(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような吸塵ドリルの先端に設けられたビットの断面形状(平面形状)は、規則性のない複雑な星型の形状であり、そのビットが篏合するシャフトに設けられる凹部の形状は、ビットと同様に複雑な形状となっている。
したがって、このような複雑な形状を有する部品同士を篏合するためには、製造コストに影響する程の高い加工精度が要求される。
特に、直径6mm以下となるような小径の孔を穿孔する場合、特許文献1のような吸塵ドリルを適用することは想定されておらず、適用できたとしても、更なる高い加工精度が要求される。よって、製造コストが低減された吸塵ドリルが望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複雑な形状を伴わず、製造コストが低減できる吸塵ドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の吸塵ドリルは、吸引した切粉や粉塵等の通路となる吸引穴を軸の中心に有する中空筒状のドリル本体と、前記ドリル本体の先端部に固定されたドリルチップと、を備える吸塵ドリルであって、前記ドリル本体は、前記先端部を等幅で直径方向に横断するとともに先端面から前記軸方向に沿って切り欠かれた第1スリットと、前記先端部を等幅で直径方向に横断するとともに前記先端面から前記軸方向に沿って切り欠かれ、前記第1スリットと交差する第2スリットと、を有し、前記ドリルチップは、前記ドリル本体の先端部から突出し先端に切刃が形成された切刃部と、前記第1スリットに嵌った支持部と、を有し、前記第2スリットは、前記第1スリットよりも前記軸方向の深さが深く形成されており、前記吸塵ドリルは、前記支持部と前記第2スリットとの間に、前記吸引穴に連通する吸塵口を有する。
(2)上記(1)の構成において、前記ドリルチップは、前記第1スリットの幅と同じ寸法の略均一な厚さを有する平板状の主刃と、前記第2スリットの幅と同じ寸法の略均一な厚さを有する平板状の副刃と、前記主刃と前記副刃とが互いに交差するようにして形成された放射形状の断面と、を有し、前記主刃は、前記第1スリットに嵌っている。
(3)上記(2)の構成において、前記ドリルチップは、前記主刃と前記副刃とが互いに交差するようにして形成された十字形状の断面を有する。
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記副刃の幅は、前記ドリル本体の先端部の外径より小さく、前記副刃の外表面と前記第2スリットの内面とで吸塵口に連通する溝状の吸塵経路が形成されている。
(5)上記(2)から(4)のいずれかの構成において、前記主刃及び副刃の底面は同平面上にあり、前記主刃と前記第1スリットとの間は閉塞している。
(6)上記(2)から(5)のいずれかの構成において、前記ドリル本体は、前記先端部を直径方向に横断するとともに前記先端面から前記軸方向に沿って同幅に切り欠かれた第3スリットを更に有し、前記副刃は、前記第3スリットに嵌っている。
(7)上記(1)の構成において、前記ドリルチップは、前記第1スリットの幅と同じ寸法の略均一な厚さを有する平板状の主刃であり、前記主刃は、前記第1スリットに嵌っている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複雑な形状を伴わず、製造コストが低減できる吸塵ドリルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明を実施するための第1の形態(以下、第1実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号が付される。また、以下では、特に説明がない限り、ドリル本体10の軸方向X(
図1参照)におけるドリルチップ20側(
図1から
図7における左側)を先端側とし、シャンク30側(
図1から
図7における右側)を後端側とする。
【0009】
図1(a)は第1実施形態に係る吸塵ドリル100の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)におけるA部詳細図である。
本実施形態に係る吸塵ドリル100は、コンクリートや石材等の被切削体に対して、あと施工アンカーを施工する際の下孔を穿孔する際に、主に用いられ、発生する切粉や粉塵等を穿孔と同時に回収可能である。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、吸塵ドリル100は、吸引した切粉や粉塵等の通路となる吸引穴10aを軸の中心に有する中空筒状のドリル本体10と、ドリル本体10の先端部に固定されたドリルチップ20と、を備える。
