特許第6910591号(P6910591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910591
(24)【登録日】2021年7月9日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】トイレキャビネット装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/00 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
   A47K17/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-21674(P2017-21674)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-126339(P2018-126339A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小埜 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】園田 洋平
【審査官】 伊藤 翔子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0265051(US,A1)
【文献】 特開2008−245879(JP,A)
【文献】 特開平06−154044(JP,A)
【文献】 特開平08−131359(JP,A)
【文献】 特開2000−157362(JP,A)
【文献】 実開昭51−102224(JP,U)
【文献】 実開昭47−024328(JP,U)
【文献】 実開昭58−164548(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室の床から離間して前記トイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネット装置であって、
前記トイレキャビネット装置は、前方が開口された収納空間を有するキャビネットと、前記トイレ室の床と平行に前記トイレ室の前記側壁の所定高さ位置に固設される固定材と、を有し、
前記キャビネットは、前記床と平行な底面を有する横桟を備え、
前記固定材は、前記トイレ室の前記側壁に固定される、前記床と平行な上面を有する固定板と、前記固定板に固定されており、前記固定板の上面に設置された前記横桟と一部係止して前記キャビネットの落下を防止する複数の係止具と、を備え
前記キャビネット及び前記固定板はトイレ室の床と平行に複数設けられ、
複数の前記固定板は、左右幅方向に同じ長さを有する、第一の固定板と、第二の固定板とを有し、
複数の前記キャビネットは、前記トイレ室の奥側に位置する第一のキャビネットと、前記トイレ室の中央側に位置する第二のキャビネットと、前記トイレ室の手前側に位置する第三のキャビネットとを有し、
前記第一の固定板及び前記第二の固定板を連接した左右幅方向の長さは、前記第一のキャビネットと、前記第二のキャビネットと、前記第三のキャビネットと、を連接した左右幅方向の長さと比べて短く、
前記第一の固定板と前記第二の固定板との連接部が、連接した複数の前記キャビネットの左右幅方向中央から前記第一のキャビネットが位置する前記トイレ室の奥側に偏心させて設けることで、前記第一の固定板は前記第一のキャビネットを支え、前記第二の固定板は前記第二のキャビネット及び前記第三のキャビネットを支えることを特徴とするトイレキャビネット装置。
【請求項2】
前記第一の固定板が有する前記係止具の個数が、前記第二の固定板が有する前記係止具の個数よりも多いことを特徴とする請求項に記載のトイレキャビネット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ室において便器の側方に取り付けられるトイレキャビネット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的狭いトイレ空間を有効活用するため、従来から大便器の側方の壁面に沿って取り付けられるキャビネットが知られている。(特許文献1)
【0003】
また、車椅子使用者に配慮し、車椅子のフットレスト部分が入るように、キャビネットを床から所定の寸法だけ離間しているものがある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245879号公報
【特許文献2】特開2016−47263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のようなトイレ室の床から所定の寸法だけ離間したキャビネットをトイレ室の側壁に取り付ける施工は、特許文献1のようにトイレ室の床にキャビネットを取り付ける施工と異なり、キャビネットを床と平行を取りつつ施工を行うのが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、トイレ室の床から離間するようにトイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネットの施工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るトイレキャビネット装置においては、トイレ室の床から離間してトイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネット装置であって、トイレキャビネット装置は、前方が開口された収納空間を有するキャビネットと、トイレ室の床と平行にトイレ室の側壁の所定高さ位置に固設される固定材と、を有し、キャビネットは、床と平行な底面を有する横桟を備え、固定材は、トイレ室の側壁に固定される、床と平行な上面を有する固定板と、固定板に固定されており、固定板の上面に設置された横桟と一部係止してキャビネットの落下を防止する複数の係止具と、を備え、キャビネット及び固定板はトイレ室の床と平行に複数設けられ、複数の固定板は、左右幅方向に同じ長さを有する、第一の固定板と、第二の固定板とを有し、複数のキャビネットは、トイレ室の奥側に位置する第一のキャビネットと、トイレ室の中央側に位置する第二のキャビネットと、トイレ室の手前側に位置する第三のキャビネットとを有し、第一の固定板及び第二の固定板を連接した左右幅方向の長さは、第一のキャビネットと、第二のキャビネットと、第三のキャビネットと、を連接した左右幅方向の長さと比べて短く、第一の固定板と第二の固定板との連接部が、連接した複数のキャビネットの左右幅方向中央から第一のキャビネットが位置するトイレ室の奥側に偏心させて設けることで、第一の固定板は第一のキャビネットを支え、第二の固定板は第二のキャビネット及び第三のキャビネットを支えることを特徴とするトイレキャビネット装置である。
