(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
グラフェンは、数層または1層の、ハニカム格子状に配列したsp2結合炭素原子からなる材料であり、高い表面積および電気伝導率と良好な化学的不活性ならびに極めて優れた機械的特性とを併せ持つ材料である。これらの品質はグラフェンを電池、スーパーキャパシタおよび導電性インク用途に理想的な材料にする。グラフェンは、電池電極で広範に使用されるグラファイトおよびカーボンブラックを置き換え得る。グラフェンは、車のタイヤ中のカーボンブラック、ならびにカーボンブラックおよび炭素繊維がフィラー用途に使用されている場所も置き換え得る。
【0004】
市販のグラフェンを3つのカテゴリ:基板上への化学蒸着(CVD)による単層グラフェン、グラファイトの剥離による多層グラフェン、およびプラズマトーチを使用して作製される数層グラフェンナノシートに分けることができる。CVDグラフェンは真に単層のグラフェンの品質を持つが、おそらくバルク用途に必要な量で作製されないであろう。剥離された多層グラフェンは、エネルギー貯蔵、フィラーおよび導電性インク用途に適したバルク量で利用可能であるが、1層グラフェンの仕様または分光的特徴を持たず、1層グラフェンで期待される電気伝導率値にも達することができない。プラズマトーチプロセスから作られる数層グラフェンナノシートは、1層グラフェンのものに類似した特徴(ラマンスペクトルおよび比表面積)を有してバルク量で作製され得る。
【0005】
工業規模で(すなわち、高電力プラズマトーチを使用して)、真に1層のグラフェンに類似した特徴(ラマンスペクトルおよび比表面積)を有する、バルク量の経済的な数層グラフェンを作製することが非常に望ましい。
【0006】
炭素原料をプラズマトーチへ注入することによりグラフェンを作製するためのボトムアップ法は、文献に提示されている。しかしながら、文献ではいずれの場合においても、それらは低い炭素給送速度で動作するか、または不十分なグラファイト化を得る。これらの刊行物は、グラフェンの高い品質を維持しながら作製のスケールアップを可能にする動作パラメータを教示していない。例えば、米国特許第8,486,363B2号および米国特許第8,486,364B2号には、炭化水素前駆物質を利用してグラフェン状炭素粒子を作製するための方法が記載されている。米国特許第8,486,363B2号は93.6g/hの速度でグラフェン状炭素粒子を作製するプロセスを記載している。特許出願第WO2015189643A1号は、100g/hの速度でグラフェン状粒子を作製するための方法を開示している。さらに、いくつかのグループは、電気アーク中に炭化水素を注入することによってグラフェンナノシートを合成している(Zhiyongら、Zhangら、Amirovら)。Bergeron、LavoieおよびPristavitaらは誘導結合プラズマを使用してグラフェンナノプレートレットを作製している。さらに、すべての先行技術は低電力プラズマ反応器(≦35kW)を用いて実現されている。本明細書に記載のプロセスは、プラズマのアフターグローに過剰な熱を発生させる高電力プラズマ反応器(例えば>35kW)を用いて、品質の良いグラフェンナノシートを作製することを可能にする。本明細書に開示のプロセスは、炭化水素ガスを適切に分散およびクエンチすることによって、高品質のグラフェンナノシートを高スループットで作製することも可能にする。
【0007】
プラズマプロセスによるグラフェンナノシートの作製は、副生成物として多環芳香族炭化水素(PAH)の形成をもたらすことが知られている(WO2015189643A1)。通常、生成したPAHは0.7〜2重量%の範囲の濃度を有する。そのようなプロセスでは、PAHは数層グラフェンナノシートの表面上に形成される。
【0008】
PAHは、ガス状炭化水素前駆体の熱分解から生成される、または炭素系粉末の生成中に水素前駆体と炭素前駆体との混合物が同時に存在する場合に生成される、炭素系粉末上に存在する望ましくない化合物である。PAHは、主に炭素および水素で構成される(C
XH
Y)多くの化合物を包含し、炭素は大部分はsp
2混成で芳香環配置に配列する。PAHは、ごくわずかな酸素または窒素または他の原子も含有し得る。PAHは有害かつ発癌性であり、PAHを含有する炭素ナノ粒子を取り扱う人間およびPAHを含有する製品を使用する消費者に深刻な害をもたらし得る(Borm P J,et.al.,Formation of PAH−DNA adducts after in vivo and vitro exposure of rats and lung cells to different commercial carbon blacks,Toxicology and Applied Pharmacology,2005 Jun.1;205(2):157−167を参照)。結果として、製造された炭素粉末中に存在するPAHの割合を制限するための規制が存在する(一例として、EU指令2007/19/ECは、0.25mg/kgの、カーボンブラック中の最大ベンゾ(a)ピレン含有量を定める)。さらに、炭素表面上のPAHの存在は、小さい細孔を塞ぎ、したがって比表面積を減少させることによって、エネルギー貯蔵用途における性能に悪影響を及ぼし得る。
【0009】
加えて、世界税関機構(WCO)により定められた統一システム(HS)は、多くのPAHを区分1Bの発癌性、変異原性または生殖毒性(CMR)物質に分類する。それに応じて、新しい欧州REACH規則附属書XVIIは、消費者製品中のPAHの濃度を0.0001重量%(または1mg/kg)に制限している。
【0010】
洗浄またはリンスして炭素粒子からPAHを落とすためのウェット化学プロセスが知られている。ソックスレー抽出などのそのようなプロセスは、PAHの溶解性が非常に限られるため、一般にトルエンのような毒性のある非極性溶媒の使用を必要とする。しかしながら、毒性のある溶媒を伴うそのようなプロセスは、PAHで汚染された溶媒によって形成された大量の廃棄物をもたらす。ウェット化学PAH除去プロセスはしたがって、環境への悪影響を有し、PAHを含まない最終製品のコストを増大させる。したがって、経済的でもありかつ溶媒廃棄物を伴わない、炭素ナノ粒子およびグラフェンナノシート、特にプラズマ成長グラフェンナノシートからPAHを除去するための単純な気相(ドライ)方法を開発することが非常に望ましい。液相プロセスの使用はまた、乾燥後の炭素粉末の著しい高密度化をもたらす。そのようなより高い密度は、例えば分散のようなさらなる処理に支障となる場合がある。プラズマプロセスを使用して成長させたPAHを含まないグラフェンナノプレートレットは、PAHを含有するプラズマ成長グラフェンナノプレートレットと比較して、より大きい比表面積、分散性、およびより少ない健康リスクの存在を示した。
【0011】
したがって、プラズマプロセスを使用して、後処理なしで、非常に低いレベルのPAHを含有するグラフェンナノプレートレットを直接作製することが非常に望ましい。実際、ソックスレー抽出のようなウェット化学プロセスを使用してPAHを洗い流すことは可能であるが、これは、PAHを含まない最終グラフェン材料のコストを増大させる。
【発明の概要】
【0012】
本明細書において、一態様では、