吸引穴10aの内径は、後述する吸塵口Wの内形状における最大寸法よりも大きいことが好ましい。これにより、吸塵口Wを通過できないような大きな切粉や粉塵等は、被切削体とドリルチップ20との間に留まり、主刃21や副刃22によって再び刻まれて小さくなる機会が与えられるので、大きな切粉や粉塵等が吸引穴10aの内部に詰まってしまうことを抑制できる。
【0010】
ドリル本体10は、後端部に、吸塵ドリル100に対して回転力や衝撃力を与える電動ドリル装置(不図示)のチャックに装着されるシャンク30を有する。ドリル本体10とシャンク30とは組み合わされて一体となっており、全体が棒状となっている。なお、ドリル本体10とシャンク30とは一体成形されてもよい。
【0011】
また、ドリル本体10は、吸引穴10aと連通して側壁に開口する横穴を有し、その横穴とホース50の内腔とが連通している。ドリル本体10とホース50とは、T字状の継手40によって接続される。
【0012】
ドリル本体10は、先端部を等幅b1で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれた第1スリット11と、先端部を等幅b2で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11と交差する第2スリット12と、を有する。第1スリット11及び第2スリット12は、それぞれが等幅b1又は等幅b2で切り欠かれているので、それぞれのスリットを加工する際に、幅b1又は幅b2と略同厚の軸方向Xに対して垂直な軸を中心に回転する回転カッタ等で加工でき、又は、軸方向Xを中心に回転するエンドミル等をドリル本体10の先端部に対して直径方向に直線的に移動するだけで簡単に加工できる。なお、幅b1と幅b2とは、同寸法であってよい。
【0013】
また、第2スリット12における軸方向Xの深さL2は、第1スリット11における軸方向Xの深さL1よりも深くなっている。すなわち、第2スリット12は、第1スリット11よりも軸方向Xの深さが深く形成されている。これにより、ドリルチップ20の後端面20rと第1スリット11の底面とが接するように組み合わせるだけで、第2スリット12とドリルチップ20との間に、吸塵口Wを形成できる。
【0014】
ドリルチップ20は、ドリル本体10の先端部から突出し、先端に切刃23が形成された切刃部(
図2(b)における左側部)と、第1スリット11に嵌った支持部20s(
図2(b)における右側部)と、を有する。
【0015】
吸塵ドリル100は、ドリルチップ20の支持部20sとドリル本体10の第2スリット12との間に、吸引穴10aに連通する吸塵口Wを有する。
そして、孔を穿孔する際に発生した切粉や粉塵等は、吸引装置(不図示)による吸引力により、
図1(b)において矢印で示すように、吸塵口Wを通って、吸引穴10a及びホース50の内腔を伝って吸引され、吸引装置の集塵部に至る。よって、切粉や粉塵等が施工場所の周囲に飛散することを抑制できる。
【0016】
次に、吸塵ドリル100の先端部の構造を、
図2及び
図3を用いて、更に詳細に説明する。
図2は、第1実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の分解図であり、(1)は左から順に、(a)ドリルチップ20の正面図、(b)ドリルチップ20の側面図、(c)ドリル本体10の正面図、(d)ドリル本体10の側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として45°回転させた図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として90°回転させた図である。
図3は、第1実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の組立図であり、(1)は左から順に、(a)正面図、(b)側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として45°回転させた図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として90°回転させた図である。
【0017】
ドリルチップ20は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、ドリル本体10の先端部に設けられた第1スリット11の幅b1と同じ寸法の略均一な厚さt1を有する平板状の主刃21と、第2スリット12の幅b2と同じ寸法の略均一な厚さt2を有する平板状の副刃22と、主刃21と副刃22とが互いに交差するようにして形成されて放射形状の断面(
図2(b)参照)と、を有する。
【0018】
主刃21の直径方向の寸法である幅B1は、ドリル本体10の先端部の外径φDより大きくなっている。これにより、主刃21の幅B1に対応する寸法の直径を有する孔を、被切削体に対して開けることができる。
このように、ドリルチップ20は、主刃21と副刃22とで放射形状の断面となっているので、主刃21で被切削体を削って際に生じた切粉や粉塵等を、後続の副刃22で細かく刻むことで切粉や粉塵等の単体の重量及び体積を小さくでき、吸塵口Wや吸引穴10aで詰まることを抑制でき、吸引しやすくできる。
