(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910303
(24)【登録日】2021年7月8日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】電解コンデンサと組み込まれたエラストマ被覆体とを備えた制御モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20210715BHJP
F16H 61/00 20060101ALI20210715BHJP
F16D 25/12 20060101ALI20210715BHJP
H01G 9/06 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
H05K7/12 P
F16H61/00
F16D25/12 Z
H01G9/06 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-550760(P2017-550760)
(86)(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公表番号】特表2018-518038(P2018-518038A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】DE2016200160
(87)【国際公開番号】WO2016155736
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】102015205578.7
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ボショヴ
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ ザエジェル
【審査官】
五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−82719(JP,A)
【文献】
特開2015−104146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
F16D 25/12
F16H 61/00
H01G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、該ハウジング(2)内に収容されたプリント回路板(3)とを備えた、自動車に使用されるアクチュエータ用の電子モジュール(1)であって、
前記プリント回路板(3)に接続され、前記ハウジング(2)に設けられた収容区分(5)内に配置された電子部品(4)が、少なくとも部分的に外側から減衰被覆体(6)によって取り囲まれており、該減衰被覆体(6)は、前記電子部品(4)と前記収容区分(5)との間の相対運動に対して減衰作用し、
前記減衰被覆体(6)はスリーブ状に形成され、互いに間隔を置いて配置された突出した複数の隆起部(7)を有しており、該隆起部(7)は、スリーブ部分と一体的に形成されていて、前記収容区分(5)に接触しており、
前記隆起部(7)は、前記減衰被覆体(6)が、前記隆起部(7)を幾何学的に互いに画定する窪み領域(8)で前記収容区分(5)に対して間隔を置いて配置され、空気抜きギャップが形成される程度に圧縮されて保持されていることを特徴とする、電子モジュール(1)。
【請求項2】
前記減衰被覆体(6)は、前記電子部品(4)と前記収容区分(5)とに接触していることを特徴とする、請求項1記載の電子モジュール(1)。
【請求項3】
前記減衰被覆体(6)は、エラストマ材料から製造されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電子モジュール(1)。
【請求項4】
前記電子部品(4)は、コンデンサ、例えば電解コンデンサであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電子モジュール(1)。
【請求項5】
前記減衰被覆体(6)は、一方の端領域(13)に底区分(15)を形成しており、該底区分(15)は、貫通した中心の空気抜き孔(16)を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電子モジュール(1)。