標準温度および標準圧力(STP)で少なくとも60m/sの速度でプラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入してグラフェンナノシートの核を形成することと、グラフェンナノシートを1000℃以下のクエンチガスでクエンチすることと
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0013】
本明細書において、別の態様では、
少なくとも60m/s STPの速度でプラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入してグラフェンナノシートの核を形成することと、グラフェンナノシートを1000℃以下のクエンチガスでクエンチし、それにより514nmの入射レーザ波長を使用した測定で3以上のラマンG/D比および0.8以上のラマン2D/G比を有するグラフェンナノシートを作製することと
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0014】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/s STPの速度、および1分あたりに注入される炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも75標準リットル毎分(slpm)のクエンチガス対炭素比で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0015】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/s STPの速度、および供給プラズマトーチ電力1kWあたり少なくとも1.25slpmのクエンチガスの、クエンチガス対供給プラズマトーチ電力比で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0016】
本明細書において、さらに別の態様では、
プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入することであって、炭素含有物質の注入は、複数のジェットを使用して少なくとも60m/s STPの速度で実行され、注入された炭素含有物質がトーチ軸の周りに放射状に分配かつクエンチガスに到達する前に希釈されるように誘導され、それにより514nmの入射レーザ波長を使用した測定で3以上のラマンG/D比および0.8以上のラマン2D/G比を有するグラフェンナノシートを作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0017】
本明細書において提供される別の態様は、
少なくとも60m/s STPの速度、および供給プラズマトーチ電力1kWあたり少なくとも1.25slpmのクエンチガスの、クエンチガス対供給プラズマトーチ電力比で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを少なくとも120g/hの速度で作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスである。
【0018】
本明細書において提供される別の態様は、
プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入することであって、炭素含有物質の注入は、複数のジェットを使用して少なくとも60m/s STPの速度で実行され、注入された炭素含有物質がトーチ軸の周りに放射状に分配かつクエンチガスに到達する前に希釈されるように誘導され、それによりグラフェンナノシートを少なくとも120g/hの速度で作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスである。
【0019】
本明細書において提供されるさらなる態様は、
少なくとも60m/sの速度でプラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを少なくとも2g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスである。
【0020】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/sの速度、および35kW超の供給プラズマトーチ電力で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを少なくとも80g/hの速度で作製すること
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0021】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/s STPの速度でプラズマの熱領域中に天然ガスまたはメタンを注入してグラフェンナノシートの核を形成することと、グラフェンナノシートをクエンチガスでクエンチすることと
を含む、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0022】
本明細書において、一態様では、
標準温度および標準圧力(STP)で少なくとも60m/sの速度でプラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入してグラフェンナノシートの核を形成することと、グラフェンナノシートを1000℃以下のクエンチガスでクエンチすることとを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0023】
本明細書において、別の態様では、
少なくとも60m/s STPの速度でプラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入してグラフェンナノシートの核を形成することと、グラフェンナノシートを1000℃以下のクエンチガスでクエンチし、それにより514nmの入射レーザ波長を使用した測定で3以上のラマンG/D比および0.8以上のラマン2D/G比を有するグラフェンナノシートを作製することとを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0024】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/s STPの速度、および1分あたりに注入される炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも75標準リットル毎分(slpm)のクエンチガス対炭素比で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0025】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/s STPの速度、および供給プラズマトーチ電力1kWあたり少なくとも1.25slpmのクエンチガスの、クエンチガス対供給プラズマトーチ電力比で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0026】
本明細書において、さらに別の態様では、
プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入することであって、炭素含有物質の注入は、複数のジェットを使用して少なくとも60m/s STPの速度で実行され、注入された炭素含有物質がトーチ軸の周りに放射状に分配かつクエンチガスに到達する前に希釈されるように誘導され、それにより514nmの入射レーザ波長を使用した測定で3以上のラマンG/D比および0.8以上のラマン2D/G比を有するグラフェンナノシートを作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0027】
本明細書において提供される別の態様は、
少なくとも60m/s STPの速度、および供給プラズマトーチ電力1kWあたり少なくとも1.25slpmのクエンチガスの、クエンチガス対供給プラズマトーチ電力比で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを少なくとも120g/hの速度で作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスである。
【0028】
本明細書において提供される別の態様は、
プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入することであって、炭素含有物質の注入は、複数のジェットを使用して少なくとも60m/s STPの速度で実行され、注入された炭素含有物質がトーチ軸の周りに放射状に分配かつクエンチガスに到達する前に希釈されるように誘導され、それによりグラフェンナノシートを少なくとも120g/hの速度で作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスである。
【0029】
本明細書において提供されるさらなる態様は、
少なくとも60m/sの速度でプラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを少なくとも2g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスである。
【0030】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/sの速度、および35kW超の供給プラズマトーチ電力で、プラズマの熱領域中に炭素含有物質を注入し、それによりグラフェンナノシートを少なくとも80g/hの速度で作製することを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0031】
本明細書において、さらなる態様では、
少なくとも60m/s STPの速度でプラズマの熱領域中に天然ガスまたはメタンを注入してグラフェンナノシートの核を形成することと、グラフェンナノシートをクエンチガスでクエンチすることとを含み、
グラフェンナノシートは約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する、グラフェンナノシートを作製するためのプラズマプロセスが提供される。
【0032】
本明細書に開示のプロセスは、非常に低いPAH含有量を有し、安全に取り扱いができ、エンドユーザー用途に組み込んでも安全な高品質のグラフェンナノシートを作製することも可能にすることが見出された。本明細書に記載のプロセスは、プラズマプロセスでのグラフェンの作製速度を上昇させるのに有効であり、したがって経済的かつ大規模な作製を可能にすることも見出された。例えば、炭素含有物質の給送速度を上げることによって、および同時にノズルインジェクタの設計を適合させることによって、作製速度が上昇し得ることが見出された。本明細書に記載のプロセスは、多環芳香族炭化水素の濃度を低減したグラフェンナノシートの作製に有効であることも見出された。
【0033】
以下の図面は、単なる例示として、本開示の様々な実施形態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書で使用される場合、「グラフェンナノシート」なる語句は、ハニカム格子状に配列した1原子の厚さのsp
2結合炭素原子のシートの1つまたは複数の積層を含む構造を有する、しわのある(crumpled)グラフェンナノシートを指す。これらの積層シートの少なくとも一部は丸まり、曲がり、またはバックリングしており、それらに3Dモルフォロジーを与える。そのような粒子は、グラフェンナノプレートレット(GNP)、グラフェンナノフレーク、しわのあるグラフェン、数層グラフェン、グラフェン状炭素粒子、または単にグラフェンとしても知られている。例えば、グラフェンナノシートは、10層以下で構成され、ASTM D 3663−78規格による測定で高いB.E.T.比表面積(≧250m
2/g)(Brunauerら)を示す粒子を指し得る。粒子は0.5〜10nmの範囲の厚さおよび典型的には50nm以上の幅を有し、したがって、少なくとも5:1であるが典型的には10:1以上の高いアスペクト比を示す。粒子は、ラマン分光法を使用して514nmの入射レーザ波長で分析した場合、典型的なD、Gおよび2Dバンド(それぞれ約1350cm
−1、1580cm
−1、2690cm
−1に位置する)、ならびに3以上のG/D比(G/D≧3)および0.8以上の2D/G比(2D/G≧0.8)を示す。本明細書で使用される場合、G/D比および2D/G比はこれらのバンドのピーク強度の比を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アスペクト比」なる語句は、グラフェン粒子の最長寸法対グラフェン粒子の最短寸法の比を指す。例えば、100nmの平均幅および2nm平均厚さを有するグラフェン粒子は、50:1のアスペクト比を有する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「多環芳香族炭化水素」、「PAH」または「PAH(複数形)」なる語句は、石炭、油、ガス、木材、ごみ、またはタバコおよび炭火焼き肉などの他の有機物の不完全燃焼中に形成される化学物質の群を指す。100を超える異なるPAHが存在する。PAHは一般に、単一化合物としてではなく、複合混合物として(例えば、煤のような燃焼生成物の一部として)生じる。それらは、例えば粗製油、石炭、コールタールピッチ、クレオソート、およびルーフィングタールのような物質中にも見出され得る。PAHの一覧表には、ビフェニレン、アセナフチレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、キシレン、ナフタレン、ベンゾ(A)ピレン(BaP)、ベンゾ[E]ピレン(BeP)、ベンゾ[a]アントラセン(BaA)、クリセン(CHR)、ベンゾ[b]フルオランテン(BbFA)、ベンゾ[j]フルオランテン(BjFA)、ベンゾ[k]フルオランテン(BkFA)、およびジベンゾ[a,h]アントラセン(DBAhA)が含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
