(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トウ側均一領域と前記肉厚移行領域との境界線であるトウ輪郭線の全体が、フェースセンターよりもトウ側に位置している請求項1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
前記ヒール側均一領域と前記肉厚移行領域との境界線であるヒール輪郭線の全体が、フェースセンターよりもヒール側に位置している請求項1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
前記トウ側均一領域が前記第1均一領域よりもトウ側に位置しており、前記ヒール側均一領域が前記第1均一領域よりもヒール側に位置している請求項1から12のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
前記第1均一領域の肉厚がTS1(mm)とされ、前記第2均一領域の肉厚がTS2(mm)とされるとき、TS2/TS1が0.6以下である請求項1から15のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド2を示す。ヘッド2は、フェース部4、クラウン部6、ソール部8及びホーゼル部10を有する。更にヘッド2は、サイド部12を有する。サイド部12は、スカート部とも称される。サイド部12は、クラウン部6とソール部8との間に延びている。フェース部4の外面は、フェース面f1(打撃面)である。なお、フェース面f1にはスコアライン溝が設けられているが、このスコアライン溝の記載は省略されている。
【0019】
フェース面f1は、外側に向かって凸の曲面である。フェース面f1は、フェースバルジとフェースロールとを有する。ヘッド2は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド2は、ドライバーヘッド(1番ウッド)である。
【0020】
ヘッド2は、中空ヘッドである。フェース部4の内面(図示されず)はフェース裏面とも称される。このフェース裏面は、ヘッド2の中空部に面している。
【0021】
〔用語の定義〕
本願における用語の定義は、次の通りである。
【0022】
[基準状態]
基準状態とは、所定のライ角及びロフト角で、ヘッドが水平面HP上に載置された状態である。この基準状態では、ヘッドのシャフト孔の中心軸線Z(シャフト軸線Z)が基準垂直面VP内に配されている(
図6参照)。基準垂直面VPは、水平面HPに対して垂直な平面である。所定のライ角及びロフト角は、例えば製品カタログに記載されている。
【0023】
[トウ−ヒール方向]
前記基準状態のヘッドにおいて、前記基準垂直面VPと前記水平面HPとの交線の方向が、トウ−ヒール方向である。
【0024】
[フェース−バック方向]
前記トウ−ヒール方向に対して垂直であり且つ前記水平面HPに平行な方向が、フェース−バック方向である。フェース−バック方向は、前後方向でもある。フェース側は前側とも称される。
【0025】
[上下方向]
前記トウ−ヒール方向に対して垂直であり且つ前記フェース−バック方向に対して垂直な方向が、上下方向である。
【0026】
[フェースセンターFc]
まず、上下方向およびトウ−ヒール方向において、フェース面の概ね中央付近の任意の点Prが選択される。次に、この点Prを通り、当該点Prにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつトウ−ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pxが決定される。次に、この中点Pxを通り、当該点Pxにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pyが決定される。次に、この中点Pyを通り、当該点Pyにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつトウ−ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pxが新たに決定される。次に、この新たな中点Pxを通り、当該点Pxにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pyが新たに決定される。この工程を繰り返して、Px及びPyが順次決定される。この工程の繰り返しの中で、新たな中点Pyとその直前の中点Pyとの間の距離が最初に1mm以下となったときの当該新たな位置Py(最後の位置Py)が、フェースセンターFcである。
【0027】
[平面投影図]
フェース面f1を正面から見たときの平面図が、平面投影図と称される。この平面投影図は、フェース面f1を特定平面に投影した投影図である。この投影の方向は、フェースセンターFcにおけるフェース面f1の法線の方向である。前記特定平面は、この法線に対して垂直な平面である。
【0028】
[平面投影図の適用]
以下に記載の面積MS1、MS2、Mf1等、本願に記載の面積は、前記平面投影図において測定される。以下に示す各領域の形状(楕円形等)は、前記平面投影図における形状である。また、各領域の位置及び形状に係る事項(中心点、楕円の長軸及び短軸、図心、領域同士の位置関係等)も、前記平面投影図において判断される。
【0029】
[フェース部4の肉厚]
フェース部4の肉厚は、フェース面f1の法線方向に沿って測定される。このフェース部4の肉厚は、フェース肉厚又は単に肉厚とも称される。フェース面f1が曲面である場合、フェース面f1の法線方向は、フェース面f1上の位置によって相違しうる。ある点のフェース肉厚は、その点におけるフェース面f1の法線方向に沿って測定される。
【0030】
[フェース輪郭線]
フェース面の全体面積Mf1等を決定するために、フェース輪郭線が決定される。この輪郭線の決定では、フェースセンターFcを通り且つフェース−バック方向に平行な無数の平面が考慮される。これらの平面は、フェースセンターFcから放射状に延びる無数の平面である。これらの平面が、放射状断面とも称される。これらの放射状断面のそれぞれにおいて、ヘッド外面の曲率半径が確認される。この曲率半径を、フェースセンターFcからフェース外側に向かって順次確認し、この曲率半径が最初に200mm以下となった点が決定される。この点が、フェース輪郭線を構成する点と定義される。
【0031】
