(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6911273
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】空圧式トリップ弁の部分ストローキング装置
(51)【国際特許分類】
F01D 21/16 20060101AFI20210715BHJP
F15B 11/06 20060101ALI20210715BHJP
F15B 15/22 20060101ALI20210715BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
F01D21/16
F15B11/06 C
F15B15/22 Z
F16K31/122
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-535906(P2017-535906)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-536788(P2018-536788A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】US2016053766
(87)【国際公開番号】WO2017058726
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年9月25日
(31)【優先権主張番号】62/236,481
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/272,871
(32)【優先日】2016年9月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506322271
【氏名又は名称】エリオット・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】パセリ,ウィリアム,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,ジェームズ,エフ.
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−193502(JP,A)
【文献】
実開昭48−036418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 21/16
F15B 11/06
F15B 15/22
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン用の空圧式トリップシステムであって:
タービン流路に作動的に関連付けられた弁部材であって、前記タービン流路を閉じて前記タービン流路を通る流体の流れを妨げるために前記タービン流路に係止するように作動する弁部材と;
前記弁部材に結合された弁棒であって、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する開位置と、前記タービン流路を通る流体の流れを妨げる閉位置と、の間で前記弁部材を移動させるように構成された弁棒と;
前記弁棒に作動的に結合されたアクチュエータ組立体とを備え;
前記アクチュエータ組立体は、
シリンダと、
前記弁棒に作動的に結合されたピストンであって、前記シリンダ内に移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、
前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設された付勢要素であって、前記ピストンに係止して前記弁棒と前記弁部材とを前記閉位置に向けて付勢するために前記ピストンを係止している付勢要素と、
前記シリンダの前記第2のチャンバに連通する空圧回路と、
前記シリンダの前記第1のチャンバを加圧するように構成された空圧機構とを有し;
前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させ、
前記空圧機構は、前記第1のポートを介して前記シリンダの前記第1のチャンバに連通し、かつ、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記第1のチャンバを加圧するように構成されると共に、前記付勢要素により付勢される中、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置まで動かすことを許容するために前記シリンダの前記第1のチャンバの圧力を開放するように構成され、
前記シリンダは第2のポートを含み、前記第2のポートは、前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させ、
前記空圧回路は、前記第1のチャンバが前記空圧機構によって加圧されている間、前記開位置と前記閉位置との間の試行位置まで前記弁棒及び前記弁部材を動かすために前記ピストンを作動させるように前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように構成され、前記弁部材は、前記試行位置で前記タービン流路を通る流体の流れを許容するように構成され、
前記空圧機構は、前記ピストンが、前記弁棒及び前記弁部材の前記閉位置に対応する第2の位置に移動できるように、前記空圧回路から独立して作動するように構成され、
前記空圧回路は、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達すると前記第2のチャンバの加圧を停止し、前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に保持するように前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように構成され、
前記空圧回路は、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に動かしたときに前記ピストンにより作動されるリミットスイッチを備え、前記リミットスイッチは、前記シリンダ上の中間位置に設けられ、前記中間位置は前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達したときの前記ピストンの位置であり、前記リミットスイッチは、前記ピストンによって作動したときに、前記空圧回路に前記第2のチャンバの加圧を停止させて前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように構成された、
空圧式トリップシステム。
【請求項2】
前記空圧回路は第1のソレノイド及び第2のソレノイドを備え、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が作動しているときに、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように駆動され、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置にあるときに、前記第2のチャンバの加圧を停止して前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように駆動され、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が解除されているときに、前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように駆動される、
