(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
質量%で、C:0.005乃至0.1%、Si:0.01乃至2.0%、Mn:0.01乃至1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:10乃至30%、Ti:0.001乃至0.10%、Al:0.001乃至0.15%、N:0.003乃至0.03%、Nb:0.3乃至0.6%、Mo:0.01乃至2.5%、残部Fe及び不可避な不純物からなり、
表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物が2.5×104ea/mm2以下で分布し、
前記表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN・NbC複合析出物が2.0×104ea/mm2以下で分布し、
前記表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するNbC析出物が8.5×105ea/mm2以上で分布することを特徴とするカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。
質量%で、C:0.005乃至0.1%、Si:0.01乃至2.0%、Mn:0.01乃至1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:10乃至30%、Ti:0.001乃至0.10%、Al:0.001乃至0.15%、N:0.003乃至0.03%、Nb:0.3乃至0.6%、Mo:0.01乃至2.5%、残部Fe及び不可避な不純物からなる溶鋼を利用してスラブの連続鋳造時に、前記スラブの表面の温度が1100℃に至るまで6℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する段階と、
復熱して、1100乃至1200℃の温度で5乃至15分間維持する段階と、
400℃に到達するまで水冷する段階と、
を含み、
表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物が2.5×104ea/mm2以下で分布し、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN・NbC複合析出物が2.0×104ea/mm2以下で分布し、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するNbC析出物が8.5×105ea/mm2以上で分布することを特徴とするカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車分野においては、環境問題に対する意識の高まりから、排気ガスの規制が更に強化されると同時に、炭酸ガスの排出抑制のための対処が進められている。また、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料等の燃料面からの対処に加えて、軽量化や排気熱を熱回収する熱交換器を設置して燃費の向上を図るか、又はEGR(Exhaust Gas Recirculation)、DPF(Diesel Particulate Filter)、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システム等のような排気ガス処理装置を設置する等の対処が実施されている。
【0003】
ここで、EGRシステムは、エンジンの排気ガスを冷却させた後、吸気系側に再循環させて、燃焼温度を下げ、燃料混合器の熱容量の増大及び燃焼室の酸素量の減少を通じて有害ガスである窒素酸化物(NOx)を低下させることを目的としている。このEGRシステムは、EGRクーラーを必須部品として装着することによって、排気ガス及び冷却水を相互熱交換させて、排気ガスの過度な温度上昇を防止する。ここで、EGRクーラーは、排気ガスをエンジン冷却水や空気により冷却する装置であって、その熱交換部分には、高い熱効率が要求され、熱伝導性が良好であることが要求される。
【0004】
また、一般的に、EGRクーラーは、ディーゼルエンジン用に設置されるものであるが、最近、燃費の向上と窒素酸化物の低減とを両立させるために、ガソリンエンジンへの適用も検討されている。
【0005】
従来から、EGRクーラーには、一般的には、STS304、STS316等のようなオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。これに比べて、フェライト系ステンレス鋼材は、高価な合金元素の添加が少ないながらも耐食性に優れ、オーステナイト系ステンレス鋼材に比べて価格競争力が高い鋼材であるという点から、最近は、フェライト系ステンレス鋼材を使用しようとする傾向にある。
【0006】
フェライト系ステンレス系鋼材は、EGRクーラーなど排気系熱交換器の用途に使用されているが、長時間排気ガスに露出された時にカーボンスラッジの吸着に起因して熱効率が落ちるので、熱交換器の機能が劣化するという問題点を有している。
【0007】
