体2の口部3に取り付けられる有頂筒状の装着キャップ11と、下方移動自在に配設されたステム12と、ステム12を上方付勢するコイルバネ95(付勢部材)と、ステム12の上端部に装着され、内容液の吐出孔13Aが形成された吐出ヘッド13と、ステム12の上下動に連係する筒状のピストン41と、ピストン41が上下摺動自在に収容されたシリンダ42と、ステム12から下方に向けて延設され、ピストン41の内側を上下方向に貫くピストンガイド43と、を備えている。
なお図示の例では、吐出器1に、後述する正倒立両用アダプタ200が装着されている。
【0016】
(方向定義)
ここで、装着キャップ11、ステム12、ピストン41、シリンダ42、およびピストンガイド43は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿う方向を上下方向という。また、上下方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。また、平面視において、径方向のうち、吐出ヘッド13の吐出孔13Aが開口する方向を前方といい、その逆方向を後方といい、上下方向および前後方向の双方に直交する方向を左右方向という。
【0017】
図2に示すように、装着キャップ11は、中央に開口部11cが形成された円環状の頂壁部11aと、頂壁部11aの外周縁から下方に向けて延びる円筒状の周壁部11bと、を有する。周壁部11bの内周面には、容器本体2の口部3における外周面に形成された雄ネジに螺着する雌ネジが形成されている。
【0018】
ステム12は、容器本体2の口部3に上方付勢状態で下方移動自在に立設されている。
ステム12の下部の内径および外径は、ステム12の上部の内径および外径よりも大きい。ステム12の上部と下部との間には、テーパ状の段筒部12Aが形成されている。
図2および
図3に示すように、ステム12とピストン41との間には、ピストン41に対するステム12およびピストンガイド43の下方移動に伴って、ピストン41およびステム12により上下方向の圧縮力が加えられる弾性片25が配設されている。
【0019】
弾性片25は、表裏面が径方向を向き、上下方向に延びる板状に形成されている。弾性片25は、ステム12の下端開口縁に形成され、周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では6つ)配置されている。弾性片25はステム12と一体に形成されている。複数の弾性片25は、互いに同等の形状かつ同等の大きさに形成されている。弾性片25の径方向の大きさ(厚み)は、ステム12の厚みよりも薄くなっている。なお、ステム12および弾性片25は、弾性片25が一定の力が加えられたときに変形するような、ある程度剛性を有する材質、例えばポリプロピレン等で形成される。
【0020】
吐出ヘッド13は、ステム12の上端部に装着された有頂筒状の装着筒部31と、装着筒部31から前方に向けて突設された筒状のノズル筒部32と、を有している。
装着筒部31は、ステム12内に嵌合されている。装着筒部31の上端部には、左右方向に突出する軸部10Aが形成されている。軸部10Aは左右方向から見て円形状を呈している。装着筒部31の上端部に、後方に向けて突出する被係止部120が形成されている。
【0021】
被係止部120は、左右方向に開口する一対の肉抜き孔121を有するブロック状に形成されている。被係止部120には、後述するストッパー130の規制位置から規制解除位置への移動を抑止するための係合突起122が形成されている。
係合突起122は、被係止部120の後端部から下方に突設されている。係合突起122の下端は、ステム12の上端よりも上方に位置する。係合突起122の後部には、後方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる斜面122aが形成されている。
【0022】
ノズル筒部32内には、前後方向に延在する芯棒体35と、芯棒体35の前端部に被着された有頂筒状のチップ36と、が配設されている。
芯棒体35の外周面には、前後方向に延びるとともに、ノズル筒部32の内周面との間で内容液の流動を可能とする複数の流路溝部35Aが形成されている。チップ36は、芯棒体35と同軸上に配設されており、内側に芯棒体35が嵌合された円筒状のチップ筒部37と、チップ筒部37の前端部に設けられた端壁部38と、を有している。
【0023】
チップ筒部37は、ノズル筒部32内に嵌合されている。端壁部38は、芯棒体35の前端面に当接している。端壁部38のうち芯棒体35の前端面に当接する後面には、芯棒体35の流路溝部35Aに連通するスピン流路38Aが形成されている。端壁部38の中央部分には、スピン流路38Aに連通する吐出孔13Aが前方に向けて開口している。