請求項1に記載の空圧式トリップシステム。
【請求項3】
前記空圧回路は、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように前記空圧回路を起動すると共に前記第2のチャンバの圧力を解放するように前記空圧回路を解除するように構成された起動スイッチを備える、
請求項1に記載の空圧式トリップシステム。
【請求項4】
前記起動スイッチは、手動の回転スイッチに接続されていて、前記手動の回転スイッチを作動させることを介して起動する、
請求項3に記載の空圧式トリップシステム。
【請求項5】
前記付勢要素は圧縮ばねを備える、
請求項1に記載の空圧式トリップシステム。
【請求項6】
空圧式トリップシステム用のアクチュエータ組立体であって、
シリンダと、
トリップ弁に結合されるように構成されたピストンであって、前記シリンダ内で前記トリップ弁の開位置に対応する第1の位置と前記トリップ弁の閉位置に対応する第2の位置との間を移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、
前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設された付勢要素であって、前記第2の位置に向けて前記ピストンを付勢するために前記ピストンを係止している付勢要素と、
前記シリンダの前記第2のチャンバに連通する空圧回路と、
前記シリンダの前記第1のチャンバを加圧するように構成された空圧機構とを備え、
前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンを前記第1の位置にとどめるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させ、
前記空圧機構は、前記第1のポートを介して前記シリンダの前記第1のチャンバに連通し、かつ、前記ピストンを前記第1の位置で保持するために前記第1のチャンバを加圧するように構成されると共に、前記付勢要素により付勢される中、前記ピストンが前記第2の位置まで動くことを許容するために前記シリンダの前記第1のチャンバの圧力を開放するように構成され、
前記シリンダは、第2のポートを含み、前記第2のポートは前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させ、
前記空圧回路は、前記第1のチャンバが前記空圧機構によって加圧されている間、前記ピストンを、前記第1の位置と前記第2の位置との間の、前記トリップ弁の試行位置に対応する中間位置まで移動させるために前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように構成され、
前記空圧機構は、前記ピストンが前記第2の位置に移動できるように前記空圧回路から独立して作動するように構成され、
前記空圧回路は、前記ピストンが前記中間位置に達すると前記第2のチャンバの加圧を停止し、前記ピストンを前記中間位置に保持するように前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように構成され、
前記空圧回路は、前記ピストンが前記中間位置に到達したときに前記ピストンにより作動されるリミットスイッチを備え、前記リミットスイッチは、前記シリンダ上の前記中間位置に設けられ、前記ピストンによって作動したときに、前記空圧回路に前記第2のチャンバの加圧を停止させて前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように構成された、
アクチュエータ組立体。
【請求項7】
前記空圧回路は第1のソレノイド及び第2のソレノイドを備え、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が作動しているときに、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように駆動され、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記ピストンが前記中間位置に到達したときに、前記第2のチャンバの加圧を停止して前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように駆動され、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が解除されているときに、前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように駆動される、
請求項6に記載のアクチュエータ組立体。
【請求項8】
前記空圧回路は前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように前記空圧回路を起動すると共に前記第2のチャンバの圧力を解放するように前記空圧回路を解除するように構成された起動スイッチを備える、
請求項6に記載のアクチュエータ組立体。
【請求項9】
前記起動スイッチは、手動の回転スイッチに接続されていて、前記手動の回転スイッチを作動させることを介して起動する、
請求項8に記載のアクチュエータ組立体。
【請求項10】
前記付勢要素は圧縮ばねを備える、
請求項6に記載のアクチュエータ組立体。
【請求項11】
タービン用の空圧式トリップシステムのトリップ弁を試行する方法であって、前記トリップ弁は、タービン流路に作動的に関連付けられた弁部材と、前記弁部材に結合された弁棒とを備え、前記弁部材は、前記タービン流路を閉じて前記タービン流路を通る流体の流れを妨げるために前記タービン流路に係止するように作動するように構成され、前記方法は、
前記弁棒に作動的に結合されたアクチュエータ組立体を提供するステップを備え、
前記アクチュエータ組立体は、
シリンダと、
前記シリンダ内に移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、
前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設され、前記ピストンを係止している付勢要素と、
前記シリンダの前記第2のチャンバと連通する空圧回路と、
前記シリンダの前記第1のチャンバを加圧するように構成された空圧機構とを有し、
前記ピストンは、前記弁棒及び前記弁部材を、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する開位置と、前記タービン流路を通る流体の流れを妨げる閉位置との間で移動させるように、前記弁棒に作動的に結合され、
前記付勢要素は、前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置に向けて付勢するように前記ピストンを係止し、
前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させ、
前記シリンダは第2のポートを含み、前記第2のポートは、前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させ、