ただし、上記方法では輪郭線が決定できない部分が存在しうる。ヘッドによっては、ホーゼル部10の近傍において、フェース面f1のヒール側上部がホーゼル部10の円筒部までほぼ面一で繋がる部分がある。この部分においては、上記方法でフェース面f1の輪郭線を決定できず、結果として、輪郭線の途切れが生じる。この輪郭線の途切れは、次のような補完処理によって解消される。
【0032】
図2は、前記補完処理を説明するための図である。この補完処理では、先ず、上記方法で得られた、途切れを有する輪郭線が平面に投影されて、平面投影図上の輪郭線CL1が得られる。上述の通り、この投影の方向は、フェースセンターFcにおけるフェース面f1の法線の方向であり、投影面は、前記特定平面である。
【0033】
この平面投影図において、2つの途切れ端BT1、BT2のそれぞれから、延長線が描かれる。途切れ端BT1から、延長線EX1が描かれる。この延長線EX1は、輪郭線上の3点P1,P2及びP3を通る円弧である。点P1は、途切れ端BT1からの距離が1mmの点である。点P2は、途切れ端BT1からの距離が2mmの点である。点P3は、途切れ端BT1からの距離が3mmの点である。同様に、途切れ端BT2から、延長線EX2が描かれる。この延長線EX2は、輪郭線上の3点P4,P5及びP6を通る円弧である。点P4は、途切れ端BT2からの距離が1mmの点である。点P5は、途切れ端BT2からの距離が2mmの点である。点P6は、途切れ端BT2からの距離が3mmの点である。
【0034】
そして、これら延長線EX1とEX2との交点SP1が決定される。延長線EX1のうち、途切れ端BT1から交点SP1までの部分が、第1の補完線である。延長線EX2のうち、途切れ端BT2から交点SP1までの部分が、第2の補完線である。途切れた前記輪郭線に、これら第1及び第2の補完線を加えることで、補完されたフェース輪郭線が完成する。なお、本実施形態では補完線が2本であるが、補完線が1本となる場合もあることは当然である。
【0035】
[フェース部の重量Wf1]
フェース部の重量Wf1の決定では、ヘッドの表面上において、前記フェース輪郭線が決定される。ただし、上述の補完処理がなされる場合には、前記平面投影図に描かれた補完線がヘッドの表面に逆投影される。この逆投影の方向も、フェースセンターFcにおけるフェース面f1の法線の方向である。このフェース輪郭線に沿って、ヘッドが切断される。この切断の方向は、フェース−バック方向に平行な方向とされる。この切断により、フェース部が切り出される。この切り出されたフェース部の重量が、重量Wf1と定義される。なお、フェース部でないことが明らかな非フェース部がフェース部と共に切り出された場合には、当該非フェース部が除去されて、重量Wf1が決定される。
【0036】
図1に戻ると、
図1において破線で示されるのは、フェース部4の各領域を区画する区画線である。これらの区画線は、フェース部4の肉厚分布に基づいて決定される。これらの区画線は、フェース部4の裏面に形成された稜線及び谷線に対応しうる。ただし、フェースの裏面を見てもこれらの区画線が視認されない場合もある。
【0037】
フェース部4は、複数の均一肉厚領域として、第1均一領域S1と、第2均一領域S2とを有する。第1均一領域S1は、フェース部4の中央部に配置されている。第1均一領域S1は、フェースセンターFcを含む。第2均一領域S2は、第1均一領域S1から離れた位置に配置されている。第2均一領域S2は、フェース部4の周縁部に配置されている。第2均一領域S2の輪郭線の一部は、フェース輪郭線である。
【0038】
本実施形態では、2種類(3箇所)の均一肉厚領域が設けられている。3種類以上の均一肉厚領域が設けられてもよい。また、3箇所以上に均一肉厚領域が設けられてもよい。
過度に複雑な肉厚分布とすると、金型等のコストが増大しうる。この観点から、均一肉厚領域は、3種以下が好ましい。同じ理由で、均一肉厚領域は、4箇所以下が好ましく、3箇所以下が更に好ましい。肉厚分布の最適化の観点から、均一肉厚領域は、2箇所以上に設けられるのが好ましい。なお、均一肉厚領域の種類は、肉厚によって決定される。肉厚が同じ場合、同じ種類とみなされる。
【0039】
なお、均一肉厚領域では、±0.05mmの厚み範囲が許容される。
【0040】
第2均一領域S2は、トウ側均一領域S2tと、ヒール側均一領域S2hとを有する。本実施形態では、トウ側均一領域S2tのフェース厚みは、ヒール側均一領域S2hのフェース厚みと同じである。
【0041】
トウ側均一領域S2tは、第1均一領域S1よりもトウ側に位置する。トウ側均一領域S2tの輪郭線の一部は、クラウン部6とフェース部4との境界線である。トウ側均一領域S2tの輪郭線の一部は、サイド部12とフェース部4との境界線である。トウ側均一領域S2tの輪郭線は、フェース輪郭線とトウ輪郭線L4とによって構成されている。トウ側均一領域S2tの輪郭線は、ソール部8とフェース部4との境界線を含まない。トウ側均一領域S2tの輪郭線は、ソール部8とフェース部4との境界線を含んでいてもよい。
【0042】
ヒール側均一領域S2hは、第1均一領域S1よりもヒール側に位置する。ヒール側均一領域S2hの輪郭線の一部は、クラウン部6とフェース部4との境界線である。ヒール側均一領域S2hの輪郭線の一部は、サイド部12とフェース部4との境界線である。ヒール側均一領域S2hの輪郭線の一部は、ソール部8とフェース部4との境界線である。ヒール側均一領域S2hの輪郭線は、フェース輪郭線とヒール輪郭線L5とによって構成されている。
【0043】
トウ側均一領域S2tの図心は、ヒール側均一領域S2hの図心よりも上側に位置している。トウ側均一領域S2tの図心は、フェースセンターFcよりも上側に位置している。ヒール側均一領域S2hの図心は、フェースセンターFcよりも下側に位置している。
【0044】
本願では、複数の均一肉厚領域が、第1均一領域と、この第1均一領域よりも薄い第2均一領域とを有する。第1均一領域が、複数の均一肉厚領域のうちの最も厚い領域(最厚肉部)であってもよい。第2均一領域が、複数の均一肉厚領域のうちの最も薄い領域(最薄肉部)であってもよい。本実施形態では、第1均一領域S1が最厚肉部であり、第2均一領域S2が最薄肉部である。
【0045】
なお、複数の均一肉厚領域が、3種の厚み領域を有していてもよい。すなわち、複数の均一肉厚領域が、最厚肉部と、この最厚肉部よりも薄い中厚肉部と、この中厚肉部よりも薄い最薄肉部とを有していても良い。更に、複数の均一肉厚領域が、4種以上の厚み領域を有していても良い。第2均一領域が第1均一領域よりも薄いという関係を満たす限り、いずれの領域が第1均一領域とされてもよいし、いずれの領域が第2均一領域とされてもよい。
