特許第6910767号(P6910767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910767
(24)【登録日】2021年7月9日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】薄肉プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20210715BHJP
   B65D 1/46 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   B65D1/02 221
   B65D1/46
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-168437(P2016-168437)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-34829(P2018-34829A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年1月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】武田 知己
(72)【発明者】
【氏名】加堂 立樹
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−108016(JP,A)
【文献】 特開2011−093556(JP,A)
【文献】 特開2013−112361(JP,A)
【文献】 特開平08−113267(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3134790(JP,U)
【文献】 再公表特許第2012/090990(JP,A1)
【文献】 登録実用新案第3168983(JP,U)
【文献】 特開2016−132502(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0093331(US,A1)
【文献】 特開2003−285814(JP,A)
【文献】 特開2007−326614(JP,A)
【文献】 特開2013−230846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル本体の胴部に、
前記ボトル本体の内側に窪んだパネルを有するパネル部と、
前記パネル部の上側に配置された第1リブ域と、
前記パネル部の下側に配置された第2リブ域と、が設けられ、
前記第1リブ域および前記第2リブ域には、前記ボトル本体の内側に窪む深さが1.5mm以下の周リブが隣接して複数形成され、
満注容量に対する樹脂量の比率が0.017〜0.041g/mlであり、
全長に対する前記パネルの上下方向の長さの比率が0.13〜0.20であり、
前記パネル部が設けられた前記胴部において、軸芯に直交する面の断面形状が八角形である薄肉プラスチックボトル。
【請求項2】
前記第1リブ域および前記第2リブ域における各周リブの間には平滑な領域が設けられている請求項1に記載の薄肉プラスチックボトル。
【請求項3】
前記第1リブ域および前記第2リブ域がラベル貼り付け域である請求項1又は2記載の薄肉プラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉プラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックボトルに用いる樹脂の量を削減し、資源・コストを節約することが求められており、そのためにプラスチックボトルを薄肉化することが試みられている。しかし、薄肉化することによりプラスチックボトルが柔らかくなり、ユーザーがプラスチックボトルを手に持ったとき、プラスチックボトルが変形し易く持ちにくいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題に対して、プラスチックボトルにリブを設けることが行われており、特に薄肉プラスチックボトルの強度を向上させるのには深さ2.5mm等の深い周リブが一般に設けられるが、この場合、ロールラベルを貼り付ける際にプラスチックボトルが折れ曲がるという問題があった。
【0004】
そこで、ボトルの強度を保ちつつ、さらに、生産適性を向上させる薄肉プラスチックボトルの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る薄肉プラスチックボトルは、