前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバを前記空圧機構で加圧するステップと、
前記付勢要素により付勢される中、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置まで動かすことを許容するために前記シリンダの前記第1のチャンバの圧力を前記空圧機構で開放するステップと、
前記第1のチャンバが前記空圧機構によって加圧されている間、前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置と前記閉位置との間の試行位置まで動かすために、前記ピストンを作動させるように前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するために前記空圧回路を起動するステップと、
前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達したときに前記第2のチャンバの加圧を停止しつつ、前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に保つために前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように前記空圧回路を起動するステップと、
前記弁棒及び前記弁部材が前記開位置まで戻ることを許容するように前記第2のチャンバの圧力を開放するために前記空圧回路を解除するステップとをさらに備え、
前記弁部材は、前記試行位置で、前記タービン流路を通る流体の流れを許容し、
前記空圧機構は、前記ピストンが、前記弁棒及び前記弁部材の前記閉位置に対応する第2の位置に移動できるように、前記空圧回路から独立して作動するように構成され、
前記空圧回路は、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に動かしたときに前記ピストンにより作動されるリミットスイッチを備え、前記リミットスイッチは、前記シリンダ上の中間位置に設けられ、前記中間位置は前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達したときの前記ピストンの位置であり、前記リミットスイッチは、前記ピストンによって作動したときに、前記空圧回路に前記第2のチャンバの加圧を停止させて前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように構成された、
方法。
【請求項12】
前記空圧回路は第1のソレノイド及び第2のソレノイドを備え、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が作動しているときに、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように駆動され、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置にあるときに、前記第2のチャンバの加圧を停止して前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように駆動され、
前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が解除されているときに、前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように駆動される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記空圧回路は、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように前記空圧回路を起動すると共に前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように前記空圧回路を解除するように構成された起動スイッチを備える、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/263,481号及び2016年9月22日に出願された米国実用特許出願第15/272,871号に基づく優先権を主張し、当該米国特許出願のすべての記載内容を援用する。
【0002】
本発明は、一般に、蒸気タービン用の空圧式トリップシステムに関し、特に、蒸気タービンを止めずに空圧回路を介してトリップ弁を試行する(試しに動かす)アクチュエータ組立体を含む空圧式トリップシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
蒸気タービン用のトリップ弁は、緊急時に急速に閉じてタービンへの蒸気の流れを遮断しなければならない安全装置である。通常、タービンは止めることなく長期にわたり運転されるので、そのような期間、通常、トリップ弁は開位置をとり続ける。トリップ弁がそのような期間、開位置をとり続けた場合、蒸気室のトリップ弁組立体内の弁棒とブッシュとの間にスケール及び腐食が堆積することが多い。このスケール及び腐食は、トリップ弁を完全に固め、緊急時の適切な作動を妨げることがある。
【0004】
空圧式トリップシステムは、蒸気タービンにとって極めて重要な安全機能を提供する。安全で信頼性のある設備稼働を確保するには、適切なメンテナンスと検査が必要である。しかし、そうであっても、機械的トリップシステムの多くは、推奨されているほどの頻度で検査されていない。
【0005】
通常、トリップ弁が作動可能状態にあると判定するには、トリップ弁の完全な閉鎖、すなわち開閉位置間での完全な弁作動が必要である。このように完全に閉じることにより、タービン及び被駆動装置は完全に停止し、それにより蒸気タービンの作動は中断させられる。入手可能なRCS(冗長化制御システム)は、電磁弁を試行する手段を提供するが、トリップ弁を試行しない。
【発明の概要】
【0006】
概ね、トリップ弁を閉じる必要もなく、かつ、タービンの作動に影響を及ぼすこともなく、トリップ弁が完全に固まらないようにする装置及び方法を提供する。この装置及び方法は、トリップ弁がスケール及び腐食により完全に固まらないようにする。
【0007】
本開示の一つの実施の形態又は態様によれば、トリップ弁とブッシュとの間にスケールの堆積及び腐食の進行がないようにトリップ弁をわずかに動かしてトリップ弁を定期的に作動させる装置及び方法が提供される。トリップ弁を定期的に作動させる工程は、トリップ弁が作動可能な状態にあることを示す。他方、トリップ弁が完全に固まった状態になった場合又は作動不能になった場合、この装置及び方法は、そのような状態を識別し、緊急事態に陥る前にトリップ弁を修理できる。
【0008】
この装置及び方法は、トリップ弁システムの主たる作動を妨げずにトリップ弁を試行するフェールセーフプロセスを提供する。この装置は、トリップ弁を試行する従たる作動の間、トリップ弁を作動及び閉にし続けることになる。この装置は、電気的に駆動される空圧装置を含み、この空圧装置が一貫した信頼性をもたらす。この装置は、コスト効果が高く、現行の空圧式過回転トリップシステム(空圧式オーバースピードトリップシステム)の環境要件及び認可要件に適合する。
【0009】
