(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0016】
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイルまたはレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。ただし、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
【0017】
図1から
図6に関連してレンズ系の実施例が開示されている。各実施例で開示されているように、一実施形態のレンズ系は、物体側より順に、第1レンズ群、絞り、正の第2レンズ群、負の第3レンズ群、正の第4レンズ群を備える。第1レンズ群の最も物体側には、物体側に凸面を向けた2枚の負のメニスカスレンズが配置される。第3レンズ群は2枚以下のレンズで構成される。第4レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズと負レンズを含み、最も像側に負レンズが配置される。無限遠から近距離被写体へのフォーカシングの際に、前記第3レンズ群が像側へ移動する。f1を前記第1レンズ群の焦点距離、f4を前記第4レンズ群の焦点距離、fを全系の焦点距離、vd1−2を前記第1レンズ群の前記2枚の負のメニスカスレンズのd線における平均アッベ数として、条件式
3.5 < | f1/f | ・・・(1)
2.1 < f4/f < 5 ・・・(2)
vd1−2 > 50 ・・・(3)
【0018】
条件式(1)は、第1レンズ群の焦点距離と全系の焦点距離との関係を規定している。条件式(1)の下限以下になると、第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎるために、軸外で発生する収差を補正するのが難しくなるとともに、偏芯誤差による性能劣化が大きくなる。
【0019】
条件式(2)は、第4レンズ群の焦点距離と全系の焦点距離との関係を規定している。条件式(2)の上限以上になると、第4レンズ群の屈折力が弱くなり、全長が長くなってしまう。一方、条件式(2)の下限以下になると、第4レンズ群の屈折力が強くなり、少ないレンズ枚数で収差を補正することが難しくなるとともに、被写体距離による収差変動が大きくなる。
【0020】
条件式(3)は、第1レンズ群の2枚の負のメニスカスレンズのd線における平均アッベ数を規定している。条件式の下限以下になると倍率色収差が大きくなり収差補正が難しくなる。
【0021】
第1レンズ群の負部分群を第1−a群、前記第1レンズ群の正部分群を第1−b群とすると、前記第1−a群は、少なくとも負レンズ3枚及び正レンズ1枚を含む。f1aを第1−aレンズ群の焦点距離として、条件式
−1.2 < f1a/f < −0.6 ・・・(4)
を満足する。
【0022】
条件式(4)は、第1−a群の焦点距離と全系の焦点距離の関係を規定している。条件式(4)の上限以上になると、第1−a群の屈折力が強くなり、軸外収差の補正が難しくなる。一方、条件式(4)の下限以下になると、広画角化に必要な屈折力が弱くなり、小型化が難しくなる。
【0023】
f34を前記第3レンズ群と前記第4レンズ群の合成焦点距離として、条件式
5.5 < | f34/f | ・・・(5)
を満足する。
【0024】
条件式(5)は、無限遠被写体に合焦時の第3レンズ群と第4レンズ群の合成焦点距離と全系の焦点距離との関係を規定している。条件式の下限を超えると、第3レンズ群以降の屈折力が強くなるために、被写体距離による収差変動が大きくなる。
【0025】
f3を前記第3レンズ群の焦点距離として、条件式
−5 < f3/f < −1.5 ・・・(6)
を満足する。
【0026】
条件式(6)は、第3レンズ群の焦点距離と全系の焦点距離との関係を規定している。条件式の上限以上になると、第3レンズ群の屈折力が強くなり、2枚以下の構成で収差を補正することが難しくなるとともに、被写体距離による収差変動も大きくなる。一方、条件式(6)の下限以下になると、第3レンズ群の屈折力が弱くなり、最短撮影距離から無限遠距離まで合焦するための第3レンズ群の可動範囲が大きくなり、全長短縮が難しくなる。
【0027】
β3を無限遠被写体に合焦時の前記第3レンズ群の横倍率、β4を無限遠被写体に合焦時の前記第4レンズ群の横倍率として、条件式
(1−β3
2)×β4
2 < −0.4 ・・・(7)
を満足する。
【0028】
条件式(7)は無限遠被写体に合焦時の第3レンズ群の横倍率と第4レンズ群の横倍率を用いて、第3レンズ群を単位量だけ動かしたときに撮像面側の合焦点がどれだけ動くかを規定している。条件式(7)の上限以上になると、最短撮影距離から無限遠距離まで合焦するための可動範囲が大きくなり、全長短縮が難しくなる。
