特許第6911580号(P6911580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6911580
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
   H02M3/155 P
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-128132(P2017-128132)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-13076(P2019-13076A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177312
【弁理士】
【氏名又は名称】辰己 雄一
(72)【発明者】
【氏名】矢口 幸宏
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/091358(WO,A1)
【文献】 特開2013−038347(JP,A)
【文献】 特開2007−318920(JP,A)
【文献】 特開2007−295800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体スイッチング素子のオン、オフ動作によって所定の出力を得るスイッチング電源装置の制御回路であって、該制御回路は、
前記スイッチング電源装置の出力電圧を表す信号を入力するための第1の外部端子と、
該第1の外部端子に入力された信号と所定の基準値とを比較し、その差分に応じた誤差信号を出力する誤差増幅器と、
該誤差増幅器の出力端子に位相補償用回路を接続するための第2の外部端子と、
前記誤差増幅器から出力される誤差信号が入力され、該誤差信号に基づいて前記パワー半導体スイッチング素子をオン、オフするためのパルスを生成する駆動部と、
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子との短絡状態を検出する短絡検出回路と、
前記誤差信号を保持する保持回路と、
を備え、
前記短絡検出回路が前記短絡状態を検出すると、前記保持回路が保持する短絡状態検出前の誤差信号を、前記誤差増幅器からの誤差信号に代えて前記駆動部へ入力する、ことを特徴とするスイッチング電源装置の制御回路。
【請求項2】
前記短絡検出回路は、前記第1の外部端子において検出された電圧値と、前記第2の外部端子において検出された電圧値とが略同一の場合に短絡状態を検出したとする、ことを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
さらに、検出した前記短絡状態がある一定時間継続した場合、前記第2の外部端子とグランドとの間を導通させる保護モードを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項4】
前記第2の外部端子とグランドとの間に配置され、前記短絡状態がある一定時間継続した後にゲートに入力される保護信号に応じてターンオンする半導体スイッチをさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の制御回路。

【請求項5】
前記駆動部は、PWMコンパレータを備え、
前記PWMコンパレータは、前記短絡状態検出前は、所定の鋸歯状波信号と、前記誤差増幅器からの誤差信号とを比較してパルスを生成し、前記短絡状態が検出された場合、前記所定の鋸歯状波信号と、前記保持回路から入力される信号とを比較してパルスを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項6】
前記保持回路は、入力された電圧値をアナログ・デジタル変換してデジタルデータを保持するアナログ・デジタル変換回路と、前記アナログ・デジタル変換回路から出力されたデジタルデータにデジタル・アナログ変換を行って変換結果を前記PWMコンパレータに出力するデジタル・アナログ変換回路と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の制御回路。
【請求項7】
前記制御回路は一つの半導体チップに集積されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の制御回路。
【請求項8】
前記第1の外部端子および前記第2の外部端子は隣接していることを特徴とする請求項7に記載の制御回路。
【請求項9】
スイッチング電源装置の制御回路であって、
該制御回路は集積回路からなるとともに、隣接する第1の端子と第2の端子の短絡を検出する短絡検出回路を有し、
該短絡検出回路は、
前記第1の端子の電圧から前記第2の端子の電圧を減算する第1の減算回路と、前記第2の端子の電圧から前記第1の端子の電圧を減算する第2の減算回路と、を有し、
前記第1の減算回路の出力と前記第2の減算回路の出力が共に所定値以下である状態が所定期間を超えると、前記第1の端子と前記第2の端子が短絡していると判断することを特徴とする、スイッチング電源装置の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置の制御回路、特に半導体集積回路により構成される制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源では、出力電圧を監視してその結果をフィードバックすることで、スイッチングによる出力電圧の調整を行っている。このようなフィードバック制御により、スイッチング電源の出力電圧の変動を抑えている。そのため、フィードバック制御を行う制御回路自体の動作を安定化させ、フィードバック制御動作を確実なものとすることが、重要となる。
【0003】