本開示の別の実施の形態又は態様によれば、部分ストローク作動による空圧式トリップシステムが提供される。このシステムは、新たな設備と一緒に用いても、後付けで設けてもよい。このシステムは、タービンの作動あるいはその遮断能力を妨げずに、トリップ弁を定常的に試行する安全で効果的な方策を提供する。このシステムは、トリップ弁の部分ストロークを数秒以内に完了し、オペレータは装置が適切に働いているか又は注意が必要かを判定できる。このシステムは、タービンの信頼性を高めるとともに、トリップ弁が適切に機能することを保証する。タービンのオペレータは、分散制御システム(DCS)を介して現場でも遠隔場所でも、この部分ストロークを始めることができる。このシステムは、どちらの用途にも適合する標準的ハードウェアが装備され、部分ストロークシステムをどの設備構成にも適応できるような融通性が得られる。このシステムは、安全性及び信頼性を高め、タービンのメンテナンスに及ぼす影響を最小限にとどめるとともに、耐久性及びコスト効果も高い。このシステムは、空圧式オーバースピードトリップシステムとは別に作動させることができる。
【0010】
本開示の一つの好ましい限定されない実施の形態又は態様によれば、タービン用の空圧式トリップシステムが提供される。そのシステムは、タービン流路に作動的に関連付けられた弁部材であって、前記タービン流路を閉じて前記タービン流路を通る流体の流れを妨げるために前記タービン流路に係止するように作動する弁部材と;前記弁部材に結合された弁棒であって、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する開位置と、前記タービン流路を通る流体の流れを妨げる閉位置と、の間で前記弁部材を移動させるように構成された弁棒と;前記弁棒に作動的に結合されたアクチュエータ組立体とを含む。アクチュエータ組立体は、シリンダと、前記弁棒に作動的に結合されたピストンであって、前記シリンダ内に移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設された付勢要素であって、前記ピストンに係止して前記弁棒と前記弁部材とを前記閉位置に向けて付勢するために前記ピストンを係止している付勢要素と、前記シリンダの前記第2のチャンバに連通する空圧回路とを含む。前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させる。前記シリンダは第2のポートを含み、前記第2のポートは、前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させる。前記空圧回路は、前記第1のチャンバが加圧されている間、前記開位置と前記閉位置との間の試行位置まで前記弁棒及び前記弁部材を動かすために前記ピストンを作動させるように前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように構成され、前記弁部材は、前記試行位置で前記タービン流路を通る流体の流れを許容するように構成されている。
【0011】
本開示の別の好ましい限定されない実施の形態又は態様によれば、空圧式トリップシステム用のアクチュエータ組立体が提供される。アクチュエータ組立体は、シリンダと、トリップ弁に結合されるように構成されたピストンであって、前記シリンダ内で前記トリップ弁の開位置に対応する第1の位置と前記トリップ弁の閉位置に対応する第2の位置との間を移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設された付勢要素であって、前記第2の位置に向けて前記ピストンを付勢するために前記ピストンを係止している付勢要素と、前記シリンダの前記第2のチャンバに連通する空圧回路とを含む。前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンを前記第1の位置にとどめるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させる。前記シリンダは、第2のポートを含み、前記第2のポートは前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させる。前記空圧回路は、前記第1のチャンバが加圧されている間、前記ピストンを、前記第1の位置と前記第2の位置との間の、前記トリップ弁の試行位置に対応する中間位置まで移動させるために前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように構成されている。
【0012】
本開示の別の好ましい限定されない実施の形態又は態様によれば、タービン用空圧式トリップシステムのトリップ弁を試行する方法が提供される。トリップ弁は、タービン流路に作動的に関連付けられた弁部材と、前記弁部材に結合された弁棒とを含む。前記弁部材は、前記タービン流路を閉じて前記タービン流路を通る流体の流れを妨げるために前記ダービン流路に係止するように作動するように構成されている。前記の方法は、前記弁棒に作動的に結合されたアクチュエータ組立体を提供するステップを含む。アクチュエータ組立体は、シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設され、前記ピストンを係止している付勢要素と、前記シリンダの前記第2のチャンバと連通する空圧回路とを含む。前記ピストンは、前記弁棒及び前記弁部材を、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する開位置と、前記タービン流路を通る流体の流れを妨げる閉位置との間で移動させるように、前記弁棒に作動的に結合される。前記付勢要素は、前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置に向けて付勢するように前記ピストンを係止する。前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させる。前記シリンダは第2のポートを含み、前記第2のポートは、前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させる。前記の方法は、さらに、前記第1のチャンバが加圧されている間、前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置と前記閉位置との間の試行位置まで動かすために、前記ピストンを作動させるようにシリンダの第2のチャンバを加圧するために前記空圧回路を起動するステップと、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達したときに前記第2のチャンバの加圧を停止しつつ、前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に保つために前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように前記空圧回路を起動するステップと、前記弁棒及び前記弁部材が前記開位置まで戻ることを許容するように前記第2のチャンバの圧力を開放するために前記空圧回路を解除するステップとを含む。弁部材は、前記試行位置で、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する。
【0013】