ボトル本体の胴部に、前記ボトル本体の内側に窪んだパネルを有するパネル部と、前記パネル部の上側に配置された第1リブ域と、前記パネル部の下側に配置された第2リブ域と、が設けられ、前記第1リブ域および前記第2リブ域には、前記ボトル本体の内側に窪む深さが1.5mm以下の周リブが隣接して複数形成され、満注容量に対する樹脂量の比率が0.017〜0.041g/mlであり、全長に対する前記パネルの上下方向の長さの比率が0.13〜0.20であり、前記パネル部が設けられた前記胴部において、前記薄肉プラスチックボトルの軸芯に直交する面の断面形状が八角形である
【0006】
この構成によれば、薄肉プラスチックボトルにおいて、深さが従来より浅い1.5mm以下の周リブを、ボトル本体の胴部に複数設けることで、周リブをボトル本体の全域にわたり設けることなくボトル本体の強度を保ちつつ、ロールラベル貼付時のボトル折れ曲がりを防止することが可能となる。さらにユーザーはボトルの胴部を把持してボトルを持つところ、この構成では、持ち手となるボトルの胴部に変形しにくいリブ域を設けてあるため、ボトルを持ったときの変形が抑制され、ボトルの持ち易さも向上する。
【0007】
さらに、上記構成の周リブよりも深いものである場合、周リブが設けられている部位がユーザーの把持する際のボトルの強度を高くはできるものの、成形後にロールラベルを貼るための所望の平滑面を安定して再現できない場合もあるが、周リブの深さを1.5mm以下とすることで、ユーザーの把持する際に必要な強度を保ちつつ、平滑面の再現性も確保できる。
【0008】
1つの態様として、前記第1リブ域および前記第2リブ域における各周リブの間には平滑な領域が設けられていると好適である。
【0009】
この構成によれば、平滑な領域を設けてあるので、この領域にラベルを貼り付けるようにすれば、一層ラベルを貼り付け易くなる。
【0010】
一つの態様として、前記第1リブ域および前記第2リブ域が、ラベル貼り付け域であると好適である。
【0011】
この構成によれば、ロールラベルの貼り付け域にリブ域が設けられているので、ロールラベル貼付時のボトル折れ曲がりを好適に防止することが可能となる。さらにユーザーはボトルのラベルが貼り付け域を把持してボトルを持つところ、この構成では、持ち手となるラベルが貼り付け域に変形しにくいリブ域を設けてあるため、ボトルを持ったときの変形が抑制され、ボトルの持ち易さもさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】プラスチックボトルの正面図
図2】ボトル上側部分の拡大図
図3】一対の屈曲部の部分断面図
図4】ボトル下側部分の拡大図
図5図4におけるV−V断面図
図6】底部の拡大図
図7】底部の底面図
図8】別実施形態における一対の屈曲部の部分断面図
図9】別実施形態における一対の屈曲部の部分断面図
図10】別実施形態における一対の屈曲部の部分断面図
図11】別実施形態における底部の底面図
図12図11におけるXII−XII断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る薄肉プラスチックボトルの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るプラスチックボトル1は、図1に示すように、液体の注ぎ口としての口部2と、液体を充填するボトル本体部3と、を備える。ボトル本体部3は、口部2と連続し、底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部4と、肩部4と連続する円筒状の胴部5と、プラスチックボトル1の底となる底部6と、から構成されている。そして、胴部5の上側領域5aから肩部4にわたるボトル上側部分10には、意匠的効果を狙って装飾が施されている。これに対し、胴部5の下側領域5bから底部6にわたるボトル下側部分20には、減圧吸収のための補強構造が採用されている。いわば、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、装飾が施された装飾用領域としてのボトル上側部分10と、減圧吸収及び補強用領域としてのボトル下側部分20とに二分された構造になっている。
【0014】
