(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6911209
(24)【登録日】2021年7月9日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】人工筋肉触手
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
F03G7/06 G
【請求項の数】27
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-543918(P2020-543918)
(86)(22)【出願日】2019年2月22日
(65)【公表番号】特表2021-514039(P2021-514039A)
(43)【公表日】2021年6月3日
(86)【国際出願番号】US2019019176
(87)【国際公開番号】WO2019165226
(87)【国際公開日】20190829
【審査請求日】2020年8月18日
(31)【優先権主張番号】62/634,124
(32)【優先日】2018年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518380665
【氏名又は名称】リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・ディアス・リマ
【審査官】
池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2016−0117658(KR,A)
【文献】
特表2019−520522(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0287928(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0040753(US,A1)
【文献】
特開2013−055877(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2020/0040876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/06
H02N 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工筋肉触手であって、
2つのスペーサ、前記2つのスペーサを接続する中央コア、2つのZツイストアクチュエータ、及び2つのSツイストアクチュエータを含み、
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータは、前記中央コアの周りに及び前記2つのスペーサの間に配置され、前記2つのスペーサを接続し、
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータの1つ以上の作動が前記人工筋肉触手を作動させる、人工筋肉触手。
【請求項2】
前記中央コアは棒である、請求項1に記載の人工筋肉触手。
【請求項3】
前記中央コアは、軟質シリコーン繊維、コイル状繊維、またはばねのいずれかである、請求項1に記載の人工筋肉触手。
【請求項4】
前記中央コアは非延伸性であり、人工筋肉デバイスの移動を可能にする、請求項1に記載の人工筋肉触手。
【請求項5】
前記中央コアはチェーンである、請求項1に記載の人工筋肉触手。
【請求項6】
前記人工筋肉触手を冷却する冷却ファンをさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の人工筋肉触手。
【請求項7】
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータの周りに配置される1つ以上の膜をさらに含み、
前記1つ以上の膜は、前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータから熱を除去する冷却流体を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の人工筋肉触手。
【請求項8】
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータは熱アクチュエータである、請求項1から7のいずれか一項に記載の人工筋肉触手。
【請求項9】
モジュール式筋肉触手であって、
複数の請求項1から8のいずれか一項に記載の人工筋肉触手であって、前記人工筋肉触手のそれぞれの一端を別の人工筋肉触手の一端に直線的にスナップ留めすることによって、一緒に留められた複数の人工筋肉触手と、
前記人工筋肉触手のそれぞれを独立して制御する1つ以上のマイクロコントローラと、を備え、
前記複数の人工筋肉触手の各スペーサは前記複数の人工筋肉触手を一緒に直線的にスナップ留めする磁石を備え、
前記磁石は1つの人工筋肉触手から隣の人工筋肉触手に電流を伝導する、モジュール式筋肉触手。
【請求項10】
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータはホモキラル筋である、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工筋肉触手。
【請求項11】
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータはヘテロキラル筋である、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工筋肉触手。
【請求項12】
前記人工筋肉触手の位置を判定する位置センサをさらに備える請求項1から8のいずれか一項に記載の人工筋肉触手。
【請求項13】