限定されない好ましいさらなる実施の形態又は態様を、以下の番号を付した各項で述べる。
【0014】
項目1:タービン用の空圧式トリップシステムは、タービン流路に作動的に関連付けられた弁部材であって、前記タービン流路を閉じて前記タービン流路を通る流体の流れを妨げるために前記タービン流路に係止するように作動する弁部材と;前記弁部材に結合された弁棒であって、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する開位置と、前記タービン流路を通る流体の流れを妨げる閉位置と、の間で前記弁部材を移動させるように構成された弁棒と;前記弁棒に作動的に結合されたアクチュエータ組立体とを備え;前記アクチュエータ組立体は、シリンダと、前記弁棒に作動的に結合されたピストンであって、前記シリンダ内に移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設された付勢要素であって、前記ピストンに係止して前記弁棒と前記弁部材とを前記閉位置に向けて付勢するために前記ピストンを係止している付勢要素と、前記シリンダの前記第2のチャンバに連通する空圧回路とを有し;前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させ、前記シリンダは第2のポートを含み、前記第2のポートは、前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させ、前記空圧回路は、前記第1のチャンバが加圧されている間、前記開位置と前記閉位置との間の試行位置まで前記弁棒及び前記弁部材を動かすために前記ピストンを作動させるように前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように構成され、前記弁部材は、前記試行位置で前記タービン流路を通る流体の流れを許容するように構成されている。
【0015】
項目2:項目1に準ずる空圧式トリップシステムは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバを加圧するように構成されると共に、前記付勢要素により付勢される中、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置まで動かすことを許容するために前記シリンダの前記第1のチャンバの圧力を開放するように構成された空圧機構をさらに備える。
【0016】
項目3:項目1又は項目2に準ずる空圧式トリップシステムにおいて、前記空圧回路は、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達すると前記第2のチャンバの加圧を停止し、前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に保持すように前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように構成されている。
【0017】
項目4:項目3に準ずる空圧式トリップシステムにおいて、前記空圧回路は、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に動かすときに前記ピストンにより作動されるリミットスイッチを備え、前記リミットスイッチは、前記空圧回路に前記第2のチャンバの加圧を停止させ、前記ピストンが作動するときに前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように構成されている。
【0018】
項目5:項目3又は項目4に準ずる空圧式トリップシステムにおいて、前記空圧回路は第1のソレノイド及び第2のソレノイドを備え、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が作動しているときに、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように駆動され、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置にあるときに、前記第2のチャンバの加圧を停止して前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように駆動され、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が解除されているときに、前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように駆動される。
【0019】
項目6:項目1乃至項目5のいずれかに準ずる空圧式トリップシステムにおいて、前記空圧回路は、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように前記空圧回路を起動すると共に前記第2のチャンバの圧力を解放するように前記空圧回路を解除するように構成された起動スイッチを備える。
【0020】
項目7:項目6に準ずる空圧式トリップシステムにおいて、前記起動スイッチは回転スイッチに作動的に結合されている。
【0021】
項目8:項目1乃至項目7のいずれかに準ずる空圧式トリップシステムにおいて、前記付勢要素は圧縮ばねを備える。
【0022】
項目9:空圧式トリップシステム用のアクチュエータ組立体は、シリンダと、トリップ弁に結合されるように構成されたピストンであって、前記シリンダ内で前記トリップ弁の開位置に対応する第1の位置と前記トリップ弁の閉位置に対応する第2の位置との間を移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設された付勢要素であって、前記第2の位置に向けて前記ピストンを付勢するために前記ピストンを係止している付勢要素と、前記シリンダの前記第2のチャンバに連通する空圧回路とを備え、前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンを前記第1の位置にとどめるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させ、前記シリンダは、第2のポートを含み、前記第2のポートは前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させ、前記空圧回路は、前記第1のチャンバが加圧されている間、前記ピストンを、前記第1の位置と前記第2の位置との間の、前記トリップ弁の試行位置に対応する中間位置まで移動させるために前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように構成されている。
【0023】
項目10:項目9に準ずるアクチュエータ組立体において、前記空圧回路は、前記ピストンが前記中間位置に達すると前記第2のチャンバの加圧を停止し、前記ピストンを前記中間位置に保持すように前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように構成されている。
【0024】
項目11:項目10に準ずるアクチュエータ組立体において、空圧回路は、前記ピストンが前記中間位置に到達するときに前記ピストンにより作動されるリミットスイッチを備え、前記リミットスイッチは、前記空圧回路に前記第2のチャンバの加圧を停止させ、前記ピストンが作動するときに前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように構成されている。