なお、プラスチックボトル1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成型等の延伸成形法によって一体的に成型することができる。プラスチックボトル1の容量は特に限定されず、一般的に流通している200ミリリットル〜2リットル程度とすることができる。また、ボトル1に充填させる液体は特に限定されず、例えば、飲料水、茶、果汁、コーヒー、ココア、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料、スープなどの飲料や、ソースや醤油などの液体調味料などが挙げられる。
【0015】
また、本実施形態のプラスチックボトル1は、資源・コストを節約するために、一般的な飲料用に比べて薄肉にしてある。具体的には、プラスチックボトル1の満注容量(ml)に対するプラスチックボトル1の樹脂量(g)の比率が0.017〜0.041(g/ml)、より好ましくは0.023〜0.037となるように形成されていると好適である。満注容量に対する樹脂量の比率が0.041(g/ml)を上回ると、厚みの薄い軽量なボトルとはいえず、一方、満注容量に対する樹脂量の比率が0.017(g/ml)を下回ると肉厚が薄くなりすぎ、後述する本実施形態の構造をもってしても強度が確保できなくなるからである。
【0016】
このように薄肉にすることにより強度上の問題が生じるため、この種の薄肉プラスチックボトルでは、薄肉プラスチックボトルの水平方向の荷重によるボトル変形や、温度変化等による減圧が生じた場合にその減圧に耐えられずボトルが凹むことを抑制するためや、ユーザーがボトルを把持してボトルを持つ際のボトルの持ちやすさを向上させるために、ボトル全体にリブ等の補強構造が設けられることが多い。しかし、本実施形態のプラスチックボトル1では、上記のように、ボトル上側部分10を装飾用領域として用いており、全体に補強構造を設けることはできないため、代わりに、ボトル下側部分20に特徴的な補強構造を備えたものとしている。さらに、装飾用領域としてのボトル上側部分10についても、その装飾的な形状の中に、補強用の構造を組み込んだものとしてある。これにより、荷重による変形を効果的に抑制可能になっている。以下、このボトル上側部分10及びボトル下側部分20の構造について説明する。
【0017】
〔ボトル上側部分10〕
図1に示すように、ボトル上側部分10には、装飾として、ボトル上側部分10全体の表面にエンボス加工による凹凸が形成されている(図2ではこのエンボス加工による凹凸は簡略化のため省略している)。そして、図1,2に示すように、ボトル上側部分10には、2本の枠線(屈曲部12,13)により画定される帯状の領域が形成され、その帯状の領域内に複数の装飾部(本実施形態では文字ABCDEFGH)11が形成されている。このようにボトル上側部分10は意匠的な外観を備えており、これによる意匠的効果を狙ったものとなっている。そして、本実施形態のプラスチックボトル1では、このような意匠的な外観を呈しながらも以下に示す補強用の構造が組み込まれている。
【0018】
まず、ボトル上側部分10全体の表面にエンボス加工による凹凸により、装飾的効果に加え、ボトル上側部分の強度が高められている。
【0019】
さらに、本実施形態のプラスチックボトル1では、ボトル上側部分10には、その表面がボトル1の内方又は外方に屈曲した少なくとも1つ以上の屈曲部12,13がボトル上側部分10の全周に延びる状態で形成されており、より具体的には、図1,2に示すように、2本の、より厳密には一対の屈曲部12,13がボトル上側部分10の全周に延びる状態で形成されている。この一対の屈曲部12,13が上記した枠線として機能する。具体的には、本実施形態では、図3に示すように、上側の屈曲部12は表面がボトル1の外方に屈曲した段差になっており、下側の屈曲部13は表面がボトル1の内方に屈曲した凹状(より詳しくは断面V字状の山型)のリブになっている。そして、上側の屈曲部12が段差となっているため、屈曲部12,13の間の帯状の領域は、上側の屈曲部12の上側領域14に対して突出した段差面部15で形成されている。
【0020】
また、一対の屈曲部12,13は両者ともに波状であり、振幅の大きな低周波の波に、振幅の小さな高周波の波を合成した合成波状に延びている。より詳しくは、一周で山と谷とが2回ずつ現れる振幅の大きな低周波の規則波に、この低周波の波よりも振幅が小さく高周波で且つ鋸刃状の不規則波とが合成された合成波状であり、一周の間に大きな2回の山と谷とがあり、その間に小刻みな鋸刃状の山と谷が現れる形状となっている。そして、上側の屈曲部12の山の部分と下側の屈曲部13の谷の部分が一致し、上側の屈曲部12の谷の部分と下側の屈曲部13の山の部分が一致しており、一対の屈曲部12,13は互いに対称な形状となっている。そのため、一対の屈曲部12,13は、上側の屈曲部12の低周波の規則波における山の部分と下側の屈曲部13の低周波の規則波における谷の部分とが一致して互いの間隔が拡がった第1部分16と、上側の屈曲部12の低周波の規則波における谷の部分と下側の屈曲部13の低周波の規則波における山の部分とが一致して互いの間隔が狭まった第2部分17と、を有したものとなっている。これにより、屈曲部12,13の間の帯状の領域である段差面部15は、幅広な領域と幅狭の領域とを備えたものとなっている。