【0019】
ドリルチップ20は、主刃21と副刃22とが互いに交差するようにして形成された十字形状の断面を有する。これにより、ドリルチップ20の剛性を確保できるとともに、ドリル本体10の隣接する各スリット間の支柱部におけるせん断面積(軸に垂直な面積)を確保でき、ドリルチップ20に作用する回転モーメントに対して抵抗して確実に支持できる。
なお、主刃21や副刃22の数は多いほど、一回転当たりの細かく刻む効率が向上して好ましいが、ドリル本体10の先端部における狭いスペースに密集すればするほど、ドリルチップ20とドリル本体10との接合部の強度確保が困難になるので、現実的には、主刃21及び副刃22の合計で4枚程度が限度である。なお、放射形状であれば、更に主刃21又は副刃22を追加してよく、例えば、主刃21及び副刃22をそれぞれ十字形状の断面にして、両者を互いに45°ずらして重ねて八方に放射する形状としてもよい。
【0020】
そして、ドリルチップ20とドリル本体10とを組み立てると、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ドリルチップ20の主刃21は、ドリル本体10の第1スリット11に嵌った状態になる。なお、この状態で、ろう付けや熱融着や接着等による適宜の固着手段によってドリルチップ20と第1スリット11とを固定する。このような構造とすることで、ドリルチップ20に対して回転モーメントが作用しても、ドリルチップ20の主刃21及び副刃22を、ドリル本体10の隣接するスリット間の支柱部によって確実に支持できる。なお、ドリルチップ20における主刃21や副刃22の厚さt1や厚さt2よりも吸引穴10aの内径の方が大きいと、主刃21及び副刃22の交差部とドリル本体10の吸引穴10aとの間に隙間が生じる場合があるが、ろう付け等によって、この隙間は塞がれてもよく、この結果、吸引穴10aがドリル本体10の先端面10fにおいて開口しなくてもよい。
【0021】
副刃22の直径方向の寸法である幅B2は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ドリル本体10の先端部の外径φDより小さくすることが好ましい。そうすると、副刃22の外表面22sと第2スリット12の内面とで吸塵口Wに連通する溝状の吸塵経路K(
図1(b)及び
図3参照)が形成される。この吸塵経路Kにより、ドリル本体10の先端側で生じた切粉や粉塵等が吸塵口Wに円滑に移動することができ、切粉や粉塵等をより確実に吸引しながら被切削体を穿孔できる。なお、副刃22の直径方向の寸法である幅B2は、主刃21の直径方向の寸法である幅b1と同じとしてよく、主刃21の幅B1と同様に、ドリル本体10の先端部の外径φDより大きくしてもよい。このようにしても、吸塵口Wが確保されているので、切粉や粉塵等を吸引しながら穿孔できる。
【0022】
主刃21及び副刃22の後端面20r(
図2(b)参照)は同平面上にあり、主刃21と第1スリット11との間は閉塞している。このように、主刃21及び副刃22の後端面20rは同平面上にあるので、主刃21の後端面20rと第1スリット11との間が閉塞するように組み合わせると、副刃22の後端面20rと第2スリット12との間に吸塵口Wが形成される。よって、吸塵口Wを設けるための特別な加工を別途必要としないので、製造コストを低減できる。
【0023】
(第2実施形態)
以下、主に
図4及び
図5を参照して本発明を実施するための第2の形態(以下、第2実施形態)について詳細に説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、ドリルチップ20の形状が異なるので、その部分を中心に説明するが、第1実施形態と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0024】
図4は、第2実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の分解図であり、(1)は左から順に、(a)ドリルチップ20の正面図、(b)ドリルチップ20の側面図、(c)ドリル本体10の正面図、(d)ドリル本体10の側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として45°回転させた図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として90°回転させた図である。
図5は、第2実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の組立図であり、(1)は左から順に、(a)正面図、(b)側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として45°回転させた図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として90°回転させた図である。