【請求項6】
前記減衰被覆体(6)は、(軸線方向で)前記底区分(15)にまで延在する複数の肉厚領域(17)を有していることを特徴とする、請求項5記載の電子モジュール(1)。
【請求項7】
前記減衰被覆体(6)は、少なくとも2つの分割区分(18,19)を有しており、該分割区分(18,19)のうち、第1の分割区分(18)が、第2の分割区分(19)よりも大きな内径を有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電子モジュール(1)。
【請求項8】
アクチュエータであって、該アクチュエータに設けられた駆動ユニットに電気的に接続された請求項1から7までの少なくとも1項記載の電子モジュール(1)を備えた、自動車のクラッチおよび/または変速機を操作するためのアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジング内に収容されたプリント回路板とを備えた、自動車、例えば乗用車、トラック、バスまたは農業用の商用車に使用されるアクチュエータ用の電子モジュール(制御モジュールとも呼ばれる)に関する。また、本発明は、アクチュエータであって、アクチュエータに設けられた(電動モータを有する)駆動ユニットに電気的に接続された前述したような電子モジュールを備えた、自動車のクラッチおよび/または変速機を操作するためのアクチュエータ(すなわち、クラッチアクチュエータおよび/または変速機アクチュエータ)にも関する。
【背景技術】
【0002】
原則的に、アクチュエータに設けられた駆動ユニットの運転データを検出しかつ/または駆動ユニットを制御するための電子モジュールがすでに公知である。国際公開第2011/050767号には、静液圧アクチュエータが開示されている。この静液圧アクチュエータは、ハウジングと、このハウジング内で軸線方向に移動可能な、圧力媒体が満たされた圧力室に圧力を加えるピストンとを有するマスタシリンダと、回転駆動を軸線方向運動に変換する遊星転動伝動装置と、スリーブ、伝動装置スピンドルおよびスリーブと伝動装置スピンドルとの間で転動する遊星転動体と、遊星転動伝動装置を駆動する電動モータとを備えている。この電動モータは、ハウジングに固く結合されたステータと、このステータに対して回転可能なロータとを備えている。圧力室は環状に形成されている。この圧力室の半径方向内側に遊星転動伝動装置が配置されている。前置電子装置のボードに、静液圧アクチュエータの運転データを検出するための少なくとも1つのセンサが配置されている。
【0003】
独国特許出願公開第102013215949号明細書には、電子ユニットとヒートシンクとから成る電子モジュールが内部に配置されたハウジングを有する電動モータ、好ましくは電気的に整流されるモータが開示されている。ハウジングはヒートシンクによって閉鎖されている。ステータで分岐された電気的なモータ相が、コネクタユニットに接続されている。ヒートシンクおよび/またはハウジングへの電子ユニットの機械的な結合および/またはコネクタユニットへのステータの電気的なモータ相と電子ユニットとの電気的な接続は、ねじ締結なしに実施されている。
【0004】
特に比較的中実の電気部品、例えば、電子モジュール内に組み付ける際に中実の部品に属する電解コンデンサの使用時には、この部品が、アクチュエータの運転中、自動車の特定の走行状態において励起されて振動してしまうことが判った。この場合、さらに、比較的中実の部品/電解コンデンサが、特に振動/震動の発生時、すなわち、周期的に繰り返される運動時に激しく動いて、電子モジュールにおける損傷または構成部材の損傷すら引き起こしてしまうことが判った。中実のコンデンサがハウジングに対して相対的に激しく動く/励振すると、特にコンデンサの内部の構造が損傷してしまう;また、ハウジングおよび/または構成部材に場合により存在する溶接箇所が損傷を受けてしまう。部品/コンデンサとプリント回路板(PCB("Printed Circuit Board")/印刷された回路とも呼ばれる)との間のろう付け箇所も損傷を受けてしまう。コンデンサとプリント回路板との接続部は、電子モジュールの振動頑強性に関して問題となる箇所を成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、自動車内での電子モジュールの使用を一層改善し、特に電子モジュールの内部の損傷が可能な限り回避されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このことは、本発明によれば、冒頭に記載した装置において、プリント回路板に(好ましくは電気的に)接続されていて、ハウジングに設けられた(好ましくはドーム状の)収容区分内に配置された電子部品が、少なくとも部分的に外側から減衰被覆体によって取り囲まれており、この減衰被覆体が、電子部品と収容区分との間の相対運動に対して減衰作用することによって解決される。
