(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
<検査システムの概要>
図1は、本発明の実施の形態1による検査装置1を含む検査システムの一例を示した図である。検査装置1は、2つの配線ケーブル101,102を介して、1つの電気二重層キャパシタ100に接続される。また、検査装置1には、ユーザ端末103が接続されている。この検査システムは、例えば、静電容量3600F、最大電流20Aの電気二重層キャパシタ100を検査対象として想定している。
【0019】
検査装置1は、電気二重層キャパシタ100の内部抵抗を測定する装置であり、例えば、電気二重層キャパシタ100の製造工程中の検査工程において使用される。内部抵抗の測定は、電気二重層キャパシタ100を充放電させ、充放電の開始時又は終了時における電気二重層キャパシタ100の素子電圧(端子間電圧)の変化量を測定することによって行われる。この検査装置1は、電源端子11、出力端子12、リモート検出端子13及び通信端子14を備える。
【0020】
電源端子11は、図示しない外部電源に接続される端子であり、例えばAC200Vが供給される。外部電源の電力は、検査装置1において直流変換され、出力端子12から出力される。
【0021】
出力端子12は、電気二重層キャパシタ100に対し電流の供給又は吸い込みを行って電気二重層キャパシタ100を充放電する一対の端子からなる。電気二重層キャパシタ100の両端子は、1対の配線ケーブル101を介して、出力端子12にそれぞれ接続される。
【0022】
リモート検出端子13は、四端子法を利用し、電気二重層キャパシタ100の素子電圧を高精度で測定するための一対の端子である。電気二重層キャパシタ100の両端子は、1対の配線ケーブル102を介して、リモート検出端子13にそれぞれ接続される。リモート検出端子13は、出力端子12に比べて十分に高い入力インピーダンスを有しているため、配線ケーブル102には電流が流れず、配線ケーブル102の電圧降下による影響を受けることなく、電気二重層キャパシタ100の素子電圧を正確に測定することができる。なお、電気二重層キャパシタ100の素子電圧をより正確に測定するためには、配線ケーブル102は、電気二重層キャパシタ100の端子に直接接続されることが望ましい。
【0023】
通信端子14は、ユーザ端末103が接続される端子である。例えば、PCがユーザ端末103として通信端子14に接続される。ユーザは、ユーザ端末103を操作することにより、検査装置1の各種設定を行うことができる。また、検査装置1に対し測定開始を指示し、検査装置1から測定結果を取得することができる。
【0024】
<内部抵抗の測定方法>
図2は、電気二重層キャパシタ100の内部抵抗の測定方法の一例を示した図であり、図中の(a)には、電気二重層キャパシタ100に供給される電流の時間変化が示され、(b)には、電気二重層キャパシタ100の素子電圧の時間変化が示されている。この図では、内部抵抗の測定方法として異なる3つの方法が示されている。電気二重層キャパシタ100の検査工程では、これらの測定方法の全てを実施し、3つの測定結果に基づいて検査を行ってもよいし、1又は2つの任意の測定方法のみを実施し、1又は2以上の測定結果に基づいて検査を行ってもよい。
【0025】
まず最初に、電気二重層キャパシタ100の定電流充電が行われる(時刻t0〜t1)。時刻t0に電気二重層キャパシタ100に対し予め定められた充電電流Icの供給が開始され、その後、素子電圧が予め定められた充電目標電圧Vcに到達するまで一定の充電電流Icの供給が継続される。図中では、素子電圧が充電目標電圧Vcに到達する時刻t1まで電気二重層キャパシタ100の定電流充電が行われている。
【0026】
次に、電気二重層キャパシタ100の充電を一旦休止させる(時刻t1〜t2)。充電の休止は、電気二重層キャパシタ100に対し検査装置1から電流の入出力が行われない状態であり、時刻t1から予め定められた休止時間T1(例えば1秒)が経過するまで継続される。図中では、時刻t2まで電気二重層キャパシタ100の充放電を休止させている。この充電休止により素子電圧がVt1からVn1に低下する。
【0027】
定電流充電中は、充電電流Icの流入により電気二重層キャパシタ100の内部抵抗に電圧降下が発生するのに対し、充電休止中にはこの電圧降下が発生せず、定電流充電の休止により素子電圧が低下する。従って、時刻t1、t2に測定された素子電圧をVt1,Vt2とすれば、定電流充電の休止による素子電圧の変化量dV1(=Vt1−Vt2)が、定電流充電時における内部抵抗の電圧降下分に相当し、dV1/Icにより内部抵抗を求めることができる。
【0028】
次に、電気二重層キャパシタ100の定電圧充電が行われる(時刻t2〜t3)。充電休止中の電気二重層キャパシタ100に対し、時刻t2に充電目標電圧Vcの定電圧充電が開始され、その後、予め定められた充電時間T2(例えば20分)が経過するまで定電圧充電が継続される。図中では、時刻t3まで電気二重層キャパシタ100の定電圧充電が行われている。定電圧充電中は時間の経過とともに充電電流が減少し、定電圧充電が終了する時刻t3までに充電電流が略ゼロになっている。充電時間T2は、充電電流を略ゼロにすることができる十分に長い時間として予め定められる。なお、定電圧充電の終了条件は、充電時間T2に代えて、検出電流Idにより規定することでもきる。
【0029】
