(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縦リブの上端部及び下端部の少なくとも一方は、該縦リブの中央高さよりも前記凹状の縦リブの溝深さ又は前記凸状の縦リブの突出高さが小さい、請求項4に記載の合成樹脂製容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の二重プリフォームを延伸ブロー成形して製造した積層剥離容器であって口部に外気導入孔を有する場合、外気導入孔近傍における内体の未延伸部分がブロー成形時に径方向外側に膨らんでしまい、外気導入孔から胴部における外層体と内層体との間の空間への気道を塞いでしまうことがあり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外気導入孔から胴部までの気道を確保し易い合成樹脂製容器、プリフォーム、及び合成樹脂製容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の合成樹脂製容器は、
外層体と該外層体の内面に剥離可能に積層された内層体とを有し、延伸ブロー成形により形成される合成樹脂製容器であって、
筒状の口部と、
該口部の下方に位置し下方に向けて拡径する肩部と、
該肩部の下方に連なる胴部と、
該胴部の下端を閉塞する底部と
を備え、
前記口部には、外気を外層体と内層体との間の空間に導入する外気導入孔が形成されており、
前記内層体は結晶性樹脂により形成されており、前記内層体における前記口部の少なくとも一部に他の領域より大きい結晶化度を有する結晶化領域を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記結晶化領域は、可視光に対する光透過率が他の領域より低いことが好ましい。
【0010】
また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記結晶化領域は、前記口部に形成されたネックリングの下方の所定領域であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記肩部は、上下方向に延在する凹状又は凸状の縦リブを有することが好ましい。
【0012】
また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記縦リブの上端部及び下端部の少なくとも一方は、該縦リブの中央高さよりも前記凹状の縦リブの溝深さ又は前記凸状の縦リブの突出高さが小さいことが好ましい。
【0013】
また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記結晶化領域は、少なくとも前記縦リブの上端部まで延在することが好ましい。
【0014】
また、本発明のプリフォームは、
外体と該外体の内面に積層された内体とを有し、延伸ブロー成形に用いられる合成樹脂製のプリフォームであって、
筒状の口部と、
該口部の下方に位置する胴部と、
該胴部の下端を閉塞する底部と
を備え、
前記口部には、前記外体を貫通する外気導入孔が形成されており、
前記内体は結晶性樹脂により形成されており、前記内体における前記口部の少なくとも一部に他の領域より大きい結晶化度を有する結晶化領域を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のプリフォームは、上記構成において、前記結晶化領域は、前記延伸ブロー成形時における非延伸部であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のプリフォームは、上記構成において、前記結晶化領域の少なくとも一部における外周面には、上下方向に延びる通気リブが形成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明のプリフォームは、上記構成において、前記通気リブは、前記外気導入孔から前記結晶化領域まで延在していることが好ましい。
【0018】
また、本発明の合成樹脂製容器の製造方法は、
外体と該外体の内面に積層された内体とを有するプリフォームの延伸ブロー成形による合成樹脂製容器の製造方法であって、
前記プリフォームは、筒状の口部と、該口部の下方に位置する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、前記口部には、前記外体を貫通する外気導入孔が形成されており、
前記外体、及び結晶性樹脂である前記内体を成形するステップと、
前記内体における前記口部の少なくとも一部の再加熱及び冷却により、結晶化度が他の領域より大きい結晶化領域を形成するステップと、