【0007】
このような減衰被覆体の配置によって、ハウジング/収容区分に対して相対的な電子部品の振動が大幅に低減される。これによって、プリント回路板への電子部品の特に持続的かつ頑強な取付けが実現されている。
【0008】
別の有利な実施の形態については従属請求項に請求してあり、以下で詳しく説明する。
【0009】
減衰被覆体が、エラストマ材料/エラストマ(すなわち、弾性プラスチック)から製造されている/成っていると有利である。これによって、減衰被覆体が、特に廉価に形成可能となる。
【0010】
電子部品が、コンデンサ、特に電解コンデンサであると、減衰被覆体が特に効果的に作用する。なぜならば、コンデンサ、特に電解コンデンサは、自動車用電子モジュールへの実際の適用において、しばしば励起されてハウジングに対して相対的に動く比較的中実の部品であるからである。
【0011】
これに関連して、コンデンサが、プリント回路板に取り付けられている、例えばろう付けされている/溶接されている場合でも、減衰被覆体は特に効果的に作用する。なぜならば、この場合、振動に対して特に敏感なこのような接続部が確実に支持されている/支えられているからである。
【0012】
減衰被覆体が、電子部品/電解コンデンサと収容区分とに(少なくともそれぞれ部分的に)接触していても有利である。これによって、特に簡単な支持が実現される。また、これによって、電子部品と収容区分との間の構成スペースも特に効率よく利用される。
【0013】
さらに、減衰被覆体が、スリーブ状に形成されていて、互いに間隔を置いて配置された(好ましくは電解コンデンサの半径方向に)突出した複数の隆起部を有しており、これらの隆起部が、好ましくは収容区分に接触していると、一層効果的な減衰が実現される。なぜならば、支持箇所が、構成要素の外側の周面または電子装置ハウジングの支持面に均一に分配されているからである。
【0014】
これに関連して、隆起部は、(電子モジュールの組み立てられた状態において、)減衰被覆体が、隆起部を幾何学的に互いに画定する窪み領域/結合領域で収容区分に対して間隔を置いて配置されて、(好ましくは周辺に向かって開いた)空気抜きギャップが形成される程度に圧縮されて保持されていても有利である。これによって、減衰被覆体が、好ましくは電子部品とプリント回路板とを含めて収容区分内に挿入される場合に、不本意なエアクッションまたは空気圧増加が発生することが回避される。これによって、収容区分への減衰被覆体の均一な当付けが保証される。
【0015】
さらに、減衰被覆体が、(好ましくは電子部品の軸線方向に延びる)スリットを有しており、このスリットが、さらに好適には減衰被覆体の(第2の)端領域から離れる方向に延びていると有利である。なぜならば、これによって、減衰被覆体を組付け時に電子部品に被せ嵌めるために、減衰被覆体をスリットの領域で特に力を加えずに拡張させることができるからである。
【0016】
さらに、減衰被覆体が、電子部品に接触する半径方向の内面に少なくとも1つの凹部を有しており、この凹部が、電子部品の凸部に対して相補的に形成されていると有利である。これによって、減衰被覆体が電子部品を特に密接した状態で取り囲み、減衰被覆体のための構成スペースが一層減少する。
【0017】
さらに、減衰被覆体が、(第1の)端領域に(好ましくは電子部品の半径方向に延在する)底区分を形成しており、この底区分が、貫通した中心の空気抜き孔を有していると、電子部品と減衰被覆体との間の中間室に不本意にエアクッションまたは空気圧増加を発生させることなく、減衰被覆体をその組付け時に電子部品に一層簡単に被せ嵌めることができる。結果として、減衰被覆体が電子部品に可能な限り均一に当て付けられる。
【0018】
