特許第6910727号(P6910727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6910727ドライブレコーダシステム、および、ドライブレコーダシステムによるファイル生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910727
(24)【登録日】2021年7月9日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】ドライブレコーダシステム、および、ドライブレコーダシステムによるファイル生成方法
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20210715BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   G07C5/00 Z
   H04M1/00 U
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-187877(P2017-187877)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-61624(P2019-61624A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】須田 秀隆
【審査官】 毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−134646(JP,A)
【文献】 特開2006−211570(JP,A)
【文献】 特開2014−123884(JP,A)
【文献】 特開2001−197194(JP,A)
【文献】 特開2002−374489(JP,A)
【文献】 特開2017−114408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00− 5/12
G08G 1/00− 1/16
G06Q 10/00−99/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたドライブレコーダと、前記ドライブレコーダと通信可能な制御装置とを備えるドライブレコーダシステムであって、
前記制御装置は、
車内に存在する電話の使用の開始、終了を検出する使用状態検出部を備え、
前記ドライブレコーダは、
データを記憶可能な記憶部と、
車両に設けられたカメラから映像信号を入力すると共に、車両に設けられたマイクから音声信号を入力し、映像信号および音声信号に基づいて映像データおよび音声データを含むファイルを生成し、前記記憶部に記憶させるファイル生成部と、
前記制御装置の前記使用状態検出部により電話の使用の開始が検出されてから電話の使用の終了が検出されるまでの間、前記マイクに収音される音声のうち、少なくとも電話を使用して行われた会話の音声に対応する音声信号の前記ファイル生成部への出力を停止する音声停止部とを備え、
前記音声停止部は、前記制御装置の前記使用状態検出部により電話の使用の開始が検出されてから電話の使用の終了が検出されるまでの間、前記ファイル生成部への音声信号の出力のオン/オフを切り替えるスイッチをオフする
ことを特徴とするドライブレコーダシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、車両に設けられた車載装置、または、車両に搭乗する搭乗者が車両に持ち込んだ携帯電話である
ことを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダシステム。
【請求項3】
車両に設けられたカメラから映像信号を入力すると共に、車両に設けられたマイクから音声信号を入力し、映像信号および音声信号に基づいて映像データおよび音声データを含むファイルを生成し、記憶部に記憶させるファイル生成部を有するドライブレコーダと、前記ドライブレコーダと通信可能な制御装置とを備えるドライブレコーダシステムによるファイル生成方法であって、
前記制御装置の使用状態検出部が、車内に存在する電話の使用の開始を検出する第1のステップと、
前記ドライブレコーダの音声停止部が、前記制御装置の前記使用状態検出部による電話の使用の開始の検出に応じて、前記マイクに収音される音声のうち、少なくとも電話を使用して行われた会話の音声に対応する音声信号の前記ファイル生成部への出力を停止する第2のステップと、
前記制御装置の前記使用状態検出部が、車内に存在する電話の使用の終了を検出する第3のステップと、
前記ドライブレコーダの前記音声停止部が、前記制御装置の前記使用状態検出部による電話の使用の終了の検出に応じて、前記ファイル生成部への音声信号の出力の停止を解除する第4のステップとを含み、