このために、カーボンスラッジの吸着を抑制して熱効率に優れたフェライト系ステンレス素材を開発する研究が積極的に進められている。これを解決するために、表層部の析出物の個数及び各析出物の比率を調節することによって、フェライト系ステンレス鋼材のカーボンスラッジの吸着を抑制しようとする試みが継続されてきたが、現在まで有効な研究成果は全くなかったという状況である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼によれば、質量%で、C:0.003〜0.1%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:10〜30%、Ti:0.001〜0.10%、Al:0.001〜0.15%、N:0.003〜0.03%、Nb:0.3〜0.6%、Mo:0.01〜2.5%、残部Fe及び不可避な不純物をからなり、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物が2.5×10
4ea/mm
2以下で分布する。
【0023】
以下では、本発明の実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明の思想を十分に伝達するために提示するものである。本発明は、ここで提示した実施例のみに限定されず、他の形態に具体化されることもできる。図面は、本発明を明確にするために説明と関係ない部分の図示を省略し、理解を助けるために、構成要素のサイズを多少誇張して表現することができる。
【0024】
図1は、EGRクーラーの構成を説明するための図である。
【0025】
図1に示すように、EGRクーラーは、円筒形のケース1と、ケース1の一側に形成された冷却水入口及び出口と、ケース1の長さ方向に沿って形成され、排気ガスが通過し、冷却水により排気ガスの温度を低下させる複数の冷却チューブ2と、を含む。すなわち、排気ガスの入口側3から流入した排気ガスは、冷却チューブ2を通過しながら、冷却水により適正な温度に調節されて、出口側4を通過する。
【0026】
本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼材が排気系熱交換器用に使用されるとき、カーボンスラッジの吸着を抑制するための多様な検討を行った結果、以下の知見を得ることができた。
【0027】
一般的に、フェライト系ステンレス鋼には、耐食性の向上のために微量のTiが添加され、これによりTi添加フェライト系ステンレス鋼には、表層部のフェライト基地内に不可避に多量のTiN析出物が析出する。このようなTiN析出物は触媒の性質を有していて、炭化水素を含有している排気ガスが冷却チューブ2を通過するとき、炭化水素を吸着するサイト(site)になり、吸着された炭化水素は、互いに重合反応を起こし、カーボンスラッジ化して、熱交換器の熱効率を劣化させる原因となる。
【0028】
それだけでなく、更なる耐食性の向上のために、フェライト系ステンレス鋼に微量のNbを添加するようになり、これにより、Nb添加フェライト系ステンレス鋼の表層部には、TiN析出物を核としてTiN・NbC複合析出物が形成され、これが、やはり触媒の性質を有しているので、炭化水素を吸着するサイトになり、吸着した炭化水素は、互いに重合反応を起こしてカーボンスラッジ化し、熱交換器の熱効率を劣化させる原因となる。
【0029】
一方、フェライト系ステンレス鋼に添加されたNb成分は、表層部のフェライト基地にNbC析出物として独立して生成され得て、このようなNbC独立析出物の場合には、触媒の性質がないため排気ガスの炭化水素の吸着とは全く関連がなく、結局、カーボンスラッジの排気系熱交換器への吸着を抑制することができる。
【0030】
従って、Ti、Nbが微量以上に添加されたフェライト系ステンレス鋼材を排気系熱交換器に使用する場合は、カーボンスラッジの吸着を抑制するための手段として、TiN析出物、及びTiNを核とするTiN・NbC複合析出物の生成を抑制し、NbC独立析出物の個数を最大限に増大させることによって、カーボンスラッジの吸着を低減することができる。
【0031】
以下、本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼の成分系及び表層部の析出物について詳細に説明することとする。
【0032】
本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.003〜0.1%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:10〜30%、Ti:0.001〜0.10%、Al:0.002〜0.15%、N:0.003〜0.03%、Nb:0.3〜0.6%、Mo:0.01〜2.5%、残部Fe及び不可避な不純物からなる。
【0034】
炭素(C)は、鋼材の強度に大きく影響を及ぼす元素であって、その含量が過剰である場合には、鋼材の強度が過度に上昇して軟性が低下するので、0.1%以下に限定する。但し、その含量が過度に低い場合は、強度が過度に低下するので、その下限を0.005%に限定することができる。
【0036】
ケイ素(Si)は、製鋼時に溶鋼の脱酸とフェライト安定化のために添加される元素であって、本発明では、0.01%以上添加する。但し、その含量が過剰である場合には、材質の硬化を起こして、鋼の軟性が低下するので、2.0%以下に限定する。
【0038】
マンガン(Mn)は、耐食性の改善に有効な元素であって、本発明では、0.01%以上添加し、より好ましくは、0.5%以上添加する。但し、その含量が過剰である場合には、溶接時にMn系フューム(fume)の発生が急増して溶接性が低下し、過度なMnS析出物の形成によって鋼の軟性が低下するので、1.5%以下に限定し、より好ましくは、1.0%以下に限定する。