さらに、減衰被覆体が、底区分を有する(第1の)端領域と反対の側の(第2の)端領域で押込み開口の形態で形成されており、この押込み開口内に電子部品が組付け状態で押し込まれていて、その外面で減衰被覆体の内周面に接触していると、減衰被覆体が、電子部品に特に簡単に被嵌め可能となる/外嵌可能となる。
【0019】
有利には、減衰被覆体が、少なくとも2つの分割区分も有しているかまたは形成しており、これらの分割区分のうち、第1の分割区分が、第2の分割区分よりも大きな内径を有している。これによって、減衰被覆体を、種々異なる形態で形成された電子部品の各幾何学形状に一層良好に適合させることができる。
【0020】
さらに、電子部品が、プリント回路板にろう付けされていると、運転中、電子部品とプリント回路板と間に振動負荷に対して特に頑強な接続が実現される。
【0021】
さらに、本発明には、アクチュエータであって、このアクチュエータに設けられた駆動ユニットに電気的に接続された、前述した複数の実施の形態のうちの少なくとも1つの実施の形態に記載の電子モジュールを備えた、自動車自体のクラッチおよび/または変速機を操作するためのアクチュエータも含まれる。これによって、アクチュエータも特に高性能となる。
【0022】
好ましくは、アクチュエータが、静液圧式のアクチュエータ/静液圧アクチュエータである。さらに好適には、制御モジュールとしての電子モジュールが、アクチュエータに設けられた駆動ユニットの電動モータに電気的に接続されている。この場合、プリント回路板が、電動モータのロータの回転位置を検出するために形成された/提供された少なくとも1つのロータ位置センサを有している。
【0023】
さらに好適には、アクチュエータが、液圧式のまたは機械式のクラッチアクチュエータとして形成されている。さらに、本明細書で説明している振動に対して頑強な電解コンデンサの組込み形態は、自動車分野におけるアクチュエータ技術に用いられる別の駆動モジュールに適用することができる。
【0024】
したがって、本発明は、言い換えると、電子部品、好適には電解コンデンサ用の突起付けされたエラストマカバー(減衰被覆体)に関する。このエラストマカバーと電解コンデンサとは、制御モジュール(電子モジュール)の一部であり、これによって、振動負荷に対する頑強性向上が実現される。制御モジュールは、特に自動車におけるアクチュエータ、好ましくは変速機アクチュエータおよび/またはクラッチアクチュエータのために設けられている。電子モジュールは、ドーム(収容区分)内またはハウジング/プラスチックハウジング内に電解コンデンサを備えたプリント回路板を有している。電解コンデンサは、本発明によれば、減衰被覆体(エラストマ被覆体とも呼ばれる)によって取り囲まれている。この減衰被覆体は、好適には、複数の突起(隆起部)と、これらの突起同士の間に位置する窪み(窪み領域)とを有している。こうして、突起だけがハウジングによって局所的に圧縮され、ろう付け箇所に加えられる負荷を減少させている。このとき、さらに、空気抜きが可能となる。したがって、減衰要素としてのエラストマ被覆体の組込みによって、制御モジュール内に組み込まれた電解コンデンサの振動時の頑強性を向上させることが目標となっている。
【0025】
本発明を、種々異なる実施の形態の説明にも関係する図面に基づき以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の有利な実施の形態に係る電子モジュールの等角図であり、電子モジュールが、電解コンデンサとして形成された電子部品を被覆する収容区分の領域で断面して図示してあり、プリント回路板に対して相対的な電解コンデンサの配置を認めることができる。
【
図2】
図1に示した電子モジュールの縦断面図であり、ハウジングとプリント回路板とが、電解コンデンサの領域で断面して図示してあり、本発明による減衰被覆体が内部に配置された、収容区分と電解コンデンサとの間の中間室が特に良好に認められる。
【
図3】プリント回路板と、電解コンデンサと、この電解コンデンサに被せ嵌められた減衰被覆体とから成る部分アッセンブリの等角図であり、複数の隆起部を備えた減衰被覆体の外周面を特に良好に認めることができる。
【
図4】
図1および
図2に示した電子モジュールおよび
図3に示した部分アッセンブリに使用されているような電解コンデンサの等角図であり、矢印により明らかなように、減衰被覆体が、電解コンデンサへの被嵌め直前でまだ電解コンデンサから分離して図示してある。
【
図5a】
図1〜