人工筋肉触手を製造する方法であって、
2つのスペーサの間に中央コアを配置することと、
前記中央コアの周りの前記2つのスペーサの間に2つのSツイストアクチュエータ及び2つのZツイストアクチュエータを配置することと、を含み、
前記2つのスペーサは前記中央コア、前記2つのSツイストアクチュエータ、及び前記2つのZツイストアクチュエータを介して接続される、方法。
【請求項14】
前記中央コアは延伸性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記中央コアは棒である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記中央コアは、軟質シリコーン繊維、コイル状繊維、またはばねのいずれかである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記中央コアは非延伸性であり、人工筋肉デバイスの移動を可能にする、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記中央コアはチェーンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記2つのSツイストアクチュエータ及び前記2つのZツイストアクチュエータはホモキラル筋である、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記2つのSツイストアクチュエータ及び前記2つのZツイストアクチュエータはヘテロキラル筋である、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記2つのZツイストアクチュエータ及び前記2つのSツイストアクチュエータは熱アクチュエータである、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
人工筋肉触手を制御するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、マイクロコントローラに、
人工筋肉触手の少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータのうちの第1のアクチュエータの作動を引き起こし、
前記少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータのうちの第2のアクチュエータの作動を引き起こすことを命令する命令を含み、
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータの作動が前記人工筋肉触手を作動させる、前記非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータはZツイストアクチュエータであり、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータの作動が前記人工筋肉触手を回転させる、請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記第1のアクチュエータはZツイストアクチュエータであり、前記第2のアクチュエータはSツイストアクチュエータであり、
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータの作動が前記人工筋肉触手を屈曲する、請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記マイクロコントローラに、
人工筋肉触手の少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータのうちの第3のアクチュエータの作動を引き起こし、
前記少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータのうちの第4のアクチュエータの作動を引き起こすことを命令する命令をさらに含み、
前記第1のアクチュエータ〜前記第4のアクチュエータの作動が前記人工筋肉触手を直線的に作動させる、請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1のアクチュエータ〜前記第4のアクチュエータはホモキラルであり、前記人工筋肉触手は作動時に収縮する、請求項25に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記第1のアクチュエータ〜前記第4のアクチュエータはヘテロキラルであり、前記人工筋肉触手は作動時に延伸する、請求項25に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/634124号に対する35U.S.C.§119(e)に従う優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書によって組み込まれる。
【0002】