制御回路のフィードバック制御動作を不安定にする一因として、制御回路の端子間の短絡が挙げられる。制御回路は通常半導体集積回路により構成されるが、半導体集積回路レイアウトの効率や、チップサイズやパッケージサイズの制限上、隣接する端子間の距離が短くなっていて、隣接端子間の短絡を常に100%回避するのは難しくなっている。端子間が短絡すると制御回路が正常に動作できなくなるので、隣接する端子間の短絡を検出することができれば、制御回路の動作の安定化を図ることができる。この種の隣接する端子間の短絡を検出する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−66340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、短絡検出回路は、2入力排他論理和(エクスクルーシブOR)ゲート及びDフリップフロップにより構成されている。この短絡検出回路は、隣接した端子で検出されたデータが、所定クロック数の間だけ同じか否かに基づいて端子間の短絡を検出している。しかしながら、この短絡検出回路では、短絡検出のために外部から試験データを入力する必要があり、また、扱えるデータの種類がデジタルデータに限られているという課題があった。
【0006】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイッチング電源の制御回路における隣接したアナログ信号を扱う端子間の短絡を、外部から試験データを入力することなく検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一の観点に係る制御回路は、パワー半導体スイッチング素子のオン、オフ動作によって所定の出力を得るスイッチング電源装置の制御回路であって、該制御回路は、前記スイッチング電源装置の出力電圧を表す信号を入力するための第1の外部端子と、該第1の外部端子に入力された信号と所定の基準値とを比較し、その差分に応じた誤差信号を出力する誤差増幅器と、該誤差増幅器の出力端子に位相補償用回路を接続するための第2の外部端子と、前記誤差増幅器から出力される誤差信号が入力され、該誤差信号に基づいて前記パワー半導体スイッチング素子をオン、オフするためのパルスを生成する駆動部と、前記第1の外部端子と前記第2の外部端子との短絡状態を検出する短絡検出回路と、前記誤差信号を保持する保持回路と、を備え、前記短絡検出回路が前記短絡状態を検出すると、前記保持回路が保持する短絡状態検出前の誤差信号を、前記誤差増幅器からの誤差信号に代えて前記駆動部へ入力する。
【0008】
以上のような構成を採用することにより、本発明の一の観点によれば、スイッチング電源用の制御回路は、前記第1の外部端子と前記第2の外部端子との短絡状態を短絡検出回路が検出し、保持回路が保持していた短絡状態検出前の誤差信号を、誤差信号増幅器からの誤差信号に代えて駆動部に入力する。これにより、短絡状態における誤差増幅器からの出力ではなく、短絡状態となる直前の誤差信号を駆動部に入力できるので、短絡状態において出力された誤差増幅器の出力が駆動部に入力されることがない。これにより、両端子間の短絡によってスイッチング電源装置の出力が上昇し続けてしまう、という問題を回避できるようになる。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明の別の観点に係る制御回路は、スイッチング電源装置の制御回路であって、該制御回路は集積回路からなるとともに、隣接する第1の端子と第2の端子の短絡を検出する短絡検出回路を有し、該短絡検出回路は、前記第1の端子の電圧から前記第2の端子の電圧を減算する第1の減算回路と、前記第2の端子の電圧から前記第1の端子の電圧を減算する第2の減算回路と、を有し、前記第1の減算回路の出力と前記第2の減算回路の出力が共に所定値以下である状態が所定期間を超えると、前記第1の端子と前記第2の端子が短絡していると判別することを特徴とする。
【0010】
以上のような構成を採用することにより、本発明の別の観点によれば、スイッチング電源装置の通常動作において、偶発的に第1の端子と第2の端子との電圧が略一致しても、直ちに短絡が生じているとは判別せず、その状態が所定期間を超えた場合に恒久的な短絡が生じていると判別する。従って、偶発的な条件において直ちにスイッチング電源装置の動作を停止してしまうことが防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチング電源の制御回路における隣接したアナログ信号を扱う端子間の短絡を、外部から試験データを入力することなく検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一の実施の形態に係る、スイッチング電源用の制御回路の構成を示す回路図である。
図2図1に示す短絡検出回路及び電圧保持回路の詳細を示す回路図である。
図3】短絡検出動作における動作波形の例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る、スイッチング電源用の制御回路について、図面を参照して詳細に説明する。図中において、同一または対応する構成要素については同一の参照番号を付し、その詳細な説明の重複を省略する。
【0014】
(全体構成)
図1に、本発明の一の実施の形態に係る、スイッチング電源用の制御回路及びその制御回路が適用されたスイッチング電源装置の構成の一例を示す。本発明の実施の形態による特徴としては、例えば、後述して詳細に説明する短絡検出回路21と、電圧保持回路22と、を備えた点が挙げられる。まず、全体的な構成について以下に説明する。
【0015】
図1に示すように、このスイッチング電源装置SRは、例えば、昇圧形のスイッチング電源装置であり、全波整流器1と、コンデンサ2と、インダクタ3と、インダクタ3に磁気結合されてインダクタ3のゼロ電流検出に用いられる補助インダクタ14と、パワー半導体スイッチング素子4と、ダイオード5と、コンデンサ6と、抵抗器R1乃至R6と、コンデンサC1、C2と、制御回路15と、を備える。制御回路15は、ゼロ電流検出用コンパレータ7と、RSフリップフロップ8と、エラーアンプ9と、発振器10と、PWMコンパレータ11と、過電圧検出用コンパレータ13と、過電流検出用コンパレータ16と、リスタートタイマ18と、ドライバ19と、出力低下検出用コンパレータ20と、短絡検出回路21と、電圧保持回路22と、2入力のORゲート23と、4入力のORゲート24と、を備える。また、インダクタ3と、パワー半導体スイッチング素子4と、ダイオード5と、コンデンサ6は、コンデンサ2の電圧に対する昇圧回路を構成している。なお、これらによる昇圧動作は周知であるので、説明は省略する。