次に、電気二重層キャパシタ100の定電流放電が行われる(時刻t3〜t4)。定電圧充電中の電気二重層キャパシタ100に対し、時刻t3に予め定められた放電電流Ieの引き出しが開始され、その後、素子電圧が予め定められた放電終止電圧Veに到達するまで一定の放電電流Ieの引き出しが継続される。図中では、素子電圧が放電終止電圧Veに到達する時刻t4まで電気二重層キャパシタ100の定電流放電が行われている。この放電開始によって素子電圧がVcからVrに低下する。
【0030】
定電圧充電の終了間際には、充電電流が流れず、内部抵抗に電圧降下が発生しないのに対し、定電流放電中は、放電電流Ieが引き出されることにより電気二重層キャパシタ100の内部抵抗に電圧降下が発生する。この電圧降下は、上記休止中(時刻t1〜t2)とは逆向きの電圧であり、定電流放電の開始により素子電圧が低下する。つまり、時刻t3に測定された素子電圧をVt3(≒Vc)とすれば、定電流放電の開始による素子電圧の変化量dV2(=Vt3−Vr)が、定電流放電時における内部抵抗の電圧降下分に相当する。従って、素子電圧の変化量dV2が得られれば、dV2/Ieにより内部抵抗を求めることができる。
【0031】
ここで、放電開始時における素子電圧の変化量dV2を正確に測定することはできないが、放電中の電圧特性を直線近似することにより変化量dV2をより高い精度で求めることができる。定電流放電中、素子電圧は時間経過とともに直線的に低下する。このため、放電中における時刻の異なる2点P1,P2における素子電圧を測定し、放電中の電圧特性を直線近似し、当該近似直線と時刻t3とが交差する点の電圧値Vrを求め、時刻t3における素子電圧Vt3との差分を求めれば、放電開始による素子電圧の変化量dV2が高い精度で得られる。
【0032】
次に、電気二重層キャパシタ100の放電を休止させる(時刻t4〜t5)。放電の休止は、充電の休止と同様、電気二重層キャパシタ100に対し検査装置1から電流の入出力が行われない状態であり、時刻t4から予め定められた休止時間T3(例えば1秒)が経過するまで継続される。図中では、時刻t5まで電気二重層キャパシタ100の充放電を休止させている。この放電休止により素子電圧がVeからVt5に上昇する。
【0033】
定電流放電中は、放電電流Ieの引き出しにより電気二重層キャパシタ100の内部抵抗に電圧降下が発生するのに対し、放電休止中にはこの電圧降下が発生せず、定電流放電の休止により素子電圧が上昇する。従って、時刻t4,t5に測定された素子電圧をVt4(≒Ve),Vt5とすれば、定電流放電の休止による素子電圧の変化量dV3(=Vt5−Vt4)が、定電流放電時における内部抵抗の電圧降下分に相当し、dV3/Ieにより内部抵抗を求めることができる。
【0034】
このような測定方法をもちいて、内部抵抗を高精度で測定しようとする場合、充電電流Ic,放電電流Ie、定電圧充電中の素子電圧が、リップルを含まず、高い精度で安定している必要がある。また、充電電流Ic及び放電電流Ieが、充放電開始時に素早く立ち上がる高い応答特性を有している必要がある。さらに、素子電圧を高精度で測定可能である必要がある。特に、充放電の休止中においても素子電圧が高精度で測定可能であることが求められる。本実施の形態による検査装置1は、このような条件を満たし、内部抵抗を高精度で測定することができる装置であり、その詳細構成について更に説明する。
【0035】
<検査装置1の概略構成>
図3は、
図1の検査装置1の一構成例を示した図である。検査装置1は、スイッチングレギュレータ(SWR)で構成された複数の電源回路111〜113と、シリーズレギュレータ(SRR)を備えた主回路ユニット114と、制御ユニット115とにより構成される。
【0036】
(1)電源回路111〜113
電源回路111〜113は、いずれも外部電源を変換し、直流電圧Vs1〜Vs3を出力するスイッチングレギュレータである。第1の電源回路111は、主回路ユニット114に電圧Vs1を出力する可変電源である。出力電圧Vs1は、制御ユニット115からの電圧指令値Cv1により指定される。例えば、第1の電源回路111は、充電動作用の電源として0〜7.5Vを供給することができる。
【0037】
同様にして、第2の電源回路112も、主回路ユニット114に電圧Vs2を出力する可変電源である。出力電圧Vs2は、制御ユニット115からの電圧指令値Cv2により指定される。例えば、第2の電源回路112は、放電動作用の電源として−3.3V〜0Vを供給することができる。
【0038】
第3の電源回路113は、制御ユニット115に電圧Vs3を供給する固定電源である。出力電圧Vs3として、例えば24Vを供給することができる。
【0039】
(2)主回路ユニット114
主回路ユニット114は、主回路を構成する回路基板であり、第1及び第2の電源回路111,112からの出力電圧Vs1,Vs2を変換し、出力端子12を介して出力するシリーズレギュレータを備え、電気二重層キャパシタ100の充放電を制御する。
【0040】
(3)制御ユニット115
制御ユニット115は、主回路ユニット114を制御する回路基板であり、マイクロプロセッサを内蔵するとともに、リモート検出端子13及び通信端子14に接続されている。制御ユニット115は、電圧指令値Cv1,Cv2を生成し、電源回路111及び112の出力電圧Vs1,Vs2を制御する。また、電流指令値Irefを生成し、主回路ユニット114の出力を制御する。
【0041】