チップ36により、内容液を霧状に吐出することができる。また、チップ36およびノズル先端形状等を変更することで、内容液を泡状および直線状等に吐出することが可能となる。例えば、本実施形態のノズル先端にメッシュ等の発泡部材を設けることで、泡状吐出が可能となる。
【0024】
ピストン41は、シリンダ42内に上下摺動自在に嵌合された外筒ピストン51と、外筒ピストン51における径方向の内側に配置され、ピストンガイド43を径方向の外側から囲繞する内筒ピストン52と、外筒ピストン51と内筒ピストン52とを連結する環状連結部53と、を備えている。これら外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53はそれぞれ、中心軸線Oと同軸に配設されている。図示の例では、外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53は一体に形成されている。
【0025】
図3に示すように、外筒ピストン51は、環状連結部53から上方に突出する筒状の上側部51aと、環状連結部53から下方に突出する筒状の摺接部51bと、を備えている。摺接部51bの下端部は、ピストン41が下降端位置(
図5参照)に位置したときに、シリンダ42の後述する段部65における上面65bに当接する部分である。
上側部51aの外周面は、シリンダ42の内周面に当接若しくは近接している。上側部51aは、弾性片25との間に径方向の隙間をあけて配設されており、弾性片25を径方向の外側から囲繞している。上側部51aの上端は、弾性片25の上端よりも上方に位置している。摺接部51bの下端部は、シリンダ42の内周面に当接している。
【0026】
内筒ピストン52は、環状連結部53から上方に突出し、上端部がステム12内に上下摺動自在に嵌合された内筒部52aと、環状連結部53から下方に突出し、ピストンガイド43に上下動自在に外装され、かつステム12内とシリンダ42内との連通を遮断する筒状の閉塞部52bと、を備えている。
【0027】
内筒部52aのうち、ステム12内に位置する上部は、下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びている。内筒部52aは、ピストンガイド43の周筒部43Dにおける外周面、および弾性片25と径方向に隙間をあけて配設されている。なお、内筒部52aは、弾性片25と当接していてもよい。
閉塞部52bは、上方から下方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延びている。閉塞部52bの下端部は、ピストンガイド43の周筒部43Dにおける外周面に当接している。閉塞部52bの下端部は、摺接部51bの下端部より上方に位置している。
【0028】
環状連結部53は、外筒ピストン51および内筒ピストン52それぞれの上下方向の中間部分に配設され、中心軸線Oと同軸に配設された環状をなしている。環状連結部53の上面には、ピストン41に対するステム12およびピストンガイド43の下方移動に伴って、弾性片25が摺接する摺接面54が形成されている。摺接面54は、全周にわたって連続して延在している。なお、摺接面54は、全周にわたって断続的に延在してもよい。
弾性片25の下端部は、摺接面54から上方に離間している。弾性片25における径方向の内側部分と、摺接面54における径方向の外側部分と、は上下方向で互いに対向している。
【0029】
図2に示すように、シリンダ42は、多段の円筒状に形成されている。シリンダ42は、上下方向に延在する上筒部62と、上筒部62の下端部から下方に向けて延在し、上筒部62よりも内径および外径が小さい下筒部63と、下筒部63の下端部から下方に向けて延在し、下筒部63よりも内径および外径が小さい小径部64と、上筒部62の下端部と下筒部63の上端部とを接続する環状の段部65と、小径部64から下方に向けて延びる接続筒部69と、を備える。
【0030】
段部65は、ピストン41の外筒ピストン51に上下方向で対向している。ピストン41が下降端位置(
図5参照)に位置したとき、外筒ピストン51の摺接部51bが段部65の上面65bに当接する。段部65の内周面のうち、少なくとも段部65の上面65bに連なる部分には、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ面65aが形成されている。テーパ面65aは、吐出器1の製造時に、コイルバネ95を下筒部63内に挿入する作業を円滑にする役割を有している。なお、本実施形態では、段部65の上端開口縁から下筒部63の上端部にかけてテーパ面65aが延在しているが、テーパ面65aは段部65の内周面の一部分にのみ形成されていてもよい。