【0016】
また、各種機能のための端子として、スイッチング電源装置SRは出力端子17を備え、制御回路15は、ゼロクロス端子ZCDと、ゲートドライブ出力端子OUTと、電流検出端子ISと、フィードバック入力端子FB(以下、フィードバック端子FBとも称する)と、差動増幅器出力端子COMP(以下、位相補償素子接続端子COMPとも称する)と、タイミング抵抗外付け端子RTと、を備える。なお、制御回路15は、他にも、電源端子や接地端子等を備えるが、これらの図示は省略する。以下、各部について詳細に説明する。
【0017】
全波整流器1は、例えば、4つの整流ダイオードを備え、入力端が外部のAC電源に接続され、出力端がコンデンサ2の一端とインダクタ3の一端に接続される。全波整流器1は、さらに、接地された一端(出力端)を有する。全波整流器1は、外部のAC電源からの交流電圧を整流して直流電圧を出力する。また、コンデンサ2は、他端が接地されており、全波整流器1から出力される整流電圧を平滑する。
【0018】
インダクタ3の他端は、ダイオード5のアノードと、パワー半導体スイッチング素子4のドレインに接続される。補助インダクタ14の一端は、抵抗R2を介してゼロクロス端子ZCDに接続され、他端が接地される。補助インダクタ14は、インダクタ3のゼロ電流検出素子として機能する。すなわち、インダクタ3がダイオード5を介してコンデンサ6側に電流を流している状態では、インダクタ3にコンデンサ6の電圧とコンデンサ2の電圧の差電圧が印加されていて、この差電圧に比例した電圧が補助インダクタ14の両端に発生している。この状態はインダクタ3に蓄積されたエネルギーを出力側に放出している状態であり、インダクタ3に流れる電流は減少を続けている。そしてインダクタ3に流れる電流がゼロになるとダイオード5が遮断し、インダクタ3の両端電圧はゼロとなり、これに伴い補助インダクタ14の両端電圧もゼロとなる。すなわち、補助インダクタ14の両端電圧が有限の値(これは1スイッチング周期の間ではほぼ一定と見做せる)からゼロになった瞬間がインダクタ3に流れる電流がゼロになった瞬間である。ゼロ電流検出用コンパレータ7は、この補助インダクタ14の両端電圧の変化を検出するコンパレータである。
【0019】
本実施の形態のスイッチング電源装置SRは、インダクタ3を流れる電流がゼロとなるタイミングで後述するパワー半導体スイッチング素子4をターンオンし、スイッチング電源装置SRの力率を改善し、これによりスイッチング電源装置SRから発生される高周波ノイズの低減を図っている。
【0020】
パワー半導体スイッチング素子4は、例えば、NチャネルパワーMOSFETから構成され、ゲートに印加される電圧信号(以下、ゲートドライブ信号とも称する)に応じてスイッチング動作を行う。本実施の形態では、後述するRSフリップフロップ8からハイレベル(以下、Hレベルとも称する)の信号がドライバ19を介してゲートに入力されると、パワー半導体スイッチング素子4はオンする。また、RSフリップフロップ8からロウレベル(以下、Lレベルとも称する)の信号がドライバ19を介してゲートに入力されると、パワー半導体スイッチング素子4はオフする。
ダイオード5は、アノードがインダクタ3に接続されるとともに、パワー半導体スイッチング素子4のドレインに接続され、カソードがコンデンサ6の一端及び出力端子17に接続される。ダイオード5は、本実施の形態の構成の場合、上述のように、パワー半導体スイッチング素子4のOFF時に、インダクタ3に蓄えられたエネルギーをこのダイオード5を通してコンデンサ6側に放出し、その結果、出力端子17から昇圧された電圧が供給される。
【0021】
コンデンサ6は出力コンデンサであり、他端が接地されており、パワー半導体スイッチング素子4のスイッチング動作に起因する高周波成分を除去し、平滑化された電圧を供給する。上述のように、このコンデンサ6と、インダクタ3と、パワー半導体スイッチング素子4と、ダイオード5とが、昇圧回路を形成する。この昇圧回路は、出力端子17とグランドとの間に接続される、図示しない負荷に対して、例えば、略400Vの直流出力電圧を供給する。昇圧された出力電圧の電圧値は、フィードバック制御によって設定される。
【0022】
ゼロ電流検出用コンパレータ7は、反転入力端と非反転入力端とが、それぞれ、ゼロクロス端子ZCDと、比較用基準電圧源とに接続され、出力端がORゲート23を介してRSフリップフロップ8のセット端に接続される。上述のように、ゼロ電流検出用コンパレータ7は、ゼロクロス端子ZCD、抵抗R2、及び補助インダクタ14を介して、上記の昇圧回路におけるインダクタ3に流れる電流がゼロになるタイミングを検出するためのものである。インダクタ3に流れる電流がゼロとなったタイミングを検出すると、ゼロ電流検出用コンパレータ7は、Hレベルの信号(RSフリップフロップ8に対するセット信号)を、ORゲート23を介してリスタートタイマ18の出力とともにRSフリップフロップ8のセット端Sに入力する。
【0023】
RSフリップフロップ8は、リセット端RがORゲート24を介してPWMコンパレータ11の出力端に接続される。また、RSフリップフロップ8は、出力端Qがドライバ19の入力端と、発振器10の一方の入力端とに接続される。RSフリップフロップ8は、セット端Sに入力される信号がHレベル、リセット端Rに入力される信号がLレベルの場合、セットされてHレベルのゲートドライブ信号をドライバ19及び発振器10に入力する。また、RSフリップフロップ8は、セット端Sに入力される信号がLレベル、リセット端Rに入力される信号がHレベルの場合、リセットされてLレベルのゲートドライブ信号を出力する。
【0024】
エラーアンプ9は、非反転入力端が基準電圧源に接続され、反転入力端がフィードバック端子FBに接続される。また、エラーアンプ9は、出力端が差動増幅器出力端子COMPと、短絡検出回路21と、電圧保持回路22と、切替回路26とに接続される。切替回路26の出力は、PWMコンパレータ11の反転入力端に接続される。エラーアンプ9は、後述するフィードバック信号の電圧値と、基準電圧源の電圧値との差分を増幅して誤差信号を生成し、この誤差信号を短絡検出回路21、電圧保持回路22、及び切替回路26に入力する。短絡検出回路21、電圧保持回路22、及び切替回路26を含めたエラーアンプ9とPWMコンパレータ11との接続関係については、後述してより詳細に説明する。