前記第2のステップにおいて前記音声停止部は、前記ファイル生成部への音声信号の出力のオン/オフを切り替えるスイッチをオフすることによって、音声信号の前記ファイル生成部への出力を停止する
ことを特徴とするドライブレコーダシステムによるファイル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダシステム、および、ドライブレコーダシステムによるファイル生成方法に関し、特に、映像データと共に音声データが記録されたファイルを生成して記憶するドライブレコーダシステム、および、ドライブレコーダシステムによるファイル生成方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行中、車載のカメラにより撮影された映像および車載のマイクにより収音された音声を記録するドライブレコーダが普及してきている。ドライブレコーダの利用目的の1つは、事故の前後の映像および音声が記録されたファイルを記憶しておき、後に、当該ファイルを、事故の責任の所在の究明や、事故の原因究明に使用できるようにすることにある。この利用目的を達成するため、ドライブレコーダの方式として、車両の走行中、常時、カメラによる撮影およびマイクによる収音を行うと共に、所定の記憶領域に、一定時間(ファイルごとに異なっていてもよい)分の映像および音声が記録されたファイルを随時記憶していき、当該所定の記憶領域の容量がフルになった場合、新たに生成されたファイルによって、古いファイルから順番に上書きする一方、事故が発生した場合には、所定の手段でそのことを検出し、事故が発生したタイミングの前後の時間帯に対応するファイルの上書きを禁止する方式が広く採用されている。この方式によれば、記憶領域を効率的に利用しつつ、事故の前後の映像および音声が記録されたファイルについては、削除されないようにすることができる。
【0003】
上記方式では、車両の走行中、音声の録音が、常時、行われることになる。従って、収音用のマイクが、搭乗者が発話した音声を収音可能な位置に設けられている場合、搭乗者が発話した音声が、少なくとも、一時的にはドライブレコーダに録音されることになる。ここで、地域によっては、法律等の規制によって、通話者の同意が無い場合には、電話を用いて行われた会話を録音することが禁止されている地域が存在しており、このような地域でドライブレコーダが使用される際には、搭乗者が電話を使用する場合における規制の順守が問題となる。
【0004】
そして、特許文献1には、電話を用いて行われた会話の録音を制限する技術について記載されている。すなわち、特許文献1に係る携帯電話端末は、着信時に受け取る情報に含まれる地域識別コードに基づいて、発呼元の電話が使用される地域に、電話を用いて行われた会話の録音に対する規制が有るか否かを判別し、規制がある場合には、自身が有するメモリへの会話の録音の禁止を含む、規制内容に対応する処理を行う。この特許文献1によれば、発信元の電話が、電話を用いて行われた会話の録音を禁止する地域で使用されている場合に、着呼先の電話のメモリに、電話を用いて行われた会話が録音されないようにすることができる。
【0005】
また、特許文献2には、ヘッドセットを用いてユーザが行った会話の録音を制限する技術について記載されている。すなわち、特許文献2に係るヘッドセットは、会話を録音する際に、会話の録音が許可される場合の条件として事前に設定された条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす場合にのみ、会話の録音を実行する。この特許文献2によれば、会話の録音が許可されない状況下で、ヘッドセットにより会話が録音されてしまうことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−197194号公報
【特許文献2】特開2005−260944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1では、発信元の電話が、電話を用いて行われた会話の録音を禁止する地域で使用されている場合に、着呼先の電話のメモリに、電話を用いて行われた会話が録音されないようにすることはできるものの、このような場合に、電話とは独立したドライブレコーダによって会話が録音されないようにすることはできない。同様に、上述した特許文献2では、会話の録音が許可されない状況下で、ヘッドセットにより会話が録音されてしまうことを防止することはできるものの、ヘッドセットとは独立したドライブレコーダによって会話が録音されないようにすることはできない。
【0008】
