(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータ制御部は、前記モータの目標回転量と実測回転量との差が所定値以上であるときに、次回の回転における前記モータのパワーを上記差に応じた変化量で変更することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱調理器としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記モータ制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の一実施の形態について
図1〜
図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0011】
図1は、実施形態1に係る炊飯器100(加熱調理器)の蓋体2を閉じた状態を示す斜視図である。
図2は、炊飯器100の蓋体を開いた状態を示す斜視図である。
図3は、炊飯器100における第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bによる撹拌状態を示す斜視図である。
図4は、炊飯器100の内部構造を示す縦断面図である。これらの図を参照して、炊飯器100の構造について説明する。
【0012】
図1に示すように、炊飯器100は、炊飯器本体1と、この炊飯器本体1の上部に取り付けられた蓋体2とを備えている。この炊飯器100は、炊飯のみならず、煮物や蒸し物などといった調理にも使用できるように構成されている。
【0013】
炊飯器本体1の前面には、蓋体2を開けるための開ボタン3が設けられている。一方、炊飯器本体1の後面からは電源コード4の端部に設けられたプラグが突き出ている。この電源コード4の大部分は、炊飯器本体1内の図示しないコードリールに引き出し可能に巻き付けられている。
【0014】
蓋体2の上面の前部には、炊き方や調理名などを表示する液晶の表示部5と、複数の操作スイッチから構成される操作部6とが設けられている。また、
図2に示す内鍋7の蒸気は、蓋体2の上面の後部の蒸気排出口2aから排出されるようになっている。
【0015】
図2に示すように、炊飯器本体1には、内鍋7が収容され、この内鍋7は、蓋体2によって開閉される。
【0016】
炊飯器本体1の上面の前部には、被係止部8が設けられている。被係止部8には、蓋体2の下面の前部に設けられた係止部23が解除可能に係止する。開ボタン3を押すと、被係止部8が後方に移動して、被係止部8に対する係止部23の係止が解除される。
【0017】
炊飯器本体1内には、内鍋7を誘導加熱するための誘導コイル10が設置されている。なお、誘導コイル10は、加熱部の一例である。
【0018】
内鍋7には、内容物の一例としての米や水などが収容される。内鍋7は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導材料で形成されている。内鍋7の外面には、加熱効率を向上させる例えばステンレスなどの磁性体が貼り付けられる。一方、内鍋7の内面には、内容物の付着を防ぐためのフッ素樹脂がコーティングされている。
【0019】
蓋体2は、蓋体2を閉じたときに内鍋7側とは反対側に位置する外蓋21と、蓋体2を閉じたときに内鍋7側に位置する内蓋22とを有している。外蓋21の後部の右側角部内には、モータ24が配置されている。内蓋22には、図示しない連結軸が回転可能に配置されている。この連結軸は、モータ24が発生した回転駆動力を図示しないプーリやベルトを介して受けて回転する。
【0020】
蓋体2には、撹拌ユニット50が回転可能に取り付けられている。この撹拌ユニット50は、モータ24の駆動力により回転して、内鍋7内に収容される内容物を撹拌する。
【0021】
図2および
図3に示すように、撹拌ユニット50は、回転体11と、撹拌体としての第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bとを有している。
【0022】
回転体11は、蓋体2に回転可能に取り付けられている。第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bは、回転体11に揺動可能に取り付けられるとともに、回転体11を挟むように配置されている。
【0023】
第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bは、回転体11の側面に沿うように配置される非撹拌状態(
図2参照)と、非撹拌状態から垂直方向に伸びる撹拌状態(
図3参照)とを切り替え可能となるように、回転体11に回動可能に取り付けられている。第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bは、撹拌状態では、
図3に示すように内鍋7側に伸びるので、内鍋7内の米などに接触する。
【0024】
図4に示すように、内蓋22の上面側には、内蓋22を加熱するための蓋ヒータ13が設けられている。また、内鍋7の外側面には、内鍋7の内の被加熱物を保温するための保温ヒータ14が設けられている。さらに、上述の誘導コイル10は、内鍋7の底部の直下に配置されている。誘導コイル10の内周側の空間には、内鍋7の温度を検知するための温度センサ15が設けられている。温度センサ15は、内鍋7の温度を検出するためのセンサであって、例えばサーミスタなどで構成される。温度センサ15は内鍋7の底部に接触するよう配置される。
