(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ゼオライト結晶の合成(又は本明細書の残りの部分ではより簡単に「ゼオライトの合成」としている)は、一般に蒸気の注入及び/又は加熱ジャケットにより合成ゲル及び/又は反応媒体を加熱することで、大型の撹拌「バッチ」反応装置において、工業的に従来実施されている。合成ゲルの調製は、アルミン酸ナトリウム溶液とケイ酸ナトリウム溶液を混合することからなり、この混合は、結晶化反応装置の上流の装置で、又は結晶化反応装置で直接、実施することができる。
【0003】
バッチモードでのゼオライトの従来の結晶化方法を改善するために、連続合成方法の開発に関する研究が発表されてきた。これらの研究は、バッチ方法に関連する欠点を排除するか、少なくとも軽減することを目的としており、特に合成に必要な機器の大きさを縮小し、結果としてエネルギー消費を削減し、生成の質の一貫性を改善することを目的としている。
【0004】
一部の研究で、ゼオライトを合成するための「連続した」方法について説明している。これは、次の3つのカテゴリに分類できる:
1)合成媒体を最初に従来のバッチ反応装置で調製し、次にこのゲルタンクで結晶化反応装置に連続して供給する。この場合、方法の一部がバッチ反応装置で実施されるため、「半連続」方法と呼ばれる(例えば、Jingxi Ju et al., “Continuous synthesis of zeolite NaA in a microchannel reactor”, Chemical Engineering Journal, 116, (2006), 115−121; Shumovskii et al., “Continuous process for the production of zeolite in pulsation apparatus”, Chemical and Petroleum Engineering, 31 (5−6), (1995), 253−256; Zhendong Liu et al., “Ultrafast Continuous−flow synthesis of crystalline microporous AlPO4−5”, Chem.Mater., 2−7, (2014); US 4848509、あるいはUS 6773694を参照);
2)合成媒体は、せん断ミキサーを使用して連続して調製され、次いで、従来の方法でバッチ反応装置にて結晶化される(例えば、文献EP 0 149 929及びBE 869156を参照);
3)合成媒体は連続して調製され、結晶化を実行するように反応装置に連続して供給される。
【0005】
したがって、合成の少なくとも一部はバッチモードで実施されるため、最初の2つのカテゴリは厳密には「連続」方法と言えない。
【0006】
第3のカテゴリの研究の中で、連続合成条件は必ずしも非常に正確に記述されているわけではなく、再生産することは不可能ではないにしても困難であるものとなっている。特に、方法を実行するための正確な条件では、機器の詰まりのリスクを効果的に回避できるかどうか、どのように回避できるかを知ることはできない。
【0007】
最近、PNAS, 113 (50), 13 December 2016, 14267−14271に見られる“Continuous flow synthesis of ZSM−5 zeolite on the order of seconds”におけるZhendong Liu et al.の研究が、ゼオライトZSM−5(MFIタイプ)の調製中の沈殿と閉塞の問題を最小限に抑えるための空気振動器を提唱している。
【0008】
しかし、連続したゼオライトの合成に関する先行技術の教示が依然として多くの問題を提起しているという事実はそのままである。具体的には、連続方法の制約の1つは、例えば結晶化の時間に関連している。ゼオライトLTAの合成に関して今日実施されている多くの研究は、非常に高い温度で加圧水を使用して、ZSM−5の結晶化部分の結晶化時間が100℃で数時間、又は数秒のみであることを示している。前掲のZhendong Liu et al.を参照されたい。
【0009】