ここで、車両の搭乗者が電話を用いて行った会話がドライブレコーダによって録音されないようにするために、搭乗者自身が、ドライブレコーダを操作して、電話を使用するときに録音機能をオフし、電話の使用が終わったときに、当該機能をオンするようにすることが可能である。しかしながら、この作業は、電話を使用するたびに行う必要があり煩雑であり、また、運転手が、例えばハンズフリーシステム等を用いて電話を使用する場合に、車両を運転していることに起因してこの作業が行えないこともある。この作業を行えない場合、着信があったのにもかかわらず、電話に応答することができない、という事態が生じることになり、運転手の不利益となり得る。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、搭乗者による煩雑な作業を伴うことなく、搭乗者が電話を使用するときに、確実に、電話を使用して行われた会話が録音されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、車両に設けられたドライブレコーダと、ドライブレコーダと通信可能な制御装置とを備えるドライブレコーダシステムにおいて、制御装置は、車内に存在する電話の使用の開始、終了を検出する。また、ドライブレコーダは、車両に設けられたカメラから映像信号を入力すると共に、車両に設けられたマイクから音声信号を入力し、映像信号および音声信号に基づいて映像データおよび音声データを含むファイルを生成し、記憶部に記憶させる一方、制御装置により電話の使用の開始が検出されてから電話の使用の終了が検出されるまでの間、マイクに収音される音声のうち、少なくとも電話を使用して行われた会話の音声に対応する音声信号が、ファイルを生成する手段に出力されるのを停止する。その際、電話の使用の開始が検出されてから電話の使用の終了が検出されるまでの間、ファイルを生成する手段への音声信号の出力のオン/オフを切り替えるスイッチをオフするようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、制御装置によって、車内に存在する電話の使用の開始、終了が検出された上で、電話の使用の開始から終了までの間は、自動で、電話を使用して行われた会話の音声に対応する音声信号のファイルを生成する手段への出力が停止され、これにより、当該会話の音声が記録されたファイルがドライブレコーダに記憶されることが防止される。これにより、搭乗者による煩雑な作業を伴うことなく、搭乗者が電話を使用するときに、確実に、電話を使用して行われた会話が録音されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るドライブレコーダシステムの機能構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るドライブレコーダシステムの車載装置およびドライブレコーダの動作例を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態の変形例に係るドライブレコーダシステムの機能構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るドライブレコーダシステムの機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るドライブレコーダシステム1の機能構成例を示すブロック図である。ドライブレコーダシステム1は、車両に設けられたシステムであり、図1に示すように、車載装置2(特許請求の範囲の「制御装置」に相当)とドライブレコーダ3とを備えている。
【0014】
車載装置2は、車両のダッシュボードや、センターコンソール等に設けられた装置であり、車内に音声を放音するスピーカ5と、車両の搭乗者の発話を収音するために設けられた車載装置用マイク6と、画像を表示すると共に搭乗者のタッチ操作を受け付けるタッチパネル7とに接続されている。
【0015】
図1に示すように、車載装置2は、機能構成として、第1通信部10、第2通信部11、ハンズフリー通話部12および使用状態検出部13を備えている。各機能ブロック10〜13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10〜13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。このことは、後述する他の機能ブロックについても同様である。
【0016】