【0025】
続いて、炊飯器100の制御系について説明する。
図5は、炊飯器100の制御系の構成を示すブロック図である。
図6は、炊飯器100のモータ制御系の構成を示すブロック図である。
【0026】
図5に示すように、炊飯器100は、制御系の主要部として、CPU(Central Processing Unit)16と、ROM(Read Only Memory)17と、RAM(Random Access Memory)18とを備えている。また、炊飯器100は、モータ24を駆動するモータ駆動回路19と、モータ24の回転を検出するFGセンサ20とを備えている。
【0027】
CPU16は、ROM17に格納された制御プログラムを実行することによって、各部を制御する。具体的には、CPU16は、表示部5の表示制御、操作部6への操作の受け付け、誘導コイル10、蓋ヒータ13および保温ヒータのオン・オフ制御および温度制御、モータ駆動回路19の駆動制御などを行なう。
【0028】
モータ24には、FGセンサ20が取り付けられている。例えばDCモータで構成されるモータ24が有するロータの外周には、交互にN極とS極とが並ぶように着磁された360個のFG(Frequency Generator)歯が設けられている。FGセンサ20は、ロータが回転することで生じる磁界を検出する、ホール素子、MRセンサなどの磁気センサであり、パルス状のFG信号を出力する。
【0029】
CPU16は、FG信号の周期(FG値)を測定して、目標のFG値となるようにPWM信号を出力する。また、CPU16は、モータ24をオン・オフするオン・オフ信号およびモータ24の回転方向を特定する回転方向信号を出力する。
【0030】
モータ駆動回路19は、PWM信号を整流してモータ24に印加する直流電圧を生成する。また、モータ駆動回路19は、オン・オフ信号に基づいてモータ24を駆動および駆動停止する。さらに、モータ駆動回路19は、回転方向信号に基づいて、モータ24を正方向に回転させたり、逆方向に回転させたりする。
【0031】
図6に示すように、炊飯器100はモータ制御部25を備えている。モータ制御部25は、CPU16が有するモータ制御の機能を実現する部分であり、上記のPWM信号、オン・オフ信号および回転方向信号の出力を行なう。また、モータ制御部25は、通常回転制御部26と、変則回転制御部27とを有している。通常回転制御部26は通常撹拌モードにおいて動作し、変則回転制御部27は変則撹拌モードにおいて動作する。
【0032】
通常撹拌モードは、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bの負荷が小さい場合、例えば、被加熱物の重量が所定値よりも小さい場合や、麺ゆでなどの軽負荷の調理メニューが選択された場合に適用される。変則撹拌モードは、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bの負荷が大きい場合、例えば、被加熱物の重量が所定値以上である場合や、煮物などの調理メニューで被加熱物が増量された場合に適用される。また、負荷の大小は、モータ24に流れる電流値でも測定することができる。被加熱物の重量は、例えば、図示しない重量センサを内鍋7の底部に設けることで測定することができる。
【0033】
通常回転制御部26および変則回転制御部27は、操作部6に入力された指示内容(調理メニューの指定、被加熱物の増量指示など)に応じて、通常撹拌モードが適用されるか、変則撹拌モードが適用されるかを適宜判断して動作する。通常撹拌モードおよび変則撹拌モードのいずれにおいても、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bの回転は、調理メニューに応じて、所定時間内に、所定回数、各回の回転で所定の回転量で行なわれることが予め定められている。
【0034】
通常回転制御部26は、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bを撹拌方向(正規の回転方向)に規定の複数回回転させるように、モータ24を正方向に回転させる。
【0035】
変則回転制御部27は、通常回転制御部26と同様、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bを、撹拌方向に規定の複数回回転させるように、モータ24を正方向に回転させる。また、変則回転制御部27は、上記のような基本回転制御に加えて、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bが、各回の回転において、正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に少しだけ回転するように、モータ24を正規の回転方向への回転の終了後また開始前に逆方向に回転させる。
【0036】
上記のように構成される炊飯器100の通常撹拌モードおよび変則撹拌モードにおける動作について説明する。