さらに、制御ユニット115は、リモート検出端子13を介して、素子電圧Vrmを検出することができ、検出された素子電圧Vrmは、充放電制御に用いられるとともに、電気二重層キャパシタ100の内部抵抗の測定にも用いられる。また、通信端子14を介して、ユーザ端末103からの制御信号を受信し、測定結果をユーザ端末103に出力する。
【0042】
<主回路ユニット114の詳細構成>
図4は、
図3の主回路ユニット114の詳細構成の一例を示した図である。主回路ユニット114は、トランジスタTR1〜TR4によって構成されるシリーズレギュレータSRRを備えている。なお、図中に矩形で示され、特段の言及がない素子は抵抗である。
【0043】
(1)プッシュプル回路PP1
プッシュプル回路PP1は、一対のトランジスタTR1,TR2で構成される相補型エミッタフォロワ回路である。トランジスタTR1,TR2の共通のベース端子がプッシュプル回路PP1の入力端子となり、トランジスタTR1,TR2の共通のエミッタ端子がプッシュプル回路PP1の出力端子となる。トランジスタTR1のコレクタ端子には、第1の電源回路111の出力電圧Vs1が印加され、トランジスタTR2のコレクタ端子には、第2の電源回路112の出力電圧Vs2が印加され、充電時には、トランジスタTR1が電気二重層キャパシタ100に充電電流を供給し、放電時には、トランジスタTR2が電気二重層キャパシタ100から放電電流を引き出す。
【0044】
トランジスタTR1は、エミッタフォロワ回路を構成するNPN型バイポーラトランジスタであり、ベース電流を電流増幅率h
EFで増幅したコレクタ電流が流れ、このコレクタ電流が電気二重層キャパシタ100の充電電流となる。
【0045】
トランジスタTR2は、エミッタフォロワ回路を構成するPNP型バイポーラトランジスタであり、ベース電流を電流増幅率h
EFで増幅したコレクタ電流が流れ、このコレクタ電流が電気二重層キャパシタ100の放電電流となる。
【0046】
(2)プッシュプル回路PP2
プッシュプル回路PP2も、一対のトランジスタTR3,TR4で構成される相補型エミッタフォロワ回路であり、トランジスタTR3,TR4の共通のエミッタ端子がトランジスタTR1,TR2の共通のベース端子に接続されている。2段のプッシュプル回路PP1,PP2を接続することにより、トランジスタTR1,TR3がダーリントン接続され、トランジスタTR2,TR4もダーリントン接続され、充電時及び放電時のいずれの場合も電流増幅率h
EFを増大させることができる。このような構成を採用することにより、大電流を出力するトランジスタTR1,TR2であっても、オペアンプOP1で駆動することが可能になる。
【0047】
トランジスタTR1〜TR4は、いずれも電流増幅を行う素子であり、スイッチングレギュレータを構成するトランジスタのようなオン/オフ動作を行っていない。このため、リップルのない安定性の高い出力が得られる。また、容量素子を用いた平滑化処理が必要ないため、良好な応答性を確保することができる。このため、電気二重層キャパシタ100の内部抵抗の測定を高精度で行うことができる。
【0048】
(3)出力端子12
出力端子12の正極側は、シャント抵抗SH及び出力リレーRY1を介して、プッシュプル回路PP1の出力端子に接続される。また、出力端子12の負極側は、出力リレーRY2を介して、電源回路111,112のグランドに接続されている。
【0049】
(4)シャント抵抗SH
シャント抵抗SHは、出力電流を検出するための抵抗素子であり、出力リレーRY1よりもプッシュプル回路PP1側に設けられている。シャント抵抗SHの端子間電圧は、電流フィードバック回路2に入力され、当該電圧に基づいて検出電流Idが求められる。
【0050】
(5)出力リレーRY1,RY2
出力リレーRY1,RY2は、シリーズレギュレータSRR及び出力端子12間に設けられ、これらを接続する一対の配線を遮断可能なスイッチング素子である。出力リレーRY1,RY2は、制御ユニット115からのリレー制御信号Cryに基づいて互いに連動して動作し、電気二重層キャパシタ100の充放電時には共に閉状態になり、電気二重層キャパシタ100がプッシュプル回路PP1に接続される一方、それ以外は共に開状態になり、電気二重層キャパシタ100がプッシュプル回路PP1から切り離される。つまり、出力リレーRY1,RY2は、電流指令値Irefがゼロの場合に開状態となり、シリーズレギュレータSRRの出力を遮断する。このような出力リレーRY1,RY2を備えることにより、充放電の休止中における電流入出力を完全に遮断することができ、内部抵抗を高精度で測定することができる。また、スタンバイ時における不用意な電流出力を防止し、安全性を向上させることができる。
【0051】
負極側の出力リレーRY2には、容量素子C1が並列に接続され、容量素子C1を介して、常時、電気二重層キャパシタ100と検査装置1のグランドとが高周波的に接続されている。このため、出力リレーRY2が開状態の場合に、電気二重層キャパシタ100の両端子が検査装置1に対しフローティングな状態になるのを防止している。このため、リレーRY1,RY2が開状態となる充放電の休止中における素子電圧Vrmの計測精度が、高周波領域におけるコモンモード(同相電圧)ノイズの影響を受けて低下するのを防止することができる。
【0052】
(6)電流フィードバック回路2
電流フィードバック回路2は、シリーズレギュレータSRRを制御対象とするフィードバック制御を行う回路であり、シャント抵抗SHの出力に基づいて検出電流Idを求め、この検出電流Idを電流指令値Irefに一致させるための操作量Uiを求める。検出電流Idは制御対象の出力であり、電流指令値Irefは制御対象の目標値であり、制御ユニット115から与えられる。操作量Uiは、抵抗R2を介してオペアンプOP1に入力される。電流フィードバック回路2の詳細構成については後述する。