第1通信部10は、Bluetooth(登録商標)に従って、搭乗者により車両に持ち込まれた携帯電話4と通信リンクを確立し、携帯電話4と無線通信する。より詳細には、携帯電話4と車載装置2との間で、所定のタイミングでペアリングが適切に行われており、第1通信部10は、携帯電話4が通信可能な範囲に位置したときに、そのことを検出し、Bluetoothの手順に従って携帯電話4との間で通信リンクを確立し、携帯電話4と車載装置2との間でBluetoothに従った無線通信が可能な状態を構築する。この携帯電話4には、事前に、専用のアプリケーション(以下、「専用アプリケーション」という)がインストールされている。専用アプリケーションの機能については後述する。なお、携帯電話4と車載装置2との間での通信に使用する通信規格はBluetoothに限らず何でもよい。有線通信であってもよい。
【0017】
第2通信部11は、所定の通信規格に従って、ドライブレコーダ3と通信する。所定の通信規格は、何でもよく、有線通信に係る規格でも、無線通信に係る規格でもよい。所定の通信規格は、例えば、USB、イーサネット(登録商標)、Bluetooth、Wi-Fi(登録商標)である。
【0018】
ハンズフリー通話部12は、搭乗者によるハンズフリー通話を実現する。ハンズフリー通話は、既存の技術を用いて行われるため、以下、ハンズフリー通話部12の処理を簡潔に説明する。ハンズフリー通話部12は、携帯電話4にインストールされた専用アプリケーションと通信し、携帯電話4と他の電話との間で通信回線が接続されているときに、受話音声を携帯電話4から受信してスピーカ5によって車内に放音すると共に、搭乗者が発した送話音声を車載装置用マイク6によって収音して携帯電話4に送信することより、ハンズフリー通話を実現する。なお、本実施形態では、携帯電話4への呼び出しに対する応答の指示、および、通信回線の接続の終了の指示は、ハンズフリー通話部12がタッチパネル7に表示したユーザインターフェースに対するタッチ操作により行われる。車載装置2に音声認識機能や、ジェスチャー認識機能を設け、上記指示が、音声やジェスチャーにより行われる構成でもよい。
【0019】
使用状態検出部13は、携帯電話4の使用の開始、終了を検出する。以下、使用状態検出部13の処理について詳述する。使用状態検出部13は、ハンズフリー通話部12の処理を監視し、携帯電話4と他の電話との間で通信回線の接続が開始されたか否かを判定する。通信回線の接続が開始された場合は、携帯電話4に対して呼び出しがあり、搭乗者がそれに応答したか、または、搭乗者が携帯電話4により他の電話を呼び出し、呼び出し先の相手がそれに応答した状態であり、携帯電話4の使用が開始されたとみなすことができる。
【0020】
通信回線の接続が開始された後、使用状態検出部13は、ハンズフリー通話部12の処理を監視し、携帯電話4と他の電話との間での通信回線の接続が終了したか否かを判定する。通信回線の接続が終了した場合は、搭乗者または通話の相手が、電話を切った状態であり、携帯電話4の使用が終了したとみなすことができる。
【0021】
使用状態検出部13は、携帯電話4の使用が開始されたことを検出した場合、開始検出信号をドライブレコーダ3に送信する。また、使用状態検出部13は、携帯電話4の使用が終了したことを検出した場合、終了検出信号をドライブレコーダ3に送信する。使用状態検出部13が、携帯電話4の使用が開始されたことを検出してから、使用が終了したことを検出するまでの期間(=使用状態検出部13が開始検出信号を送信してから、終了検出信号を送信するまでの期間)は、搭乗者によって、携帯電話4を用いて会話が行われる可能性があり、逆に、この期間以外の期間は、搭乗者によって、携帯電話4を用いた会話は行われない。
【0022】
なお、搭乗者によるハンズフリー通話を制御するハンズフリー通話部12が、通信回線の接続の開始時、および、終了時に、使用状態検出部13に対して所定の信号を出力し、使用状態検出部13が、ハンズフリー通話部12から入力する信号に基づいて、携帯電話4の使用が開始されたこと、および、携帯電話4の使用が終了したことを検出する構成でもよい。
【0023】
図1に示すように、ドライブレコーダ3は、カメラ8と、ドライブレコーダ用マイク9(特許請求の範囲の「マイク」に相当)とに接続されている。カメラ8は、車両の前方を撮影する撮影装置であり、例えば、フロントウィンドシールドの上部に設けられる。カメラ8は、車両の走行中、継続して撮影を実行し、映像信号をドライブレコーダ3に出力する。なお、カメラ8は、車両の前方を撮影する撮影装置に限らず、車両の側方や、後方を撮影する撮影装置を含んでいてもよい。また、ドライブレコーダ用マイク9は、音声を収音する収音装置である。本実施形態に係るドライブレコーダ用マイク9は、車内において、車両の搭乗者が発話した場合に、発話の音声が収音されるような位置に設けられている。ドライブレコーダ用マイク9は、車両の走行中、継続して音声を収音し、音声信号をドライブレコーダ3に出力する。
【0024】