したがって、固体を含む連続合成方法の実施におけるウォッチポイント(ゼオライトの合成の場合のように)は、一般にほとんどの場合管状反応装置である反応装置の詰まりのリスクであり、方法のドリフトと高いメンテナンスのコストを伴う可能性のある固体の堆積によるものであることが知られている。
【0010】
しかし、先行技術で開示されているように、バッチ方法と比較して、ゼオライトを合成するための連続方法の実施により、エネルギー消費を節約でき、より簡素なユニットを構築し、したがってより安い投資で、特に製造パラメータの制御がより簡単なため、より均一な質の結晶を製造できる。
【0011】
しかし、ゼオライトの合成で現在まで連続方法が特に発展してこなかったことが観察されるにすぎない。これはおそらく特に、反応媒体に固体(最初から合成ゲルに存在する非晶質固体、又は結晶化後の合成終了時の結晶性固体のいずれか)が存在するため詰まりのリスクがあること(上で説明したように)、及び結晶化の時間と形成された結晶の質とのバランスをとることが困難であることに起因する。約100ナノメートルを超える結晶のサイズが所望される場合、これらの困難が増幅するリスクがある。
【0012】
その結果、前述の欠点を除去できる、ゼオライトを連続して合成する方法の必要性が残っている。
【0013】
したがって、本発明は、ゼオライト合成のための連続方法に関し、該方法は完全に連続して実施され、すなわち、ゲルが連続して調製され、次いで一時的なバッチモードの相なしで連続して結晶化される。
【0014】
実際、驚くべきことに、特定のパラメータを適用することにより、システムの詰まりのいかなるリスクをも低減、又は排除することも可能になり、これにより、工業的な方法で、つまり増え続ける市場のニーズを満たせるように大規模に、ゼオライトの連続した調製が可能になることが見いだされた。本発明の以下の説明に照らして、さらなる他の利点が明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
しかし、本発明の方法では、機械式又は振動式の単一タイプの撹拌システムが好ましい。より好ましくは、本発明の方法は、機械式又は振動式の単一の撹拌システムのみを含む。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、単一の機械的撹拌システムを含む。別の好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、振動運動によって生成される単一の撹拌システムを含む。
【0030】
反応媒体の密度と粘度は、反応装置の入口で組成物について測定された密度と粘度に対応する。
【0031】
ゼオライト結晶の形成、具体的には急速な形成、より具体的には高い純度での急速な形成は特に困難であり、最適な結晶化を可能にする固体/液体結晶化界面での物質の適切な移動を促進するのに十分な局所の撹拌(乱流)、また形成中に結晶を破壊したり、界面での反応種の適切な組織化を妨げたりしないような十分に穏やかな撹拌の両方が必要である。
【0032】
現在、これらの結晶化条件は「バッチ」モードでの調製のために完全に良好に制御及び調整されているが、堆積、詰まり、さらには装置をふさぐ現象を観察せずに連続モードでこれら2種類の撹拌を組み合わせるのは難しいことが判明しており、言うまでもなく、得られるゼオライト結晶の質、特に結晶化時間、及び合成装置と装置のかさばりは、経済的な産業開発と両立しなければならない。
【0033】
形成されるゼオライト結晶の優れた質を維持しながら、これらの詰まり現象を回避するために、出願人は、ゼオライト結晶の連続調製中の最適な撹拌条件を今や発見した。この条件は、全体的に(正味レイノルズ数、正味の速度、したがって特定のタイプの反応装置の滞留時間に相関)及び局所的に(相対レイノルズ数)流体に適用される流れのタイプによって特徴付けられる。
【0034】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、相対レイノルズ数Re
rと正味レイノルズ数Re
nとの差(すなわち、差Re
r−Re
n)は、厳密に50より大きく、好ましくは厳密に100より大きく、より好ましくは厳密に150より大きく、非常に好ましくは厳密に180を超える。