図4に示したような第1の実施の形態の減衰被覆体の等角図である。
【
図5b】
図5aに示した減衰被覆体の縦断面図であり、一方には、減衰被覆体に加工されたスリットを、また、他方には、減衰被覆体の底区分に設けられた空気抜き孔を特に良好に認めることができる。
【
図6a】別の有利な実施の形態による減衰被覆体の等角図であり、
図6aに示した減衰被覆体は、
図5aおよび
図5bに示した減衰被覆体に比べて、底区分にまで延在する複数の肉厚領域を有している。
【
図6b】
図6aに示した減衰被覆体を長手方向で断面した等角図である。
【
図7】さらに別の有利な実施の形態による減衰被覆体の等角図であり、この構成では、
図6aおよび
図6bに示した実施の形態に比べて、隆起部の個数が減少させられている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は概略的なものでしかなく、本発明の理解に役立つにすぎない。同一の要素には、同じ符号が付してある。また、それぞれ異なる実施の形態の種々異なる特徴は、互いに自由に組み合わせることもできる。
【0028】
まず、
図1には、本発明の第1の実施例/第1の実施の形態に係る電子モジュール1が特に明瞭に示してある。この電子モジュール1は、アクチュエータに使用するために役立つ。このアクチュエータは変速機・クラッチアクチュエータとして形成されていて、したがって、自動車のクラッチと変速機とを操作するために役立つ。代替的に、電子モジュール1は、変速機アクチュエータまたはクラッチアクチュエータとして形成されたアクチュエータにおける構成部材として役立つ。アクチュエータは静液圧アクチュエータの形態で形成されている。この静液圧アクチュエータは、国際公開第2011/050767号に記載されている静液圧アクチュエータのように形成されていて、同静液圧アクチュエータのように機能する。電子モジュール1は、アクチュエータに設けられた駆動ユニットの運転データを検出して、この駆動ユニットを制御するために役立つ。電子モジュール1は、このようなアクチュエータに使用する際、アクチュエータの、電動モータを有する駆動ユニットに電気的に接続されている。これによって、クラッチまたは変速機の少なくとも1つの調整部材の位置に影響を与える駆動ユニットを電子モジュール1によって制御することができる。
【0029】
電子モジュール1はハウジング2を有している。このハウジング2は、図示の構成では、複数の部分から形成されている。ハウジング2は、1つに、カバー20を有していて、もう1つに、収容体21を有している。この収容体21内には、ボードとも呼ばれているプリント回路板3だけでなく、電解コンデンサとして形成された電子部品4も収容されている。したがって、この電子部品4を以下で電解コンデンサ4とも呼ぶ。この電解コンデンサ4の領域では、収容体21/ハウジング2が、ほぼポット状の中空の収容区分5を備えて形成されている。したがって、ほぼピン状に延在する電解コンデンサ4が、組み付けられた状態で収容区分5内に押し込まれている。すなわち、収容区分5がその内室に電解コンデンサ4を収容していて、この電解コンデンサ4を外側から包囲している/取り囲んでいる。また、
図3に特に良好に認められるように、プリント回路板3は、ほぼ板平面内に延在するように形成されている。この板平面に対して垂直に電解コンデンサ4がその長手方向に延在して装着されている/着装されている/取り付けられている。したがって、電解コンデンサ4はその長手方向軸線27でプリント回路板3の延在平面に対してほぼ垂直に延在している。
【0030】
電解コンデンサ4は、
図3にも
図1および
図2にも認めることができるような組み付けられた状態でプリント回路板3にろう付けされていて、収容区分5によって(長手方向軸線27を基準として)半径方向外側から取り囲まれている。さらに、電解コンデンサ4はプリント回路板3に電気的に接続されている、すなわち、プリント回路板3に取り付けられた電気的な接続線路に接続されている。収容区分5に隣接して、収容体21はほぼ板状に/プレート状に形成されていて、プリント回路板3の延在平面に対してほぼ平行に延在している。
【0031】
本発明によれば、電解コンデンサ4と収容区分5との間に減衰被覆体6が設けられている。この減衰被覆体6は、図示の構成では、弾性プラスチックから成っているので、減衰被覆体6を以下でエラストマ被覆体6とも呼ぶ。このエラストマ被覆体6は、電解コンデンサ4に被せ嵌められた状態で