【0025】
図4(c)及び
図4(d)に示すように、ドリル本体10は、第1実施形態に係るドリル本体10と同様に、先端部を等幅b1で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれた第1スリット11と、先端部を等幅b2で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11と交差する第2スリット12と、を有する。
【0026】
また、第2スリット12における軸方向Xの深さL2は、第1スリット11における軸方向Xの深さL1よりも深くなっている。すなわち、第2スリット12は、第1スリット11よりも軸方向Xの深さが深く形成されている。これにより、ドリルチップ20の後端面20rと第1スリット11の底面とが接するように組み合わせるだけで、第2スリット12とドリルチップ20との間に、吸塵口Wを形成できる。
【0027】
ドリルチップ20は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1スリット11の幅b1と同じ寸法の略均一な厚さt1を有する平板状の主刃21であり、すなわち、副刃22を有さないものである。
【0028】
そして、ドリルチップ20とドリル本体10とを組み立てると、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、主刃21は、ドリル本体10の第1スリット11に嵌った状態になる。なお、この状態で、ろう付けや熱融着や接着等による適宜の固着手段によってドリル本体10と第1スリット11とを固定する。
【0029】
このように、第2実施形態に係る吸塵ドリル100は、ドリル本体10が第1スリット11及び第2スリット12を有する一方で、ドリルチップ20が平板状の主刃21であるので、主刃21であるドリルチップ20がドリル本体10の第1スリット11に嵌っても、ドリルチップ20の支持部20sと第2スリット12との間に吸塵口W(
図5(b)参照)が形成される。
【0030】
また、第2実施形態に係る吸塵ドリル100は、吸塵口Wからドリル本体10の先端側に連通する吸塵経路Kのスペースを大きく確保できるので、穿孔によって生じる切粉や粉塵等をより効果的に吸引できる。
【0031】
主刃21の後端面20r(
図4(b)参照)は平坦であるので、後端面20rと第1スリット11の底面とが接すると、主刃21と第1スリット11との間は閉塞する。このように、主刃21の後端面20rと第1スリット11との間が閉塞するように組み合わせると、主刃21の後端面20rと第2スリット12との間に吸塵口Wが形成される。よって、吸塵口Wを設けるための特別な加工を別途必要としないので、製造コストを低減できる。
【0032】
(第3実施形態)
以下、主に
図6及び
図7を参照して本発明を実施するための第3の形態(以下、第3実施形態)について詳細に説明する。第3実施形態は、第1実施形態と比べて、ドリルチップ20の形状及びドリル本体10の形状が異なるので、その部分を中心に説明するが、第1実施形態と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0033】
図6は、第3実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の分解図であり、(1)は左から順に、(a)ドリルチップ20の正面図、(b)ドリルチップ20の側面図、(c)ドリル本体10の正面図、(d)ドリル本体10の側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として45°回転させた図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として90°回転させた図である。
図7は、第3実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の組立図であり、(1)は左から順に、(a)正面図、(b)側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として45°回転させた図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として90°回転させた図である。
【0034】
図6(c)及び
図6(d)に示すように、ドリル本体10は、第1実施形態に係るドリル本体10と比べてスリットの数が一つ多く形成されている。