【0029】
f1−bを前記第1−b群の焦点距離、f2を前記第2レンズ群の焦点距離として、条件式
0.4 < f1−b/f2 < 1.2 ・・・(8)
を満足する。
【0030】
条件式(8)は、第1−b群の焦点距離と第2レンズ群の焦点距離の関係を規定している。条件式(8)を満足することで、軸上光線が高い絞り前後において、全長短縮に必要な正成分を効果的に分割して、軸上収差を効果的に補正することができる。
【0031】
さらに、下記条件式を満足することで上述の効果がより顕著となる。
0.6 < f1−b/f2 < 1.0 ・・・(8−1)
【0032】
以上に説明したように、上記のレンズ系によれば、高い解像力を有する大口径で広角なレンズ系を提供することができる。また、軽量化された可動群を備えたレンズ系を提供することができる。
【0033】
なお、本明細書等において「〜から構成され」、「〜からなり」、「〜からなる」という用語が用いられる場合、列挙された構成要素に加えて、実質的に屈折力を有さないレンズ、絞り、フィルタ及びカバーガラス等の、実質的に屈折力を有するレンズ以外の光学要素、及び/又は、レンズフランジ、撮像素子及び振れ補正機構等の機構要素を含み得る。例えば、「Xから構成され」、「Xからなり」、「Xからなる」という用語が用いられる場合、Xに加えて、実質的に屈折力を有するレンズ以外の光学要素、及び/又は、機構要素を含み得る。
【0034】
次に、レンズ系の具体的な実施形態に具体的な数値を適用した実施例を説明する。まず、レンズ系の各実施例の説明で用いられる記号等の意味を説明する。
【0035】
レンズデータとして面番号、曲率半径、面間隔、屈折率及びアッベ数を示す表が開示される。レンズデータの表において、面番号の欄には、最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させたときの面番号が示される。Rの欄には、各面の曲率半径が示される。Dの欄には、各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔が示される。また、Ndの欄には、各光学要素のd線(波長587.6nm(ナノメートル))に対する屈折率が示され、νdの欄には、各光学要素のd線基準のアッベ数が示される。ここで、曲率半径の符号は、面形状が物体側に凸の場合を正とし、像面側に凸の場合を負とする。曲率半径における「INF」は、当該面が平面であることを示す。
【0036】
レンズデータには、開口絞りSも含めて示す。開口絞りSに相当する面の面番号の欄には「STO」という語句を示す。
【0037】
レンズデータにおいて、非球面の面番号には*印を付すとともに、曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を示す。また、非球面を有するレンズ系の実施例については、非球面の面番号と、各非球面に関する非球面係数、及び、円錐定数を含む非球面データの表を付す。非球面データの表において、非球面係数の数値の「E±n」(n:自然数)は10を底とする指数表現である。すなわち、「E±n」は、「×10
±n」を意味している。例えば、「0.12345E−05」は、「0.12345×10
−5」を意味している。非球面形状は、「zd」をレンズ面の頂点からの光軸方向における距離(サグ量)、「h」を光軸方向に垂直な方向における距離(高さ)、「c」をレンズの頂点における近軸曲率(曲率半径の逆数)、「κ」を円錐定数(コーニック定数)、「Am」をm次の非球面係数とすると、次の式によって定義される。
zd=ch
2/(1+(1−(1+κ)c
2h
2)
1/2)+ΣAm*h
m
なお、Σはmについての和を示す。
【0038】
また、各実施例のレンズ系の諸元データの表を付す。諸元データの表において、「f」は焦点距離を示す。「Fno」はFナンバーを示す。「ω」は半画角(最大半画角)を示す。「Y」は最大像高を示す。「TTL」は光学全長を示す。
【0039】
レンズデータ、変化する面間隔データ、及びレンズ系の諸元データの表において、角度の単位としては「度」を用い、長さの単位としては「mm」を用いる。しかし、レンズ系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため、他の任意の単位を用いることもできる。
【0040】
なお、レンズ系が撮像レンズとして撮像装置に搭載される際には、撮像装置の仕様に応じたローパスフィルタ等の各種フィルタ及び保護用のカバーガラス等の光学要素を備えることが好ましい。本実施形態のレンズ系として、係る光学要素を備える形態も備えない形態も採用できる。係る光学要素を備えるレンズ系と光学要素を備えないレンズ系とは等価なレンズ系といえる。
【0041】