【0035】
したがって、本発明の方法は、標準的な「バッチモード」合成と比較される連続した合成の利点、例えば温度のより優れた制御、設備のコンパクトさ、生産の均一性などから利益を得る工業的な方法をもたらすことを可能にする。また、とりわけ、機器の詰まりを制限するという利点がある。
【0036】
ゼオライト結晶を生成できる組成物は、調製されるゼオライトのタイプに応じて当業者に周知の任意のタイプの組成物であり得、通常、少なくとも1つのシリカ源及び少なくとも1つのアルミナ源及び/又はゼオライト骨格を構成し得る他のいずれかの元素供給源、例えばリン、チタン、ジルコニウムなどの供給源を含む。アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物、典型的には水酸化ナトリウム及び/又は有機構造指向剤又はテンプレートの少なくとも1つの水溶液を、任意選択で、しかし好ましくは、この組成物に添加してもよい。
【0037】
シリカの源は、当業者に周知の任意の供給源、特に溶液、好ましくはケイ酸塩、特にナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属のケイ酸塩、又はコロイダルシリカの水溶液を意味すると理解される。
【0038】
アルミナ源は、当業者に周知の任意のアルミナ源、特に溶液、好ましくは、アルミン酸塩、特にナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属のアルミン酸塩の水溶液を意味すると理解される。
【0039】
シリカ及びアルミナの様々な溶液の濃度は、シリカ源、アルミナ源の性質、アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物溶液、及び/又は1つ以上の有機構造指向剤が添加されるアルミナ源及びシリカ源のそれぞれの割合に応じ、当業者の知識に従って適合される。特に、例えば、国際ゼオライト協会(www.iza−online.org)のウェブサイトで、合成されるゼオライトの機能として任意選択で使用される有機構造指向剤、例えば、また非限定的に、テトラメチルアンモニウム(TMA)、テトラ−n−プロピルアンモニウム(TPA)、メチルトリエチルアンモニウム(MTEA)の化学的性質に関する情報が見出される。
【0040】
様々なシリカ及びアルミナ溶液のそれぞれの割合及び濃度は、当業者に知られているか、文献のデータから調製することが望ましいゼオライトの性質に応じて、当業者によって容易に適合され得る。
【0041】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、当業者に知られている任意のタイプのゼオライト、例えば非限定的に、MFIタイプの任意のゼオライト、特にシリカライト、MORタイプ、OFFタイプ、MAZタイプ、CHAタイプ及びHEUタイプの任意のゼオライト、FAUタイプの任意のゼオライト、特にゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトMSX、ゼオライトLSX、EMTタイプの任意のゼオライトあるいはLTAタイプの任意のゼオライト、すなわちゼオライトA、また他のゼオタイプ、例えばチタノシリカライトの調製を可能にする。
【0042】
「ゼオライトMSX」(中シリカX)という用語は、Si/Al原子比が、境界値を含めて約1.05〜約1.15のFAUタイプのゼオライトを意味する。「ゼオライトLSX」(低シリカX)という用語は、Si/Al原子比が約1に等しいFAUタイプのゼオライトを意味する。
【0043】
本発明による方法は、MFIタイプのゼオライト、特にシリカライト、FAUタイプのゼオライト、特にゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトMSX、ゼオライトLSX及びLTAタイプのゼオライト、すなわちゼオライトA、さらにCHAタイプのゼオライト及びHEUタイプのゼオライトから選択されるゼオライトの調製に特に適している。
【0044】
さらに、本発明による方法は、FAUタイプの任意のゼオライト、特にゼオライトX、ゼオライトMSX、ゼオライトLSXの調製にまさに特に適している。MFIタイプのゼオライト、特にシリカライトも、本発明の方法に従って非常に有利に調製することができる。