前記外体の内周面に、前記結晶化領域を有する前記内体を嵌合させてプリフォームを形成するステップと、
前記プリフォームを延伸ブロー成形して合成樹脂製容器を形成するステップと
を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の合成樹脂製容器の製造方法は、上記構成において、前記内体における前記口部の少なくとも一部の冷却は、強制冷却を伴わない徐冷であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外気導入孔から胴部までの気道を確保し易い合成樹脂製容器、プリフォーム、及び合成樹脂製容器の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
【0023】
図1及び
図2に示す本発明の一実施形態である合成樹脂製容器1は、積層剥離容器又はデラミネーション容器とも呼ばれるものであり、外層体2と内層体3とを備えた二重構造であるとともに、その外形形状は、円筒状の口部4と、この口部4の下方に位置すると共に下方に向けて拡径する肩部7と、肩部7の下方に連なる円筒状の胴部5と、この胴部5の下端を閉塞する底部6とを有するボトル形状となっている。
【0024】
なお、本明細書、特許請求の範囲、及び図面においては、上下方向は、
図1に示すように合成樹脂製容器1を正立姿勢とした状態における上方、下方を意味するものとする。また、径方向外側とは、
図1における合成樹脂製容器1の中心軸線O1を通り中心軸線O1に垂直な直線に沿って外側に向かう方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線O1に向かう方向を意味するものとする。
【0025】
口部4には雄ねじ4aが設けられ、注出キャップや注出ポンプ等の注出部材を雄ねじ4aにねじ結合させて口部4に装着することができる。なお、口部4は、雄ねじ4aに替えて円環状の突起を備えて、注出キャップ等の注出部材が打栓によってアンダーカット状に係合することにより装着される構成とすることもできる。口部4の下部には、例えば延伸ブロー成形により合成樹脂製容器1を成形する際にブロー成形用の金型に固定するためのネックリング8が設けられている。
【0026】
以下、この合成樹脂製容器1をスクイズ式の注出容器として用いる場合を例示して説明する。
【0027】
外層体2は、この合成樹脂製容器1の外殻を構成するものであり、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂材料により形成することができる。外層体2の胴部5に相当する部分は可撓性を有しており、スクイズ(圧搾)されて凹むことができるとともに、凹んだ状態から元の形状に復元することができる。なお、この合成樹脂製容器1をポンプ付容器として用いる場合には、外層体2の胴部5に相当する部分はスクイズ可能に形成されなくてもよい。
【0028】
内層体3は、外層体2を形成する合成樹脂材料に対する相溶性が低く、結晶性樹脂である、ナイロンやエチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の合成樹脂材料によって外層体2よりも厚みが薄い袋状に形成することができ、外層体2の内面に剥離可能に積層されている。内層体3の内部は口部4の開口に連なる収容部Sとなっており、この収容部Sには、例えば、醤油等の食品調味料や飲料、あるいは化粧水などの化粧料、シャンプーやリンス、液体石鹸などのトイレタリーを内容物として収納することができる。
【0029】
内層体3に含まれる結晶性樹脂とは、熱可塑性樹脂に分類され、分子鎖が規則正しく配列した結晶部を有する樹脂である。結晶性樹脂内には、結晶部と非晶部とが混在し、両者の割合は、例えば結晶性樹脂を加熱した後に冷却するときの冷却速度等に依存する。一般に結晶性樹脂は、加熱後に徐冷した方が、結晶部の割合が高まる。結晶部の割合が高い、すなわち結晶化度が大きい結晶性樹脂は、結晶部と非晶部との屈折率差に起因した光の拡散及び反射が発生するために光透過率が低下する。結晶化度が大きい結晶性樹脂は、剛性が高い傾向にある。結晶化度の測定は、例えば、密度法や、X線回折法、DSC(示差走査熱量計)による方法、FT−IR法、固体NMR法等を用いることができる。
【0030】
外層体2の口部4には、
図1に示すように、外層体2と内層体3との間に外気を導入するための外気導入孔4bが設けられている。外気導入孔4bは、逆止弁としての機能を備えた構成とされるか、又は逆止弁が装着されて、外層体2と内層体3との間に外気を導入するが外層体2と内層体3との間の空気を外部に流出させない構成とされるのが好ましい。しかし、外気導入孔4bは、逆止弁ないし逆止弁の機能が設けられない構成とすることもできる。なお、外気導入孔4bの形状は、図示する長穴形状に限定されるものではなく、円形状など、他の様々な形状を採用することができる。