「Gi」はレンズ群を示す。「Gi」において文字Gに続くiは、各実施例においてレンズ系が備えるレンズ群を識別することを目的とした自然数である。レンズ群は、1つ以上のレンズを備えて構成される。「Lj」は1つのレンズを示す。「Lj」において文字Lに続くjは、各実施例においてレンズ系が備えるレンズを識別することを目的とした自然数である。各実施例の説明において、記号Ljが割り当てられたレンズと、他の実施例における同じ記号Ljが割り当てられたレンズとが同じレンズであることを意味するものではない。同様に、ある実施例で特定の記号が割り当てられたレンズ又はレンズ群と、他の実施例において同じ記号が割り当てられたレンズ又はレンズ群とが同じレンズ又はレンズ群であることを意味するものではない。
【0042】
図1は、第1実施例におけるレンズ系100のレンズ構成を像面IMとともに示す。
【0043】
第1実施例のレンズ系100は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と開口絞りSと正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。第3レンズ群G3が可動することによりフォーカシングを行う。
図1の第3レンズ群G3に対応づけられた矢印は、無限遠被写体から近距離被写体に合焦するときの可動群となる第3レンズ群G3の移動方向を表す。
【0044】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた3枚の負のメニスカスレンズL1、L2及びL3と、両凸形状の正レンズL4と、物体側に凹面を向けた負レンズL5とから構成されるG1−a群と、両凸形状の正レンズL6と、負レンズL7及び正レンズL8の接合レンズとから構成されるG1−b群とからなる。広角化に必要な負の屈折力を少なくとも3つの負成分のレンズで分担することで、軸外収差を良好に補正することが可能になる。
【0045】
第2レンズ群G2は、物体側に凸形状の正レンズL9と、正レンズL10及び負レンズL11の正の屈折力を有する接合レンズとから構成される。第2レンズ群G2に必要な屈折力を少なくとも2つの正成分のレンズで分担することによって、軸上収差及び軸外収差の補正を良好なバランスで実現できる。
【0046】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL12及び両凹形状の負レンズL13の負の屈折力の接合レンズで構成される。これにより、可動群の軽量化を実現できる。
【0047】
第4レンズ群G4は、両凸形状の正レンズL14と、両凹形状の負レンズL15とから構成される。第4レンズ群G4が少なくとも1枚の正レンズ及び負レンズを含むことで、軸外収差を良好に補正できる。
【0048】
表1は、第1実施例のレンズ系100のレンズデータを示す。表2は、レンズ系100の非球面データを示す表である。
【0051】
表3は、第1実施例のレンズ系100の無限遠被写体に合焦時の全系の焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、像高Y、及び光学全長TTLを示す諸元データの表である。
【0053】
図2は、無限遠被写体に合焦した状態のレンズ系100の球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はd線(587.56nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差において、実線はd線のサジタル像面、破線はd線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差においてはd線の値を示す。各収差図から、第1実施例のレンズ系100は、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
【0054】
図3は、第2実施例におけるレンズ系200のレンズ構成を、光学部材P及び像面IMとともに示す。
【0055】
第2実施例のレンズ系200は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。第3レンズ群G3が可動することによりフォーカシングを行う。
図3の第3レンズ群G3に対応づけられた矢印は、無限遠被写体から近距離被写体に合焦するときの可動群となる第3レンズ群G3の移動方向を表す。
【0056】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL2と、両凹形状の負レンズL3及び両凸形状の正レンズL4の接合レンズと、物体側に凹面を向けた負レンズL5とから構成されるG1−a群と、両凸形状の正レンズL6と、負レンズL7及び正レンズL8の接合レンズから構成されるG1−b群とからなる。広角化に必要な負の屈折力を少なくとも3つの負成分のレンズで分担することで、軸外収差を良好に補正することが可能になる。