そして本実施形態では、段部65の上面65bが、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かって延びている。
【0031】
上筒部62の上部には、上筒部62の内外を連通させる空気孔62Bが形成されている。上筒部62の上端部には、径方向の外側に向けて突出する円環状の支持板部61が形成されている。支持板部61の上面における外周部に、装着キャップ11の頂壁部11aの下面が当接している。支持板部61と容器本体2の口部3における上端開口縁3aとの間に、第1パッキン66が配設されている。装着キャップ11の周壁部11bが、口部3に螺着されることにより、支持板部61および第1パッキン66が、装着キャップ11の頂壁部11aと、口部3と、の間に固定される。これら支持板部61、上筒部62、下筒部63、および小径部64は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0032】
支持板部61の上面には、上方に向けて延び、かつ装着キャップ11の開口部11cに挿通された立設筒部60が形成されている。立設筒部60の外径および内径は、上筒部62の外径および内径よりも大きくなっている。立設筒部60の上端開口縁60Aは、ステム12の段筒部12Aと上下方向において同等の位置に位置している。
支持板部61の上面は、ピストン41の上側部51aの上端開口縁と上下方向において同等の位置に位置している。支持板部61のうち、立設筒部60より径方向の内側に位置する内周部の上面、およびピストン41の上側部51aの上端開口縁に一体に環状の第2パッキン56が配設されている(
図3参照)。
【0033】
小径部64は、下筒部63の下端部から下方に向けて真っ直ぐ延びる直筒部67と、直筒部67の下端部から下方に向かうに従い漸次、内径および外径が小さくなるテーパ筒部68と、を有している。テーパ筒部68の内側には、弁体44がテーパ筒部68のテーパ面に離着自在に配設されている。
なお、弁体44は、球状に形成された合成樹脂製のいわゆるボール弁とされている。弁体44は、廃棄時における分別の手間を抑制する観点で合成樹脂製とすることが好ましい。また、弁体44は、金属製等であってもよい。さらに、ボール弁に替わる種々の弁体を用いた逆止弁でもよい。
【0034】
テーパ筒部68の内周面には、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる規制突部68Aが突設されている。規制突部68Aの上端の内径は、弁体44の外径よりも小さくなっている。これにより、弁体44が規制突部68Aから上方に離脱するのを規制している。なお、規制突部68Aには、周方向の延在を中断する間隙が形成されている。
【0035】
ピストンガイド43は、ステム12から下方に向けて延びる周筒部43Dおよび底壁部を備える有底筒状に形成されている。ピストンガイド43の底壁部は、
図3に示されるように、ピストン41の閉塞部52bよりも下方に位置している。底壁部には、径方向の外側に向けて突出する円環状のフランジ部43Aが形成されている。
ピストンガイド43における周筒部43Dの下端部に、外径がフランジ部43Aの上面から上方に向かうに従い漸次、縮径した当接部43Eが形成されている。この当接部43Eに、ピストン41の閉塞部52bの下端部が当接している。
【0036】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、ピストンガイド43内とシリンダ42内とを連通させる連通孔43Bが形成されている。連通孔43Bは、例えば中心軸線Oを径方向で挟む両側に配置されている。連通孔43Bは、閉塞部52bが当接する当接部43Eよりも上方に位置している。これにより、連通孔43Bとシリンダ42の上筒部62内との連通が遮断されている。
【0037】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、
図2に示されるように、ピストンガイド43内とステム12内とを連通する貫通孔43Cが形成されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bと同様に、例えば中心軸線Oを径方向で挟む両側に配置されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bよりも上方に配置され、ステム12の段筒部12Aにおける内周面に向けて開口している。連通孔43Bおよび貫通孔43Cがピストンガイド43に形成されていることで、ピストンガイド43とピストン41との間、並びにピストンガイド43とステム12との間の空気が滞留するのを防ぐことができる。
ピストンガイド43のうち貫通孔43Cよりも上側に位置する部分は、ステム12内に嵌合している。これにより、ピストンガイド43は、ステム12と共に一体に上下動する。