【0053】
(7)出力電圧検出部3
出力電圧検出部3は、出力リレーRY1,RY2よりも出力端子12側において、出力端子12間の電圧を測定し、検出電圧Vdとして出力する。この検出電圧Vdは、抵抗R1を介してオペアンプOP1に入力される。
【0054】
(8)出力制御回路4
出力制御回路4は、検出電圧Vd及び操作量Uiに基づいて、シリーズレギュレータSRRの出力電圧を制御する制御回路であり、オペアンプOP1及び抵抗R1〜R3により構成される。
【0055】
オペアンプOP1は、前段のプッシュプル回路PP2に対し入力電圧を与える増幅回路であり、抵抗R3を介して、後段のプッシュプル回路PP1の出力電圧を反転入力端子に帰還させた反転増幅器である。オペアンプOP1の反転入力端子には、検出電圧Vdの反転信号が抵抗R1を介して入力されるとともに、電流フィードバック回路2で生成された操作量Uiの反転信号が抵抗R2を介して接続される。
【0056】
この回路では、シリーズレギュレータSRRの出力電圧が(Vd/R1+Ui/R2)×R3となる。つまり、シリーズレギュレータSRRの出力電圧は、検出電圧Vd及び操作量Uiの加重和(線形和)として表される。例えば、抵抗R1〜R3を同じ値にすれば、シリーズレギュレータSRRの出力電圧は、検出電圧Vd及び操作量Uiの和になる。
【0057】
出力制御回路4では、操作量Uiに検出電圧Vdが加算され、操作量Uiを用いた出力電流のフィードバック制御と、検出電圧Vdを用いた出力電圧のフィードフォワード制御とが同時に行われる。検出電流Idから求められた操作量Uiをフィードバックして出力電圧を制御する際、操作量Uiに検出電圧Vdを加算することにより、フィードバック制御の操作量Uiをオフセットさせ、その変化範囲の中心を現在の出力電圧に一致させることができる。このため、フィードバック制御をより効果的に行うことができ、応答性を向上させることができる。
【0058】
また、操作量Uiに検出電圧Vdを加算することにより、開状態の出力リレーRY1の両端電圧を一致させることができる。後述するとおり、出力リレーRY1が開状態のとき、電流フィードバック回路2は無効化され、操作量Uiとしてゼロが出力される。このため、検出電圧Vdを用いない場合、開状態の出力リレーRY1の両端には、素子電圧Vrmに相当する電位差が生じる。この状態で、出力リレーRY1をオンすれば、当該電位差により突入電流が流れる。これに対し、操作量Uiに検出電圧Vdを加算した値を用いて出力電圧を制御すれば、開状態の出力リレーRY1の両端電圧を一致させることができる。その結果、出力リレーRY1のオン時に突入電流が流れるのを防止することができるとともに、出力リレーRY1のオン直後における電流出力の応答性を向上させることができる。
【0059】
<電流フィードバック回路2>
図5は、
図4の電流フィードバック回路2の詳細構成の一例を示した図である。電流フィードバック回路2は、シャント抵抗SHの端子間電圧から検出電流Idを求め、検出電流Idを出力、電流指令値Irefを目標値とするPI制御の操作量Uiを求めている。図示した電流フィードバック回路2は、差動増幅回路A1、反転増幅回路A2及びPI制御回路A3により構成される。
【0060】
(1)差動増幅回路A1
差動増幅回路A1は、オペアンプOP2及び抵抗素子により構成される電流検出部であり、シャント抵抗SHの端子間電圧を増幅し、検出電流Idを求める。検出電流Idは、反転増幅回路A2へ出力されるとともに、制御ユニット115へも出力される。
【0061】
(2)反転増幅回路A2
反転増幅回路A2は、オペアンプOP3及び抵抗素子により構成され、検出電流Idの符号を反転させた反転信号を生成し、PI制御回路A3に入力する。
【0062】
(3)PI制御回路A3
PI制御回路A3は、オペアンプOP4、抵抗素子R4〜R6及び容量素子C2により構成されるPI演算回路であり、検出電流Id及び電流指令値Irefの差分に基づいて、PI制御の操作量Uiを求める。オペアンプOP4の反転入力端子には、抵抗R4を介して検出電流Idの反転信号が入力されるとともに、抵抗R5を介して電流指令値Irefが入力される。つまり、検出電流Id及び電流指令値Irefの差がオペアンプOP4に入力される。
【0063】
また、オペアンプOP4の反転入力端子及び出力端子間には、抵抗R6及び容量素子C2の直列回路からなる帰還回路が設けられ、オペアンプOP4は、入力値に対する比例値(P成分)及び積分値(I成分)の和を出力する。このような構成により、検出電流IdについてのPI演算が行われ、PI制御で使用される操作量Uiの反転信号が生成される。
【0064】
さらに、オペアンプOP4の帰還回路には、無効化スイッチASが並列に接続されている。無効化スイッチASは、オペアンプOP4の反転入力端子及び出力端子間を短絡することによりPI制御を無効化する開閉器であり、例えば、アナログスイッチが用いられる。無効化スイッチASは、制御ユニット115からの無効化信号Casに基づいて動作する。PI制御時には、無効化信号Casが非アクティブになり、無効化スイッチASが開状態となる一方、PI制御を行わないアイドル時には、無効化信号Casがアクティブになり、無効化スイッチASが閉状態となる。無効化スイッチASが閉状態になれば、オペアンプOP4への入力値にかかわらず操作量Uiはゼロになり、PI制御が無効化される。