以下の出願の内容は、本明細書に開示される実施形態と併せて使用され得る。PCT/US2018/057736、2018年10月26日出願、題名「CARBON NANOTUBE SHEET WRAPPING MUSCLES」と、PCT/US2018/062242、2018年11月21日出願、題名「EMBEDDED CONDUCTIVE WIRES IN POLYMER ARTIFICIAL MUSCLE ACTUATING DEVICES」とが挙げられる。これらの出願は、参照によりその全体が本明細書によって組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ねじれポリマー及びカーボンナノチューブ(CNT)繊維及び糸ベースの人工筋肉デバイスは広範囲の適用を有する。ねじれポリマー及び/またはコイル状ポリマーを含む人工筋肉デバイスは、より安価な製造コスト、より高い生産量、より少ない動作ノイズ、及び従来のモータに関するより単純設計の利点をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本発明の1つ以上の実施形態は、2つのスペーサと、2つのスペーサの中心において2つのスペーサを接続する中央コアとを含む、人工筋肉触手に関する。人工筋肉触手は、少なくとも2つのZツイストアクチュエータと、少なくとも2つのSツイストアクチュエータとを含む。Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータは、中央コアの周りに及び2つのスペーサの間に配置され、2つのスペーサを接続する。Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータの1つ以上の作動は、人工筋肉触手を作動させる。
【0005】
別の態様では、本発明の1つ以上の実施形態は、2つのスペーサの間に中央コアを配置することと、中央コアの周りのスペーサの間の周りに2つのSツイストアクチュエータ及び2つのZツイストアクチュエータを配置することとを含む、人工筋肉触手を製造するための方法に関する。2つのスペーサは、中央コア、2つのZツイストアクチュエータ、及び2つのSツイストアクチュエータを介して接続される。
【0006】
別の態様では、本発明の1つ以上の実施形態は、人工筋肉触手を制御するためのコンピュータ可読媒体に関する。コンピュータ可読媒体は、プロセッサに、人工筋肉触手の少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータのうちの第1のアクチュエータの作動を引き起こさせ、少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータのうちの第2のアクチュエータの作動を引き起こさせるように制御させる命令を含む。第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータの作動は人工筋肉触手を作動させる。
【0007】
本明細書に開示される1つ以上の実施形態の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の請求項から明らかだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つ以上の実施形態に従って、人工筋肉触手の図を示す。
【
図2】
図2Aは本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図である。
図2Bは本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図である。
【
図3】本発明の1つ以上の実施形態に従って、人工筋肉触手の概略図を示す。
【
図4】本発明の1つ以上の実施形態に従って、人工筋肉触手の概略図を示す。
【
図5】本発明の1つ以上の実施形態に従って、人工筋肉触手の概略図を示す。
【
図6】
図6Aは本発明の1つ以上の実施形態に従って、モジュール式人工筋肉触手の概略図を示す。
図6Bは本発明の1つ以上の実施形態に従って、モジュール式人工筋肉触手の概略図を示す。
【
図7】本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図を示す。
【
図8】本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図を示す。
【
図9】本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図を示す。
【
図10】本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図を示す。
【
図11】本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動を説明する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、いくつかの特定の詳細は、本発明のより完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、本開示は、これらの特定の詳細なしで実践され得ることが当業者に明らかになる。他の場合、十分に既知の特徴は、説明を不必要に複雑にすることを回避するために、詳細に説明されていない。
【0010】
概して、本発明の実施形態は、人工筋肉触手及び人工筋肉触手を作る方法に関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び2つのSツイストアクチュエータを含む、人工筋肉触手に関する。開示された人工筋肉触手は、Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータの作動時に、回転、屈曲、収縮、及び延伸できる。
【0011】
本明細書の1つ以上の実施形態に従ったアクチュエータは熱アクチュエータである。熱アクチュエータは、ねじれ/コイル状ポリマーから作られ、熱をポリマーに加えることによって作動する。加熱されたポリマーは膨張して、ねじり作動/張力作動を生じさせる。1つ以上の実施形態の態様では、アクチュエータは、抵抗加熱によって作動する。例えば、金属線またはCNTシート/ワイヤ等の導体材料は、アクチュエータのポリマーの周りに巻着され得、導体材料を通過する電流はポリマーを加熱及び膨張させる。
【0012】