【0038】
ピストンガイド43の下端部には、下方に向けて突出し、コイルバネ95が外装されるガイド突部43Fが形成されている。ガイド突部43Fは、表裏面が周方向を向く板体が中心軸線O回りに複数配置されて構成されている。ガイド突部43Fは、シリンダ42における上筒部62の下部から下筒部63の上部にわたって配設されている。
コイルバネ95のうち、上端部はフランジ部43Aの下面に当接し、下端部はシリンダ42における直筒部67の上端開口縁に当接している。これにより、ピストンガイド43はコイルバネ95から上向きの付勢力を受けている。
【0039】
さらに本実施形態では、吐出器1は、装着キャップ11の後部に立設された支持部材15と、支持部材15に回転軸L回りに回転自在に配設され、吐出ヘッド13を押下げる押下部材16と、吐出ヘッド13の下方移動を規制するストッパー130と、を備えている。なお、吐出器1は、支持部材15、押下部材16、およびストッパー130を有しなくてもよい。
【0040】
支持部材15は、シリンダ42の立設筒部60に外装された有頂筒状の囲繞筒部15aと、囲繞筒部15aの頂壁から上方に向けて延びるガイド筒15cと、囲繞筒部15aから後方に向けて突設され、左右方向に間隔をあけて配設された一対の側壁部77と、側壁部77の後端縁同士を左右方向に接続する後壁部78と、を有している。
【0041】
囲繞筒部15aの頂壁は環状に形成され、この頂壁の内周縁部にガイド筒15cが配置されている。ガイド筒15c内には、ステム12が下方移動自在に挿通されている。囲繞筒部15aの頂壁の下面には、内側にステム12が挿通された内側垂下筒部15dと、内側垂下筒部15dと囲繞筒部15aの周壁との間に配置された外側垂下筒部15eと、が形成されている。ガイド筒15c、内側垂下筒部15d、および外側垂下筒部15eは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0042】
囲繞筒部15aの周壁の下端部は、装着キャップ11の頂壁部11aと隙間を介して上下方向に対向している。
外側垂下筒部15eは、立設筒部60内に嵌合されている。外側垂下筒部15eの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、シリンダ42における支持板部61の内周部の上面に押し当てられている。
内側垂下筒部15dは、ステム12の下部に外装されている。内側垂下筒部15dの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、ピストン41の上側部51aの上端開口縁に押し当てられている。
第2パッキン56は、ステム12の下端部に外嵌されている。第2パッキン56は、ステム12とガイド筒15cとの間に画成された外気導入路Rと、シリンダ42内のうち、ピストン41の摺接部51bより上方に位置する上部空間と、の連通を遮断可能である。
【0043】
側壁部77は、前側から後側に向かうに従い漸次、上側に向けて延びている。側壁部77の上端には、左右方向から見た正面視で上方に向けて突の半円形状に形成された突出片80が形成されている。突出片80には、円柱状の軸体77Aが左右方向の外側に向けて突設されている。軸体77Aは、ステム12より後方に配置されている。軸体77Aの中心を通り、かつ左右方向に延びる仮想の軸線が押下部材16の揺動軸Lとなる。これにより、揺動軸Lは、ステム12より後方に配置されるとともに左右方向に延びている。
後壁部78の内面には、上方に向かって突出し、一対の側壁部77の内面同士および突出片80同士を左右方向に一体に連結する補強壁78aが形成されている。
【0044】
押下部材16は、軸体77Aを介して支持部材15に取り付けられている。これにより、押下部材16は、支持部材15に対して揺動軸L回りに揺動可能に連結されている。
押下部材16は、吐出ヘッド13を上方から覆う天板部90と、天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる前板部91と、天板部90の左右両側の側端縁から下方に向けて延在し、左右方向に向かい合う一対の側板部92と、を有している。
そして、天板部90と一対の側板部92とで囲まれる内部空間に吐出ヘッド13が配置されている。よって、一対の側板部92は、吐出ヘッド13を左右方向から挟むように配置されている。
【0045】
天板部90は、上方に向けて膨らむように滑らかに湾曲した形状とされ、その後端部は支持部材15における後壁部78の上端部に上方から当接している。これにより、押下部材16は、揺動軸Lを中心としたこれ以上の上方への揺動が規制されている。
天板部90の前側部分には、天板部90を貫通する第1貫通孔93が形成されている。