【0031】
このような構成の合成樹脂製容器1は、その口部4に注出キャップ等の注出部材を装着することで注出容器に構成することができる。この場合、外層体2の胴部5に相当する部分をスクイズ(圧搾)することで内容物を注出部材から外部に注出することができ、内層体3は内容物の注出に伴い外層体2の内面から剥離して減容変形することができる。スクイズの解除後は、外層体2に設けた外気導入孔4bから外層体2と内層体3との間に外気が導入されて、内層体3を減容変形させたまま外層体2を元の形状に復元させることができる。したがって、収容部Sに収容された内容物を外気と置換することなく注出することができるようにして、収容部Sに収容された内容物への外気の接触を減らして、その劣化や変質を抑制することができる。
【0032】
本発明の合成樹脂製容器1では、
図1に示すように、口部4におけるネックリング8の下方の所定領域に結晶化領域9を有している。結晶化領域9は、当該領域内の内層体3が白化する程度にまで結晶化度を大きくした結果、光透過率が低下した領域である。合成樹脂製容器1は、
図1のネックリング8に対応するプリフォーム11(
図3(b)等参照)のネックリング18をブロー成形用金型に固定して延伸ブロー成形により形成する。ここで、ネックリング8の下方における非延伸部となる領域は、延伸ブロー成形時の内側からの高圧エアによって径方向外側に膨らみ易く、その場合外層体2との間に形成される気道が塞がれて、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間への空気の移動が妨げられる可能性がある。本実施形態では、
図1に示す結晶化領域9において内層体3が白化する程度にまで結晶化度を大きくし、弾性係数を大きくして高い剛性を確保できるように構成している。これによって、延伸ブロー成形時に結晶化領域9における内層体3の変形を抑制することができるため、外気導入孔4bから胴部5への空気の移動が妨げられるのを抑制できる。なお、ここでいう白化とは、上述のように結晶性樹脂における結晶化度を大きくすることで光透過率が低下した状態をいうものであり、色は白色に限定されない。
【0033】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、ネックリング8の下方の所定領域に結晶化領域9を形成するように構成したが、この態様には限定されない。結晶化領域9は、ネックリング8を含んだり、ネックリング8の更に上方まで延在していてもよい。例えば、結晶化領域9は、外気導入孔4bの高さまで延在するように構成してもよい。また、結晶化領域9は、口部4の下端部を越えて肩部7まで延びていてもよい。
【0034】
本実施形態では、結晶化領域9を有することによって、その他の領域よりも弾性係数が高くなり、延伸ブロー成形時に結晶化領域9は延伸され難くなり、外体12と内体13の隙間の気道が確保できることになる。結晶化領域9を有しない場合は、延伸ブロー時にネックリング18下付近も延伸されてしまい、外体12と内体13の隙間の気道が塞がれてしまうことになる。
【0035】
合成樹脂製容器1の肩部7には、
図1に示すように、上下方向に延びる少なくとも1本の縦リブ10が設けられている。肩部7に縦リブ10を設けることにより、外気導入孔4bから空気を吹き込む等の方法で、内層体3を外層体2から剥離させ、口部4の上端開口から空気を圧入して内層体3を元に戻す初期剥離処理後には、縦リブ10の周辺領域で内層体3と外層体2の間に隙間が形成される。このように縦リブ10の周辺領域において内層体3と外層体2の間に隙間を有することにより、使用時(内容物の吐出時)に、外気導入孔4bから当該隙間を介して内層体3と外層体2の間に外気を導入し易くなる。
【0036】
特に本実施形態では、
図1に示すように、上述の結晶化領域9と縦リブ10の上端部10Tとが連続的に形成されることになる。そのため、外気導入孔4bから導入された外気は、結晶化領域9における外層体2と内層体3の気道が確保されているため、縦リブ10まで容易に到達することができる。そして、縦リブ10に到達した外気は、縦リブ10における外層体2と内層体3との隙間を通って胴部5に容易に到達することができ内層体3の収縮がスムーズに行えることになる。