しかしながら、本発明の実施形態は熱アクチュエータだけに限定されず、他の種類のアクチュエータは、本発明の特定の設計及び機能に基づいて使用され得る。例えば、使用され得る他の種類のアクチュエータは、油圧アクチュエータ及び空気圧アクチュエータである。油圧アクチュエータ及び空気圧アクチュエータでは、中空アクチュエータ管の内側の圧力は、作動を制御するために使用される。化学ベースアクチュエータも使用し得る。例えば、化学触媒を中空アクチュエータ管に組み込み、中空アクチュエータ管の内側の圧力を変化させ化学反応を引き起こさせ得、所望の作動を生じさせる。
【0013】
図1は、中央コア(110)、4つのアクチュエータ(120)(2つのZツイストアクチュエータ及び2つのSツイストアクチュエータを含む)、及び2つのスペーサ(130)を含む、人工筋肉触手(100)を示す。中央コア(110)は、人工筋肉触手(100)に機械的強度及び剛性を加え、触手が確実に荷重を支えることを可能にする。中央コア(110)は、スペーサ(130)及びアクチュエータ(120)をさらに分離する。スペーサ(130)は人工筋肉触手(100)のフレームを形成し、アクチュエータ(120)を離したままにする。
【0014】
1つ以上の実施形態の一態様では、中央コア(110)は延伸性であり得、人工筋肉触手(100)の移動を可能にする。軟質シリコーン繊維は、具体的に、中央コア(110)として使用される有用な材料であるが、コイル状繊維及びばね等の他の弾性材料を使用し得る。いくつかの実施形態では、ばねは、冷却時にアクチュエータ(120)がそれらの通常の長さに戻るのを支援することによって作動を助け得る。
【0015】
1つ以上の実施形態の一態様では、中央コア(110)は非延伸性であり、1つ以上の関節を含み得る。係る実施形態は、延伸しないで人工筋肉触手(100)の移動を可能にする。例えば、非延伸性な中央コア(110)はチェーンであり得る。
【0016】
1つ以上の実施形態では、作動後に、アクチュエータ(120)を冷却し、アクチュエータ(120)をその最初の形態により速く戻すために、冷却ファン及び/または液体は、アクチュエータ(120)を制御可能に冷却するために使用され得る。例えば、膜はアクチュエータ(120)の周りに配置され、冷却液がアクチュエータ(120)の周りを通過し、その熱を抽出することを可能にし得る。
【0017】
1つ以上の実施形態では、アクチュエータは、コイル状のねじれポリマー繊維(以下、「ツイスト繊維」と称される)で作成される。
図2A〜
図2Bは、2つの反対にねじられた繊維(2210、2220)の上面図(図の上部)及び側面図(図の下部)を示す。反時計回りにねじられたツイスト繊維はZツイスト繊維(2210)であり、時計回りにねじられたツイスト繊維はSツイスト繊維(2220)である(
図2A〜
図2Bの上下矢印に沿った図のもの)。Zツイスト繊維(2210)及びSツイスト繊維(2220)は、Zツイストアクチュエータ(221)及びSツイストアクチュエータ(222)を作成するために巻かれている。Zツイストアクチュエータ(221)及びSツイストアクチュエータ(222)のねじり作動の方向は、各々、Zツイスト繊維(2210)及びSツイスト繊維(2220)のねじれ方向と同じである。したがって、Zツイストアクチュエータ(221)及びSツイストアクチュエータ(222)の作動は、各々、
図2A及び
図2Bに従った右利き方向及び左利き方向に対応する。
【0018】
1つ以上の実施形態では、Zツイストアクチュエータ(221)及びSツイストアクチュエータ(222)は、ホモキラル筋であり得、アクチュエータ(221、222)におけるツイスト繊維(2210、2220)のねじれ方向は、アクチュエータ(221、222)のコイル方向と同じであることを意味する。例えば、
図2A〜
図2Bに示されるZツイストアクチュエータ(221)及びSツイストアクチュエータ(222)はホモキラル筋である。ホモキラル筋は、加熱されるとき、回転して作動することを試みる。しかしながら、回転運動が妨げられる場合、ホモキラル筋は、直線的に(すなわち、
図2A〜
図2Bの「Z」軸に沿ったホモキラル筋の長さに沿って)収縮する。Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータは、また、ヘテロキラル筋であり得、ツイスト繊維(2210,2220)のねじれ方向は、ツイスト繊維(2210,2220)の巻き方向と反対であることを意味する。ヘテロキラル筋は、また、加熱するとき、回転可能に作動させることを試みるが、回転運動が妨げられる場合、ヘテロキラル筋は直線的に延伸する。
【0019】
1つ以上の実施形態の態様では、Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータの選択作動時に、人工筋肉触手は、回転、屈曲、収縮、または延伸し得る。例えば、
図3は、「Z」軸に沿った人工筋肉触手(300)の断面図を示す。
図3の左側のサブセットに示される構成では、Zツイストアクチュエータ(321)及びSツイストアクチュエータ(322)は、中央コア(310)の周りに、代わりに2つのスペーサ(330)の間に配置され、それにより、Zツイストアクチュエータ(321)の隣接するアクチュエータはSツイストアクチュエータ(322)であり、逆もまた同様である。
【0020】
Zツイストアクチュエータ(321)及びSツイストアクチュエータ(322)を選択的に作動させることによって、人工筋肉触手(300)は、所望の方向に移動できる。例えば、
図3の中間サブセットに示されるように、Zツイストアクチュエータ(321)が動いていない(すなわち、作動しない)間に同時にSツイストアクチュエータ(322)を作動させることによって、作動したSツイストアクチュエータ(3221)はトルクを時計回りに加え、Zツイストアクチュエータ(321)はニュートラルのままである。したがって、人工筋肉触手(300)は時計回りに回転する。対照的に、