【0040】
リン(P)は、鋼中に不可避に含有される不純物であって、酸洗時に粒界腐食を起こしたり、熱間加工性を阻害したりする主要原因となる元素であるから、その含量を可能な限り低く制御することが好ましい。本発明では、リンの含量の上限を0.05%に管理する。
【0042】
硫黄(S)は、鋼中に不可避に含まれる不純物であって、結晶粒界に偏析して、熱間加工性を阻害する主要原因となる元素であるから、その含量を可能な限り低く制御することが好ましい。本発明では、硫黄の含量の上限を0.005%に管理する。
【0044】
クロム(Cr)は、鋼の耐食性の向上に効果的な元素であって、本発明では、10%以上添加する。但し、その含量が過剰である場合、製造費用が急増するだけでなく、粒界腐食が起きる問題があるので、30%以下に限定する。
【0046】
チタン(Ti)は、炭素及び窒素を固定して鋼中固溶炭素及び固溶窒素の量を低減し、鋼の耐食性の向上に効果的であるが、表層部に形成されるTiN析出物は、触媒作用による排気ガスの炭化水素の吸着及びひいてはカーボンスラッジの吸着において主要サイト(site)として作用する。従って、Tiの含量は、0.1%以下に制限し、より好ましくは0.05%以下に制限しなければならない。但し、溶鋼中のTi成分は不可避な不純物として存在し、これを0%で完全に除去するには、製造費用が上昇するので、0.001%以上は、許容する。
【0048】
アルミニウム(Al)は、強力な脱酸剤であって、溶鋼中酸素の含量を低減する役割を有し、本発明では、0.001%以上添加する。但し、その含量が過剰である場合には、非金属介在物の増加に起因して冷延ストリップのスリーブ欠陥が発生すると同時に、溶接性を劣化させるので、0.15%以下に限定し、より好ましくは0.1%に限定する。
【0050】
窒素(N)は、熱間圧延時にオーステナイトを析出させて再結晶を促進させる役割をする元素であって、本発明では、0.003%以上添加する。但し、その含量が過剰である場合は、鋼の軟性が低下するので、0.03%以下に限定する。
【0052】
ニオブ(Nb)は、固溶Cと結合してNbCを析出して、固溶Cの含量を低減して耐食性を増大する。また、表層部のNbCは、排気ガスのうち炭化水素と相互作用がないため、熱交換器内カーボンスラッジの吸着を抑制する役割をする。従って、本発明では、0.3%以上添加することが好ましい。但し、その含量が過剰である場合、再結晶を抑制して成形性を劣化させるため、0.6%以下に含量を制限することが好ましい。
【0054】
モリブデン(Mo)は、フェライトの耐食性を増大すると同時に、高温強度を向上させる役割をする。従って、0.01%以上添加することが好ましい。但し、その含量が過剰である場合は、金属間(Intermetallic)析出物の生成によって脆性が発生する。従って、含量を2.5%以下に制限することが好ましい。
【0055】
本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼は、Cu:0.01〜0.15%を更に含むことができる。
【0057】
銅(Cu)は、排気系凝縮水の環境で耐食性を増大させる効果がある。従って、0.01%以上添加することが好ましい。但し、その含量が過剰である場合は、軟性を低下させて成形品質を劣化させる。従って、0.15%以下に含量を制限することが好ましい。
【0058】
図2は、本発明の一実施例による厚さ0.4mmの冷延焼鈍板の微細組織を、電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真である。
【0059】
図2に示すように、厚さ0.4mmの素材の表層部を観察した電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)写真でTiN析出物、TiN・NbC複合析出物、NbC析出物を視覚的に確認することができる。
【0060】
図2に示すように、本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼は、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物が2.5×10
4ea/mm
2以下で分布する。好ましくは、TiN析出物が2.3×10
4ea/mm
2以下で分布する。
【0061】
TiN析出物は、上述したように、触媒作用による排気ガスの炭化水素の吸着、及びひいてはカーボンスラッジの吸着における重要サイトとして作用するようになる。従って、このようなTiN析出物の分布を制御する必要がある。
【0062】
表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物の分布が2.5×10
4ea/mm
2を超える場合は、カーボンスラッジの吸着量を、従来のフェライト系ステンレス鋼に比べて50%以上減少させる効果を得ることができない。
【0063】
また、本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼は、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物、TiN・NbC複合析出物及びNbC析出物が分布し、析出物は、下記式(1)を満たすことができる。
【0064】
{Z/(X+Y)}≧20 −−−−−−式(1)
