【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の構成には、レールの冷却の観点から、以下で説明する問題がある。電磁レールガン400では、飛翔体を加速させるときに、導電レール41及び42に電流が供給される。そのため、ジュール損失によって導電レール41及び42が発熱し、温度が上昇する。導電レール41及び42には冷却パイプ45が設けられているため、冷却パイプ45内を冷媒が循環することで、熱伝導によって導電レール41及び42が冷却されることとなる。
【0007】
しかし、導電レール41及び42に電流を流した場合、電流は導電レール41及び42の表面付近を流れる(いわゆる、表皮電流)ため、ジュール損失による発熱も導電レール41及び42の表面付近で生じる。
図7では、導電レール41及び42の表面を、それぞれ符号41A及び42Aで示した。導電レール41の表面41A及び導電レール42の表面42Aで生じた熱は、輻射により、絶縁レール43の表面43A及び絶縁レール44の表面44Aをも加熱する。また、絶縁レール43及び44は、加速空間40の内部で極超音速加速される飛翔体が通過するときの衝撃波によっても加熱される。その結果、絶縁レール43及び44も温度が上昇してしまう。
【0008】
しかしながら、電磁レールガン400には、絶縁レール43及び44を冷却する機構がなく、そもそも冷却ができない。
【0009】
もし導電レール41及び42と同様に、絶縁レール43及び44に冷却パイプを設けたとしても、絶縁レール43及び44を構成する絶縁体は導電レール41及び42を構成する導体と比べて熱伝導率が2桁ほど小さい。そのため、絶縁レール43及び44の表面で生じた熱を冷却パイプとの間の熱伝導によって冷却するのは効率が悪く、実質的に絶縁レール43及び44の冷却が困難である。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、電磁加速装置において熱伝導を用いた冷却が困難な部位を冷却することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様である電磁加速装置は、
飛翔体を加速させるための加速空間を挟んで対向して配置された一対の導電レールと、
前記一対の導電レールと共に前記加速空間を囲むように前記加速空間を挟んで対向して配置された一対の絶縁レールと、
前記一対の絶縁レールのそれぞれに設けられた冷媒供給パイプと、
前記一対の絶縁レールの前記冷媒供給パイプのそれぞれの前記加速空間側の端部に設けられ、前記加速空間を挟んで対向している他の絶縁レールの前記加速空間に露出している表面に冷媒を吹き付ける冷媒噴射ノズルと、を有する、ものである。
これにより、熱伝導による冷却が困難な絶縁レールを冷却することができる。
【0012】
本発明の第2の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記加速空間を前記飛翔体が通過する前に、前記一対の絶縁レールに冷媒が吹き付けられる、ものである。
これにより、飛翔体が通過した後に冷媒の潜熱によって絶縁レールを冷却することができる。
【0013】
本発明の第3の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記一対の絶縁レールの一方に設けられた前記冷媒噴射ノズルは、前記一対の絶縁レールの他方の前記表面の全てに冷媒が付着するように冷媒を吹き付ける、ものである。
これにより、絶縁レールを広範囲にわかって冷却することができる。
【0014】
本発明の第4の一態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記一対の絶縁レールには、前記飛翔体が通過したときの前記絶縁レールの温度上昇によって全てが気化する量の冷媒が吹き付けられる、ものである。
これにより、冷却後の余分な冷媒が絶縁レール上に残存することを防止できる。
【0015】
本発明の第5の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
一対の前記冷媒供給パイプと一対の前記冷媒噴射ノズルとからなる冷媒噴射機構が、前記飛翔体の進行方向に複数並べて配置される、ものである。
これにより、絶縁レールを全体にわたって冷却することができる。
【0016】
本発明の第6態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
複数の前記冷媒噴射機構は、前記飛翔体の出射口の側では、前記出射口と反対の側と比べて、疎に配置される、ものである。
これにより、絶縁レールの温度上昇が大きな部位をより効率的に冷却することができる。
【0017】
本発明の第7の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記冷媒噴射ノズルは、前記一対の導電レールの前記加速空間に露出した表面にも冷媒を吹き付ける、ものである。
これにより、熱伝導によっては冷却しきれないおそれがある導電レールの表面を冷却することができる。
【0018】
本発明の第8の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記一対の絶縁レールのそれぞれに設けられ、前記一対の導電レールを冷却するための冷媒を供給する、導電レール冷却用冷媒供給パイプと、
前記一対の絶縁レールの前記導電レール冷却用冷媒供給パイプのそれぞれの前記加速空間側の端部に設けられ、前記一対の導電レールの前記加速空間に露出している表面に冷媒を吹き付ける導電レール冷却用冷媒噴射ノズルと、を更に有する、ものである。
これにより、熱伝導によっては冷却しきれないおそれがある導電レールの表面を冷却することができる。
【0019】
本発明の第9の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
一対の前記冷媒供給パイプと一対の前記冷媒噴射ノズルとからなる1以上の第1の冷媒噴射機構と、一対の前記導電レール冷却用冷媒供給パイプと一対の前記導電レール冷却用冷媒噴射ノズルとからなる1以上の第2の冷媒噴射機構とが、前記飛翔体の進行方向で交互に並んで配置される、ものである。
これにより、絶縁レール及び導電レールの全体にわたって冷媒を吹き付けることができる。
【0020】
本発明の第10の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記第1及び第2の冷媒噴射機構は、前記飛翔体の出射口の側では、前記出射口と反対の側と比べて、疎に配置される、ものである。
これにより、絶縁レール及び導電レールの温度上昇が大きな部位をより効率的に冷却することができる。
【0021】
本発明の第11の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記飛翔体が前記加速空間を通過したことによって前記一対の導電レールの温度が上昇した後に、前記一対の導電レールに冷媒が吹き付けられる、ものである。
これにより、温度が上昇した導電レールを確実に冷却することができる。
【0022】
本発明の第12の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記一対の絶縁レールは、前記加速空間を前記飛翔体が通過するときに前記飛翔体から離隔しているように配置される、ものである。
これにより、飛翔体が通過するときに、絶縁レールによるトラッキングの発生を防止できる。
【0023】
本発明の第13の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記一対の絶縁レールのそれぞれの前記表面には、1又は複数の溝又は凹みが設けられている、ものである。
これにより、絶縁レールの表面積を大きくして冷媒の付着面積を増加させ、冷媒の潜熱による冷却の効果を高めることができる。
【0024】
本発明の第14の態様である電磁加速装置は、上記の電磁加速装置であって、
前記一対の絶縁レールの一方に設けられた前記冷媒噴射ノズルと、前記一対の絶縁レールの他方に設けられた前記冷媒噴射ノズルとは、交互に冷媒を噴射する、ものである。
これにより、対向する噴射ノズルから噴射される冷媒が衝突することを防止し、所望の絶縁レールの表面に、より確実に冷媒を付着させることができる。