ドライブレコーダ3は、車両の走行中(本実施形態では、エンジンスイッチがオンされている間)、カメラ8により撮影された映像およびドライブレコーダ用マイク9により収音された音声を記録(録画、録音)する装置であり、機能構成として、通信部20、ファイル生成部21、事故検出部22および音声停止部23を備えている。また、ドライブレコーダ3は、スイッチSおよび記憶部30を備えている。
【0025】
通信部20は、所定の通信規格に従って、車載装置2と通信する。
【0026】
記憶部30は、ハードディスクや、フラッシュメモリ等の記憶媒体を備え、各種データを記憶する。記憶部30には、後述する記録ファイル(特許請求の範囲の「ファイル」に相当)を記憶するための記憶領域が確保されている。
【0027】
ファイル生成部21は、カメラ8から映像信号を入力すると共に、ドライブレコーダ用マイク9から音声信号を入力し、映像信号および音声信号に基づいて映像データおよび音声データを含む記録ファイルを生成し、記憶部30に記憶させる。詳述すると、ファイル生成部21は、映像信号をアナログ/デジタル変換すると共に、所定の映像コーデックにより圧縮し、所定のデータ形式の映像データを生成する。これと並行して、ファイル生成部21は、音声信号をアナログ/デジタル変換すると共に、所定の音声コーデックにより圧縮し、所定のデータ形式の音声データを生成する。映像データおよび音声データの生成に応じて、ファイル生成部21は、映像データと音声データとが多重化された所定のコンテナ形式(例えば、MP4や、MPEG)の動画ファイルを、記録ファイルとして生成する。
【0028】
ファイル生成部21は、記録ファイルの生成を一定期間ごとに行う。この結果、ファイル生成部21により、一定期間ごとに、一定期間の間にカメラ8により撮影された映像およびドライブレコーダ用マイク9により収音された音声が記録された記録ファイルが生成される。ファイル生成部21は、記録ファイルのメタデータに、記録ファイルを生成した日時を記述すると共に、オフ状態の上書き禁止フラグ(後述)を記述する。
【0029】
ファイル生成部21は、記憶部30の所定の記憶領域に、生成した記録ファイルを巡回的に記憶していく。すなわち、ファイル生成部21は、新たに記録ファイルを生成するたびに、随時、記録ファイルを当該所定の記憶領域に記憶する。ファイル生成部21は、当該所定の記憶領域がフルとなった場合、当該所定の記憶領域に記憶された記録ファイルのうち、古いものから優先的に、新たな記録ファイルによって上書き更新する。その際、ファイル生成部21は、メタデータの上書き禁止フラグ(後述)を参照し、当該フラグがオンの記録ファイルについては、上書きを禁止し、当該所定の記憶領域に記憶された状態を維持する。
【0030】
事故検出部22は、事故が発生した場合に、そのことを検出する。ドライブレコーダ3には、事故の発生を検出するための種々のセンサ、装置が接続されており、事故検出部22は、既存の技術により適切に事故を検出する。なお、事故検出部22が検出する事故に、衝突等の実際にアクションがあった事象だけでなく、急発進や、急ブレーキ、周囲で大きな音がしたこと等の実際にアクションは起きていないが、事故と関連するような事象を含めてもよいことは勿論である。
【0031】
事故検出部22は、事故を検出した場合、記憶部30に既に記憶されている記録ファイルのうち、事故が発生したタイミングから遡って所定期間の間に生成され、記憶部30に記憶された記録ファイルについて、上書き禁止フラグをオンする。さらに、事故検出部22は、事故を検出した場合、事故が発生したタイミング以降の所定期間の間に生成され、記憶部30に記憶される記憶ファイルについて、上書き禁止フラグをオンする。この結果、事故が発生したタイミングの前後の時間帯の映像、音声が記録された記録ファイルは、上書き更新されることなく、記憶部30に記憶された状態が維持される。
【0032】
音声停止部23は、車載装置2の使用状態検出部13から開始検出信号および終了検出信号を受信し、開始検出信号を受信してから終了検出信号を受信するまでの間、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21への音声信号の出力を停止する。以下、音声停止部23の処理について詳述する。
【0033】
ここで、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21へと音声信号を出力するための信号ラインにはスイッチSが設けられている。このスイッチSは、ファイル生成部21への音声信号のオン/オフを切り替えるスイッチであり、オンのときに「出力」とし、オフのときに「非出力」とする。図1では、説明の便宜のため、スイッチSを、カメラ8のブロックとファイル生成部21のブロックとを結ぶ線上に存在するブロックにより表している。
【0034】