図7は、上記モータ制御系におけるモータ制御部25によるモータ24の回転制御の概念を示す波形図である。
図8は、撹拌回数に対するモータ24のパワーの変化を炊飯器100による撹拌方法と従来の撹拌方法とで比較して示すグラフである。
【0037】
通常撹拌モードにおいては、通常回転制御部26が動作することにより、通常回転制御部26から、PWM信号、オン・オフ信号および正回転の回転方向信号が出力される。モータ駆動回路19は、これらの信号に基づいて指定された時間、回転回数および回転量に応じてモータ24を回転させる。
【0038】
通常撹拌モードでは、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bにかかる負荷が小さい。このため、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bが被加熱物に当たった状態から正方向にのみ回転してもモータ24の負荷が小さいので、目標にしたがって第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bを回転させることができる。
【0039】
変則撹拌モードにおいては、変則回転制御部27が動作することにより、変則回転制御部27から、PWM信号、オン・オフ信号および逆回転・正回転の回転方向信号が出力される。モータ駆動回路19は、これらの信号に基づいて指定された時間、回転回数および回転量に応じてモータ24を回転させる。モータ24は、
図7に示すように、各回の回転において、正方向への回転(正回転)の後に逆回転する。あるいは、モータ24は、
図7に破線にて示すように、各回の回転において、正回転の前に逆回転する。
【0040】
これにより、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bは、各回の正規の回転の後または前において、被加熱物に当たっている状態から少しだけ逆方向に回転する。したがって、正方向の回転開始時には、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bが被加熱物に当たっていないので、モータ24の負荷が小さくなる。そして、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bは、正方向に少し回転してから被加熱物に当たる。それゆえ、被加熱物が増量してモータ24の負荷が増大した場合においても、モータ24のパワーを増大させることなく、目標にしたがって第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bを回転させることができる。
【0041】
ここで、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bによって被加熱物を10回撹拌する場合について、撹拌回数に対するパワーの変化を、本実施形態による撹拌方法と従来の撹拌方法(正規の回転方向のみの回転)とで比較して説明する。次に説明するのは、比較的多めの6人分の肉じゃが(肉とじゃがいもの煮物)の材料を被加熱物として用い、1回の目標とする撹拌量(目標回転量)を一定に固定化した例である。
【0042】
本実施形態の撹拌方法では、
図8に実線にて示すように、4回以降の撹拌で目標回転量に達してモータ24のパワーがほぼ一定になる。4回までの撹拌では、目標撹拌量に達するように、モータ24のパワーを徐々に増大させる必要がある。また、5回以降の撹拌では、モータ24を正回転の後(または前)に逆回転させる効果が現れ、モータ24のパワーの上昇を抑えることができる。
【0043】
これに対し、従来の撹拌方法では、
図8に破線にて示すように、4回までの撹拌では、本実施形態の撹拌方法と同じくモータ24のパワーを増大させる。しかしながら、それ以降の9回までの撹拌でもモータ24のパワーを増大させ、9回目の撹拌でようやく目標回転量に達してモータ24のパワーが一定化する。9回の撹拌までモータ24のパワーを増大させるのは、各撹拌において、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bが被加熱物に当たった状態から撹拌方向に回転するために、モータ24の負荷が大きいことによる。
【0044】
本実施形態の撹拌方法を採用すれば、
図8に示すように、目標回転量に達するモータ24のパワーを、従来の撹拌方法に比べて大幅なパワー差ΔP減少させることができる。
【0045】
なお、モータ24の逆回転時の回転量(回転角度)は、正回転時の回転量に対する所定の割合であってもよいし、固定の回転量であってもよい。
【0046】
また、本実施形態では、撹拌体として、2つの第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bを用いるが、1つまたは3つ以上の撹拌アームを用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、通常撹拌モードおよび変則撹拌モードを使い分けるようにしているが、変則撹拌モードを通常の撹拌の動作モードとして固定的に使用してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、炊飯器100について説明したが、炊飯機能を有していない加熱調理器にも、上記のような第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bの回転制御を適用することができる。このような炊飯機能を有していない加熱調理器にも、後述する実施形態2および3を適用することができる。