【0065】
出力リレーRY1が開状態になり、出力リレーRY1が出力を遮断している状態では、PI制御の操作量Uiが検出電流Idに反映されることはない。このため、出力電流のフィードバック制御が正常に機能せず、シリーズレギュレータSRRの出力電圧が定まらない状態になる。
【0066】
例えば、電流指令値Irefをゼロにしたとしても、アナログ制御において、電流指令値Irefに対し検出電流Idが完全に一致することはなく、常時誤差が生じている。その誤差が、PI制御回路A3によって積分されると、意図しない操作量Uiが出力される。このとき、出力リレーRY1が開状態であるため、操作量Uiが検出電流Idに反映されず、時間の経過ととともに操作量Uiが単調に増加又は減少し、最大値又は最小値に至るまで振り切ってしまう。
【0067】
その結果、アイドリング時にトランジスタTR1〜TR4が熱暴走により破壊され、あるいは、出力リレーRY1の両端子に大きな電位差が発生し、その後の出力リレーRY1,RY2のオン時に電気二重層キャパシタ100に突入電流が流れる可能性がある。このような問題の発生を防止するために、アイドリング時には、無効化スイッチASにより操作量Uiを強制的にゼロ固定している。
【0068】
<制御ユニット115>
図6は、
図3の制御ユニット115の詳細構成の一例を示した図である。この制御ユニット115は、電源回路111〜113及び主回路ユニット114を制御する回路ユニットであり、配線特性記憶部40、素子電圧検出部41、電圧制御部42及びシーケンス制御部43により構成される。
【0069】
(1)配線特性記憶部40
配線特性記憶部40は、出力端子12及び電気二重層キャパシタ100を互いに接続する配線ケーブル101の電気的特性を保持する。例えば、配線ケーブル101のインピーダンスが配線特性Czとして配線特性記憶部40に保持される。この配線特性Czは、ユーザ端末103又は検査装置1に対するユーザ操作により電気二重層キャパシタ100の検査開始前に予め入力される。
【0070】
(2)素子電圧検出部41
素子電圧検出部41は、リモート検出端子13に接続され、電気二重層キャパシタ100の素子電圧Vrmを検出する回路である。出力端子12の電圧ではなく、リモート検出端子13の電圧を計測することにより、四端子法を利用して電気二重層キャパシタ100の素子電圧Vrmを正確に検出することができる。また、出力リレーRY1,RY2が開状態であっても、素子電圧Vrmを検出することができる。
【0071】
素子電圧検出部41には、高い入力インピーダンスを有し、電気二重層キャパシタ100の素子電圧を正確に測定することができる回路、例えば、差動アンプが用いられる。特に、計装アンプを用いることが望ましい。計装アンプは、良好なコモンモード除去比を有するため、素子電圧Vrmをより正確に測定することできる。ただし、計装アンプを用いても、高周波領域におけるコモンモードの影響を十分を除去することは難しい。このため、さらに容量素子C1を設けて、高周波領域におけるコモンモードの混入を抑圧している。
【0072】
素子電圧検出部41のグランドは、主回路ユニット114のグランドと電気的に接続されている。つまり、素子電圧検出部41のグランドは、負極側の出力リレーRY2を介して、電気二重層キャパシタ100の負極に接続されている。しかし、出力リレーRy1,RY2が開状態になれば、電気二重層キャパシタ100は、素子電圧検出部41のグランドから絶縁され、素子電圧検出部41に対しフローティングな状態となる。この状態で素子電圧Vrmを測定すれば、コモンモードノイズによる影響を受けて、素子電圧Vrmの測定精度が低下する。
【0073】
そこで、負極側の出力リレーRY2に容量素子C1を並列に接続し、開状態の出力リレーRY2の両端を高周波的に接続することにより、高周波のコモンモードノイズの発生を抑制している。このため、出力リレーRY1,RY2が開状態であっても、素子電圧検出部41は、素子電圧Vrmを高精度で測定することができる。その結果、充放電の休止中であっても素子電圧Vrmを高精度で測定することができる。
【0074】
(3)電圧制御部42
電圧制御部42は、配線特性Cz及び素子電圧Vrmに基づいて、電圧指令値Cv1,Cv2を生成し、電源回路111,112の出力電圧Vs1,Vs2を制御する。この電圧制御により、トランジスタTr1,Tr2において発生する熱損失を低減している。
【0075】
エミッタフォロワ回路を構成するトランジスタTR1,TR2は、出力電流及びコレクタ−エミッタ間電圧Vceに応じた損失が発生する。このため、コレクタ−エミッタ間電圧Vceを小さくすれば、出力電流を維持しながら損失を低減することができる。ただし、エミッタフォロワ回路が正常に動作するには、コレクタ−エミッタ間電圧VceがトランジスタTR1,TR2のコレクタ−エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を越えていることが条件となる。
【0076】
従って、電圧指令値Cv1,Cv2は、トランジスタTr1,Tr2がVce>Vce(sat)を満足する範囲において、できるだけ小さな出力電圧Vs1、Vs2を指定するものであることが望ましい。
【0077】
電源回路111の出力電圧Vs1は、トランジスタTR1のコレクタ−エミッタ間電圧Vceと、配線ケーブル101における電圧降下(Cz×Id)と、電気二重層キャパシタ100の素子電圧Vrmとを用いて次式で表すことができる。
【数1】