【0025】
項目12:項目10又は項目11に準ずるアクチュエータ組立体において、前記空圧回路は第1のソレノイド及び第2のソレノイドを備え、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が作動しているときに、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように駆動され、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記ピストンが前記中間位置に到達するときに、前記第2のチャンバの加圧を停止して前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように駆動され、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が解除されているときに、前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように駆動される。
【0026】
項目13:項目9乃至項目12のいずれかに準ずるアクチュエータ組立体において、前記空圧回路は前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように前記空圧回路を起動すると共に前記第2のチャンバの圧力を解放するように前記空圧回路を解除するように構成された起動スイッチを備える。
【0027】
項目14:項目13に準ずるアクチュエータ組立体において、前記起動スイッチは回転スイッチに作動的に結合されている。
【0028】
項目15:項目9乃至項目14のいずれかに準ずるアクチュエータ組立体において、前記付勢要素は圧縮ばねを備える。
【0029】
項目16:タービン用の空圧式トリップシステムのトリップ弁を試行する方法であって、前記トリップ弁は、タービン流路に作動的に関連付けられた弁部材と、前記弁部材に結合された弁棒とを備え、前記弁部材は、前記タービン流路を閉じて前記タービン流路を通る流体の流れを妨げるために前記ダービン流路に係止するように作動するように構成され、前記方法は、前記弁棒に作動的に結合されたアクチュエータ組立体を提供するステップを備え、前記アクチュエータ組立体は、シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に配設され、前記シリンダを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割するピストンと、前記シリンダの前記第2のチャンバ内に配設され、前記ピストンを係止している付勢要素と、前記シリンダの前記第2のチャンバと連通する空圧回路とを有し、前記ピストンは、前記弁棒及び前記弁部材を、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する開位置と、前記タービン流路を通る流体の流れを妨げる閉位置との間で移動させるように、前記弁棒に作動的に結合され、前記付勢要素は、前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置に向けて付勢するように前記ピストンを係止し、前記シリンダは第1のポートを含み、前記第1のポートは、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバが加圧され得るように、前記第1のチャンバを前記シリンダの外部と連通させ、前記シリンダは第2のポートを含み、前記第2のポートは、前記第2のチャンバを前記空圧回路に連通させ、前記第1のチャンバが加圧されている間、前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置と前記閉位置との間の試行位置まで動かすために、前記ピストンを作動させるようにシリンダの第2のチャンバを加圧するために前記空圧回路を起動するステップと、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置に達したときに前記第2のチャンバの加圧を停止しつつ、前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に保つために前記第2のチャンバ内の圧力を保持するように前記空圧回路を起動するステップと、前記弁棒及び前記弁部材が前記開位置まで戻ることを許容するように前記第2のチャンバの圧力を開放するために前記空圧回路を解除するステップとをさらに備え、前記弁部材は、前記試行位置で、前記タービン流路を通る流体の流れを許容する。
【0030】
項目17:項目16に準ずる方法は、前記ピストンに前記弁棒及び前記弁部材を前記開位置で保持させるために前記シリンダの前記第1のチャンバを加圧するステップと、前記付勢要素により付勢される中、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記閉位置まで動かすことを許容するために前記シリンダの前記第1のチャンバの圧力を開放するステップとをさらに備える。
【0031】
項目18:項目16又は項目17に準ずる方法において、前記空圧回路は、前記ピストンが前記弁棒及び前記弁部材を前記試行位置に動かすときに前記ピストンにより作動されるリミットスイッチを備え、前記リミットスイッチは、前記第2のチャンバの加圧を停止させつつ前記ピストンが作動するときに前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するために前記空圧回路を起動するように構成されている。
【0032】
項目19:項目16乃至項目18のいずれかに準ずる方法において、前記空圧回路は第1のソレノイド及び第2のソレノイドを備え、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が作動しているときに、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように駆動され、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記弁棒及び前記弁部材が前記試行位置にあるときに、前記第2のチャンバの加圧を停止して前記第2のチャンバ内の前記圧力を保持するように駆動され、前記第1のソレノイド及び前記第2のソレノイドは、前記空圧回路が解除されているときに、前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように駆動される。
【0033】
項目20:項目16乃至項目19のいずれかに準ずる方法において、前記空圧回路は、前記シリンダの前記第2のチャンバを加圧するように前記空圧回路を起動すると共に前記第2のチャンバの前記圧力を解放するように前記空圧回路を解除するように構成された起動スイッチを備える。
【0034】