【0049】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図9〜
図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0050】
図9は、炊飯器100の実施形態2に係るモータ制御系の構成を示すブロック図である。
【0051】
本実施形態に係る炊飯器100は、上述のモータ制御部25に代えて、
図9に示すモータ制御部31を備えている。モータ制御部31は、CPU16(
図5参照)が有するモータ制御の機能を実現する部分であり、上記のPWM信号、オン・オフ信号および回転方向信号の出力を行なう。また、モータ制御部31は、回転量比較部32(回転量判定部)と、パワー変更部33とを有している。
【0052】
回転量比較部32は、調理メニューなどに基づいて定められた目標FG値FGtと、モータ制御部31がFGセンサ20からのFG信号に基づいて実測した実測FG値FGmとを比較することで、モータ24の目標の回転量と実際の回転量とを比較する。また、回転量比較部32は、目標FG値FGtと実測FG値FGmとの差が所定値以上であるときにパワーの変更を指示するパワー変更指示信号を出力する。また、回転量比較部32は、目標FG値FGtと実測FG値FGmとの差が所定値未満であるときにパワーを通常パワーとする通常パワー指示信号を出力する。
【0053】
パワー変更部33は、回転量比較部32からのパワー変更指示信号を受けると、次回からの回転において、モータ24のパワーを目標FG値FGtと実測FG値FGmとの差に応じた所定値(所定のPWM値)に変更する。また、回転量比較部32からの通常パワー指示信号を受けると、次回からの回転においてモータ24のパワーを通常パワーとする。なお、パワー変更部33は、パワー変更指示信号を受けると、次回からの回転においてモータ24の回転時間をパワー変更指示信号に応じた所定値に変更するとともに、通常パワー指示信号を受けると、次回からの回転においてモータ24の回転時間を通常パワー時の時間とする。また、パワー変更部33は、パワー変更指示信号を受けると、次回からの回転においてモータ24の回転時間は同じで、モータ24に流れる電流値をパワー変更指示信号に応じた所定値に変更するようにしてもよい(PAM制御)。
【0054】
上記のように構成されるモータ制御部31によるモータ24のパワー変更の動作について
図10を参照して説明する。
図10は、当該モータ制御系によるモータ24のパワー制御の手順を示すフローチャートである。
【0055】
図10に示すように、まず、回転量比較部32は、目標FG値FGtと実測FG値FGmとを比較する(ステップS1)。回転量比較部32は、比較により、両者の差が、第1所定値D1未満、第1所定値D1以上かつ第2所定値D2未満、または第2所定値D2以上のいずれであるかを判定する(ステップS2)。ここで、第2所定値D2は、第1所定値D1より大きい値である。
【0056】
回転量比較部32が、両者の差が第1所定値D1以上かつ第2所定値D2未満であると判定すると、パワー変更部33は、次回の回転におけるパワーを現在の値から小さい変化量(第1変化量)だけ変更させるようにモータ駆動回路19にPWM信号を出力する。モータ24は、そのPWM信号に基づくモータ駆動回路19に駆動されることにより、次回の回転において小さい変化量での変更後のパワーで回転する(ステップS3)。例えば、実測FG値FGmが目標FG値FGtに対して第1所定値D1以上かつ第2所定値D2未満の値小さい場合、モータ24はパワーを増大させる。逆に、実測FG値FGmが目標FG値FGtに対して上記の値大きい場合、モータ24はパワーを減衰させる。
【0057】
ステップS2において、回転量比較部32が、両者の差が第2所定値D2以上であると判定すると、パワー変更部33は、次回の回転におけるパワーを現在の値から大きい変化量(第2変化量)だけ変更させるようにモータ駆動回路19にPWM信号を出力する。ここで、第2変化量は、第1変化量よりも多い値である。モータ24は、ステップ3において、そのPWM信号に基づくモータ駆動回路19に駆動されることにより、次回の回転において大きい変化量での変更後のパワーで回転する(ステップS4)。
【0058】
ステップS2において、回転量比較部32が、両者の差が第1所定値D1未満であると判定すると、パワー変更部33は、次回の回転におけるモータ24のパワーが通常パワーとなるようにモータ駆動回路19にPWM信号を出力する。モータ24は、そのPWM信号に基づくモータ駆動回路19に駆動されることにより、次回の回転において通常パワーで回転する(ステップS5)。
【0059】
ステップS3、ステップS4またはステップS5の後、回転量比較部32は、規定回数の回転が終了したか否か判定する(ステップS6)。回転量比較部32は、規定回数の回転が終了したと判定すると(YES)、処理を終える一方、規定回数の回転が終了していないと判定すると(NO)、ステップS1の処理を再び行なう。