上式において、右辺の第1項(Vce)は定数であるのに対し、第2項(Cz×Id)及び第3項(Vrm)は、いずれも充放電中に変化する値である。
【0078】
第2項の電圧降下(Cz×Id)は、検査装置1の出力電流に比例する値である。
図2(a)に示したとおり、充放電開始時には電流が瞬時に変化する。本実施の形態による検査装置1の場合、充放電電流の立ち上がり時間は約60mSである。このような短時間の変化に対し、電源回路111の電圧フィードバック制御を追従させることは困難である。このため、電圧降下(Cz×Id)は、予め最大値を見込んでおく必要がある。つまり、充電動作中における出力電流の最大値は充電電流Icであるから、第2項の値として(Cz×Ic)を見込んでおく必要がある。
【0079】
第3項の素子電圧Vrmは、電気二重層キャパシタ100の端子間電圧であり、充電状態に応じて変化する値である。ただし、
図2(b)に示したとおり、充放電中における素子電圧Vrmの変化は、配線ケーブル101の電圧降下の変化に比べれば、極めて緩やかである。このため、第3項のVrmは、素子電圧検出部41による検出値を用いることができる。
【0080】
以上のことから、電圧指令値Cv1は、以下の式により求めることができる。
【数2】
電源回路112の指令値Cv2についても、電流の向きが電圧指令値Cv1と逆になる点を除き同様であり、放電動作中における出力電流の最大値はIeであるから、電圧指令値Cv2も以下の式により求めることができる。
【数3】
【0081】
式(2)及び(3)において、Vce、Ic及びIeは定数であり、Czは配線ケーブル101によって決まる値であり、Vrmは充放電動作中に変化する値である。このため、電圧制御部42は、これらの式を用いて電圧指令値Cv1,Cv2を決定する。つまり、ユーザが指定した配線特性Czと検出した素子電圧Vrmとに基づいて、電圧指令値Cv1,Cv2を決定する。
【0082】
本実施の形態による検査装置1は、素子電圧Vrmを四端子法で計測することにより、配線ケーブル101の電圧降下と、電気二重層キャパシタ100の素子電圧Vrmとを分離して取得している。このため、素子電圧Vrmに基づく電圧制御を行うことができる。上述したとおり、前者の変化は、電圧制御による追従が困難であるのに対し、後者の変化は、電圧制御による追従が比較的容易であることから、両者を分離して計測することにより、素子電圧Vrmに基づく電圧制御を実現でき、熱損失を低減することができる。
【0083】
なお、一般にトランジスタの飽和電圧Vce(sat)は0.7V以下である。このため、上式(2)(3)の第1項のVceは、マージンを考慮して1V程度を見込んでおけばよい。
【0084】
(4)シーケンス制御部43
シーケンス制御部43は、検出電流Id及び素子電圧Vrmに基づいて、電流指令値Iref、リレー制御信号Cry及び無効化信号Casを生成し、内部抵抗測定のシーケンス制御を行う。
【0085】
<測定シーケンス>
図7のステップS1〜S5は、検査装置1による内部抵抗の測定シーケンスの一例を示したフローチャートであり、
図6のシーケンス制御部43の動作が示されている。このフローチャートは、ユーザ端末103からの測定開始指令により実行される。事前準備として、配線ケーブル101の配線特性Czがユーザ端末103から指定される。また、測定開始前には、無効化スイッチASが閉状態、出力リレーRY1,RY2が開状態になっている。
【0086】
測定開始指令が入力されると、シーケンス制御部43は、充電電流Icを供給する定電流充電処理(ステップS1)、定電流充電を休止する充電休止処理(ステップS2)、充電目標電圧Vcによる定電圧充電を行う定電圧充電処理(ステップS3)、放電電流Ieを引き出す定電流放電処理(ステップS4)及び定電流放電を休止する放電休止処理(ステップS5)の各処理を順に実行する。これらの各処理の詳細について順に説明する。
【0087】
(1)定電流充電処理
図8のステップS101〜S104は、
図7の定電流充電処理(ステップS1)の詳細動作の一例を示したフローチャートである。測定開始指令が入力されると、シーケンス制御部43は、リレー制御信号Cryをオン信号に変化させる。その結果、出力リレーRY1,RY2が閉状態となり、電流出力が可能になる(ステップS101)。開状態の出力リレーRY1の両端は、検出電圧Vdのフィードフォワード制御により同電位に保持されているため、出力リレーRY1のオン動作により、電気二重層キャパシタ100に突入電流が流れることはない。次に、シーケンス制御部43は、無効化信号Casを非アクティブに変化させる。その結果、無効化スイッチASが開状態となり、PI制御が有効化される(ステップS102)。
【0088】
次に、シーケンス制御部43は、電流指令値Irefを予め指定された充電電流Icに変更する。その結果、トランジスタTR1から電気二重層キャパシタ100へ充電電流Icが供給され、定電流充電が開始される(ステップS103)。このときの出力電流の立ち上がり時間は、スイッチング電源により電流制御を行う場合よりも短く、良好な応答特性が得られる。
【0089】
シーケンス制御部43は、定電流充電中、素子電圧Vrmを監視し、素子電圧Vrmが充電目標電圧Vcに到達すれば、定電流充電の処理を終了する(ステップS104)。
【0090】
(2)充電休止処理
図9のステップS201〜S205は、