この第1貫通孔93は、天板部90における左右方向の中央部分に形成されているとともに、前方に開口している。これにより、天板部90の前側部分は、左右方向に二股に分かれた形状とされている。前板部91は、二股に分かれた天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延在している。
【0046】
第1貫通孔93内に吐出ヘッド13のノズル筒部32が挿通されている。これにより、ノズル筒部32は、第1貫通孔93を通して前板部91から前方に向けて突出しており、押下部材16と吐出ヘッド13との中心軸線O回りにおける相対的な回転が規制されている。なお、前板部91の下側部分は、指先を掛けるための指掛部分とされている。
【0047】
押下部材16の一対の側板部92は、支持部材15の一対の側壁部77における上部を左右方向に挟んでいる。これにより、支持部材15と押下部材16との中心軸線O回りにおける相対的な回転が規制されている。一対の側板部92の後部側の内面には、軸体77Aが挿通される軸孔部92Aが形成されている。これにより、押下部材16は、軸体77A回り、すなわち揺動軸L回りに揺動可能に支持される。
【0048】
押下部材16には、吐出ヘッド13の軸部10Aに係合する係合溝31Aが形成されている。係合溝31Aは、押下部材16の一対の側板部92から左右方向の内側に向けて張り出した板部の下端部に、下方に向けて開口する半円形状に形成されている。この係合溝31A内に軸部10Aが挿入されている。
以上の構成において、押下部材16を揺動軸L回りに下方に揺動すると、係合溝31Aの内周面が軸部10Aの外周面を下方に向けて押し込むことにより、ステム12およびピストンガイド43が、コイルバネ95の上方付勢力に抗して下降する。
【0049】
ストッパー130は、押下部材16の揺動軸Lに平行な軸体131回りに揺動可能に設けられ、吐出ヘッド13の下方移動を規制する。ストッパー130は、吐出ヘッド13の下方移動を規制する規制位置と、規制位置に対して軸体131回りに後方に揺動し、吐出ヘッド13の下方移動を許容する規制解除位置(
図1に示す位置)と、の間を移動自在に配設されている。ストッパー130は、規制位置にある場合に吐出ヘッド13の下方移動を規制し、規制解除位置にある場合に吐出ヘッド13の下方移動を許容する。
【0050】
ストッパー130は、一対の側壁部77の間に架設された軸体131と、軸体131の上方に配設され、規制位置に位置するときに、被係止部120の下面とガイド筒15cの上端開口縁との間に挟み込まれる被挟持部132と、軸体131における左右方向の両端部に接続され、側板部92における左右方向の外側に位置する一対の摘み部134と、を備えている。
軸体131は、左右方向に延在する棒状に形成され、軸体131の左右方向の両端部は、一対の側壁部77に形成された支持凹部82に中心軸回りに回転可能に嵌め込まれている。支持凹部82は、ステム12よりも後方であって、揺動軸Lよりも前方に配置されている。
【0051】
図6に示すように、正倒立両用アダプタ200は、円筒状の本体筒部210を備える。
本体筒部210は、中心軸線Oと同軸に配設されている。本体筒部210は、シリンダ42に外嵌された円筒状の外側筒部材211と、外側筒部材211内に嵌合された内側筒部材212と、を有する。内側筒部材212の下端部内には、容器本体2内の内容液を流通させる円筒状のパイプ213の上端部が嵌合されている。これら外側筒部材211、内側筒部材212、およびパイプ213は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0052】
外側筒部材211は、上端部内にシリンダ42の直筒部67が嵌合された円筒状の外筒部214と、外筒部214の上下方向の中間部分に配設され、外筒部214の内部を上下に仕切る仕切壁部215と、仕切壁部215から下方に延設され内側筒部材212の上端部が連結される円筒状の連結筒部217と、を有する。
【0053】
仕切壁部215には、上下方向に貫く通液孔219が形成されている。連結筒部217の上端部のうち、一部の外周面は、外筒部214の内周面に接続され、他の部分の外周面は、外筒部214の内周面から径方向の内側に離間している。そして、外側筒部材211には、連結筒部217の前記一部および外筒部214を一体に径方向に貫く倒立時導入孔221が形成されている。倒立時導入孔221は、吐出器1の倒立時に容器本体2内の内容液を連結筒部217内に導入可能に設けられている。
【0054】
内側筒部材212は、上端部が連結筒部217に連結された円筒状の上側筒部222と、上側筒部222よりも下方に配設され、かつ下端部が外側筒部材211の下端部よりも下方に位置する円筒状の下側筒部223と、上側筒部222と下側筒部223とを結合する円筒状の結合筒部224と、を有する。
【0055】