【0045】
さらに、本発明の連続した調製方法は、上記のゼオライトの調製に限定されず、階層的多孔性を有する対応するゼオライトも含む。階層的多孔性を有するゼオライトは、メソ細孔のネットワークに連結されたミクロ多孔性ネットワークを含む固体であり、したがって、従来技術から知られているメソ多孔性ゼオライトの活性部位へのアクセス可能性の特性と、「従来の」ゼオライト(メソ多孔性なし)の最大結晶化度及び最大ミクロ多孔性の特性を調和させることが可能になる。この場合、特定の構造指向剤、例えば文献FR 1 357 762に記載されているオルガノシラン型の構造指向剤が合成媒体に導入される。
【0046】
より具体的には、本発明は、少なくとも、以下の
1)合成媒体を得るための、ゼオライト結晶を生成できる組成物の連続調製ステップ、
2)ステップ1)で得られた前記合成媒体へのシードの添加ステップ、
3)上で定義されたステップa)、b)及びc)による、ゼオライト結晶を形成するための反応の撹拌下での連続操作ステップ、
4)生成された結晶を回収するための反応媒体のろ過ステップ、及び
5)任意選択の、母液のリサイクルステップ
含むゼオライト結晶の調製方法を記載する。
【0047】
本発明の方法は特にエネルギー効率が良い。さらに、この方法は、コンパクトな装置で、特にバッチモードでゼオライトを調製するための当業者に知られている装置よりはるかにかさばらない装置で実施することができる。
【0048】
ステップ1)の合成媒体は、塩基性媒体中でシリカとアルミナの供給源を混合することにより、上記のように調製される。この混合物は、ロータ・ステータタイプのせん断ミキサー、すなわち、高速で回転して、混合物をステータを通し、形状は多様であってよいロータを含むせん断ミキサーで有利にも実施される。
【0049】
せん断の程度は、s
−1のせん断速度γによって定義される。これは、ロータの先端速度をロータとステータの間のギャップの厚さで割った値に等しくなる。先端速度V
pは、回転速度V
rとロータの直径dから次の式に従って計算される:V
p=V
rπd
r(m・s
−1で表される)。式中V
rはrev・s
−1で表される回転速度であり、d
rはロータの直径(mで表される)で、γはV
p/eに等しく、eはロータとステータ間のギャップの距離(mで表される)を表す。
【0050】
一般的に適用されるせん断速度は、10000s
−1〜200000s
−1、好ましくは10000s
−1〜100000s
−1である。
【0051】
合成媒体へのシードの添加により、連続方法の制約に適合するのに十分短い結晶化時間を得ることが可能になる。シードのこの添加は、例えば合成媒体/シード混合物の均質化を促進するという利点を有する静的ミキサーを使用して、当業者に知られている任意の手段によって実施することができる。「シード」(「シーディング剤」とも呼ばれる)という用語は、望ましいゼオライトに合成が向かう配向を促進する固体又は液体を意味すると理解されている。
【0052】
ゼオライト結晶の形成(結晶化)は、上記のように、撹拌しながら、境界値を含めて、40〜50000、好ましくは40〜25000、より好ましくは70〜5000、通常は100〜2000で、相対レイノルズ数Re
rを特徴とする流動条件下で実施される。さらに、この結晶化ステップは、高温、典型的には60℃〜200℃、好ましくは80℃〜160℃の温度で有利には実施される。
【0053】
まさに特に好ましい一実施形態では、ゼオライト結晶を形成するステップ(結晶化、上述のステップc))は管状反応装置で実施され、圧力下、例えば、自生圧力下、大気圧下、又はより一般的に任意の圧力下で、通常大気圧と1.5MPaの間において実施され得る。
【0054】
結晶化ステップの後、得られた結晶から、例えば、ろ過、遠心分離、及び当業者に周知の他の技術により、母液が取り除かれる。
【0055】
母液のすべて又は一部のリサイクル、すなわち、連続反応装置の出口で得られたろ過などによる除去後に収集された固体の合成水のリサイクルを提供することが可能であり、これは本発明の好ましい実施形態を表す。リサイクルされる前に、母液は、限外ろ過、再濃縮又は蒸留から選択される1つ以上の処理を任意で受けていてもよい。