図7の充電休止処理(ステップS2)の詳細動作の一例を示したフローチャートである。定電流充電処理(ステップS1)が終了すれば、シーケンス制御部43は、そのときの検出電流Id及び素子電圧Vrm(Vt1)を測定し(ステップ201)、その後に充電を一旦休止させる。充電の休止は、PI制御を無効化し、出力リレーRY1,RY2をオフすることにより行われる(ステップS202、S203)。
【0091】
シーケンス制御部43は、充電を休止させるために、まず、無効化信号Casをアクティブに変化させ、PI制御を無効化する(ステップS202)。充電休止中にPI制御を無効化することにより、アイドリング中にシリーズレギュレータSRRの制御が暴走するのを防止することができる。
【0092】
次に、シーケンス制御部43は、リレー制御信号Cryをオフ信号に変化させることにより、出力リレーRY1,RY2が開状態になり、検査装置1による充電が休止する(ステップS203)。出力リレーRY1,RY2をオフし、充電休止中における電気二重層キャパシタ100をシリーズレギュレータSRRから切り離すことにより、充電休止中、電気二重層キャパシタ100に対する電流入出力を完全に遮断することができる。
【0093】
その後、所定の休止時間T1(例えば1秒)が経過すれば(ステップS204)、シーケンス制御部43は、素子電圧Vrm(Vt2)を測定し、充電休止処理を終了する(ステップS205)。素子電圧Vt2の測定時に、出力リレーRY1,RY2は開状態であるが、負極側の出力リレーRY2の両端は、容量素子C1を介して高周波的に接続されているため、コモンモードノイズの影響を抑制し、素子電圧Vt2を高精度で測定することができる。
【0094】
(3)定電圧充電処理
図10のステップS301〜S304は、
図7の定電圧充電処理(ステップS3)の詳細動作の一例を示したフローチャートである。充電休止処理(ステップS2)が終了すれば、シーケンス制御部43は、出力リレーRY1,RY2をオンし、PI制御を有効化し、定電圧充電を開始する(ステップS301〜S303)。
【0095】
まず、シーケンス制御部43は、リレー制御信号Cryをオン信号に変化させることにより、出力リレーRY1,RY2が閉状態になり、電流出力が可能になる(ステップS301)。充電休止中、開状態の出力リレーRY1の両端は、検出電圧Vdのフィードフォワード制御により同電位に保持されているため、出力リレーRY1のオン動作により、電気二重層キャパシタ100に突入電流が流れることはない。次に、シーケンス制御部43が、無効化信号Casを非アクティブに変化させることにより、無効化スイッチASが開状態になり、PI制御が有効化される(ステップS302)。
【0096】
その後、定電圧制御が開始される(ステップS303)。定電圧制御は、シーケンス制御部43が、充電目標電圧Vcに対する素子電圧Vrmの誤差(Vc−Vrm)に基づいて電流指令値Irefを決定することにより行われる。その後、所定の充電時間T2(例えば20分)が経過すれば、定電圧充電処理を終了する(ステップS304)。
【0097】
(4)定電流放電処理
図11のステップS401〜S404は、
図7の定電流放電処理(ステップS4)の詳細動作の一例を示したフローチャートである。定電圧充電処理(ステップS3)が終了すれば、シーケンス制御部43は、素子電圧Vrm(Vt3)を測定した後、定電流充電を開始する(ステップS401,S402)。
【0098】
シーケンス制御部43は、電流指令値Irefを予め指定された放電電流Ieに変更する。その結果、電気二重層キャパシタ100からトランジスタTR2へ放電電流Ieが引き込まれ、定電流放電が開始される(ステップS402)。このときの入力電流の立ち上がり時間は、スイッチング電源により電流制御を行う場合よりも短く、良好な応答特性が得られる。
【0099】
シーケンス制御部43は、定電流放電中、検出電流Id及び素子電圧Vrmの測定を定期的に繰り返し、素子電圧Vrmが放電終止電圧Veに到達すれば、定電流放電の処理を終了する(ステップS404)。
【0100】
(5)放電休止処理
図12のステップS501〜S505は、
図7の放電休止処理(ステップS5)の詳細動作の一例を示したフローチャートである。定電流放電処理(ステップS4)が終了すれば、シーケンス制御部43は、そのときの検出電流Id及び素子電圧Vrm(Vt4)を測定し(ステップS501)、その後に放電を休止させる。
【0101】
シーケンス制御部43は、放電を休止させるために、まず、無効化信号Casをアクティブに変化させ、PI制御を無効化する(ステップS502)。放電休止中にPI制御を無効化することにより、アイドリング中にシリーズレギュレータSRRの制御が暴走するのを防止することができる。
【0102】
次に、シーケンス制御部43は、リレー制御信号Cryをオフ信号に変化させることにより、出力リレーRY1,RY2が開状態になり、検査装置1による放電が休止する(ステップS503)。出力リレーRY1,RY2をオフし、放電休止中における電気二重層キャパシタ100をシリーズレギュレータSRRから切り離すことにより、放電休止中、電気二重層キャパシタ100に対する電流入出力を完全に遮断することができる。
【0103】
その後、所定の休止時間T3(例えば1秒)が経過すれば(ステップS504)、シーケンス制御部43は、素子電圧Vrm(Vt5)を測定し、放電休止処理を終了する(ステップS505)。素子電圧Vt5の測定時に、出力リレーRY1,RY2は開状態であるが、負極側の出力リレーRY2の両端は、容量素子C1を介して高周波的に接続されているため、コモンモードノイズの影響を抑制し、素子電圧Vt5を高精度で測定することができる。
【0104】
実施の形態2.