本発明のこれら及び他の特徴及び特性、並びに、構造の関連構成部品の作動及び機能の方法、及び部品の組み合わせ及び製造の経済性は、添付図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求項を考察することによってより明確となり、そのすべては、本明細書の一部を形成する。同様の符号は、種々の図において対応する部品を示す。しかし、図面は図示及び説明のみを目的とし、発明の制限を定義するものではないことは理解できよう。明細書及び特許請求の範囲において用いられている、「一つの」や「前記の」が付された、又は「複数の」が付されていない単数形の名詞は、特に文脈で明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示の限定されない実施の形態又は態様による、空圧式トリップシステムを組み込んだ蒸気タービンの電空回路図である。
【0036】
【
図2】蒸気タービン及び空圧式トリップシステムの斜視図である。
【0037】
【
図3】蒸気タービンの流路に関係する、
図2の空圧式トリップシステムの背面図である。
【0038】
【
図4】
図3の空圧式トリップシステムのアクチュエータ組立体の概略図である。
【0039】
【
図5】
図4のアクチュエータ組立体の空圧回路の電気回路図である。
【0040】
【
図6A】第1の作動状態における
図4のアクチュエータ組立体の空圧回路図である。
【0041】
【
図6B】第2の作動状態における
図4のアクチュエータ組立体の空圧回路図である。
【0042】
【
図6C】第3の作動状態における
図4のアクチュエータ組立体の空圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
これ以降の説明のために、用語「端部」、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「横方向」、「長手方向」、及びその派生語は、本発明に関して図面内での配向を示しているものとする。しかし、本発明は、明示的にその反対であると特記しない限り、種々の別の変形例及びステップの順序を想定してもよいと理解すべきである。また、添付図面に示し、以下の明細書において説明する特定の装置及びプロセスは、単に本発明の例示の実施の形態又は側面であると理解すべきである。したがって、本明細書中に開示する実施の形態又は側面に関する特定の寸法及び他の物理的な特性は、それに限定するものと解釈すべきではない。
【0044】
図1乃至
図6Cを参照すると、蒸気タービン100の蒸気室トリップ弁11を部分的に作動させる空圧式トリップシステム10が、本開示の限定されない好ましい実施の形態又は態様に従って示されている。空圧式トリップシステム10はトリップ弁11を含み、トリップ弁11は、蒸気タービン100の一部を形成する流路101と作動的に関連する弁部材12と、弁部材12に結合する弁棒(バルブステム)13とで構成されている。
図3に示すように、弁部材12は、タービン流路101内を移動可能に駆動されて、流路101内の弁座102に係止することにより流路101を閉じ、流路101を通って流体が流れないようにする。弁棒13は、流体が流路101を通って流れるようにする開位置と、弁部材12が弁座102に係止して流体が流路101を通って流れないようにする閉位置との間で弁部材12を動かす。
【0045】
図1乃至
図6Cを参照すると、空圧式トリップシステム10は、トリップ弁11の弁棒13へ作動的に結合されたアクチュエータ組立体20も含む。
図4乃至
図6Cに示すように、アクチュエータ組立体20は、シリンダ21と、弁棒13へ作動的に結合されたピストン22とを含む。ピストン22は、シリンダ21内を移動可能に配設されており、シリンダ21を、ピストン22の下方に画成される第1のチャンバ23と、ピストン22の上方に画成される第2のチャンバ24とに分割する。ピストン22は、シリンダ21内で、トリップ弁11の開位置に対応する第1の位置と、トリップ弁11の閉位置に対応する第2の位置との間を移動できる。弁棒13は、ピストン22の底部に嵌め込むためにシリンダ21内に延在してもよい。アクチュエータ組立体20は、シリンダ21の第2のチャンバ24内に配設された付勢要素25も含む。付勢要素25は、ピストン22に係止して第2の位置へ向けてピストン22を付勢することにより、弁棒13及び弁部材12を閉位置に向けて付勢する。アクチュエータ組立体20は、第2のチャンバ24に連通する空圧回路26をさらに含む。
図4に示すように、付勢要素25は圧縮ばねである。だが、当然のことながら、付勢要素は、アクチュエータ組立体20への組み込みに適するとともに、トリップ弁11が駆動されたときに弁部材12を閉位置にするのに十分な弾性を有する種類の構造又は構成であってよい。
【0046】
図4及び
図6A乃至
図6Cに示すように、シリンダ21は、シリンダ21の下部分に画成される第1のポート27を含み、第1のポート27は、第1のチャンバ23が加圧されてピストン22を第1の位置にとどめることにより弁棒13及び弁部材12を開位置に保つように、第1のチャンバ23をシリンダ21の外部と連通させる。シリンダ21は、シリンダ21の上部分に画成される第2のポート28も含み、第2のポートは、第2のチャンバ24を空圧回路26と連通させる。空圧回路26は、第2のチャンバ24を加圧し、付勢要素25と一緒に、ピストン22を、
図3に示す中間位置まで動かす。中間位置は、第1の位置と第2の位置との間の位置であって、第1のチャンバ23が加圧されている間の、トリップ弁11の試行位置に対応する。それによりピストン22は、第1のチャンバ23が加圧されている間、弁棒13及び弁部材12を開位置と閉位置との間の試行位置まで動かす。弁部材12は、試行位置で、流体がタービン流路101を通って流れるようにする。
【0047】
図4に示すように、空圧式トリップシステム10は、空圧機構29も含み、空圧機構29は、シリンダ21の第1のチャンバ23を加圧することにより、ピストン22に弁棒13及び弁部材12を開位置に保持させ、また、付勢要素25により付勢される中、第1のチャンバ23の圧力を解放してピストン22が弁棒13及び弁部材12を閉位置まで動かすことを許容する。本開示の特定の好ましい限定されない実施の形態又は態様によれば、空圧機構29は、当業者に知られている「空圧式オーバースピードトリップシステム」であり、蒸気タービン100の緊急遮断中に流路101を閉じるためのトリップ弁11の遮断に一般的に利用される。好ましくは、空圧機構29は、先に検討したように、トリップ弁11を開位置に保持するのに好適であることが判明しているどの種類であってもどの構成であってもよい。したがって、空圧回路26は、弁11を完全に閉じることを要さない部分的なストロークによってトリップ弁11を作動させ、これによって、空圧式オーバースピードトリップシステム(空圧機構29)の安全機構を所定の位置に置き、蒸気タービン100の連続運転を許容し、かつ流路101を閉じるようにトリップ弁11を作動させることができる。
【0048】
図5に示すように、空圧回路26は、手動の回転スイッチ34に作動的に結合又は接続された起動スイッチ33を含む。起動スイッチ33は、空圧回路26を起動してシリンダ21の第2のチャンバ24を加圧し、弁11を作動させるために弁11の部分遮断を開始する。シリンダ21の第1のチャンバ23に圧力がかけられた状態でトリップ弁11が作動されて弁棒13及び弁部材12が開位置へ戻った後に、起動スイッチ33で空圧回路26を解除することにより第2のチャンバ24から圧力を解放する。
【0049】
図5乃至
