特許第6911285号(P6911285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6911285
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20210715BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20210715BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20210715BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20210715BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20210715BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K7/00
   C08K5/02
   C08K5/5415
   C08K9/10
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-120874(P2016-120874)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-222817(P2017-222817A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】築島 新
(72)【発明者】
【氏名】三原 諭
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−201968(JP,A)
【文献】 特開2012−131920(JP,A)
【文献】 特開2011−046775(JP,A)
【文献】 特開2003−192844(JP,A)
【文献】 特開2016−023213(JP,A)
【文献】 特開2002−037931(JP,A)
【文献】 特開平09−241427(JP,A)
【文献】 特開2014−055230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物からなるトレッドを有する空気入りタイヤであって、前記ゴム組成物が、ジエン系ゴム100質量部に、走査型電子顕微鏡により観察された数平均粒子径が1〜50μmである粒子を1〜20質量部配合してなり、前記粒子を構成する材料の表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であり、前記トレッドを構成するゴム表面の算術平均粗さRaが5.9〜30μmである、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記粒子を構成する材料が、ポリテトラフルオロエチレンおよびその誘導体、シリコーンおよびその誘導体から選ばれる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
更に、前記ゴム組成物が、熱膨張性マイクロカプセルを前記ジエン系ゴム100質量部に対し2.5質量部以上配合してなる、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を向上するようにした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの氷上性能、雪上性能、ウェット性能をなどのタイヤ性能を向上するには、タイヤを構成するゴムの貯蔵弾性率(E′)や損失正接(tanδ)などの物理的特性を改質し摩擦係数を大きくしたり、親水性/撥水性などの化学的特性を改質し水膜除去や排水性を改良したりすることがある。ゴムの化学的特性を改質するため、改質に用いる物質をゴム表面に塗布したり、表面に化学的な処理を施したり、ゴムに添加剤を配合すると行った手法がとられることが多い。
【0003】
特許文献1は、末端変性スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、シリカおよびカーボンブラックを配合したゴム組成物により、雪上性能、ウェット性能および耐摩耗性を改良することを提案している。しかし、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を向上させることに寄せる需要者の期待はより大きく、これら特性を一層改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−229701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を従来レベル以上に向上する
ようにした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、ゴム組成物からなるトレッドを有し、前記ゴム組成物が、ジエン系ゴム100質量部に、走査型電子顕微鏡により観察された数平均粒子径が1〜50μmである粒子を1〜20質量部配合してなり、前記粒子を構成する材料の表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であり、前記トレッドを構成するゴム表面の算術平均粗さRaが5.9〜30μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、トレッドを構成するゴム組成物が、数平均粒子径が1〜50μmで、構成材料の表面自由エネルギーが25dyne/cm以下である粒子を配合してなりトレッドを構成するゴム表面の算術平均粗さRaを5.9〜30μmにしたので、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を従来レベル以上に向上させることができる。
【0008】