実施の形態1では、ユーザが指定した配線特性Czを保持する場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、配線特性Czを予め測定して保持する検査装置1について説明する。
【0105】
図13は、本発明の実施の形態2による検査装置1の要部を示した図であり、制御ユニット115の他の構成例が示されている。
図13の制御ユニット115は、配線特性検出部50及び配線特性判定部51を備えている点で、
図6(実施の形態1)の場合とは異なる。なお、実施の形態では、実施の形態1との相違点についてのみ説明し、重複する説明は省略する。
【0106】
(1)配線特性検出部50
配線特性検出部50は、検出電圧Vd、素子電圧Vrm及び検出電流Idに基づいて配線特性Czを求める。配線特性Czは、配線ケーブル101に流れる電流と、そのときの電圧降下とを取得することができれば、両者の比として求めることができる。配線ケーブル101の電圧降下は、検出電圧Vdと素子電圧Vrmの差として与えられる。つまり、配線特性Czは、検出電圧Vd、素子電圧Vrm及び検出電流Idを用いて、次式で表すことができる。
【数4】
【0107】
配線特性検出部50は、上式(4)を用いて配線特性Czを求める。配線特性Czの検出は、検査装置1に対し、新たな配線ケーブル101が接続された時に行われ、検出された配線特性Czは、配線特性記憶部40に格納され、その後の内部抵抗測定に使用される。
【0108】
配線特性Czの検出は、内部抵抗の測定時と同様、配線ケーブル101、102を介して、電気二重層キャパシタ100を検査装置1に接続した状態で行われる。ユーザ端末103から検出開始指令が入力されると、検査装置1から電気二重層キャパシタ100へ電流が供給される。この電流は、内部抵抗測定時に比べて小さな電流であり、内部抵抗測定時に比べて短い期間だけ流され、検出電圧Vd、素子電圧Vrm及び検出電流Idが測定される。
【0109】
なお、出力時間が短時間であれば、配線特性Czに基づく電圧指令値Cv1,Cv2の制御を行わなくても検査装置1に与える影響は小さい。このため、内部抵抗測定の開始後の最初の短時間で配線特性Czを測定して記憶し、その後は、記憶された配線特性Czを用いるようにすれば、内部抵抗測定の開始前に、配線特性Czを測定するための事前準備を行う必要がなくなる。また、内部抵抗測定の開始時に毎回配線特性を自動測定すれば、配線や設備をユーザが変更した場合であっても、損失を低減することができる。
【0110】
(2)配線特性判定部51
配線特性判定部51は、配線特性検出部により検出された配線特性Czが異常値であるか否かを判定し、この判定結果に基づいてアラート出力を行う。配線特性判定部51は、配線特性Czを予め定められた閾値と比較する。例えば、配線特性Czが上限閾値Cmaxを越えていた場合、アラート出力を行う。アラート出力は、ユーザ端末103等に対する信号出力であってもよいし、検査装置1における表示出力又は音声出力であってもよい。
【0111】
また、配線特性判定部51は、上限閾値Cmax及び下限閾値Cminが予め与えられ、配線特性Czを各閾値Cmax,Cminとそれぞれ比較し、これらの比較結果に基づいてアラート出力を行うこともできる。例えば、配線特性Czが、Cmin以上Cmax以下の正常範囲内にであるか否かを判定し、当該範囲外であった場合にアラート出力を行ってもよい。
【0112】
本実施の形態によれば、ユーザが配線特性Czを指定する必要がないため、煩雑な設定作業を行う必要がない。また、実際の配線ケーブル101についての正確な配線特性Czを用いて適切な内部抵抗測定を行うことができる。その結果、ユーザが誤った配線特性Czを指定することにより、過大な電流が流れて検査装置1が熱破壊され、あるいは、過小な電流しか流れず、内部抵抗測定できない不具合の発生を防止することができる。さらに、不適切な配線特性Czの配線ケーブル101が検査装置1に接続された場合にアラート出力を行ってユーザに報知することができる。
【0113】
なお、実施の形態では、配線特性検出時に、内部抵抗測定時よりも小さな電流を流す例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。例えば、配線特性検出時に、内部抵抗測定時における電流(特に最大電流)と同じ電流を流し、そのときの配線ケーブル101における電圧降下(Vd−Vrm)求め、この電圧降下を配線特性Czとして保持し、電圧制御に使用することもできる。
【0114】
また、実施の形態では、配線特性検出部50が検出した配線特性について配線特性判定部51が判定を行い、その判定結果に基づいてアラート出力を行う場合の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。例えば、ユーザが指定した配線特性について配線特性判定部51が判定を行い、その判定結果に基づいてアラート出力を行うように構成することもできる。