【0065】
ここで、Xは、TiN析出物の単位面積当たりの個数(ea/mm
2)であり、Yは、TiN・NbC複合析出物の単位面積当たりの個数(ea/mm
2)であり、Zは、NbC析出物の単位面積当たりの個数(ea/mm
2)である。
【0066】
Nb添加フェライト系ステンレス鋼は、TiN析出物を核として表層部にTiN・NbC複合析出物が形成され、この複合析出物はやはり触媒の性質を有しているので、炭化水素を吸着するサイトになり得る。従って、TiN析出物だけでなく、TiN・NbC複合析出物の分布をも制御する必要がある。
【0067】
TiN析出物、TiN・NbC複合析出物、及びNbC析出物の分布に関連した式(1)を用いて、各析出物の分布を制御して、カーボンスラッジの吸着を低減させることができる。式(1)による値が20未満である場合は、NbC析出物よりTiN析出物及びTiN・NbC複合析出物の分布量が相対的に多く、炭化水素が吸着できるサイトが多いものであって、既存のフェライト系ステンレス鋼と比較してカーボンスラッジの吸着量を十分に低減させることができない。
【0068】
本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼は、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN・NbC複合析出物の分布が2.0×10
4ea/mm
2以下で分布する。
【0069】
表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するTiN・NbC複合析出物の分布が2.0×10
4ea/mm
2以上である場合には、カーボンスラッジの吸着量を従来のフェライト系ステンレス鋼に比べて50%以上減少させる効果を得ることができない。
【0070】
本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼は、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するNbC析出物の分布が8.5×10
5ea/mm
2以上で分布する。
【0071】
また、表層部のフェライト基地内に0.1μm以上のサイズを有するNbC析出物の分布が8.5×10
5ea/mm
2未満である場合は、カーボンスラッジの吸着量を従来のフェライト系ステンレス鋼に比べて50%以上減少させる効果を得ることができない。
【0072】
それだけでなく、TiN析出物、TiN・NbC複合析出物、及びNbC析出物の分布及びサイズは、後述するフェライト系ステンレス鋼スラブの連続鋳造時に冷却条件を制御することによって得ることができ、従来の冷却条件に従う場合は、これを得ることができない。
【0073】
前記のフェライト系ステンレス鋼を製造するための本発明の一実施例による、カーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼の製造方法は、質量%で、C:0.003〜0.1%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:10〜30%、Ti:0.001〜0.10%、Al:0.001〜0.15%、N:0.003〜0.03%、Nb:0.3〜0.6%、Mo:0.01〜2.5%、残部Fe及び不可避な不純物からなる溶鋼を利用してスラブの連続鋳造時に、スラブの表面の温度が1100℃に到達するまで6℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する段階と、復熱後に1100〜1200℃の温度で5〜15分間維持する段階と、400℃に到達するまで水冷する段階と、を含む。
【0074】
フェライト系ステンレス鋼の成分の含量及び役割は、上述したものと同一であるので、重複説明は省略することとする。
【0075】
すなわち、前記成分系を有する溶鋼を利用して連続鋳造を通じてスラブを製造し、スラブを熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、焼鈍などの一般的なフェライト系ステンレス鋼の製造工程により最終製品を製造することができる。
【0076】
ここで、スラブの連続鋳造時に冷却パターンを制御することができ、このような冷却パターンの制御を通じてTiN析出物、TiN・NbC複合析出物、及びNbC析出物の分布及びサイズを制御することができる。
【0077】
図3は、本発明の一実施例によるフェライト系ステンレス鋼の連続鋳造時に冷却パターンを説明するための図である。
【0078】
図3に示すように、具体的には、スラブの連続鋳造時に、スラブの表面の温度が1100℃に到達するまで6℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する段階を経由するが、これは、TiN析出物の析出ノーズ(nose)の温度が約1400℃であって、スラブの凝固開始後にスラブの表面温度を基準として1530℃から1100℃に至るまで速い速度で冷却する強冷段階を経由して、約1400℃の温度区間を最大限回避することによって、TiNの析出を最小限にすることができる。
【0079】
例えば、スラブの表面温度を1530℃から90秒以内に1100℃まで冷却することができ、好ましくは、80秒以内に冷却することができる。
【0080】