【0021】
このように、ボトル上側部分10は、強度補強のための一対の屈曲部12,13を備えることにより、さらには、その一対の屈曲部12,13をそれぞれ合成波状とすることにより、ボトル上側部分の強度を効果的に高めることができる。また、一対の屈曲部12,13に互いの間隔が拡がった第1部分16と互いの間隔が狭まった第2部分17とを設けることで屈曲部12,13の間の領域が歪な形状となり、屈曲部12,13の間の領域の変形を効果的に抑制できる。これにより、減圧による変形を効果的に抑制することができる。
【0022】
さらに、段差面部15は、屈曲部12,13により他の領域から切り離された状態となり、変形が生じる虞の高い部位であるといえるところ、屈曲部12,13の間の領域である段差面部15に、所定の形状を有する凸状の複数の装飾部(本実施形態では文字ABCDEFGH)11が形成されており、装飾部11により屈曲部12,13の間の領域の強度を高めてある。そして、本実施形態では、特に、第1部分16に対応する両側の領域に(つまり、図1,2で示されている領域だけでなくその裏側の領域にも)装飾部11が形成されている。つまり、互いの間隔が狭まった第2部分17に対応する領域は、範囲が狭い分特に強度の高い領域となっている一方、互いの間隔が拡がった第1部分16についてはその拡がった分だけ変形しやすいといえるが、この第1部分16に補強機能のある装飾部11を設けるから強度が高められており、屈曲部12,13の間の領域の強度を全体的に高めることができる。そして、第1部分16に対応する領域にのみ装飾部11を設けることにより、強度を高めるだけでなく、一方向からでもすべての装飾部11をみることができ、見た目上にも好ましいものとなっている。
【0023】
このように、装飾用領域としてのボトル上側部分10には、その装飾的な形状の中に、補強用の構造が組み込まれたものとなっており、これにより、減圧による変形が効果的に抑制される。
【0024】
〔ボトル下側部分20〕
図1,4に示すように、ボトル下側部分20では、胴部5の下側領域5bに当たる部分に、径方向に窪んだパネル22が胴部の周方向に並んで複数(本実施形態では8つ)等間隔で形成されているパネル部21が設けられている。これにより、温度変化等による減圧が生じたとき、パネル部21のパネル22により、パネル22が変形して減圧を効果的に吸収させることができる。そして、特に、本実施形態では、パネル部21は、胴部5の下側領域5bにおける上寄りの位置に設けられている。この下側領域5bにおける上寄りの位置は人がペットボトルをつかむ場所になり易い位置であり、その位置にパネル部21を設けることにより、人の指がパネル22にはまり、持ち易さが向上する。
【0025】
パネル22の形状について具体的に説明すると、図4,5に示すように、パネル部21におけるパネル22以外の領域から径方向に一段階窪んだ第1凹部22aと、第1凹部22aの周方向の中央にさらに径方向に窪む第2凹部22bが上下方向にわたって形成されている。このようなさらに径方向に窪む第2凹部22bがあることにより、減圧を一層効果的に吸収させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、ボトル1の全長に対するパネル22の上下方向の長さの比率が0.13〜0.20としてある。ボトル1の全長に対するパネル22の上下方向の長さの比率が0.13を下回ると、パネルが短すぎて十分な減圧吸収の効果を得ることができず、長さの比率が0.20を超えると、パネルが長すぎてボトル全体の座屈強度が低下してしまうからである。なお、本実施形態では、ボトルの全長222mmにたいしてパネル21aの上下方向の長さは35mmとなっており、その比率はおよそ0.16になっている。
【0027】