グラフェン試料中の多環芳香族炭化水素の濃度は、カーボンブラック試料中のベンゾ−α−ピレン(BaP)の定量化で一般的なように、例えばトルエン中でのソックスレー抽出、続いてガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)を使用した分析によって定量的に決定され得る。炭素試料中の多環芳香族炭化水素を定量するための標準的な方法は、規格ASTM D7771−17、「カーボンブラック中のベンゾ−α−ピレン(BaP)含有量の決定のための標準試験法」によって記載されている。この規格はベンゾ−α−ピレン(BaP)を対象にしているが、測定方法はPAH類の他の化合物に対して使用され得る。本発明の報告されたPAHの%濃度は、検出されたすべてのPAHの合計である。本発明のソックスレー抽出は、典型的には、ASTM規格の16時間と比較して、わずか約4〜6時間であった。ソックスレーは、急速注/排サイクルの高効率抽出用に組み立てられた。抽出が終了する前、溶出剤は無色であった。抽出液は濃縮されずにGC/MSによって直接分析され、市販の標準PAH混合物と比較された。この方法の検出限界は、35〜90ppmのPAH(0.0035〜0.0090重量%のPAH)のオーダーである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「炭素含有物質」なる語句は、少なくとも1つの炭素原子を含む化合物または物質を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「熱領域」なる語句は、例えば、誘導結合プラズマトーチ(ICP)、直流プラズマトーチ(DC−プラズマ)、交流プラズマ(AC−プラズマ)もしくはマイクロ波プラズマトーチ、またはプラズマ状態の高温ガスを発生させる任意の他の好適な方法によって形成される、例えば準熱プラズマ、例えば局所熱平衡(LTE)に近いプラズマによって発生し得る熱領域を指す。プラズマは高圧(典型的には100トル超)でLTEに近く、電子、イオン、中性粒子およびラジカル間での衝突が頻繁に起こる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「供給プラズマトーチ電力」なる用語は、プラズマトーチに供給される電力を指す。供給された電力をプラズマガスへ伝達する際のプラズマトーチの効率は100%ではないため、供給される電力はプラズマの出力以上である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「クエンチガス対炭素比」なる用語は、炭素含有物質、例えば注入される炭素含有ガスの単位時間あたりの体積(例えばslpm)に対する、クエンチガスの単位時間あたりの体積、例えば注入されるガスの標準リットル毎分(slpm)を指す。本明細書で使用される場合、「クエンチガス対炭素比」なる用語は、注入される炭素のモル数に対する、クエンチガスの単位時間あたりの体積も指す(1モルの炭素は12グラムの炭素に等しい)。本明細書で使用される場合、「クエンチガス対炭素比」は、炭素含有物質の単位時間あたりの質量(例えばグラム毎秒またはグラム毎分)に対する、反応器中に注入されるクエンチガスの単位時間あたりの質量(例えばグラム毎秒またはグラム毎分)も指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「クエンチガス」なる用語は、STPで17.9ミリワット毎メートル毎ケルビン度以上(STPでのアルゴンの熱伝導率;E.W.LemmonおよびR.T Jacobsenを参照)の高い熱伝導率を有する任意の炭素非含有ガスを指し、および含み得る。クエンチガスは、例えばアルゴン、ヘリウム、水素、窒素、または17.9mW/m・K以上の熱伝導率を有する任意の他のガス、またはこれらのガスの任意の混合物で構成されてよい。ガスの熱伝導率は反応物のクエンチ速度の決定要因であることが、当業者には理解されよう。クエンチガスは典型的にはプラズマトーチの近くまたは内部に注入されるが、反応器中の他の場所に、および複数の層または複数の場所で注入され得る。本明細書で使用される場合、「クエンチガス」は、RF−プラズマまたはDC−プラズマトーチにおいてプラズマガスに隣接して注入され、トーチ構成部品を熱衝撃および劣化から保護するために使用されるシースガスも指す(
図4および
図5参照)。
【0044】
本明細書で使用される場合、ガス体積および速度はすべて、別段の指定がない限り、標準温度および標準圧力(STP)での量を表すことを意図する。これらの値は、プラズマトーチ内で経験する高温および高圧で変化することが、当業者には容易に理解されよう。
【0045】
単語「a」または「an」は、特許請求の範囲および/または明細書中で用語「含む(comprising)」と併せて使用される場合「1つ」を意味してよいが、内容について別段の明確な指示がない限り、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1以上」の意味とも一致する。同様に、単語「別の(another)」は、内容について別段の明確な指示がない限り、少なくとも2つ目以上を意味してよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、単語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(include)」および「含む(includes)」などの含む(including)の任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contain)」および「含有する(contains)」などの含有する(containing)の任意の形態)は、包括的または非限定的(open−ended)であり、追加の、記載されていない要素またはプロセスステップを排除しない。
【0047】
したがって、本開示は、その構造が1層グラフェンのものに類似しているグラフェンナノシートの作製に関する。本開示のプロセスは、工業規模で、真に1層のグラフェンに類似した特徴(ラマンスペクトルおよび比表面積)を有する数層グラフェンを作製することを可能にする。本開示のプロセスの結果得られるグラフェンナノシートは、0.8以上のラマン2D/G比(514nmの波長の入射レーザを使用した測定で)および250m
2/g以上の比表面積(BET)を特徴とする。このラマン特徴は、CVDグラフェンによって示され、グラフェンがごくわずかな層(例えば4〜7層)で構成されることを実証する。プラズマで作製されたグラフェンの波状モルフォロジーは、グラフェンを様々な溶媒および樹脂に分散させ、層の再積層を回避する。
【0048】
本開示は、工業規模で、プラズマトーチプロセスを使用して高品質のグラフェンナノシートを得るためのプロセスを記載する。プラズマトーチプロセスでのグラフェンナノシートの形成は、(a)高温領域での炭素前駆体ガスの分解、続いて冷却時の(b)グラフェン核の形成、および(c)数層グラフェンシートへの核成長の3つの異なる段階を経る。
【0049】
段階(a)および(b)中に経験する温度プロファィルに依存して、異なるタイプのナノ構造をもたらす3つの競合する反応経路が存在する。これらの経路は、(1)およそ1600℃で、ファーネスブラック型粒子をもたらす多環芳香族炭化水素(PAH)経路、ここでPAHはアセチレン前駆体化に由来する;(2)およそ2600℃で、アセチレンブラック型粒子をもたらすアセチレン経路;および(3)より高温で、所望のしわのあるシート状モルフォロジーをもたらすC