図3に特に良好に認めることができる。エラストマ被覆体6は、アクチュエータの運転中、例えば自動車の運転中、電解コンデンサ4と収容区分5/ハウジング2との間に周期的に生じる相対運動/振動を減衰するための減衰要素として役立つ。この目的のために、エラストマ被覆体6は電解コンデンサ4を外側から取り囲んでいて、この電解コンデンサ4の外面22、つまり、半径方向の外面を被覆している/取り囲んでいる。
【0032】
図5aおよび
図5bに特に良好に認めることができるように、エラストマ被覆体6はその長手方向で見て、主として、スリーブ状の/スリーブ形の2つの分割区分18,19に分割されている。両分割区分18,19は電解コンデンサ4を半径方向外側から取り囲んでいる/被覆している。第1の分割区分18は、この第1の分割区分18にエラストマ被覆体6の軸線方向で続く第2の分割区分19に対して外向きに、すなわち、半径方向外向きに段付けられている。エラストマ被覆体6に関する軸線方向および半径方向は、組み立てられた状態でのエラストマ被覆体6と電解コンデンサ4との同軸的な配置に基づき、長手方向軸線27を基準とした軸線方向および半径方向に相当している。
【0033】
第1の分割区分18は、第2の分割区分19よりも大きな内径を有している。また、第1の分割区分18は、第2の分割区分19よりも大きな外径も有している。第1および第2の分割区分18,19/エラストマ被覆体6の、内面とも略称されている半径方向の内周面10は、電解コンデンサ4の半径方向の外面22に直接接触する。
【0034】
第2の分割区分19は、軸線方向で第1の分割区分18と反対の側/端部において、エラストマ被覆体6の、底区分15と呼ばれる別の第3の分割区分に移行している。底区分15は別の両分割区分18,19と共にエラストマ被覆体6をポット状に形成している。したがって、底区分15は、エラストマ被覆体6の第1の端領域13に配置されている。エラストマ被覆体6の、第1の端領域13と反対の側の第2の端領域14は、第1の分割区分18の軸線方向の端部を形成している。第2の端領域14は、電解コンデンサ4に合わせて調整された押込み開口25を有していて、
図4によれば、エラストマ被覆体6が電解コンデンサ4の一方の端面から軸線方向で電解コンデンサ4に被嵌め可能となっている(矢印)。
【0035】
電解コンデンサ4へのエラストマ被覆体6の被嵌めをさらに容易にするために、このエラストマ被覆体6はその第2の端領域14からスリット付けされて形成されている。したがって、エラストマ被覆体6は、
図5aおよび
図5bに認めることができるように、エラストマ被覆体6の軸線方向に延びるスリット9を有している。このスリット9は、第2の端領域13から軸線方向でエラストマ被覆体6に加工されていて、完全に第1の分割区分18を半径方向で貫通しており、少なくとも部分的に第2の分割区分19を半径方向で貫通している。これによって、エラストマ被覆体6を電解コンデンサ4に特に力をほとんど消費することなく被せ嵌めることができる。
【0036】
さらに、
図1および
図2にも認めることができるように、エラストマ被覆体6は収容区分5にも接触している。この目的のために、エラストマ被覆体6はその半径方向の外周面23に、半径方向に延在する複数の隆起部7を有している。これらの隆起部7は突起とも呼ばれている。したがって、これらの突起状の隆起部7は、エラストマ被覆体6のそれぞれ異なる半径方向平面内に、軸線方向でも、複数の仮想周線に沿っても、分配されて配置されている。
【0037】
図1および
図2に示した組み付けられた状態では、隆起部7によって、ハウジング2内で収容区分5の内周面26/内面へのエラストマ被覆体6の外周面23の完全な、すなわち、全面にわたる当付けは生じず、主として、それぞれ隆起部7の領域での点状の当付けが生じる。したがって、エラストマ被覆体6の外周面23が、個別化されて、つまり、隆起部7の領域でのみ、収容区分5に接触している。
【0038】
エラストマ被覆体6は収容区分5内に圧入されていて/押し込まれていて/押入されていて、隆起部7が予荷重下で半径方向に押し潰されている/圧縮されている。これによって、運転中の振動の特に効果的な減衰が実現されている。例えば