【0046】
ヘッド2は、第1均一領域S1を有する。第1均一領域S1は、フェースセンターFcを含む。ヘッド2は、第2均一領域S2を有する。第2均一領域S2は、トウ側均一領域S2tとヒール側均一領域S2hとを有する。
【0047】
第1均一領域S1の面積MS1は限定されない。第1均一領域S1は、点であってもよい。
【0048】
フェース部4は、複数の肉厚移行領域として、第1移行領域R1と、第2移行領域R2と、第3移行領域R3とを有する。第1移行領域R1は、第1均一領域S1に隣接している。第1移行領域R1は、第1均一領域S1の周囲に配置されている。第1移行領域R1の内側の輪郭線L1は、第1均一領域S1の輪郭線でもある。この輪郭線L1は、楕円形である。なお、輪郭線L1は、楕円でなくてもよい。
【0049】
なお本願において楕円形というとき、この楕円形は、真の楕円に対する±10%の誤差範囲含む概念である。ある真の楕円Aについて、その長径及び短径の長さが前記楕円Aの+10%である楕円Bと、その長径及び短径の長さが前記楕円Aの−10%である楕円Cとが決定されうる。この楕円Bと楕円Cとの間に収まる楕円状図形は、楕円形であると定義される。なお、この場合、この楕円Bと楕円Cとの間に収まる楕円状図形の中心は、前記楕円Aの中心とみなされる。また、この場合、この楕円Bと楕円Cとの間に収まる楕円状図形の長軸及び短軸は、前記楕円Aの長軸及び短軸とみなされる。
【0050】
第1移行領域R1の外側の輪郭線L2は、楕円形である。この輪郭線L2は、前記輪郭線L1と同心である。なお本願において、2つの楕円の中心同士の距離が1mm以下である場合には、同心とみなされる。なお、輪郭線L2は、楕円でなくてもよい。
【0051】
輪郭線L2と輪郭線L1との間で、長軸の方向が一致している。なお本願において、2本の長軸の成す角が3°以下である場合、長軸の方向が一致していると見なされる。輪郭線L2と輪郭線L1との間で、短軸の方向が一致している。なお本願において、2本の短軸の成す角が3°以下である場合、短軸の方向が一致していると見なされる。
【0052】
楕円である輪郭線L1の長軸は、ヒール側にいくほど上側となるように傾斜している。楕円である輪郭線L2の長軸は、ヒール側にいくほど上側となるように傾斜している。
【0053】
このような楕円の傾斜は、一般的な打点分布に対応した高反発エリアの形成に寄与しうる。
【0054】
輪郭線L1の長軸の長さがA1とされ、短軸の長さがB1とされる。最小限の厚肉部で有効に強度を高める観点から、A1/B1は、所定の範囲内とされるのがよい。すなわち、A1/B1は、下限としては、1.01以上が好ましく、1.05 以上がより好ましく、1.1以上が更に好ましく、上限としては、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下が更に好ましい。
【0055】
輪郭線L2の長軸の長さがA2とされ、短軸の長さがB2とされる。最小限の第1移行領域R1で有効に強度を高める観点から、A2/B2は、所定の範囲内とされるのがよい。すなわち、A2/B2は、下限としては、1.01以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.1以上が更に好ましく、上限としては、2.8以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましい。
【0056】
第2移行領域R2は、第1移行領域R1に隣接している。第2移行領域R2の輪郭線の一部は、第1移行領域R1の外側の輪郭線L2である。第2移行領域R2の輪郭線は、この輪郭線L2と、輪郭線L3とによって構成されている。輪郭線L3は、トウ上側に向かって凸の曲線である。輪郭線L3の両端のそれぞれは、輪郭線L2上に位置する。
【0057】
第2移行領域R2は、第1移行領域R1のトウ側且つ上側に位置する。第2移行領域R2の図心は、フェースセンターFcよりも上側に位置する。第2移行領域R2の図心は、フェースセンターFcよりもトウ側に位置する。
【0058】
第2移行領域R2の図心は、輪郭線L1(楕円)の中心よりも上側に位置する。第2移行領域R2の図心は、輪郭線L1(楕円)の中心よりもトウ側に位置する。第2移行領域R2の図心は、輪郭線L2(楕円)の中心よりも上側に位置する。第2移行領域R2の図心は、輪郭線L2(楕円)の中心よりもトウ側に位置する。
【0059】
このように配置された第2移行領域R2は、一般的な打点分布を考慮しており、フェース部4の耐久性の向上に寄与しうる。
【0060】
第3移行領域R3は、第1移行領域R1及び第2移行領域R2からなる領域の周囲に配置されている。第3移行領域R3の内側輪郭線は、輪郭線L2及び輪郭線L3である。第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、フェース部4とクラウン部6との境界線である。第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、フェース部4とソール部8との境界線である。
【0061】
第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、トウ輪郭線L4である。トウ輪郭線L4は、第3移行領域R3とトウ側均一領域S2tとの間の境界線である。このトウ輪郭線L4は、トウ側に行くほど下側となるように傾斜している。トウ輪郭線L4は、トウ上側(フェース面f1の外側)に向かって凸となるように曲がっている。トウ輪郭線L4のヒール側(上側)の端は、フェース部4とクラウン部6との境界線に位置する。トウ輪郭線L4のトウ側(下側)の端は、フェース部4とサイド部12との境界線に位置する。トウ輪郭線L4の全体が、フェースセンターFcよりもトウ側に位置している。
【0062】
第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、ヒール輪郭線L5である。ヒール輪郭線L5は、第3移行領域R3とヒール側均一領域S2hとの間の境界線である。ヒール輪郭線L5は、トウ側に行くほど下側となるように傾斜している。ヒール輪郭線L5は、ヒール下側(フェース面f1の外側)に向かって凸となるように曲がっている。ヒール輪郭線L5のヒール側(上側)の端は、フェース部4とクラウン部6との境界線に位置する。ヒール輪郭線L5のトウ側(下側)の端は、フェース部4とソール部8との境界線に位置する。ヒール輪郭線L5の全体が、フェースセンターFcよりもヒール側に位置している。