【0057】
第2レンズ群G2は、物体側に正レンズL9と負レンズL10の正の屈折力を有する接合レンズと、両凸形状の正レンズL11とから構成される。第2レンズ群G2に必要な屈折力を少なくとも2つの正成分で分担することによって、軸上収差と軸外収差の補正を良好なバランスで実現できる。
【0058】
第3レンズ群G3は、像側に凹面を向けた1枚の負レンズL12から構成される。第3レンズ群G3は、1枚の負レンズL12から構成されるので、可動群の軽量化を実現できる。
【0059】
第4レンズ群G4は、両凸形状の正レンズL13と、像側に凸面を向けた正レンズL14と、像側に凹面を向けた負レンズL15とから構成される。第4レンズ群G4が少なくとも1枚の正レンズ及び負レンズを含むことで、軸外収差を良好に補正できる。
【0060】
表4は、第2実施例のレンズ系200のレンズデータを示す。表5は、レンズ系200の非球面データを示す表である。
【0063】
表6は、第2実施例のレンズ系200の無限遠被写体に合焦時の全系の焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、像高Y、及び光学全長TTLを示す諸元データの表である。
【0065】
図4は、無限遠被写体に合焦した状態のレンズ系200の球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はd線(587.56nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差において、実線はd線のサジタル像面、破線はd線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差においてはd線の値を示す。各収差図から、第2実施例のレンズ系200は、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
【0066】
図5は、第3実施例におけるレンズ系300のレンズ構成を、光学部材P及び像面IMとともに示す。
【0067】
第2実施例のレンズ系300は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。第3レンズ群G3が可動することによりフォーカシングを行う。
図5の第3レンズ群G3に対応づけられた矢印は、無限遠被写体から近距離被写体に合焦するときの可動群となる第3レンズ群G3の移動方向を表す。
【0068】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL2と、両凹形状の負レンズL3及び両凸形状の正レンズL4の接合レンズと、物体側に凹面を向けた負レンズL5とから構成されるG1−a群と、両凸形状の正レンズL6と、負レンズL7及び正レンズL8の接合レンズとから構成されるG1−b群とからなる。広角化に必要な負の屈折力を、少なくとも3つの負成分のレンズで分担することで、軸外収差を良好に補正することが可能になる。
【0069】
第2レンズ群G2は、物体側に正レンズL9及び負レンズL10の正の屈折力を有する接合レンズと、両凸形状の正レンズL11とから構成される。第2レンズ群G2に必要な屈折力を少なくとも2つの正成分で分担することによって、軸上収差と軸外収差の補正を良好なバランスで実現できる。
【0070】
第3レンズ群G3は、像側に凹面を向けた1枚の負レンズL12から構成される。これにより、可動群の軽量化が実現できる。
【0071】
第4レンズ群G4は、両凸形状の正レンズL13と、像側に凹面を向けた負レンズL14と、物体側に凹面を向けた負レンズL15とから構成される。第4レンズ群G4が少なくとも1枚の正レンズ及び負レンズを含むことで、軸外収差を良好に補正できる。
【0072】
表7は、第3実施例のレンズ系300のレンズデータを示す。表8は、レンズ系300の非球面データを示す表である。
【0075】
表9は、第3実施例のレンズ系300の無限遠被写体に合焦時の全系の焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、像高Y、及び光学全長TTLを示す諸元データの表である。
【0077】
図6は、無限遠被写体に合焦した状態のレンズ系300の球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はd線(587.56nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差において、実線はd線のサジタル像面、破線はd線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差においてはd線の値を示す。各収差図から、第3実施例のレンズ系300は、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
