(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910769
(24)【登録日】2021年7月9日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】木造建築構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20210715BHJP
E04B 9/06 20060101ALI20210715BHJP
E04B 7/02 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
E04B1/26 E
E04B9/06 B
E04B7/02 521F
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-171271(P2016-171271)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-35624(P2018-35624A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】506348190
【氏名又は名称】株式会社 ランバーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(74)【代理人】
【識別番号】100195028
【弁理士】
【氏名又は名称】高久 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 一男
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−280536(JP,A)
【文献】
特開平09−328860(JP,A)
【文献】
特開2006−336353(JP,A)
【文献】
特開平10−018495(JP,A)
【文献】
特開2003−193616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 9/06
E04B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱で支えられた梁の上に屋根が設けられる木造建築構造であって、
前記屋根を支える複数の屋根ユニットを、上弦材,ウェブ材,下弦材を含むトラス構造とするとともに、
これら複数の屋根ユニットの下弦材にのみ天井板を設けて、前記梁の間の火打ちを省略したことを特徴とする木造建築構造。
【請求項2】
前記複数の屋根ユニットのトラス構造によって必要な強度を確保することで、前記梁の間の火打ちを省略したことを特徴とする請求項1記載の木造建築構造。
【請求項3】
前記複数の屋根ユニットの上弦材に野地板を設け、
前記複数の屋根ユニットのトラス構造と前記野地板によって必要な強度を確保することで、前記梁の間の火打ちを省略したことを特徴とする請求項1記載の木造建築構造。
【請求項4】
前記屋根ユニットの上弦材,ウェブ材,下弦材としてツーバイ材を使用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の木造建築構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築構造に関するものであり、特に、屋根及び天井の構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造の建築物では、地震などにおいて生ずる水平方向の力による建物の変形を防ぐため、火打ち梁(以下単に「火打ち」という)が設けられている。水平方向に設けられている梁にかかる水平力を火打ちで分散させることによって、建物の強度の向上を図っている。
【0003】
通常、火打ちは、梁や吊り束などと同様に、天井板によって隠されており、部屋側から火打ちが直接目につかないような構造としている。
【0004】
図4には、その一例が示されており、梁10,12,14がほぼ平行に設けられており、それらにほぼ直交して梁16,18,・・・が設けられている。これらの梁10〜18,・・・は、柱20,22,24,26,・・・によって支えられている。梁10と梁16の角部内側には火打ち(筋交い)30が斜めに設けられており、梁14と梁16の角部内側には火打ち32が斜めに設けられている。梁16,18,・・・には、複数の束54が適宜の間隔で垂直方向に設けられている。束54の上端に、梁10,12,14の方向に棟木55,母屋56が設けられている。そして、これら棟木55,母屋56と直交する方向に垂木60が適宜の間隔で多数設けられている。束54を、中心から両端の梁10,14に向かって長さが順次小さくなるようにすることで、垂木60に勾配が生じ、これが屋根の勾配となる。
【0005】
前記垂木60の上には、野地板(図示せず)が設けられる。また、上述した梁16,18,・・・の下側に、天井板が設けられる。これにより、火打ち30,32,束54,棟木55,母屋56などの天井裏の部分が、部屋側から見て隠れるようになる。
【0006】
上述した背景技術のように、火打ち30,32を天井板で隠すような構造とすると、天井の高さは、梁16,18,・・・の下側となってしまう。
【0007】
これに対し、例えば、下記特許文献1には、天井を火打ちの上側に設けるとともに、火打ちを内壁から突出させるようにして、天井裏となっていた空間も取り込んだ、天井の高い開放的な部屋構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-117434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した背景技術は、いわば野地板が天井板と兼用された天井裏が剥き出しの構造であり、火打ちがそのまま露出することとなって、必ずしも好ましいとは言えない。
【0010】
本発明は、以上のような点に着目したもので、その目的は、火打ちを省略して、天井の位置を高くするか、同じ天井高さであれば、屋根を低くすることである。他の目的は、広い室内空間を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、柱で支えられた梁の上に屋根が設けられる木造建築構造であって、前記屋根を支える複数の屋根ユニットを、上弦材,ウェブ材,下弦材を含むトラス構造とするとともに、これら複数の屋根ユニットの下弦材にのみ天井