【0025】
発振器10は、他方の入力端がタイミング抵抗外付け端子RTを介して抵抗R1に接続され、出力端がPWMコンパレータ11の非反転入力に接続される。発振器10は、PWMコンパレータ11においてPWM制御を行うための鋸歯状波を生成する。本実施の形態では、発振器10は、RSフリップフロップ8からHレベルの信号が入力されることでトリガされ、パワー半導体スイッチング素子4がオンするタイミングと同じタイミングで鋸歯状波の生成を開始する。
一方、RSフリップフロップ8からの入力信号がLレベルの場合、発振器10は、鋸歯状波の生成を中止し、鋸歯状波の発振出力を初期値に戻し、次のトリガ、すなわち、Hレベルの信号が入力されるのを待つ。
【0026】
PWMコンパレータ11は、出力端がORゲート24を介してRSフリップフロップ8のリセット端子Rに接続される。PWMコンパレータ11は、エラーアンプ9あるいは電圧保持回路22から出力された誤差信号と、発振器10から出力された鋸歯状波信号とを比較し、誤差信号の信号レベルが鋸歯状波信号の信号レベルよりも大きい場合、Lレベルの信号を出力する。一方、PWMコンパレータ11は、鋸歯状波信号の信号レベルが誤差信号の信号レベルに達した場合、ORゲート24を介してHレベルの信号(RSフリップフロップ8に対するリセット信号)をRSフリップフロップ8のリセット端Rに入力する。これにより、RSフリップフロップ8は、Lレベルの信号をドライバ19に入力する。
【0027】
ゼロ電流検出用コンパレータ7、RSフリップフロップ8、発振器10、PWMコンパレータ11、リスタートタイマ18、ドライバ19、およびORゲート23,24は、誤差信号を基にパワー半導体スイッチング素子4をオン、オフするためのパルスを生成する駆動部25を構成している。
【0028】
過電圧検出用コンパレータ13は、反転入力端が比較用基準電源に接続され、非反転入力端がフィードバック端子FBに接続される。また、過電圧検出用コンパレータ13は、出力端がORゲート24を介してRSフリップフロップ8のリセット端に接続される。過電圧検出用コンパレータ13は、昇圧された出力電圧が、過大となっていないか否かをフィードバック端子FBを介して検出するためのものである。
【0029】
過電流検出用コンパレータ16は、反転入力端が比較用基準電源に接続され、非反転入力端が電流検出端子ISに接続される。また、過電流検出用コンパレータ16は、出力端がORゲート24を介してRSフリップフロップ8のリセット端に接続される。過電流検出用コンパレータ16は、パワー半導体スイッチング素子4を流れる電流が、過大となっていないか否かを電流検出端子ISを介して検出するためのものである。
【0030】
ドライバ19は、出力端がゲートドライブ出力端子OUTを介してパワー半導体スイッチング素子4のゲートに接続され、パワー半導体スイッチング素子4のオン、オフ動作を制御するゲートドライブ信号を入力する。
【0031】
出力低下検出用コンパレータ20は、非反転入力端が比較用基準電圧源に接続され、反転入力端がフィードバック端子FBに接続される。出力低下検出用コンパレータ20は、スイッチング電源装置SRの出力電圧の電圧値が、所望の電圧値よりも小さくなっていないか否かにより、スイッチング電源装置SRの出力端子17とグランド間の短絡を検出するためのものである。すなわち、パワー半導体スイッチング素子4のスイッチング動作が停止していて昇圧動作が行われていない状態でも、コンデンサ6はインダクタ3およびダイオードを介して全波整流器1の出力電圧で充電されているので、通常はフィードバック端子FBの電圧が上記比較用基準電圧源の電圧より低くなることはない。フィードバック端子FBの電圧が上記比較用基準電圧源の電圧より低いというとは、スイッチング電源装置SRの出力端子17がグランドに短絡している状態と判断できるので、スイッチング電源装置SRのスイッチング動作を停止させるのである。
【0032】
短絡検出回路21は、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPとの間の短絡を検出するもので、2つの入力端が、それぞれ、フィードバック端子FBと、位相補償素子接続端子COMPとに接続される。なお、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPは、同じエラーアンプ9の入力と出力に接続される端子であるので、通常は隣接端子となる。本実施の形態は、この隣接したフィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPの短絡を特に対象としている。また、短絡検出回路21の出力端が、電圧保持回路22と切替回路26とに接続される。短絡検出回路21の構成については、後述してより詳細に説明する。
【0033】
電圧保持回路22は、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPとの間の短絡が検出された場合PWMコンパレータ11の反転入力端に入力される信号を、エラーアンプ9からの誤差信号から、自回路で保持した電圧信号に切り替えるものである。電圧保持回路22は、2つの入力端が、それぞれ、短絡検出回路21と、位相補償素子接続端子COMPとに接続される。また、電圧保持回路22は、出力端が切替回路26に接続される。電圧保持回路22の構成についても、後述してより詳細に説明する。
【0034】
次に、抵抗R1乃至R6、並びにコンデンサC1、C2について説明する。
抵抗R1は、一端がタイミング抵抗外付け端子RTに接続され、他端が接地される。発振器10が生成する鋸歯状波の傾きは、この抵抗R1の抵抗値に応じた傾きとなる。
抵抗R2は、一端が補助インダクタ14に接続され、他端がゼロクロス端子ZCDに接続される。インダクタ3に流れる電流に応じて補助インダクタ14に生起された電圧が、抵抗R2を介してゼロクロス端子ZCDに印加される。