2ラジカル経路である。所望のシート状モルフォロジーへの選択性を高めるために、PAHおよびアセチレン経路を回避しなければならない、つまり、活性水素の存在下、2000℃〜4000℃の温度でC
2ラジカルの冷却中に形成される活性アセチレンの形成を回避しなければならならない。これは、高温熱領域(例えば、>4000℃)と低温ガス(シース)部分(例えば、<1000℃)との間の急な温度勾配を提供することによって達成されてよい。本開示のプロセスでは、反応物が経験するこの急な勾配は、インジェクタノズルの使用によって、およびクエンチガス(シースガス)の組成および流量を適切に選択することによって、増幅されてよい。インジェクタノズルは、核形成された粒子が低温ガス先端に到達する前に最短距離を移動するように、炭化水素ガスに高い注入速度を与え、最も急な温度勾配を通して(トーチ軸に関して)放射状に流れを向ける。インジェクタノズルはまた、核形成しているグラフェンナノシートが互いに相互作用するのを防ぐために、炭化水素ガスを希釈する。本明細書に記載の注入設計は、改善されたクエンチ条件とともに、例えば炭化水素給送速度を上昇させることによって、所望の高品質の材料の高スループット作製を得ることを可能にする。
【0050】
加えて本開示は、高品質のグラフェンを高い作製速度で(例えば少なくとも225g/h)作製するための、具体的には炭化水素注入に関する動作パラメータを記載し、したがって商業的に実行可能なプロセスを実現する。
【0051】
例えば、グラフェンナノシートは1300℃未満の温度を有するクエンチガスでクエンチされる。
【0052】
例えば、グラフェンナノシートは900℃未満の温度を有するクエンチガスでクエンチされる。
【0053】
例えば、グラフェンナノシートは600℃未満の温度を有するクエンチガスでクエンチされる。
【0054】
例えば、グラフェンナノシートは300℃未満の温度を有するクエンチガスでクエンチされる。
【0055】
例えば、グラフェンナノシートは100℃未満の温度を有するクエンチガスでクエンチされる。
【0056】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも50slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0057】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも100slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0058】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも150slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0059】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも160slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0060】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが少なくとも250slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0061】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが約50slpm〜約125slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0062】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが約100slpm〜約160slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0063】
例えば、炭素含有物質は、1分あたりの炭素1モルあたりのクエンチガスが約100slpm〜約250slpmのクエンチガス対炭素比で注入される。
【0064】
例えば、炭素含有物質の注入は、複数のジェットを使用して実行される。
【0065】
例えば、炭素含有物質の注入は、少なくとも2個のジェットを使用して実行される。
【0066】
例えば、炭素含有物質の注入は、少なくとも3個のジェットを使用して実行される。
【0067】
例えば、炭素含有物質の注入は、少なくとも4個のジェットを使用して実行される。
【0068】
例えば、炭素含有物質の注入は、少なくとも5個のジェットを使用して実行される。
【0069】
例えば、炭素含有物質の注入は、5個超のジェットを使用して実行される。
【0070】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも120g/hの速度で作製される。
【0071】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも150g/hの速度で作製される。
【0072】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも200g/hの速度で作製される。
【0073】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも250g/hの速度で作製される。
【0074】
例えば、グラフェンナノシートは約120〜約150g/hの速度で作製される。
【0075】
例えば、グラフェンナノシートは約150〜約250g/hの速度で作製される。
【0076】
例えば、グラフェンナノシートは、供給トーチ電力1kWあたり少なくとも3slpmのクエンチガスの割合で給送されたクエンチガスでクエンチされる。
【0077】
例えば、グラフェンナノシートは、供給トーチ電力1kWあたり少なくとも1slpmのクエンチガスの割合で給送されたクエンチガスでクエンチされる。
【0078】
例えば、グラフェンナノシートは、供給トーチ電力1kWあたり少なくとも0.5slpmのクエンチガスの割合で給送されたクエンチガスでクエンチされる。
【0079】
例えば、グラフェンナノシートは、供給トーチ電力1kWあたり約0.5slpm〜約1.5slpmのクエンチガスの割合で給送されたクエンチガスでクエンチされる。
【0080】
例えば、グラフェンナノシートは、供給トーチ電力1kWあたり約1.5slpm〜約4slpmのクエンチガスの割合で給送されたクエンチガスでクエンチされる。
【0081】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも1g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製される。
【0082】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも2.5g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製される。
【0083】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも3g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製される。