上述したように、使用状態検出部13は、携帯電話4と他の電話との通信回線の接続の開始時に開始検出信号を送信し、接続の終了時に終了検出信号を送信する。音声停止部23は、開始検出信号を受信したときに、スイッチSにオフ信号を出力して、スイッチSをオフする。これにより、携帯電話4と他の電話との通信回線の接続の開始に応じて、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21への音声信号の出力が停止される。開始検出信号を受信した後、終了検出信号を受信した場合、音声停止部23は、スイッチSにオン信号を出力して、スイッチSをオンする。これにより、通信回線の接続の終了に応じて、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21への音声信号の出力が再び開始される。
【0035】
音声停止部23により、以上の処理が行われる結果、携帯電話4と他の電話との間で通信回線が接続されている期間、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21への音声信号の出力が停止される。従って、当該期間にドライブレコーダ用マイク9が収音した音声が記録された音声データは生成されない。これにより、以下の効果を奏する。すなわち、携帯電話4と他の電話との間で通信回線が接続されている期間は、搭乗者が携帯電話4を使用して会話を行う可能性がある期間である。本実施形態によれば、このような期間に、ドライブレコーダ用マイク9が収音した音声が記録された音声データは生成されないため、搭乗者が携帯電話4を使用して行った会話の音声が記録された音声データを含む記録ファイルが記憶部30に記憶されることがない。従って、本実施形態によれば、通話者の許可なく電話を用いて行われた会話を録音することが禁止されている規制が存在する地域でドライブレコーダ3が使用される場合に、携帯電話4を使用して行われた会話が録音されることを防止でき、当該規制を順守することができる。また、会話の録音の禁止は、搭乗者の作業を伴わず、自動で行われるため、搭乗者の利便性がよい。
【0036】
図2は、本実施形態に係る車載装置2およびドライブレコーダ3の処理の一例を示すフローチャートである。図2のフローチャートFAは、車載装置2の使用状態検出部13の動作を示し、フローチャートFBは、ドライブレコーダ3の音声停止部23の動作を示している。図2のフローチャートの処理は、車両の走行中(本実施形態では、エンジンスイッチがオンされている間)、継続して実行される。
【0037】
図2のフローチャートFAに示すように、使用状態検出部13は、携帯電話4の使用が開始されたか否かを監視する(ステップSA1)。携帯電話4の使用が開始された場合(ステップSA1:YES)、使用状態検出部13は、開始検出信号をドライブレコーダ3に送信する(ステップSA2)。開始検出信号の送信後、使用状態検出部13は、携帯電話4の使用が終了したか否かを監視する(ステップSA3)。
【0038】
携帯電話4の使用が終了した場合(ステップSA3:YES)、使用状態検出部13は、終了検出信号をドライブレコーダ3に送信する(ステップSA4)。次いで、使用状態検出部13は、エンジンスイッチSがオフされたか否かを判定し(ステップSA5)、停止されていない場合(ステップSA5:NO)、処理手順をステップSA1に戻し、停止された場合(ステップSA5:YES)、処理を終了する。なお、フローチャートFAでは、説明の便宜のため、ステップSA5で、エンジンスイッチSがオフされたか否かを判定する構成としているが、使用状態検出部13は、フローチャートFAの処理を実行している間、継続してエンジンスイッチがオフされたかを監視し、オフされた場合は、処理を終了する。
【0039】
図2のフローチャートFBに示すように、ドライブレコーダ3の音声停止部23は、開始検出信号を受信したか否かを監視する(ステップSB1)。開始検出信号を受信した場合(ステップSB1:YES)、音声停止部23は、スイッチSをオフする(ステップSB2)。
【0040】
次いで、音声停止部23は、終了検出信号を受信したか否かを監視する(ステップSB3)。終了検出信号を受信した場合(ステップSB3:YES)、音声停止部23は、スイッチSをオンする(ステップSB4)。
【0041】
以上詳しく説明したように、本実施形態に係るドライブレコーダシステム1において、車載装置2は、車内に存在する電話である携帯電話4の使用の開始、終了を検出する。また、ドライブレコーダ3は、車両に設けられたカメラ8から映像信号を入力すると共に、車両に設けられたドライブレコーダ用マイク9から音声信号を入力し、映像信号および音声信号に基づいて映像データおよび音声データを含む記録ファイルを生成し、記憶部30に記憶させる。そして、ドライブレコーダ3は、車載装置2の使用状態検出部13により電話の使用の開始が検出されてから電話の使用の終了が検出されるまでの間、ドライブレコーダ用マイク9に収音される音声に基づく音声信号が、ファイル生成部21(ファイルを生成する手段)に出力されるのを停止する。