抵抗R3は、一端がパワー半導体スイッチング素子4のソースに接続され、他端が接地される。抵抗R3は、パワー半導体スイッチング素子4のソースからグランドに流れる電流を検出するための抵抗であり、自身に流れる電流を電圧に変換して電流検出信号とする。
【0035】
抵抗R4、R5は互いに直列に接続され、出力電圧の大きさを検出するものである。抵抗R4、R5の接続点がフィードバック端子FBに接続される。
抵抗R6は、一端が位相補償素子接続端子COMPに接続され、他端がコンデンサC2の一端に接続される。抵抗R6とコンデンサC2との直列回路は、コンデンサC1に対して並列接続される。コンデンサC1は、一端が位相補償素子接続端子COMPに接続され、他端が接地される。
【0036】
次に、各端子について説明する。
スイッチング電源装置SRの出力端子17は、直列接続された抵抗R4、R5を介して接地されるとともに、この出力端子17とグランドとの間に接続される、図示しない負荷に対してDC電圧を供給する、
制御回路15のゼロクロス端子ZCDは、上述のように、抵抗R2を介して補助インダクタ14に接続される。また、ゼロクロス端子ZCDは、ゼロ電流検出用コンパレータ7の反転入力端にも接続されており、補助インダクタ14を介して、インダクタ3に流れる電流がゼロとなったときの電圧変化を、ゼロ電流検出用コンパレータ7に入力するための端子である。
ゲートドライブ出力端子OUTは、パワー半導体スイッチング素子4のゲートに接続され、このパワー半導体スイッチング素子4のON、OFF動作のためのゲートドライブ信号を、ドライバ19からパワー半導体スイッチング素子4のゲートに入力するための端子である。
【0037】
電流検出端子ISは、また、パワー半導体スイッチング素子4のソース、過電流検出用コンパレータ16の非反転入力端に接続され、パワー半導体スイッチング素子4を流れる電流を検出するための端子であり、過電流検出用コンパレータ16で過電流の発生を検出するために、この過電流検出用コンパレータ16にパワー半導体スイッチング素子4を流れる電流を表す信号を供給するための端子である。
フィードバック端子FBは、出力端子17から出力される電圧を、抵抗R4、R5によって抵抗分圧した電圧を、上記の各部にフィードバックすることでスイッチング電源装置SRに対してフィードバック制御を行うための端子である。
位相補償素子接続端子COMPは、エラーアンプ9の出力に対する位相調整用の素子(抵抗R6及びコンデンサC1、C2)を接続するための端子である。なお、本実施の形態では、エラーアンプ9としてOTA(Operational Transconductance Amplifier:2つの入力の差電圧に応じた電流を出力するアンプ)を用いているが、OTAの代わりにオペアンプ(演算増幅回路)を使ってもよい。その場合、別のタイプの位相調整用素子が位相補償素子接続端子COMPに接続されることになるが、スイッチング電源装置や制御回路の動作は同様のものとなる。
タイミング抵抗外付け端子RTは、発振器10の発振によって発生する鋸歯状波の傾きを設定する抵抗R1を外付け接続するための端子である。
【0038】
本実施の形態の場合、制御回路15は各種の機能を一体にしたIC(半導体集積回路)として構成されている。
【0039】
以上のような構成を採用したスイッチング電源装置SRにおいては、出力端子17とグランドとの間に接続された負荷(図示せず)の大きさが一定の場合、上記の誤差信号の大きさも一定となる。この場合、パワー半導体スイッチング素子4がオンする期間、すなわち、パワー半導体スイッチング素子4のスイッチング動作によるパルスの幅は、発振器10が、基準値から鋸歯状波の生成を開始して当該鋸歯状波の値が上記の誤差信号の大きさに達するまでの時間に対応する。従って、パワー半導体スイッチング素子4がオンする期間は、一定に制御され得る。
【0040】
一方、上述したスイッチング電源装置SRでは、その入力がAC電圧であるため、その位相角によって、インダクタ3の両端電圧に変化が生じる。このため、インダクタ3を流れる電流は、その傾きが入力電圧に依存して変化する。そこで、上述したスイッチング電源装置SRは、インダクタ3を流れる電流がゼロとなったタイミングでパワー半導体スイッチング素子4をオンすることで、入力電流のピーク値(すなわち、パワー半導体スイッチング素子4がオフするタイミングでの電流)およびスイッチング周期毎の入力電流平均値が入力交流電圧と同相になるようにして、力率の改善を図っている。
【0041】
(短絡検出回路及び電圧保持回路の詳細)
次に、短絡検出回路21、電圧保持回路22等について、さらに詳細に説明する。
図2に示すように、短絡検出回路21は、オペアンプAmp1、Amp2、Amp3、Amp4と、コンパレータComp5、Comp6と、NANDゲート50と、カウンタCount1と、RSフリップフロップRSFF1と、半導体スイッチNmos1と、抵抗R7乃至15と、基準電圧源Vref1と、基準電圧源Vref2と、を備える。
また、電圧保持回路22は、例えば、DAC回路と、ADC回路と、を備える。
【0042】
電圧保持回路22は、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPとの間の短絡を判別する直前(すなわち、後述するNANDゲート50の信号V1がLレベルになる前)の位相補償素子接続端子COMPにおける電圧を保持する。電圧保持回路22は、後述するNANDゲート50からLレベルの信号が、ADC回路の制御入力端CTL端子に入力されると、そのとき実行しているAD変換が終了した後は、以後の変換は行わず、最後の変換結果(デジタルデータ)を出力し続けるように構成されている。
エラーアンプ9及び電圧保持回路22の出力は、それぞれスイッチSW1、SW2からなる切替回路26を介してPWMコンパレータ11の反転入力端に接続される。
【0043】