【0078】
表10は、第1実施例から第3実施例のレンズ系における条件式(1)〜(8)の対応値を示す。表11及び表12は、条件式(1)〜(8)に関連する各数値を示す。
【0082】
以上に説明したとおり、本実施形態のレンズ系によれば、高い解像力を有する大口径で広角なレンズ系を提供することができる。また、軽量化された可動群を備えたレンズ系を提供することができる。これにより、高速なフォーカシングを実現できる。
【0083】
なお、上述したレンズ系が備える構成は任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用され得る。例えば、上記実施例によるレンズ系は条件式(1)〜(8)及び(8−1)を満足するものとしているが、条件式(1)〜(8)及び(8−1)のいずれか1つを満足するものであってもよく、これらの条件式の任意の組合せを満足するものであってもよい。
【0084】
以上、実施形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、及びアッベ数は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0085】
本実施形態に係るレンズ系は、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置用のレンズ系に適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、ズーム機構を有しないレンズ系に適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、空撮用カメラ、監視用カメラ等のレンズ系に適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、レンズ非交換式の撮像装置が備える撮像レンズに適用できる。本実施形態に係るレンズ系は、一眼レフレックスカメラ等のレンズ交換式カメラの交換レンズに適用できる。
【0086】
次に、本実施形態に係るレンズ系を備えるシステムの一例としての移動体システムを説明する。
【0087】
図7は、無人航空機(UAV)40及びコントローラ50を備える移動体システム10の一例を概略的に示す。UAV40は、UAV本体1101、ジンバル1110、複数の撮像装置1230、及び撮像装置1220を備える。撮像装置1220は、レンズ装置1160及び撮像部1140を備える。レンズ装置1160は、上述したレンズ系を備える。UAV40は、上述したレンズ系を有する撮像装置を備えて移動する移動体の一例である。移動体とは、UAVの他、空中を移動する他の航空機、地上を移動する車両、水上を移動する船舶等を含む概念である。
【0088】
UAV本体1101は、複数の回転翼を備える。UAV本体1101は、複数の回転翼の回転を制御することでUAV40を飛行させる。UAV本体1101は、例えば、4つの回転翼を用いてUAV40を飛行させる。回転翼の数は、4つには限定されない。UAV40は、回転翼を有さない固定翼機でもよい。
【0089】
撮像装置1230は、所望の撮像範囲に含まれる被写体を撮像する撮像用のカメラである。複数の撮像装置1230は、UAV40の飛行を制御するためにUAV40の周囲を撮像するセンシング用のカメラである。撮像装置1230は、UAV本体1101に固定されていてよい。
【0090】
2つの撮像装置1230が、UAV40の機首である正面に設けられてよい。さらに他の2つの撮像装置1230が、UAV40の底面に設けられてよい。正面側の2つの撮像装置1230はペアとなり、いわゆるステレオカメラとして機能してよい。底面側の2つの撮像装置1230もペアとなり、ステレオカメラとして機能してよい。複数の撮像装置1230により撮像された画像に基づいて、UAV40の周囲の3次元空間データが生成されてよい。複数の撮像装置1230により撮像された被写体までの距離は、複数の撮像装置1230によるステレオカメラにより特定され得る。
【0091】
UAV40が備える撮像装置1230の数は4つには限定されない。UAV40は、少なくとも1つの撮像装置1230を備えていればよい。UAV40は、UAV40の機首、機尾、側面、底面、及び天井面のそれぞれに少なくとも1つの撮像装置1230を備えてもよい。撮像装置1230は、単焦点レンズ又は魚眼レンズを有してもよい。UAV40に係る説明において、複数の撮像装置1230を、単に撮像装置1230と総称する場合がある。
【0092】
コントローラ50は、表示部54と操作部52を備える。操作部52は、UAV40の姿勢を制御するための入力操作をユーザから受け付ける。コントローラ50は、操作部52が受け付けたユーザの操作に基づいて、UAV40を制御するための信号を送信する。