【0060】
このように、モータ制御部31は、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12B(モータ24)の1回の撹拌当たりの実測回転量と目標回転量との差が所定値(第1所定値)以上であるときに、実測回転量が目標回転量に近づく方向に次の回転で変化させるパワーおよび時間の変化量を、上記の差の大きさに応じて変更する。具体的には、モータ制御部31は、実測回転量が目標回転量から離れているときは上記の変化量を大きく、実測回転量が目標回転量に近づいてきたら上記の変化量を小さくする(通常に戻す)ようにモータ24の制御を行なう。
【0061】
これにより、被加熱物の重量が増大しても、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bの回り始めが早くなり、併せて目標回転量に達してからは、大きくずれることなく目標回転量前後を維持することができる。それゆえ、被加熱物の重量範囲が拡大しても、それぞれの量に適したパワーおよび時間により第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bさせることにより、
図11に示すように、短時間で目標回転量に到達し、それを維持できるようになる。
【0062】
図11は、撹拌回数に対するモータ24のパワーの変化を炊飯器100による撹拌方法と従来の撹拌方法とで比較して示すグラフである。
図11に示すのは、比較的多めの6人分の肉じゃがの材料を被加熱物として用いた例である。また、従来の撹拌方法は、実測回転量と目標回転量との差に関係なく一定値だけパワーを変更する例である。
【0063】
図11に示すように、本実施形態の撹拌方法では、実線にて示すように、時間T1で目標のパワーに達する。これに対し、従来の撹拌方法では、破線にて示すように、時間T1よりも大幅に長い時間T2でようやく目標のパワーに達する。このように、本実施形態の撹拌方法によれば、目標回転量に達するまでの時間を従来の攪乱方法に比べて大幅に短縮することができる。
【0064】
ここで、モータ制御部31による目標回転量と実測回転量との差に応じたモータ24の制御の具体例について説明する。
図12は、上記モータ制御系におけるモータ制御部31によるモータ24の回転制御の具体例を示す波形図である。
図12は、モータ24の回転時間を変化させずに、目標回転量に対する実測回転量の差に応じてモータ24のパワーを変化させる例を示している。この例に限らず、モータ24のパワーを変化させずに、目標回転量に対する実測回転量の差に応じて回転時間を変化させてもよい。
【0065】
図12に示すように、モータ制御部31は、実測回転量が目標回転量より少ない場合、次回の回転において、モータ24のパワーを目標回転量と実測回転量との差に応じて増大させる。一方、モータ制御部31は、実測回転量が目標回転量より多い場合、次回の回転において、モータ24のパワーを目標回転量と実測回転量との差に応じて減衰させる。モータ制御部31は、このようにして、実測回転量が目標回転量に近づくようにモータ24のパワーを制御する。また、モータ制御部31は、実測回転量が目標回転量と等しい場合は、次回の回転において、モータ24のパワーを維持する。
【0066】
例えば、加熱調理が進行するに連れて、被加熱物が柔らかくなったり、ジャム等のような被加熱物が煮詰まって粘度が高まることで固くなったりする。被加熱物が柔らかくなる場合、モータ24は負荷が軽くなって回転しやすくなるので、実測回転量が目標回転量より多くなる。この場合、次回の回転において、モータ24のパワーは減衰するように制御される。一方、被加熱物が固くなる場合、モータ24は負荷が重くなって回転しにくくなるので、実測回転量が目標回転量より少なくなる。この場合、次回の回転において、モータ24のパワーは増大するように制御される。
【0067】
ところで、
図10に示す処理は、実際にモータ24が回転したか否かに関わらず、回転量比較部32がプログラム上の処理で、ステップS6においてモータ24が規定回数の回転を終了したと判定すると終了してしまう。しかしながら、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bが所定時間内に同じ回数だけ回転を試みても、実際に目標の回転量で回転した回数は、負荷(被加熱物の重量)に応じて異なる。このため、負荷が小さい場合には撹拌しすぎることとなり、逆に負荷が大きい場合には撹拌が足りないこととなる。
【0068】
また、被加熱物が多い(重い)場合、できるだけ早く目標回転量に達するように次の回転におけるパワーを大きくしても、何回かの回転でようやく目標回転量に達するので、被加熱物が少ない(軽い)場合と比べて、実際の回転(攪拌)回数に差が生じる。例えば、5分間の加熱時間において、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bを30回回転させる場合、被加熱物が多い場合には、モータ制御部31は、上述の処理によって、できるだけ早く回転できるように制御する。しかしながら、第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12Bは、最初の何回かの回転で目標回転量の通りに回転できなければ、30回正しく回転できないことになる。