【0056】
母液のリサイクルには多くの利点があり、特に原材料を節約し、熱を回収することができる。したがって、母液のリサイクルは、とりわけ、合成方法の全体的なエネルギーの消費、使用される塩基性溶液(例えば、水酸化ナトリウム)の量などを削減することを可能にする。
【0057】
ステップ4)の最後に得られた結晶は、洗浄、陽イオン交換、乾燥、含浸、活性化などのような当業者に周知の1つ以上の処理に任意選択で用いられ、この処理又はこれらの処理は、バッチモードで、又は連続して、有利には連続して実行される。
【0058】
洗浄は通常、まだ存在している可能性のある残留母液を除去できるようにするために水で洗浄する。
【0059】
乾燥は、数分〜数時間、典型的には数分〜10時間の間で変化し得る、任意の温度、典型的には40℃〜150℃の温度で実施することができる。40℃未満の温度での乾燥操作ははるかに長く、したがって経済的に無駄があることが証明される可能性があるが、150℃を超える乾燥温度では、まだ湿っているゼオライト結晶に多少なりとも劣化をもたらす可能性がある。
【0060】
事前に乾燥されることが好ましいゼオライト結晶の活性化は、数分〜数時間、典型的には数分〜10時間までの多様な期間、150℃〜800℃の温度で通常実施される。
【0061】
当業者に周知の手段のうちほんの数例を挙げると、超音波及び/又はマイクロ波の供給源などがあるが、本発明の方法を実施することを可能にするこの合成装置は、改良された実施形態において、それらを追加することにより、方法の全部又は一部の反応混合物内の熱伝達、材料の輸送などを改善するための任意の適切な手段を含み得る。
【0062】
特に有利な実施形態では、本発明の方法は、結晶化ステップの前、後、又はその間に、1つ以上複数のシーディング剤を1つ以上の段階で添加することを含む。シーディング剤のこの添加により、特に結晶化ステップを実質的に加速することが可能になる。
【0063】
シーディング剤(又はシード)は、合成又は望ましいゼオライトへの配向を促進する液体の形態又はゲル、固体又は液体の形態の溶液又は懸濁液を意味すると理解される。シーディング剤は、当業者に周知であり、例えば、核形成ゲル、ゼオライト結晶、任意の性質の鉱物粒子など、及びそれらの混合物から選択される。
【0064】
好ましい態様によれば、シーディング剤は核形成ゲルであり、より好ましくは、該核形成ゲルは、シリカ源(例えばケイ酸ナトリウム)、アルミナ源(例えばアルミナ三水和物)、任意選択で、しかし有利にも、強無機塩基、例えば、主なもの及び最も一般的に使用されるものだけを述べると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化カルシウム、及び水の均質な混合物を含む。1つ以上の構造指向剤、典型的には有機構造指向剤も、任意選択で核形成ゲルに導入してもよい。
【0065】
上記のように、本発明による合成方法は、撹拌手段が用いられる少なくとも1つの結晶化反応ゾーンで実施される連続結晶化ステップを含み、上記の相対レイノルズ数(Re
r)を特徴とする流れを該組成物にもたらす。
【0066】
撹拌手段は、当業者に周知の任意のタイプのものであってよく、例えば、非限定的に、反応装置が連続運転に適した管状反応装置である場合、この管状反応装置は制限物(例えば、リング、デフレクターなど)を備えていてもよく、撹拌システム、振動又は脈動システム(反応媒体の往復運動をピストン、膜などの手段によって生成できるようにするもの)など、またこれらの手法の2つ以上を組み合わせたものを有する撹拌システムを装備することができる。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、方法は、例えばNiTechによる出願のUS 2009/0304890に記載されているように、任意選択でしかし好ましくは、制限物を設け、反応装置内を循環する流体にパルスを与えることができるシステムを備えた管状反応装置で実施される。流れが上で定義された相対レイノルズ数(Re
r)によって特徴付けられる少なくとも1つの反応ゾーンを得ることを可能にする他のシステムも、本発明の方法に適している場合がある。
【0068】