本発明において、前記粒子を構成する材料として、ポリテトラフルオロエチレンおよびその誘導体、シリコーンおよびその誘導体から選ぶことができる。更に熱膨張性マイクロカプセルを前記ジエン系ゴム100質量部に対し2.5質量部以上配合することができる。これによりゴム表面の算術平均粗さRaを調節し、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を一層向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムからなり、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等を挙げることができる。これらのジエン系ゴムは、単独又は複数のブレンドとして含有することができる。
【0011】
本発明のゴム組成物は、平均粒子径が1〜50μmで、構成材料の表面自由エネルギーが25dyne/cm以下である粒子を、ジエン系ゴムに配合する。粒子を構成する材料の表面自由エネルギーは25dyne/cm以下、好ましくは15〜22dyne/cmである。表面自由エネルギーを25dyne/cm以下にすることにより粒子の表面を疎水性にし、ゴム組成物に配合することにより疎水性能を高くすることができる。
【0012】
本発明で配合する粒子を構成する材料は、その表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であれば特に制限されるものではないが、例えばポリテトラフルオロエチレンおよびその誘導体、シリコーンおよびその誘導体、等を挙げることができる。本明細書において、表面自由エネルギーはJIS K6788に準拠して測定される値とする。
【0013】
粒子の平均粒子径は1〜50μm、好ましくは10〜40μmである。粒子の平均粒子径が1μm未満であると、ゴム組成物の表面を適切に粗くすることができない。また平均粒子径が50μmを超えると、雪上性能およびウェット性能が却って低下する。粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により粒子の直径を観察し、それらの算術平均とする。
【0014】
本発明のゴム組成物において、上述した粒子は、ジエン系ゴム100質量部に対し1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部配合する。粒子の配合量が1質量部未満であると、ゴム組成物の表面を適切に粗くすることができない。また粒子の配合量が20質量部を超えると、雪上性能が却って低下する。
【0015】
ゴム組成物の表面の算術平均粗さRaは5〜30μm、好ましくは7〜25μmである。ゴム表面の算術平均粗さRaが5μm未満であると、雪上性能を改良することができない。またゴム表面の算術平均粗さRaが30μmを超えると、氷上性能、雪上性能およびウェット性能が却って低下する。本明細書において、ゴム表面とはゴム組成物を加硫した加硫ゴムの表面である。また空気入りタイヤを例にすると、接地面に限定されるものではなく、氷面、雪面およびウェット面に存在ある水分と接触するゴム表面であるものとする。ゴム表面の算術平均粗さRaは、後述する熱膨張性マイクロカプセルを配合することおよびその配合量の増減、発泡剤を配合することおよびその量の増減、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下である粒子の粒子径およびその量の増減、等により調節することができる。またゴム表面を通常の方法で物理的に荒らすことにより算術平均粗さRaを適当な範囲に調整することもできる。なおゴム表面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601に記載された「算術平均粗さRa」である。
【0016】
本発明において、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下である粒子を配合することにより、ゴム組成物に撥水性を付与することができる。しかし粒子を単に配合しただけでは、ゴム組成物の表面の化学的特性を改質する作用は限定的に得られるだけである。このため本発明では、ゴム表面の算術平均粗さRaを特定の範囲内にし、適切な表面積を有するようにしたので表面自由エネルギー25dyne/cm以下の粒子による表面改質作用をより大きくすることができる。このことは、Wenzelの式に代表されるように、材料表面の化学的特性がその材料の表面積に影響を受けることからに裏付けられる。
【0017】
本発明のゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルをジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは2.5質量部以上、より好ましくは3.5〜20質量部配合することができる。熱膨張性マイクロカプセルを2.5質量部以上配合することにより、ゴム組成物の表面を適切に粗くすることができる。また熱膨張性マイクロカプセルの配合量が20質量部を超えると氷上性能、雪上性能およびウェット性能が却って低下する虞がある。
【0018】
熱膨張性マイクロカプセルは、例えばポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成のものが挙げられる。この熱膨張性マイクロカプセルが加熱されると、殻材に内包された熱膨張性物質が膨張して殻材の粒径を大きくし、トレッドゴム中に多数の樹脂被覆気泡を形成する。このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU−80」又は「EXPANCEL 092DU−120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マイクロスフェアー F−85」又は「マイクロスフェアー F−100」等を挙げることができる。
【0019】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック、シリカ、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等から選ばれる充填剤を配合することができる。充填剤を配合することによりゴム強度を高くすることができる。充填剤はジエン系ゴム100質量部に対し好ましくは20〜100質量部、より好ましくは40〜80質量部配合するとよい。充填剤の配合量をこのような範囲にすることにより、ゴム組成物の氷上性能、雪上性能およびウェット性能をより高いレベルでバランスさせることができる。