【0037】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、結晶化領域9の下端部の高さが縦リブ10の上端部10Tの高さに概ね一致するように構成しているが、この態様には限定されず、結晶化領域9と縦リブ10とは高さ方向にオーバーラップしていてもよい。また、縦リブ10は結晶化領域9と高さ方向に離間していてもよいし、縦リブ10を設けない構成としてもよい。
【0038】
本実施形態では、
図2に示すように、周方向に等間隔で18本の縦リブ10を設けている。なお、縦リブ10の本数や長さ等は種々変更可能である。
【0039】
本実施形態において、縦リブ10は、それぞれ上下方向に向けて延びると共に、容器内側に向けて凹む凹状のリブとして形成されている。縦リブ10が設けられた部分においては、外層体2の形状に対応して内層体3の形状も凹リブ状となっている。
【0040】
縦リブ10は、上下方向の中央高さ10Mよりも上端部10T及び下端部10Bの方が溝深さが小さくなるように構成されている。このように上端部10T及び下端部10Bにおいて溝深さが小さくなっていることで、初期剥離処理時に縦リブ10において内層体3が外層体2から剥離し易くなる。
【0041】
本実施形態の合成樹脂製容器1では、縦リブ10の溝深さが上端部10T及び下端部10Bで小さくなっており、この上端部10T又は下端部10Bで内層体3が外層体2から剥離し易くなっているため、内層体3を外層体2から剥離する工程および、その後の内層体3を元に戻す工程をスムーズに行うことができ、縦リブ10の位置において内層体3と外層体2の間に所期した隙間を形成することも容易となる。
【0042】
また、本実施形態の縦リブ10は、その上端部10T及び下端部10Bにおいて、滑らかに肩部7の外表面に連なっている。このような構成により、初期剥離処理時に縦リブ10の上端部10T又は下端部10Bの位置において内層体3をよりスムーズに剥離させることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、縦リブ10の下端部10Bが、肩部7の下端よりも上方に位置している。例えば、縦リブ10が肩部7から胴部5にわたって延在し、下端部10Bが胴部5に位置している場合、初期剥離処理時に当該下端部10Bにおいて内層体3が剥がれ難くなる虞があるが、本実施形態のように縦リブ10の下端部10Bが肩部7内に位置していることで、内層体3を容易に剥離させることができる。なお、縦リブ10は、肩部7から胴部5にわたって延在し、下端部10Bが胴部5に位置していてもよい。
【0044】
図2に示すように、合成樹脂製容器1の平面視では、各縦リブ10は合成樹脂製容器1の径方向に沿って延在している。また、各縦リブ10は、上端部10Tから下端部10Bまで略直線状に延在しているが、これに限られず、屈曲していたり湾曲していたりしてもよい。
【0045】
また、
図1,
図2に示すように、縦リブ10の幅(延在方向に垂直な方向における、肩部7の外表面に開口する部分の溝幅)は、上端部10T及び下端部10Bにおいて小さくなり、先細り形状となっている。このような構成により、縦リブ10における内層体3の剥離性をさらに高めることができる。
【0046】
なお、縦リブ10は肩部7の表面から容器外側に向けて突出する凸状のリブとすることも可能である。その場合、縦リブ10の中央高さ10Mよりも少なくとも上端部10T又は下端部10Bにおいて突出高さが小さくなるようにすることが好ましい。この場合、縦リブ10の断面形状は、外層体2の凸形状に応じて内層体3も凸形状となる。
【0047】
この合成樹脂製容器1は、
図3(a),(b)に示す本発明の一実施形態である合成樹脂製のプリフォーム11を延伸ブロー成形することにより形成することができる。
【0048】
プリフォーム11は、外層体2を形成する合成樹脂製の外体12と、内層体3を形成する合成樹脂製の内体13とを備えた二重構造となっており、その外形形状は、円筒状の口部14と、この口部14の下方に連なる円筒状の胴部15と、この胴部15の下端を閉塞する底部16とを有する有底筒状(略試験管状)となっている。なお、口部14は、合成樹脂製容器1の口部4に対応した形状に形成され、雄ねじ14a、及び外体12を貫通する外気導入孔14bが設けられている。また、底部16は湾曲形状(半球形状)に形成されている。内体13上端部の開口部分には径方向外側に突出する円環状のフランジ14cが設けられており、当該フランジ14cが外体12の開口端に架け渡され(載置され)ることにより、内体13の開口部分が当該開口端に固定されている。なお、符号O2は、口部14、胴部15及び底部16に共通の中心軸線を示している。
【0049】