【0042】
この構成によれば、車載装置2によって、車内に存在する携帯電話4の使用の開始、終了が検出された上で、携帯電話4の使用の開始から終了までの期間は、自動で、搭乗者が行った会話の音声に対応する音声信号の出力が停止され、これにより、当該期間にドライブレコーダ用マイク9が収音した音声が記録された記録ファイルが記憶部30に記憶されることが防止される。これにより、搭乗者による煩雑な作業を伴うことなく、搭乗者が携帯電話4を使用するときに、確実に、携帯電話4を用いて行った会話が録音されないようにすることができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係るドライブレコーダシステム1Aの機能構成例を示すブロック図である。図3において、第1実施形態で説明した構成要素に対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。上述した第1実施形態では、車載装置2が使用状態検出部13を備え、携帯電話4の使用状態に応じて、開始検出信号および終了検出信号をドライブレコーダ3に送信した。
【0044】
一方、図3に示すように、本実施形態では、ドライブレコーダ3と携帯電話4Aとが、Bluetooth、その他の通信規格により通信可能に接続される。携帯電話4Aの携帯電話側通信部40は、所定の通信規格に従って、ドライブレコーダ3と通信する。さらに、携帯電話4Aは、第1実施形態に係る使用状態検出部13に対応する使用状態検出部13Aを備える。使用状態検出部13Aは、第1実施形態に係る使用状態検出部13と同様、電話の使用の開始を検出した場合に開始検出信号をドライブレコーダ3に出力し、電話の使用の終了を検出した場合に終了検出信号をドライブレコーダ3に出力する。本実施形態によれば、車載装置2に電話の使用の開始および終了を検出する機能を実装することなく、電話を使用して行われた会話が録音されることを防止できる。なお、本実施形態では、携帯電話4が、特許請求の範囲の「制御装置」に相当する。
【0045】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係るドライブレコーダシステム1Bの機能的構成を示すブロック図である。図4において、第1実施形態で説明した構成要素に対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。図1図4との比較で明らかなとおり、本実施形態に係るドライブレコーダ3Bは、第1実施形態に係る音声停止部23に代えて、音声停止部23Bを備える。この音声停止部23Bには、車載装置用マイク6から音声信号が入力される。なお、音声停止部23に音声信号を出力するマイクは、車載装置用マイク6でなくてもよい。すなわち、音声停止部23に音声信号を出力するマイクは、車両の搭乗者の発話を収音可能なマイクであればよい。
【0046】
また、本変形例に係るドライブレコーダ3は、スイッチSに代えて、信号混合部Lを備える。信号混合部Lは、ドライブレコーダ用マイク9から音声信号を入力すると共に、音声停止部23Bから逆位相信号(後述)を入力し、これら信号を混合して出力する。逆位相信号および信号混合部Lについては後に説明する。
【0047】
本実施形態では、音声停止部23Bは、車載装置2の使用状態検出部13から開始検出信号を受信してから、終了検出信号を受信するまでの間、第1実施形態に係る処理に代えて以下の処理を実行する。すなわち、音声停止部23Bは、車載装置用マイク6から入力する音声信号のうち、搭乗者の発話音声(搭乗者が携帯電話4を使用して行う会話の音声を含む音声)、および、スピーカ5が放音する発話音声(携帯電話と通信回線が接続された他の電話を使用する者の会話の音声)に対応する音声信号を抽出する。以下、抽出する音声信号を「会話音声信号」という。音声停止部23Bは、車載装置用マイク6から入力する音声信号に、フィルタリング処理を含む音声処理を施して、走行ノイズを含む環境音や、ラジオ音声、オーディオ音声等の、人間が行った会話に基づく音声以外の音声を減衰し、また、除去することによって、会話音声信号を抽出する。
【0048】
音声停止部23Bは、会話音声信号の抽出に応じて、会話音声信号の波形と逆位相の波形の逆位相信号を生成し、信号混合部Lに出力する。この逆位相信号は、携帯電話4と他の電話との間で通信回線が接続されている間に、搭乗者および相手が発話した音声の音声信号と、逆位相の波形の信号である。