図2にも特に良好に認められるように、収容区分5は軸線方向において理想的に円筒状ではなく、円錐状であり、軸線方向においてプリント回路板3から離れる方向で縮径されている。この目的のために、両分割区分18,19を設けることが特に有利である。なぜならば、これによって、隆起部7が、主として、エラストマ被覆体6の長手方向軸線に相当する電解コンデンサ4の長手方向軸線27を中心とした二種類の周線上に形成されるからである。
【0039】
個々の隆起部7は、幾何学的に見て、互いに間隔を置いて配置されている。すなわち、個々の隆起部7は、幾何学的に互いに移行し合っていない。したがって、各隆起部7の間には、それぞれ隣り合った隆起部7に対して、(窪み/窪み領域の意味での)いわゆる結合領域8が形成されている。この結合領域8は、電子モジュール1の組み立てられた状態で間隔を置いて、つまり、収容区分5の内周面26に対して半径方向で間隔を置いて配置されている。これによって、収容区分5と結合領域8との間に、組み立てられた状態で形成された一連の空気抜きギャップが得られる。この空気抜きギャップはエラストマ被覆体6の周辺に向かって開放されている。したがって、ハウジング2内または収容体21内へのプリント回路板3の/プリント回路板3と、電解コンデンサ4と、エラストマ被覆体6(
図3)とのアッセンブリの押込み時に、エラストマ被覆体6と収容区分5との間へのエアクッションまたは空気圧増加の発生が回避される。
【0040】
さらに、エラストマ被覆体6の底区分15の中心に空気抜き孔16が配置されている。したがって、電解コンデンサ4へのエラストマ被覆体6の被嵌め時にも、空気を逃がすことができる。これによっても、いわゆるエアクッション閉じ込め/空気圧増加が回避される。
【0041】
さらに、エラストマ被覆体6は、その内周面24に分配されて配置された複数の凹部11も有している。これらの凹部11も、長手方向軸線27を中心とした1つの仮想周線に沿って延びて分配されて配置されている。凹部11の各々は、
図4に特に良好に認めることができるような凸部12、例えば電解コンデンサ4の保持クランプ28に合わせて調整されている。これによって、凸部12が、エラストマ被覆体6を破壊することなく、エラストマ被覆体6内に同じく押込み可能となる。凹部11は、軸線方向で見て、第1の分割区分18に設けられている。
【0042】
電解コンデンサ4の外面22は、図示の構成では、アルミニウムから製造されたコンデンサ区分の一部である。ハウジング2はプラスチックから製造されている。すなわち、収容体21はプラスチック材料から成っている。カバー20は、熱管理状況に応じて、アルミニウムから製造されていてもよいし/成っていてもよいし、プラスチックから製造されていてもよい/成っていてもよい(この実際の用途事例では、カバー20はアルミニウムから成っている)。エラストマ被覆体6は、振動減衰性の適切な弾性プラスチック材料から製造されている/成っている。エラストマ被覆体6は射出成形技術で製造されている。周方向で際立った隆起部7を備えたエラストマ被覆体6の形状/外形は、このような(射出成形)方法において極めて良好に強制離型することができる。
【0043】
図6aおよび
図6bには、エラストマ被覆体6の別の有利な実施の形態が示してある。この別の実施の形態におけるエラストマ被覆体6は、
図1および
図2に示した本発明に係る電子モジュール1に使用されている。
図6aおよび
図6bに示したエラストマ被覆体6は、
図5aおよび
図5bのエラストマ被覆体6とほぼ同様に形成されていて、構成されている。顕著な違いとして、エラストマ被覆体6に複数の肉厚領域17が配置されている。各肉厚領域17は隆起部7と一緒に第2の分割区分19に成形されている。ただし、肉厚領域17は、エラストマ被覆体6の軸線方向で隆起部7よりも長く延在している。また、肉厚領域17は、軸線方向で底区分15にまで延在している。肉厚領域17は、互いに間隔を置いて配置されていて、それぞれ隣り合った隆起部7から間隔を置いて配置されている。各肉厚領域17に設けられた隆起部7は、各肉厚領域17の基礎区分28よりも半径方向外向きに幾分高く延在している。
【0044】
図7には、エラストマ被覆体6に関するさらに別の有利な実施の形態が示してある。このさらに別の実施の形態におけるエラストマ被覆体6は、
図1および
図2に示した本発明に係る電子モジュール1に使用されている。ただし、隆起部7の個数が、
図6aおよび
図6bに比べて減少している。これによって、隆起部7の個数は、