外体12は、外層体2と同様の合成樹脂材料、つまりポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、等の延伸ブローが可能な合成樹脂材料により形成することができる。内体13も、内層体3と同様の合成樹脂材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ナイロン、エチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の合成樹脂材料によって形成さすることができる。内体13は外体12よりも厚みが薄く形成されており、外体12の内面に当該内面の全体を覆うように積層されている。また、内層体3は単一の合成樹脂のみで形成される単層構造でもよいが、バリア性や耐内容物適正を向上させる為に複数の合成樹脂で形成される(例えば、PET/Ny/PET、PET+Nyブレンド等)構造でもよい。
【0050】
内体13におけるネックリング18の下方には、
図4に示すように結晶化領域19が形成されている。結晶化領域19は、先に述べたように、結晶性樹脂において、例えば加熱後に徐冷することにより結晶化度を大きくした領域である。本実施形態において、結晶化領域19は、内体13が白化する程度にまで結晶化度を大きくしており、これによって当該領域における内体13の剛性を高め、延伸ブロー成形時に内体13が径方向外側に膨らむことを抑制して外気の気道を確保できるようにしている。
【0051】
内体13の結晶化領域19には、
図5(b)に示すように、通気リブ19aが形成されている。本実施形態において、通気リブ19aは、口部14における外周面から径方向外側に突出して形成されており、
図5(a)の左右に3箇所ずつ、外気導入孔14bに関して対称位置に設けられている。この通気リブ19aは、
図3及び
図4に示すように、プリフォーム11の口部14における外気導入孔14bの上方から結晶化領域19の下端まで上下方向に延在している。このように結晶化領域19の少なくとも一部を含む高さ位置に通気リブ19aを形成することにより、結晶化領域19における内体13の剛性向上による気道の確保に加え、この通気リブ19a同士の間の空間を通じて更に太い気道を確保することができる。そのため、プリフォーム11の延伸ブロー成形による合成樹脂製容器1において、外気導入孔4bから導入された外気をスムーズに胴部5に供給することができる。本実施形態では、通気リブ19aが外気導入孔14bの高さまで上方に延在しているので、外気導入孔14bから導入された外気をこの通気リブ19aを通じて更にスムーズに胴部5に供給することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、通気リブ19aが外気導入孔14bから結晶化領域19まで延在するように構成したが、この態様には限定されず、通気リブ19aは、少なくとも結晶化領域19の一部を含む高さ位置に形成されていればよい。
【0053】
また、本実施形態では、通気リブ19aを左右3箇所ずつ、外気導入孔14bに関して対称位置に配置したが、この態様に限定されるものではなく、通気リブ19aは少なくとも1箇所に設けていればよく、個数、間隔は任意に定めることができる。
【0054】
次に、本発明の一実施形態に係る合成樹脂製容器1の製造方法について説明する。
【0055】
図6は、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の製造方法を実施する手順を示すフローチャートである。
【0056】
最初に、合成樹脂製容器1を延伸ブロー成形により製造するためのプリフォーム11の形成方法について説明する。まず、
図3に示す外体12を射出成形によって成形する(ステップS101)。また、外体12の成形と並行して、
図3及び
図5に示す内体13を別の射出成形工程によって成形する(ステップS102)。なお、
図6では、外体12の成形に続いて内体13を成形するように記載しているが、両者の成形は独立して行うことができるため、成形順序は問わない。また、外体12及び内体13の成形は、射出成形に限定されず、圧縮成形等の他の成形方法を採用してもよい。
【0057】
次に、ステップS102で成形した内体13に結晶化領域19を形成する(ステップS103)。この結晶化領域19の形成は、例えば内体13の射出成形が終了して内体13が急速に冷却された後に、再度ネックリング18の下方の所定領域のみを再加熱し、その後、ファンによる空冷などの強制冷却を行うことなく当該所定領域を徐冷することによって行うことができる。ネックリング18の下方の所定領域のみを再加熱するに際しては、所定領域以外をマスキングするなどしてから再加熱を行う。また、結晶化領域19の形成は、内体13を射出成形によって成形する際に、樹脂が溶融状態から冷却される過程で当該所定領域のみが徐冷されるようにしてもよい。本実施形態では、結晶化領域19が白化する程度にまで結晶化度が大きくなるように結晶化処理を行うように構成したが、この態様に限定されない。この結晶化領域19の形成は、例えば、結晶化領域19が所定の剛性(縦弾性係数)となるように結晶化処理を行ってもよい。