【0093】
コントローラ50は、撮像装置1230及び撮像装置1220の少なくとも一方が撮像した画像を受信する。表示部54は、コントローラ50が受信した画像を表示する。表示部54はタッチ式のパネルであってよい。コントローラ50は、表示部54を通じて、ユーザから入力操作を受け付けてよい。表示部54は、撮像装置1220に撮像させるべき被写体の位置をユーザが指定するユーザ操作等を受け付けてよい。
【0094】
撮像部1140は、レンズ装置1160により結像された光学像の画像データを生成して記録する。レンズ装置1160は、撮像部1140と一体的に設けられてよい。レンズ装置1160は、いわゆる交換レンズであってよい。レンズ装置1160は、撮像部1140に対して着脱可能に設けられてよい。
【0095】
ジンバル1110は、撮像装置1220を可動に支持する支持機構を有する。撮像装置1220は、ジンバル1110を介してUAV本体1101に取り付けられる。ジンバル1110は、撮像装置1220を、ピッチ軸を中心に回転可能に支持する。ジンバル1110は、撮像装置1220を、ロール軸を中心に回転可能に支持する。ジンバル1110は、撮像装置1220を、ヨー軸を中心に回転可能に支持する。ジンバル1110は、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸の少なくとも1つの軸を中心に、撮像装置1220を回転可能に支持してよい。ジンバル1110は、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸のそれぞれを中心に、撮像装置1220を回転可能に支持してよい。ジンバル1110は、撮像部1140を保持してもよい。ジンバル1110は、レンズ装置1160を保持してもよい。ジンバル1110は、ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つを中心に撮像部1140及びレンズ装置1160を回転させることで、撮像装置1220の撮像方向を変更してよい。
【0096】
図8は、UAV40の機能ブロックの一例を示す。UAV40は、インタフェース1102、制御部1104、メモリ1106、ジンバル1110、撮像部1140、及びレンズ装置1160を備える。
【0097】
インタフェース1102は、コントローラ50と通信する。インタフェース1102は、コントローラ50から各種の命令を受信する。制御部1104は、コントローラ50から受信した命令に従って、UAV40の飛行を制御する。制御部1104は、ジンバル1110、撮像部1140、及びレンズ装置1160を制御する。制御部1104は、CPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。メモリ1106は、制御部1104がジンバル1110、撮像部1140、及びレンズ装置1160を制御するのに必要なプログラムなどを格納する。
【0098】
メモリ1106は、コンピュータが可読な記録媒体でよい。メモリ1106は、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。メモリ1106は、UAV40の筐体に設けられてよい。UAV40の筐体から取り外し可能に設けられてよい。
【0099】
ジンバル1110は、制御部1112、ドライバ1114、ドライバ1116、ドライバ1118、駆動部1124、駆動部1126、駆動部1128、及び支持機構1130を有する。駆動部1124、駆動部1126及び駆動部1128は、モータであってよい。
【0100】
支持機構1130は、撮像装置1220を支持する。支持機構1130は、撮像装置1220の撮像方向を可動に支持する。支持機構1130は、撮像部1140及びレンズ装置1160をヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸を中心に回転可能に支持する。支持機構1130は、回転機構1134、回転機構1136、及び回転機構1138を含む。回転機構1134は、駆動部1124を用いてヨー軸を中心に撮像部1140及びレンズ装置1160を回転させる。回転機構1136は、駆動部1126を用いてピッチ軸を中心に撮像部1140及びレンズ装置1160を回転させる。回転機構1138は、駆動部1128を用いてロール軸を中心に撮像部1140及びレンズ装置1160を回転させる。
【0101】
制御部1112は、制御部1104からのジンバル1110の動作命令に応じて、ドライバ1114、ドライバ1116、及びドライバ1118に対して、それぞれの回転角度を示す動作命令を出力する。ドライバ1114、ドライバ1116、及びドライバ1118は、回転角度を示す動作命令に従って駆動部1124、駆動部1126、及び駆動部1128を駆動させる。回転機構1134、回転機構1136、及び回転機構1138は、駆動部1124、駆動部1126、及び駆動部1128によりそれぞれ駆動されて回転し、撮像部1140及びレンズ装置1160の姿勢を変更する。