したがって、まさに特に適切な実施形態によれば、本発明による合成方法は、制限物の内部システム及び脈動装置を備えた管状反応装置で実施され、特定の条件下、すなわち、
20mm〜400mm、好ましくは25mm〜300mm、より好ましくは30mm〜200mmという脈動装置の振動の振幅、及び
0.1Hz〜2Hz、好ましくは0.15Hz〜1.5Hz、より好ましくは0.4Hz〜1Hzの発振周波数
で操作される、連続方法である。
【0069】
それにもかかわらず、振動の振幅は大幅に変化する可能性があり、好ましくは、振幅は0.5D〜3D、好ましくはD〜2Dであり、Dは上で定義した反応装置の等価直径である。同様に、管状反応装置内に制限物がある場合、該制限物は、0.5D〜3D、好ましくはD〜2Dで変化する距離だけ間隔を空けて配置することが好ましい。
【0070】
実際、詰まりを防ぐため、又は少なくとも反応装置の急速な詰まりを防ぐために、合成媒体に適用される振動運動を介して反応装置内に局所的な乱流を生成することが重要である、さらには必要であることが観察されており、上記のように振動は20mmを超える振幅、好ましくは20mm〜400mmの振幅を有する。
【0071】
さらに、この脈動システム、あるいは振動システムは、反応装置のすべて又は一部に配置された制限物に有利に連結され得る。一実施形態によれば、これらの制限物は、管状反応装置に沿って、リング、デフレクターなどの形ですべて存在する。
【0072】
これらの制限物と適切な振動(変化する可能性がある振幅と周波数)を組み合わせて、管状反応装置の反応媒体に適用することにより、上で定義された値の範囲内で相対レイノルズ数Re
rにより特徴付けられる流れを生成できる。
【0073】
反応媒体に課せられた振動は、有利には反応装置内の制限物の存在を伴い、軸方向及び半径方向の両方で最適な撹拌を生成することを可能にする。この撹拌は、ゼオライト結晶の最適な形成に必要なだけでなく、反応媒体内の材料の交換を強化することも可能にする。別の利点として、この撹拌は熱交換の効率も改善する。
【0074】
このように、振動の振幅は、制限物を除去する間に管状反応装置に存在する固体が規則的に管を通って進行できるのに十分でなければならないことが観察されている。振幅が低すぎると詰まりが発生する可能性があり、一方で振幅が高すぎると結晶化の質に悪影響を与える可能性がある。上記の影響(詰まり又は結晶化の不良の質)が生じないように、振動の周波数を上で定義した適切な範囲に維持する必要があることが明らかである。振幅は、2つの制限物間の距離に少なくとも等しいことが好ましい。したがって、反応装置は全体として、完全に撹拌された反応装置のカスケードであるとみなすことができ、反応装置は2つの制限物間の空間によって具現化される。
【0075】
本発明の方法に関連する別の利点は、振動の周波数の変更により、得られる結晶のサイズを変えることが可能になることである。具体的には、発振器の周波数を上げることで結晶のサイズを小さくし、逆に発振器の周波数を下げることで結晶のサイズを大きくすることができる。
【0076】
本発明による方法は、一般に、0.1μm〜20μmの範囲であり得、好ましくは0.2μm〜10μm、より好ましくは0.3μm〜8μm、非常に好ましくは0.3μm〜5μmの範囲であり得る粒径(SEM画像で数えることにより決定される数平均直径)を有するゼオライト結晶の合成を可能にする。本発明の方法は、特に、98%以上、好ましくは98%〜100%の純度を有するゼオライト結晶を合成することを可能にする。
【0077】
結晶が連続して形成される少なくとも1つの撹拌ゾーンを含む反応装置内で、出発ゲル及び形成された結晶は、出発ゲルを反応装置に沿って進行させ、したがって、反応装置の出口で形成された結晶の排出を可能にするために流れにさらされる。上記のように、連続して形成された結晶は、上で定義された正味レイノルズ数(Re
n)によって特徴付けられる流れに従って反応装置の出口で回収され、それは層流とみなされ得る流れに対応する。
【0078】
したがって、所望の正味レイノルズ数(Re