そして、ボトル下側部分20では、パネル部21の上側に凹状の周リブ23が隣接して複数(本実施形態では3つ)形成された第一リブ域24が設けられている。第一リブ域24は、ボトル1にロールラベルを貼り付けるラベル貼り付け域であり、実質的にボトル本体部3における上下方向の中央領域に位置している。周リブ23は、ボトル本体部3の内側に窪む深さが1.5mm以下となるように形成されており、例えば本実施形態では、深さ1.2mmとなっている。これにより、周リブ23をボトル本体部3の全域にわたり設けることなくボトル本体の強度を保つことができ、且つ、ロールラベル貼付時のボトル折れ曲がりを防止することができる。さらに、ユーザーはボトル1のラベル貼り付け域や、中央領域を把持してボトル1を持つところ、本実施形態では、持ち手となるボトル1のラベル貼り付け域や、中央領域に変形しにくいリブ域24を設けてあるので、ボトルを持ったときの変形が抑制され、持ちやすさも向上する。
【0028】
さらに、第一リブ域24の下側に所定の間隔を空けて、第一リブ域24と同様の周リブ23が隣接して複数(本実施形態では2つ)形成された第二リブ域25を設けてあり、本実施形態では、第一リブ域24と第二リブ域25とによりパネル部21を上下で挟む形で設けられている。そして、第一及び第二リブ域24,25のそれぞれにおける各周リブ23の間には平滑面である平らな領域26が設けられている。第一リブ域24と第二リブ域25との間の幅はプラスチックボトル1に設けるラベルの幅に対応する幅となっており、ラベルの一方側を第一リブ域24における周リブ23間の平らな領域26に貼り付け、ラベルの他方側を第二リブ域25における周リブ23間の平らな領域26に貼り付けることで、好適にラベルを貼り付けることができる。また、周リブ23は、ボトル本体部3の内側に窪む深さが1.5mm以下となるように形成されているので、ボトル成形時において所望の平らな領域26を安定して再現することが可能である。
【0029】
また、ボトル下側部分20では、上記のように、第一及び第二リブ域24,25の間の領域にパネル部が設けられており、これにより、パネル部21に隣接して、パネル部21の上下それぞれに凹状の周リブ23が複数(本実施形態では上側に3つ、下側に2つ)設けられた状態となっている。パネル部21による減圧吸収はパネル22が動くことによりなされるのであるが、パネル部21の上下に動きにくい周リブ23をそれぞれ設けることで、よりパネル部21が動きやすくなる。これにより、パネル部により一層効果的に減圧を吸収させられる。また、見た目上の問題からパネル部21はラベルにより隠されることが好ましく、そのためにパネル部21の上下にはラベルの接着領域を設ける必要があるが、上下に複数の周リブ23を設けて周リブ23の間の領域26をラベルの接着場所に利用している。さらに、ユーザーは一般に親指と人差し指とでボトル1の中央領域を把持して、残りの中指、薬指及び小指については持ち手部分の下側の領域に添えられるところ、本実施形態では中指、薬指及び小指が当たる部分がパネル部21で形成されており、パネル22に中指、薬指及び小指がはまる形になり持ち易さが向上する。その他、図1に示すように、第二リブ域25のさらに下方に同様の周リブ23が3つ形成されている。
【0030】
このように、ボトル下側部分20では、パネル部21を含む特徴的な補強構造を備えているため、視線の集まりやすいボトル上側部分10に装飾を施しながらも、薄肉のボトル1が減圧により凹んでしまうことを効果的に抑制でき、さらに、水平方向の荷重に対する強度を保ちつつ、ロールラベル貼付時の変形を抑えることが可能となる。特に、従来、薄肉プラスチックボトルに対しては、パネルは垂直荷重に対する強度低下の原因になるため、パネルを設けることが有効であるとは考えられていなかったが、減圧吸収によるボトル変形が課題となるボトル自体に装飾を施す薄肉プラスチックボトルに対して、本実施形態では、適切な大きさのパネル22を設けることで垂直荷重に対しての強度を確保しつつ、かつ、減圧吸収能力を備えさせており、ボトル自体に装飾を施す薄肉プラスチックボトルに対して好適にパネル22を適用している。
【0031】
〔底部〕
本実施形態のプラスチックボトル1では、荷重等に耐えるための上記のボトル上側部分10及びボトル下側部分20の他、底部6にも格別の構造を有している。これについて以下に説明する。
【0032】
図6,7に示すように、底部6には、机などの設置面に対して接地する接地部30と、接地部10から径方向内側に向かうにつれてボトル1の内側(図1における上方)に突入する中央部31と、中央部31よりさらにボトル内側に突入するドーム部32と、接地部30を周方向に分断する状態で底部6の中央にあるドーム部32から放射状に延びる8つの溝部33と、が形成されている。