【0084】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも5g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製される。
【0085】
例えば、グラフェンナノシートは約2〜約3g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製される。
【0086】
例えば、グラフェンナノシートは約3〜約5g/供給プラズマトーチ電力kWhの割合で作製される。
【0087】
例えば、炭素含有物質は炭化水素前駆体である。
【0088】
例えば、炭素含有物質は、メタン、n−プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2−ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒド、および/または臭化ビニルから選択される。
【0089】
例えば、炭素含有物質は炭素含有ガスである。
【0090】
例えば、炭素含有ガスは天然ガスである。本明細書で使用される場合、「天然ガス」なる用語は、地表の下の多孔質地層中に見出される、炭化水素ガスおよび非炭化水素ガスの天然起源の混合物を指す。天然ガスの主成分はメタンである。天然ガスの内容は産出する場所によって変動することが理解されよう。
【0091】
例えば、炭素含有ガスはC
1〜C
4炭化水素である。
【0092】
例えば、炭素含有ガスは、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、塩化ビニル、プロパン、プロペン、シクロプロパン、アレン、プロピン、ブタン、2−メチルプロパン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、1−ブチン、2−ブチン、シクロブテン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、もしくは1−ブテン−3−イン、またはそれらの混合物である。
【0093】
例えば、炭素含有物質はメタンまたは天然ガスである。
【0094】
炭素含有物質は、炭素含有ガスに限定されず、炭素含有液体および炭素含有固体も含む。炭素含有ガスと炭素含有液体との混合物、炭素含有ガスと炭素含有固体との混合物、炭素含有液体と炭素含有固体との混合物、または炭素含有ガス、炭素含有液体および炭素含有固体の混合物を使用することも可能である。
【0095】
例えば、炭素含有物質は炭素含有液体である。
【0096】
例えば、炭素含有液体はC
5〜C
10炭化水素である。
【0097】
例えば、炭素含有液体は、n−プロパノール、1,2−ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒド、臭化ビニル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、もしくはスチレン、またはそれらの混合物から選択される。
【0098】
例えば、炭素含有物質は炭素含有固体である。
【0099】
例えば、炭素含有固体は、グラファイト、カーボンブラック、ノルボルニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリスチレン、またはそれらの混合物から選択される。炭素含有固体は、例えばナノ粉末の形態であり得る。
【0100】
例えば、炭素含有ガス、炭素含有液体または炭素含有固体はキャリアガスとの混合物である。
【0101】
例えば、キャリアガスは不活性ガスを含む。
【0102】
例えば、不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素またはそれらの混合物から選択される。
【0103】
例えば、クエンチガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素またはそれらの混合物から選択される。
【0104】
例えば、クエンチガスは不活性ガスを含む。
【0106】
例えば、クエンチガスはアルゴンを含む。
【0107】
例えば、クエンチガスは、供給プラズマトーチ電力1kWにつき1〜10slpmのガスの割合で給送される。
【0108】
例えば、熱領域は約4000℃〜約11000℃の温度を有する。
【0109】
例えば、熱領域は約3000℃〜約8000℃の温度を有する。
【0110】
例えば、熱領域は約2600℃〜約5000℃の温度を有する。
【0111】
例えば、炭素含有物質は少なくとも70m/s STPの速度で注入される。
【0112】
例えば、炭素含有物質は少なくとも90m/s STPの速度で注入される。
【0113】
例えば、炭素含有物質は少なくとも100m/s STPの速度で注入される。
【0114】
例えば、炭素含有物質は約60〜約100m/s STPの速度で注入される。
【0115】
例えば、炭素含有物質は約70〜約90m/s STPの速度で注入される。
【0116】
例えば、炭素含有物質は約75〜約85m/s STPの速度で注入される。
【0117】
例えば、クエンチガスは熱領域の周囲に注入される。
【0118】
例えば、プロセスは作製されたグラフェンナノシートを回収することをさらに含む。
【0119】
例えば、作製されたグラフェンナノシートは、バグフィルタ中に、フィルタカートリッジ上に、サイクロンで、または粉末処理の分野の当業者に使用される他の装置で回収される。
【0120】
例えば、グラフェンナノシートは、ASTM D 3663−78による測定で250m
2/g以上のB.E.T.比表面積を有する。
【0121】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも5:1のアスペクト比を有する。
【0122】
例えば、グラフェンナノシートは少なくとも10:1のアスペクト比を有する。
【0123】
例えば、グラフェンナノシートは、514nmの入射レーザ波長を使用した測定で少なくとも3のラマンG/D比を有する。
【0124】
例えば、グラフェンナノシートは、514nmの入射レーザ波長を使用した測定で少なくとも0.8のラマン2D/G比を有する。
【0125】
例えば、供給プラズマトーチ電力は35kW超である。
【0126】
例えば、供給プラズマトーチ電力は100kW超である。
【0127】
例えば、供給プラズマトーチ電力は200kW超である。
【0128】
例えば、供給プラズマトーチ電力は1000kW超である。
【0129】
例えば、グラフェンナノシートは約0.6重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0130】
例えば、グラフェンナノシートは約0.5重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0131】
例えば、グラフェンナノシートは約0.4重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0132】
例えば、グラフェンナノシートは約0.3重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0133】