【0063】
トウ輪郭線L4における最もヒール側の点PL40は、ヒール輪郭線L5における最もトウ側の点PL52よりもトウ側に位置している。トウ輪郭線L4における最も下側の点PL42は、ヒール輪郭線L5における最も下側の点PL52よりも上側に位置している。トウ輪郭線L4における最も上側の点PL40は、ヒール輪郭線L5における最も上側の点PL50よりも上側に位置している。
【0064】
このように配置されたトウ側均一領域S2t及びヒール側均一領域S2hは、一般的な打点分布に対応した高反発エリアの形成に寄与しうる。
【0065】
第1移行領域R1では、フェース肉厚が徐々に変化している。第1均一領域S1と第2移行領域R2との間に位置する部分において、第1移行領域R1の肉厚は、第1均一領域S1から第2移行領域R2に向かって徐々に減少している。また、第1均一領域S1と第3移行領域R3との間に位置する部分において、第1移行領域R1の肉厚は、第1均一領域S1から第3移行領域R3に向かって徐々に減少している。
【0066】
第2移行領域R2では、フェース肉厚が徐々に変化している。第2移行領域R2の肉厚は、第1移行領域R1から第3移行領域R3に向かって徐々に減少している。
【0067】
第3移行領域R3では、フェース肉厚が徐々に変化している。第2移行領域R2とトウ側均一領域S2tとの間に位置する部分において、第3移行領域R3の肉厚は、第2移行領域R2からトウ側均一領域S2tに向かって徐々に減少している。また、第1移行領域R1とヒール側均一領域S2hとの間に位置する部分において、第3移行領域R3の肉厚は、第1移行領域R1からヒール側均一領域S2hに向かって徐々に減少している。
【0068】
このように、複数の移行領域R1、R2、R3の全てにおいて、フェース肉厚は、第1均一領域S1からフェース部4の周縁に向かうにつれて減少している。このように、好ましくは、複数の移行領域の全てにおいて、フェース肉厚が第1均一領域S1からフェース部4の周縁に向かうにつれて減少している。
【0069】
輪郭線L1において段差は無い。輪郭線L2において段差は無い。輪郭線L3において段差は無い。輪郭線L4において段差は無い。輪郭線L5において段差は無い。フェース部4の裏面には段差が無い。フェース部4の裏面の全体は段差なく連続している。フェース部4では、段差に起因する応力集中が防止されている。
【0070】
図3は、第2実施形態に係るゴルフクラブヘッド20を示す。ヘッド20は、フェース部4、クラウン部6、ソール部8及びホーゼル部10を有する。更にヘッド20は、サイド部12を有する。サイド部12は、クラウン部6とソール部8との間に延びている。フェース部4の外面は、フェース面f1(打撃面)である。なお、フェース面f1にはスコアライン溝が設けられているが、このスコアライン溝の記載は省略されている。
【0071】
フェース面f1は、外側に向かって凸の曲面である。フェース面f1は、フェースバルジとフェースロールとを有する。ヘッド20は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド20は、ドライバーヘッド(1番ウッド)である。
【0072】
ヘッド20は、中空ヘッドである。フェース部4の内面(図示されず)はフェース裏面とも称される。このフェース裏面は、ヘッド20の中空部に面している。
【0073】
図3において破線で示されるのは、フェース部4の各領域を区画する区画線である。これらの区画線は、フェース部4の肉厚分布に基づいて決定される。これらの区画線は、フェース部4の裏面に形成された稜線及び谷線に対応しうる。
【0074】
フェース部4は、複数の均一肉厚領域として、第1均一領域S1と、第2均一領域S2とを有する。第1均一領域S1は、フェース部4の中央部に配置されている。第1均一領域S1は、フェースセンターFcを含む。第2均一領域S2は、第1均一領域S1から離れた位置に配置されている。第2均一領域S2は、フェース部4の周縁部に配置されている。第2均一領域S2の輪郭線の一部は、フェース輪郭線である。
【0075】
第2均一領域S2は、トウ側均一領域S2tと、ヒール側均一領域S2hとを有する。
【0076】
トウ側均一領域S2tは、第1均一領域S1よりもトウ側に位置する。トウ側均一領域S2tの輪郭線の一部は、クラウン部6とフェース部4との境界線である。トウ側均一領域S2tの輪郭線の一部は、サイド部12とフェース部4との境界線である。トウ側均一領域S2tの輪郭線は、ソール部8とフェース部4との境界線を含まない。
【0077】
ヒール側均一領域S2hは、第1均一領域S1よりもヒール側に位置する。ヒール側均一領域S2hの輪郭線の一部は、クラウン部6とフェース部4との境界線である。ヒール側均一領域S2hの輪郭線の一部は、サイド部12とフェース部4との境界線である。ヒール側均一領域S2hの輪郭線の一部は、ソール部8とフェース部4との境界線である。
【0078】
トウ側均一領域S2tの図心は、ヒール側均一領域S2hの図心よりも上側に位置している。トウ側均一領域S2tの図心は、フェースセンターFcよりも上側に位置している。ヒール側均一領域S2hの図心は、フェースセンターFcよりも下側に位置している。
【0079】
第1均一領域S1は、最厚肉部である。第1均一領域S1は、フェースセンターFcを含む。第2均一領域S2は、最薄肉部である。第2均一領域S2は、トウ側均一領域S2tとヒール側均一領域S2hとを有する。
【0080】
フェース部4は、複数の肉厚移行領域として、第1移行領域R1と、第2移行領域R2と、第3移行領域R3とを有する。第1移行領域R1は、第1均一領域S1に隣接している。第1移行領域R1は、第1均一領域S1の周囲に配置されている。第1移行領域R1の内側の輪郭線L1は、第1均一領域S1の輪郭線でもある。この輪郭線L1は、楕円形である。輪郭線L1は、楕円でなくてもよい。
【0081】
第1移行領域R1の外側の輪郭線L2は、楕円形である。この輪郭線L2は、前記輪郭線L1と同心である。輪郭線L2と輪郭線L1との間で、長軸の方向が一致している。輪郭線L2と輪郭線L1との間で、短軸の方向が一致している。輪郭線L2は、楕円でなくてもよい。
【0082】
第2移行領域R2は、第1移行領域R1に隣接している。第2移行領域R2の内側の輪郭線は、第1移行領域R1の外側の輪郭線L2である。第2移行領域R2は、第1移行領域R1の周囲に配置されている。第2移行領域R2の外側の輪郭線は、輪郭線L3である。第2移行領域R2の輪郭線は、この輪郭線L2と、輪郭線L3とによって構成されている。輪郭線L3は、楕円形である。輪郭線L3は、楕円でなくてもよい。