図3の右側サブセットに示されるように、Sツイストアクチュエータ(322)が動いていない間に同時にZツイストアクチュエータ(321)だけを作動させることによって、作動したZツイストアクチュエータ(3211)はトルクを反時計回りに加え、Sツイストアクチュエータ(322)はニュートラルのままである。したがって、人工筋肉触手(300)は反時計回りに回転する。
【0021】
1つ以上の実施形態の態様では、人工筋肉触手は、Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータの作動によって決まる方向に屈曲できる。
図4は、Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータ(421,422)がホモキラル筋である人工筋肉触手(400)の例を示す。Zツイストアクチュエータ(421)及び隣接するSツイストアクチュエータ(422)の作動時に、作動したZツイストアクチュエータ(4211)及び作動したSツイストアクチュエータ(4221)は、人工筋肉触手(400)が回転することを防止する反対方向(各々、反時計回り及び時計回り)にトルクを加える。回転が防止されると、本明細書に開示される実施形態に従って、作動したZツイストアクチュエータ(4211)及び作動したSツイストアクチュエータ(4221)(ホモキラル筋である)が収縮する。したがって、人工筋肉触手(400)は、中央コア(410)から、作動したZツイストアクチュエータ(4211)及びSツイストアクチュエータ(4221)を接続する想像線の中間に向かう方向に屈曲する。屈曲方向は、
図4の空の矢印で示されている。
【0022】
図5は、Zツイストアクチュエータ(521)及びSツイストアクチュエータ(522)がヘテロキラル筋である人工筋肉触手(500)を屈曲するための別の例を示す。Zツイストアクチュエータ(521)及び隣接するSツイストアクチュエータ(522)の作動時に、作動したZツイストアクチュエータ(5211)及び作動したSツイストアクチュエータ(5221)は、人工筋肉触手(500)が回転することを防止する反対方向にトルクを加える。回転を防止し、作動したZツイストアクチュエータ(5211)及び作動したSツイストアクチュエータ(5221)(ヘテロキラル筋である)は、本明細書に開示される実施形態に従って延伸する。したがって、人工筋肉触手(500)は、作動したZツイストアクチュエータ(5211)及びSツイストアクチュエータ(5221)を接続する想像線の中間から中央コア(510)に向かう方向に屈曲する。撓曲方向は、
図5の空の矢印によって示される。
【0023】
1つ以上の実施形態では、全ての4つのホモキラルのZツイストアクチュエータ(4211)及びSツイストアクチュエータ(4221)が同時に作動するとき、全ての4つのアクチュエータが相互に打ち消し合う相反する力を生じさせるため、人工筋肉触手(400)は回転または屈曲できない。したがって、この場合、人工筋肉の触手(400)は収縮する。同様に、全ての4つのアクチュエータがヘテロキラル筋(
図5のアクチュエータと同様のもの)であり、それらが作動する場合、人工筋肉触手(500)は延伸する。
【0024】
本発明の実施形態は、モジュール式筋肉触手を作成するために1つ以上の人工筋肉触手を組み立てることを含む。
図6Aは、アクチュエータ(620)(上記に説明したZツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータ等)、中央コア(610)、及びスペーサ(630)上に配置された磁石(640)を含む人工筋肉触手(600)の側面図を示す。
図6Bは、磁石(640)によって相互にスナップ留めされた2つの人工筋肉触手(600)で作られたモジュール式筋肉触手(601)を示す。磁石(640)は、1つの人工筋肉触手(600)から隣のスナップ留めされた人工筋肉触手(600)に電流を伝導し得る。相互にスナップ留めされる人工筋肉触手(600)の数は、2つに限定されず、それ以上であり得る。
【0025】
1つ以上の実施形態に従って、モジュール式筋肉触手(601)では、人工筋肉触手(600)のそれぞれのアクチュエータ(620)は、マイクロコントローラによって独立して作動できる。したがって、人工筋肉触手(600)のそれぞれは、モジュール式筋肉触手(601)内の他の人工筋肉触手(600)から独立して回転、屈曲、収縮、または延伸できる。例えば、人工筋肉触手(600)のそれぞれは、
図3〜
図5を参照して上記で説明した人工筋肉触手と同様に作動し、モジュール式筋肉触手(601)の様々な作動及び形状を実現し得る。
【0026】
図7〜
図11は、1つ以上の実施形態に従って、人工筋肉触手及びモジュール式筋肉触手の実装例を示す。
図7〜
図11は、図の左側に動いていない(すなわち、非作動の)モジュール式筋肉触手(701、801、901、101、111)と、図の右側に作動しているモジュール式筋肉触手(7011、8011、9011、1011、1111)とを示す。
【0027】
図7〜
図11では、人工筋肉触手(700、800、900、1000、1100)を作動させ、作動したモジュール式筋肉触手(7011、8011、9011、1011、1111)を任意の所望の方向に移動させ得る。
【0028】
図7〜
図8によって示される例では、作動したモジュール式筋肉触手(7011、8011)の全体が同じ方向に屈曲するように、人工筋肉触手(700、800)の全体は同じ方向に屈曲し得る。他方では、