【0020】
ゴム組成物には、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫成形するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0021】
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部に好適に使用することができる。このゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤは、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下の粒子を配合しゴム表面に疎水性を付与すると共に、算術平均粗さRaを5〜30μmにしたので疎水性の作用を最大にし、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を従来レベル以上に向上することができる。
【0022】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1〜
表3に記載した組成物1を共通配合とし、表1〜2に示す配合からなる18種類のゴム組成物(標準例1、実施例1〜4、参考例5〜7、比較例1〜10)を調製するに当たり、それぞれ硫黄、加硫促進剤、発泡剤および熱膨張性マイクロカプセルを除く成分を秤量し、5L密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、そのマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを同5L密閉式バンバリーミキサーに供し、硫黄、加硫促進剤、発泡剤および熱膨張性マイクロカプセルを加え、混合しゴム組成物を得た。表1,2に示す成分の配合量は、表3に示すジエン系ゴム100質量部に対する質量部として記載した。
【0024】
得られた18種類のゴム組成物をキャップトレッドに用いたサイズ(195/65R15)の空気入りタイヤを加硫成形した。なお実施例4の空気入りタイヤは、下記の条件で摩耗試験を行った。それぞれの空気入りタイヤを用いて、ゴム表面の算術平均粗さRa、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を下記に示す方法により評価した。
【0025】
摩耗試験
上記で得られた実施例4の空気入りタイヤを、リムサイズ15×6Jのホイールのホイールに組付け、国産2.0リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧210kPaの条件で、散水した半径30mのアスファルト周回円上を、左回り右回りともに10周ずつ周回することにより、ゴム表面を荒らした、実施例4の空気入りタイヤを得た。
【0026】
ゴム表面の算術平均粗さRa
各空気入りタイヤのトレッド部を構成するゴム表面について、JIS B 0601に準拠し、レーザー顕微鏡を用いて算術平均粗さRa(μm)を測定した。得られた結果を表1,2の「算術平均粗さRa」の欄に記載する。
【0027】
氷上性能
得られた空気入りタイヤをリムサイズ15×6Jのホイールのホイールに組付け、国産2.0リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧210kPaの条件で気温−6℃〜−10℃、氷温−7℃〜−9℃の氷上試験路を速度40km/時で走行している状態からブレーキをかけて制動(ロック状態)したとき、制動距離(停止するまでの走行距離)を5回測定しその平均を求めた。得られた結果は、標準例の制動距離の逆数を100とする指数として表わし、表1,2の「氷上性能」の欄に示した。この指数が大きいほど制動距離が短く氷上性能が優れることを意味する。
【0028】
雪上性能
得られた空気入りタイヤをリムサイズ15×6Jのホイールのホイールに組付け、国産2.0リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧210kPaの条件でテストコース上の雪上路面を速度40km/時で走行している状態からブレーキをかけて制動(ロック状態)したとき、制動距離(停止するまでの走行距離)を5回測定しその平均を求めた。得られた結果は、標準例の制動距離の逆数を100とする指数として表わし、表1,2の「雪上性能」の欄に示した。この指数が大きいほど制動距離が短く雪上性能が優れることを意味する。
【0029】
ウェット性能
得られた空気入りタイヤをリムサイズ15×6Jのホイールのホイールに組付け、国産2.0リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧210kPaの条件で水深10mmの水膜を有する路面上を速度100km/時の速度からフルブレーキ状態で制動したときの制動距離を5回測定し、その平均を求めた。得られた結果は、標準例の制動距離の逆数を100とする指数として表わし、表1,2の「ウェット性能」の欄に示した。この指数が大きいほど制動距離が短く、ウェット性能が優れることを意味する。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
なお、表1〜2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・PTEF−1:ポリテトラフルオロエチレン粒子、平均粒子径が5μm、表面自由エネルギーが19dyne/cm、スリーエムジャパン社製。
・PTEF−2:ポリテトラフルオロエチレン粒子、平均粒子径が25μm、表面自由エネルギーが19dyne/cm、スリーエムジャパン社製。
・PTEF−3:ポリテトラフルオロエチレン粒子、平均粒子径が100μm、表面自由エネルギーが19dyne/cm、スリーエムジャパン社製。
・PTEF−4:ポリテトラフルオロエチレン粒子、平均粒子径が約2mm、表面自由エネルギーが19dyne/cm、スリーエムジャパン社製。
・シリコーン粒子:平均粒子径が30μm、表面自由エネルギーが20dyne/cm、信越化学工業社製 KMP−602。