スイッチSW1、SW2は、それぞれ、例えばNチャネルMOSFETとPチャネルMOSFETとを並列に接続したCMOSスイッチ(トランスミッションゲート)から構成される。スイッチSW1は、NANDゲート50の出力信号がLレベルの場合、エラーアンプ9とPWMコンパレータ11との間を非導通状態にするように接続される。一方、スイッチSW2は、NANDゲート50の出力信号がLレベルの場合、電圧保持回路22とPWMコンパレータ11との間を、導通状態にするように接続される。すなわち、NANDゲート50の出力信号がLレベルの場合、PWMコンパレータ11には電圧保持回路22の出力が入力される。
逆に、NANDゲート50の出力信号がHレベルの場合は、スイッチSW1が導通、スイッチSW2が非導通となって、PWMコンパレータ11にはエラーアンプ9の出力が入力される。
【0044】
オペアンプAmp1は、ボルテージフォロワを構成している。従って、オペアンプAmp1の出力端と反転入力端が直接接続され、非反転入力端がフィードバック端子FBに接続される。また、オペアンプAmp1の出力端は、抵抗R7を介してオペアンプAmp3の反転入力端に接続されるとともに、抵抗R13を介してオペアンプAmp4の非反転入力端に接続される。
【0045】
オペアンプAmp2は、オペアンプAmp1と同様にボルテージフォロワを構成している。従って、オペアンプAmp2の出力端と反転入力端が直接接続され、非反転入力端が位相補償素子接続端子COMPに接続される。また、オペアンプAmp2の出力端は、抵抗R9を介してオペアンプAmp3の非反転入力端に接続されるとともに、抵抗R11を介してオペアンプAmp4の反転入力端に接続される。
【0046】
オペアンプAmp3は、反転入力端と出力端が抵抗R8を介して接続され、出力端がコンパレータComp5の反転入力端に接続される。また、オペアンプAmp3は、非反転入力端が抵抗R10を介して接地される。この構成により、オペアンプAmp3は減算回路を構成している。当該減算回路のゲインは、抵抗R7乃至R10の抵抗値で適宜設定する。なお、この構成による減算回路は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0047】
オペアンプAmp4は、反転入力端と出力端が抵抗R12を介して接続され、出力端がコンパレータComp6の反転入力端子に接続される。また、オペアンプAmp4は、非反転入力端が抵抗R14を介して接地される。この構成により、オペアンプAmp4は減算回路を構成している。当該減算回路のゲインは、抵抗R11乃至R14の抵抗値で適宜設定する。
【0048】
コンパレータComp5は、非反転入力端が基準電圧源Vref1と接続され、出力端がNANDゲート50の一の入力端に接続される。なお、基準電圧源Vref1は、他方の端が接地される。この基準電圧源Vref1の電圧値は、オペアンプAmp3による減算回路のゲインに応じて適宜設定する。
【0049】
コンパレータComp6は、非反転入力端が基準電圧源Vref2と接続され、出力端がNANDゲート50の他の入力端に接続される。なお、基準電圧源Vref2は、他方の端が接地される。この基準電圧源Vref2の電圧値は、オペアンプAmp4による減算回路のゲインに応じて適宜設定する。例えば、フィードバック端子と位相補償素子接続端子COMPとの間の短絡判定時の閾値電圧を±10mV以下とし、オペアンプAmp3による減算回路、Amp4による減算回路のゲインを100倍に設定した場合、基準電圧源Vref1及びVref2の電圧値は、1Vとすると好適である。
【0050】
NANDゲート50は、出力端が、カウンタCount1のリセット端Rと、RSフリップフロップRSFF1のリセット端Rと、電圧保持回路22内のアナログ−デジタル変換回路と、に接続される。さらに、NANDゲート50の出力端は、スイッチSW1の他方のMOSFET、スイッチSW2の一方のMOSFET、さらにインバータ(NOTゲート)を介してスイッチSW1の一方のMOSFET、スイッチSW2の他方のMOSFETに接続される。
【0051】
カウンタCount1は、例えば、Dフリップフロップを多段直列接続することで構成され、クロック端Cに所定の周期のクロック信号が入力され、出力端がRSフリップフロップRSFF1のセット端Sに接続される。
RSフリップフロップRSFF1は、出力端QがスイッチNmos1のゲートに接続され、保護信号をこのゲートに入力する。
【0052】
さらに、スイッチNmos1は、例えば、Nチャネル型MOSFETから構成され、ゲートに供給される保護信号の信号レベルに応じてオン、オフする。スイッチNmos1のドレインは、抵抗R15を介して位相補償素子接続端子COMPに接続され、ソースは接地される。
【0053】
電圧保持回路22内のアナログ−デジタル回路は、入力端が、位相補償素子接続端子COMPに接続され、制御入力端CTLがNANDゲート50の出力端に接続され、出力端がデジタル−アナログ回路に接続される。また、デジタル−アナログ回路は、出力端がスイッチSW2を介してPWMコンパレータ11の反転入力端に接続される。
【0054】
(短絡検出回路及び電圧保持回路の動作)
以上のような構成を採用する短絡検出回路21及び電圧保持回路22の動作について、以下に詳細に説明する。なお、以下では理解を容易にするため、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPとにおける電圧を、それぞれ、電圧V01、電圧V02とし、V01とV02との差が±10mV未満の場合に両端子間で短絡が生じているおそれがあると判別する場合を例にして説明する。
【0055】
オペアンプAmp1及びオペアンプAmp2には、それぞれ、フィードバック端子FBにおける電圧V01、位相補償素子接続端子COMPにおける電圧V02が印加される。オペアンプAmp1及びAmp2は、それぞれ、ボルテージフォロワとして動作し、電圧V01及び電圧V02をインピーダンス変換してそのままの電圧で出力する。ボルテージフォロワ回路を介することで、フィードバック端子FB及び位相補償素子接続端子COMPのインピーダンスの影響を抑制することができる。
オペアンプAmp1の出力は、抵抗R7を介してオペアンプAmp3の反転入力端に入力されるとともに、抵抗R13を介してオペアンプAmp4の非反転入力端に入力される。また、オペアンプAmp2の出力は、抵抗R9を介してオペアンプAmp3の非反転入力端に入力されるとともに、抵抗R11を介してオペアンプAmp4の反転入力端に入力される。