【0033】
本実施形態のプラスチックボトル1では、底部6に溝部を設けることにより強度が高められている。そして、底部6において、接地部30は同一円周上に位置しており、溝部33の幅(つまり周方向の長さ)に応じて接地部30の周方向の長さが変わるところ、溝部33の幅は、接地部30の位置する円周の長さに対する接地部30の周方向の長さの合計(つまり8つの接地部30の長さの合計)の割合が0.55以下となるように設定されている。これにより、ボトル1がコンベア等により搬送されるときの転倒が抑制される。具体的に説明すると、ボトル1がコンベア等により搬送される場合にコンベアに段差や速度変化があると、ボトル1の底部6が摩擦抵抗によってコンベアに追従しようとし、その結果、ボトル1が転倒してしまう虞がある。これに対し、薄肉のボトル1は変形しやすいためにゴムと同様に接地面積が大きいほど摩擦力がある程度大きくなるという現象が起きるところ、その接地面積を小さくすることによりコンベアと底部6との間の摩擦抵抗を減らすことができる。そして、これによりコンベアの段差や速度変化の影響を受けにくくなるため、ボトル1がコンベア等により搬送されるときの転倒が抑制される。なお、本実施形態では、接地部30一つあたりの周方向長さがおよそ10.8で、接地部30における径が52.8であり、円周の長さに対する接地部30の周方向の総長の割合はおよそ0.52(10.8×8/(52.8×3.14))となっている。
【0034】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る薄肉プラスチックボトルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0035】
(1)上述の実施形態では、ボトル上側部分10に一対の屈曲部12,13のみを設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、ボトル上側部分10に1本のみ、又は、3本以上の屈曲部を設けたものであってもよい。
【0036】
(2)上述の実施形態では、一対の屈曲部12,13のうち、上側の屈曲部12は表面がボトル1の外方に屈曲した段差で、下側の屈曲部13は表面がボトル1の内方に屈曲した凹状のリブで形成されており、屈曲部12,13の間の帯状の領域が、上側の屈曲部12の上側領域14に対して突出した段差面部15となっている構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、図8に示すように、一対の屈曲部12,13をそれぞれ凹状のリブとし、屈曲部12,13の間の帯状の領域を、径方向の位置が上側領域14と同じ位置となるようにしてもよい。また、図9に示すように、上側の屈曲部12は表面がボトル1の内方に屈曲した段差とするとともに、下側の屈曲部13は凸状のリブとし、屈曲部12,13の間の帯状の領域は、上側の屈曲部12の上側領域14に対して陥没した段差面部15´としてもよい。その他にも、図10に示すように、上側の屈曲部12は表面がボトル1の外方に屈曲した段差とするとともに、下側の屈曲部13は表面がボトル1の内方に屈曲した段差とし、屈曲部12,13の間の帯状の領域が、上側の屈曲部12の上側領域14及び下側の屈曲部13の下側領域に対して突出した段差面部15としてもよい。つまり、一対の屈曲部12,13は、それぞれ、凸状や凹状のリブや表面がボトル1の内方又は外方に屈曲した段差など、少なくとも表面がボトル1の内方又は外方に屈曲するものであればよく、また、屈曲部12,13の間の帯状の領域は、上側の屈曲部12の上側領域14に対して陥没したものでもよく、径方向の位置が上側領域14と同じ位置でもよい。
【0037】
(3)上述の実施形態では、段差面部15のうち、屈曲部12,13の第1部分16に対応する領域に、文字の形状を有する凸状の複数の装飾部11が形成されている構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。装飾部11は複数でなく1つであってもよいし、凸状でなく凹状でもよい。また、文字に限らず、何らかの図形や模様など、所定の形状を有するものであればよい。その他、屈曲部12,13の間の全領域に装飾部11に形成されていてもよいし、例えば、上側の屈曲部12の上側領域など、他の領域に装飾部11が形成されていてもよい。
【0038】