【0058】
次に、ステップS103で結晶化領域19が形成された内体13の外周面を外体12の内周面に嵌合させることによって、プリフォーム11を形成する(ステップS104)。このプリフォーム11の形成に際しては、
図3に示すように、内体13の口部14上端部から径方向外側に突出する円環状のフランジ14cが外体12の開口端に上方から当接することで、内体13が外体12に対して上下方向に位置決めされる。また、例えば内体13の外周面に形成された凸部が外体12の内周面に形成された凹部に嵌合するようにして両者の周方向位置を位置合わせするように構成してもよい。
【0059】
次に、ステップS104で形成されたプリフォーム11を延伸ブロー成形することにより、積層剥離容器である合成樹脂製容器1を作成する(ステップS105)。この延伸ブロー成形に際しては、まず、プリフォーム11を加熱炉で加熱する。次に、プリフォーム11の加熱状態からプリフォーム11のネックリング18をブロー成形用金型の基準面に突き当てて固定し延伸ブロー成形すると、外体12及び内体13が延伸ロッドにより下方に延伸しつつ高圧空気により径方向外側へとブロー成形される。ここで、プリフォーム11の口部14におけるネックリング18の下方の非延伸部は、下方に延伸しないため、プリフォーム11の内側に吹き込まれる高圧空気の圧力によって内体13が径方向外側へと膨らみ易い。しかし、本実施形態では、口部14の非延伸部であるネックリング18の下方に結晶化度が大きく弾性係数が大きい結晶化領域19を設けたので、当該領域が高圧空気によって径方向外側へ膨らむのを抑制することができる。従って、外気導入孔14bから胴部15への外気の気道を確保し易くすることができる。
【0060】
本実施形態では、口部4や胴部5を略円筒状に形成するようにしているが、これに限らず、例えば角筒状や楕円筒状とすることもできる。同様に、本実施形態のプリフォーム11では、口部14や胴部15を略円筒状に形成するようにしているが、これに限らず、例えば角筒状や楕円筒状とすることもできる。
【0061】
以上述べたように、本実施形態に係る合成樹脂製容器1では、内層体3を結晶性樹脂により形成し、内層体3における口部4の少なくとも一部に結晶化度が他の領域より大きい結晶化領域9を有するように構成した。これによって、外体12と内体13とを有するプリフォーム11の延伸ブロー成形により合成樹脂製容器1を形成する場合に、口部14の一部において内体13が高圧空気によって径方向外側に膨らんで気道を狭めるのを抑制することができる。従って、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間への気道を確保し易くすることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1では、結晶化領域9における可視光に対する光透過率が他の領域より低くなるように構成した。これによって、結晶化領域9における結晶化度が増大し弾性係数が高まったことを外観により判別し管理することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1では、結晶化領域9を、口部4に形成されたネックリング8の下方の所定領域に形成するようにした。これによって、プリフォーム11の延伸ブロー成形時に径方向外側に膨らみ易いネックリング8の下方の領域の剛性を高めて変形し難くすることができる。従って、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間への気道を確保し易くすることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1では、肩部7が、上下方向に延在する凹状又は凸状の縦リブ10を有するように構成した。これによって、外気導入孔4bから導入された外気を、縦リブ10における外層体2と内層体3との隙間を通して胴部5に到達させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1では、縦リブ10の上端部10T及び下端部10Bが、縦リブ10の中央高さ10Mよりも溝深さが小さくなるように構成した。これによって、内層体3の初期剥離処理時に、縦リブ10において内層体3を外層体2から剥離し易くすることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1では、結晶化領域9が、縦リブ10の上端部10Tまで延在するように構成した。これによって、結晶化領域9に確保された気道を通じて外気導入孔4bから導入された外気を、更に縦リブ10における外層体2と内層体3との隙間を通して胴部5に容易に到達させることができる。