【0056】
オペアンプAmp3は、オペアンプAmp1を介した電圧V01とオペアンプAmp2を介した電圧V02とを差動増幅する減算回路を構成していて、増幅した電圧信号をコンパレータComp5の反転入力端に入力する。当該減算回路の出力はK(V02−V01)となる。ここでKは、減算回路のゲインを表す正定数で、抵抗R7乃至R10の抵抗値で決まる。また、オペアンプAmp4は、オペアンプAmp1を介した電圧V01とオペアンプAmp2を介した電圧V02とで差動増幅する減算回路を構成していて、増幅した電圧信号をコンパレータComp6の反転入力端に入力する。当該減算回路の出力はK(V01−V02)となる。ここでKは、減算回路のゲインを表す正定数で、抵抗R11乃至R14の抵抗値で決まる。本実施の形態では、オペアンプAmp3による減算回路のゲインと、オペアンプAmp4による減算回路のゲインが等しくなるよう、抵抗R7乃至R14の抵抗値を設定している。
【0057】
コンパレータComp5は、オペアンプAmp3の出力端からの電圧と、基準電圧源Vref1の電圧とを比較する。当該出力端からの電圧が基準電圧源Vref1の電圧よりも小さい場合、コンパレータComp5の出力はHレベルの信号となり、当該出力端からの電圧が基準電圧源Vref1の電圧よりも大きい場合、コンパレータComp5の出力はLレベルの信号となる。
ここで、コンパレータComp5では、電圧V01が電圧V02より小さい場合において、電圧V01と電圧V02との差が10mV未満であるか否か、についての判別動作が行われる。なお、電圧V01が電圧V02より大きい場合、K(V02−V01)が負となるので、コンパレータComp5の出力はHレベルの信号となる。
【0058】
コンパレータComp6は、オペアンプAmp4の出力端からの電圧と、基準電圧源Vref2の電圧とを比較する。当該出力端からの電圧が基準電圧源Vref2の電圧よりも小さい場合、コンパレータComp6の出力はHレベルの信号となり、当該出力端からの電圧が基準電圧源Vref2の電圧よりも大きい場合、コンパレータComp6の出力はLレベルの信号となる。
ここで、コンパレータComp6では、コンパレータComp5の場合と逆で、電圧V01が電圧V02よりも大きい場合において、電圧V01と電圧V02との差が10mV未満であるか否か、についての判別動作が行われる。なお、電圧V01が電圧V02より小さい場合、K(V01−V02)が負となるので、コンパレータComp6の出力はHレベルの信号となる。
【0059】
NANDゲート50は、コンパレータComp5からの入力信号がHレベル、コンパレータComp6からの入力信号がHレベルの場合、Lレベルの信号V1を出力し、その他の場合にはHレベルの信号V1を出力する。つまり、電圧V01と電圧V02との差が10mV以上であれば、コンパレータComp5、Comp6のいずれかの出力はLレベルであるから、NANDゲート50の出力はHレベルになる。したがって、NANDゲート50は、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPとの電圧差が10mV未満の場合のみ、Lレベルの信号V1を、電圧保持回路22の制御入力端CTLと、カウンタCount1のリセット端Rと、スイッチSW1及びSW2と、に入力する。
【0060】
このように、NANDゲート50からの信号V1がLレベルの場合、スイッチSW1は非導通となり、スイッチSW2が導通する。これにより、エラーアンプ9からの誤差信号がPWMコンパレータ11に入力されなくなり、電圧保持回路22が保持していた電圧値の信号がPWMコンパレータ11に入力されるようになる。つまり、PWMコンパレータ11にフィードバックによって入力される信号が、エラーアンプ9からの誤差信号から、電圧保持回路22が保持していた電圧値の信号に切り替わる。
【0061】
一方、NANDゲート50からの信号V1がHレベルの場合は、スイッチSW1が導通し、スイッチSW2が非導通となる。これにより、電圧保持回路22が出力する電圧値の信号はPWMコンパレータ11に入力されず、エラーアンプ9からの誤差信号がPWMコンパレータ11に入力される(通常動作)。
【0062】
また、NANDゲート50からの信号V1がLレベルの場合、カウンタCount1のリセット端RにLレベルの信号が入力されることでカウンタCount1のリセットが外れて、カウンタCount1がカウント動作を開始する。NANDゲート50からの信号V1がLレベルである状態が所定のカウント時間Delay1だけ続いた場合、カウンタCount1の出力によりRSフリップフロップRSFF1がセットされて、RSフリップフロップRSFF1から半導体スイッチNmos1のゲートに入力される保護信号PROTがHレベルとなる(図3の保護信号を参照)。これにより、短絡検出回路21の動作モードが保護モードに移行し、半導体スイッチNmos1がオンし(図3のNmos1オン参照)、エラーアンプ9の出力端とグランドとの間が、抵抗R15及び半導体スイッチNmos1を介して導通状態になる。
【0063】
半導体スイッチNmos1が導通状態になることで、位相補償素子接続端子COMPに接続されたコンデンサC1、C2に蓄えられた電荷が引き抜かれ、位相補償素子接続端子COMPにおける電圧V02が0Vになる(図3のV02参照)。
さらに、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPが短絡している状態では、フィードバック端子FBの電圧V01も0Vになるので、上述の出力低下検出用コンパレータ20の働きによりスイッチング電源装置SRのスイッチング動作が停止される。
【0064】