(4)上述の実施形態では、ボトル上側部分10全体の表面にエンボス加工による凹凸が形成されている構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、ボトル上側部分10における上側の屈曲部12の上側領域14の表面にわたってのみ、エンボス加工による凹凸が形成されていてもよい。
【0039】
(5)上述の実施形態では、パネル部21を胴部5の下側領域5bにおける上寄りの位置に設け、その上下それぞれに凹状の周リブ23を複数設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。パネル部21は、胴部5の下側領域5bにおける上寄りの位置に限らず、目的に応じて、ボトル上側部分10を含めたボトル1全体における任意箇所に設けてもよい。また、周リブ23はパネル部21の上下のそれぞれに設けることなく、いずれか一方にまとめて設けてもよく、又は、設けなくともよい。その他、上下それぞれの凹状の周リブ23は複数でなく1つであってもよい。
【0040】
(6)上述の実施形態では、ボトル1がコンベア等により搬送されるときの転倒を抑制するため、接地部30の位置する円周の長さに対する接地部30の周方向の長さの合計(つまり8つの接地部30の長さの合計)の割合が0.55以下となるように設定した構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、図11,12に示すように、底部6は、設置面に対して接地する接地部30を周方向に分断する状態で底部6の中央(ドーム部32)から放射状に延びる凹状の溝部33と、隣接する溝部33の間において接地部30をボトル内側に切り欠く凹部34と、を備えたものとし、凹部34の深さを溝部33の深さよりも浅くしたものとしてもよい。つまり、接地部30の位置する円周の長さに対する接地部30の周方向の長さの合計の割合(以下簡単のために接地長さ割合と称する)を0.55以下とするのに、本実施形態のように溝部33の幅を大きくするのではなく、さらに凹部34を設けることにより接地長さ割合を低くしてある。
【0041】
単に溝部33の幅を広くすると、溝部33の間の領域(脚部35と称する)が小さくなる。ボトル1が起立した状態にあるときは、脚部35がボトル1の荷重に応じてある程度変形しながらボトル1を支えた状態となっており、脚部35の変形許容量を超える変形を起こす程度の荷重がかかると脚部35は陥没する等の不具合が生じるのであるが、脚部35が小さくなると変形許容量も小さくなり、倉庫保管時にボトルの荷重により陥没等が生じ易くなってしまう。これに対し、溝部33の幅を変えることなく、さらに溝部33の深さよりも浅くした凹部34を設けるようにすることにより、脚部35を小さくすることなく接地長さ割合を小さな値とすることができる。なお、図11,12では、隣接する溝部33と凹部34との間の接地部30一つあたりの周方向長さdがおよそ2.0mmで、接地部30における径が52.8mmであり、円周の長さに対する接地部30の周方向の総長の割合はおよそ0.19(2.0×2×8/(52.8×3.14))となっている。
【0042】
この場合、接地長さ割合が0.3以下であると好適である。単に溝部33の幅を広くする場合には、脚部35の大きさによる制約から接地長さ割合を小さくすることには限界があるのであるが、溝部33の深さよりも浅くした凹部34を設けるようにすることにより、脚部35を小さくする必要がなくなるため、脚部35の大きさによる制約を効果的に抑制でき、接地長さ割合を一層小さくすることができる。
【0043】
また、凹部34の深さが1.5mm以下(例えば1.0mm)であると好適である。つまり、凹部34を深くするとボトル成形後において接地部30の成形再現性が悪くなるが、この構成によれば、凹部34の深さを1.5mm以下としてあるので、この問題を好適に回避できる。その他、本実施形態では、凹部が円弧状に形成されている。これにより、ボトル搬送時の転倒を好適に防止しながらも、ボトル成形を容易に行うことができる。
【0044】
(7)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば薄肉のプラスチックボトルに利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 プラスチックボトル(薄肉プラスチックボトル)
3 ボトル本体部(ボトル本体)
23 周リブ
24 リブ域
26 平らな領域(平滑な領域)
図1
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