【0083】
輪郭線L3は、輪郭線L2と同心である。輪郭線L3と輪郭線L2との間で、長軸の方向が一致している。輪郭線L3と輪郭線L2との間で、短軸の方向が一致している。
【0084】
結局、輪郭線L3は、輪郭線L1及び輪郭線L2と同心である。輪郭線L3と輪郭線L2と輪郭線L1との間で、長軸の方向が一致している。輪郭線L3と輪郭線L2と輪郭線L1との間で、短軸の方向が一致している。
【0085】
楕円である輪郭線L1の長軸は、ヒール側にいくほど上側となるように傾斜している。楕円である輪郭線L2の長軸は、ヒール側にいくほど上側となるように傾斜している。楕円である輪郭線L3の長軸は、ヒール側にいくほど上側となるように傾斜している。
【0086】
このような楕円の傾斜は、一般的な打点分布に対応した高反発エリアの形成に寄与しうる。
【0087】
輪郭線L3の長軸の長さがA3とされ、短軸の長さがB3とされる。最小限の第2移行領域R2で有効に強度を高める観点から、A3/B3は、所定の範囲内とされるのがよい。すなわち、A3/B3は、下限としては、1.01以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.1以上が更に好ましく、上限としては、2.8以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましい。
【0088】
第3移行領域R3は、第2移行領域R2の周囲に配置されている。第3移行領域R3の内側輪郭線は、輪郭線L3である。第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、フェース部4とクラウン部6との境界線である。第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、フェース部4とソール部8との境界線である。
【0089】
第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、トウ輪郭線L4である。トウ輪郭線L4は、第3移行領域R3とトウ側均一領域S2tとの間の境界線である。このトウ輪郭線L4は、トウ側に行くほど下側となるように傾斜している。トウ輪郭線L4は、トウ上側(フェース面f1の外側)に向かって凸となるように曲がっている。トウ輪郭線L4のヒール側(上側)の端は、フェース部4とクラウン部6との境界線に位置する。トウ輪郭線L4のトウ側(下側)の端は、フェース部4とサイド部12との境界線に位置する。トウ輪郭線L4の全体が、フェースセンターFcよりもトウ側に位置している。
【0090】
第3移行領域R3の外側輪郭線の一部は、ヒール輪郭線L5である。ヒール輪郭線L5は、第3移行領域R3とヒール側均一領域S2hとの間の境界線である。ヒール輪郭線L5は、トウ側に行くほど下側となるように傾斜している。ヒール輪郭線L5は、ヒール下側(フェース面f1の外側)に向かって凸となるように曲がっている。ヒール輪郭線L5のヒール側(上側)の端は、フェース部4とクラウン部6との境界線に位置する。ヒール輪郭線L5のトウ側(下側)の端は、フェース部4とソール部8との境界線に位置する。ヒール輪郭線L5の全体が、フェースセンターFcよりもヒール側に位置している。
【0091】
トウ輪郭線L4における最もヒール側の点PL40は、ヒール輪郭線L5における最もトウ側の点PL52よりもトウ側に位置している。トウ輪郭線L4における最も下側の点PL42は、ヒール輪郭線L5における最も下側の点PL52よりも上側に位置している。トウ輪郭線L4における最も上側の点PL40は、ヒール輪郭線L5における最も上側の点PL50よりも上側に位置している。
【0092】
第1移行領域R1では、フェース肉厚が徐々に変化している。第1移行領域R1の肉厚は、第1均一領域S1から第2移行領域R2に向かって徐々に減少している。
【0093】
第2移行領域R2では、フェース肉厚が徐々に変化している。第2移行領域R2の肉厚は、第1移行領域R1から第3移行領域R3に向かって徐々に減少している。
【0094】
第3移行領域R3では、フェース肉厚が徐々に変化している。第2移行領域R2とトウ側均一領域S2tとの間に位置する部分において、第3移行領域R3の肉厚は、第2移行領域R2からトウ側均一領域S2tに向かって徐々に減少している。また、第2移行領域R2とヒール側均一領域S2hとの間に位置する部分において、第3移行領域R3の肉厚は、第2移行領域R2からヒール側均一領域S2hに向かって徐々に減少している。
【0095】
このように、複数の移行領域R1、R2、R3の肉厚は、第1均一領域S1からフェース部4の周縁に向かうにつれて減少している。複数の移行領域R1、R2、R3の肉厚は、第1均一領域S1から第2均一領域S2に向かうにつれて減少している。
【0096】
輪郭線L1において段差は無い。輪郭線L2において段差は無い。輪郭線L3において段差は無い。輪郭線L4において段差は無い。輪郭線L5において段差は無い。フェース部4の裏面には段差が無い。フェース部4の裏面の全体は段差なく連続している。フェース部4では、段差に起因する応力集中が防止されている。
【0097】
上述した第1及び第2実施形態では、複数の移行領域R1、R2、R3の全てにおいて、フェース肉厚は、第1均一領域S1からフェース部4の周縁に向かうにつれて減少している。複数の移行領域のいずれかにおいて、フェース肉厚は、第1均一領域S1からフェース部4の周縁に向かうにつれて増加していてもよい。
【0098】
上述した第1及び第2実施形態では、複数の肉厚移行領域が互いに隣接して配置されている。これらの肉厚移行領域は、肉厚変化率が互いに相違している。
【0099】
[肉厚変化率]
前述した放射状断面のそれぞれについて、当該放射状断面と前記特定平面との交線が決定されうる。この交線に沿った方向(特定交線方向)の距離(mm)がx軸とされる。また、フェース肉厚(mm)がy軸とされる。これらをx軸及びy軸とするxy平面が定義される。このxy平面におけるグラフの傾きが、肉厚変化率と定義される。
【0100】
このxy平面の一例が、
図4に示される。
図1には、フェースセンターFcを通り且つ第2移行領域R2を横切る距離が最も長い横断線Lmaxが示されている。
図4では、前記放射状断面の一例として、この横断線Lmaxに沿った断面が採用されている。すなわち、