n)を達成するために、管状反応装置の等価直径や正味の流速などの様々なパラメータを適合させることができる。正味レイノルズ数が高すぎると、例えば結晶化を防ぐことにより、又は所望の相以外の結晶相を作成することにより、結晶化を乱す可能性が高い。正味レイノルズ数が低すぎると、連続モードで反応装置の詰まりの危険性が生じ得る。
【0079】
反応装置の入口での原料の流量及び/又は反応装置の出口での結晶の生成の監視は、当業者に知られている任意の手段に従って、例えば、任意選択で流量調整器と組み合わせたポンプによって得ることができる。
【0080】
したがって、例えば、上で定義された相対レイノルズ数を達成することを可能にする振動システム、及び上で定義した正味レイノルズ数を達成することを可能にするポンプのシステムを備えた管状反応装置を使用すると、詰まりなしで動作することが可能であることが示された。
【0081】
90分の滞留時間により、長さが通常1m〜100m、直径が通常0.5cm〜30cmの反応装置で95%超、又は98%超でさえもの純度のゼオライト結晶を得ることができる。結晶化度は、X線回折(XRD)によって判定される。
【0082】
NiTechによる特許出願US2009/0304890で定義された反応装置を用いて、本発明の方法の動作条件下で動作することにより、X型ゼオライトの調製のための24時間の連続運転後にいかなる詰まりをも観察することはできなかった。
【0083】
さらに、発振器の周波数を加速することにより、結晶のサイズを小さくすることができた。
【0084】
以下の実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される所望の保護の範囲に実際にいずれの限定的な性質をも与えることなく、本発明を説明することを可能にする。
【0085】
特性評価手法
X線回折(XRD)による定性及び定量分析
合成されたゼオライト結晶の純度は、頭字語XRDで当業者に知られているX線回折分析によって評価される。この識別は、Bruker XRD装置で実施される。
【0086】
この分析では、各ゼオライトが回折ピークの位置と相対的な強度によって定義される独自の回折図を有しているため、吸着材料に存在する様々なゼオライトを識別することができる。
【0087】
ゼオライトの結晶は、粉砕された後、簡単な機械的圧縮によりサンプルホルダーに広がり、平らになる。
【0088】
Bruker D5000の機械で回折図を取得する条件は次のとおりである。
【0089】
・40kV−30mAで使用されるCuチューブ
・スリットサイズ(発散スリット、散乱スリット、分析スリット)=0.6mm
・フィルタ:Ni
・サンプルデバイスの回転:15rpm
・測定範囲:3°<2θ<50°
・増分:0.02°
・増分ごとの時間のカウント:2秒。
【0090】
得られた回折図の解釈は、ICDD PDF−2リリース2011ベースを使用して、ゼオライトの識別によりEVAソフトウェアで実行される。
【0091】
結晶の量は、重量でXRD分析により判定する。この方法は、非結晶相の量の測定にも使用される。この分析はBrukerの機械で行われ、その後ゼオライト結晶の重量による量が、Bruker社のTOPASソフトウェアを使用して評価される。純度は、サンプルの総重量に対する所望の結晶相の重量パーセントとして表される。
【実施例】
【0092】
実施例1(本発明による):ゼオライトAの連続合成
ゼオライトAの連続合成は、以下に明示する核生成ゲルの1重量%が追加された、以下に定義する合成媒体を、管状反応装置(内径=1.5cm、長さ20m)に供給することである。
【0093】
核生成ゲルは、組成が2.66のNa
2O/Al
2O
3/1.92のSiO
2/65のH
2Oであるゲルが得られるように、35℃のケイ酸ナトリウム溶液を35℃のアルミン酸ナトリウム溶液に添加することによって調製される。
【0094】
アルミン酸ナトリウム溶液は、沸点でアルミナを水酸化ナトリウム溶液に溶解し、次いで35℃に冷却することにより調製される。この溶液は、アルミナ938.7g、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液1539.0g、及び水1542.6gを含む。
【0095】
ケイ酸ナトリウム溶液は、ケイ酸ナトリウム2601gと50重量%水酸化ナトリウム水溶液486g及び水2160gとを混合し、その後35℃に加熱することにより調製される。