具体的には、先端部を等幅b1で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれた第1スリット11と、先端部を等幅b2で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11と交差する第2スリット12と、先端部を等幅b3で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11及び第2スリット12と交差する第3スリット13と、を有する。なお、ドリル本体10には、先端部を等幅で直径方向に横断するとともに軸方向Xに沿って切り欠かれた第4スリット(不図示)を更に追加してもよい。
【0035】
また、第2スリット12における軸方向Xの深さL2は、第1スリット11における軸方向Xの深さL1及び第3スリット13における軸方向Xの深さL3よりも深くなっている。すなわち、第2スリット12は、第1スリット11及び第3スリット13よりも軸方向Xの深さが深く形成されている。これにより、ドリルチップ20の後端面20rと第1スリット11の底面及び第3スリット13の底面とが接するように組み合わせるだけで、第2スリット12とドリルチップ20との間に、吸塵口Wを形成できる。
【0036】
ドリルチップ20は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、ドリル本体10の先端部に設けられた第1スリット11の幅b1と同じ寸法の略均一な厚さt1を有する平板状の主刃21と、第3スリット13の幅b3と同じ寸法の略均一な厚さt2を有する平板状の副刃22と、主刃21と副刃22とが互いに交差するようにして形成された放射形状である十字形状の断面(
図6(b)参照)と、を有する。
主刃21の直径方向の寸法である幅B1は、ドリル本体10の先端部の外径φDより大きくなっている。
【0037】
そして、ドリルチップ20とドリル本体10とを組み立てると、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ドリルチップ20の主刃21は、ドリル本体10の第1スリット11に嵌った状態になる。また、ドリルチップ20の副刃22は、ドリル本体10の第3スリット13に嵌った状態になる。なお、この状態で、ろう付けや熱融着や接着等による適宜の固着手段によってドリルチップ20と第1スリット11とを固定する。
【0038】
主刃21及び副刃22の後端面20r(
図6(b)参照)は同平面上にあり、主刃21と第1スリット11との間及び副刃22と第3スリット13との間は閉塞している。このように、主刃21及び副刃22の後端面20rは同平面上にあり、主刃21の後端面20rと第1スリット11との間及び副刃22の後端面20rと第3スリット13との間が閉塞するように組み合わされても、ドリルチップ20の後端面20rと第2スリット12との間に吸塵口Wが形成される。
【0039】
(第4実施形態)
以下、主に
図8及び
図9を参照して本発明を実施するための第4の形態(以下、第4実施形態)について詳細に説明する。第4実施形態は、第3実施形態と比べて、ドリル本体10の形状が異なるので、その部分を中心に説明するが、第3実施形態と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0040】
図8は、第4実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の分解図であり、(1)は左から順に、(a)ドリルチップ20の正面図、(b)ドリルチップ20の側面図、(c)ドリル本体10の正面図、(d)ドリル本体10の側面図であり、(2)は(1)におけるα矢視図であり、(3)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として−45°回転させた図であり、(4)は(3)におけるβ矢視図である。
図9は、第4実施形態に係る吸塵ドリル100における先端部の組立図であり、(1)は左から順に、(a)正面図、(b)側面図であり、(2)は(1)を基準にドリル本体10の軸を中心として−45°回転させた図である。
【0041】
図8(c)及び
図8(d)に示すように、ドリル本体10は、第3実施形態に係るドリル本体10と同様に、スリットが三つ形成されている。
具体的には、先端部を等幅b1で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれた第1スリット11と、先端部を等幅b2で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11と交差する第2スリット12と、先端部を等幅b3で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11及び第2スリット12と交差する第3スリット13と、を有する。なお、ドリル本体10には、先端部を等幅で直径方向に横断するとともに軸方向Xに沿って切り欠かれた第4スリット(不図示)を更に追加してもよい。
【0042】