【0069】
このような不都合を解消するために、モータ制御部31は、回転回数カウント部34(回転回数計数部)と、回転回数比較部35とをさらに有している。
【0070】
回転回数カウント部34は、目標FG値FGtと実測FG値FGmとが一致したと判定したときにモータ24が1回正規に回転したと判定して、カウント回転回数Nc(計数値)に1を加算してモータ24が正規に回転した回転回数を計数する。
【0071】
回転回数比較部35は、調理メニューなどに応じて予め規定されている規定回転回数Ntとカウント回転回数Ncとを比較する。また、回転回数比較部35は、両者が一致したときに、パワー変更部33にモータ24を停止させるようにオフ信号を出力する。また、回転回数比較部35は、両者が一致しないときに、パワー変更部33にモータ24を次回の回転をさせるようにオン信号を出力する。
【0072】
上記のように構成されるモータ制御部31によるモータ24の実回転回数制御の動作について
図13を参照して説明する。
図13は、モータ制御部31によるモータ24の実回転回数制御の手順を示すフローチャートである。
【0073】
図13に示すように、まず、回転回数カウント部34は、カウント回転回数Ncを0とする(ステップS11)。次いで、回転量比較部32は、目標FG値FGtと実測FG値FGmとを比較して(ステップS12)、両者が一致したか否かを判定する(ステップS13)。回転量比較部32が、両者が一致したと判定すると(YES)、回転回数カウント部34は、カウント回転回数Ncに1を加算する(ステップS14)。
【0074】
続いて、回転回数比較部35は、規定回転回数Ntとカウント回転回数Ncとを比較し(ステップS15)、両者が一致しているか否かを判定する(ステップS16)。回転回数比較部35は、両者が一致していると判定すると(YES)、モータ24が各回で目標の回転量を回転して規定回転回数Ntの回転を終了したと判断する。これにより、パワー変更部33がモータ24の回転を停止させて(ステップS17)、撹拌動作が終了する。その後は、必要に応じて次の調理ステージに移行する。
【0075】
また、回転量比較部32が、ステップS13において目標FG値FGtと実測FG値FGmとが一致していないと判定すると、処理がステップS15に移行する。
【0076】
そして、回転回数比較部35が、ステップS16において両者が一致していないと判定すると、処理がステップS12に移行し、次回の回転において、回転量比較部32が目標FG値FGtと実測FG値FGmとを比較する。
【0077】
このように、モータ制御部31は、モータ24の各回転における実測回転量が目標回転量に達しているか否かを判定する。また、モータ制御部31は、実測回転量が目標回転量に到達した回転を正常な回転と見なし、その正常な回転の回転数が規定回転回数Ntに達するまで回転動作を維持するようにモータ24を制御する。これにより、回転を試みた回数ではなく、目標の通りに正常に回転した回数を規定回転回数Ntに統一させることができる。したがって、量の異なる被加熱物でも撹拌の程度に差を生じさせることなく撹拌の総量を同程度に合わせることができる。
【0078】
なお、回転量比較部32は、上述のステップS13において、目標FG値FGtと実測FG値FGmとの一致または不一致を判定するが、実測FG値FGmが目標FG値FGtの所定割合(例えば70%)に達しているか否かを判定してもよい。このような判定は、目標FG値FGtと実測FG値FGmとが一致していなくても、実測FG値FGmが目標FG値FGtにある程度近ければ、1回の撹拌が目標の通りにできたと許容できる場合に適用できる。
【0079】
また、モータ制御部31の回転量比較部32、パワー変更部33、回転回数カウント部34および回転回数比較部35を、実施形態1におけるモータ制御部25の変則回転制御部27の機能として組み込んでもよい。
【0080】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、
図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施形態1および2にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0081】
図14は、炊飯器100の実施形態3に係る加熱制御系の構成を示すブロック図である。
【0082】
図14に示すように、本実施形態に係る炊飯器100は、加熱制御部41を備えている。加熱制御部41は、CPU16(
図5参照)が有する加熱制御の機能を実現する部分であり、温度センサ15によって検出された内鍋7の温度に基づいて、保温ヒータ14および誘導コイル10のオン・オフおよび温度を制御する。このため、加熱制御部41は、上昇温度測定部42と、温度上昇判定部43とを有している。
【0083】
上昇温度測定部42は、温度センサ15の検出温度に基づいて、加熱開始時から所定の時間の間の内鍋7の上昇温度ΔTを測定する。
【0084】