例えば、グラフェンナノシートは約0.2重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0134】
例えば、グラフェンナノシートは約0.1重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0135】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0136】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.7重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0137】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.5重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0138】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.3重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0139】
例えば、グラフェンナノシートは約0.1重量%〜約0.3重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0140】
例えば、グラフェンナノシートは約0.15重量%〜約0.25重量%未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0141】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.7重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0142】
例えば、グラフェンナノシートは約0.1重量%〜約0.6重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0143】
例えば、グラフェンナノシートは約0.05重量%〜約0.6重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0144】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.5重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0145】
例えば、グラフェンナノシートは約0.05重量%〜約0.5重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0146】
例えば、グラフェンナノシートは約0.1重量%〜約0.5重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0147】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.4重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0148】
例えば、グラフェンナノシートは約0.05重量%〜約0.4重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0149】
例えば、グラフェンナノシートは約0.1重量%〜約0.4重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0150】
例えば、グラフェンナノシートは約0.01重量%〜約0.3重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0151】
例えば、グラフェンナノシートは約0.05重量%〜約0.3重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0152】
例えば、グラフェンナノシートは約0.1重量%〜約0.3重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0153】
例えば、グラフェンナノシートは約0.15重量%〜約0.25重量%の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0154】
例えば、グラフェンナノシートは約500ppm未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0155】
例えば、グラフェンナノシートは約400ppm未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0156】
例えば、グラフェンナノシートは約300ppm未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0157】
例えば、グラフェンナノシートは約200ppm未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0158】
例えば、グラフェンナノシートは約100ppm未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0159】
例えば、グラフェンナノシートは、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)またはASTM D7771−11に従うソックスレー抽出法による測定で、検出限界未満の多環芳香族炭化水素濃度を有する。
【0160】
例えば、プロセスは、プラズマの対称軸に関して約10〜約40度、約20〜約30度、または約25度の炭素含有物質の注入角度で実行され得る。
【0161】
例えば、プロセスは、プラズマの対称軸に関して約15〜約35度、約20〜約30度、または約25度の炭素含有物質の注入角度で実行され得る。
【0162】
例えば、プロセスは、炭素含有物質を注入するための多孔インジェクタを含むプラズマトーチを使用して実行でき、インジェクタ孔の各々について、注入速度は少なくとも60m/s STPであり、注入角度はプラズマの対称軸に関して約15〜約35度である。
【0163】
例えば、プロセスは、炭素含有物質を注入するための多孔インジェクタを含むプラズマトーチを使用して実行でき、インジェクタ孔の各々について、注入速度は少なくとも60m/s STPであり、注入角度はプラズマの対称軸に関して約20〜約30度である。
【0164】
例えば、プロセスは、炭素含有物質を注入するための多孔インジェクタを含むプラズマトーチを使用して実行でき、インジェクタ孔の各々について、注入速度は少なくとも60m/s STPであり、注入角度はプラズマの対称軸に関して約25度である。
【0165】
例えば、本発明の実施形態によれば、熱的に作製されたグラフェン状炭素粒子は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,486,363号、8,486,364号および9,221,688号に記載のシステムおよび方法によって作製されてよい。
【0166】
以下の実施例は非限定的なものであり、本開示の材料およびプロセスをより良く例示するために使用される。