上側筒部222の上端部は、連結筒部217に外嵌されている。そして、上側筒部222の外周面と外筒部214の内周面との間には、内容液を流通させる第1流路r1が形成されている。この第1流路r1は、通液孔219に連通している。上側筒部222の下端部は、内径および外径が下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状をなしており、上側筒部222の内側には、球状の切替弁225が配設されている。
【0056】
結合筒部224の外周面と、外筒部214の内周面と、の間には、内容液を流通させる第2流路r2が形成されている。この第2流路r2は、第1流路r1に連通している。結合筒部224には、その内部と第2流路r2とを連通する連絡孔226が形成されている。連絡孔226は、結合筒部224に周方向に間隔をあけて複数形成されている。
ここで連絡孔226、第2流路r2、第1流路r1および通液孔219は、内側筒部材212の下端の正立時導入孔229および倒立時導入孔221と、シリンダ42の接続筒部69における下端開口部と、を連通する連通路r3を構成している。正立時導入孔229は、倒立時導入孔221より下方に配置されている。
【0057】
下側筒部223は、外側筒部材211の下端部内に嵌合されている。パイプ213の上端部は、下側筒部223の下端部内に嵌合されており、パイプ213の下端開口は、容器本体2内の底部に向けて開口する。パイプ213の下端開口および正立時導入孔229は、吐出器1の正立時に、容器本体2内の内容液を内側筒部材212内に導入可能に設けられている。正立時導入孔229には、パイプ213を通して内容液が導入される。
【0058】
次に、以上のように構成された吐出器1の作用について説明する。
【0059】
吐出器1を使用する際、まず、ストッパー130を規制位置から規制解除位置へと揺動させて、押下部材16及び吐出ヘッド13が下方移動可能な状態とする。次に、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる。この際、例えば押下部材16の前板部91の指掛部分に指先を掛けながら、コイルバネ95の付勢力に抗して押下部材16を下方に向けて回転させる。押下部材16を下方に向けて回転させると、吐出ヘッド13が下方移動し、弁体44によってシリンダ42のテーパ筒部68内を閉塞した状態で、ステム12およびピストンガイド43がシリンダ42に対して押し下げられる。
【0060】
ステム12がピストンガイド43とともに押し下げられると、ステム12に加えられた押し下げ力が、弾性片25を介してピストン41に伝えられ、ピストン41がステム12およびピストンガイド43と一体となって、シリンダ42に対して下方移動する。これにより、ピストン41の閉塞部52bがステム12内とシリンダ42内との連通を遮断したままの状態で、シリンダ42内が加圧される。
【0061】
ここで、例えば吐出器1が未使用の場合など、シリンダ42内に空気が存在している場合がある。シリンダ42内に空気が存在している場合、上記のように押下部材16を操作すると、シリンダ42内の空気をシリンダ42外に排出するプライミングが行われる。より詳しくは、
図4に示すようにピストン41が下降すると、シリンダ42内の圧力が高まるとともに、ピストン41の摺接部51bにおける下端部が、シリンダ42の段部65に当接する。この状態でさらに押下部材16が押し下げられて、ステム12およびピストンガイド43が下降すると、
図5に示すように、ステム12の弾性片25が摺接面54に沿って径方向外側に弾性変形する。このとき、ピストンガイド43がピストン41に対して下降するのに伴い、ピストン41の閉塞部52bがピストンガイド43の当接部43Eから上方に離間する。このため、閉塞部52bの下端部とピストンガイド43の周筒部43Dとの間に径方向の隙間が形成されて、この隙間によって連通孔43Bとシリンダ42内とが連通し、シリンダ42内の空気が連通孔43Bを通じて周筒部43Dに内に流入する。このようにして、シリンダ42内の空気が排出される。なお、連通孔43Bとシリンダ42内とが連通するまで、ピストンガイド43の下降に伴ってシリンダ42の内圧はさらに上昇する。
【0062】
ところで、上記プライミング動作では、弾性片25を弾性変形させる際に、摺接部51bの下端部が段部65に当接した状態で、ピストン41に対してさらに下方に向けた力が加えられる。このとき、テーパ面65aに沿って摺接部51bの下端部が段部65の径方向内側に入り込み、摺接部51bが径方向内側に向けて撓むことで、摺接部51bの外周面と上筒部62との間のシール性が低下してしまう場合がある。また、このような現象は、プライミング以外においても、例えば押下部材16が強い力で操作されたときに発生する場合がある。
【0063】