図5a〜
図6bに示した個数に確定されたものではなく、より少ない隆起部7またはより多くの隆起部7がエラストマ被覆体6に形成されていてよいことが明らかとなる。また、肉厚領域17も異なる個数で形成されていてよい。これによって、構成部材の組付け要求および設計ガイドラインに応じて、組付け力の変更を相応に実現することができる。
【0045】
したがって、言い換えると、電解コンデンサ4(「Elko」とも略称される)は、電子モジュール1のPCB(プリント回路板3)にろう接されている/ろう付けされている。このPCB3はプラスチックハウジング(ハウジング2)内に組み付けられている。特に収容体21はプラスチックから製造されている。電解コンデンサ4は、電子モジュール1のプラスチックハウジング2に設けられたドーム領域(収容区分5)内に導入される。エラストマ被覆体6は電解コンデンサ4に組み付けられていて、したがって、この電解コンデンサ4の外壁(外面22)とプラスチックハウジング2の円錐形の内面(内周面26)との間で半径方向に圧縮される。特にエラストマ被覆体6は突起状張出し部(隆起部7)の領域で圧縮される。したがって、電解コンデンサ4は同時に、1つには、極めて安定した状態に保持され、もう1つには、エラストマ被覆体6のエラストマ材料の減衰効果によってプラスチック壁(ハウジング2)の振動からある程度機械的に絶縁される。電解コンデンサ4に対するエラストマ被覆体6の減衰機能は、適切な材料選択によって変化させることができる。この場合、エラストマのそれぞれ異なるショア硬さが考慮される。
【0046】
エラストマ被覆体6の表面に交互に配置された複数の突起(隆起部7)は、プラスチックハウジング2の内面26に対する複数の小さな接触面を形成している。これらの個別化された小さな接触面によって、特に以下の利点が得られる。すなわち、部品装着済みのPCB3を電子モジュール1のプラスチックハウジング2内に組み付ける際に摩擦力が生じる接触面が全体的に減少し、ひいては、PCB3を組み付けるために消費しなければならない組付け力がより小さくなる。これによって、電解コンデンサ4のろう付け箇所と、電解コンデンサ4の直ぐ周辺に設けられた電子的なコンポーネントとにかけられる予負荷/応力がより低くなる。一般に、これによって、製品サイクルにわたって電解コンデンサろう付け箇所のより高い頑強性が達成される。PCB3をプラスチックハウジング2内に組み付ける際の空気抜きは、突起7の交互のラビリンスジオメトリによって達成される。電解コンデンサ4は複数の点で支持されると同時に、電子モジュール1への振動作用時に減衰される。型に設けられた、プロセスに起因した離型斜面によって、既存の構成スペースに関連して、電解コンデンサ4のポット領域(底区分5の領域)におけるエラストマの材料厚さを特に小さくすることができる。エラストマ部材6の製造可能性を改善するために、この部材のポット領域15に全周にわたって局所的な材料肉厚部(肉厚領域17)を付設することができる。この全周にわたる局所的な肉厚部17によって、射出プロセス中の材料流れが容易になる。製造可能性改善に加えて、局所的な材料肉厚部17によって、部材のより良好な機械的な安定性も達成される。ハウジング壁2に対するエラストマ被覆体6による電解コンデンサ4の支持によって、この電解コンデンサ4のろう付け箇所には、公差のもと、常にある程度負荷がかけられる。ろう付け箇所にかけられる負荷は、材料の弾性(材料の硬さ/ショア硬さ、充填度、材料選択など)と、外面23の全周にわたって設けられる突起7の個数との適切な組合せによって減少させることができる。これと同時に、エラストマ部材によって、電解コンデンサ4に対する良好な減衰機能および振動の良好な減衰機能を保証することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電子モジュール
2 ハウジング
3 プリント回路板
4 電子部品/電解コンデンサ
5 収容区分
6 減衰被覆体/エラストマ被覆体
7 隆起部
8 結合領域
9 スリット
10 内周面
11 凹部
12 凸部
13 第1の端領域
14 第2の端領域
15 底区分
16 空気抜き孔
17 肉厚領域
18 第1の分割区分
19 第2の分割区分
20 カバー
21 収容体
22 外面
23 外周面
25 押込み開口
26 内周面
27 長手方向軸線
28 保持クランプ
29 基礎区分