【0008】
本発明によれば、トイレ室の床から離間してトイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネット装置において、トイレ室の側壁にキャビネットよりも先に固定板をトイレ室の床と平行を取るように取り付け、トイレ室の床と平行な面を有する固定板の上面と、キャビネットの後方に設けられたトイレ室の床と平行な面を有する横桟の底面とを合わせることで、簡単にトイレ室の床と平行を取りつつトイレキャビネット装置をトイレ室の側壁に仮置きできる。
【0009】
また、固定板にキャビネットを仮置きした際に、固定板からキャビネットが落下してしまうことを防止する為に、固定板に固定板の上面に設置されるキャビネットの横桟と一部係止するような係止具が複数設けられている。これによって、従来よりも簡単で安全にトイレ室の床から所定の寸法だけ離間したトイレキャビネット装置の施工が可能となるため、施工性を向上させることが出来る
【0011】
この構成によれば、側壁に取り付ける際に複数のキャビネット及び固定板を連接させれば良いため、比較的狭いトイレ室においてもキャビネット及び固定板の取り回しが容易である。さらに、トイレ室の奥行きに合うような一つの大きいキャビネットだと施工する際に持ち上げる重量が大きいため施工性が悪かったが、複数からなる構成にしたことによって、一人でも持ち運べる程度の重量になるので施工性を向上させることが出来る。
【0013】
複数のキャビネットを複数の固定板で支える構成とした際、複数の各キャビネットの左右幅方向の長さに合わせた複数の固定板を用いることが理想であるが、複数の各キャビネットの左右幅方向の長さが異なる為、それに合わせようとすると固定板の製造性が悪くなってしまうという課題がある。そこで、本発明のように、左右幅方向に同じ長さを有する二つの固定板で三つのキャビネットを支える構成、言い換えると、第一の固定板が第一のキャビネットを支え、第二の固定板が第二のキャビネット及び第三のキャビネットを支える構成にしたことによって固定板の製造性を向上させることが可能となった。
【0014】
また、複数のキャビネットのうち、トイレ室の奥側に位置する第一のキャビネットの前方には便器が配設されるため、前方に広いスペースを必要とする扉を取り付けることができない。そのため、第一のキャビネットは扉が付けられた状態で施工されるので、第二のキャビネット及び第三のキャビネットよりも重い。このような状況を鑑みて、第一の固定板と第二の固定板との連接部を三つのキャビネットを連接したときの左右幅方向の中央にするのではなく、重量の大きい第一のキャビネットが位置するトイレ室の奥側に偏心させる新規な構成にした。これによって、第一の固定板がトイレ室の側壁から外れないように多くの締結手段を設ける必要が無くなるので施工性を向上させることが出来る。
【0015】
また、本発明に係るトイレキャビネット装置において、好ましくは、第一の固定板が有する係止具の個数が、第二の固定板が有する係止具の個数よりも多いことを特徴とする。
【0016】
この構成に依れば、重量の小さい第二のキャビネット及び第三のキャビネットの二つのキャビネットを支える第二の固定板よりも、重量の大きい第一のキャビネットのみを支える第一の固定板に設ける係止具の個数を多くすることで、重量の大きい第一のキャビネットが落下してしまうことをより確実に防ぐことが出来るため、施工性を向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様に依れば、トイレ室の床から離間するようにトイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネット装置において、固定板を用いることで従来よりも簡単で安全にトイレ室の床との平行を取りつつキャビネットを側壁に取り付けることが可能となり、施工性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】トイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネット装置を示す上面図である。
図2】本実施形態に係る固定材の斜視図である。
図3】本実施形態に係るトイレキャビネット装置を施工したときの正面図である。
図4】本実施形態に係るトイレキャビネット装置を施工したときの背面図である。
図5図3のA線で囲った位置を矢印の方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るトイレ室の側壁に取り付けられるトイレキャビネット装置を示す正面図である。図1において、便器1が置いてある方向がトイレ室3の奥側である。
【0021】
本実施形態に係るトイレキャビネット装置10は、トイレ室3の側壁4に固定される固定材20と、その固定材20に支えられながらトイレ室3の側壁4に固定されるキャビネット11とを有する。
【0022】
本実施形態に係るキャビネット11は、トイレ室3の奥側に取り付けられるサイドキャビネット13と、トイレ室3の中央側に取り付けられる紙巻器キャビネット15と、トイレ室3の手前側に取り付けられる手洗器キャビネット17の三つから構成されている。キャビネット11は前方が開口されており、内部に空間を有し、この内部空間が備品を収納可能な収納空間として構成されている。
【0023】