温度上昇判定部43は、上昇温度ΔTが所定の温度以上であるときに、被加熱物の量が少ないと判定し、保温時に保温ヒータ14をオフするように制御する。
【0085】
これにより、被加熱物の煮詰まりや過加熱を防止して、内鍋7の側面の焦げ付きや、こびり付きを防止することができる。また、不要な電力を消費しなくなるので、節電に寄与する。また、温度上昇判定部43は、保温時に被加熱物の量が少ないと判定すると、内鍋7の側面に配置された保温ヒータ14をオフし、内鍋7の底面に配置された誘導コイル10をオンして保温を行なう。
【0086】
なお、本実施形態では、内鍋7の側面に保温ヒータ14を設けるとともに、内鍋7の底面に誘導コイル10を設ける構成について説明した。これに対し、加熱手段は、内鍋7の側面および底面の双方にヒータを設ける構成、または内鍋7の側面および底面の双方に誘導コイルを設ける構成としてもよい。
【0087】
〔ソフトウェアによる実現例〕
炊飯器100の制御ブロック(特にモータ制御部31および加熱制御部41)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU16を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0088】
後者の場合、炊飯器100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU16、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM17または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM18などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU16)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って(ロードして)実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0089】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器は、被加熱物を撹拌する撹拌体(第1撹拌アーム12Aおよび第2撹拌アーム12B)と、前記撹拌体を回転させるモータ24と、前記撹拌体が正規の回転方向に複数回回転するように前記モータ24の回転を制御するモータ制御部25,31とを備え、前記モータ制御部25,31が、前記撹拌体が、各回の回転において、正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に回転するように前記モータの回転を制御する。
【0090】
上記の構成によれば、撹拌体は、前回の回転が終了したときに被加熱物に当たっている状態から少しだけ逆方向に回してから正規の回転方向に回転する。これにより、各回の回転において、正規の方向の回転開始時には、撹拌体が被加熱物から離れているので、モータの負荷が小さくなる。そして、撹拌体は、正規の回転方向に少し回転してから被加熱物に当たることで、回転の最初から正規の回転方向に回転するよりもモータのパワーを抑えることができる。
【0091】
本発明の態様2に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記モータ制御部31は、前記モータ24の目標回転量と実測回転量との差が所定値以上であるときに、次回の回転における前記モータのパワーを上記差に応じた変化量で変更してもよい。
【0092】
上記の構成によれば、モータの実測回転量と目標回転量との差が大きいときには、早く目標回転量に近づくように、次回の回転においてモータのパワーの変化量を増大させることができる。これにより、被加熱物の量が多い場合でも、より短時間で目標のパワーに到達することができる。
【0093】
本発明の態様3に係る加熱調理器は、上記態様1または2において、前記モータ制御部31は、前記モータの1回の回転における実測回転量が目標回転量に達しているか否かを判定する回転量判定部と、前記実測回転量が前記目標回転量に達しているときに、前記モータが正規に回転した回転回数を計数する回転回数計数部とをさらに有し、前記回転回数計数部の計数値が規定回転回数Ntに達するまで前記モータの回転動作を維持してもよい。
【0094】
上記の構成によれば、回転を試みた回数ではなく、目標回転量を正常に回転した回数を規定回転回数Ntに統一させることができる。したがって、量の異なる被加熱物でも撹拌の程度に差を生じさせることなく撹拌の総量を同程度に合わせることができる。
【0095】
本発明の各態様に係る加熱調理器は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記加熱調理器が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記加熱調理器をコンピュータにて実現させる加熱調理器の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0096】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。