【0049】
音声停止部23Bは、随時、ドライブレコーダ用マイク9が出力する音声信号と同期がとられた適切なタイミングで、逆位相信号を信号混合部Lに出力する。信号混合部Lは、ドライブレコーダ用マイク9からの音声信号と、音声停止部23Bからの逆位相信号とを混合することにより、ドライブレコーダ用マイク9から入力する音声信号のうち、搭乗者の発話の音声に対応する音声信号を逆位相信号によって打ち消した後、ファイル生成部21に出力する。上述したように、逆位相信号の波形は、搭乗者が発話した音声の音声信号の波形と逆の位相であるため、ドライブレコーダ用マイク9からの音声信号と、逆位相信号とが混合されると、搭乗者の発話の音声に対応する音声信号が打ち消され除去される。
【0050】
音声停止部23Bにより以上の処理が行われる結果、開始検出信号を受信してから、終了検出信号を受信するまでの期間(=通信回線が接続されている期間)、ファイル生成部21に出力される音声信号には、電話を使用して行われた会話の音声に基づく音声信号が含まれない状態となる。これにより、第1実施形態と同様、当該期間で電話を使用して行われた会話が記録された記録ファイルは記憶部30に記憶されず、搭乗者が電話を使用して行った会話が録音されないようにすることができる。
【0051】
特に本実施形態では、通信回線が接続されている期間、ドライブレコーダ用マイク9が収音した音声のうち、電話を使用して行われた会話の音声が録音されず、他の音声については少なくとも一部は録音される。従って、上記期間に事故が発生した場合には、その事故に由来する音声の少なくとも一部については録音されることになり、第1実施形態と比べて、事故の責任の所在の究明や、事故の原因究明についての記録ファイルの有用性を高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、逆位相信号により、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21に出力される音声信号から、搭乗者が行った会話の音声を少なくとも含む音声に対応する音声信号を除去する構成であった。ただし、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21に出力される音声信号から、電話を使用して行われた会話の音声を少なくとも含む音声に対応する音声信号を除去する方法は、本実施形態で例示した方法に限らない。例えば、携帯電話4と通信回線が接続された他の電話を使用する者の発話音声の除去に関しては、音声停止部23Bが、ハンズフリー通話部12からスピーカ5に出力される音声信号を取得し、逆位相の信号を生成し出力する構成でもよい。
【0053】
その他、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0054】
例えば、第1実施形態では使用状態検出部13を車載装置2が備え、第2実施形態では使用状態検出部13Aを携帯電話4が備える構成であるが、以下の構成でもよい。すなわち、ドライブレコーダ3と、「車載装置2および携帯電話4」以外の制御装置とを通信可能に接続する。さらに、当該制御装置と携帯電話4とを通信可能に接続する。制御装置は、例えば、ドライブレコーダ3と携帯電話4との通信を中継する装置である。そして、第1実施形態に係る使用状態検出部13に対応する機能ブロックを、当該制御装置に設け、制御装置が携帯電話4と通信して、携帯電話4の使用状態を検出する構成でもよい。
【0055】
また例えば、第1実施形態では、ドライブレコーダ3と接続するマイク(ドライブレコーダ用マイク9)と、車載装置2と接続するマイク(車載装置用マイク6)とは異なるマイクであったが、これらマイクを同一のマイクにより構成してもよい。
【0056】
また例えば、携帯電話4の使用の開始、終了に応じて、車載装置2から、ドライブレコーダ3に送信する信号は、第1実施形態で説明した開始検出信号および終了検出信号に限らない。一例として、開始検出信号に代えて、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21への音声信号の出力の停止を指示する信号を送信する構成でもよく、また、終了検出信号に代えて、ドライブレコーダ用マイク9からファイル生成部21への音声信号の出力の開始を指示する信号を送信する構成でもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B ドライブレコーダシステム
2 車載装置(制御装置)
3、3B ドライブレコーダ
4、4A 携帯電話(電話)
13、13A 使用状態検出部
21 ファイル生成部
23、23B 音声停止部
30 記憶部
図1
図2
図3
図4