【0102】
撮像部1140は、レンズ系1168を通過した光により撮像する。撮像部1140は、制御部1222、撮像素子1221及びメモリ1223を備える。制御部1222は、CPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。制御部1222は、レンズ系1168の合焦制御を行う。制御部1222は、制御部1104からの撮像部1140及びレンズ装置1160に対する動作命令に応じて、撮像部1140及びレンズ装置1160を制御する。制御部1222は、コントローラ50から受信した信号に基づいて、レンズ装置1160に対する制御命令をレンズ装置1160に出力する。制御命令は、フォーカシングを担うレンズ群を移動させる命令の他、レンズ系1168を振動させる命令、レンズ系1168の温度を検出する命令等を含んでよい。
【0103】
メモリ1223は、コンピュータが可読な記録媒体でよく、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。メモリ1223は、撮像部1140の筐体の内部に設けられてよい。撮像部1140の筐体から取り外し可能に設けられてよい。
【0104】
撮像素子1221は、撮像部1140の筐体の内部に保持され、レンズ装置1160を介して結像された光学像の画像データを生成して、制御部1222に出力する。撮像素子1221は、レンズ系1168により形成される光学像を電気信号に変換する。撮像素子1221は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等であってよい。撮像素子1221は、その撮像面がレンズ系1168の像面に一致するように配置される。レンズ系1168により撮像された像は撮像素子1221の撮像面上に結像し、撮像素子1221から画像データとして出力される。制御部1222は、撮像素子1221から出力された画像データに信号処理を施してメモリ1223に格納する。制御部1222は、画像データを、制御部1104を介してメモリ1106に出力して格納してもよい。
【0105】
レンズ装置1160は、制御部1162、メモリ1163、駆動機構1161、及びレンズ系1168を備える。レンズ系1168として、上記の実施形態及び実施例に係るレンズ系を適用できる。
【0106】
制御部1162は、制御部1222からの制御命令に従って、レンズ系1168を駆動してよい。駆動機構1161は、制御部1162からの制御命令に従って、レンズ系1168が備える1以上のレンズ群及び開口絞りを光軸方向に移動させることにより、レンズ系1168の焦点を調節してよい。駆動機構1161は、制御部1162からの制御命令に従って、レンズ系1168が備える開口絞りを制御してよい。駆動機構1161は、制御部1162からの制御命令に従って、レンズ系1168を振動させてよい。駆動機構1161は、例えばアクチュエータなどを備える。レンズ装置1160のレンズ系1168により結像された像は、撮像部1140により撮像される。
【0107】
レンズ装置1160は、撮像部1140と一体的に設けられてよい。レンズ装置1160は、いわゆる交換レンズであってよい。レンズ装置1160は、撮像部1140に対して着脱可能に設けられてよい。
【0108】
撮像装置1230は、制御部1232、制御部1234、撮像素子1231、メモリ1233、及びレンズ1235を備える。制御部1232は、CPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。制御部1232は、制御部1104からの撮像素子1231の動作命令に応じて、撮像素子1231を制御する。
【0109】
制御部1234は、CPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。制御部1234は、レンズ1235に対する動作命令に応じて、レンズ1235の焦点を調節してよい。制御部1234は、レンズ1235に対する動作命令に応じて、レンズ1235が有する開口絞りを制御してよい。
【0110】
メモリ1233は、コンピュータが可読な記録媒体であってよい。メモリ1233は、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。
【0111】
撮像素子1231は、レンズ1235を介して結像された光学像の画像データを生成して、制御部1232に出力する。制御部1232は、撮像素子1231から出力された画像データをメモリ1233に格納する。
【0112】