板を設けて、前記梁の間の火打ちを省略したことを特徴とする。主要な形態の一つによれば、前記複数の屋根ユニットのトラス構造によって必要な強度を確保することで、前記梁の間の火打ちを省略したことを特徴とする。
【0012】
他の発明は、
前記複数の屋根ユニットの上弦材に野地板を設け、前記複数の屋根ユニットのトラス構造と
前記野地板によって必要な強度を確保すること
で、前記梁の間の火打ちを省略したことを特徴とする。
【0013】
主要な形態の一つは、前記屋根ユニットの上弦材,ウェブ材,下弦材としてツーバイ材を使用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屋根をトラス構造とするなどによって必要な強度を得る
とともに、複数の屋根ユニットの下弦材にのみ天井を設けることとしたので、火打ちを省略することができ、天井の位置を高くするか、同じ天井高さであれば、屋根を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1の建築構造を示す主要斜視図である。
【
図2】前記実施例1と背景技術における天井と屋根の高さの関係を比較して示す図である。
【
図3】本発明の実施例2の建築構造を示す主要斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
最初に、
図1を参照しながら、本発明の実施例1について説明する。同図において、梁100に直交して、梁102,104が平行に設けられており、これらの梁100,102,104は、柱106,108,110によって支えられている。なお、他に、図示しない梁や柱も存在する。梁100,102,104上には、複数の屋根ユニット150が適宜の間隔で平行に設けられる。屋根ユニット150は、トラス構造(ダブルハウトラス)となっており、上弦材152,下弦材154と、それらを支えるウェブ材156,158によって構成されている。ウェブ材156の間に、斜めにウェブ材158が設けられており、これによってトラスが形成されている。上弦材152,下弦材154,ウェブ材156,158の接合は、例えばネイルプレートによって行われている。なお、軒の出は図示していないが、必要に応じて設けられる。
【0018】
上述した屋根ユニット150は、梁102,104間に、適宜の間隔で多数配置される。そして、屋根ユニット150の下弦材154に対して、天井板140が取り付けられる。すなわち、梁100,102,104の上端側に、天井が設けられる。一方、ウェブ材156は、中心から両端に向かって順次長さが短くなっており、これによって上弦材152に勾配が生ずるようになっている。前記上弦材152上には、野地板142を設ける。
【0019】
ところで、本実施例によれば、上述したように、屋根ユニット150の下弦材154に対して、天井板140が取り付けられ、背景技術のような火打ちは設けられない。しかし、火打ちを設けないことによる強度低下は、トラス屋根構造とすることで補っている。すなわち、トラス屋根構造とすることで、梁100,102,104にかかる水平力を、斜めのウェブ材158を通じて上弦材152の方向に分散させることができ、更には、上弦材152から野地板142の方向にも力が分散されるようになり、十分な水平力に対する強度を得ることができる。
【0020】
このように、本実施例によれば、トラス屋根構造とすることによって、梁の間の火打ちをなくすことができる。このため天井板140を、屋根ユニット150の下弦材154に取り付けることができ、天井を高くして、広い室内空間を得ることができる。
図2には、その様子が示されており、(A)は上記実施例の場合であり、(B)は背景技術の場合である。屋根の高さが同じであるとすると、本実施例の天井のほうが高さH分高くなる。同図(C),(D)は天井の高さを同じとした場合であり、本実施例の(C)のほうが屋根をH分低くすることができる。
【実施例2】
【0021】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2は、屋根ユニットのトラス構造を他の構成(フィンクトラス)とした例で、屋根ユニット170は、上弦材172と、下弦材174と、それらの間のウェブ材176,178とによって構成されている。すなわち、上弦材172と、下弦材174によって全体が三角形に構成されており、それらの間に複数のウェブ材176,178を斜めに設けることによって、上弦材172にかかる荷重を垂直方向及び水平方向に分散させる構造となっている。
【0022】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)屋根の構造としては、切妻,寄棟,片流れなど、各種の種類があるが、いずれであっても、本発明は適用可能である。
(2)屋根ユニットのトラス構造としては、上述したダブルハウトラスやフィンクトラスの他に各種のものが知られており、いずれを適用してもよい。
(3)前記実施例では、屋根ユニットを並列に組み合わせるようにして屋根を組み立てたが、各種の公知の組み立て方としてよい。
(4)上弦材,ウェブ材,下弦材や野地板などの木材としては、SPFやホワイトウッドなど、公知の各種のものを使用してよい。また、サイズとしては、ツーバイ材を用いるようにしてよい。
(5)前記実施例では、トラス構造によって火打ちを省略することとしたが、トラス構造と野地板によって必要な強度を確保することで火打ちを省略し、前記下弦材に天井を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、屋根をトラス構造とするなどによって必要な強度を得るとともに、複数の屋根ユニットの下弦材にのみ天井
板を設けることとしたので、火打ちを省略することができ、天井の位置を高くするか、同じ天井高さであれば、屋根を低くすることができ、木造建築物全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
10,12,14,16,18,・・・:梁
20,22,24,26,・・・:柱
30,32:火打ち
54:束
55:棟木
56:母屋
60:垂木
100,102,104:梁
106,108,110:柱
140:天井板
142:野地板
150:屋根ユニット
152:上弦材
154:下弦材
156,158:ウェブ材
170:屋根ユニット
172:上弦材
174:下弦材
176,178:ウェブ材