そこで本実施形態では、上述の通り、ピストン41が下降端位置に位置したときに当接する段部65の上面65bが、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かって延びている。この構成により、ピストン41がシリンダ42に対して下降すると、先ず摺接部51bの下端部が段部65の上面65bに当接する。この状態でピストン41に対して下方に向けた力が加えられると、
図7(a)、(b)に示すように、摺接部51bに対して径方向外側に変位させる力が作用することとなる。従って、段部65にテーパ面65aが設けられていたとしても、テーパ面65aに沿って摺接部51bが段部65の径方向内側に入り込んでしまうことが抑えられ、摺接部51bと上筒部62との間のシール性を確保することができる。さらに、摺接部51bに作用する径方向外側に向けた力によって、摺接部51bの外周面を上筒部62の内周面に押し付けることで、上記シール性をさらに高めることもできる。
【0064】
上記のプライミングによってシリンダ42内の空気が排出された状態で、押下部材16の操作を繰り返すと、シリンダ42内の内容液がステム12内を上昇してノズル筒部32内に導入され、吐出ヘッド13の吐出孔13Aから吐出される。詳しくは、ステム12をピストンガイド43とともに押し下げると、ステム12に加えられた押し下げ力が、弾性片25を介してピストン41に伝えられ、ピストン41がステム12およびピストンガイド43と一体となって、シリンダ42に対して下方移動する。これにより、ピストン41の閉塞部52bがステム12内とシリンダ42内との連通を遮断したままの状態で、シリンダ42内が加圧される。この状態でステム12をさらに押し下げると、シリンダ42の上昇した内圧によりピストン41の下方移動が抑止されることとなり、ステム12およびピストンガイド43が、ピストン41に対して下方移動する。
【0065】
このため、ステム12およびピストンガイド43は、ステム12とピストン41との間に配設された弾性片25に上下方向の圧縮力を加えて弾性片25を弾性変形させながら、ピストン41に対して下方移動する。そして、上述のプライミング動作と同様に、シリンダ42の内圧が上昇しつつ、ピストン41の閉塞部52bが、当接部43Eから上方に離間し、閉塞部52bとピストンガイド43の外周面との間に、径方向の間隙が形成される。
【0066】
これにより、シリンダ42内の内容液は、閉塞部52bの内周面とピストンガイド43の外周面との間の間隙、並びに連通孔43Bを通ってピストンガイド43内に流入する。
そして、ピストンガイド43内に流入した内容液は、ステム12の上部内を流動してノズル筒部32に至り、ノズル筒部32の吐出孔13Aから吐出される。この結果、容器本体2内に収容された内容液を、吐出孔13Aを通じて外部に吐出することができる。
【0067】
その後、押下部材16の操作を解除すると、ステム12およびピストン41が、コイルバネ95からの付勢力に基づいてシリンダ42に対して復元移動する。このとき、シリンダ42内が負圧になり、この負圧が、弁体44に作用してテーパ筒部68内を開放し、切替弁225に連通路r3を通して作用する。すると、吐出器1の正立時には、切替弁225が倒立時導入孔221と連通路r3との連通を遮断した状態に維持する。その結果、容器本体2内の内容液が、正立時導入孔229、本体筒部210内および連通路r3を通してシリンダ42の下端開口部に到達してシリンダ42内に流入する。
【0068】
一方、吐出器1の倒立時には、容器本体2内の底部に開口するパイプ213の下端開口が、容器本体2内の内容液の液面から突出している。しかも、倒立時導入孔221が、容器本体2内の内容液内に位置した状態で、切替弁225がその自重に基づいて上側筒部222の内側から離反しており、倒立時導入孔221と連通路r3とが本体筒部210内を通して連通している。したがって、シリンダ42内で負圧が発生することで、容器本体2内の内容液が、倒立時導入孔221、本体筒部210内および連通路r3を通してシリンダ42の下端開口部に到達してシリンダ42内に流入する。
【0069】
吐出器1の正立時および倒立時いずれの場合であっても、吐出ヘッド13、ステム12およびピストン41をシリンダ42に対して一体的に押下させると、シリンダ42内のうちピストン41より下方に位置する下部空間が加圧され、この下部空間内の内容液がステム12内を上昇して吐出孔13Aから吐出される。この過程において、第2パッキン56が外気導入路Rの下端開口を開放し、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間とが連通し、外気がシリンダ42内の上部空間に導入される。
【0070】