図6Cを参照すると、空圧回路26は、起動スイッチ33により空圧回路26が起動された後、ピストン22が中間位置に達し、それにより弁棒13及び弁部材12が試行位置に達すると、シリンダ21の第2のチャンバ24の加圧を停止するように構成されている。空圧回路26は、また、ピストン22を中間位置に保ち、弁棒13及び弁部材12を試行位置に保つために、第2のチャンバ24内の圧力を保持することになる。特に、空圧回路26は、第1のソレノイド31及び第2のソレノイド32をさらに含む。第1のソレノイド31はリミットスイッチ30に接続され、リミットスイッチ30は、ピストンが中間位置まで動くことにより弁棒13及び弁部材12を試行位置まで動かすとき、ピストン22により作動される。
【0050】
図6Aに示すように、初期の作動状態では、空圧回路26が解除され、第1のソレノイド31及び第2のソレノイド32の両方は、シリンダ21の第2のチャンバ24の加圧を遮断するように駆動される。
図6Bに示すように、回転スイッチ34の作動を介する起動スイッチ33の作動により空圧回路26が起動すると、第1のソレノイド31と第2のソレノイド32とを駆動してシリンダ21の第2のチャンバ24を緩やかに加圧することにより、トリップ弁11の部分的なストロークが開始される。第2のチャンバ24が加圧されると、ピストン22は、第1のチャンバ23内の圧力に抗して下に向けられて第1の位置から離れるように動き、それにより弁棒13及び弁部材12は開位置から離れるように動く。
【0051】
図6Cに示すように、シリンダ21内をピストン22が下方に移動すると、ピストン22が中間位置に達してそれにより弁棒13及び弁部材12が試行位置に達したときに、ピストン22がリミットスイッチ30を作動させ、これを開く。これにより、次に、第1のソレノイド31及び第2のソレノイド32が駆動されて第2のチャンバ24の加圧を停止し、第2のチャンバ24内の圧力を保持することによってピストン22を中間位置に保ち、弁棒13及び弁部材12を試行位置に保つ。本開示の、限定されない特別の一つの実施の形態又は態様によれば、空圧回路26は、ピストン22つまり弁棒13及び弁部材12を、第1の位置/開位置から中間位置/試行位置までの略3/8インチの距離を移動させるが、トリップ弁11の開位置と試行位置との間の距離は、流路101を通る流体の自由な流れを許容するように、タービン流路101内で弁部材12が弁座102から十分に間を隔てたままである限り、当業者が適切であると判断した何れの距離に設定されてもよい。本開示の限定されない特定の別の実施の形態又は態様によれば、シリンダ21上のリミットスイッチ30の位置は、調節可能であるので、中間位置/試行位置を調節することができる。
【0052】
オペレータ(操作者)が回転スイッチ34を解放すると、起動スイッチ33が開き、空圧回路26は解除される。空圧回路26が解除されると、第1のソレノイド31及び第2のソレノイド32が駆動されてシリンダ21の第2のチャンバ24の圧力を解放し、よって弁棒13及び弁部材12が開位置へ戻れるようになり、アクチュエータ組立体20が
図6Aに示す常時の作動可能な状態に戻る。本開示の特定の一つの実施の形態又は態様によれば、空圧回路26が解除されると、第1のソレノイド31及び第2のソレノイド32は、シリンダ21の第2のチャンバ24を大気に開放したままにする。
【0053】
図1乃至
図6Cによれば、蒸気タービン100のための空圧式トリップシステム10のトリップ弁11を試行する方法は、本発明の好ましい限定されない実施の形態又は態様に従って提供される。トリップ弁11は、タービン流路101と作動的に関連付けられる弁部材12と、弁部材12に結合される弁棒13とを含む。弁部材12は、タービン流路101を閉じてタービン流路101を通る流体の流れを妨げるためにタービン流路101に係止するように作動するように構成される。この方法は、弁棒13へ作動的に結合されるアクチュエータ組立体20を提供するステップを含む。アクチュエータ組立体20は、シリンダ21と;シリンダ21内を移動可能に配設されて、シリンダ21を第1のチャンバ23と第2のチャンバ24とに分割するピストン22と;シリンダ21の第2のチャンバ24内に配設され、ピストン22に係止する付勢要素25と;シリンダ21の第2のチャンバ24に連通する空圧回路26とを含む。ピストン22は、弁棒13へ作動的に結合され、弁棒13及び弁部材12を、流体がタービン流路101を通って流れることを許容する開位置と、流体がタービン流路101を流れないようにする閉位置との間で動かす。付勢要素25は、ピストン22に係止して、弁棒13及び弁部材12を閉位置に向けて付勢する。シリンダ21は第1のポート27を含み、第1のポート27は、シリンダ21の第1のチャンバ23が加圧されてピストン22が弁棒13及び弁部材12を開位置に保つように、第1のチャンバ23をシリンダ21の外部と連通させる。シリンダ21は第2のポート28を含み、第2のポート28は、第2のチャンバ24を空圧回路26と連通させる。本方法はさらに、第1のチャンバ23が加圧されている間、ピストン22を駆動して弁棒13及び弁部材12を開位置と閉位置との間の試行位置まで動かすためにシリンダ21の第2のチャンバ24を加圧するように空圧回路26を起動するステップ;弁棒13及び弁部材12が試行位置に達したときに第2のチャンバ24の加圧を停止するために、及び弁棒13及び弁部材12を試行位置に保つように第2のチャンバ24内の圧力を保持するために、空圧回路26を起動するステップ;並びに、第2のチャンバ24の圧力を解放して弁棒13及び弁部材12が開位置へ戻ることを許容するために空圧回路26を解除するステップを含む。弁部材12は、試行位置で流体がタービン流路101を通って流れることを許容する。
【0054】
本方法は、ピストン22に弁棒13及び弁部材12を開位置に保持させるようにシリンダ21の第1のチャンバ23を加圧するステップ;及び、付勢要素25の付勢の下でピストン22が弁棒13及び弁部材12を閉位置まで動かすことを許容するために、シリンダ21の第1のチャンバ23の圧力を解放するステップも含むこととしてもよい。
【0055】
本発明は、明示して否定する場合を除き、様々な代替としての改変及びステップ列を推定し得ることは言うまでもない。また、添付図面及び明細書に記載される特定の装置および工程は、本発明の実施の形態又は態様の単なる例示であることも言うまでもない。本発明を、最も実際的で好ましい実施の形態又は態様であると現段階で思料される内容に基づいて説明するように詳細に述べたが、その詳細は説明に過ぎず、本発明を、開示された実施の形態又は態様に限定するものではなく、逆に、本発明の精神及び範囲内にある改変及び均等な編成を含むものである。例えば、本発明は、可能な範囲でいずれかの実施の形態又は態様の一つ以上の特徴を、他のいずれかの実施の形態又は態様の一つ以上の特徴と組み合わせることができると想到することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10 空圧式トリップシステム
11 トリップ弁
12 弁部材
13 弁棒
20 アクチュエータ組立体
21 シリンダ
22 ピストン
23 第1のチャンバ
24 第2のチャンバ
25 付勢要素
26 空圧回路
27 第1のポート
28 第2のポート
29 空圧機構
30 リミットスイッチ
31 第1のソレノイド
32 第2のソレノイド
33 起動スイッチ
34 回転スイッチ
100 蒸気タービン
101 流路
102 弁座