図9に示される例では、2つの人工筋肉触手(900)が図の右側に向かって屈曲する一方、他の2つの人工筋肉触手(900)が反対側に向かって屈曲し、それにより、作動したモジュール式筋肉触手(9011)は「S」形状を形成する。人工筋肉触手(700、800、900)は、
図4〜
図5を参照して上記に説明した同様のメカニズムで屈曲し得る。
【0029】
図10〜
図11を参照した別の例では、人工筋肉触手(1000、1100)は、上記に説明したメカニズムによって収縮または延伸し得る(すなわち、触手の全てのアクチュエータが同時に作動する)。
図10のモジュール式筋肉触手(101)の人工筋肉触手(1000)のアクチュエータはホモキラル筋である。したがって、作動時、作動したモジュール式筋肉触手(1011)は収縮する。他方では、
図11のモジュール式筋肉触手(101)の人工筋肉触手(1100)のアクチュエータはヘテロキラル筋である。したがって、作動時、作動したモジュール式筋肉触手(1111)は延伸する。
【0030】
本願の全ての図は例であり、例示の目的で提供され、本発明の1つ以上の実施形態は図と異なる可能性がある。例えば、上記に説明したモジュール式筋肉触手は、特定の機能を達成するために、任意の所望の数のアクチュエータを含み得る。
【0031】
1つ以上の実施形態は、人工筋肉触手の準備方法に関する。本明細書に開示される人工筋肉触手を作成するために、少なくとも2つのZツイストアクチュエータ及び少なくとも2つのSツイストアクチュエータは、2つのスペーサの間の中央コアの周りに配置される。Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータは、代わりに中央コアの周りに配置され得る。また、Zツイストアクチュエータ及びSツイストアクチュエータはホモキラルであり得るもしくは収縮し得る、またはそれらはヘテロキラルであり、作動時に延伸し得る。アクチュエータ、中央コア、及びスペーサは、上記の実施形態で説明したものと同様であり得る。
【0032】
本明細書に開示される1つ以上の実施形態では、コアは、止めねじまたは接着剤を使用してスペーサに取り付けられ得る。例えば、コアをスペーサの穴を通って挿入し、止めねじで固定し得る。コアは穴にぴったりと適合するはずである。人工筋肉は、作動するために電流を供給するための電気接点を含むつなぎ点を介してスペーサに取り付けられ得る。コアと同様に、筋肉はしっかりと適合した穴を通り、止めネジを使用してスペーサに固定され得る。当業者は、コア及び筋肉を固定するための異なる方法が存在することを理解するであろう。例えば、接着剤またはスペーサは、コア及び人工筋肉の周りを締め付けるために部分的に構築され得る。
【0033】
1つ以上の実施形態は、人工筋肉触手を制御するための非一時的コンピュータ可読媒体に関する。例えば、人工筋肉触手または複数の接続された人工筋肉触手を制御するためのプログラムを開発して、触手の所望の動きを達成し得る。例えば、コンピュータ可読媒体は、人工筋肉触手内の2つのZツイストアクチュエータ及び2つのSツイストアクチュエータのうちの1つ以上の第1のアクチュエータの作動を引き起こすようにプロセッサに命令し得る。この扇動は、第1のアクチュエータを作動させるために印加電圧または印加圧力をもたらす命令であり得る。コンピュータ可読媒体は、また、2つのZツイストアクチュエータ及び2つのSツイストアクチュエータのうちの第2のアクチュエータの作動を引き起こし得る。
【0034】
1つ以上の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、人工筋肉触手の所望の作動またはタスクを引き起こすために、1つ以上の特定電圧を人工筋肉触手の1つ以上の特定のモジュール式セクションに印加するマイクロコントローラを制御し得る。本明細書に開示される実施形態は、また、人工筋肉触手の位置を判定する位置センサを含み得る。位置センサは、人工筋肉触手の位置を監視し、同様に、フィードバックを本システムに供給し、位置を検証し得る、または人工筋肉触手の作動を容易にし得る。
【0035】
本明細書に開示される実施形態に従って、
図7〜
図9に説明されるように、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータがZツイストアクチュエータである場合、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータの作動は人工筋肉触手を回転する。同様に、第1のアクチュエータがZツイストアクチュエータであり、第2のアクチュエータがSツイストアクチュエータである場合、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータの作動は人工筋肉触手を屈曲する。
【0036】
本明細書に開示される実施形態に従って、コンピュータ可読媒体は、人工筋肉触手内の全てのアクチュエータを制御するためにプロセッサに命令し得る。
図10〜
図11に説明したように、アクチュエータがホモキラルの場合、人工筋肉触手は直線的に収縮する。同様に、アクチュエータがヘテロキラルである場合、人工筋肉触手は直線的に延伸する。
【0037】
1つ以上の実施形態に従って、人工筋肉触手は、力を渡し、その可動端に設置されたデバイスを移動させるための機械的アームとして使用され得る。係るデバイスの例は、限定ではないが、カメラ、検出器、クロー、ツール等を含む。
【0038】
本開示を限定された数の実施形態だけに関して説明してきたが、本開示の利益を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の様々な実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の「特許請求の範囲」だけによって限定されるべきである。