【0096】
核形成ゲルを35℃で2時間保持した後、25℃まで冷却し、25℃で20時間保存する。次いで、この溶液を、合成媒体の重量に対して1重量%に等しい含有量で、合成媒体に連続して添加することにより、ゼオライトAの合成におけるシードとして使用することができる。
【0097】
合成媒体は、ロータ・ステータせん断ミキサーを使用して調製される。ロータの直径は38.1mm、ロータとステータ間のギャップの距離は0.2mmである。35℃のアルミン酸ナトリウム溶液と35℃のケイ酸ナトリウム溶液を同時に混合して、3.5のNa
2O/Al
2O
3/2.0のSiO
2/175のH
2Oという組成のゲルを得る。
【0098】
アルミン酸ナトリウム溶液は、沸点でアルミナを水酸化ナトリウム溶液に溶解し、次いで35℃に冷却することにより調製される。この溶液には、31824gのアルミナ、86402gの50重量%水酸化ナトリウム水溶液、及び273600gの水が含まれている。
【0099】
ケイ酸ナトリウム溶液は、ケイ酸ナトリウム91152gと50重量%の水酸化ナトリウム水溶液8641g及び水254880gを混合し、次いで35℃に加熱することにより調製される。
【0100】
合成媒体を調製するために、Silversonせん断インラインミキサーのチャンバは、2つの蠕動ポンプを使用して同時に供給される。アルミネート溶液の流量は220.5g・min
−1に等しく、シリケート溶液の流量は211.5g・min
−1に等しくなる。供給ラインは最初に水で満たされている。
【0101】
混合は、550rev・min
−1のロータ速度で実施される。これは、54800s
−1のせん断速度に相当する。合成媒体は、静的ミキサーに連続して供給され、そこに25℃で4.32g・min
−1の流量で合成ゲルが導入される(合成媒体の1重量%)。
【0102】
合成媒体と核形成ゲルの混合物からなる静的ミキサーを出る流れは、1200kg・m
−3の密度と5mPa・sの粘度を持ち、この流れの1/9の重量分率が直接、パルス管状反応装置を供給する。
【0103】
パルス管状反応装置は、最初に発振器を作動させることで加熱される(振幅50mm、周波数0.4Hz)。油に浸す温度を108℃に調整しながら水を最初に循環させて、100℃の内部の温度を得る。その後、試験工場には、振幅50mm、周波数0.4Hzの振動を維持しながら、Fisher Scientific(参照番号1174−4119)から販売されている長さ125mmの316ステンレス鋼で作られた17エレメントの静的ミキサーを使用して生成された、合成媒体と核生成ゲルの混合物が、供給される。これらの動作条件では、正味レイノルズ数(Re
n)は13.7に等しく、相対レイノルズ数(Re
r)は240に等しくなる。
【0104】
24時間連続運転した後、管状反応装置の入口に設置された圧力計に示されているように、装置の圧力上昇は観察されていない。2.4L・h
−1という供給される流量により、90分間の管状反応装置での滞留時間、結晶化ゼオライトLTAを得るのに十分な滞留時間を得ることができる。チューブの出口から抜き出された反応媒体をろ過し、中性のpHが得られるまで水で洗浄し、次いで80℃で乾燥し、550℃で活性化する。
【0105】
機器を空にするために、冷水を60L・h
−1の流量で1時間循環させる。得られたゼオライトLTAの結晶の結晶化度は99%である。
【0106】
実施例2(比較):ゼオライトAの連続合成
実施例1の動作条件に従って連続合成を実施するが、発振器の振幅を20mmに減少させることにより、管状反応装置の入口に設置された圧力計に示されるように、圧力の上昇がわずか2時間の操作の後に観察され、3時間15分の合成後、機器がふさがるに至った。これらの動作条件では、正味レイノルズ数は13.7に等しく、相対レイノルズ数は38に等しくなる。
【0107】
実施例3(本発明による):ゼオライトXの連続合成
実施例1の動作条件を再現し、出発反応媒体の組成の性質を変更することにより、フォージャサイトXタイプのゼオライトの合成が24時間連続して実施されている。管状反応装置の出口で得られたゼオライトXの結晶は、99%の結晶化度を有している。これらの結晶の回折図を
図1に示す。