吐出ヘッド13、ステム12およびピストン41の押し下げを解除して、これらを上方に復元変位させると、シリンダ42内の下部空間が負圧になり、容器本体2内の内容液がシリンダ42内の下部空間に導入される。この過程において、上部空間の空気は、空気孔62Bを介してシリンダ42内の上部空間と容器本体2内とが連通することで、容器本体2内に導入される。
【0071】
その後、ステム12およびピストン41が元に戻ると、第2パッキン56により、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間との連通が遮断され、外気導入路Rを通した容器本体2内と外部との連通が遮断される。
なお、吐出器1が倒立等しても、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間との連通を遮断する第2パッキン56が配設されているので、容器本体2内の内容液がシリンダ42内の上部空間に到達しても、この内容液が外気導入路Rを通して外部に漏出することを防ぐことができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の吐出器1によれば、シリンダ42の段部65の上面65bが、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かって延びている。この構成により、プライミングの際や内容液を吐出させる際に、ピストン41が段部65に強く押し当てられたとしても、摺接部51bが段部65の径方向内側に入り込んでピストン41とシリンダ42との間のシール性が低下してしまうことを抑えることができる。さらに、摺接部51bに作用する径方向外側に向けた力によって、この摺接部51bをシリンダ42の上筒部62における内周面に押し付けることで、上記シール性をより高めることができる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、ピストン41の形状が第1実施形態と異なる。
【0074】
図8(a)、(b)に示すように、本実施形態のピストン41のうち、段部65の上面65bに対して上下方向で対向する摺接部51bの下端部には、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向けて延びる傾斜面51cが形成されている。傾斜面51cは、ピストン41が下降端位置(
図8(b)参照)に位置したときに、段部65の上面65bに当接する。
【0075】
本実施形態によれば、ピストン41が下降して段部65に当接し、さらにピストン41が下方に押し込まれたときに、ピストン41の傾斜面51cと段部65の上面65bとが当接することで、摺接部51bを径方向外側に変位させる力をより確実に発生させることができる。従って、摺接部51bが段部65の径方向内側に落ち込んでしまうことを、より確実に抑止することができる。さらに、傾斜面51cが段部65の上面65bに押し付けられた際に、摺接部51bをシリンダ42の上筒部62に押し付ける力も大きくなるため、ピストン41とシリンダ42との間のシール性をより向上させることができる。
【0076】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0077】
例えば、前記実施形態では、段部65のテーパ面65aが縦断面視で直線状に形成されていたが、テーパ面65aは縦断面視で湾曲していてもよい。
また、シリンダ42にはテーパ面65aが形成されていなくてもよい。この場合でも、例えばコイルバネ95を配置するためにガイド突部43Fと段部65との間に設けられた隙間にピストン41の摺接部51bにおける下端部が入り込んでしまうことが想定される。そして、上述の通り段部65の上面が傾斜していることで、ガイド突部43Fと段部65との間の隙間に摺接部51bが入り込むことを抑止することができる。
また、前記実施形態では、トリガー型の押下部材16を有する吐出器1を例にして説明したが、本発明は他の種類の吐出器1に対して適用することもできる。例えば、ボタンを押下することで内容液を吐出させる形式の吐出器に対して適用してもよい。同様に、液体ポンプなどを用いて内容液を吐出させる吐出器に対して適用してもよい。
【0078】
また、前記実施形態ではステム12の弾性片25およびピストン41の摺接面54により、シリンダ42内の圧力がより高まった状態で内容液を吐出させる蓄圧構造を備えているが、このような蓄圧構造を有さない吐出器1に対して本発明を適用してもよい。
また、前記第2実施形態では、摺接部51bの下端部に傾斜面51cが形成されていたが、本発明はこの構成に限らず、ピストン41のうち段部65に当接する部分に傾斜面が形成されていればよい。
【0079】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。