本実施形態では、UAV40が、制御部1104、制御部1112、制御部1222、制御部1232、制御部1234、及び制御部1162を備える。しかし、制御部1104、制御部1112、制御部1222、制御部1232、制御部1234、及び制御部1162のうちの複数で実行される処理をいずれか1つの制御部が実行してよい。制御部1104、制御部1112、制御部1222、制御部1232、制御部1234、及び制御部1162で実行される処理を1つの制御部で実行してもよい。本実施形態では、UAV40が、メモリ1106、メモリ1223、及びメモリ1233を備える。メモリ1106、メモリ1223、及びメモリ1233のうちの少なくとも1つに記憶される情報は、メモリ1106、メモリ1223、及びメモリ1233のうちの他の1つ又は複数のメモリに記憶してよい。
【0113】
撮像装置1220が上記の実施形態及び実施例に係るレンズ系を有するレンズ装置1160を備えることで、高画質で明るく広角撮影可能でありフォーカシングが高速な無人航空機を提供することができる。
【0114】
次に、上記の実施形態及び実施例に係るレンズ系を備えるシステムの一例としてのスタビライザを説明する。
【0115】
図9は、スタビライザ3000の一例を示す外観斜視図である。スタビライザ3000は、移動体の他の一例である。例えば、スタビライザ3000が備えるカメラユニット3013が、撮像装置1220と同様の構成の撮像装置を備えてよい。カメラユニット3013が、レンズ装置1160と同様の構成のレンズ装置を備えてよい。
【0116】
スタビライザ3000は、カメラユニット3013、ジンバル3020、及び持ち手部3003を備える。ジンバル3020は、カメラユニット3013を回転可能に支持する。ジンバル3020は、パン軸3009、ロール軸3010、及びチルト軸3011を有する。ジンバル3020は、パン軸3009、ロール軸3010、及びチルト軸3011を中心に、カメラユニット3013を回転可能に支持する。ジンバル3020は、支持機構の一例である。
【0117】
カメラユニット3013は、撮像装置の一例である。カメラユニット3013は、メモリを挿入するためのスロット3014を有する。ジンバル3020は、ホルダ3007を介して持ち手部3003に固定される。
【0118】
持ち手部3003は、ジンバル3020、カメラユニット3013を操作するための各種ボタンを有する。持ち手部3003は、シャッターボタン3004、録画ボタン3005、及び操作ボタン3006を含む。シャッターボタン3004が押下されることで、カメラユニット3013により静止画を記録することができる。録画ボタン3005が押下されることで、カメラユニット3013により動画を記録することができる。
【0119】
デバイスホルダ3001が持ち手部3003に固定されている。デバイスホルダ3001は、スマートフォンなどのモバイルデバイス3002を保持する。モバイルデバイス3002は、WiFiなどの無線ネットワークを介してスタビライザ3000と通信可能に接続される。これにより、カメラユニット3013により撮像された画像をモバイルデバイス3002の画面に表示させることができる。
【0120】
スタビライザ3000においても、カメラユニット3013が上記の実施形態に係るレンズ系を備えることで、高画質で明るく広角撮影可能でありフォーカシングが高速なスタビライザを提供することができる。
【0121】
以上、移動体の一例としてUAV40及びスタビライザ3000を取り上げて説明した。撮像装置1220と同様の構成を有する撮像装置は、UAV40及びスタビライザ3000以外の移動体に取り付けられてよい。
【0122】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0123】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【解決手段】レンズ系100は、物体側より順に、第1レンズ群G1、絞りS、正の第2レンズ群G2、負の第3レンズ群G3、正の第4レンズ群G4を備える。第1レンズ群の最も物体側には、物体側に凸面を向けた2枚の負のメニスカスレンズL1,L2が配置され、第3レンズ群は2枚以下のレンズL12、L13で構成され、第4レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズL14と負レンズL15を含み、最も像側に負レンズが配置される。無限遠から近距離被写体へのフォーカシングの際に、第3レンズ群が像側へ移動する。f1を第1レンズ群の焦点距離、f4を第4レンズ群の焦点距離、fを全系の焦点距離、vd1−2を第1レンズ群の2枚の負のメニスカスレンズのd線における平均アッベ数として、3.5<|f1/f|、2.1<f4/f<5、vd1−2>50、を満足する。