【0067】
本実施形態に係るプリフォーム11では、内体13を結晶性樹脂により形成し、内体13における口部14の少なくとも一部に結晶化度が他の領域より大きい結晶化領域19を有するように構成した。これによって、プリフォーム11の延伸ブロー成形により合成樹脂製容器1を形成する場合に、口部14の一部において内体13が高圧空気によって径方向外側に膨らんで気道を狭めるのを抑制することができる。従って、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間への気道を確保し易くすることができる。
【0068】
また、本実施形態に係るプリフォーム11では、結晶化領域19が延伸ブロー成形時における非延伸部であるように構成した。これによって、プリフォーム11の延伸ブロー成形により合成樹脂製容器1を形成する場合に、口部14の非延伸部において内体13が高圧空気によって径方向外側に膨らんで気道を狭めるのを抑制することができる。従って、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間への気道を確保し易くすることができる。
【0069】
また、本実施形態に係るプリフォーム11では、結晶化領域19における外周面に、上下方向に延びる通気リブ19aを形成するように構成した。これによって、結晶化領域19における内体13の剛性向上による気道の確保に加え、この通気リブ19a同士の間の空間を通じて更に太い気道を確保することができる。そのため、プリフォーム11の延伸ブロー成形による合成樹脂製容器1において、外気導入孔4bから導入された外気をよりスムーズに胴部5に供給することができる。
【0070】
また、本実施形態に係るプリフォーム11では、通気リブ19aは、外気導入孔14bから結晶化領域19まで延在するように構成した。これによって、プリフォーム11の延伸ブロー成形により形成された合成樹脂製容器1において、外気導入孔4bから導入された外気を、結晶化領域9により確保された気道及び通気リブ19aにより確保された更なる気道を通じてシームレスに胴部5まで供給することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の製造方法は、内体13における口部14の少なくとも一部を加熱及び冷却することにより、結晶化度が他の領域より大きい結晶化領域19を形成するステップを含むように構成した。これによって、口部14の一部の加熱及び冷却という簡素な工程により、口部14の一部において内体13が高圧空気によって径方向外側に膨らんで気道を狭めるのを抑制することができる。従って、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間までの気道を確保し易くすることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の製造方法では、内体13における口部14の少なくとも一部の冷却は、強制冷却を伴わない徐冷によるものとした。これによって、強制冷却を伴わない徐冷という簡素な工程により、口部14の一部において内体13が高圧空気によって径方向外側に膨らんで気道を狭めるのを抑制することができる。従って、外気導入孔4bから胴部5における外層体2と内層体3との間の空間までの気道を確保し易くすることができる。
【0073】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【実施例】
【0074】
外体12及び内体13の材料にIPA(イソフタル酸)変性PET(IV値:0.8)を用いて、プリフォーム11を作成した。口部14の白化部(結晶化領域19)の密度は、1.37[g/cm
3]であり、白化部以外の密度は、1.33[g/cm
3]であった。口部14の結晶化は、密度が1.35[g/cm
3]以上を確保できれば、延伸ブロー成形後の合成樹脂製容器1において、外気導入孔4bからの外気の導入が可能であった。
【0075】
なお、外体12及び内体13の材料にPET樹脂を用いる場合、上記のIPA系の変性PET以外にも、CHDM変性PETやホモPETなどの他のPET樹脂を用いてもよい。