・PE粒子:ポリエチレン粒子、平均粒子径が25μm、表面自由エネルギーが31dyne/cm、三井化学社製。
・PS粒子:ポリスチレン粒子、平均粒子径が30μm、表面自由エネルギーが33dyne/cm、標準ポリスチレン粒子。
・熱膨張性カプセル:熱膨張性マイクロカプセル、松本油脂製薬社製マツモトマイクロスフェアF−100。
・発泡剤:アゾジカルボンアミド(ADCA)を主成分とした化学発泡剤、永和化成工業社製。
【0033】
【表3】
【0034】
なお、表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、SIR20
・BR:ブタジエンゴム、宇部興産社製UBEPOL BR150
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 NIPOL1502、非油展品
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製 N339
・シリカ:エボニック社製 VN3
・シランカップリング剤:エボニック社製 Si69
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:フレキシス社製6PPD
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%)
・加硫促進剤1:加硫促進剤CBS、大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤2:加硫促進剤DPG、大内新興化学工業社製ノクセラーD−G
【0035】
表1,2から明らかなように実施例1〜の空気入りタイヤは、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を標準例のレベル以上に向上させることが確認された。
【0036】
比較例1の空気入りタイヤは、熱膨張性マイクロカプセルを配合したが、特定の粒子を配合していないので、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0037】
比較例2,3の空気入りタイヤは、ゴム表面の算術平均粗さRaが5μm未満であるので、雪上性能が劣る。
【0038】
比較例4の空気入りタイヤは、ゴム表面の算術平均粗さRaが30μmを超えるので、氷上性能、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0039】
比較例5の空気入りタイヤは、特定の粒子の配合量が1質量部未満なので、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0040】
比較例6の空気入りタイヤは、特定の粒子の配合量が20質量部を超えるので、雪上性能が劣る。
【0041】
比較例7,8の空気入りタイヤは、粒子PTFE−3,PTFE−4の平均粒子径が50μmを超えるので、雪上性能およびウェット性能が劣る。また比較例8の空気入りタイヤは、氷上性能も劣る。
【0042】
比較例9,10の空気入りタイヤは、PE粒子、PS粒子の表面自由エネルギーが25dyne/cmを超えるので、氷上性能、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0043】
実施例〜10
表3に記載した組成物2を共通配合とし、表4に示す配合からなる8種類のゴム組成物(標準例2、実施例〜10、参考例8、比較例11〜14)を実施例1と同様にして調製した。得られたゴム組成物をキャップトレッドに用いた空気入りタイヤを実施例1と同様に加硫成形した。その空気入りタイヤを用いて、ゴム表面の算術平均粗さRa、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を上述した方法により評価した。なお氷上性能、雪上性能およびウェット性能の評価は、標準例2の逆数を100とする指数として、表4に記載する。
【表4】
【0044】
表4から明らかなように実施例〜10の空気入りタイヤは、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を標準例のレベル以上に向上させることが確認された。
【0045】
比較例11の空気入りタイヤは、熱膨張性マイクロカプセルを配合したが、特定の粒子を配合していないので、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0046】
比較例12,13の空気入りタイヤは、ゴム表面の算術平均粗さRaが5μm未満であるので、雪上性能が劣る。
【0047】
比較例14の空気入りタイヤは、ゴム表面の算術平均粗さRaが30μmを超えるので、氷上性能、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0048】
実施例11〜14
表3に記載した組成物3を共通配合とし、表5に示す配合からなる18種類のゴム組成物(標準例3、実施例11〜13、比較例15〜18)を実施例1と同様にして調製した。得られたゴム組成物をキャップトレッドに用いた空気入りタイヤを実施例1と同様に加硫成形した。その空気入りタイヤを用いて、ゴム表面の算術平均粗さRa、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を上述した方法により評価した。なお氷上性能、雪上性能およびウェット性能の評価は、標準例3の逆数を100とする指数として、表5に記載する。
【表5】
【0049】
表5から明らかなように実施例11〜13の空気入りタイヤは、氷上性能、雪上性能およびウェット性能を標準例のレベル以上に向上させることが確認された。
【0050】
比較例15の空気入りタイヤは、熱膨張性マイクロカプセルを配合したが、特定の粒子を配合していないので、雪上性能およびウェット性能が劣る。
【0051】
比較例16,17の空気入りタイヤは、ゴム表面の算術平均粗さRaが5μm未満であるので、雪上性能が劣る。
【0052】
比較例18の空気入りタイヤは、ゴム表面の算術平均粗さRaが30μmを超えるので、氷上性能、雪上性能およびウェット性能が劣る。