図4のグラフは、前記横断線Lmaxに沿っており且つフェース−バック方向の平面PTを断面としたときの肉厚分布を示すグラフである。なお、見やすさを考慮して、
図4のグラフでは、x軸とy軸との間で寸法が一致していない。
【0101】
この
図4のグラフが示すように、第1均一領域S1よりもトウ側において、第3移行領域R3における肉厚変化率(傾斜角度)は、第2移行領域R2における肉厚変化率よりも大きい。また、第1均一領域S1よりもトウ側において、第1移行領域R1における肉厚変化率は、第2移行領域R2における肉厚変化率よりも大きい。第1均一領域S1よりもヒール側において、第1移行領域R1における肉厚変化率は、第3移行領域R3における肉厚変化率よりも大きい。
【0102】
この
図4のグラフが示すように、第1均一領域S1よりもトウ側において、第1移行領域R1の外側に隣接して第2移行領域R2が配置され、第2移行領域R2の外側に隣接して第3移行領域R3が配置されている。第1均一領域S1よりもトウ側において、第3移行領域R3における肉厚変化率(傾斜角度)は、第2移行領域R2における肉厚変化率よりも大きい。また、第1均一領域S1よりもトウ側において、第1移行領域R1における肉厚変化率は、第2移行領域R2における肉厚変化率よりも大きい。
【0103】
この
図4のグラフが示すように、第1均一領域S1よりもヒール側においては、第2移行領域R2が存在せず、第1移行領域R1の外側に隣接して第3移行領域R3が配置されている。第1均一領域S1よりもヒール側において、第1移行領域R1における肉厚変化率は、第3移行領域R3における肉厚変化率よりも大きい。
【0104】
図4において二点鎖線で示されるのは、第1均一領域S1と第2均一領域S2(トウ側均一領域S2t)との間の肉厚変化が一定である場合を示す仮想肉厚線Lkである。第1移行領域R1における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも大きい。第2移行領域R2における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも小さい。第3移行領域R3における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも大きい。第1移行領域R1と第2移行領域R2との境界(輪郭線L2)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも小さい。第2移行領域R2と第3移行領域R3との境界(輪郭線L3)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも大きい。
【0105】
図4の実施形態では、輪郭線L2での肉厚が仮想肉厚線Lkの肉厚よりも小さい。この薄さにより、反発性能が高まる。また、第1移行領域R1では、段差ではなく徐々に肉厚を変化させているため、フェース部4の耐久性は維持されている。
【0106】
第2移行領域R2では、肉厚変化率が抑制されているため、肉厚の急激な変化による耐久性の低下が抑制されている。このため、フェース部4の耐久性は維持されている。
【0107】
第3移行領域R3では、段差ではなく徐々に肉厚を変化させているため、耐久性が維持される。加えて、仮想肉厚線Lkに比べて肉厚変化率が大きいので、輪郭線L3における肉厚を確保して耐久性を維持しつつ、トウ輪郭線L4での肉厚が抑制され、高反発エリアが拡大している。
【0108】
図5の(a)、(b)及び(c)は、変形例の肉厚分布を示す。この
図5も、前記平面PTを断面とする肉厚分布である。
【0109】
図5の(a)の実施形態では、第1移行領域R1における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも大きい。第2移行領域R2における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも小さい。第3移行領域R3における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも小さい。第1移行領域R1と第2移行領域R2との境界(輪郭線L2)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも小さい。第2移行領域R2と第3移行領域R3との境界(輪郭線L3)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも小さい。
【0110】
この
図5の(a)では、移行部における肉厚が全体的に薄いため、高反発エリアが拡大しうる。また移行部の全体に亘って肉厚はなだらかに変化しているため、耐久性が維持されうる。更に、肉厚の急激な変化が抑制されているため、反発性能が安定的に得られうる。
【0111】
図5の(b)の実施形態では、第1移行領域R1における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも小さい。第2移行領域R2における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも大きい。第3移行領域R3における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも大きい。第1移行領域R1と第2移行領域R2との境界(輪郭線L2)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも大きい。第2移行領域R2と第3移行領域R3との境界(輪郭線L3)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも大きい。
【0112】
この
図5の(b)では、移行部における肉厚が全体的に厚いため、耐久性に優れる。また、移行部の全体に亘って肉厚はなだらかに減少しているため、肉厚の急激な変化が抑制され、安定的な反発性能が発揮される。
【0113】
図5の(c)の実施形態では、第1移行領域R1における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも小さい。第2移行領域R2における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも大きい。第3移行領域R3における肉厚変化率は、仮想肉厚線Lkの肉厚変化率よりも小さい。第1移行領域R1と第2移行領域R2との境界(輪郭線L2)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも大きい。第2移行領域R2と第3移行領域R3との境界(輪郭線L3)における肉厚は、仮想肉厚線Lkの肉厚よりも小さい。