ここで、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPとに短絡が生じていない非短絡状態における動作について説明する。これらの端子が非短絡状態であっても、これらの端子の電圧V01と電圧V02との電圧差が10mV未満の状態(以下、電圧差小状態とも称する)となる場合がある。そこで、本実施の形態では、非短絡状態で電圧差小状態が生じても、この電圧差小状態が短時間である場合には、パワー半導体スイッチング素子4がスイッチング動作を継続するように構成されている。非短絡状態では、電圧差小状態の継続時間は短時間のためである。具体的には、電圧差小状態が所定の時間Delay1だけ続いた場合にのみ、半導体スイッチNmos1をオンさせて動作を保護モードに移行し、電圧差小状態がDelay1未満である場合には、半導体スイッチNmos1をオンさせないように構成している。
【0065】
また、フィードバック端子FBと位相補償素子接続端子COMPが短絡している状態では、エラーアンプ9が正常動作しなくなり、その出力は制御に使えないものになる。位相補償素子があるのでエラーアンプ9の出力が瞬間的に急変するわけではないが、時間とともに本来とは違う値を出力するようになる。この信号をそのまま使うとスイッチング電源装置SRが暴走することになり、様々な事故につながりうる。本実施の形態では、後述のスイッチング停止がなされるまでの間、正常であった最後のエラーアンプ9の出力を使うので、上記の暴走を防ぐことができる。
【0066】
また、非短絡状態において、電圧差小状態になるとNANDゲート50からの信号V1はLレベルになり、電圧保持回路22は、直前のエラーアンプ9の出力を保持し、スイッチSW2を介して電圧保持回路22の保持電圧がPWMコンパレータ11に入力される。さらに、電圧差小状態になると、カウンタCount1がカウントを開始し、所定の時間Delay1が経過すると半導体スイッチNmos1をオンするが、非短絡状態ではこの時間Delay1の経過の前に電圧差小状態から脱してNANDゲート50の出力がHレベルになり、カウンタCount1がリセットされるので、半導体スイッチNmos1がオンしない。
従って、非短絡状態では、Delay1時間未満の電圧差小状態があっても、スイッチング電源装置SR全体として定常のスイッチング動作を継続する。
【0067】
(作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態によれば、エラーアンプ9の入力端であるフィードバック端FBと、このエラーアンプ9の出力端である位相補償素子接続端子COMPとの間の短絡を検出することが可能となる。短絡が生じてもそのまま運転を続ければ、エラーアンプ9の異常な出力によりスイッチング電源装置SRの出力電圧が上がり続け、コンデンサ6を破壊したり負荷にダメージを与えたりする危険がある。本実施の形態では、パワー半導体スイッチング素子4のスイッチング動作を停止させることができるので、出力電圧がコンデンサ6の耐圧を超えてコンデンサ6を破壊したり負荷にダメージを与えたりすることが防止される。
【0068】
また、本実施の形態によれば、フィードバック端子FBの電圧V01と、位相補償素子接続端子COMPの電圧V02とが、略同一であっても、その状態が所定のカウント時間Delay1だけ続いた場合に、位相補償素子接続端子COMPとグランドとの間が、抵抗R15と半導体スイッチNmos1とを介して導通するようになる。つまり、本実施の形態によれば、電圧V01と電圧V02とが略同一の場合、まず、上記の両端子間の短絡の可能性(短絡状態とも称する)を検出し、次に、この状態が一定の時間継続した場合、恒久的な短絡状態として検出する。従って、偶発的に両端子の電圧が電圧差小状態になる場合を除去できて、隣接端子間の短絡がより確実に検出できるようになる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲において、様々な応用、変更が可能である。そのような応用、変更が行われた実施の形態も、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲、ならびにその均等の範囲に含まれるものである。
【0070】
例えば、上記の実施の形態では、昇圧型のスイッチング電源装置SRを例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。降圧型のスイッチング電源に対しても、本発明は適用可能である。この場合、出力端子17の電圧を0Vまで低下させることができる。
【0071】
また、上記の電圧保持回路22は、例えば、コンデンサを含んで構成される通常のサンプルホールド回路であってもよい。
【0072】
さらに、上記の実施の形態では、パワー半導体スイッチング素子4がMOSFETである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、パワー半導体スイッチング素子4は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、スイッチング電源装置の力率改善を行う制御回路に好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0074】
1 全波整流器
2 コンデンサ
3 インダクタ
4 パワー半導体スイッチング素子
5 ダイオード
6 コンデンサ
7 ゼロ電流検出用コンパレータ
8 RSフリップフロップ
9 エラーアンプ(誤差増幅器)
10 発振器
11 PWMコンパレータ
13 過電圧検出用コンパレータ
14 補助インダクタ
15 制御回路
16 過電流検出用コンパレータ
17 出力端子
18 リスタートタイマ
19 ドライバ
20 出力低下検出用コンパレータ
21 短絡検出回路
22 電圧保持回路
23 2入力ORゲート
24 4入力ORゲート
25 駆動部
26 切替回路
SR スイッチング電源装置
R1乃至R6 抵抗
C1、C2 コンデンサ
ZCD ゼロクロス端子
OUT ゲートドライブ出力端子
IS 電流検出端子
FB フィードバック端子
COMP 差動増幅器出力端子(位相補償素子接続端子)
RT タイミング抵抗外付け端子
Amp1乃至Amp4 オペアンプ
Comp5、Comp6 コンパレータ
50 NANDゲート
Count1 カウンタ
RSFF1 RSフリップフロップ
Nmos1 半導体スイッチ
R7乃至R15 抵抗
Vref1、Vref2 基準電圧源
SW1、SW2 スイッチ
図1
図2
図3