その後、冷却されたスラブを復熱して1100〜1200℃の温度で5〜15分間維持する段階を経由するが、これは、NbC析出物の析出ノーズ(nose)の温度が約1150℃であるから、約1150℃の温度区間での復熱を通じてスラブの表面にNbC単独析出物の析出を最大化することができる。
【0081】
復熱したスラブを400℃に到達するまで水冷(water quenching)する段階を経由するが、速い冷却を通じてラーベス(laves)相、シグマ(sigma)相等のその他析出物の析出を抑制するためである。
【0082】
従って、フェライト系ステンレス鋼の連続鋳造時に、スラブの表面温度を制御する冷却パターンを用いて、TiN析出物、TiN・NbC複合析出物、及びNbC析出物の分布及びサイズ、そしてこれらの分布の相関関係を制御することができる。
【0083】
以下、本発明の一実施例によるカーボンスラッジの吸着が低減された排気系熱交換器用フェライト系ステンレス鋼を、実施例を通じて詳細に説明する。
【0084】
[実施例]
下記表1の組成を有する溶鋼を用意し、連続鋳造によってスラブを製造した。
【0086】
この際、スラブの連続鋳造時に、スラブ冷却パターンを
図3によって実施した。
すなわち、本発明の一実施例による冷却パターンを用いた発明鋼及び比較鋼によるスラブの製造時に、実施例1、2及び比較例4は、それぞれ、発明鋼1、2及び比較鋼1のスラブの表面温度が1530℃から1100℃に至るまで6℃/秒の速度で強冷し、以後、1150℃の温度で10分間復熱し、水冷(water quenching)により400℃まで急冷した。
【0087】
残りの比較例1〜3の場合、従来の冷却パターンを用いてスラブを製造した。
【0088】
製造されたスラブを熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延及び冷延板焼鈍を用いて厚さ0.4mmの冷延焼鈍板を製造した。
【0089】
以後、冷延焼鈍板の表層部について透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)で写真を撮影し、イメージアナライザー(Image Analyzer)を用いて粒径0.1μm以上のTiN析出物、TiN・NbC複合析出物及びNbC析出物の個数及び個数比Pを測定し、下記表2に示した。
【0091】
表2に示すように、発明鋼1、2の場合、TiN析出物は、4.7×10
4ea/mm
2以下であり、TiN・NbC複合析出物は、2.1×10
4ea/mm
2以下であって、比較鋼1に比べて全体的に少なく分布することが分かる。これは、比較鋼1の場合、C及びTiの含量が本発明の成分系を外れるものであって、TiN析出物は、5.5×10
4ea/mm
2以上であり、TiN・NbC複合析出物は、2.4×10
4ea/mm
2以上で分布していることが分かる。
【0092】
本発明の実施例による成分系を満たすとしても、スラブの連続鋳造時に、冷却パターンが本発明の実施例を外れて従来の冷却パターンで行う場合、本発明において目的とする析出物の分布を満たし難い。
【0093】
すなわち、実施例1と比較例1とは、それぞれ、同じ発明鋼1を
図3の冷却パターンを用いてスラブを製造し、以後、冷延焼鈍板を製造したものである。
【0094】
実施例1及び比較例1に示すように、同じ成分系の発明鋼1を連続鋳造時に、異なる冷却パターンによってスラブを製造した場合、最終冷延材の表面での析出物が異なっていることが分かる。すなわち、本発明の冷却パターンによってスラブを製造した場合である実施例1において、TiN析出物、TiN・NbC複合析出物及びNbC析出物の相関関係に関する式(1)の値が、20以上であることが分かる。
【0095】
また、実施例2と比較例2とは、それぞれ、同じ発明鋼2を
図3の冷却パターンを用いてスラブを製造し、以後、冷延焼鈍板を製造したものである。これも、実施例1及び比較例1の関係と同様に、本発明の冷却パターンによってスラブを製造した場合である実施例2において、TiN析出物、TiN・NbC複合析出物及びNbC析出物の相関関係に関する式(1)の値が、20以上であることが分かる。
【0096】
また、冷延焼鈍板を厚さ0.4mmだけでなく、厚さ1.2mmで製造して、これを利用して
図1の排気ガス熱交換器シミュレーション装置を製作し、96時間の間同じ流速のガソリン排気ガスを流した後、熱交換器シミュレーション装置の重さの変化を測定して、カーボンスラッジの吸着量を定量化し、下記表3に示した。
【0098】
表2及び表3に示すように、本発明の実施例による成分系及びスラブ冷却パターンによって製造されたフェライト系ステンレス鋼の場合、0.1μm以上のサイズを有するTiN析出物が2.5×10
4ea/mm
2以下で分布し、式(1)による値が20以上を満たして、排気ガス熱交換器シミュレーション装置を利用した実験でカーボンスラッジの吸着量が同一鋼種に対する比較例と比較して50%以上減少したことが分かる。
【0099】
これとは異なり、比較例3及び4の場合、本発明の成分系を外れて、本発明の冷却パターンによって製造しても、析出物を制御するのが難しく、カーボンスラッジの吸着量を十分に低減しにくいことが分かる。
【0100】
以上のように、本発明の例示的な実施例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、下記に記載する特許請求範囲の概念と範囲を逸脱しない範囲内で多様な変更及び変形が可能であることを理解することができる。