【0114】
この
図5の(c)では、第1均一領域S1に近い領域が比較的厚いため、耐久性に優れる。また、第1均一領域S1から比較的遠い領域が比較的薄いため、高反発エリアが拡大されうる。肉厚はなだらかに減少してるため、耐久性にも優れる。
【0115】
打撃時におけるフェース部の変形は、複雑である。高反発エリアを拡大しつつフェース部の耐久性を高める観点から、より精密な肉厚分布を設定することが必要であることが分かった。本発明者が鋭意検討した結果、肉厚変化率が異なる複数の肉厚移行領域を隣接させることが有効であることが分かった。
【0116】
この構成では、肉厚移行領域において肉厚が徐々に変化しているため、耐久性が高い。更に、肉厚移行領域内で肉厚変化率に差を付けることで、肉厚分布の設計自由度が高まり、より精密な肉厚設計が可能となる。このため、フェース面f1の面積Mf1、フェース面f1の材質、フェース面f1の形状等、様々な要素によって微妙に変化するフェース部4の応力分布に対応して、精密な肉厚設計を行うことが可能となる。肉厚移行領域を連続して配置することで、肉厚の急激な変化が抑制されるとともに、肉厚に依存する反発性能の急激な変化も抑制される。よって、打点に起因する飛距離の差が少ない、安定した飛距離が実現する。
【0117】
肉厚分布の最適化の観点から、第1均一領域S1と第2均一領域S2との間に2つ以上の肉厚移行領域が隣接して配置されているのが好ましい。更には、第1均一領域S1と第2均一領域S2との間に3つの肉厚移行領域R1,R2,R3が隣接して配置されているのが好ましい。
【0118】
本願では、第1均一領域S1の肉厚がTS1(mm)とされ、第2均一領域S2の肉厚がTS2(mm)とされる。耐久性と反発性能との両立の観点から、TS2/TS1は、0.6以下が好ましく、0.55以下がより好ましく、0.5以下がより好ましい。耐久性と反発性能との両立の観点から、TS2/TS1は過小であっても好ましくない。この観点から、TS2/TS1は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.45以上がより好ましい。
【0119】
耐久性の観点から、第1均一領域S1の肉厚TS1は、3mm以上が好ましく、3.1mm以上がより好ましく、3.2mm以上がより好ましく、3.35mm以上が更に好ましい。
図1の実施形態において、肉厚TS1は3.4mmである。
【0120】
反発性能の観点から、第1均一領域S1の肉厚TS1は、4mm以下が好ましく、3.8mm以下がより好ましく、3.7mm以下がより好ましく、3.65mm以下が更に好ましい。
【0121】
反発性能の観点から、第2均一領域S2の肉厚TS2は、2.2mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.9mm以下がより好ましく、1.85mm以下が更に好ましい。
図1の実施形態において、第2均一領域S2の肉厚TS2は1.8mmである。すなわち、トウ側均一領域S2tの肉厚は1.8mmである。また、ヒール側均一領域S2hの肉厚は1.8mmである。
【0122】
本願において、第1均一領域S1の面積がMS1(mm
2)とされ、第2均一領域S2の面積がMS2(mm
2)とされ、フェース面f1の全体面積がMf1(mm
2)とされる。なお、
図1の実施形態において、面積MS2は、トウ側均一領域S2tの面積とヒール側均一領域S2hの面積との合計である。
【0123】
反発性能の観点から、MS1/Mf1は、0.2以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.12以下が更に好ましい。耐久性の観点から、MS1/Mf1は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.08以上が更に好ましい。
【0124】
反発性能の観点から、MS2/Mf1は、0.08以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.12以上が更に好ましい。耐久性の観点から、MS2/Mf1は、0.5以下が好ましく、0.45以下がより好ましく、0.4以下が更に好ましい。
【0125】
反発性能の観点から、面積MS1は、800mm
2以下が好ましく、600mm
2以下がより好ましく、400mm
2以下が更に好ましい。耐久性の観点から、面積MS1は、40mm
2以上が好ましく、60mm
2以上がより好ましく、80mm
2以上が更に好ましい。
【0126】
反発性能の観点から、面積MS2は、320mm
2以上が好ましく、400mm
2以上がより好ましく、480mm
2以上が更に好ましい。耐久性の観点から、面積MS2は、2000mm
2以下が好ましく、1800mm
2以下がより好ましく、1600mm
2以下が更に好ましい。
【0127】
反発性能の観点から、面積Mf1は、3700mm
2以上が好ましく、3800mm
2以上がより好ましく、3900mm
2以上が更に好ましい。ルールで定められたヘッド体積の上限を考慮すると、面積Mf1は、5000mm
2以下が好ましく、4600mm
2以下がより好ましく、4400mm
2以下が更に好ましい。
【0128】
フェース部4の重量がWf1(g)とされ、フェース面f1の全体面積がMf1(mm
2)とされる。Wf1/Mf1は、フェース部4の単位面積当たりの重量である。
【0129】
フェース部4の軽量化により、ヘッド2が軽量化されうる。ヘッド2の軽量化は、ヘッドスピードの向上に寄与する。また、フェース部4の軽量化により、余剰重量が確保されるので、ヘッド2の重量配分の設計自由度が向上する。そして、上記構成による精密な肉厚設計により、フェース部4の平均厚みを実質的に抑制しながら、耐久性を高めることができる。これらの観点から、Wf1/Mf1は、0.0114(g/mm
2)以下が好ましく、0.00113(g/mm
2)以下がより好ましく、0.00112(g/mm
2)以下が更に好ましい。耐久性の観点から、Wf1/Mf1は、0.001(g/mm
2)以上が好ましく、0.00105(g/mm
2)以上がより好ましく、0.0011(g/mm
2)以上が更に好ましい。
【0130】