また、第2スリット12における軸方向Xの深さL2は、第1スリット11における軸方向Xの深さL1及び第3スリット13における軸方向Xの深さL3よりも深くなっている。すなわち、第2スリット12は、第1スリット11及び第3スリット13よりも軸方向Xの深さが深く形成されている。これにより、ドリルチップ20の後端面20rと第1スリット11の底面及び第3スリット13の底面とが接するように組み合わせるだけで、第2スリット12とドリルチップ20との間に、吸塵口Wを形成できる。
【0043】
さらに、第2スリット12は、
図8(4)に示すように、曲率半径Rが20mmから40mm程度の範囲となる円弧面状の底面12rを有する。この円弧面状の底面12rを有する第2スリット12は、曲率半径Rと同等の半径Rを有する回転カッタによって簡単に形成できる。
そして、吸塵ドリル100は、
図9(1)及び
図9(2)に示すように、ドリルチップ20の支持部20s(不図示)と第2スリット12との間に、吸引穴10aに連通する吸塵口Wを有し、吸塵口Wに連通する溝状の吸塵経路Kを有する。言い換えると、吸引穴10aと連通し、吸塵経路Kと連通するスリットは、R形状を持って加工されている。この吸塵経路Kにより、ドリル本体10の先端側で生じた切粉や粉塵等が吸塵口Wに円滑に移動することができ、切粉や粉塵等をより確実に吸引しながら被切削体を穿孔できる。
【0044】
このように、第4実施形態における第2スリット12は、円弧面状の底面12rを有するので、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態における第2スリット12のような軸方向Xに対して略直交する底面を有するドリル本体10に比べて、切粉や粉塵等を吸塵口Wに導く間口(軸方向Xの範囲)を広く確保しつつ、吸引穴10aに至る手前に狭隘な箇所を形成できるので、切粉や粉塵等の効率良く吸塵できるとともに、比較的大きな寸法の切粉や粉塵等が吸引穴10aの内部で詰まることがなく、手入れがしやすい。
また、第2スリット12を異なる二方向から順に加工することで、ドリル本体10における第1スリット11や第3スリット13等の他のスリットとの交差部における薄肉部の加工応力を高めずに加工でき、加工応力によって変形してしまうことを抑制できる。
【0045】
なお、このような円弧面状の底面12rを有する第2スリット12は、第3実施形態におけるドリル本体10に限らず、第1実施形態や第2実施形態におけるドリル本体10における第2スリット12に適用してもよい。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る吸塵ドリル100は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、主刃21と第1スリット11との間が閉塞している形態(第1実施形態及び第2実施形態)や副刃22と第3スリット13との間が閉塞している形態(第3実施形態)を示したが、これに限らず、主刃21と第1スリット11との間に、ドリルチップ20の支持部20sと第2スリット12との間の吸塵口Wとは別に、吸引穴10aに連通する隙間を設けてもよい。すなわち、ドリルチップ20の各刃(主刃21、副刃22及びその他の刃)の後端面20rと各スリット(第1スリット11、第2スリット12、第3スリット13及びその他のスリット)との間の全てに、吸引穴10aに連通する隙間を設けてもよい。これにより、吸塵口Wに加えて、この隙間からも切粉や粉塵等とともに空気を吸引できるので、多方向からの空気流を生じさせることができ、吸塵効果が高まる。
【0048】
本発明によれば、ドリル本体10は、先端部を等幅b1で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれた第1スリット11と、先端部を等幅b2で直径方向に横断するとともに先端面10fから軸方向Xに沿って切り欠かれ、第1スリット11と交差する第2スリット12と、を有し、ドリルチップ20は、ドリル本体10の先端部から突出し先端に切刃23が形成された切刃部と、第1スリット11に嵌った支持部20sと、を有し、第2スリット12は、第1スリット11よりも軸方向Xの深さが深く形成されており、吸塵ドリル100は、支持部20sと第2スリット12との間に、吸引穴10aに連通する吸塵口Wを有するので、ドリルチップ20の形状及び構造が単純となって加工がしやすく、スリットを含むドリル本体10における先端部の形状及び構造が単純となって加工がしやすい。また、ドリルチップ20及びドリル本体10が、それぞれ複雑な形状を伴わないので、加工精度が高くなくても、互いに篏合しやすく、組み立てやすい。よって、ドリルチップ20及びドリル本体10のそれぞれの製造時のコストを低減できるとともに、組み立て時のコストをも低減でき、トータルの製造コストを低減できる。特に、直径6mm以下となるような小径の孔を穿孔するための小径の吸塵ドリル100として適用する際は、製造コストを顕著に低減できる。