【0167】
実施例
実施例1
1つの例示的実施形態では、炭化水素前駆物質はメタンであり、60kWの最大プレート電力で誘導結合プラズマトーチ(ICP)中に注入される。
図4は、ICPトーチ100、ならびに炭素非含有ガスおよび炭素含有物質を含むガスの定性的な流れを示す。
【0168】
誘導結合プラズマトーチ(PN−50モデル、Tekna,Sherbrooke,Quebec,Canada)に56kWを送達する出力発生装置において、
図4に示すように、中央渦巻きガス128として20slpmのアルゴンが使用され、それは174slpmのアルゴンおよび30slpmの水素ガスからなるクエンチガス(シースガス)124の層によって囲まれた。33.6slpmの天然ガス(炭素給送ガス)120が、設計されたノズルを有するインジェクタプローブ110を通して注入された。高周波交流電流を伝導するコイル122がプラズマを発生させる。定性的等温線126がプラズマトーチ内部に示されている。反応器中の圧力は500トルであった。注入速度は標準温度および標準圧力(STP)で80.6m/sであった。極端な温度および圧力のプラズマ状態では、これらのガス注入速度はより高く、値は異なる温度および圧力値を考慮して補正されなくてはならないことが理解されるべきである。例えば、より大きいプラズマ体積またはより大きいプラズマトーチ寸法にプロセスが拡大される場合、この注入速度値は上昇することが当業者には理解されよう。
【0169】
このプロセスは45分にわたり、高温プラズマ領域の下流で収集された粉末の重量をこの粉末の合成に必要な動作時間で割って測定した、225g/hのグラフェン作製速度をもたらした。
【0170】
注入された炭素は、33.6slpm/22.4l=1.5モル/分または18g/分の炭素である。
【0171】
クエンチガス対炭素比は、1モルの炭素に対して少なくとも120リットルSTPの炭素非含有ガス(また、18g/分の炭素に対して少なくとも180slpmの炭素非含有ガス;ガス形態の炭素1gに対して10.0リットルの炭素非含有ガス)である。
【0172】
電力量あたりの注入された炭素は、典型的には、56kWの送達されたトーチ電力に対して33.6slpmであり、0.6slpm C/トーチ電力kWに等しい。
【0173】
ここで
図1Aおよび
図1Bを参照すると、使用されたインジェクタは5個の注入孔12を含む多孔ノズル10であり、各孔は0.052インチの直径を有する。ノズル10は炭化水素給送のためのチャネル16を含み、ノズルの表面14は注入孔12に垂直である。この構成は、80.6m/s STPの注入速度を提供する。炭素ガス注入角度はプラズマの対称軸に関して25度である。水冷注入ノズルはより長い耐摩耗性を提供し、安定な動作条件での長時間の作製の稼働を可能にすることが、当業者には理解されよう。
【0174】
結果として得られた生成物は、ラマンスペクトル(
図2に示す)からわかるように、高品質のグラフェンナノシートであった。生成物のラマンスペクトルは、514nmの入射波長を使用した測定で、1.3の2D/G比および4.7のG/D比を特徴とする。これらのパラメータを使用して作製されたグラフェンナノシートは、(トルエンを用いたソックスレー抽出による測定で)0.16重量パーセントの多環芳香族炭化水素(PAH)、典型的には0.15〜0.25重量パーセントのPAHを含有した。グラフェンナノプレートレットのB.E.T.比表面積は302m
2/gであった。(B.E.T.法を使用した)材料の比表面積は、米国仮特許出願第62/457,472号に記載の熱処理を使用してPAHが除去された後で、431m
2/gである。
【0175】
高温領域での滞留時間を制限するために、炭素前駆体は、少なくとも60m/s STP、典型的には80m/s STP、およびさらに100m/s STPの高い速度で注入される。これはガス材料、例えば天然ガスを、小さい孔のシャワーヘッド型ノズルを通して、プラズマガスの速度以上の注入速度で注入することによって達成されてよい。小さい孔と組み合わせた高い給送速度は、高い注入速度および高温領域での短い滞留時間をもたらす。
【0176】
実施例2:反例
逆に、実施例1で上に記載されたものと類似のパラメータを使用するが、単孔ノズルを使用して60m/s STP未満の注入速度でメタンを注入すると、かなりの割合の炭素ノジュールおよび球状炭素粒子が作製され、典型的なアセチレンブラックのラマンスペクトル(
図3に示す)をもたらした。
図5は、この反例で使用されたICPトーチ200、ならびに炭素非含有ガスおよび炭素含有物質を含むガスの定性的な流れを示す。
【0177】
この例では、
図5に示すように、28.6m/s STPの注入速度が使用された。炭素前駆体ガス給送速度は34.7slpm CH4であり、達成された作製速度は142g/hであった。中央渦巻きガス228として20slpmのアルゴンが使用され、それは125slpmのアルゴンおよび8slpmの水素ガスからなるクエンチガス(シースガス)224の層によって囲まれる。その他の点では、実施例1と同一の方法および装置が使用された。炭素前駆体ガス220が、設計されたノズルのないインジェクタプローブ210(例えば、単孔ノズルを有する)を通して注入された。高周波交流電流を伝導するコイル222がプラズマを発生させる。定性的等温線226がプラズマトーチ内部に示されている。
【0178】
これらのパラメータを使用して作製されたグラフェンナノシートは、(トルエンを用いたソックスレー抽出による測定で)0.7〜1.2重量パーセントの多環芳香族炭化水素(PAH)を含有した。結果として得られた材料は、150m
2/gの低い比表面積(B.E.T.)、および薄いグラフェン状粒子の代わりに厚いグラファイト状ノジュールに特徴的なラマンスペクトル(
図3)を提示する。結果として得られた粒子は、514nmの入射波長を使用した測定で、1.1のラマンG/D比および0.5のラマン2D/G比を示す。
図5に示すように、炭素前駆体は、設計されたノズルのない単孔プローブを介して高温領域中に注入され、したがって高温領域でのより長い滞留時間、乏しいクエンチ効率、および結果として(例えば、グラフェンではない)アセチレン型カーボンブラックの形成をもたらす。炭素前駆体ガスは、プラズマの対称軸に関して0度の角度で注入される。
【0179】
本開示の段落[0032]〜[0178]の実施形態は、適用可能な場合は実施形態のすべての組み合わせがなされ得ることを実証するような本開示の方法で提示される。これらの実施形態は、したがって、先行請求項のいずれかに従属する実施形態(以前に提示された実施形態を含める)のすべてについて従属クレームを作成することと均等である方法で明細書中に提示されており、それにより、それらがすべての可能な方法で組み合わされ得ることを実証する。例えば、段落[0032]〜[0178]の実施形態と段落[0012]〜[0031]のプロセスとの間のすべての可能な組み合わせが、適用可能な場合は、本開示によって本明細書に含められる。
【0180】
特許請求の範囲は、本開示で提供される特定の実施形態および実施例によって限定されるべきではなく、本開示全体と一致する最も広い解釈を与えられるべきである。
【0181】
参考文献
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