上記構成は、フェース重量Wf1を低下させつつ反発性能を高めうる。この観点から、Wf1は、48.5(g)以下がより好ましく、48(g)以下がより好ましく、47.5(g)以下が更に好ましい。耐久性の観点から、Wf1は、44(g)以上が好ましく、44.5(g)以上がより好ましく、45(g)以上が更に好ましい。
【0131】
フェース部4の材質は限定されない。フェース部4の材質として、金属及び複合材料が例示される。複合材料として、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)が例示される。金属として、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン−ニッケル合金から選ばれる一種以上の金属が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。ステンレス鋼の具体例として、CUSTOM450(カーペンター社製)が例示される。チタン合金として、αチタン、αβチタン及びβチタンが挙げられる。αチタンとして、例えば、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−8Al−1V−1Moが挙げられる。αβチタンとして、例えば、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo、Ti−6Al−6V−2Sn及びTi−4.5Al−3V−2Fe−2Moが挙げられる。βチタンとして、例えば、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−20V−4Al−1Sn、Ti−22V−4Al、Ti−15Mo−2.7Nb−3Al−0.2Si及びTi−16V−4Sn−3Al−3Nbが挙げられる。純チタンとして、工業用純チタンが例示される。この工業用純チタンとして、日本工業規格で規定される1種純チタン、2種純チタン、3種純チタン及び4種純チタンが例示される。耐久性の観点から、チタン合金が好ましい。
【0132】
フェース部4の材質は、フェース部4以外の部分の材質と相違していてもよい。フェース部4の材質は、フェース部4以外の部分の材質と同じであってもよい。フェース部4とフェース部4以外の部分(ヘッド本体部等)が別々に成形される場合、それらは互いに溶接できるのが好ましい。
【0133】
複合材料(炭素繊維強化プラスチック等)は、比強度に優れる。フェース部4の材質が複合材料である場合、 Wf1/Mf1を更に小さくすることが可能となる。この場合、Wf1/Mf1は、0.0105(g/mm
2)以下が好ましく、0.0104(g/mm
2)以下がより好ましく、0.0103(g/mm
2)以下が更に好ましい。耐久性の観点から、フェース部4の材質が複合材料である場合のWf1/Mf1は、0.009(g/mm
2)以上が好ましく、0.0093(g/mm
2)以上がより好ましく、0.0095(g/mm
2)以上が更に好ましい。
【0134】
フェースセンターFcの近傍は、最も撓みやすく、且つ、打点となる頻度が高い。耐久性の観点から、第1均一領域S1の図心とフェースセンターFcとの距離は小さいほうがよい。具体的には、第1均一領域S1の図心とフェースセンターFcとの距離は、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。この距離は、0mmであってもよい。
【0135】
ヘッドのタイプは限定されず、ウッド型、ハイブリッド型(ユーティリティ型)、アイアン型、パター型等が例示される。飛距離が重視されるウッド型及びハイブリッド型が好ましく、ウッド型がより好ましい。同様の観点から、中空ヘッドが好ましい。
【0136】
ヘッド体積が大きい場合、フェース面f1の面積Mf1が大きい傾向にあるため、本発明が効果的に適用されうる。この観点から、ヘッド体積は、100cm
3以上が好ましく、120cm
3以上がより好ましく、150cm
3以上がより好ましく、200cm
3以上がより好ましく、300cm
3以上がより好ましく、400cm
3以上がより好ましく、420cm
3以上がより好ましい。ルールの観点から、ヘッド体積は、470cm
3以下が好ましい。
【0137】
強度の観点から、ヘッド重量は175g以上が好ましく、180g以上がより好ましく、185g以上がより好ましい。フェース部4の軽量性により、ヘッド重量の軽量化が達成されうる。この観点から、特に1番ウッドのヘッドにおいては、ヘッド重量は、200g以下が好ましく、195g以下がより好ましく、190g以下がより好ましい。
【0138】
好ましいヘッドの一例は、ドライバーヘッドである。ドライバーとは、1番ウッド(W#1)を意味する。ドライバーはフェース部4の面積Mf1が大きいため、本発明が好ましく適用される。通常、ドライバー用ヘッドは、以下の構成を有する。
(1a)曲面のフェース面(フェースバルジ及びフェースロールを有するフェース面)
(1b)中空部
(1c)300cc以上460cc以下の体積
(1d)7度以上14度以下のリアルロフト
【0139】
好ましいヘッドの他の例は、フェアウェイウッドである。フェアウェイウッドも比較的大きな面積Mf1を有する。フェアウェイウッドとして、3番ウッド(W#3)、4番ウッド(W#4)、5番ウッド(W#5)、7番ウッド(W#7)、9番ウッド(W#9)、11番ウッド(W#11)及び13番ウッド(W#13)が例示される。通常、フェアウェイウッド用ヘッドは、以下の構成を有する。
(2a)曲面のフェース面(フェースバルジ及びフェースロールを有するフェース面)
(2b)中空部
(2c)100cc以上300cc未満の体積
(2d)14度よりも大きく33度以下のリアルロフト
【0140】
より好ましくは、フェアウェイウッドのヘッド体積は、100cc以上200cc以下である。
【0141】
好ましいヘッドの更に他の例は、ユーティリティ型ヘッド(ハイブリッド型ヘッド)である。ユーティリティ型ヘッドも、比較的大きな面積Mf1を有する。通常、ユーティリティ型ヘッド(ハイブリッド型ヘッド)は、以下の構成を有する。
(3a)曲面のフェース面(フェースバルジ及びフェースロールを有するフェース面)
(3b)中空部
(3c)100cc以上200cc以下の体積
(3d)15度以上33度以下のリアルロフト
【0142】
より好ましくは、ユーティリティ型ヘッド(ハイブリッド型ヘッド)の体積は、100cc以上150cc以下である。
【0143】
本発明は、中空構造を有するアイアンヘッドにも好ましく用いられうる。本発明は、中空構造を有するパターヘッドにも好ましく用いられうる。