キャビネット11はトイレ室3の床5から離間してトイレ室3の側壁4に取り付けられており、キャビネット11と、床5との間には空間が形成されている。なお、本実施形態ではキャビネット11はトイレ室3の右側壁に取り付けられているが、左側壁に取り付けられても構わない。
【0024】
図2は、本実施形態に係る固定材の斜視図である。
【0025】
固定材20は、トイレ室3の側壁4にビス等の締結手段21aによって固定される固定板22と、固定板22の側面にビス等の締結手段21bによって固定される複数の落下防止板金24とを有する。落下防止板金24は、固定板22の上面23よりも上方に延びる面を有している。本実施形態に係る固定板22は、狭いトイレ室3での取り回しを考慮して二つから構成されている。二つの固定板をつなげた長さはサイドキャビネット13と、紙巻器キャビネット15と、手洗器キャビネット17と、を連結させた左右幅方向の長さよりも短い。
【0026】
図3は、本実施形態に係るトイレキャビネット装置を施工したときの正面図である。図4は、本実施形態に係るトイレキャビネット装置を施工したときの背面図である。
【0027】
キャビネット11は開口された後方に、キャビネット11の横幅と同じ長さを有する横桟を上下二箇所に設けられている。キャビネット11に設けられた横桟27及び28は、トイレ室3の床5からサイドキャビネット13と、紙巻器キャビネット15と、手洗器キャビネット17と、それぞれに対して同じ高さで上方と下方に二ヵ所設けられている。
【0028】
次に、トイレキャビネット装置10をトイレ室3の側壁4に固定するまでの施工手順を説明する。まずトイレ室3の側壁4の所定高さにトイレ室3の床5と平行な線を罫書く。その罫書かれた平行線に沿って、第一の固定板22をビス等の締結手段21によってトイレ室3の側壁4に固定する。
【0029】
次にキャビネット11の後方に設けられた横桟27及び28のうち、下方に設けられた横桟27を固定板22の上面23に設置する。横桟27の底面は、トイレ室3の床5と平行な面を有しているため、固定板22の上面23に設置することで、キャビネット11と床5との平行を容易に取ることができる。さらに、横桟27が設けられている高さはサイドキャビネット13と、紙巻器キャビネット15と、手洗器キャビネット17と、それぞれに対して同じであるため、トイレ室3の側壁4に取りつけられる床5からの高さも均一にすることができる。
【0030】
キャビネット11の横桟27を固定板22に設置したとき、キャビネット11は固定板22に仮置きされた状態になっており、トイレ室3の側壁4に固定されてはいない。そのため、キャビネット11が固定板22から落下する危険性があるので、落下防止板金24によってキャビネット11の横桟27と固定板22とが一部係止されている。
【0031】
キャビネット11を固定板22に仮置きした後、キャビネット11の後方に設けられた横桟27及び28をトイレ室3の側壁4にビス等の締結手段21aによって固定する。以上の手順によって、トイレキャビネット装置10はトイレ室3の側壁4に固定される。
【0032】
本実施形態において、サイドキャビネット13は、サイドキャビネット13が取り付けられる前方に便器1があるため、開口された前方に扉を取り付けたまま施工される。そのため、紙巻器キャビネット15及び手洗器キャビネット17と比較して重量が大きい状態で施工される。
【0033】
そのため、キャビネット11を仮置きするための二つの固定板22の連接部25を、サイドキャビネット13、紙巻器キャビネット15及び手洗器キャビネット17を連接させた左右幅方向の中央線であるC−C線よりも、サイドキャビネット13を取り付けるトイレ室3の奥側に偏心させている。これによって、二つの固定板22が支えるキャビネット11の重量に大きなバラつきが出ることを抑えられ、重量の大きいキャビネット11を支える第一の固定板22aが、トイレ室3の側壁4から外れる危険を防止することができ、サイドキャビネット13を支える第一の固定板22aに対してトイレ室3の側壁4に固定する為のビス等の締結手段21aを必要以上に設けなくて良くなるので施工性が向上させることができる。
【0034】
さらに、サイドキャビネット13を支える第一の固定板22aに設けられる落下防止板金24の個数を、紙巻器キャビネット15及び手洗器キャビネット17を支える第二の固定板22bの個数よりも多く設けている。これによって、重量の大きいサイドキャビネット13が第一の固定板22aから落下する危険を防止することができ、施工の安全性を向上させることができる。
【0035】
図5図3のAで囲まれた位置を矢印の方向から見た断面図である。
【0036】
本実施形態の固定板22と横桟27とは、製造性を向上させるため同じ板材から製造されるので、同じ厚みを有している。そのため、横桟27を固定板22の上面23に載置させる際、トイレ室3の側壁4に歪みがあると、側壁4と固定板22に設けられた落下防止板金24との間のスペースが横桟27の厚みよりも小さくなってしまい、横桟27を固定板22の上面23に載置できない恐れがある。
【0037】
本実施形態に係る固定材20において、落下防止板金24と固定板22との間にスペーサ29を設けている。これによって、キャビネット11の横桟27を設置するための、トイレ室3の側壁4、固定板22及び落下防止板金24に囲まれたスペースを広く取ることが出来るので施工性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・便器
3・・・トイレ室
4・・・側壁
5・・・床
10・・・トイレキャビネット装置
11・・・キャビネット
13・・・サイドキャビネット
15・・・紙巻器キャビネット
17・・・手洗器キャビネット
20・・・固定材
21a・・・締結手段
21b・・・締結手段
22・・・固定板
22a・・・第一の固定板
22b・・・第二の固定板
23・・・上面
24・・・落下防止板金
25・・・連接部
27・・・横桟
28・・・横桟
29・・・スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5